過去に戻ったので、破滅する推し箱の未来を変える。   作:匿名

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#049 ワクワクを思い出すんだ!

 ──緊急企画!

 

 という触れ込みで、その配信枠は告知がされた。

 

 急すぎる話だったので集まった視聴者数は少ないが、今回の配信はかなり挑戦的というか、ただのリスナー置いてけぼり企画なので、見どころ部分だけが後に切り抜きにされればそれだけでもう成功だ。

 

 配信が始まると、そこには(野郎)が2人が並んでいた。

 

:お

:はじまったか

:!?

 

 イメージカラーが緑の男性キャラと赤の男性キャラ。某携帯獣ゲームも赤と緑なので相性が良いというか縁起が良い。

 

 俺こと遠藤ことみなしごエンドレスと、拳藤正義だ。

 

:珍しい並び

:遠藤のサシコラボって初じゃね?

:社長とやってる

:いやあれはコラボって感じじゃ無くね?

:介護?

:職権乱用だろ

 

 確かに俺は、思えば誰かと1対1でコラボすることはほとんどなかった。

 それはこれまで、男性ライバーが俺1人しかしなかったのが理由としては大きいのだが、三期生がデビューしたことで拳藤正義、そして四期生がデビューしたことで伊能凛と、これでVNIVEARTHの男性ライバーは3人となった。

 

 俺がモデル作成やらで忙しいせいで実現していなかったが、本来ならばこうして、拳藤正義とはデビューした直後から、もっとコラボをしても良かったのだ。

 

 俺が放置したばっかりに、悪いリスナーに調教されて、こんなことに……。

 

 なお伊能凛とはコラボをしていると言えなくもないのだけど、あれはコンセプトを決めてちゃんとコラボ企画を行っているのではなく、社長としての配信の特色として、社員が近くにいるという属性に過ぎないので、あまりコラボという感じはしない。

 

 デッキを持って収録スタジオに戻ってきた俺たちは、軽く試運転をした後、突発的なコラボ配信を行うことにした。

 このスタジオの機材や防音室の使い勝手など、オフコラボでのリハーサルも兼ねてのものでもある。

 

 社長も事務所内に戻ってきていたが、配信があるからと静かにして貰った。

 今は社長席で、寂しそうにこちらを見ている。気がする。

 

「拳藤正義? 拳藤正義は最近、配信で変な言葉を使っているそうだな!」

 

「え、何のことっすかね。心当たりとか、ないです」

 

:嘘つけ絶対あるぞ

:早速使ってるし

:こりゃ先輩にお叱りかな

:まずい

 

「いいや、変だね。いい加減にしろいい加減。どうした一体いい加減。拳藤最近少し変、お前最近少し変」

 

:いやお前がどうしたんだよw

:遠藤もミームだらけ定期

:急にうちはラップすんな

:まあ語録よりはマシ

 

「というわけで緊急企画! なんかたったの数日で変な語録に染められてしまった拳藤正義と遊んで、元の拳藤正義に戻すぞ!!」

 

【拳藤遠藤コラボ】ワクワクを思い出すんだ!【VNIVEARTH】

 

 配信枠は拳藤正義のチャンネル。チャンネル主が異端視されて、ゲストが司会として主導権を握っているのはご愛敬。

 

「多分先輩の勘違いだと思うんですけど。名推理」

 

「いやこれは重症だよ。(みんな)はどう思う?」

 

:重傷

:もう彼は……

:ダメみたいですね

:たまげたなぁ

 

 いやお前らのせいだお前らの。

 

 推定この元凶であるコメントたちは、悪びれもせずに呑気に好き勝手言っている。

 

 拳藤正義には、一度この語録を恥ずかしいことだと指摘しているが、この配信のコンセプトに合わせてとぼけるように指示をしている。

 ただ、別に使おうとしなくても使ってしまうようなので、リスナーにはさほど演じているような印象はないはずだ。

 

「今回の配信では、とあるゲームを通して、この汚れてしまった拳藤正義の、純真さを取り戻そうと思う」

 

:汚れてしまった

:誰だそんなことしたやつ

:お前らやww

:もうすでに切り抜きで素材になってるよ

 

「じゃあ拳藤正義、準備は良いか?」

 

「大丈夫ですよ、バッチェできてますよ」

 

「正義を失ったな……。だが俺は純粋な彼を取り戻してみせる──

 

 ──俺のターン、ドロー!! 俺はモンスターを伏せて、カードを1枚伏せる。ターンを終了」

 

:なんか始まったww

:先行ドローは禁止ではないのか!?

:え、何これ

:映像とか、ないの?

 

「さあこい、拳藤正義! この闇のゲームを通して──

 

 ──ワクワクを思い出すんだ!」

 

「行きますよ遠藤先輩! オレのターン!!

 オレは『サンライト・リロード』を発動! 手札の『シャインロード・ウルフェン ビースト』を墓地に送って、2枚ドロー!! そしてデッキの上から2枚墓地へ。

 オレは『シャインロード・ナイト ジェイド』を召喚!」

 

:シャインロードとか割とガチじゃん

:今でも十分戦えるっていうね

:ビースト落とすの上手いぞ

:え、あの、動画とかないんですか……?

 

 配信画面に直撮りなどはないまま、俺と拳藤正義が決闘をする様子を届けると言うのが、今回の配信のコンセプトだ。

 またVNIVEARTHが変なことをしているぞ。そう話題になれば儲けもの、程度。

 

 もっと言えば、映像無しで状況をリスナーに伝えるという、説明の練習にもなる。

 

 リスナーは置いてけぼりになるが、まあ、そういうネタなのだ。ここは雰囲気だけで楽しんで欲しい。

 

 この配信は実際に向き合ってカードを動かして行うが、オフコラボであることは今回は伏せる。夏のオフコラボ企画で、初めてVNIVEARTHが集結したという印象を強めるためだ。

 LIIVEのビデオ通話でやったとでも、後で補足をしておこう。

 

「そう、今回は俺と拳藤正義がデュエルをする! ただし撮影などは一切なし! 身バレに繋がるため、VNIVEARTHでは非推奨です」

 

「コンプライアンス研修で習いました!」

 

「ちなみにカード自体が配信上に映るのも厳密にはグレー。ただし、今日みたいに何も映さずに俺たちが実況するだけなのはほぼセーフ!」

 

「そうなんですか!?」

 

:へー

:そんな裏技あるんだ

:他の箱は気にせず映すと思うけど

 

「1つ学んだぞ、みんな!」

 

「そうだ、拳藤正義。その調子で正気に戻るんだ!

 

 そして今回だけのVNIVEARTHスペシャルルール!! 例の不潔な語録を使った場合、そのプレイヤーはダメージを受ける!!!」

 

「な、なんだってー!?」

 

:なんだそのルール

:ちょっと面白いの草

 

「さあ、再開だ拳藤正義。どうする?」

 

「罠が1枚……いいや攻める! ジェイドで伏せモンスターを攻撃!!」

 

「このモンスターは『旺球弱孔視(おたまじゃくし)』! 破壊された時、デッキから『旺球弱孔視』を2枚手札に加える!」

 

:おたまじゃくしとかww

:〇~ 〇~ 〇~

:こいつタマとか言い出しましたよ

 

「ははは、やっぱ好きなんすねぇ

 

:あ

:あ

:はいアウトー!

 

「拳藤正義、汚い言葉を……使ったね?」

 

「ああっ!?」

 

 

「──陰獣(いんじゅう)ペナルティ! 810ポイント!!」

 

 

「ぐあああああああ!!!!」

 

 

 拳藤正義 4000 → 3190

 

:草

:810!?

:www

:あと4回でライフなくなるぞ

:乱入ペナルティかよw

 

 防音室内ではないので、叫ぶ声は控えめ。

 

 2人同時に防音室には入れない、こともないが、カードを広げるとなると、さすがに無理。

 

 俺は配信直前に録音した『ディリリリリリリリリピッ!』というライフが減少する効果音を口で言ったものを再生しながら、OBSで表示した値を変動させる。

 

「どうした拳藤正義! まだ2ターン目だぞ。この調子では死んでしまう!」

 

「うぐぐ……まだ、オレは戦える! カードを1枚セットしてターンエンド! ジェイドの効果でデッキの上から2枚墓地へ」

 

:なんでこの状況でダメージ受けてんだよw

:スペシャルルールだから……

 

「負けたくなければ、語録を捨てるのだ。そして無邪気な拳藤正義に戻ってくれ!

 俺のターン。伏せていた魔法『金持グレムリン』を発動。拳藤正義は1000回復! 俺はドロー!」

 

 拳藤正義 3190 → 4190

 

:罠じゃないんかい!

:伏せがダミーとかお前さぁ……

:いちいち姑息なんだよね

:でも回復したじゃん

:温情

 

「モンスターを伏せてターンを終了!」

 

:またセットかよw

:なんだこいつ

:麻雀以外も塩試合なのかよ

 

「手札上限で1枚捨てるね。『旺球弱孔視』、バイバイ」

 

「くっ、負けない……! 『シャインロード・インヴォーカー ルイーダ』を召喚! ルイーダの効果で手札捨てて墓地から『シャインロード・ウルフェン ビースト』を召喚!」

 

「モンスターが3体、来るぞ優馬!」

 

「バトル! ジェイドで攻撃!」

 

:来ねーぞアストラル!

:まあ普通に殴った方が火力高いし

:伏せもないならこれは負けだろ

 

「俺が伏せていたのは『リバース・フロッグ』、効果。ビースト、手札に戻して」

 

「……はい」

 

:これはひどいw

:どゆこと?

:ビーストは手札から普通には召喚できない

:ひっで

 

「さすがは遠藤先輩。やりま……」

 

:あ

:またかww

:やりますねぇ!

:あーあ

 

「ん? なんだね?」

 

「なんでも、ないで……グガッ!!!!」

 

:wwww

:すべてが語録の穢れた男

:持ちこたえた!

:セーフ!!

 

「なんかダメージ受けたがってる?」

 

「い、いえ、違います。ええ、えっと、残ったルイーダで攻撃っす」

 

「ヴッ!!」

 

 遠藤 4000 → 3000

 

:ディリリリリ!

:効果音が遠藤の声なの笑うわ

 

「アニメの効果音を勝手に使うのも、本当は駄目だからね」

 

「エンドで!」

 

「俺? 呼んだ?」

 

「違います違います! ははは。ターンエンドです!」

 

:草

:うぜぇwww

:めんどくせー先輩

 

 遠藤 LP:3000 手札:6

 拳藤 LP:4190 手札:3

 

「じゃ、俺のターンだ。そろそろ攻めるぞ拳藤正義。懺悔の準備は出来ているか?」

 

「あ! こっちのキャラの台詞使えるのずるくないですか!?」

 

「ミームというのは、その時々に合わせて使うものなのだよ、拳藤正義。

 俺は『小さき意志の継承』を発動。手札の旺球弱孔視を墓地へ送り、『リボーン・フロッグ』を特殊召喚!

 リボーン・フロッグを生贄に、デス・フロッグを召喚!!」

 

「で、でも攻撃力は1900……! それが1体いたところで、まだまだ挽回できる!」

 

 おお。これは良い発言だ。

 試運転で効果を見せたこともあって、リスナー的に面白くなる前振りとして機能する。

 

「それはどうかな──

 

 ──カンコーン!!」

 

:口で言うなww

:ちょっと上手いの草

:遠藤ってカードゲーマーなんだ……

:くさそう

 

「デス・フロッグは、墓地の『旺球弱孔視』の数だけ増殖する。

 

 墓地の『旺球弱孔視』は3体! デッキから2体のデス・フロッグを特殊召喚!」

 

:何それずるい

:むしろよく3体落としたな

:純正のフロッグデッキ回してる人初めて見た

 

「……あ! デス・フロッグが3体……来るぞ優馬!」

 

 思い出したように言う拳藤正義。良いアドリブ。その調子で語録なんか忘れるのだ。

 

「魔法カード、『グリード・マーレイ』。手札の『ユニコーン・フロッグ』と『トリック・フロッグ』をデッキに戻して、3枚ドロー! ついでに『金持グレムリン』。拳藤正義を回復させてドロー!」

 

 拳藤正義 4190 → 5190

 

:どんだけドローするんだよw

:LP4000のデュエルで2000も回復させるな

:舐めプ

:拳藤もお腹いっぱいだろこれ

 

「先輩の奢りっすね。ありがとうございます!!」

 

「ああ……しっかり食え。おかわりもいいぞ!」

 

:あ(察し)

:今日は全員カレーライス食っていいのか!!

 

「ただ今より毒ガス訓練を開始する!!

 魔法カード──

 

 ──『死の共鳴(デス・シンフォニー)』!!」

 

:あ

:まずい

:これ多分こねーぞアストラル!

 

「『死の共鳴(デス・シンフォニー)』は、場に『デス・フロッグ』が3体いるときに発動できる。相手の場のカードを、全て破壊!!」

 

先輩!? 何してんすか! 止めて下さ──」

 

「んん?」

 

「あっ、いや、その……」

 

:まずい

:それ語録なんだ?

:こっちもまずい

:陰獣ペナルティw

 

「今の、語録?」

 

「ち、違います」

 

「そう? 違うって言うのなら、違うのか……」

 

:ちょろくて草

:意外とどうにかなるな

 

「というわけで『死の共鳴(デス・シンフォニー)』! 全て破壊!」

 

「オ、オレのモンスターが!!」

 

「伏せカード、発動する?」

 

「します! 罠カード『シャイニング・イリュージョン』! 墓地の『シャインロード・ドラゴノイド グランド』を特殊召喚!」

 

「『死の共鳴』の効果は無効になってないから、破壊ね」

 

「グランドーッ!!」

 

:草

:デュエルって難しいのん

:茶番www

 

「拳藤正義の場には何もない、1900が3体。これがどういう意味か、わかるかな?」

 

「うっぐぐ、……さ、3人はどういう……」

 

:語録やんけ

:自決するなww

:自決w

:すいぶん余裕で草

 

「バトル! デス・フロッグで攻撃! ダイイチダァ!」

 

「うわぁぁぁぁ!!!」

 

 拳藤正義 5190 → 3290

 

「デス・フロッグで攻撃! ダイニダァ!」

 

「ぐわあぁぁぁぁ!!!!」

 

 拳藤正義 3290 → 1390

 

:後輩を虐める先輩の図

:正義君が痛めつけられる様子を見る配信

:カイザーかよww

:グォレンダ!!

 

「とどめだ!! デス・フロッグで攻撃! サンレンダァ!!」

 

「──それはどうかな? カンコーン!!」

 

:おお

:まだやれんのか

:お願い! 死なないで拳藤!!

:あんたが今ここで倒れたら、お姉さんとの約束はどうなっちゃうの!!

 

「そうだ、ありがとうコメント。オレは姉さんを残して死ねない!!

 

 墓地の『コープス・ガードナー』の効果発動! こいつを除外して攻撃を無効!!」

 

「な、何ィ~!?」

 

「遠藤先輩! オレまだ、戦えますよ!!」

 

「くっ、……クックック。だが俺の場には攻撃力1900が3体残っている。次のターンでもう一度攻撃すればいいだけのことよ」

 

:いつもの

:悪役が似合う男

:小物過ぎて草

:絶対負けるやつwww

 

「オレのターン!! 俺は『アバリス・ポット』を発動!! 墓地のモンスター5枚をデッキに戻して、2枚ドロー!

『シャイン・リロード』! ビーストを捨てて2枚ドロー! 2枚墓地へ!

『光り輝く遊軍』を発動!! デッキから3枚墓地へ送って、リリアを手札に。

『亡者流転』! リリアを墓地へ送り、俺が手札に加えるのは──

 

 ──断罪の龍(リトリビューション・ドラゴニア)!!」

 

「な、なんだって~~!?」

 

:急にガン回すじゃん

:落ちてたのかよリヴュ

:勝ったなガハハ

:風呂入ってくるわ

:すごい綺麗に逆転したな

 

「オレの墓地に『シャインロード』が5種類以上いるとき、このモンスターは召喚できる!!

 

 ──『断罪の龍(リトリビューション・ドラゴニア)』!!」

 

「そ、それはシャインロードの最上級モンスター。その効果は……」

 

「そうです! ライフを1000払うことで、このカード以外の全てのカードを破壊する!!」

 

 拳藤正義 1390 → 390

 

「お、俺の蛙たちがァ~!!」

 

「遠藤先輩、今日はありがとうございます。デュエルしようって誘ってくれて。コラボしようって誘ってくれて。オレ、嬉しかったです!」

 

「拳藤正義……」

 

「だから、これはお礼です!

 遠藤先輩の場には何もありません。先輩のライフは残り3000。『断罪の龍(リトリビューション・ドラゴニア)』の攻撃力は──3000!」

 

「ま、待て、話せばわかる」

 

:草

:命乞いしまーす

:やり返されてやんのw

 

「あ、これもできますね。墓地のガルドとルイーダを除外して、手札の『純粋なる魂(セイクリッド・トゥインクル・ソウル)』を特殊召喚!」

 

:ん?

:あ

:あ

:殺意たけーなw

 

 ……俺の組んだデッキだからね、知ってた。

 シャイロのくせに純粋なる魂を2枚入れていて、妨害よりも殺意に特化した構築なのだ。

 

 俺は無言で拳藤正義に親指を立てゴーサインを出すと、マイクを持ってそのコードが伸びている防音室へ入り、ドアを閉める。

 

 純粋なる魂の攻撃力は、2000。

 

「では。──バトル! 『純粋なる魂(セイクリッド・トゥインクル・ソウル)』で攻撃! ダイイチダァ!」

 

「ぐあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

 

 遠藤 3000 → 1000

 

「遠藤先輩、トドメだ!! 『断罪の龍(リトリビューション・ドラゴニア)』で、攻撃!!! ニレンダァ!!」

 

「うぐあああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」

 

 遠藤 1000 → -2000

 

:いつものwww

:オーバーキルですやんw

:2000の攻撃の意味ってなに?

:ない。舐めプ

:草ァwwwwwwww

 

 わざわざ叫ぶために防音室に入った俺は、テーブルへ戻る。

 

「け、拳藤正義……、強く、なったな……ガクッ」

 

「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!!」

 

:おお

:良い話だ

:良い話か……?

 

「これで、ワクワクは取り戻せたかな……?」

 

「はい。なんか中学の頃に戻った気分で、すごい楽しかったです! ワクワク……取り戻せました!」

 

「配信者として活動していくのは、楽しいことだけじゃない。悲しいこと、辛いこと、君はこれから体験していくことだろう。インターネットは決して、美しいものだけではない。

 ここは悪意の渦巻く地獄の入り口。今回のように、君の無知に付け込んで、怪しい語録を植え付ける悪人もいることだろう」

 

:なんか言われてるぞw

:は?

:否定はできねぇw

:やーい悪人

:それって、思想の否定ですよね

 

「君が最後に召喚した『純粋なる魂(セイクリッド・トゥインクル・ソウル)』。その魂を忘れずに、これからも頑張ってくれ……!」

 

:いやそれ召喚したの追い打ちかけるためだぞ

:やめたれwww

 

「はい! オレ、先輩から色んな事教えて貰いました! ネットミームは正しい使い方があるって。ただ闇雲に使えばいいだけじゃないって。

 あの語録は……恥ずかしいことなんだって!」

 

「拳藤正義……」

 

「遠藤先輩……。もう1戦、やりませんか……?」

 

 互いの名を呼び合う男たち。

 殴り合って芽生える友情もある。これが感動のフィナーレだ。

 

「いいよ。じゃあ今度は本気出すね」

 

「えっ」

 

「カード入れ替えるからちょっと待ってね。フロッグ全種類入れたデッキとか終わってるわマジで」

 

「え、えっ、あの……」

 

 そして惨劇は始まった。

 

 

「──『トレード・トード』の効果で自身を墓地に送り、デッキから『トリック・フロッグ』を特殊召喚。こいつは場にいるとき、名前を『デス・フロッグ』として扱う。

 魔法カード『悪夢の無限召喚』。これは攻撃力が1500以下のモンスターを特殊召喚した時に、デッキから同じカードを召喚する魔法。『トリック・フロッグ』は攻撃力100。この名前だけ『デス・フロッグ』のカードに使うとなぜか攻撃力1900の『デス・フロッグ』を3体召喚できる」

 

「えっ」

 

「代わりに拳藤正義も今場にいるルイーダを好きなだけ召喚できるよ」

 

「じゃあ、1体召喚します……」

 

「『死の共鳴(デス・シンフォニー)』!! 全部破壊だ!! 一斉攻撃!!」

 

「う、うわあああああぁぁぁ??」

 

 拳藤正義 4000 → 2100 → 200 → 100 → -1800

 

 

「──俺のターン。『リボーン・フロッグ』を効果で蘇生! 『トレード・トード』を召喚。

『トレード・トード』の効果で『リボーン・フロッグ』を墓地へ送り、デッキから『オーガ・フロッグ』を召喚。『トレード・トード』の効果は何度でも使用できる。『オーガ・フロッグ』を墓地へ送り『トリック・フロッグ』を召喚。これをくり返し、墓地に11枚のモンスターを送る」

 

「……?」

 

「墓地の『リバイバル・トード』の効果。『フロッグ』と名のついたモンスターを除外して蘇生。魔法カード『電磁投射装置』。場のモンスターを墓地に送ることで相手に400ダメージを与える」

 

「うわぁ!」

 

 拳藤正義 4000 → 3600

 

「『電磁投射装置』の効果は何度でも使える。『フロッグ』を除外して『リバイバル・トード』を蘇生! 無限コンボ!!」

 

「うぁ! ぐぁ! うぐっ! ぐはっ! どふっ! ずわっ! うごっ! うぉっ! どわーっ!」

 

 拳藤正義 3600 → 3200 → 2800 → 2400 → 2000 → 1600 → 1200 → 800 → 400 → 0

 

 

「──『トレード・トード』の効果をループ、『リバイバル・トード』の蘇生を挟むことでモンスターは増殖する! 『トレード・トード』の効果は普通に『デス・フロッグ』も召喚できる!」

 

「そんなのズルじゃないですか!?」

 

「『デス・フロッグ』が3体! 来るぞ優馬! 『死の共鳴(デス・シンフォニー)! 全部破壊! 一斉攻撃!!」

 

「させませんよ!! 『会社の裏金』! 死の共鳴を無効!!」

 

「じゃあ殴るか。『デス・フロッグ』でランサー ガルドを攻撃。残る2体で直接攻撃」

 

 拳藤正義 4000 → 3950 → 2050 → 150

 

「今度は、耐えましたよ……」

 

「速攻魔法『ハイパー・フュージョン』。手札を1枚捨てて『デス・フロッグ』3体を融合。

『フロッグ・デストライ』を融合召喚! まだ俺のバトルフェイズは終わってないぜ!

 攻撃力は2500! だけど墓地の『リボーン・フロッグ』の数×500上昇するので3500! 攻撃!!」

 

「ああーーーっ!」

 

 拳藤正義 150 → -3350

 

 

「あの、『フロッグ』強すぎませんか……?」

 

「うん。強いよ。コメントでも言われてる通り『トレード・トード』は強すぎて禁止だからね。『電磁投射装置』も」

 

:卑怯者!

:遠藤!

:カス!

:クズ!!

 

「1ターンに1度って書いてないと、なんでも悪用されるのがこのゲーム。

『トレード・トード』と『電磁投射装置』のデッキが2010年の世界大会でも優勝してるし。普段から純正の『フロッグ』使ってた俺にとってはいい迷惑だよ」

 

「マジのズルじゃないですか!?」

 

「ごめんごめん。今度はちゃんと禁止カードは抜くから」

 

「頼みますよ……」

 

『フロッグ』が無駄に禁止カードになってることくらい拳藤正義も知っていると思っていたのだけど、そうでもなかったらしい。

 彼自身はエンジョイ勢で、店の大会に誘うような友人がいただけ。シャイロ自体が強いので、詳しくなくてもやれていたのだとか。

 

 

「──『オーガ・フロッグ』は、手札から水モンスターを墓地に送ることで召喚できる。『リバイバル・トード』を捨てて特殊召喚!

『惑星開発計画』発動。『田舎田園』を手札に加えてそのまま発動! 星2以下の水属性水族の攻撃力を1200アップする」

 

「1200!? まあそんな厳しい条件なら仕方ないんですかね……?」

 

「『オーガ・フロッグ』は2200に!」

 

「いや高すぎですよ!」

 

「まだ通常召喚をしていないので、『ユニコーン・フロッグ』召喚! 攻撃力400が1600にアップ!」

 

「せ、1600ならまあいいか……?」

 

「魔法『種の総力』。墓地が1種族しかいないとき、その種族の攻撃力は800アップ。

『オーガ・フロッグ』は3000に! 『ユニコーン・フロッグ』は2400!」

 

「はははは」

 

「更に『集団の協力』を『ユニコーン・フロッグ』に装備! 『集団の協力』は、場のモンスター×800上昇する装備カード。

『ユニコーン・フロッグ』の攻撃力は4000になる!」

 

「ライフ4000ですよこのデュエル!?」

 

「『ユニコーン・フロッグ』は、相手の場にモンスターがいてもプレイヤーに直接攻撃が、できる」

 

 俺は拳藤正義を見る。

 

 拳藤正義は小さく笑い、マイクを手に取った。

 察した俺は防音室のドアを開いた。

 

 コードの都合で完全には閉められませんので、抑えてくださいね、と耳打ち。

 彼は頷いた。

 

「『ユニコーン・フロッグ』で、ダイレクトアタック!!」

 

 

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 拳藤正義 4000 → 0

 

 土曜の昼過ぎに突発的に行われたその配信は、なんだかんだ馬鹿騒ぎをして3時間近くまで繰り広げられた。

 デッキの構成を少しいじったりしては何度も対戦を重ね、気づけば夕方。元々予定されていた他のVNIVEARTHライバーの配信と重なるのを避けるというのもあって、解散となる。

 

「いやー遊んだ。はははっ、本当に中学生に戻った気分でしたよ。またやりましょうね、遠藤先輩!」

 

「ははは……。うん。今度は()()()()も他のカードも用意しておいてさ、というか互いに別のデッキ組んでからやってもいいね」

 

「そうですね! でもオレ、シャイロ以外使えるかなぁー?」

 

「別にカードじゃなくてもいっか。何か他にもコラボ考えておこう」

 

「マジですか!? 楽しみにしてます!」

 

:いつのまにか正義くん呼びになってんよ

:これ茶番? ガチ?

:3時間も楽しそうに遊んでれば友情もできるわな

:┌(┌^o^)┐

:やっぱ好きなんすねぇ!

神海まりも:私もデュエルしたーい ٩('ω')و

:!?

:お前もデュエリストなのかよw

 

 こうして見事、拳藤正義は童心に帰ることに成功し、かつてのジャスティスパンチを取り戻すことになる。

 

 しかしまたリスナーと話している内に語録やらミームに染まっては、俺との配信で取り戻そうとするための茶番を繰り広げる、というのがお約束になるのだった。

 

 ……。

 

 デュエルを何度も行う度に、伊能凛の椅子が少しずつ近づいて来ていて、最後のゲームになるころには、テーブルの真横で俺たちを見ていた。

 

 今も、次回について話す俺たちを無言で見上げている。

 

 3人でできる企画も、考えてみるか……。

 

【誰のビジュアルを先に見たい? VNIVEARTH人気投票!!】四期生のデビューにともなって、二次投票の受付を開始します!! 現在公式Tvvltterにて公開されている画像は、制作途中のラフ段階のものです。そこで、本アンケートの結果に基づいて完成させる順番を考慮いたします。皆様の推しにぜひご投票ください!(※なお一期生については、本編では未改修のためネタバレが含まれます)

  • 萬屋ぺすと
  • 佐土原恭子
  • 神海まりも
  • 詩星せるり
  • 遠藤
  • 黒宮院みやみ
  • 拳藤正義
  • 波羅劾ざくろ
  • 伊能凛
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