過去に戻ったので、破滅する推し箱の未来を変える。   作:匿名

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#048 正義を失ったな……

 8月3日、土曜日の正午のこと。

 

 俺は自身がマネージャー兼ライバーであるという秘密を打ち明ける協力者として、VNIVEARTH三期生の拳藤(けんどう)正義(せいぎ)を事務所へと招くことにした。

 

 都内在住ということもあり、予定も空いていたようでこれを快諾。他のライバーより一足先に、今月から使い始めた新拠点へ案内することとなった。

 

「おまたせ! って。へへ、ビデオ通話とかだと何度か見てますけど、実際に会うのは初めてですよね!」

「はい、拳藤様。本日はご足労いただきありがとうございます」

 

 待ち合わせに指定した、VNIVEARTHの収録スタジオに一番近い駅。徒歩だとまあちょっとかかるけど、詳細な場所を伝えるならば、ここから案内するのがいいだろう。

 

「しゃべり方って、配信と同じ方がいいんですか?」

 

「んー……賛否の別れるところですね。通話でしたら私が普段そうしていただいているように、配信の時と同じ口調にしていただいた方が都合が良いのですが、ここは第三者の目もあります」

 

 関係者同士のやり取りは、基本的に配信の時の口調やノリで通すというのが、VNIVEARTHの方針だ。

 

 これは裏であったことを配信で言いたくなった時にボロが出にくいようにするためであり、またそのキャラを演じることに慣れるため、そして何より、ライバーと中の人とのギャップが多すぎて俺が混乱するのを避けるためでもある。

 

 少し歩くのだ、その間を全くの無言でいるとなると、その後のテンションにも関わるだろう。

 であれば、最低限の身バレ対策だけ伝えておかねばなるまい。

 

「拳藤様はあまりキャラを作っていませんよね。事務所に着くまでは、配信者だとわかるような発言だけは避けるように心掛けてください。私のことを呼ぶときは南條と。私も兵藤様と呼びます」

 

「かしこまり!」

 

 ……。

 

 いや、いいけどさ……。

 

「では、行きましょうか」

 

「行きますよぉ行く行く!」

 

 歩きながら、暇つぶし程度の雑談をしていくと、目的地に到着する。

 

「もう着きますよ。そこのマンションがそうです」

 

「着くゥ! こ↑こ↓? はぇ~すっごいおっきい……」

 

「……建物全部じゃないですよ。ここに一室を借りています」

 

「まずうちさぁ、屋上……あんだけど、焼いてかない?」

 

「屋上は残念ながら立ち入り禁止になっていますね」

 

 こうして事務所となっている部屋まで拳藤正義を案内したのだけど、道中の会話を経て、俺は内心で頭を抱えていた。

 

 ──拳藤正義の語彙力が、例の語録に侵食されている。

 

 彼の配信にもその兆候はあった。

 

 感想欄で見かける、似たような文章。一部のリスナーが共通のフレーズを使っていることに気付いた拳藤正義は、軽い気持ちで自身もその言い回しを使うようになった。

 

 配信者活動を始める前から弐コ弐コ動画などでなんとなく聞いたことがあったものも多かったようで、そういうネット上の常套句のようなものだと思ったのだとか。

 リスナーに他にどんなのがあるのかと無邪気に質問をして、雑談に華を咲かせていた。

 

 どんな花が咲いていたのかはさておき、まあ元ネタが品を損なうものではあるけれど、リスナーとのコミュニケーションの一環だと思えばまあいいかと俺は咎めようとは思わなかった。

 

 しかしこの例の語録というのが、動画にしても、SNSにしても、少しアングラに傾いたインターネットのサブカルチャー層に対しては、一定のウケを得られる。

 

 その語録というのは、弐コ弐コ動画の全盛期に近い格を維持していた2014年くらいにはすでに流行っていたものだ。

 2019年では下火になりつつあるが、弐コ弐コ動画というのはネットの流行が強く反映される場所であり、同時に流行の発祥となる場所だった。

 

 多くのリスナーが知っているため、コメントのウケが良い。そのせいで、拳藤正義は直近2回の個人配信において、例の語録を多用するようになっていた。

 

 本人も元ネタがよくわかっていないようで、なんかネットで流行ってるテンプレとして認識しているのを良いことに、悪いリスナーたちが面白がって次々に彼に語録を教え込んでいたのだ。

 

 まあ、こんなのは一時のネタに過ぎないだろうと、俺は油断していた。

 

 配信外の、半分プライベートのような状態での会話だったのにも関わらず、ここに来るまでずっと語録に塗れていた彼の発言に、困惑する。

 

 誰なんだ、この男は。

 

 日常会話にまで例の語録を使いすぎてしまって、会話が成立しなくなっていた。

 

 いや、思い返せば彼のデビュー配信でも、『今なんでもって』とか『ジャスティスくんかわいいなあ』とかそういうコメント多かった気がするけど、まさか乗っ取られるとは思わないじゃん。

 

 拳藤正義というライバーは、変人集団の中に放り込まれた一般人だ。そう評価されているのをたまに目にする。

 他のVNIVEARTHライバーと比べて、彼の本質は常識人だ、とする意見である。

 

 実際、彼以外は根が元から配信者向きというか、エンターテイナー気質のはっちゃけた感性が見受けられる。俺が戦略的に変なことをさせるまでもなく、勝手になんかやばいことをして、リスナーの注目を集め、楽しませている。

 

 それを見て、自分も置いてかれまいと頑張って変なことをしている、というのをリスナーはなんとなく感じ取っているのだろう。

 

 自分の直前に行われた三期生のもう1人の配信がだいぶはっちゃけていたから、それに負けじとはっちゃけて、『ジャスティスパンチ拳藤』と名乗ったのだと。

 

 彼は基本的に配信中で得たものを身につけていく傾向にある。一度発言したものがコメントでウケていると感じたなら、それを素直に多用していく。

 その配信スタイルと、例の語録がダメな方向で噛み合った結果、拳藤正義は悪魔合体というか、暗黒進化してしまったのだ。

 

 爽やかボクシング高校生だった拳藤正義はもういない。

 

 ただの迫真ボクシング部へと、なり果ててしまった。

 

 悲しき男の姿がそこにはある。

 

「はぇ~、すっごい。普通の家みたいですねぇ!」

 

「はい。ここは事務所としても使えるマンション。間取りなどは、通常のマンションと同じです。

 ガスや風呂、トイレもありますので、夏のオフコラボでは、ここに泊まり込むことが可能です。洗面台はこちら──萬屋(よろずや)ぺすと様がよく言ってますが、手洗いうがいは大事です」

 

 冗談めかして促すと、拳藤正義は素直に手を洗う。

 良かった。シャワーも浴びないオレは手も洗わないぜ、とか言い出したらどうしようかと。

 

 新型コロナが流行するのはおよそ半年後のこと。俺も皆も予防するに越したことはないので、今からライバーには徹底させて習慣にしておきたいところだ。

 

 家具は本社から持ち込んだ折り畳み式の机と椅子くらいしかないので、そこへ彼を座らせる。

 

 俺は冷蔵庫から麦茶を取り出しコップに注ぐ。

 

 それを拳藤正義に渡すと、彼は嬉しそうに言うのだ──

 

「あ! アイスティーしかなかったんだけどいいかな!」

 

 ……もう終わりだよ。

 

 純粋だった頃の彼は、もういない。

 

 

   *

 

 

 「はぇ~~!!

 

 マネージャーが遠藤先輩だったんですか!!

 

 たまげたなぁ!!」

 

 

 そして今に至る。

 

 正直、打ち明けたくなくなってきていたが、背に腹は代えられない。

 

 こういう、信頼を損ないかねないというか、少し心配になってしまうのも、この語録のデメリットだろう。

 

「これは社外秘です。いえ、それどころか、他のライバーの皆様にも絶対に言ってはいけません。いいですね?」

 

「おかのした!」

 

 うわ殴りてぇ。お前の顔面にジャスティスパンチするぞ。

 

「ちなみにこの事務所は便宜上は『収録スタジオ』となっています。公式サイトに掲載された本社とは別の場所ですので、混同しないようにしてくださいね。

 ここの所在地も完全社外秘ですので、配信などでは絶対に言ってはいけません」

 

「えぇ……。困惑」

 

 困惑ってそれ()で書いてあるやつだろ。実際に口で言うなよ。

 

「オフコラボ中に悪質なリスナーが訪ねてくることへの対策です。タレントの安全を守るために行っていることですね。ここは何と言いますか──秘密基地、のようなものだと思ってください」

 

「粋スギィ!!」

 

 くそ。秘密基地ってワードを出した程度じゃ無邪気な彼には戻ってくれないか。

 

 かつて俺の癒しだった普通の男は、一体どこに消えてしまったというのだ。

 

「じゃけん秘密にしましょうね」

 

 信用できねぇ……。

 

「け、拳藤様。できれば……もう少し、自然体で話せませんか?」

 

「え……、あっ。すいません許してください! 何でもしますから!」

 

 もうやだ。社長でいいから助けてくれ……。

 

 こんな日に限ってなんであいつは本社に行ってるんだよ。1日1回は行った方が良いって言ったけどさぁ、別の時間でも良かっただろうに。

 俺が拳藤正義を迎えに行くって言った途端、『じゃあボクも出かけようか』とか言って一緒に出たんだけど、あいつ逃げたんじゃないだろうな?

 

 伊能凛。元々傲岸不遜というか、初対面の俺にもあんなだったように、誰かれ構わず物怖じせずに独特の雰囲気で会話をするくせに、ライバー相手だとなぜか距離を置きたがる。

 

 別に俺相手にするみたいに、適当に会話をすればいいだろうに。

 

 よくわからない男だ。

 

 そして今、俺の目の前にいる男についてももうよくわからない存在になっている。

 

「えぇと、その、ですね。拳藤様が使われている語録というのは、恥ずかしいものなんです」

 

「は、はず……かしい?」

 

「ええ、VTuberでも恥ずかしいものなんです」

 

「で、でも! コメントじゃあんなに盛り上がってますよ! 『やりますねぇ!』『いいゾ~これ』って……」

 

 俺は説明をする。

 

 汚れてしまった彼に、残酷な現実をつきつける。

 

 例の語録とは、成人向け同性愛ビデオで使用されるセリフを由来としていることを。それを面白がった弐コ弐コ動画のリスナーが、動画やコメントで多用したことで形成された文化であることを。

 

「じゃ、じゃあなんですか……俺が手に入れたと思っていた武器は、恥ずかしいものだった……?」

 

 そうなのだ。なんでこんなにも、三期生はどいつもこいつもセンシティブな発言をしたがるのか。

 

「はい。そうです。お姉さんとか、どういう反応してました……?」

 

「笑ってくれて……、いや、どちらかというとあれは苦笑……? 言われてみれば、困ったような嗤い方……まさか、姉さんは俺に気を使って何も言わなかっただけなのか……!?」

 

「そうかもしれませんね。弟が楽しそうにしているのだから、水を差すのは(はばか)られたのかもしれません」

 

「な、なんてこった……姉さんが喜ぶと思ってライバーになったのに、姉さんに恥ずかしい思いをさせていたなんて……!」

 

 いやその姉さんが恥ずかしがっていたかはわからないけど。ネットに詳しいなら逆にネタとして受け入れていたのかもしれないし。

 案外素直に楽しんでいたという可能性も、なくもない。

 

「悔い改めて……はっ」

 

 いや重症じゃん。どうすんのこれ。もうめちゃくちゃだよ……。

 

「配信中に語録を使うこと自体は問題ありません。普通にネットミームですし、そんなに詳しくない人でも自然に使ってしまう事もあります。

 ですが、今の拳藤様のように、会話全てを何でも語録にしようとしてしまうのは、少し、いえかなり、恥ずかしい事です」

 

「今なんでもって……ああっ!!」

 

 いやなんでこんなに語録に取り憑かれてるの。

 

 むしろ面白いけどねここまでくると。配信でやるべきだったか。

 

「まあ口調については保留としまして、この事務所以外にも案内しておくところがあります」

 

 

 事務所を出て、歩くことまた十分程度。

 

「ここは……?」

 

「私の自宅です」

 

 そこは俺の借りている激狭アパートであった。

 

「お、お邪魔します……、えっと、へ、へー……」

 

 拳藤正義は無言になる。

 

 まあ気持ちはわかる。この部屋には何もない。

 

 小さい本棚と、服を入れる小さなプラスチック製キャビネット。そしてダンボールがいくつかある程度。

 自宅作業用のサブPCと机、椅子。あとは畳まれた布団。

 

 狭い部屋が逆に広く感じるような、物の少なさだ。

 

「オフコラボ中は、こちらで男性陣の生活をしようと思っています」

 

「あー、なるほど。それでここに」

 

「拳藤様はご実家が近いので必ずしも泊まる必要はございませんが、お泊り会、と称して集まる日だけは、泊まる、または遅い時間まで残っていただけると助かります」

 

「泊まらないわけ、ないです。この歳になってアレですけど、なんかすっごい楽しみですし。オレも自分から入っていきますよ」

 

 この歳になって日常会話で語録を使い始めたことの方がアレだぞ、という指摘はさておき。

 

 ちょっと童心に帰っているようで、しかしその言葉の節々から全くと言っていいほど純真さを感じられないが、でもそうだ、この路線でどうにか彼を元に戻すことはできないだろうか。

 

 ──童心に帰る。

 

 考えるんだ南條亜紀人。

 

 夏。夏休み。少年時代の思い出こそ、人の脳裏には強く刻まれる。

 

 そうだろう。だから俺はこの少年少女たちの夏休みに様々な催しを行うことで、VNIVEARTHの存在を思い出に刻もうとしている。

 

 逆に考えるんだ。

 

 夏休みの夜という、童心にはいやでも特別に感じられた、夢のような時間を以てして。

 真夏の夜のという、穢れてしまった大人の悪ふざけである、この悪夢を打ち消すのだ。

 

 夏休みの夜の夢のような時間で、真夏の夜の悪夢を浄化する。

 

 じゃあまずだけど、俺の夏休みってなんだったか。

 

 えーっと……ゲームして、……。

 

 いやそれしかないことないだろう。

 

 えー。GBA、DS、PSP、Vita。

 

 駄目だ携帯ゲーム機の記憶しかねぇ。

 

 宿題はやらずに踏み倒す派だったし、自由研究もしてなかったし、夏祭りとかも特に行った記憶がない。プールも好きじゃなければ、お泊り会だって別に……。

 

 実は俺も寂しい人間だったのでは……?

 

 伊能凛のことを言えた立場じゃなかったのかもしれない。

 

 ──ボクと一緒だね。

 

 くっ、そんな風に嬉しそうにする奴の顔が頭に浮かぶ。やめろ、やめてくれ、助けて──。

 

 ──お兄さんには私と過ごした時間があるでしょ?

 

 ああ、ああ……よし。ありがとう、持ち直した。やっぱり俺にはあの少女しかいない。

 

 あの病室での毎日こそが、俺にとってのお泊り会だった。

 

 特別な時間。特別な記憶。

 

 色褪せることのない、大切な思い出。

 

 あの時間をくれた、あの少女に報いるために。過去に戻ってからこれまで、俺は個人的な趣味というものを捨て去る気概でいた。

 

 漫画を読む、ラノベを読む、二次創作小説を読む、二次創作を書くor描く、動画を見る、ゲームをする。

 

 それらの『遊び』は、前回でもう十分に堪能したはずだと。

 

 だから、やり直す機会を得たこの世界では、もう寄り道をせずに、このクリエイター活動こそを一番のやりたいことであると、趣味と同義であるとすることで、常にVNIVEARTHのために尽くしていくことができるのだ。

 

 これは嘘ではない。ただの自己暗示ではない。

 

 かつての俺があの病室でもうできなかったことを、今の俺は実現させている。

 

 それでも──勿体なくて、捨てられなかったものが、部屋の片隅、ダンボールの中には詰め込まれている。

 

 学生時代に遊んだもの。

 

 まあゲームなんだけど。不本意ながら、これこそが俺の夏、青春なのだ。

 

「見たことない漫画ばっかですねぇ……え、でもジャンプだ。たまげたなぁ……。全部最初の2~3巻しかないのはなんでです?」

 

 俺が本棚やダンボールに近づくと、後を追うように拳藤正義がそれらを眺める。

 

 本棚とは、俺の無駄コレクション。

 ジャンプの打ち切り漫画だけを収集していたという、捻くれた10代の俺。

 

「学生時代は、何か漫画雑誌は読んでましたか?」

 

「ジャンプなら少しわかりますよ。NARUTO、ワンピ、ブリーチ、あとはドラゴンボール──」

 

「王道ですね。私たちの世代にとってはジャンプ(イコール)それらのイメージがあります」

 

「やっぱ好きなんすねぇ! あとは銀魂とか、ハイキュー」

 

「私はリボーンやPSYRENが好きでしたよ」

 

 メジャーどころしか読んでいないようだったけれど、話題としては普通に盛り上がった。こういうのは配信でやりたいから、途中で切り上げるとして……。

 

 適当に話しながら、ダンボールを開ける。

 

「ゲームはどうでした?」

 

「あー! おお! なっっつ!! PSPオレめっちゃやってましたよ。友達と集まってモンファンやって」

 

「やってましたか。私は2ndGしかやったことないんですけど……」

 

「2ndG! 俺も2ndGでしたよ。中学の時。うわ懐かしいなぁ。やりましたねぇ! な、涙が、出ますよ……」

 

 思い出が語録で穢されていく……ゲームも駄目か。

 

 じゃあ。

 

「カードゲームはどうでした? モンスターズか、マスターズか別れますよね。私はこっちでした」

 

「あぁードンピシャっす。オレもモンスターズで、友達と店の大会とか出てましたよ」

 

 なるほど。漫画といい、ゲームといい。実は結構、彼とは趣味が合うのかもしれない。

 

 1つしか年齢が変わらないのだから不思議ではないことだけど、俺にとっては未来で過ごした5年分があるので、少しだけ感覚のずれがある。

 俺にとってはかなり昔のことで、彼にとっては少し昔のこと。

 

 かつて同じものを楽しんだということを、より貴重なことのように感じてしまう。

 

 俺は2つ目のダンボールを開く。そこには百円均一で買ったプラスチックのケースに、それなりの量のカードが敷き詰められている。

 デッキのスリーブは3重。もうそれだけで、カードゲーマーだとバレてしまう。

 

「あ、本当です? 私も自転車で隣町のカードショップまで行って、大会出てましたよ。ろくに勝てませんでしたが」

 

「勝てないんですか」

 

「使うデッキが古かったので」

 

 言いながら一部を見せると、拳藤正義はさらに食い付きを見せる。その目はどこか輝いているようだった。

 

「オレもこれ! シャインロード使ってましたよ。うわマジで懐かしい。高校の時に後輩に売っちゃったんですよね、3000円くらいで」

 

 勿体なかったなー、と言いながら慣れた手つきでカードを捲っていく。

 

 シャインロード。光の騎士団をモチーフとしたカード群だ。

 エンドフェイズ時にデッキの上からカードを墓地に送る共通効果と、墓地の内容を条件に召喚する最上級モンスターを切り札とするデッキ。

 当時としては破格のカードパワーを持っており、登場から10年以上たった今でも、調整すればそれなりに戦えるほどに強いデッキなんじゃないかと思う。

 

 うわ、うわうわうわ……、と懐かしさのあまり感嘆する彼の様子を見て、俺はこれだと決める。

 

「そのデッキをお貸ししますので、少しやりませんか?」

 

「え、いいんですか!? やっべー、どうしよ。なんかわくわくしてきた!」

 

 ──そうだ。

 

 妙案、閃く。

 

 これこそが、彼を元に戻す一手。

 

 せっかくなので、配信でやってしまおう。

 画面上の見栄えこそほとんどないが、逆にこれ自体が常識はずれな突飛なことをやっているという目新しさや話題性にはつながるはずだ。

 

 題して。

 

 ワクワクを思い出すんだ作戦、である。

 

 

   *

 

 配信が始まると、そこには(野郎)のVTuberが2人が並んでいた。

 

:お

:はじまったか

 

「拳藤正義? 拳藤正義は最近、配信で変な言葉を使っているそうだな!」

 

「え、何のことっすかね。心当たりとか、ないです

 

:重傷

:もう彼は……

:ダメみたいですね

 

「正義を失ったな……。だが俺は純粋な彼を取り戻してみせる──

 

 ──俺のターン、ドロー!! 俺はモンスターを伏せて、カードを1枚伏せる」

 

:!?

:なんか始まったww

:え、あの、動画とかないんですか……?

 

 俺たちは、あえてLive2Dを映しただけの配信画面のまま放置して、事務所のテーブル上でこの闇のゲームを開始した。

 

「行きますよ遠藤先輩! オレはシャインロード・ナイト ジェイドを召喚!

 

 ジェイドで伏せモンスターを攻撃!!」

 

「このモンスターは『旺球弱孔視(おたまじゃくし)』! 破壊された時、デッキから『旺球弱孔視』を手札に加える!」

 

:こいつタマとか言い出しましたよ

 

「ははは、やっぱ好きなんすねぇ」

 

「VNIVEARTHスペシャルルール!! 例の不潔な語録を使った場合、そのプレイヤーはダメージを受ける!!!

 

──陰獣(いんじゅう)ペナルティ! 810ポイント!!」

 

 

「ぐあああああああ!!!!」

 

 4000 → 3190

 

:草

:810!?

:www

:あと4回でライフなくなるぞ

:乱入ペナルティかよw

 

 NGワードを指定した、カードゲーム。

 

 この突発的に行われたコラボ配信で、妙な語録に染まってしまった拳藤正義の純粋さを取り戻してみせる、という企画である。

 

【誰のビジュアルを先に見たい? VNIVEARTH人気投票!!】四期生のデビューにともなって、二次投票の受付を開始します!! 現在公式Tvvltterにて公開されている画像は、制作途中のラフ段階のものです。そこで、本アンケートの結果に基づいて完成させる順番を考慮いたします。皆様の推しにぜひご投票ください!(※なお一期生については、本編では未改修のためネタバレが含まれます)

  • 萬屋ぺすと
  • 佐土原恭子
  • 神海まりも
  • 詩星せるり
  • 遠藤
  • 黒宮院みやみ
  • 拳藤正義
  • 波羅劾ざくろ
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