:俺たちは何を見せられているんだ?
:野郎の焼きそば完食応援上映
:いらねぇ…
:しゃちょうがんばえー
:遠藤w
:ぷいきゅあがんばえー
:結局また社長ほったらかしで草
空き時間。仮眠をとって体力の足しにするのもありかもしれないが、俺は作業の前準備とすることを選んだ。
切り抜き作成に向けて配信アーカイブを見返す。80人〜200人と推移した配信規模に対してコメントはかなり活発な方で、アクティブなリスナーが多いと言えるだろう。
身内ノリが強いと捉えることもできるが、2019年のリスナー母数が少ない内に気にすることではないし、そんなことで新規参入が少ないだとかを気にしてはいられない。
逆に身内ノリも何もない無味無臭の配信では、ただ話題にならないだけでエンターテイメントとしては遠ざかってしまうだろう。
VNIVEARTH全体におけるこのコメントの活発さというのは、意図して狙ったものだ。
俺は一般リスナーを装った切り抜き専用のアカウント『頚椎』として、切り抜き動画を投稿している。
切り抜きの方針として、ライバーとリスナーとの掛け合いを強調することに重点を置いている。
ライバー自身の魅力を引き出すというよりは、配信の見どころに対して書き込まれたコメントをピックアップするという側面が強い。
ライバーの発言と、コメント。この2つでコントに仕立てているというのが実態だろうか。
まあ本腰を入れて作成するには時間と体力が足りないので、最低限の編集に努めている都合上、立派なクリエイターとして作品を生み出しているわけでもない。
まあ、ただのコラ職人のようなものである。
そんなコラ職人である切り抜き師『頚椎』も、2018年から活動しているということもあって先人という恩恵を得ており、それなりの知名度と再生数があったりする。
頚椎とやらは今となってはもはや露骨にVNIVEARTHを贔屓する人になっていて、有名箱に関しては未来の記憶を頼りにバズっていたシーンを狙い撃ちしているだけなのに対し、VNIVEARTHに限っては全ての配信を網羅しているかのように細かく拾うのだ。
いや実際に網羅しているというのは余談として。
そして俺は、切り抜きに使用するために俺自身もコメントをしている。
俺のセンスだとかエンタテイナーとしての素質だとかが問題になってくるが、他に面白いコメントがないようであれば俺の自演コメントが俺の切り抜きに使用される。
最低限の見どころの担保のための自演コメント。あるいは他のリスナーもこういうコメントをしていいんだぞというお手本として。
純粋なリスナーのコメント、俺の
切り抜きを見たリスナーは、こういうコメントをする場所なのだと認識する。
俺の切り抜きを導線としてライブ配信に訪れたリスナーの中には、自分も面白いことを言ってやろうという気概でコメントを打つようになる人もいて、よりコメントは盛んになっていくのだ。
この流れを形成する上での立役者が、あの感染者であったりする。
最初の内はいくつものアカウントを使って、俺だけで初動に必要な空気を用意しようと思っていたが、元々感染者というコメントのノリがいいリスナーがいたこともあってその手間は省かれた。
面白いことを言って配信者に読まれるために、コメントをする。
これこそが、配信に『参加する』という、俺の思う『同じ時間を共有する体験型コンテンツ』にするための、入り口になるのだと考えている。
コメントを通してライバーとリアルタイムな会話をするために配信に訪れる、というのが本来の形ではあるが、まだこの時代ではその動機は一般的でなく、価値観や偏見によって恥ずかしい行為と色眼鏡で見られるかもしれない。
そこへ、この別口によるアプローチで間接的に触れさせていく、慣れさせていくというのが理想の効果である。
簡単に言えば、オタクくせーと忌避する心を、知らずの内にVTuber沼へ落としていく。
あれ。……これだと怪しいセミナーか何かじゃないか?
……。
未来で見た切り抜きがそう作用していたと結論付けての作戦だし、意外と同じように自演誘導していたのかもしれない、もとい、いるのかもしれない。俺が思いついたんだから、本当の先人もやっていた可能性はある。
こういった仕組みもあって、こちらからコメントが増えるように働きかけているVNIVEARTHの配信は、同時視聴者数に対してコメントが多い傾向にある。
俺の自演コメントだって、リスナーとしてコメントしているのだから、リスナーのコメントに含まれる。
一般視聴者よりエンタメ界隈に理解があるだろう人間が、切り抜きを見越して面白くなると思ったことをコメントしているのだから、切り抜きへの採用率は高い。
自演コメント。良いことばかりじゃないか。
悪人みたいなことを考えながら、切り抜きの予定を組んでいく。
そして後日、編集され投稿された切り抜きは『社長の凸待ち配信にライバー全員が駆け付ける』という、心温まる配信(諸説あり)としてネタ的な意味で話題となる。
*
時刻は午前10時。場所は新幹線の中。切り抜きの予定を組んでいた空き時間とはつまるところ、移動時間であった。
到着したのは静岡県。神奈川県を貫通して行くとはいえ、新幹線だと1時間とかからない。
同じ関東圏よりも移動にかかる時間が短いケースも多く、遠いようで遠くないという、意外な近さを感じさせる。
静岡出身のライバーが多い気がするのも、そういった交通の便を考慮してのものなのかもしれない。
……いや、公表してる人がたまたまその傾向にあっただけでもあるんだろうけど。
新幹線を降りてからはバスに乗り換え、少し歩いて目的地に到着する。
そこは一般民家。
表札に刻まれた文字を改めて確認する。
[河井]
人の家を訪ねるのならばまずインターフォンを押さねばなるまいが、これがまた緊張する。
俺は詩星せるりを事務所へ案内するためにここに来たのだが、
つまりは、未成年の娘さんを1週間お預かりします、と挨拶をするために来たのだ。
詩星せるりがVTuberデビューをする際に、通すべき筋として彼女の両親とは説得をするための会話をしているが、あれは通話だったし、何より、あの時期は過去に戻ったことで人生をやり直せると高揚感でテンションがおかしかった頃だ。
VNIVEARTH災厄四天王との邂逅も済ませ、比較的冷静な今の俺には少し荷が重い。
挨拶用に菓子折りは持った。ちゃんとスーパーならどこでも売ってそうなものではなく、東京っぽいイメージのあるものを選んだ。
着ているスーツはいつもの黒いスーツではない。周囲を威圧する目的ではないのだから、ビジネス用のグレーのスーツだ。
外見というのは大事だ。だからこそ社長を美容院に行かせたのだ。
俺がここで社長スタイルだったり、あるいはアロハシャツなんかで訪れてしまえば、信用など得られるわけがなかっただろう。
ネクタイは締めているか? よし。
髪は跳ねていないな? よし。
行くぞ──
*
家の前で、南條さんが立ち尽くしている……。
南條さん。南條亜紀人。私が所属するVTuberタレント事務所『VNIVEARTH』の社員で、ライバーのマネジメントをしている人だ。
ミナちゃんファンクラブ(非公式)の会員でもある。
あの、人の家の前にずっといられると恥ずかしいというか……。
パパとママは気づいていないけど、もうすぐ着きますよ、とLIIVEを貰っているから私はその姿を見てしまっている。
スーツの上着を整えたり、たぶんインカメでスマホを見ながら髪をいじったり、持っている紙袋を確認したり。
早くインターフォンを押してくれないかな。
誰かに見られて、友達に噂とかされると恥ずかしいし……。
LIIVE送っちゃおっかな。
……ミナちゃんに相談する口実にしちゃお。
『家の前でマネージャーが立ち尽くしてるんだけど、どうすればいいかな?』
送信。あっ、南條さんインターフォン押そうとしてた。
スマホ見てる。
え、既読付いてる。ミナちゃん、もう確認して南條さんに何か送ったの?
早い……。そこまで怒ってるように見えたのかな。私が怒ってると思って南條さんに苦情を。
え、私そんなに怒りっぽくないもん……。ミナちゃんに短気だって思われたかも。
おのれ南條亜紀人……。
とか半分冗談で思ってると、返信がくる。
『もう行くと思うよ!』
『すみません! お待たせしました!』
ミナちゃんと南條さんからだ。
インターフォンが鳴って、ママが出る。
それから南條さんは、パパやママと一緒に来客用に使う和室に入っていった。挨拶するとは言ってたけど、3人で個室かぁ。
えっと……がんばってくださーいっ。
心の中で応援してみる。
素直に応援するのはなんでだろう気恥ずかしいので、詩星せるりとしての言葉を使う。
昨日の社長応援配信をするにあたって、社長を応援するセリフが必要になったのでミナちゃんに相談して決めたものだ。配信上のキャラとして考えたものを、社長や南條さんへ向けるのはなんか違和感がある。
他のライバーとキャラとしての口調で会話してるから、変なことじゃないんだけど。
リアルの姿を知ってる人だからかな。他の人にもこれから会うんだけど、平気かな私。今後の配信で中の人の外見が浮かんできて、変な口調になっちゃうかも。
そういう弊害はあるかもしれないって、いつかミナちゃんも言ってた気がする。
……。
暇かも。ミナちゃんにLIIVEを送るけど、返事なし。タイミング悪かったかな。
20分くらいして、どこか疲れたような顔の南條さんが出てくる。
なんか罪悪感。私のVTuber活動のためにしてくれてるんだもんね。ミナちゃんに短気だって思われたかもしれないのは、水に流そう。
こんなことがあってから、南條さんのエスコートで事務所へ向かう。
1時間もかからないらしい。それなら、今後も企画で行くことになっても平気かな。
……ママの南條さんへの呼び方が『亜紀人くん』だったのが、なんか、やだ。
*
つ、疲れた……。なんだこの疲労感。
三者面談(娘抜き母親参戦)とか想定していないぞ。せめてリビングで話すものだと思ってた。
これがせるりちゃんの家かぁ〜。ここでせるりちゃんは育ったんだね。
とか呑気なことはやってられなかった。
会話内容に関しては、まあなんというか思ったより平和だった。
娘に何かがあったら殺すぞ、くらいの感じかと思っていたけど、意外と好感触でさえある。
河井美空が詩星せるりとしてVTuberを始めるときから、配信者の危険とその対策や、配信を行う上でのルールなんかを話していたのが功を奏したか。
もう最初から大事な娘さんをお預かりしますの姿勢だったもんなぁ。詩星せるりから厳しい両親だと前もって聞いていたので、とにかくこれ以上ないくらい大事に思っていることを伝えていたし、今日もその方向で話を進めた。それが真摯な姿に映ってくれたのだろう。
「亜紀人くん。美空のこと、よろしくね」
なんて言う河井母の横で、同時に顔を顰めた河井父。
それから父親は何も言わなくなったけど、いいんだよな……?
バスに乗って、詩星せるりと駅へ向かう。
移動にバスを使うことはあまりないらしく、どこか緊張した様子だった。
せるりちゃんってこんな感じなんだね。
意外?
意外かも。せるりちゃんは清楚で完璧なVTuberだったから、ね……っ!
ふぅん。
ちょっと落ち着かない様子の詩星せるりを気取られないように観察しながら、預かった旅行鞄を持つ。
話すこと、あんまりないなぁ……。
普段はminaとして関わるばかりで、南條亜紀人として
minaしか知り得ない話題を出さないようにしなくてはいけないのもあって、切り出し方は減る。
バスはすぐに降りるから、まだいい。
問題は、新幹線に乗ってからだ。これから30分以上も隣に座ることになる。
駅に着いたらまず、俺はトイレで黒いスーツに着替えた。
こちらの方が、なんというか迫力がある。気がする。保護者への挨拶には向いていないが、保護対象の護送には向いている。気がする。ここからは、詩星せるりを無事に事務所までの送り届けなければいけないのだから。
不思議な顔で見られたが、これも必要経費だ。
「喉の調子はいかがですか? 今日の配信では歌うことになります。何か問題があったらすぐに言ってくださいね」
そんな業務上の言葉を最後に、俺は話題に困る。
おそらく、詩星せるりはこういう時間をminaとやり取りをして過ごす。今までの傾向や、やりとりがあった時間からしてそうだ。俺が彼女の両親と話をしている間でさえ、minaアカウントにはメッセージが送られてきていた。
もしかして、学校の友達とかいないの……?
とか思わないこともないんだけれども、現実で顔も知っている身近な相手よりも、ネットを介してでしか関わりがない友人の方が話しやすいこともあるのだろう。
むしろ、ここまでなんでも隔てなく話せる程に親しくそして信頼できる相手が、ネット上にいるというのは貴重なのかもしれない。
それが21歳成人男性が扮するなりきりアカウントでさえなければ良かったのに……。
今この時間は、移動時間という空き時間である。しかし詩星せるりはminaとのやり取りに興じようとはしていなかった。
なぜかと言えば、今日の出発前に俺がminaとして『今日の移動時間は南條さんとお話してみて』と送ったからだ。ちょうど用事があって返信できないしいい機会だからと、他ならぬ俺が彼女に勧めたのだ。
彼女の前で返信をするわけにもいかないからゆえの指示だが、これが俺を苦しめる。
のど飴を渡したり、茎わかめを断られたり。
話題を探して悩んでいたとき、詩星せるりの方から声を掛けられる。
「……ミナちゃんは、来ないんですよね」
「はい。彼女は今回不参加、こういった場に現れることは中々ありませんから。申し訳ございません」
「じゃあ。ミナちゃんのこと、教えてくれますか?」
そうか、その手があったか。俺とあの少女の思い出を語る。
俺はあの輝かしい日々の記憶を辿るのだが、しかし病院にいた頃の思い出ということは、つまりは病院にいるということを悟られないように改変する必要があるということだ。
なんだ、なにが話せるんだ。
夏、夏の思い出……。俺の中で1人の少女の顔が色んな表情を見せる。俺の心は豊かに彩られるが、しかしそれをそのまま、詩星せるりの歌を一緒に聴いただとかを言えるわけがない。
す、スイカ、食べた……。
また悩んでいると、助け舟を出すのはまたもや詩星せるりだった。
「そうです、せっかくですから南條さんのことを教えてください」
珍しい質問だ。まさか詩星せるりから俺に対する質問がくることになるとは。
それなら、まあ。
「まずお名前は……?」
「南條亜紀人です」
「本名ですか?」
「ええ。両親が再婚しているので旧姓があるはずですけど、私が小さい頃なのでよく覚えていません。どうしてもということであれば調べますが……」
「い、いえ、そこまでは……。すみません言いにくいことを。えっと、血液型は?」
「A型です」
「誕生日は?」
「9月6日です」
履歴書を書けるような内容に始まり、好きな食べ物などのなんだかプロフィール帳でも作れそうな内容まで、多岐に渡った。
むむ……と時々唸るので、探偵ごっこをしている子供に事情聴取を受けているようで微笑ましくもあったが、それにしても詩星せるりがここまで俺に対して興味を抱くとは思わなかった。
なんでだろう。
むしろ何か理由があって俺のことを知ろうとしているのだろうか。
……まさか、俺のことを疑っている!?
何か疑われるようなことをしただろうか。俺の演技は完璧なはずだ。なにしろ参考にした相手がいて、性格も口調も、俺が知り得る限りの全てを使ってとある少女を再現している。
河井宅の前で、LIIVEの返信を行っているところを見られたか?
いや、自前のスマホと会社のスマホでアカウントを使い分けてはいるが、似たようなデザインの機種なので判別は付かないはず。ポケットの中で入力したり、紙袋の中で操作したりして、どこから見られていても、相当近くから凝視でもされていなければバレないように操作していたつもりだ。
ではなんだ、普段のやり取りから俺とminaの関係性を疑って、よもや同一人物ではないかと勘付いてしまっているというのか。これは質問攻めにして詮索している、あるいは揺さぶりをかけていると。
「南條さんは今年で22歳なんですよね。高校卒業後とかはどうしてたんですか? ……私も今年で卒業なので」
なるほど、そう言われると妥当な質問だ。
答えるのは容易いことなんだけど、これが詳細にとなるとそうでもないかもしれない。年齢的にはたった3年前のことかもしれないが、過去に戻るというラグを挟んでいるためそこに5年分がプラスされる。経過した時間を合わせればもう1年上乗せされる。
あれ、何してたっけ。
「ちょっと記憶が……。とりあえず、高校を卒業した後は就職しましたよ」
苦笑いをしながら言う。あんまり思い出したくないことも思い出しそうで、難しい。言うほど容易い事ではなかったか。
「研究所に勤めてました。研究所と言っても下請けの製造業ですけどね。これがまた、扱う薬品が身体にあわなくて……」
「薬を扱っていたんですか……!?」
いや薬だけどさ……。
予想外に大きな反応を見せた詩星せるり。この情報により、俺の嫌な予感センサーに引っかかる。
え、いや、まさか。
それは最悪の展開。
詩星せるりは――
――薬に、興味があるのか……!?
これまでminaとしてやり取りをしてきた間にも、そんな素振りはなかったはずだ。なかった。いや、確実にない。あったらその場で注意している。
それだけは駄目だ。絶対に駄目だ。
薬物マイスターになるのはお前じゃないだろう。
懇切丁寧に説明する必要があるかもしれないが、そうと決まったわけではないし、何よりも俺の口から言われたところで効果は薄いだろう。
もし、そうなのであれば。
minaとして、強く否定しないといけない。
まずは、事実の確認だ。今から、もしくは事務所に着き次第にでもしてしまいたいところだけど、詩星せるりには今日の20時からの配信が控えている。彼女のコンディションを考えれば、探りを入れるのならば今日の配信が終わって、落ち着いてからにするべきだ。
他のライバーと一緒に生活することになるんだし、オフコラボ中にするのは酷か?
しかし東京だ。そう、その頃にはもう、密売人の類がいるかもしれない東京に来てしまっている。事を仕損じれば、彼女が道を踏み外すのを阻止できないかもしれない。
詩星せるりから極力目を離さないようにして……いや無理だ。俺はマネージャー南條であり、ライバー遠藤。その一人二役を秘匿しながら振舞う以上、誰かを監視するなど到底不可能なことだ。
誰か他のライバーに頼むか? いやなんて言って頼むんだ。しかも俺の無茶で予定に都合を付けて東京に来てくれている人たちだぞ、顎で使うような真似はできない。
なんて考えながら、新幹線を降りて駅から事務所までの道を軽い雑談をしながら歩いていくのだけれど、ここで忘れそうになっていた神海まりもからのおつかいを思い出す。
あの女子高生は、俺が外出する度についでだからとお菓子やアイスを強請るのだ。
今日だって、詩星せるりの迎えに行くと知るやいなや、
『例の物を』
とかなんとか適当なことを、ほぼ徹夜明けでこれから寝るのだと目をこすりながら言うのだ。
俺もはいはいと了解するのだが、これは甘やかしすぎというやつなのだろうか。
詩星せるりに断りを入れて、コンビニへ向かう。少し通り過ぎてしまった。道を引き返すことになってしまったが、思いのほか彼女と距離ができる。まずいな、視線が届かない。一緒に来てもらうべきだったか。急ごう。
事務所に到着。いつもの流れとして、手洗いうがいを案内する。
今のうちから習慣づけることで、来たるコロナ禍での自衛をしてもらおうというのが狙いだ。せっかくだしアルコール消毒についても紹介しておくか。
オフィスに入るとか神海まりもがこちらを見る。はいはい。わかっておるよ。俺は枝豆のスナック菓子が入ったビニール袋を差し出した。
「例の物です」
「うむ」
こいつ、新しく来るライバーに力関係を見せつけてるんじゃないだろうな?
*
私にはミナちゃんから与えられたミッションがある。
それは、このVNIVEARTHの内外に危険が潜んでいないか、このオフコラボ期間中を通してライバー目線からわかることを調査するということだ。
借金、漏洩、中傷、そして──薬物。
事務所を危機に晒す事柄はたくさんあって、インターネットで多くの人に向けて活動する私たちにとっては、よりその脅威に襲われるリスクも高くなっていて、その防衛策をおこなっていかなくてはいけない、らしい。
この現代社会は、綺麗ごとだけではない。
世の中には、若者を薬物漬けにして借金を背負わせ、裏社会に売り飛ばしてしまうような極悪人がいるのだとか。
――南條さんは言った。
前職で薬品を扱っていた。
記憶が曖昧。
つまり。
南條亜紀人、この男には──
──薬物を使用していた疑いがあるのだ。
なんか急に真っ黒なスーツに着替えたし、怪しい……。
そして、だ。
事務所に着くなり、南條さんは私と同じくらいの女性に声を掛けた。
「例のモノです」
「うむ」
み、密売人……。
【誰のビジュアルを先に見たい? VNIVEARTH人気投票!!】四期生のデビューにともなって、二次投票の受付を開始します!! 現在公式Tvvltterにて公開されている画像は、制作途中のラフ段階のものです。そこで、本アンケートの結果に基づいて完成させる順番を考慮いたします。皆様の推しにぜひご投票ください!(※なお一期生については、本編では未改修のためネタバレが含まれます)
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萬屋ぺすと
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佐土原恭子
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神海まりも
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詩星せるり
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遠藤
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黒宮院みやみ
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拳藤正義
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波羅劾ざくろ
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伊能凛