「──パパ♡」
「こdさydjkfはfvypzんvぉえいvz!?」
「~
:どっからそんな声出してんだよw
:地縛神かよ
:コカパクアプww
:みやみ……;;
:コンプラ講習の成果……ナシ!
割とライン越えだろ。お前はもっと自分のファンを大事にしてくれ。
いや違うか? この場合、俺の対処の方が重要か?
俺の配信での
やられっぱなしというのも格好が付かない。ここは少し反撃をしよう。
抵抗をすることで、彼女が1人で暴走してるだけという印象も薄れるだろう。
「黒宮院みやみ、今のもう1回やってくれるか……?」
「えっ? 皆さん聞きましたぁ? みなしごエンドレス様からのリクエストです♡」
:遠藤テメェ!
:何やってんだ!!
:みゃみ……;;
俺はBGMを消す。
「──パパ♡」
「はいオッケーです。ありがとうございました!! これにてクランクアップでーす!」
「えっ」
収録を終えた時のディレクターみたいなイメージで、事務的かつ快活に言ってみせる。
「『
片耳だけにして、寝る前とか疲れた時に聴くといい」
:!?
:天才か
:よくやった!
:遠藤テメェ……!(感涙)
「ひ、ひどい。私はみなしごエンドレス様のためにぃ~……。よよよ(泣)」
「これが、オレの3回目のライブ配信かぁ……」
「ふっ、はははは!」
「ふふふっ。あははははは」
:草
:不憫
:wwww
:悲しいなぁ
急に差し込まれた
たぶん狙ったものじゃないんだけど、この流れのオチを全部掻っ攫っていったようなものになっている。
せっかくなので、大きく笑うことで話のオチとして強調する。彼のセンスゆえの発言ということに仕立て上げてしまおう。
黒宮院みやみも追従してきたんだけど、いや察して合わせてきてるなら、この人すごいな?
「ははは……、で、なんだっけ? そうそう、言ってはいけないことだ。
黒宮院みやみくんが実践してくれました。こんな風に、同僚ライバーを燃やそうとすることを言うのは、やめましょう」
:それはそう
:後輩から玩具にされる男
「ひどいですよぉ……」
「ひどくない」
「今度、専用のを収録してお贈りしますね~」
「やめて……」
:遠藤ッ……!
「まあ本当に送られてきたら
:遠藤さん……!
似たような文字なのにこんなにニュアンスが変わるの、すごいね。
「他に言っちゃダメなこと、わかる人~?」
「はぁい。遠藤さんのさっき言ってた、国籍、人種、宗教への言及ですよね~」
急に真面目になるな。
「そうだね。俺らにそういう偏見がないからこそ、思いついたギャグが無自覚の内にそう受け取られて、炎上に繋がる恐れがあります。
不用意な発言を避けることは、大事なコンプライアンスの1つです」
:なんか普通にコンプラ研修始まった
:まともだ……!?
:狂人のフリをする常識人
「拳藤正義くん、他に思いつくかな?」
「え、えぇ……遠藤先輩の、その、ちんぽにゃ! とかですかね」
:言うなよww
:お前も言ってるじゃんwww
慣れてきたな。味を占めたというか。こやつめ。
俺の想定している、みなしごエンドレスの使い方である。ネタに困ったら好きに使ってくれていい。
まあ、それにも行き過ぎたことを言えば叩かれるリスクが出てくるので、それを見極めるのもコンプライアンスの一環である。
もはや間髪入れずに、謝罪会見の背景に変更。
:またかよw
:茶番
:持ちネタ
:天丼
「……拳藤正義も、謝罪しておく? ちょうど今、不適切発言出たよね?」
「あっ、ずるいですよ! オレ嵌められました!」
配置を移動。拳藤正義を記者会見の中心へ、俺と入れ替える。
「オ、オレは……配信中にみなさんの前で、不適切な発言をしました。お詫びします……。
あとついでに、ジャスティスパンチでみなさんの鼓膜を破壊したことも、お詫びします……」
:つ い で に
:自分の枠で謝罪を強要される男
:はいパワハラ
:拳藤くんノリいいね
「そうだそうだ! 器物損壊罪だ!
あなたはリスナーの鼓膜を破壊しました! 裁判も起こします。裁判所にも問答無用できてもらいます。慰謝料の準備もしておいて下さい!」
「そうだそうだ~♡」
:覚悟の準備をしておいて下さい!
:裁判も起こします!
:刑務所にぶち込まれる楽しみにしておいて下さい!
「ははははっ、勘弁してくださいよぉ~」
背景と配置を戻す。
「まぁたまにギャグとして言うくらいなら大丈夫。でも常に連呼するのは駄目。下ネタは常識の範囲内で言いましょう」
「下ネタに、常識が……!?」
そんなコントのようなじゃれあいを少し続けていると、俺のスマホに通知が入る。
このコラボ配信において、事前にゲスト出演を頼んだのは2人。萬屋ぺすとと、そしてもう1人。
「あ、今日はもう1人特別講師が来てくれます。準備が整ったようなのでありがたお話をいただきます。
VNIVEARTHの歌姫をお呼びしたぞ! 先生お願いしまーす!!」
「はい、お呼ばれしました!」
教壇に立つのは未来の歌姫、青空をイメージしたカラーのツーサイドアップが揺れる。
「配信に来てくれたみんな、初めまして! 初めましてじゃないみんな、いつもありがとう!
:せるりん!?
:意外
「詩星先生、お願いします!」
「あ、はい……」
「その、うん……」
「はい……。あの、あはは……」
「……」
「……」
:wwww
:不仲
:お前ら同期じゃないのかよw
:仲悪いの?
「あ、ち、違うんです! 仲が悪いとかじゃなくって……」
「俺が奇行を晒すのに巻き込みたくなくて、最初は一方的に距離を取ってたんだ。全部俺が悪い……。
俺が悪いんだよ、
:たまに迫真なのなんでw
:勝手に母親食われたことにするな
:お前島の外から来たのか
:プロットアーマータイタン
「遠藤先生、それって先生のホウレンソウ不足ですよね~?」
「そうだそうだ!」
そして俺は背景とキャラの位置を変える。
「えーこの度、みなしごエンドレスは同期にも相談せずに、配信で奇行に及んだことを、謝罪します……」
:もういいよw
:何があっても謝罪する男
:言い終わった瞬間画面直すの雑すぎて笑うわ
もはや手慣れた動きで教室に戻す。そろそろこの天丼も終わりにしよう、リスナーに飽きが見えてきた。引き際の見極めも重要。
「詩星先生からはですね、配信コンプライアンスにおいて大事なことを1つ、解説をお願いしています。
よろしくお願いしまーす」
「よろしくお願いしま~す」
「お願いします!!」
「はい! 私からお話させていただくのは、著作権についてです。
私は歌ってみたの動画を投稿していますが、これはインストがあれば何でもやっていいわけではありません。運営の方が、使用の確認をとってくれています!」
:マ!?
:厳しい
:真面目すぎるだろ
「私たちは企業所属の配信者です! 商業利用になるので、個人配信者とは勝手が違います。
特に一般のアーティストの方の曲は許可を取るのに必要な手順が多く、難しいです。
ボカロ楽曲が多くなってしまうのは必然的で、これは作者の方がカラオケを投稿しているから、というだけではなく、作者さんに直接の連絡を取りやすいからというのもあります」
:へー
:さすが歌姫
「BGMなんかもそうなんだよね? フリー音源として投稿されていても、作者がガイドラインとして営利目的の使用を認めていないこともある」
「はい! 配信に使う素材は、ちゃんと利用規約を確認しましょう……っ!」
「勉強になります~」
「詩星先輩、ありがとうございますッ!!」
勉強になるとか言ってるけど、黒宮院みやみはちゃんと著作権クリアしたMADだけ使ってたあたり理解してる側なんだよね。
普段の
薬、やってないのか……。
「では私は、これで失礼しますね!」
:そんなー
:早い
「ミナちゃんと遊びに行く予定とか立てるんです!
三期生の御二方、頑張ってくださいね! ではではー!」
「ありがとうございました!」
「ありがとうございました~」
「あざますっ!!!」
詩星せるりが退室する。
……いや怖いって。しれっと言い残したけど、なんで1人で遊びに行く予定立ててるの。
「他にも、配信で使用するゲームとかは、出来れば許諾が取れているものを優先して欲しいかな」
:運営がガチすぎる
:これが中堅箱なのか……?
「でもこれはやっぱり、他の箱はそんなに厳しくしてないとかの世論もあるから、厳格な強要まではしないことになってる。
ただアーカイブが非公開になる可能性もあるってことを承知の上、基本的には収益化が通ってもその動画はオフにするとかで、対処してね」
「は~い!」
「わかりました!!」
「モンファンとかの会社のゲームはガイドラインが厳しそうだから、気を付けた方がいいかも。反転判決とかも、やばめ」
普通に消されてたらしいんだよね。2020年とかだったかな。
「アニメやドラマを画面に映して、リスナーと同時視聴なんか絶対にダメだからね。マイクに音が載るのも極力避けること。
BGMに普通の曲とか使うのはもちろんNG。昔の弐コ生なんかじゃありふれてたんだけどね……」
「そうでしたね~」
「そんなイメージあります」
:弐コ弐コは無法地帯だから
:MADが許されてるもんな
:見逃されてるだけ定期
:ほぼ黒のグレーだぞ
「VNIVEARTHライバーの共有クラウドストレージに、使っていい音源とか厳選してあるから、自分で探すの面倒だったらそれ使うと間違いないよ。一部は社内製だし」
:社内製!?
:多彩な箱
「えっ!? それって誰が作ってるんですか!? 遠藤さん!?」
「俺もちょっとは作ってるけど、細かい話は裏で」
急に食い付いてきたな。
俺がVNIVEARTHに入社するために提示した素材には自作BGMも含まれた。それを放り込んだだけで、クオリティはあまり保証できない。
それをピンポイントに黒宮院みやみが配信で使っててビビったのは余談。
「マイクに配信外の音が入るのを気を付けなくちゃいけないのは、著作権の問題だけではありません。はい拳藤正義くん。なぜですか?」
「えっ、オレ!?」
:あっ……
:まずい
:心当たりしかないw
「あっ……、姉がいるって、バレました」
「そうだけど、そうじゃない! 身バレのリスクです。
もしお姉さんが家の住所を口にしていたら、拳藤正義の家は今頃、聖地巡礼の観光名所になっていたかもしれません」
「マジですか……!?」
:そんなわけないだろw
:登録者数10万越えてから言えw
「マジではないけど、でもそんなうっかりで住所なんてバレたくないよね。もしガチ恋勢やガチアンチがいたら、リア凸されるかもしれない。ご家族にはちゃんと説明して理解を得てから配信をしてくださいね」
「私も配信中に遠藤様の声が入らないか気を付けないと。キャッ♡」
「キャッじゃねーよ。隙あらばボケてくるな」
:ガチで同棲してたらリア凸するわ
:俺らがガチアンチになるぞ
:お前を殺す
「それ以外にも、電車の音とか工事の音、特徴的なものは住所特定に使われる可能性があります。それらに対策するのも、企業所属ライバーとして必要なコンプライアンスです」
なにが原因で特定されるかわからないからな。
近隣の住民に有名実況者っぽい声の人がいたとして、その人物の配信中にわざと特徴的な大きな音を出すことで、疑惑を確信に変えることができてしまう。
悪用されたら不味いので、こんな具体的なことは配信上では言わないけれど、すでにVNIVEARTHライバーにはマネージャーとして周知させてある。
これから流行する飲食物の配達事業や、理不尽なところだと選挙カーの演説なんかも、特に気を付けなくてはいけない。
VTuberというか、配信者には危険が多いのだ。
そんなこんなで1時間が経過しようとしていたので、この配信のまとめに入る。
ほとんど漫才をしていただけのように感じるけど、この配信のタイトルはコンプライアンス講習会だ。
「今日の講習で、一番大事なことはなんだったと思いますか?」
「勝手にみなしごエンドレス様で遊ばないこと~♡」
「人を殴らないこと!」
「それも大事ですが──
──一番大事なのは、『相談をすること』」
これは、おそらく。
俺の推測だけど、妄想だけど、あるいは希望的観測だけど。
あの未来で、一番必要だったことだ。
「絶対にやらなきゃいけないこと、と強く念押しします。
やってもいいか判断が微妙な企画、試み。
あるいは、トラブルに巻き込まれただとか。
なにか悩みがあるとか、何でも、些細なことでもいい。
何かあったら、まずマネージャーを頼って欲しい。俺でもいい」
VNIVEARTHを破滅に追い込んだ、彼ら、彼女ら。
しかし実際に関わってみて、大罪四天王とされた誰もが、現時点で根からの悪人だとは思えない。
何か、道を踏み外すきっかけがあったんだと思う。
いいや、あったのだ。俺の願望だったとしても、断言しよう。
そして──
今のVNIVEARTHに、悪人はいない。
「取り返しがつかなくなってからじゃ遅いんだ。
何、少しやらかしたくらいじゃ怒らないさ。ことが悪化する前にまず報告。それでマネージャーや俺が対処をして、事なきを得るかもしれない」
:ガチトーンで草
:これは昔なにかありましたね
:ミスを隠す部下とかだろ
:過去1真面目な遠藤見たわ
「はーい先生♡」
「わかりました!!」
俺にとっては心の底からの頼みなんだけど、まあこの場でこれ以上強く言うのも違うだろう。
なんかこいつ急にそれっぽくまとめたぞって逆にギャグっぽくなった空気のところで、この配信の締めに入る。
「ではこれにて、第1回、VNIVEARTHコンプライアンス研修会を終わりにします!
司会は俺こと、
VNIVEARTH二期生『みなしごエンドレス』!!
そして!」
「VNIVEARTH三期生『紫式部フォーリンダウン』!!
そして!」
「VNIVEARTH三期生『ジャスティスパンチ』!!!」
「以上の3名にゲスト2名を加えて、お送りしましたー!!」
:おいwwww
:コンプラ研修ってなんだったんだよ!
:すでに学級崩壊
「第2回なんてものは、ありませーん!!」
【同期コラボ】第1回 VNIVEARTHコンプライアンス研修会! 【VNIVEARTH】
【誰のビジュアルを先に見たい? VNIVEARTH人気投票!!】現在公式Tvvltterにてシルエット画像を公開中。4期生デビュー後に内容が明らかになりますが、これは制作途中のラフ段階のものです。そこで、本アンケートの結果に基づいて完成させる順番を考慮いたします。皆様の推しにぜひご投票ください!(※なお一期生については、本編では未改修のためネタバレが含まれます)
-
萬屋ぺすと
-
佐土原恭子
-
神海まりも
-
詩星せるり
-
遠藤
-
黒宮院みやみ
-
拳藤正義
-
波羅劾ざくろ
-
4期生の2人目