ぽ こあポケモン編は、人間編のシリアスで切ない雰囲気とは少し違い、明るく楽しい“ギャグ寄り”の物語として描いていく予定です!
それでも大丈夫だよ!という方は、これからも引き続き応援していただけると嬉しいです!!
お家をつくろう!
家。
それは、そこに住む人やポケモンの物理的な拠り所であり、同時に、心を預けるための場所でもある。
友人、恋人、家族。
多種多様な存在がいる中で、それらの誰かが待っていてくれる場所。
日常で疲れた身体を癒し、張りつめた心をほどいてくれる場所。
家の質は、その人やポケモンの在り方にも、きっとどこかで繋がっているのだと思う。
家は、ただ大きければいいというわけではない。かといって、小さければいいというものでもない。
その人、そのポケモンにとって「ちょうどいい」と思える場所に住むこと。
それが、いちばん大切なんだ。
少なくとも、僕はそう思っていた。
「じゃーん! ここがおれの住みかだぞー!」
「こっちがオイラの住みかだよ!」
「ウチの住みかはここだよー! ベッドもあるからゆっくり休んでいいよー!」
「あ、うん。ありがとう……」
元気いっぱいに案内されるまま、僕はフシギダネに勧められた干し草のベッドへと腰を下ろした。
座った瞬間、ほしくさがパキパキっと軽やかな音を立て、じんわりと沈み込む。少しチクチクはするけれど、思っていたよりもずっと柔らかくて、悪くない寝心地だ。
ほんのりと草の匂いがして、どこか落ち着く。
……うん、こういうのも嫌いじゃない。
チラリと視線を動かすと、ヒトカゲ、ゼニガメ、フシギダネが、落ち着かない様子でこちらを見つめていた。
そわそわと身体を揺らし、目を輝かせている。おそらく、住みかの感想を待っているのだろう。期待に満ちたその視線に、僕は思わず背筋を伸ばす。
さて、なんと言えばいいのか。
正直な感想と、彼らが喜ぶ言葉。その間で、頭の中の歯車を必死に回す。
「えっと……素敵な、住みかだね!」
「「「でしょー!!」」」
三匹は声を揃えて跳ね上がり、やったー!とばかりにぴょんぴょんと飛び回る。
全身で喜びを表現しているその姿は、見ているだけで頬がゆるむ。
うん。かわいい。
……と、思いつつ。
僕はそっと視線を逸らし、小さく呟いた。
「……住みかというか、草なんだけど」
すると、視線の先にいたうすチュウも、同じようにすっと目を逸らし、ぽつりと呟いた。
「……ノーコメント、ですわ」
どこか気まずい沈黙が、ほんの一瞬だけ流れた。
僕がメタモンたちに出会ってから、約1週間が経った。
メタモンとその友達はとても優しく、名前も記憶も無い僕を、何の疑いもなく暖かく受け入れてくれた。
そのことには、僕はとっても、とっても、とーーーーーっても感謝している。
……いるのだけれど。
どうにも、僕の思っている常識と、みんなの常識には、少し———いや、そこそこ大きなズレがあるようだ。
その典型的なズレというのが、この「家問題」である。
僕が思っている家とは、最低限、床と壁と天井がある空間だ。
たとえそれが見た目の悪い豆腐建築だったとしても、雨風を防げるのであれば、それは立派な家だと思う。
安心して眠れて、雨に濡れず、風をしのげる。それだけで、家としての役割は十分に果たしているはずだ。少なくとも、僕の中では。
けど。
みんなの「住みか」は、僕の思う家とは、まったく違っていた。
草。
……いや、笑ってるわけじゃないよ。
本当に、草しかないんだ。
海や池、川のそば。
木の陰や、石の周り。
そこにぽつんとある、小さな草むら。
それが、彼らの住みかなのだ。
……いやいやいや。さすがにそれは、無理があるよね?
雨が降ったらどうするの? 台風が来た時は? ヒトカゲさ、尻尾の火、消えちゃうよ?逆に、太陽の日差しが強い時はゼニガメ、干からびちゃわない??
草むらに潜れば解決ー! ……なんてことは、さすがにないはずだ。たぶん。きっと。いや、あってほしくない。
だけど、ここのポケモンたちは、そんなことを気にする様子もなく。それらの住みかを、心から気に入っているらしい。
ふかふかだよー、とか。
落ち着くんだー、とか。
うん、気持ちはわからなくもないけど。
わからなくもないけど、納得はできない。
……まぁ。これは僕が記憶を失っているだけで、ポケモンにとっては普通のことなのかもしれない。
そう考えれば、辻褄は合う。
合うのだけれど。
「草むらに住んでね」と言われたら、僕は、たぶん———いや、間違いなく断るだろう。
ちなみに、メタモンが作った家に住んでいるポケモンたちも、何匹かはいる。けれどその家も、枝に草を被せただけの簡易なものや、砂や石を固めただけの空間ばかりだ。
キラキラうきしまの街には、僕の思っている「家らしい家」も一応は存在しているものの、その数はかなり少ない。
つまり。
この世界において、僕の理想の住環境は少数派らしい。
これは、どうしたものか。
僕は、三匹が楽しそうに会話している横で、そっと頭を抱えた。
しばらく唸る。
考える。
そしてふと、ひとつの結論にたどり着いた。
「……そうだよ。だったら、僕が自分で家を作ればいいんじゃないか」
それなら、他のみんなを否定することも、傷つけることもない。自分の理想を、そのまま形にできる。
……うん。
我ながら、完璧な解決策だ。
メタモンからは、道具や材料は好きに使っていいと言われているし、家を建てられる場所も、いくらでもある。
条件は、揃っている。
よし。
思い立ったが吉日だ。
僕は勢いよく立ち上がり、拳をぎゅっと握った。
こうして僕の、「まともな家」を作るための挑戦が始まった。
「おう、リオル! 言われた通り、地面を平らにしておいたぜ!」
「この穴に水を溜めればいいんだね? オイラに任せてよ!」
「リオル! 頼まれてた丸太を材木にしておいたぜ!」
「はっぱも持ってきたぞー!」
「この柱を支えてればいいんだね? ウチに任せてよ!」
優しい。
みんな、とっても優しい。
びっくりするくらい、優しい。
家作りを手伝ってくれるみんなの姿を見て、僕の目から、ぽろりと涙がこぼれた。
イワーク、ゼニガメ、ストライク、ヒトカゲ、フシギダネ。
出会って、まだたった1週間しか経っていないのに、どうして、こんなにも自然に、こんなにも当たり前のように、僕に手を差し伸べてくれるんだろう。
……こんなにポケモンに優しくされたのは、初めてだ。
いや、記憶がないから、わからないけど。
家を作ろうと決めた僕は、まずメタモンに相談した。するとメタモンは、「パサパサこうやの街」を抜けた先にある、まっさらな土地へと僕を案内してくれた。
通称、マサラタウン。
そこには何匹かのポケモンが住んでいるものの、辺り一面は草と木ばかり。名前の通り、何もない“まっさら”な場所だった。
メタモンは、このマサラタウンを生まれ変わらせようと、いろいろ試行錯誤しているらしい。
けれど、思うようには進んでいないようで、少し困ったように笑っていた。だからこそ、僕がここで家を建てることが、何かのきっかけになるかもしれない。そう思って、僕を招いてくれたのだという。
ポケモンセンターの横にある収納ボックスには、さまざまな材料が詰め込まれていた。それらは、自由に使っていいらしい。
メタモンに許可をもらった僕は、すぐに家作りに取りかかろうとした。……のだけれど。
気がつけば、後ろにはたくさんのポケモンたち。
そして、満面の笑み。
「手伝うよ!」
そう、口々に言ってくれた。
最初は断った。これは僕の問題だから、僕一人でやるべきだと思ったから。
けれど。
「友達なんだから、助け合うのは当たり前でしょ?」
その一言に、僕は何も言い返せなかった。
……ほんと。みんな優しくて、涙が止まらないよ。
「大丈夫ですか、リオルさん。どこか痛いのですか?」
「……ううん、そうじゃないんだ。みんなの優しさが、とっても心に響いて……」
「うふふっ、そうですわね♪ ここにいるみなさんは、とっても優しいんです♪ ……それに、
「ん? 何か言った?」
「な、なんでもありませんわっ!? ささっ、早くリオルさんのお家を作りましょう!」
「う、うん。よろしくね、うすチュウ」
ぴゃあーっと、逃げるように駆けていくうすチュウ。その背中を見送りながら、僕は小さく首を傾げる。
今、何か言っていたような……まあ、いっか。
気を取り直して、僕は作業に戻った。
そうしてなんやかんやあり、気づけば、半日が経っていた。
そしてついに。
その瞬間がやってきた。
「「「「「完成だーー!!!!」」」」」
出来上がった家の前で、僕たちは一斉に両手を上げて、喜びを爆発させた。
目の前にあるのは、葉っぱと材木と石で作られた『はっぱのいえ』。僕が最初に思い描いていた、「理想の家」とは少し違う。けれど、みんなで作り上げた、大切な家だ。
それに、材料はシンプルなのに、外見はしっかりログハウス風になっている。中も意外と広くて、寝るにも生活するにも十分すぎる空間がある。
……というか、広い。
明らかに、一人で住むには広すぎる。設計、ちょっとミスったかもしれない。
少し反省していると、手伝ってくれたみんなが嬉しそうに声をかけてきた。
「やったなリオル!」
「初めて作ったとは思えない出来栄えだな! すげぇぜ!」
「ウチも頑張ったんだよ! 褒めて!」
「あっ、オイラだって!」
「おれもおれも!」
「わたくしも頑張りました♪」
みんな、自分のことのように喜んで、はしゃいで、褒め合っている。
その光景が、なんだか眩しくて。
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
……ああ。
僕は、きっと。
とても素敵な場所に来たんだ。
こんなにも素敵な友達と出会わせてくれた神様に、心の中でそっと感謝しながら、僕はみんなの方へ向き直った。
「ありがとう、みんな。みんながいなかったらきっと、僕は……」
再び、涙が込み上げてきた。
胸の奥がじんわりと熱くなって、視界が滲む。
それと同時に、小さな不安が、ふと顔を出す。
僕は、こんなに幸せになって、いいのだろうか、と。
すると、そっと。
温かい手が僕の頬に触れた。
流れた涙を、やさしく拭ってくれる。
「いいんですよ、
うすチュウは、僕に優しく寄り添ってくれる。
「
瞳に涙を浮かべながら、それでも穏やかに微笑んでいた。まるで、僕の心の奥まで見透かしているみたいに。
「そうだぞ! それに、おれたちは当たり前のことをしたまでだ!」
「だってウチら、友達だもんねっ!」
「だからそんなに泣かないでよ! オイラたちがついてるからさ!」
ヒトカゲが、フシギダネが、ゼニガメが。
それぞれの言葉で、僕を励ましてくれる。
「困った時はお互い様だ! いつでも呼んでくれよな!」
「オレ様たちが、すぐに駆けつけるからよ!」
イワークが、ストライクが。
頼もしく、力強く笑う。
みんな、優しく笑いかけてくれる。
ああ。
僕は、本当に幸せ者だ。
「ありがとう、みんな……!!」
「「「「「うん!/おう!!」」」」」
「……うふふっ♪」
小さく弾むような笑い声が、そっと場を和ませる。
こんなにも優しい友達に出会えたんだ。
だったら今度は、僕が返す番だ。
そう思った、そのとき、ふと、ひとつの考えが浮かんだ。
「そうだ!」
僕は顔を上げて、みんなを見渡す。
「もしよかったら、みんなの家も作ろうよ! 草の住みかもいいけど、こういう“ちゃんとした家”も、きっと素敵だよ!」
一瞬、きょとんとした空気が流れた次の瞬間。みんなの目が、一斉にキラキラと輝いた。
「本当か!?」
「せっかくならお願いするぜ!」
「ウチもー!」
「オイラ、水車がある家がいいなー!」
「おれはえっとー……もっと強そうなやつ!」
次々と飛び出す、思い思いの理想。
夢と、わがままと、ちょっとした無茶。
それらを、僕は一つひとつ丁寧にメモに書き留めていく。
きっと大変になる。
でもきっと、楽しい。
こうして僕は、みんなのための「家づくり」を始めることになった。
この場所を、もっと“帰りたくなる場所”にするために。
「本当に……本当によかったですわ♪」
その小さな呟きは。
誰にも気づかれないまま、やさしく空に溶けていった。
その後、僕は何日もかけて、手伝ってくれたみんなの家を作り上げていった。
作業の途中で、新しくやってきたポケモンたちも、自分も家が欲しいと声をかけてくれるようになった。
もちろん、断る理由なんてない。友達のお願いを断るなんて、僕にはできないから。そして僕はみんなと協力しながら、ひとつ、またひとつと家を建てていった。
その結果、マサラタウンは、元の自然を残しながらも、少しずつ賑やかな街へと姿を変えていった。
そして、夜。
すっかり静まり返った街の中で、僕は自分の家へと戻ってきた。
「ふぅ〜、疲れた〜!」
ベッドに倒れ込むようにして、体を預ける。
せっかく作った自分の家なのに、みんなの家作りにかかりきりで、ほとんど使えていなかったのだ。
ようやく訪れた休息に、僕は仰向けになって天井を見上げた。
……けれど。
どこか、落ち着かない。
家の作りがおかしい?
それとも、何かやり残したことがある?
考えてみるけれど、はっきりとした答えは出てこない。
僕はゆっくりと体を起こし、部屋の中を見回した。
そして、自分の隣へと視線を向ける。
「……やっぱ、広すぎたな」
ぽつりと、独り言がこぼれた。
その時。
コンコン、と、静かなノックの音が、家の中に響いた。
こんな時間に来客?
少し不思議に思いながら、僕は声をかける。
「どうぞー! 開いてるよー!」
ドアが、ゆっくりと開いた。
そこから入ってきたのは、どこか遠慮がちな、小さな影。
「お、お邪魔しますわ……」
「うすチュウ? どうしたの、こんな時間に?」
彼女は部屋に入ると、そわそわと落ち着かない様子で指先をつつきながら、ちらちらと僕の方を見てくる。
「あ、え、えっと……その……」
「……?」
少し考えて、ふと、ひらめいた。
「あっ、そっか! うすチュウの家、まだ作ってない!」
ぽん、と手を叩く。
「ごめんね、すっかり忘れてたよ」
「い、いえ! 大丈夫ですわ!」
「明日、朝イチでみんな集めて作ろう!」
「あ、ありがとうございます……! あっ、いえ、そうではなくて、その……!」
「?」
うすチュウは、言葉を詰まらせながら、もじもじとしている。何か言いたそうなのに、言えないような———そんな様子。
その姿を見ていると。
なぜだか。
自然と、言葉が口からこぼれた。
「———もしよかったら……僕と、一緒に暮らさない?」
「……え?」
言った瞬間、自分で驚いた。
慌てて口を押さえる。
———今、僕は何を言った?
「あっ……えっと、その……違うっていうか……」
必死に言い訳をしようとする。
けれど、言葉がうまく出てこない。
その時。
「……間違い、なのですか?」
うすチュウが、静かにそう尋ねた。
その瞳は、まっすぐで。
どこか期待していて。
———ほんの少しだけ、不安そうだった。
だから、僕は。
逃げるのをやめた。
「……ううん。間違いじゃない」
ベッドから立ち上がり、ゆっくりとうすチュウの方へ歩いていく。
「理由は、うまく説明できないけど」
「この家を設計した時、気づいたら一人用じゃなくて、二人用の間取りになってたんだ」
「きっとそれって———心のどこかで、誰かと一緒にいたいって思ってたからだと思う」
僕は、うすチュウの前で立ち止まり。
そっと、手を差し出した。
「———うすチュウ。僕と、一緒に暮らしてくれ」
一瞬の沈黙。
そして———
「っ……はいっ……!」
うすチュウは、小さく震えながらも、力強く頷いた。
「よろしく、お願いします……!!」
その瞳から、ぽろりと涙がこぼれる。
けれどその表情は、とても嬉しそうで。
彼女は、僕の手を両手でぎゅっと握りしめた。
あたたかい。
その温もりが、胸の奥までじんわりと広がっていく。
これが、僕とうすチュウの
僕とうすチュウの長く幸せな日々の始まりだった。
「とりあえず完結させたし、しばらくは評価待ちかなぁ〜……(承認欲求モンスター)。その後、ゆっくりと更新していけば良いかな〜……(自堕落気分屋)
ってめちゃくちゃ伸びとる!?!?
お気に入り登録と高評価めっちゃ増えとる!?!?
アイエエエ!?!?」
ということで、みなさん!
お気に入り登録・高評価、本当にありがとうございます!!
正直なところ、自分でも「これはなかなか良い作品になったな」と思ってはいたのですが、ここまで伸びるとは思っておらず、驚きが隠せません……!
たくさん読んでいただけて、本当に嬉しいです。
そして、みなさんのご要望にお応えして!(というか、もともと書く予定ではありましたが……)「ぽ こあポケモン編」スタートです!!
前書きでもお伝えした通り、ここからは明るく楽しい“ギャグ寄り”の展開がメインになっていく予定です。(少し、人間編の雰囲気も混ぜつつ)
わちゃわちゃした日常や、ゆるくて温かい空気感を楽しんでいただけたら嬉しいです!
これからも引き続き、応援よろしくお願いします!!