なんか、色が薄いピカチュウを見つけたんだけど   作:ぽこちー

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ぽこあポケモンを通じて、ポケモンは人間がいない方が平和だと思うことがあります。
でも、そんなポケモンたちにも大切なパートナーがいるはず。
そしてみんな、大切なパートナーに会いたいと思っているのだと思います。
主人公のメタモンやモジャンボ博士のように。



ポケモン図鑑

 

 

 ポケモン図鑑。

 

 それは、各地方の博士やその関係者から貰える、出会ったポケモンの情報を登録してくれる非常に便利な端末だ。

 

 そのデザインも時代や地方によってさまざまであり、最新のポケモン図鑑はスマホロトムのアプリにもなっているらしい。

 

 ほとんどのポケモン図鑑は片手で持てるくらいのサイズなのだが、僕が持っているそれは、タブレットほどの大きさがある少し特殊なものだ。

 

 とはいえ、これは元々僕のものではない。

 

 これは、昔、アローラ地方をはじめとする様々な地方を旅していた曾祖父が使っていたポケモン図鑑だ。

 

 幼い頃、僕はよく曾祖父の膝の上で、この図鑑を一緒に覗き込みながら旅の話を聞いていた。画面に映る見知らぬポケモンたちは、どれも遠い世界の住人のようで、外の世界を知らない僕には全てが新鮮だったのを今も覚えている。

 

 だが今、このポケモン図鑑は電源が入らず、中の情報を見ることはできない。

 

 当時は、この中に曾祖父のポケモンであるロトムが入り、図鑑としての機能を担っていたのだ。けれど今、このポケモン図鑑の中にロトムはいない。

 

 曾祖父母が亡くなった後、ロトムは野生へと帰ったのだ。

 

 ロトムとは、図鑑のシステムを通してよく会話をしていた。無機質な画面越しなのに、不思議と温度を感じる声だった。

 

 曾祖父母が亡くなり、このポケモン図鑑と一緒にロトムも僕の元へやってきた。けれど僕は、ロトムをこの図鑑から解放した。

 

 曾祖父のように外の世界を旅することができない僕のそばにいるということは、ロトムの自由を奪うのと同じだと思ったからだ。

 

 ロトムは僕と一緒にいたいと言ってくれた。けれどその奥に、かつてのように様々な地方を巡りたいという気持ちがあることを、僕は知っていた。だから、僕はロトムを野生へ返したのだ。

 

 別れの際、ロトムは「繋がりが欲しい」と言った。

 

 そこで僕は、お気に入りのコレクションのひとつであるクチバシティのテーマ曲のCDを渡した。遠くへ行っても、ふとした瞬間にこの街を思い出せるように。そんな想いを込めて。

 

 今思えば、ロトムは僕の最初のポケモンになっていたのかもしれない。まあ結局、逃がしてしまったから違うのだろうけど。

 

 なら、今の僕の最初のポケモンは、うすチュウということになるのだろう。でも、モンスターボールに入れていないポケモンを「自分のポケモン」と呼んでいいのか、僕にはわからない。ポケモントレーナーではない僕には、その境界線は少し曖昧なのだ。

 

 ロトムが去ってから、ポケモン図鑑は完全に沈黙した。

 

 曾祖父の冒険録も、出会ったポケモンたちの記録も、もう見ることはできない。使えない図鑑なんて持っていても仕方ない、と思う人もいるだろう。

 

 それでもこれは、曾祖父母とロトムを繋ぐ、たったひとつの思い出の物だ。それを手放すことなんて、できるはずがなかった。

 

 そんな思い出の詰まったポケモン図鑑をベッドの上で眺めていると、うすチュウがひょっこりと乗ってきて、不思議そうにそれを覗き込んだ。

 

 最初は、僕とうすチュウの部屋は別々だった。

 

 けれど朝になると、決まって僕の隣で眠っている。自分の部屋に戻るよう言っても、うすチュウは毎晩のように潜り込んでくる。

 

 用意した部屋が無駄になったことに頭を抱えながらも、隣に来てくれることが、少しだけ嬉しかった。

 

 結局、折れたのは僕のほうだ。

 今では、同じ部屋で一緒に暮らしている。

 

「ピカピ〜?」

 

「これはポケモン図鑑だよ。たくさんのポケモンと、旅の記録が入ってる特別なやつ」

 

「ピカッ!」

 

「見てみたい? ……僕も見たいんだけどさ。もう電源がつかなくて。ごめんね。」

 

「ピ〜カ〜……! ピッカッ♪」

 

「え? 貸してほしい? 別にいいけど……」

 

 うすチュウは受け取ると、ぺこりと頭を下げた。そして、小さく電気を走らせ始める。

 

「あ、おい。そんなことしても……それにお前の身体も……!!」

 

 言いかけた言葉は、途中で止まった。

 

「……え?」

 

 ぱち、と。

 微かな音とともに、画面が灯る。

 

「ピッカ♪」

 

 ポケモン図鑑が、息を吹き返した。

 

「……まじかよ」

 

 操作してみると、問題なく動く。

 

 そして当然、昔のようにロトムが話しかけてくれることはない。その事実に少し寂しさを感じたが、それ以上に、昔のようにポケモン図鑑を見ることができるようになったことが嬉しかった。

 

「充電の減りは早いけど……でも使えるな」

 

「ピッピカチュウ♪♪」

 

「ありがとう、うすチュウ」

 

 膝の上に乗せて、後ろから包むように抱く。

 体温が、じんわりと伝わってくる。

 

「じゃあ、一緒に見よっか」

 

「ピカピ♪♪」

 

 見せてもらっていた側から、見せる側へ。

 その変化が、少しだけ誇らしかった。僕も、ちゃんと前に進んでいるらしい。

 

 未来なんて期待していなかったはずなのに。それでも、気がつけば明日が少し楽しみになっている。

 

 けれど———

 いつかは別れがやってくる。

 

 別れは、誰にでも訪れるものだ。

 それはきっと、避けることのできないものなのだろう。

 だからこそ、今この時間、この一瞬を大切にしていきたい。

 

 そう思えるようになったのは———

 きっと、全部うすチュウのおかげなのだろう。

 

「へぇ……ひいじいちゃんが見せてくれなかったポケモンがいっぱいだ……お、見てみろよ。『ウルトラビースト』だってさ。まるで宇宙人みたいだな」

 

「ピィ〜カ〜……♪♪」

 




「アローラ♪ ですわ、ロトムさん♪」

「あっ、うすチュウさん、アローラっス! ……って、え? アローラ!? なんでうすチュウさんが知ってるんスか!?」

「最近、ふと思い出したんですの♪ 誰に教えてもらったのかまでは思い出せないんですけれど……人間さんが使う挨拶、だったはずですわ♪」

「その通りっス!! アローラ地方の伝統の挨拶っスよ!!」

「まあ、そうなんですね♪ ということは、ロトムさんはアローラ地方のご出身なんですの?」

「そうなんスよ!! オレ、アローラ生まれで! あの頃はご主人と一緒に、いろんな場所を冒険してたんス! それに、ご主人のひ孫くんとも、すごく仲が良くて……あぁ、懐かしいロト……」グスッ

「……そう、だったんですね」
「あの、もしよろしければなんですけど、そのご主人さんや、ひ孫さんのお話を聞かせていただけませんか?」

「あっ、ああ! もちろんっス!! じゃあまずは、オレとご主人の出会いからなんスけど———!」
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