「第1回、
イェーーーー!」
「キャーーーー!」
「うおーーーーーー!!!」
配信開始の時間になったのを確認した俺は、完全にMC面してタイトルコールを行った。
多少のラグがありつつも、3人の声が重なる。拍手も3人分で
このコラボ配信が行われているのは
俺のPCで拳藤正義のアカウントにログインして、俺が配信の管理をしている。
俺の切り抜き師アカウント『頸椎』で切り抜きをしちゃったことにより、例のごとく登録者数が膨れ上がって今は400に届きそうな彼。
こうして視聴者の導線を引くことで、拳藤正義というVTuberが受け入れられて行く助けに少しでもなればと思ったんだけど、2回目の配信でも別に叩かれてなかったし、杞憂だったのかもしれない。
配信画面には、こんな時のために作っておいた教室の背景素材が使用される。
画面の上半分を占める黒板、中心に教卓。ライバー3人の姿が並ぶ。
「ようこそ。俺の名前はみなしごエンドレス。VNIVEARTHの王になる男──
──そして!!」
「はぁ~い! 雅の国からお邪魔いたします♡
本日は
そして~?」
「えっ、え、ええっ!? えっ! え? ええぇ!??
お、おお……お! お前の鼓膜にジャスティスパンチ!!
:wwwww
:なんだこいつら
:みやみそんな挨拶じゃなかっただろ
:無礼講ブレイク?
:どう見ても無茶振り
:鼓膜にジャスティスパンチ!?
:チャンネル主が好き勝手やられてんの笑う
なんとなく打ち合わせにない無茶振りで挨拶を振ってみたのだけど、俺も黒宮院みやみのこの挨拶は初めて聞いたわ。
木曜日にやってた2回目の配信じゃそんな変な口上じゃなかっただろ。
「そして。──ようこそ、私の名前はみなしごフォーエ──」
「はーいコンプラ研修でーす!! はーーい!!」
勝手に出てこようとした4人目を、大声を出して強引に阻止する。当たり前のように一人で二役してくるのはずるいだろ。
くそ……悪ノリしかしてこねぇ……。
「そしてオレの名前は
ジャスティスパンチ!!」
「お前もなんかーい……」
:草
:ただの漫才集団w
:たまにやる遠藤のクソ情けない声好き
:ボケが多すぎてツッコミもしなきゃいけない男
:コントかな?
気を取り直して、司会として企画の進行に努める。並んだ3人のライバー、中心は俺、みなしごエンドレス。教卓の向こうに立っているように配置してある、教師役だ。
それを挟むように、三期生の黒宮院みやみと拳藤正義が画面の手前側にいるような位置取り。
「はいはーい。じゃあ、始めるぞー。準備はいいかー?」
「はぁーい♡」
「はーーーい!!」
:中学生みたいなノリ
:小学生だろ
:学級崩壊
:生徒がこっち向いてるもんな
「あぁーん? 生徒が後ろ向いてるだぁ~? 細かいことコメントする生徒は放課後に居残り補習させちゃうぞ~?」
:は?
:クソ教師
:PTAに報告します
「しょうがないにゃあ。待ってろ……。これでいいか?」
俺は事前に用意しておいた背景画像に切り替える。
教室の後方を映したイラスト素材。つまりは教師目線で、新人2人が自然と正面を向く構図となる。
そして中央に俺の背面画像を大きいサイズで置いて、画面の7割を埋め尽くす。
:邪魔!!
:消えろよ
:俺らがお前の後ろにいるってどういうこと
:つかお前背中の立ち絵があるのかよ
あるのだ。入社するときに伊能凛へ提示した素材としてちゃんと描いている。
それの色を変えただけだし、流石に動かないただの画像だが。
「さあ選んでいいぞ。3人全員が正面を向いているか、俺の背中だけを見るか」
:3人正面で
:全員こっち向きがいい
:お前が消えればいいのでは
「というわけで、最初の構図に……戻しまーす。教師目線を断念した理由を実演してみました」
「みました~」
「み、みましたんだ!」
:拳藤くんかわいいね
:ジャスティスパンチ拳藤だぞ
:バケモノ2人に振り回される一般人の図
「では生徒のお二人。なんで呼ばれたかわかりますか?」
「はぁ~い」
「は、ハイッ!」
元気よく挙手する2人。Live2Dの腕は動かないけど、声と笑顔で伝わってくる。
「はい黒宮院みやみくん」
「私との──結婚式、ですよね」
……!?
「6月15日本日
「違いますもう帰ってください」
「冗談ですよぉ~♡」
:イチャつくな
:みゃみ嘘だよな……?
:尻軽女
:俺らと結婚するんじゃないのか?
:みゃみ;;
2回目の配信であざとさのバーゲンセールをしておきながら、見事に固定ファンを仲間につけている黒宮院みやみ。こいつ無敵か……?
登録者数は1400。なんであの配信内容で
切り抜き投稿済みなのは同条件として、VNIVEARTHという箱の知名度が向上したことは大きな差異なんだけど、そもそもの
ちなみにファンネームは『
読みが一緒だから実質『推しと結婚しているようなもの』らしい。意味がわからない。
「実家の都合で、将来VNIVEARTHの王になるみなしごエンドレス様に嫁ぐことになりました。
阻止するために、全員で結婚式に乗り込んでちょっと待ったー!! してくださいね♡」
:わかった!
:ちょっと待った!!!!
:行くぞ!!
:遠藤死ね!!!
「なんだその地獄みたいな結婚式。
はい、呼び出した理由はそんなんじゃありません。では次、拳藤正義くんどうぞ」
「あれ、えっと、すいません待って、……どれだ?」
:多すぎてわからなかったかー!
:パンクしちゃった
「時間切れでーす。むしろ全部じゃないか? 拳藤正義くん」
「す、すいません……!」
:パワハラ
:後輩いじめるな
「いじめてないいじめてない」
「そうですよぉ♡ 私の夫はそんな人じゃ──」
「むしろ俺がいじめられてるだろこれ」
:草
:威厳、なし!
まだまだ男性VTuberの立場が危うい2019年。変にいじられなくてネタにもならないよりは、ある程度は道化になるポジションの方が親しみやすいし、切り抜きなども作られやすい。
その意図を汲んでか、なんかもう驚くほどぶっこんでくる黒宮院みやみ。俺はありがたいくらいだけど、逆に彼女の活動に支障が出ないか心配になる。
俺の事より自分のことを優先していいんだぞ。
「はぁ~。今日VNIVEARTH三期生が招集されたのには理由があります。それはひとえに、2人の配信に問題があったからです!」
「ええ!?」
「そんなー!!」
:なんだこの茶番ww
:全員白々しくて草なんだ
リスナーがコメントを送信する時間を考慮して、少しだけ間を開ける。
どんなに面白いことを言ったとしても、見ている人に伝わらないのでは意味がない。配信者というのはただ何も考えずに喋るだけではなく、伝えることを意識しなければいけない。
意識して溜めを作り、ネタが効果的に作用する様に発言のタイミングを見計らって、放つ。
「まず初めに言わせていただきますが──
──デビュー配信で、勝手に名前を変えないでください!」
:お前や!!
:お前じゃい!
:これはひどい棚上げw
:鏡見たことある?
コメントが俺のボケへのツッコミで染まる。
「すみませぇん……。しょんぼり」
「で、でも遠藤先輩、遠藤先輩も──いえ、なんでもないっす」
「俺は、いいの。ちゃんと社長にも事前に色々やりますって言ってあったし」
:横暴
:草
:……色々?
:後輩いじめの図
:┌(┌^o^)┐
「だいたいなんだ、『紫式部フォーリンダウン』、『みなしごフォーエバー』、『ジャスティスパンチ拳藤』。変な名前ばっか名乗りやがって」
:お前や!!
:お前の影響だろ絶対
「二期生には『みなしごエンドレス』なんて意味不明な名前の奴もいるし」
:お前だ!
:お前だろw!!
「VNIVEARTHにはこんな奴らしかいないと思われたらどうするんだ」
:お前のせいだろ!!
:お前が言うな!
この
これもまた、黒宮院みやみがやり始めたのを見てすぐに拳藤正義が合わせて、こうなった。
配信が上手ぇ……。同期の間で良い見本になっている。
「社長への殺害予告なんか以ての外だぞ!!」
:だからお前や!
:お前しかいねぇ!
「そうだそうだ! 誰ですかぁそんなことするひどい人!」
「えっ……? だ、誰なんだー!」
ついに野次まで飛ばしだす黒宮院みやみ。またしてもそこへ便乗する拳藤正義。
「なんだァ? リスナーのコメントといい、まるで俺が悪いみたいじゃないか……!」
「そうだーお前が悪いぞ遠藤ー♡」
「えぇっ!? そ、そうだお前だ遠藤ー!!」
:草
:後輩にも責められる男
:お前が悪い
「はぁ〜、しょうがないなぁ……」
なんか普通に名指しで糾弾しだしたのを受け、この辺でいいかと判断。手際良く背景を切り替える。
それは、いつぞやの配信で使った、記者会見の素材だった。
「えーこの度、私みなしごエンドレスは、デビュー配信で名前を偽って配信をしました。
そのことを深くお詫びさせていただきます」
:謝罪会見w
:またか
:茶番
「というわけで、
「コンプライアンスってなんですかねぇ……」
「なんかの、スポーツの名前っすかね?」
:いやお前もかいww
:お前もだけどさwwww
:教師役じゃないんかーい!!
ここまでがこの茶番のオチである。
背景画像を教室へ戻す。そして俺は教卓を降り、拳藤正義の横へスライド。
「まず最初に、特別講師としてVNIVEARTHの頼れる先輩をお呼びしたぞ! 先生お願いしまーす!!」
「──全く、見てられないわね!」
:またかよww
:ぺす!?
:持ちネタ
:草
:デジャブ
「アンタたち、手洗いうがいはしてる? アタシ以外に感染なんて、許さないんだから!
VNIVEARTH一期生、
「やったー我らがVNIVEARTHの頼れる姉御、萬屋ぺすと先輩だ!!」
「キャーー! 萬屋せんぱーい!!♡」
「うおお、これが一期生の大先輩……!」
「そ、それでアンタたち! というか遠藤! アタシは何をすればいいのよ!?」
:!?
:えw
「萬屋ぺすと先輩にはVNIVEARTHの頼れる姉御として俺たち愚民にコンプライアンスを教えてやって欲しいのです。萬屋先輩! このとおり!!」
「それはさっきも聞いたわよ。急に呼び出されても何を話せばいいのかわからないのよ」
:これはひどい
:【悲報】ぶっつけ本番
:無茶振りなのかよww
まあ、これは嘘である。事前に説明したし、段取りや内容は伝えてある。
つまるところ、仕込み。
「じゃあまず教えてあげるわ! アンタたちに必要なのは、ホウレンソウよ!」
「ほうれん草? 猫が?」
「私ほうれん草、好きですよぉ♡」
「健康的っすね」
「そうね、ビタミンやカロテン、鉄分なんかを豊富に含み健康にも良くって──って違うわ!!
報・連・相! 報告、連絡、相談、よ!!
あとアタシは猫じゃなくて
:いや猫だよ
:ぺす……
:自分で書いたんだろ
:自称ヒョウ
「マネージャーから聞いたわ。三期生! アンタたち2人、初配信の予定を伝えるときに名前変更芸をするって言わなかったらしいじゃない!
勝手に暴走したのかと思って焦ったって言ってたわよ!!」
「すみません~……」
「すいませんでした!! 許してもらえるようにオレ、何でもします!!」
:ん? 今なんでもって
:まずい
:パワハラ
:ぺす……
「ああ、ち、違うわ! 違うのよ……!」
「そうだパワハラだ! 二期生代表として三期生を守らねば……。俺ならどうとでもしてください!
俺ならどうにでも殺してくれ! 何度でも殺してくれ! 首を刎ねてそこらに晒してくれてもいい! こいつらだけは!」
「そんなことしないわよ!?」
:迫真の演技
:団長じゃねぇかwww
:ちょっとマイクから離れて叫んでるの笑うわ
:なんでちゃんとリスナーに配慮してんだよ
:何やってんだよ、団長!!
:似てないけどな
「この俺、みなしごエンドレスが腹を切ってお詫び致します……」
:鬼絶の刀w
:?
:ユーフォが作ってるやつ
やべ、アニメはやってるけど、まだそこまでは跳ねてない時期だったか。
「……みなしごなんとか! アンタもよ! 配信に呼び出しておきながら、特に説明のない報連相不足!
運営だからって好き勝手してるんじゃないわよ! 運営ならアタシたちの手本となるように正しい配信のお手本を見せなさい!!」
「わかり……ました」
俺は背景の画像を変更する。
「えーこの度、俺、みなしごエンドレスは、後輩に悪影響を与える配信をしたことを、謝罪させていただきます……」
:またかよ
:茶番
:軽率に謝罪会見を開くな
「また、無責任な出演の要請をしてしまい、萬屋ぺすと様、並びに感染者の皆様には多大な迷惑をおかけしましたこと、お詫び致します」
:そうだ謝れ
:感染者にも謝っている +10点
:俺らも先輩風吹かせるぺすが見れてwinwinや
なお、この茶番のために、打ち合わせをしていないことにするという打ち合わせをしている。
背景を元に戻す。キャラの位置も移動するの忙しいなこれ。
4体も同じ画面に入れるとメモリがやばい。軽快な動作には特化できてないから、さっきから異音を放っている。
「先輩からのありがたい言葉でした。
ありがとうございました!」
「ありがとうございました~」
「ありがとうございました!!!」
「……フフン、いいのよこのくらい。
黒宮院みやみ! 拳藤正義! 今度はちゃんとしたコラボ配信をしましょうね!」
「せんぱ~い♡」
「なんて良い人なんだ……」
いやこの顔見せ程度の出番なのに来てくれるの、本当に良い人だと思う。
……Live2Dの作成、急がないとな。まだver.1.2のまま待たせているし。彼女も新人優先でいいと言ってくれているけど、彼女の努力に早く報いたい。
音声のオフラインとともに、萬屋ぺすとの身体を画面外へ移動させる。
「というわけで、挑戦的な企画をするときは、事前に報告すること。
サプライズ関係で隠したいときは別だけど、それでも判断に困ったときは、マネージャーや他のVNIVEARTHライバーに相談してください」
「は~い♡」
「はい!」
「絶対やっちゃいけないこともあります。
黒宮院みやみくん。絶対に、怪しい薬を使うみたいなことはしてはいけません。いいですか?」
「しませんよぉ~」
「拳藤正義くんは、絶対に、人を殴るような配信とか、してはいけません。いいね?」
「しませんよ!?」
:酷すぎて笑う
:確かにヤクやってそうな配信だけどw
:ジャスティスパンチ!!
:新人を何だと思ってるんだよww
半分ジョークで言っているけど、俺にとってもう半分はジョークではない。絶対にやらないでくれよ、頼むから……。
「あとお姉さんを出演させるのは絶対にダメです」
「し、しませんって。……了解です!!」
:いやそれは許可してくれ
:遠藤無能
:お姉さんもVになるんだよォ!
「マイクも殴らない」
「は、はい……」
:それはそう
:絶対やめてね
拳藤正義のデビュー配信でマイクを殴ったとき、普通に視聴者数減ったからね。
ただし、話題性としては美味しいポイントでしかないという相反する事情。
姉フラと合わせてこの2項目は、配信ではやらない方がいいのに、話題になりやすいシーンだ。俺以外の切り抜きでもそこを使いがちだった。
「あとは基本的に、国籍や人種に触れる話題や、宗教に関係する事柄、これらは進んで取り扱ってはいけません」
:急に真面目になるな
「きのこ・たけのこ論争も不要な火種を生むのでやめましょう」
:真面目じゃなかったわ
「配信中に言ってはいけない表現や単語があるのもわかりますか?」
「オレわかります! 社長を殺す、とかですよね」
「……ほえー。こいつは一本取られた」
俺は無言で謝罪会見に背景を変える。
:またかよww
:何回するねん
「はははは。拳藤正義、配信に慣れてきたね?」
「はい! 遠藤先輩や萬屋先輩、黒宮院先輩のおかげです!」
「私、同期の新人ですけど~」
:お前のような新人がいるか
:遠藤といい、絶対どこかでやってただろ
「ではそんな黒宮院くん、何か思いつきますか?」
「言ってはいけないこと~。先生──あっ。そうでした、みなしごエンドレス様を呼ぶときに使いたい呼び方があったんでした~」
突然、黒宮院みやみが思い出したように切り出した。
「……パパ」
「!!?!?!!!??????」
:!?
:は!?
:み、みやみ……?
:嘘だよな?
「だって、私たちが配信するにあたって、
だから──
──パパ♡」
「こdさydjkfはfvypzんvぉえいvz!?」
コンプライアンス研修はまだ始まったばかりだ……!
後編へつづく……!
【誰のビジュアルを先に見たい? VNIVEARTH人気投票!!】現在公式Tvvltterにてシルエット画像を公開中。4期生デビュー後に内容が明らかになりますが、これは制作途中のラフ段階のものです。そこで、本アンケートの結果に基づいて完成させる順番を考慮いたします。皆様の推しにぜひご投票ください!(※なお一期生については、本編では未改修のためネタバレが含まれます)
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萬屋ぺすと
-
佐土原恭子
-
神海まりも
-
詩星せるり
-
遠藤
-
黒宮院みやみ
-
拳藤正義
-
波羅劾ざくろ
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4期生の2人目