過去に戻ったので、破滅する推し箱の未来を変える。   作:匿名

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#053 違うものが見えている

 

 清楚系と淫乱系。

 

 GLとNL。

 

 VNIVEARTHの相反する2人は、卑劣なコメントによって第三勢力であるBLを仕向けられ、仲良く気分を悪くしていた。

 

「う、うぅん……私もなんか見たくない言葉が見えました。コメントは消しちゃいましょうか」

 

「そうですねぇ……」

 

 配信画面に映っていたコメント欄が消える。

 

:そんなー

:あれ、仲がいいのか?

:でも遠藤を中心に亀裂は走る

:遠藤さえいなければ……

:遠藤のせいで俺らが嫌われたぞ!

 

 俺の方に来るなって。

 

 2人のこの不仲疑惑がリスナー間で挙げられているのを俺が察知したのは1ヵ月ほど前、つまり黒宮院みやみのデビューから1ヵ月が経過した段階なのだけれど、あくまで険悪な方向でなくネタとしての不仲であったので、あえて放置することにした。

 

 このように2ヵ月も焦らしたことによって、夏の大喜利企画を目前にして満を持して──という注目を、このなんでもないただのコラボ配信に集めることができたのだ。

 

 と言ってもただ仲良し配信をするだけなので、これではリスナーも肩透かしとなってしまう。そこで、敢えて空けた期間を使って少しの目玉要素も用意した。

 それを発表するのは動画の終わりなので、それまでは何かをして時間を繋がなくてはいけない。

 

 初コラボなので使用する企画を運営側で用意しようかと提案したところ、2人もいればコメントも交えておしゃべりしているだけで十分という結論になった。

 どころか、トーク内容も自分たちで全部どうにかできそうな勢いだったので、任せてしまうことにした。

 

 その話し合いがあった時点では、この2人の配信でやるべきことのプランニングが俺にはできていなかったので、頼もしい限りである。

 

「いじわるなコメントはしばらく消してしまいます」

 

「全員BAN♡ です♡」

 

 と言いながらも、すぐにコメントを表示し直す詩星せるり。

 

「もういじわるしないって約束してくれたら、元に戻しますっ」

 

「反省♡ しましたかぁ?」

 

:もうしない!

:反省した!!!

:みゃみの今のもっと言って欲しい

:いじわるって言われるのも可愛いよね

:わかるマン

 

 遊んでるなぁ。

 しかし詩星せるりの普段の配信ではあまり見られない展開だ。

 こういうちょっと攻めた動き、あるいはOBS操作で視覚的に動かす操作は、どちらかというと黒宮院みやみのやりそうなこと。

 

 打ち合わせの中で黒宮院みやみが提案したのだろうか。

 

 ライバー同士で話し合い、それぞれの配信内容の良いところを取り入れて進化していく。

 

 いいなぁ。箱の理想的な成長の仕方だ。

 

:遠ゲイ痔凛愚

:エンゲージリング エンゲージリング エンゲージリング エンゲージリング エンゲージリング エンゲージリング

:荒らしやめてください

 

 コメント欄を埋めるような単純なコピペ荒らしの類は即ミュートである。こういう時のために俺はモデレーターをしている。

 ……荒らしやめてのコメントだけ残って浮いてしまうので、できれば他リスナーが反応する前に対処したかったな。

 

「せっかくなので、恋バナ♡ でもしましょうか」

 

「いいですね。……でも私、恋バナってしたことないんです。特に男の人と付き合うとかなかったので、クラスの友達とかとは……うみゅあ」

 

「ふふふふふ~♡ 私もクラスの男子には興味ないですけど、恋バナっていうのは別に好きな人がいれば、それだけでしていいんですよぉ♡」

 

:学生なの?

:高校生!?

:あんなえっちな配信する高校生がいるかよw

:高校生がやってたと思うとむしろエッ

:それはエッッッ!!!!

 

「そうなんですぅ~♡ 私たちは実は華の高校生♡ バレちゃいましたぁ……♡ クラスのみんなには、内緒♡ ですよぉ♡ しぃ~っ♡」

 

:うわなにそれえっど

:シチュ語りだけでこの威力よ

:立った。責任を取れ。

:今のBGMなしで欲しかった!!

:おい遠藤、BGMを消せ!

:遠藤がやれと言えばやるぞ。運営媚び女だ

:頼むから貴女は音声作品をやりなさい

:dislteで売ってくれ

 

 今の上手いな。多分だけど、あんまりコラボでしたことなかった話題に対してつい学生のような発言してしまった詩星せるり、そこへ黒宮院みやみがフォローを入れたんだと思う。

 

 勢いと破壊力で全部持っていった。なんだこの女。

 

 その反応のコメントが汚いのは見なかったことにする。

 

「それで、恋バナ♡ ですけど、理想のデートとかあります~?」

 

「はい! それはもう。遊園地、カラオケ、映画館、ショッピング、ピクニック、公園でお散歩、放課後の食べ歩き、おうちでまったりデート。ミナちゃんと過ごす休日なんていくらでも浮かんできます!」

 

「いいですねぇ~。私も放課後デートなんかしてみたいですし……あ! 8月の大喜利大会! 優勝したら──

 

 ──エンド様と夢の国で制服デートにしましょう~♡」

 

 ……。

 

 制服……!?

 

「制服って、学校のですか? わざわざ制服で行く意味ってあるんですか? 動きにくいだけのような。私はミナちゃんに動きやすくてとっても可愛い服を着て欲しいですけど……」

 

「ふふふ~。高校を卒業したらもう制服なんて着れなくなっちゃいますよね? だからこそ、今のうちに制服を着ていくんです♡」

 

 なんか悍ましいことを言っている気がした。

 

 俺は今年で21歳。黒宮院みやみは23歳。

 

 これはなんとしてでも彼女を優勝させないように判定して……いや、遠藤のスケジュールが合わないで断ればいいか。運営の力を超える願いは叶えられない。

 

「なるほど……! 私も大喜利大会で優勝して、ミナちゃんと夢の国で制服デートをします!」

 

 それも駄目だ。

 

 これはなんとしてでも彼女を優勝させないように判定して……いや、minaのスケジュールが合わないで断ればいいか。運営の力を超える願いは叶えられない。

 

 叶えられない願いばっかじゃねーかよ。

 

 他には社員になるとかだろ。正義くんや社長が優勝するのが……いや、萬屋ぺすとが優勝するのが一番丸いんだけど、でもあの人アドリブ弱そうなんだよなぁ。

 

 事前に全回答を用意しても良いんだけど、あんまり仕込むとリスナーが勘付いて冷めるかもだし、ほどほどにしておかないといけない。その塩梅は決めかねていて、調整しているところだ。

 

「じゃあ~。私たちは、ライバルですね?」

 

「そうですね……! 8月の大喜利企画、どちらが勝って夢の国へ行くか、勝負です!」

 

:おや……?

:やっぱそうだったか

:ギス……ギス……

:2人は不仲!?

:不仲じゃないと思うけど

 

 うーん? そっちに行っちゃうのかぁ……。

 こういうのが派閥の対立に発展しちゃうと遺恨が残りそうだから避けたいんだよなぁ。アクキー選挙もやっぱ全員しますでお茶を濁すわけだし……。

 

 夢の国に行くこと自体は運営パワーがなくたって金さえ出せばできることだし、最悪『自分で行けよ』で済むから平気か?

 

 それならアクリルキーホルダーだって自分で金出せばできるから、全員分作るってフォローがいらない……いや、イラストレーターを統一する都合上は運営パワーが必要、これが線引きか。

 

 誰かが夢の国に行く結末よりも、萬屋ぺすとか佐土原恭子が優勝するのが一番丸く収まるのは事実。

 佐土原恭子……。本人が無理そうって言ってたし、無理だろうな。

 

 大喜利企画については、流れを見てからどうにか対応をしよう。最悪夢の国自体が運営の力を大きく超えたものってことにして逃げればいい。その時の俺に任せた。どうにかなれ。

 

 俺の思考がどんどん配信から離れている間にも、2人の恋バナとやらは続けられていた。

 

「デートと言っても、考えることはいっぱいありますよねぇ……。待ち合わせ、どっちが先に着いていて、どういう反応をするのが良いですかぁ?」

 

「は、反応……!」

 

「私の場合はですねぇ、私の方が待ち合わせ場所より早い時間に先に着くんですけど、エンド様は実はもっと先に着いていて、でも待ち合わせ場所じゃなくて少し離れたところで待っているんです。私に待たせたと思わせたくないから……!

 私が着いたのを見てから声をかけてくるんですよぉ……♡ 『待った? みやみ』って。キャ~~!!」

 

「おぉ……勉強になります。私が先に着くかどうか。やっぱりミナちゃんを待たせたくないので、先に着いて──」

 

:ラブコメで草

:うわコッテコテww

 

「ふふ♡ 恋愛漫画や夢小説はたくさん読んでましたからねぇ……。詩星先輩はどうです?」

 

「少しは読んだことありますけど、相手が男の人の漫画ってそんなに関係ないと思って……」

 

:男 の 人 と の

:ブレねぇなw

 

「それは勿体ないですよぉ。胸が、キュン♡ となる感覚は漫画や小説でも参考にできます。百合小説──女性同士の恋愛モノだって、探せばちゃんとありますからね~」

 

「あぁー! そういうの探すのもアリでしたか……」

 

「私はもう読む恋愛漫画が全てエンド様との胸キュンライフに早変わりです♡ 夢の国でしたいこととかいっぱい考えておかないと~♡」

 

:この人なんでVのくせに男とのデートプラン語ってるの?

:みゃみ……;;

:あんまり遠藤のこと言わないで欲しい

:本当に行かないよな?

 

「ふふふふふ~♡ 本当に行くかどうかは、と・も・か・く。女の子は恋してる時が一番可愛いんですよぉ♡

 皆様も、私が恋愛漫画を読んでしているように。エンド様の部分をリスナーの皆様に入れ替えて考えてください♡ そうすれば、私とあなたのデート♡ ですよぉ♡」

 

 なんかすげぇこと言ってる。

 

 確かに男性と女性のコラボというのは、その女性キャラクターの『男性を前にした時』というシチュエーションを深堀りすることに繋がる。

 

 VTuberは特に中の人という概念が重視されて、ガチ恋というものに直結しやすい立場にある。その理屈がありなら全ての男女コラボが正当化される免罪符になってしまう。

 

 少なくとも、この2019年に通用するものではない。

 

 いくら黒宮院みやみのリスナーといえど、そこまで馬鹿じゃ──

 

:おぉ……!

:その手があったか

:遠藤、どけ!!

:まあ本当に遠藤と付き合うとかないもんな

:みゃみに限ってそれはないw

 

 ──馬鹿じゃないと思わせてくれよ。

 

 普段の配信から彼女のノリに慣れている、つまり調教されていたせいで、この理屈で言いくるめられている。それでいいのか哭泣員(こっきゅういん)

 

:へーそういうのもあるんだ

:みなちゃんと自分を入れ替えればいいと

:百合にも優しい考え方ですね!

 

 なんか雰囲気の違うコメントも見える。

 

 これ詩星せるりのリスナーか。あー、詩星せるりのリスナーもいるから、いつもの調教路線じゃないこの理屈にしたのかもしれない。

 

「待ち合わせの後はどうします? お散歩ですか? カフェですか?」

 

「あぁ~♡ どっちも良いですねぇ……。歩くときは手なんかこう、繋ぎたいな♡ って、ちょっとぶつけて……」

 

「わ……! 良いですね!」

 

 そしてこの配信は、理想のデートプランとかいう脳内がピンク色なこの2人ならではの内容で展開された。

 コメントの反応を交えながらだったので、簡単に1時間は経過してしまう。

 

 

「まだ映画館で映画を見ている途中ですが、もうお時間みたいです!」

 

:全然進んでないww

:そりゃポップコーンの味ごとに語ってればな

:塩とキャラメルにして交換とか笑うわ

:やっぱデートしたことあるんじゃ……みやみ;;

:恋愛漫画で見ただけって言ってたよ

:↑そいつらNTRで気持ち良くなってる連中だから心配ないよ

 

「早いですねぇ~。また今度、続きをしましょうね♡」

 

「はい!」

 

「では最後に告知です~♡」

 

「そうなんです! 実はこのあと……私のチャンネルで、歌ってみた動画が投稿されます!」

 

「わぁ~♡」

 

「それもなんと、みやみちゃんとのデュエットなんです!」

 

:デュエット!?

:みゃみ歌えたのか!?

 

「そうなんです~♡ これ準備してて、コラボが遅れちゃったんですよぉ」

 

「はい! みんなを驚かせようと思って……」

 

 そういうカバーストーリーである。

 

「ふふふ~。歌い方とか、せるりちゃんにもアドバイスを貰ったので、上手に歌えたと思います♡ 哭泣員の皆様、ぜひ聴いてくださいねっ♡」

 

:なるほど

:不仲じゃなかったか

:聴く!!

 

「あとですねぇ……。それと同時に、私個人の歌ってみたも投稿される予定です♡」

 

:!?

 

「それでは皆様!」

 

「私たちのデュエット曲──」

 

「──ぜ ひ 聴 い て く だ さ い ね ! 」
 
「── 聴 い て く れ る と 嬉 し い で す~♡」

 

:そこは合わないんかいww

:締まらないw

:……不仲?

:せーのって言わないとw

 

 配信冒頭では声を揃えていたが、終了時には揃わないという、うっかりネタである。

 

 

 詩星せるりと黒宮院みやみによる初めてのコラボ。

 

 これまでの自分の配信で、どこに行きたい、あれをしたいなどとデートプランを数多く挙げていた詩星せるりだったけれど、黒宮院みやみとのコラボを経て、デート描写の内容がより濃密にというか、じっとりねっとりとした湿度を伴っていくことになる。

 

 詩星せるりの方が先輩でありながら、黒宮院みやみを恋愛の師匠かのような流れになっていたのもこれはこれで面白い。

 

 実際、黒宮院みやみの方が年上で配信キャリアも長い上に、恋愛漫画だか小説だかが基だという恋愛知識の量も多い。

 詩星せるりにとっては、黒宮院みやみもまた萬屋ぺすとと同じように、頼れる年上となるはずだ。

 

 18歳と23歳。綺麗にちょうど5年の差がある。

 

 俺には到底思いつかないような、この2人だからこその良い配信だった。

 

 配信枠が終わったタイミングで投稿されたデュエット曲は、黒宮院みやみにとっては初の歌ってみたであり、元々歌ってみたを投稿する予定のあった彼女は、このコラボで発表するというインパクトを強めるために個人での歌投稿を待っていてくれたのだ。

 

 同じ時間に個人の歌ってみたも投稿して、実は歌うことも出来たという話題性をより高めていた。

 

 例の如く、許諾が取りやすいという理由で採用されがちなボカロ楽曲より選出。

 黒宮院みやみ個人の初の歌ってみたは、本人のキャラクターにも良く似合った、甘ったるい恋愛ソングだった。

 

 普段から歌ってみたを投稿している詩星せるりには技術面で劣るかもしれないが、彼女自身も初投稿にしては普通に歌が上手かった。

 あの未来で、一瞬だけ3人組ユニットの発足が予定されていたというのも、頷ける話だ。

 

 動画の内容は普段の詩星せるりと同じで、1枚絵に歌詞を載せるだけの簡易なもの。

 

 クレジットにはしていないが、使用された絵は俺──遠藤として描いた。黒宮院みやみがその方が良いと希望を出したのだ。

 マネージャーとしての俺はminaに頼むと言ったけど、それでも遠藤が良いと言うので、まあ投稿を待ってくれていたのだしそのくらい良いかと了承。

 

 ただ男女コラボの炎上を避けるためにクレジットに明記はせず、リスナーにはminaだと思わせると説明するがこれを承諾。これで機嫌良さそうにしていたし、よくわからないものだ。

 ボカロの歌ってみたは、その楽曲MVのパロディなので、minaとして書いても遠藤として書いても大差はない。

 無難な正解があって用意しやすいのも、ボカロ楽曲が多用される要因である。

 

 

 なお、デュエットに使用されたのもまた恋愛系の人気ボカロ楽曲なんだけれど、恋愛脳のイメージが強い2人だからこそ、これがちょっとヤンデレ気味に感じられたようで。

 

:これ、2人が俺を取り合ってないか?

:やっぱり不仲だったかww

 

 リスナーの交流用に残していた配信枠の時点でこんな感想が書き込まれていて、これからもネタとして不仲要素は擦られていくのだった。

 

【誰のビジュアルを先に見たい? VNIVEARTH人気投票!!】四期生のデビューにともなって、二次投票の受付を開始します!! 現在公式Tvvltterにて公開されている画像は、制作途中のラフ段階のものです。そこで、本アンケートの結果に基づいて完成させる順番を考慮いたします。皆様の推しにぜひご投票ください!(※なお一期生については、本編では未改修のためネタバレが含まれます)

  • 萬屋ぺすと
  • 佐土原恭子
  • 神海まりも
  • 詩星せるり
  • 遠藤
  • 黒宮院みやみ
  • 拳藤正義
  • 波羅劾ざくろ
  • 伊能凛
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