なんか、色が薄いピカチュウを見つけたんだけど   作:ぽこちー

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夢のつぼみ

 

 『あなた』が奏でるギターの音と、『あなた』が歌う歌は、不思議とわたくしの心を落ち着かせます。

 いえ、わたくしだけではありません。

 

 『あなた』の歌を聞いた野生のポケモンたちも、ぞろぞろとわたくしたちを囲うように集まり、気がつけば小さな音楽会が開かれていました。

 草のざわめきと、遠くで鳴く虫ポケモンの声さえも、まるで伴奏のように優しく響いています。

 

 『あなた』の奏でる音楽に、ポケモンたちは身を任せながら、思い思いに鳴き声を重ねています。

 

 夏が終わり、徐々に冷たくなっていく世界の中心で、『あなた』はまるで太陽のように、美しく輝いています。

 淡い月明かりの下でさえ、その温もりは確かに感じられました。

 

 いつまでも、この時間が続けばいい。

 そう思ってしまうほどに、満ち足りた、幸せなひとときでした。

 

 また一曲歌い終えた『あなた』は、集まったポケモンたちに優しく語りかけました。

 

『小さなお客様、僕の歌はどうだったかな?』

 

「さいこうだった!」

「とってもこころがポカポカするー!」

「もっともっとききたいー!」

 

『そっかそっか、喜んでくれて僕も嬉しいよ。……うすチュウも、楽しんでくれたかな?』

 

「———えぇ、もちろんです♪」

 

『……よかった。実は、人に見せるのは初めてなんだ。まぁ、キミたちは人じゃなくてポケモンなんだけどね。拙い部分もあっただろうけど、みんなが喜んでくれたなら良かったよ』

 

「いえ……拙い部分など、ありませんわ。『あなた』の優しさが、たくさん伝わってくる、とっても素敵な歌でした♪」

 

 そう言うと、『あなた』はわたくしの頭を優しく撫でてくれます。

 

 暖かい。

 とっても、とっても。

 心の奥底まで、じんわりと満たされていくように。

 

『それじゃあ、次の曲が最後だよ。今までとは違い、少し寂しい曲だけど許してね』

 

 次が最後の曲だと聞き、ポケモンたちは少し残念そうに顔を見合わせました。

 けれど、『あなた』が歌い出すと、みんな自然と静まり返り、その声に耳を傾け始めました。

 

 

 

『あおい あおい しずかなよるには』

『おいら ひとりで てつがくするのニャー』

 

 

 

 それは、孤独や哀愁がにじむ歌でした。

 一人、静かに月を見上げながら、何かを想い続ける———そんな情景が浮かびます。

 まるで、『あなた』自身の心を映しているかのように。

 

 

 

『おつきさまが あんなに まるいなんて』

『あんなに まるいなんて あんなに』

『せかいの どんな まるより まるいニャー』

『せかいの どんな まるより まるいニャー』

 

 

 

 『あなた』の歌を聞いていたポケモンたちは、次第に身を寄せ合い始めました。

 家族と、友達と。

 自分は一人ではないと、確かめるように。

 

 けれど、『あなた』に寄り添うポケモンはいませんでした。

 

 歌詞のとおり、『あなた』は孤独に月を見上げながら、静かに歌い続けています。

 

 だから———

 わたくしは、そっと『あなた』に寄りかかりました。

 

 『あなた』の孤独を、ほんの少しでも拭うために。

 『あなた』は一人じゃない。

 わたくしが、ここにいますと。

 

 すると『あなた』は、少し驚いたようにわたくしを見つめ、やがて柔らかく微笑みました。

 そのまま、途切れかけた歌を、もう一度紡ぎ始めます。

 

 

 

『ひとりきりが こんなに せつないなんて』

『こんなに せつないなんて』

『こんなに』

 

 

 

『いまごろ みんな なにして いるのかニャー』

『いまごろ みんな なにして いるのかニャー』

『だれかに でんわ したくなっちゃったニャー』

 

 

 

 孤独を抱えたその歌声は、秋の澄んだ夜空へと、静かに溶けていきました。

 まるで、届くあてもない想いが、月へと吸い込まれていくかのように。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ユメは いつか ホントになるって」

「だれかが歌って いたけど」

「つぼみがいつか 花ひらくように」

「ユメは かなうもの」

 

「———」

 

「———こんばんは、メタモンさん。今夜は、お月様がとても美しい、素敵な夜ですね♪」

 

「———?」

 

「眠れない……というわけではありませんわ。ただ……このお月様を見ていると、不思議と歌を口ずさみたくなってしまうんです♪」

 

「———?」

 

「素敵な歌、ですか。ありがとうございます♪」

「……メタモンさんには、会いたい人がいらっしゃるんでしたよね?」

 

「———!」

 

「実は、わたくしもなんです。わたくしにも、メタモンさんと同じように、大切な人がいる……そんな気がするんです」

 

「———」

 

「ありがとうございます、メタモンさん♪」

「メタモンさんも、きっと会えるはずです」

「その人を想い続けていれば、きっと、いつの日か———」

 

 

 

『夢の つぼみは』

『つぼみの ままだけど』

『すこしづつ ふくらんで きてる』

『そんな 気がするよ』

 

 

 





子供の頃はそんなに気にしていませんでしたが、大人になると分かるポケモンの主題歌の歌詞の良さ。
この小説も、そんなポケモンの主題歌を聴きながら書いております。
選曲で世代がモロバレだと思いますが(笑)
これでも私はダイパ世代なんですけどね(笑)
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