日付の変わり、7月の27日となった深夜の2時。俺のスマホを振動させた通知は、VNIVEARTH一期生、
概ねの内容は既に文面として記されていた。
まあ、つまりは。
半年で辿り着いた2000という数字を、数日で追い抜かれたことで落ち込んでいるのだ。1週間で5000。萬屋ぺすとの登録者数の、倍である。
「す、すみません、南條さん。こんな時間に……」
「口調は、いつもどおりで大丈夫ですよ。普段の配信のように、気を楽にして喋ってください、萬屋様」
俺は基本的に、マネージャーとしてライバーと連絡をするときには──いや、ライバーとしてもだ、俺は基本的にライバーと連絡をするときには、配信や動画での振る舞いと同じ、ライバーとしての
これは、俺がマネージャーとして全員に頼んでいることで、VNIVEARTHではライバーとしてのキャラのまま連絡を行うことが恒常化している。
通話相手がそのライバーであるとイメージしやすいというのが第一に、また普段からなり切ることによってキャラにより馴染んでもらうためであり、そして配信外での事柄を話題にする際にボロが出にくくするための試みでもある。
ただこの状況においてであれば、また別の側面もある。
「普段の萬屋ぺすと様のように振る舞っている方が、気分が楽になるはずです。病は気から──とは違いますか。ははは。
ともかく、喋り方だけでもいつもの萬屋ぺすと様のものに戻して、少しでも気分を盛り上げましょう」
社会人として常識を持ち合わせたしっかり者というイメージのある彼女が、この深夜の2時に、悩みを打ち明けるメッセージを送ってきた。
この時点ですでに、これが彼女にとって深刻な問題であるのだと推測できた。
心配をかけまいとしているのか、遠慮してなのか、簡易的なメッセージゆえのことか、あるいは夜中に不安になっちゃったので深く考えず文章を作ったのか、真意は不明だが、送られたメッセージ自体はそう長くなく、かなり簡素な文面。
しかし、対策を話し合いたいという名目とはいえ、通話を求める文言があった以上、よほど精神的に弱っているか、あるいは焦っているのだろう。
萬屋ぺすとというライバーが、他の所属ライバーとは異なる、並々ならぬ思いで活動をしていることを、俺は以前、打ち明けられている。
であれば、軽い悩みだと見過ごすことはできなかった。
現に、今から通話でもいいですよとと冗談めかして伝えたところ、本当に相談の通話が始まったのだ。
深夜、常識人、悩みの相談。
俺はマネージャーとして、メンタルケアを優先事項として捉える。
「え、ええ……そうね。聞いてくれるかしら、マネージャー」
「はい。どうしましたか?」
「えっと、そのね。……ええと」
言い澱む。
まあ概要はメッセージにあったが、言葉にして伝えるとなると、また違うのだろう。耐え切れない不安を勢いで送ってしまい、今では後の祭り、のような状況も想像できる。
「何でも気軽に話してください。話しにくければ、ギャグっぽくするのもありですよ」
なんとなく、話しやすくなるように提案をしてみたところ。
「あの、ね、その……ね。……、そうね。
──新人の子に、簡単に登録者数を、越されちゃったのよぉ~!」
やけにコミカルにはっちゃけた声が、スマホのスピーカーから聞こえてきた。
悪いけど、ちょっと笑う。というか笑った。
「はははは……」
「何よマネージャー! アタシは真面目に相談してるのに……」
「すみません。でも、今の口調の方がずっと萬屋様らしくて、楽しそうですよ」
「そうかもだけど……」
口を尖らせる様子が伝わってくる。さっきだって、目を><にしてひんひん泣く姿が思い浮かんだのだ。
この聴き手に表情を想像させる感情表現が、彼女の武器だろう。
悩むことはないのに、とは思う。波羅劾ざくろはギリギリ5000人に届いたところで一旦伸びは落ち着いているし、箱内コラボでリスナーを共有できる分、これからどうとでも巻き返せる。
「萬屋様。悩みは全部、ここで盛大に吐き出してください。そうしたら、いつもの元気な萬屋ぺすと様に戻りましょう。全部聞いて、私も一緒に改善策を考えます」
俺に促され、思うままに愚痴を吐き出す萬屋ぺすとは、どこか楽しそうにも見えた。自分の悪感情を素直にそのまま吐露することは、リスナー相手にも、友人相手にもしにくいことだろう。
けれど、マネージャー相手に、キャラクター演技で語るのならば。
幾分、楽かもしれない。
*
「──やっぱり、ざくろちゃんとキャラ被ってるわよねぇ~!?」
話しやすいようにとそれっぽく相槌を打っていたら、なんだかんだでめそめそしょぼしょぼと1時間以上に渡って愚痴を聞くことになった。
「うぅ~……、アタシのお株がぁ、立場がないわ~……」
なんというか、お酒を飲んだ人の泣き上戸的なダル絡みに近い。
一応聞いたけど、酒は飲んでないらしい。
まあ、酒の席で酒を飲んでなくても、気分だけで酔える人もいるし、そんな感じだろう。
「キャラ被りはあれですか、へっぽこ努力キャラ」
「へっぽこ!?」
「ああ、失礼しました。無自覚に少し抜けた努力キャラですね」
「なにも変わってないような」
「心配ないですよ。萬屋様は姉キャラ。波羅劾様は妹キャラ。対極というか、むしろ相性が良いくらいじゃないですか」
「そうかしら……」
そうなのだ。
同じへっぽこでもジャンルが違うのだ──いやこっちだと似てるか。
同じ努力キャラでもジャンルが違うのだ。
これは需要の奪い合いにはならない。
「今は波羅劾様の補助として女性陣に順番でコラボをしていただいておりますし、今後も同じ箱としてコラボを重ねていくことになるんです。
波羅劾様のリスナーを奪い取るような気概で、いえ、奪い取るは適切ではないですね」
言葉を訂正する。2019年という、VTuber界隈がまだまだ大きくなる前の黎明期に、内輪で争うことなど意味がなさ過ぎる。
特に、数千という数字は後の時代から見ればインフレ前のものだ。この業界にはまだまだ先がある。
争う意識を言外に否定しつつ、効果的な言い回しはないかと少し模索して。
「……そう、脳味噌の半分を萬屋ぺすと様で埋め尽くしてやるという意気込みですね。半分を波羅劾様、もう半分を萬屋様で埋め尽くして、VNIVEARTHの事しか考えられない頭にしてやりましょう!」
「ぶ、物騒なこと言うのね」
「配信では言っちゃだめですよ、コンプラ的に」
「ふふふっ、マネージャーが率先して破っちゃ駄目じゃない」
「私は配信しないから、いいんです。配信で笑い話に使っても大丈夫ですよ」
「考えておくわ」
深夜のテンションは変わりやすい。疲労やホルモンバランスのせいだ。
ネガティブなことを考えていれば、その方向に沈んでいく。逆に面白おかしくしていれば、ポジティブになりやすい。
これで好転すれば御の字。これが冗談にならない空気ならば、それだけ深刻化しているという判断になる。
おそらく、危惧するほどに思いつめているわけではなさそうだ。安心。
「頑張り屋なお二方を同時に推す人だってでてくるはずです。
二期生にだって、最初は抜かれましたが、すでに肉薄しているでしょう?」
「同時推し……そうよね。これまでだって、せるりちゃんに追い抜かれて。アタシはまだ、やれるのかしら」
「はい。むしろこれからです。悩むことはないですよ。後発の方が強いのは、当然の事なんです。VNIVEARTHという箱が大きくなって、注目度が上がりました。これはひとえに、スタートラインの違いによるものです。
その下地を作ってくださったのは、一期生としてVNIVEARTHを黎明期から支えてくださっていた、萬屋ぺすと様の功績です」
「そうかしら……。でも、箱を変えたのはマネージャーたちのチームでしょ?」
「……VNIVEARTHが大きくなったのは、間違いなく『萬屋ぺすと』の功績ですよ」
VTuber『萬屋ぺすと』。そのリスナーを『感染者』。VTuberのリスナーの中でも過激だと分類をされる、中でも熱心な者は半ばカルト宗教のそれであるその集団は、敵と認識すれば社長のように叩きまくるが、コメントのノリは非常によく、仲間にできれば心強い。
「萬屋様が配信で、二期生のデビュー配信を見るように勧めてくださったんですよね。あれがきっかけで、おそらくVNIVEARTHは今のようなコメントをしやすい空気が作られました。
どんなに技術があっても、それを見る人間がいなければ意味はない。言ってしまえば、萬屋様は、VNIVEARTHに意味をくれたんです」
「あれは……違うのよ。アタシは──」
思いがけない話題で、彼女の声に影が差した。
先ほどまではここまでではなかったはずの、俺の危惧していた思いつめた感情が覗いたことに、俺は動揺する。
何が失言だったのか。
原因を考える前に、その答えは示される。
「──アタシはリスナーを、けしかけたのよ。
二期生を応援するためじゃなくって、自分の立場を守るために、アタシのことを応援してくれるリスナーが、アタシの邪魔になる人を……叩くことを、期待して……」
「……」
突然の告白に、驚きつつも、そして数秒の整理を経て、納得もする。
萬屋ぺすと。VNIVEARTH一期生。あの劣悪な環境で放置されていた、いわば被害者。
VNIVEARTHという少ないファンの母数を奪われないように、必死に抵抗するというのは、抗いようのない防衛本能と見てもいいだろう。
最初から様々なものが恵まれている後発のライバーを見て、複雑な気持ちがあるのは、想像に難くない。
俺が彼女のアーカイブに見た、リスナーを扇動するかのような言い回しは、害をなすために意図的に行われたものだった、ということだ。
だがまあ。
そんな意を決したかのような罪の告白に対して申し訳ないが、俺はそれを責めるつもりは一切なかった。
「思いつめることはないですよ。元々気性の荒いリスナーが多いですし。今はそういうこと、しているようには見えません」
「で、でも……」
「問題ないですよ。サブ垢使って他人の配信を荒らしてるとか、匿名掲示板で誹謗中傷してるとかじゃないでしょう?」
「え、あ……。それも昔、やってました……」
えぇ……?
叩くとホコリ出てくるとか、聞いてないんだけど。
あの未来でも、なんか裏でこそこそしてたらしいとは聞いてたけど、実害がそんなにわからなかったし、真偽については確かめていなかった。
「どのくらいの頻度ですか? それは今も?」
「い、いえ、その……す、すみません! 二期生のデビューが決まった頃に、不安に耐え切れず、掲示板に『一期生をほっておいて二期生かよ』みたいなことを書きこんでました」
VNIVEARTHを語るスレ。今はそれなりに書き込みがあるが、当時なんかほとんど動いてないだろう。
むしろ感染者くらいしか書き込んでいなかったようなもので、実質的に『萬屋ぺすとを語るスレ』だった(※今は個別にぺすと専用スレが建てられている)。
なんかすごい罪の告白みたいな雰囲気で喋ってるけど、別にそれくらいなら……。
「う、詩星せるりさんの初配信も、荒らすコメントを、書きました……」
……。まあ、あったけど、俺が普通に非表示にして切り捨ててたし。
「ははは。萬屋様は真面目ですね。正直に報告してくださったこと、感謝します。今後も悩んだことは素直に相談してくださいね」
「……え?」
「問題ないですよ。それがVNIVEARTHに悪い影響を
「い、今は、何も……」
「じゃあ何も問題ありません。萬屋ぺすと様はVNIVEARTH所属ライバーとして頑張ってくださっています。今だってまだモデルが更新されていないのに、変わらず精力的な活動をしてくださっています」
「で、でも……」
「先輩として、他のライバーのフォローもしてくれていますし。頼れる姉貴分として頼りにされている現状が全てですよ」
「それは私のためにもなるからで……」
真面目だなぁ。そんなに、ずっと気にしていたのか。
爆発する前に、相談をしてくれてよかった。
なんとか、完全に気にしない方向にもっていきたいのだけれど……。
「むしろ萬屋様には感謝しかありません。萬屋様が感染者をけしかけてくれたから、多くの人が二期生を見てくれて、今のVNIVEARTHが形成されるまでになる足掛かりとなったのです」
「──で、でも、私はみなしごエンドレスの配信を、スマホ3台で荒らしました!」
「私は5台使って自演コメントしてますよ」
俺のぶっちゃけたこの発言を境として、萬屋ぺすとは無言になる。
反応を待つ俺。
空白の時間。最後の出された情報が、時間に取り残されたかのように浮き彫りとなる。
「……え、えぇ?」
十秒以上が経過して、萬屋ぺすとは困惑の声を漏らした。
「ちなみにですが、萬屋様は自演で
「サクラ……あ、はい。最初のうちは……」
「そうですよね。私もしてました。今でも時々、皆様の配信でしています。自らコメントの方向性を示す、そうでもしないとリスナーにコメントのノリが浸透しないというのが結論でした。大手ではない私たち弱小箱の、生存戦略ですね。
二期生以降、全てのライバーのデビュー配信において。私はスマホ5台、5つのアカウント、でコメントをしています」
「えぇ……」
「他のライバーには、内緒ですよ」
俺は悪戯っぽく言ってみせる。
「これは配信でも言っちゃダメです」
「いや、そうじゃなくて、その、ええ……?」
いや俺も、相手の出した情報に対してもっと大きなもので有耶無耶にしようとしたんだけど、想像以上に、萬屋ぺすとには大きかったらしい。
情報が呑み込めていない、困惑した反応が続いている。
まあ、そうか。俺は事前に、なんか怪しいことしてたらしい未来があると知ってるから、驚きとかがないんだな。
好都合としよう。このまま言いくるめる。
「同じ生存戦略に辿り着いていた。少し嬉しいですね。同じように考えて、同じ結論に至って、同じ戦略を実践していた。奇遇ですね。面白いと思いませんか?
邪道ではありますが、案外これが正解なのかもしれません」
「面白いのかも、しれませんが……」
「というか悪いのは全て社長でしょう。社長がちゃんとしていれば、萬屋様だって不満を抱えずに、後ろめたいことをすることもなかった。そして今はその不満は、私たち社員が改善する。
じゃあもう悪いことは残らないですよね?」
「ええ、えと、はい、そうです」
「では私も安心して萬屋様をサポートできます。これからもVNIVEARTH所属ライバーとして一緒に頑張っていきましょう!
罪悪感があるのでしたら、萬屋ぺすと様がやりたいことをやりたいようにやって、思い描く理想のVTuberとして成功しましょう。自由な活動で結果を残す。それがVNIVEARTHの全体のためになります」
「え、えぇ、ちょっと待ってください、そ、そんなので、いいんですか?」
「口調。口調が戻っています。あれ、頼れる萬屋ぺすと様はどこに行ったんですかね?」
「……ここにいるわよ。ねぇ、アタシは悪い人間じゃないの?」
「悪い人間、ですよ? 感染者なんて熱狂的なファンを生み出してしまって、彼らの人生は滅茶苦茶です。萬屋ぺすとを知る前と後じゃ生き方が違うでしょう」
「そ、そういう話じゃないと思うんだけど」
「私が問題ないと言ったらないんですよ。大丈夫です。二期生は恩恵しか受けていません。遠藤も感謝しています。ですから、そんなことを気にするよりも、萬屋ぺすと様にはやることが沢山あります。
5年後、10年後に登録者100万人の金盾ライバーになるのを目標に、頑張りましょう!」
「き、金盾!? そんなの無理よ!」
「まあ現実的に考えれば難しいですが、今後次第、としか言えませんよ。VTuberという業界は、これからもっと大きくなります。それこそ、今の比じゃありません。
情報化社会が今よりも進んでいくんですよ。VTuberは増えて、VTuberを見る人間も増える。それこそ、学校の話題が『昨日の配信見た?』になる時代が来ますよ」
「そ、そんな時代が来るのかしら……?」
「来ますよ。私はVTuberの可能性を信じています」
未来を、知っているだけだけど。
VTuberが市民権を得ていた未来を、俺は知っている。
VTuberを心の支えにする人間がいたことも、知っている。
「うちの新人がデビュー配信から1週間で5000人登録されたと言っても、某大手に至っては10日で数万人とかいたでしょう」
「いたかしら……?」
何その反応。いないの……?
いないじゃん。パソコンのブラウザで検索して、まだいなかったことに気付く。
例の異常に初動の良かった新人波羅劾ざくろには、後から思えば影響を受けてるなと感じる、似通った傾向の顔立ちのVTuberがいる。
いるというか、いたと思うんだけど、なんというか、まだいなかったというか。
これ、需要の先取りとかにならないよな?
中身のキャラ属性は全く違うし、問題ないと思うけれど。そのライバーと比べれば、たった5000だし。10日で5万だったか。こっちは5000、10分の1だ。
「……まあ、そのくらい市場は大きくなると見ています。1ヵ月で100万になる化物だって出てきてもおかしくないです。
VNIVEARTHは弱小企業なんですから、張り合うにはそれだけ試行錯誤をしないとですよ」
「い、いや、100万は無理よ」
「無理かどうかはわかりません。萬屋ぺすと様なら、30万であれば現実的かと……」
「30万!?」
それからは、夢を見るような前向きな話で、アイデアを出し合った。
「──萬屋様はまだちゃんとしたモデルの作成も控えてますし、そのお披露目でまた爆発的に伸びますよ。というか遅くなってすみません、
8月中には、遠藤の方で小まめにやっている感染者からご意見を募集するのも、まとめを行って、本作成に入りますから。急がせます!」
「そ、そこまでしなくてもいいのよ。実装して伸びなかったらと思うと怖いし……」
「いいえ、絶対に伸びます」
頸椎として切り抜きまとめ動画だって作るし、何が何でも伸ばす。
「──アタシは萬屋ぺすととして、支えてくれるリスナーに元気になってもらえる配信がしたいわね」
「そうですね。萬屋様の長所の1つとして、見ている人が表情を思い浮かべやすいという点があります。
これはおそらく初期の表情がほぼ変わらない低品質モデルでも、リスナーを楽しませようとして試行錯誤した結果だと思います」
「え、あ……そうだったの?」
「ええ。無駄な時間なんてないんです」
「そ、そうなのね……ぅぅ、ぐす……」
「──また明日から、元気な萬屋ぺすとに戻れますか?」
「ええ!」
「何かあれば、私相手に遠慮なく吐き出してください。同僚ライバーにも、リスナーにも話しにくいことだろうと、私は確固たる守秘義務を以ってお聞きして、今日みたいに、改善案も一緒に考えます。
そして次の日にはまた、元気に配信をしましょう!」
「やるわ!!」
「……いや、むしろたまにはリスナーに落ち込んでる姿を見せるのも手ですね」
「えっ!?」
「時々弱みを見せるのも、ギャップというものですね。普段は自信に溢れた頼れる姿を見せて──特にコラボなんかでは、とにかく頼れる姉御として推していきましょう。
それで個人配信では、逆にリスナーに甘えてみる。感染者の方々は、萬屋様の頑張る姿に惚れ込む人が多いですからね」
「げ、幻滅されないかしら。そんな情けない姿を見せて……」
「されませんよ。というかゲーム配信ですでに見せていますからね」
「えっ」
「推しが自分たちにだけ見せる弱った姿。悩んだ、疲れた、どんな名目だろうと、感染者の皆様ならもう狂喜乱舞すると思います」
「いやあの」
というか濃すぎるんだよなぁ。
あそこまで濃いと、配信のコメント欄が独特の空気になりすぎて、逆に新規が入って来にくくなってしまう。
内輪ノリというやつだ。萬屋ぺすとの配信の面白さは感染者のコメントによって支えられているが、同時に感染者のせいで伸び悩んでいるとも言える。
わりと感染者のせいな気もしてきたな……。
こんな改善策の出し合いを続けていると、気が付いたときには朝になっていたのだった。
*
萬屋ぺすとの相談から6時間が経過した。
公式サイトにしれっと追加された項目。そこに思うところがある人物がいた。
土曜日の昼過ぎ。午前から午後に変わった13時。
もう少し惰眠を貪りたいという甘えた思考を振り払おうとしていると、スマホに通知が表示された。
『今後を左右する重要な話があります』
VNIVEARTH一期生、
『バイトしたい ( 'ω')و』
『ダメです』
『固定給欲しい ٩('ω')و』
『ダメです』
『ゲームパッド買い換えたい (ง˘ω˘)ว』
『配信で頑張って稼いでください』
『けちー ('ε' )』
スタッフ募集を見つけた神海まりもが、すごい勢いで食い付いてLIIVEを送ってきたのだ。
当然断る。第一にモデレーターや雑用なんかで彼女を消費するのは惜しい。それに、させようとしている業務内容には、都内在住じゃないとできないこともある。
配信をちゃんとやるのであれば、ゲームパッドくらいなら支給してもいいのに、とは思いつつ。
そしてこれが原因となり、この次の日に行われた第2回コンプライアンス研修では、
『社員になる ٩('ω')و』
とか言い出すのだった。
【誰のビジュアルを先に見たい? VNIVEARTH人気投票!!】四期生のデビューにともなって、二次投票の受付を開始します!! 現在公式Tvvltterにて公開されている画像は、制作途中のラフ段階のものです。そこで、本アンケートの結果に基づいて完成させる順番を考慮いたします。皆様の推しにぜひご投票ください!(※なお一期生については、本編では未改修のためネタバレが含まれます)
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萬屋ぺすと
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佐土原恭子
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神海まりも
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詩星せるり
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遠藤
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黒宮院みやみ
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拳藤正義
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波羅劾ざくろ
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伊能凛