なんか、色が薄いピカチュウを見つけたんだけど   作:ぽこちー

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サーフィン

 

「何か……何かきっとあるはずだ!! この子を治す、何かがきっと……!!」

 

「どうして、この子が……この子だけがこんなに……ッ!!」

 

 ひいおじいちゃんとひいおばあちゃんがないている。

 どうしてだろう。

 ぼくにはわからない。

 

「……ひ孫様の身体を蝕むウィルスは、今の技術では完全に取り除くことはできません。こんなウィルスは見たこともありません。……まるで、この世界とは別の世界からやってきたかのようで……」

 

「———僕だ……僕のせいだ……!! 僕が何度もウルトラホールに入ったから……ッ!!」

 

「貴方だけのせいではありません……母から続く私たちの血筋のせいです……ッ!! 神様……どうして、どうして私ではなくこの子なのですか……ッ!!」

 

 しろいふくをきたおとこのひとがなにかいってるけど、むずかしくてよくわからない。

 でも、ふたりはぼくをみてないている。

 ぼくのせいでないているんだ。

 

「だいじょうぶだよ、ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃん! ぼくは、こんなにげんきだもん! だから、なかないで!」

 

「「っ……!!」」

 

 ふたりにだきしめられた。

 とってもあたたかくて、あんしんする。

 

「……お二人のDNAサンプルのお陰で、抑制剤を作ることには成功しています。毎日必ず飲ませてください。我々も、ひ孫様の解毒薬を必ず作ってみせます……!!」

 

「僕たちにできることはなんでもやります……だから、この子を……」

 

「この子を救ってください……お願い、します……!!」

 

 また、ふたりはなきだしてしまった。

 ぼくはふたりのあたまにてをのばし、やさしくなでてあげた。

 

「なかないで……ぼくが、そばにいてあげるから……ね……?」

 

「「っ……うん……うん……っ!!!」」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 新緑が眩しく光り輝き、爽やかな風がクチバの街を突き抜ける初夏。

 

「サンサンもっと熱くなれ〜♪燃える鼓動で走り出せ〜♪」

 

 僕はビーチチェアの上でサングラスをかけながら、子供の頃に曾祖父母とよく歌っていた歌を口ずさむ。

 昔はサントアンヌ号やクルーザーなどが多く出入りしていたため、こんなふうにビーチでくつろぐことはできなかった。

 

 だが、今のクチバにクルーザーは存在していない。それどころか、サントアンヌ号は完全に運行を停止してしまっているのだ。

 

 つまり、今のクチバは観光スポットとして新たに生まれ変わっている。

 

 もっとも、海を見るならアローラ地方に行った方がいいし、この時代にわざわざ海を見に観光に来る人もいないのだけど。

 

「ムンムンたぎる勇気が〜♪夢を照らしてくれる〜♪あ〜いやいや〜♪」

 

 僕はサングラスを外し、クチバの海を眺める。

 今日の海は荒れているようで、サーフィンにもってこいの波がビーチへと押し寄せてくる。

 

 そんな海の上を、イナズママークの入ったサーフボードがビュンビュンと走っている。そしてその上には、すごく見覚えのあるポケモンが楽しそうに乗っていた。

 

「ピッカァ〜〜〜!!」

 

「……なーにが、『儚げで今にも消えそう』だよ。めちゃくちゃタフじゃんか」

 

 そう。

 今、サーフィンをしているのはうすチュウなのだ。

 

 あれだけ儚いお嬢様オーラを醸し出しているのに、実はめちゃくちゃタフだったのである。

 

 思い返せば、心当たりはいくらでもあった。

 

 ジョーイさんのラッキーと同じかそれ以上にテキパキと仕事を手伝い、僕の屋敷の掃除もきびきびとこなしていた。なんなら、昔いた使用人たちよりも働いているのではないかと思うくらいに。

 

 そしてなぜ、うすチュウがサーフィンをしているのか、疑問に思う人もいるだろう。

 

 その答えは簡単だ。

 

 復活したポケモン図鑑の中に残っていた映像の中に、『マンタインサーフ』の映像があったからだ。

 

 マンタインサーフとは、アローラ地方のアトラクションのひとつであり、島と島の大海原をマンタインに乗って遊泳し、そのスコアを競う競技である。

 

 若い頃の曾祖父は、このマンタインサーフのトッププレイヤーだったらしく、ポケモン図鑑にはその映像が残されていた。

 

 『スクリューハンテール』や『スクリューサクラビス』、『ランターン360』から『アシレーヌフリップ』、そして最高難易度の『スターミートルネード』まで、難なくこなしていた。

 

 サメハダーやホエルコ、さらにはホエルオーまで泳ぐ大きな波の上を、マンタインとともに美しく滑るその姿は圧巻だった。

 

 そしてその映像を見たうすチュウが、自分もやってみたいと目を輝かせてアピールしてきたのだ。

 

 うすチュウにこんな危険なことができるわけない———そう最初は思っていた。だが、一緒に過ごすうちに徐々に明らかになってきた彼女のタフさが、その考えを否定した。

 

 幸いにも、曾祖父のポケモンである波乗りピカチュウが残したサーフボードが屋敷に残っていたこともあり、僕はうすチュウのお願いを聞き入れた、というわけだ。

 

 最初はサーフボードに乗ることすら困難だったうすチュウだが、一時間もすれば安定して乗れるようになり、さらには自分から波に突っ込んでいくようになっていった。

 

「ピッカピィ〜〜♪♪」

 

「おお、なんて美しい『アシレーヌフリップ』」

 

 もしかして、曾祖父の波乗りピカチュウよりも才能があるのではないか。そう思うほどに、うすチュウはサーフィンのセンスの塊であり、桁外れのタフさを持っている。

 

 そして僕は、楽しそうに波乗りをするうすチュウの姿をポケモン図鑑で撮影する。

 

 僕は毎日、うすチュウとの思い出をこのポケモン図鑑に残している。気分はまるで、ポケモンと旅をするポケモントレーナーだ。

 

「ピカピ〜♪♪」

 

「おー、ちゃんと撮れてるよー」

 

 こちらに手を振るうすチュウに、僕も手を振り返す。

 その姿を見て、やっぱりうすチュウはかわいいな、と改めて実感するのだった。

 




「いきますよ〜♪♪ それっ♪♪」

「おぉ!! すごいのう、うすチュウ!」

「うふふっ♪ 実はわたくし、なみのりが得意なんですの♪」

「ワシはこう見えて水が苦手だからのう……自由に海の上を移動できるメタモンやうすチュウは羨ましいわい。にしても、なみのりが使えるピカチュウなど珍しいのう。誰かから教わったのかの?」

「うーん……教わったというより、自分で身につけたような気がしますわ♪ 誰かを喜ばせようと思って……まあ、よく覚えていないんですけどね♪」
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