過去に戻ったので、破滅する推し箱の未来を変える。   作:匿名

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#034 みなしごエンドレスキングダム

「ようこそ。俺の名前はみなしごエンドレス。そのうちVNIVEARTHの王になる男だ」

 

:そのうちw

:もう諦めてそう

:新人どうだった?

:もう話とかしたのか?

 

「新人……うっ、頭が。俺は何も知らない……」

 

:草

:目を背けるな

:お前の背中を見て頑張った後輩だぞ

 

(みんな)は今日、どうだった? 楽しいこと? (つら)いこと? いっぱいあるよね。俺もそう」

 

:俺 も そ う

:悲しいなぁ

:なんでいつも20時からなのに今日はこんな時間なんですか?

:遠藤はときどき19時に配信するぞ

:新人は?

:お前の自称嫁を認知しろww

 

 新人への言及をスルーしながら、普段の雑談配信よりも遙かにずっと他愛のない、中身もないふわふわした雑談をすること10分。

 

「──とまあそんな感じで、明日からも頑張ろうねってことで、今日の配信は終わりかな」

 

:うっそだろお前w

:まだ10分だぞ

:やる気あんのか

:お前月1でこれやってない?

 

「じゃあ、今日はおしまい。明日はいつもの時間に配信するから、また会おうね。出席もとるからな―、ちゃんと来るんだぞー」

 

 驚いたり、呆れてるコメントを無視して配信を終える。待機時間を除けば本当に10分程度の意味不明な配信だった。

 

 するどい視聴者もいる。

 俺は毎月第2火曜日に、いつもより早い時間、中身がなさ過ぎる、生存報告という文字通りの意味しかなさないような短い配信を行っている。

 

 理由は……まあ、ただの自己満足である。

 

 

   *

 

 そして翌日。宣言通りにいつもの20時に配信を始めた俺は、配信が始まってから数分、挨拶もせずに某ちんぽにゃ麻雀をプレイしていた。

 対戦相手はCPU3人。出オチネタのために適当にやるだけなので、特にマッチングなどは避けた。

 

「チーにゃ! う゛ぅ゛……流局ゥ! ノーテン!!」

 

:どうした

:開幕麻雀で草

 

「ポンにゃ! チーにゃ! ……チーにゃ! ロン、役牌のみだにゃ!」

 

:ゴミ手

:カス

:クソ安牌麻雀

:意気地なし

 

「チーにゃ! ポンにゃ!! フリテンにゃ!」

 

:草

:適当すぎて笑う

:荒らしですか?

:段位戦でこれやられたら害悪だわww

 

「う゛ぅ゛……(みんな)の中に、俺の声と新人の拳藤(けんどう)正義(せいぎ)の声でMADを作った奴がいるな……? くそぉ……好き勝手しやがって!」

 

:あれかwwww

:見た

:作者GJ

:ネットのオモチャだねぇ

:遠藤;;

 

 俺の茶番ボイスに、コメントが察する。

 

 先日、VNIVEARTHからは三期生の華々しいデビュー配信が行われた。その様子は……あー、えーと、とても個性的だったね。

 

 そしてボクサー男子高校生ライバーである拳藤正義だか拳藤ジャスティスだかジャスティスパンチ拳藤だかの配信から、『シュッ……シュッ……』というシャドーボクシング時の発言が切り取られ、俺の迷発言というか珍発言である、『ちんぽにゃ』と組み合わされ、30秒の雑なMAD動画が投稿された。

 

「下ネタは駄目だろ……っ! ライン越えだ……っ!」 

 

:見てクソ笑った

:天才の発想

:┌(┌^o^)┐

:初コラボのネタができたじゃんww

 

「誰がちんぽシュッシュだ……! ふざけやがって……!」

 

:言うなよww

:通報した

:まずい

:えー、BANです

 

「こんなのでBANされるかよ。はい和了(アガ)れませんでした! フリチンにゃ!」

 

:誰かこいつを止めろw

:くっそ汚い配信

:遠藤こわれちゃった

:頑張って調整してたモデルで好き勝手されて脳が破壊された男

:出席とらないんですか?

 

「出席ぃ!? ……そんなの後だ! 俺は旅に出るぞ!!」

 

【傷心中】俺は旅に出るぞ!【みなしごエンドレス・VNIVEARTH】

 

 今回の配信タイトルである。

 

 完全な茶番回として、今日の配信は計画されている。

 三期生が俺の想定を遙かに超えてはっちゃけちゃったので、俺もまあ対抗してじゃないんだけど、それなりにはっちゃけて三期生の異常性を軽減し、ついでに土曜に予定しているコンプラ配信コラボの宣伝をするのが目的だ。

 

 あるいは、俺への扱いがぞんざいすぎるぞという杞憂民が三期生を責めないために、俺をいじっても別にまあええかという空気を強くする意図もある。

 

 純粋な俺のファンってやつがいるとして、俺を気遣ってくれるのはありがたいし嬉しいんだけどね。俺はVNIVEARTHのためならいくらでも道化になるし、どんな誹謗中傷でも俺だけに収まるならそれでいいと思ってVtuberになっている経緯があって。

 

 他のVNIVEARTH所属ライバーが伸び伸びとやる上で、俺が良い踏み台になるならそれが一番望ましい。

 俺はあくまで、社長と同じ気軽に叩いてネタに出来る対象でいいのだ。

 

 俺は麻雀のタブを消し、某サンドボックスクラフトゲームのタブに移行する。

 神海(しんかい)まりもの管理するVNIVEARTHサーバーにログインし、そのロード中のタイミングでゲーム画面を配信へ共有する。

 

:え、何?

:マイクラ回だったか

:旅ってそういうことね

 

 読み込みが終わり無事サーバーに降り立つのだが、そこは室内だった。そこまで広くない四角形の部屋。至る所にチェストが置かれている。

 

「……知らない天井だ」

 

:知らない?

:勝手に改造された?

 

 そもそも俺は前回プレイした時は、その辺の適当なところにベッドを設置してログアウトした気がするんだけど、違ったかな。

 パソコンに向かいすぎて記憶が朦朧としているのかもしれない。

 

 俺はとりあえずこの旅に出る茶番を続けるために、外界への扉を出たのだが──

 

 ──周囲の地面は全て、真っ赤に染まっていた。

 

「えぇ……? 何これ……」

 

:マグマかこれ

:www

:どこに住んでるんだよ

:こんなの暑さで死ぬだろ

:お前こんなところで寝たのかよww

 

「いや……知らない……。俺は前回の箱コラボで死にまくったあと、その辺でベッドの作り方だけ調べて寝たはず」

 

:そういえば死にまくってたわ

:???

:調べれば作れるんだ、偉い

:すぐに作れなかったぺすへの侮辱か?

:ぺす……

 

 俺がなぜかいた小屋。そこは周囲より数マス分高くなっており、周囲の地面が全てマグマになっている。当然こんな過酷な環境に家を建ててセーブした記憶など無い。

 というかここまで辿り着けない。

 

 俺がガチ困惑をしていると、その答えはコメントに提示された。

 

:これまりもが作ってたやつじゃんwww

:草

:そういえばずっと無言でマグマ汲んでたわ

:無言なのはいつも定期

:じゃあ室内に看板ありますよ

 

「看板がある……?」

 

 コメントに誘導されるまま、俺は小屋内を見ると、大量のチェストに紛れて看板があった。

 

 みなしご

 エンドレス

 マグマからの

 大脱出!

 

 え、俺知らないんだけど。

 なんか勝手に企画作られてる。

 

「俺、全てから逃げ出して、広大なマイクラ世界を旅しようと思って、ログインしたのに……」

 

:笑う

:先輩からの洗礼だなww

:そういや先輩じゃん

神海まりも:先輩だぞ敬えー ٩('ω')وヤキソバパン カッテコイヤ

:来るの早い

:遠藤がマイクラやってたら教えてって言ってたから配信にコメしてきた

:有能

:よくやった!

 

 神海まりもは好き勝手に長時間配信してるから、他ライバーと被ることも多い。どうせ喋らない配信だし、被っても問題ないという判断だ。

 こうしてフットワークも軽いから、その辺は好きにさせている。

 

神海まりも:チェストに食糧入れておいたから

:やさしい

:苦労して集めてたもんな

:偉い

:先輩の鑑

 

「えーっと、本当だチェストにぎっしり……ってこれ全部わかめだ!?」

 

 部屋内にキモいくらい並ぶチェストには、【乾燥した昆布】が敷き詰められていた。俺はそれを引き出し、食べながら文句を言う。

 

「こんなんじゃ腹は膨れないだろ……塩分過多で死ぬわ」

 

:鬼畜ww

:感謝しろよ

:でもお前普通に餓死するじゃんw

神海まりも:じゃ、脱出頑張って (☞ ՞ਊ ՞)☞ Yo!

:草

:昆布生えるわ

 

 改めて外を見れば、足場にできそうなブロックが所々に設置されている。それぞれ1マスずつ。これを俺のキャラコンで切り抜けろと……?

 

 神海まりもも、なんでこんな面白い企画黙って1人で作ってるんだよ。こいつ喋らないくせに、やたらとエンタテイナー気質なの、なんなの。

 

「まあ俺でも知ってるさ。こういう時、ベッドを壊して自害すれば初期ポイントに戻れるって」

 

:逃げるのか?

:せっかくまりもが夜なべして作ったのに

:先輩の努力を無駄にする気か!!

:見損ないましたジャスティスパンチのチャンネル登録外します

 

「……やったらぁ! やってやんよ!」

 

 茶番。そして俺は神海まりも製のマグマアスレチックに挑むことになる──

 

 

【Endlessは溶岩遊泳を試みた】

 

【Endlessは溶岩遊泳を試みた】

【Endlessは溶岩遊泳を試みた】

【Endlessは溶岩遊泳を試みた】

【Endlessはこんがりと焼けた】

【Endlessは溶岩遊泳を試みた】

【Endlessは溶岩遊泳を試みた】

【Endlessは溶岩遊泳を試みた】

【Endlessはこんがりと焼けた】

【Endlessは溶岩遊泳を試みた】

【Endlessは溶岩遊泳を試みた】

【Endlessはこんがりと焼けた】

【Endlessはこんがりと焼けた】

 

:死に過ぎで草

:いや普通に難しいよこれ

:みなエンがんばえー

:Dieジェスト

 

「うぅ……俺は傷心中で、マイクラに旅をしにきただけなのに……、どうして……」

 

:草

:かわいそ♡

:もうベッド壊そうよ……

 

「どぼじで……どぼ、どぼっ、……。ドウシテコンナコトニナルンダヨッ!!!」

 

:シンジ?

:カイジができなかったからってシンジに逃げるな

:草

:似てはない

 

 おお、ちゃんと突っ込んでくれる。良いリスナーだなぁ。

 

「ミサトサンハイツモソウダッ!! イツモイツモカッテナコトバカリイッテ、ボクニムチャナコトバッカリサセテッ!!」

 

【Endlessは溶岩遊泳を試みた】

 

:言いながらしぬなwww

:とばっちりを受ける女上司

 

 そして俺は20分ほどかけて、脱出に成功した。何気にちょうどいい時間経過でもある。

 

 クリア地点には小屋があり、そのドアを開けると──

 

「──いや馬鹿お前、馬鹿!! 馬鹿!!! 何やってんだまりもォォォオオオッ!!」

 

 夢の国の住人ネズミの顔が、映りかけるという罠まで仕込まれている徹底っぷり。一発で全身が映らないのは、完全に配慮した確信犯である。

 事前に伝えておけよこんな手の込んだ企画。ベッド破壊で逃げてたらどうするのさ。

 

「よく見たらこれ、耳ないし、たこぶえだわ。じゃあセーフか……? いや駄目だろ」

 

:たこぶえかよww

:たこぶえ?

:ググレカス

:わからないから映してください

 

「いやぁ、映せない、かなぁ……」

 

 

 命からがら、まりもアスレチックから脱出した俺は、気ままにVNIVEARTH鯖を放浪した。

 

「ここがあの詩星(うたいぼし)せるりのハウスね……」

 

 俺がまず辿り着いたのは詩星せるりの拠点。VNIVEARTH二期生、未来の歌姫こと彼女がまあ初心者ながら頑張って作った、少し大きめな家である。

 

(みんな)どうする? 少しだけ……物色していく?」

 

:はいアウト

:通報した

:ふざけるな入るな

 

「でも(みんな)も気になるんじゃない? チェストの中に何が入ってるかとか……」

 

:それは……

:ダメーっ!

:それ以上踏み込めばお前を殺す

 

「ははは。入らない入らないって」

 

 適当にコメントとじゃれながら、次の目的地へ。

 さて、ここには我らがVNIVEARTHの頼れる姉御、萬屋ぺすとの拠点があるはずなんだけど──

 

 ──そこには、真四角のシンプルな小屋があった。

 

:ぺす;;

:豆腐建築じゃんww

:ぺす俺はずかしいよ……

:ちゃんとブロックの色は統一したので褒めてあげてください

 

「機能美に、優れていますね。どうする? 中に入る?」

 

:ふざけるな

:お前の家を燃やすぞ

:会社を燃やしに行く。住所は把握している

:公式サイトに書いてあるからね

:社長と一緒に灰にしてやる

:でも入ったところで……

:取るものとかないよ

:ぺす……;;

 

感染者たち(萬屋ぺすとリスナー)の愛が深いのか、馬鹿にされてるのかもはやわからないぞ。

 

神海まりも:私の家に来てもいいよ ( 'ω')و ウェルカム!

:まりも!?

:男を招き入れる!?

:遠藤テメェ!!

 

「神海まりもの拠点はもう素人には辿り着けない場所に要塞が建築されているので、絶対に行きません」

 

:草

神海まりも:(’・ω・‛) ソンナー

:仲間外れにするな

:まりもがかわいそうだろ

 

「佐土原恭子は……。あの人、自分の枠でやってないんだよね。ベッドを作ったかさえ不明」

 

:誰?

:キョーコちゃんだぞ

:一期生

:おばあちゃん……

 

 

 現状のVNIVEARTH鯖を軽く見て回った俺は、MAPの左端の未開拓の地にある山の上で1人黄昏ていた。

 そして俺はこの配信の茶番を終えるために、胸中を吐露するように語り始める。

 

 情けない声で、わかりやすくコミカルに演出していく。

 運営は軽率に叩いていいもの。そんなプロレスができる空気を浸透させるよう努める。

 あくまでネタとして気軽にボコボコにしていいものとして映るように持っていくのが理想だ。

 

「……三期生がさ、俺の頑張って調整したモデルでさ、あんな配信、しちゃったんだよね」

 

:草

:あ ん な 配 信

:笑うわ

:傷心中です

 

「俺のせいだってお前ら言うんだけどさ、まあ、うん。そうなんだよね……」

 

:自覚ありwww

:お前のせいだぞ

:責任を取れ

 

「今日だって、ログインしたらマグマ地獄になってるし、なんにもうまくいかねぇや……」

 

:悲しいね;;

:頑張れ!

:もっと踊るんだよ、愉快なダンスをなァ!

:鬼かw

 

 まだまだ生成されたばかりで開発が進んでいないマップを見渡す。

 

 三期生が増えて、四期生も直にデビューする。ここから見える風景も、時と共に変わっていくのだろう。

 いや、変わっていくのだ。

 

 このサーバーが変化していく様を(みんな)で見届けていけるように、俺は尽力していく。

 

 貰い物の乾燥した昆布(わかめ)を食べながら、俺は呟く。

 

「そうだ、ここに国を創ろう。みなしごエンドレスキングダム……」

 

:???

:キングダム!?

:また変なこと言ってて草

:み な し ご エ ン ド レ ス キ ン グ ダ ム

 

「ここ一帯を俺の国にする。俺がこの国の王だ」

 

:マジで何言ってんだww

:壊れちゃったね

:今日キチゲ解放か何かの日?

 

 俺は国の(いしずえ)として、そこに一軒の小屋を建てた。

 機能美に優れた、これ以上なく整えられた完璧な設計。シンプルな正方形の建築物。

 

:豆腐じゃねーかww

:小学生かな?

:ぺす……;;

:お前もそのレベルかよw

 

 コメントをスルーして無言のまま小屋の上に看板を立てる。

 

 みなしご

 エンドレス

 キングダム

 

「さて、出席をとるぞー」

 

 茶番を終えた俺は、黒子宮などのいつものメンバー(いつメン)を呼んだりして、恒例の点呼を消化した。消化したと雑に言っても、ちゃんと1人1人大事に呼んでいる。

 

 俺の配信に継続して来てくれる、大事なリスナーだ。

 

 雑談を挟み、1時間が経とうとする頃にはまた次回の点呼へ向けて挙手を募る。

 

 ──そのときだった、いつメンに紛れて、なんか違う名前が挟まる。

 

:ノ

黒子宮:ノ

:ノ

:ノ

:いつものやつ~

:ノ

黒宮院みやみ:ノ

:ノ

:!?

:今何かいたぞ!?

 

 なんでお前がいるねん。

 

「あー、何も見えませんでした。引き続き挙手してください」

 

:草

:お前の妻だぞ、認知しろww

:みやみの夫は俺らだが??

 

「今週の土曜日は新人コンプライアンス研修があります。そのときに彼女とはちゃーんとお話をしましょう。配信場所は拳藤正義のチャンネルです。お楽しみに~」

 

 俺はコラボの宣伝をして、配信を終えようとする。

 

 

【Endlessは餓死した】

 

:草

:昆布ってそんなに回復しないもんな

:出席取ったせいで飯食い忘れて死ぬ教師

:こんな配信をした男がコンプラを教えるのか……?

 

【誰のビジュアルを先に見たい? VNIVEARTH人気投票!!】現在公式Tvvltterにてシルエット画像を公開中。4期生デビュー後に内容が明らかになりますが、これは制作途中のラフ段階のものです。そこで、本アンケートの結果に基づいて完成させる順番を考慮いたします。皆様の推しにぜひご投票ください!(※なお一期生については、本編では未改修のためネタバレが含まれます)

  • 萬屋ぺすと
  • 佐土原恭子
  • 神海まりも
  • 詩星せるり
  • 遠藤
  • 黒宮院みやみ
  • 拳藤正義
  • 波羅劾ざくろ
  • 4期生の2人目
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