過去に戻ったので、破滅する推し箱の未来を変える。   作:匿名

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#068 ミナちゃん以外にいるだなんて

 黒宮院みやみちゃんが事務所に来て、これでVNIVEARTHライバーも8人となった。

 

 あとは二期生の問題児――のようで意外と配信や打ち合わせでは大人しい、自称みなしごエンドレスこと遠藤さんだけど、彼は今日はここには来ないと聞いている。

 

 これから行われるせるりちゃんのプレゼン配信は、VNIVEARTHライバー全員がゲストとして参加するカラオケ回だ。全員参加と言うからにはもちろん遠藤も参加することになっているんだけど、社長と遠藤、拳藤くんは録音で済ませるらしく、遠藤はこの場にすらいない。

 

 社長は生歌のハードルが高いという理由があるようで、遠藤は都合で出払っているのだとかなんとか。

 

 ……もしかしてだけど、1人だけ録音で済ませる社長を独りにしないためだったりしてね。

 

 冗談で考えつつ、いつもの配信の仲の良さを見るとあながちありえないことでもないように思えてくる。コメントやSNSでもたまーに見るけど、ダメンズ社長を見捨てないツンデレ秘書(男)って構図で盛り上がるのもわかる気がする。

 

 そりゃ薄い本も出ちゃうわね……。

 

 2人の薄い本とは、コピー機で印刷しただけのもの。とはいえ、FA(ファンアート)ならアタシも増えてきたけど同人誌としてはまだないのだ。

 負けた気分……でも女性ライバーの薄い本と言ったらいかがわしいごにょごにょ系かもしれないし、同人誌になりたいような、なりたくないような。社長×遠藤本は怖いもの見たさがあるけど。

 

 アタシをマタタビであれやこれやしようぜってコメントあるのよね。そういうのなのかしらぁ。

 

 遠藤。みなしごエンドレス。

 

 どこかで聞いたような声な気もする男性ライバー。ひょっとして前世は配信者か声優なのかしら。せ、声優……? まさかアタシそこでも負けてるの……? ううぅ。

 

 何度か配信でコラボもしているし、その配信の段取りも彼から提案されていて大体がこちらに見せ場をつくるためのものだ。一度直接会って話をしてみたかったので少し残念。

 というかモデルの調整も遠藤がしてくれてるらしいし。

 

 ……パパじゃない!?

 

 VTuberのキャラクターデザインからLive2Dのパーツを描くまでの人を、この界隈では『ママ』と呼ぶ。そしてLive2Dをトラッキング用のカメラで動くようにして配信に使用可能にする人を、『パパ』と呼ぶ。

 

 パパならなおさら挨拶しなきゃじゃないの……!

 

 実際のところ、遠藤――遠藤さん。遠藤さんという男がどこからどこまでの作業をしているのかはあまり公開されていない。あくまでせるりちゃんとこのみなちゃんがママとして存在して、最終的な調整は確実に遠藤がしているということがはっきりと明言されている範囲だ。

 

 だから『パパ』というよりも『親戚のおじさん』くらいの認識がリスナーにされている。これもちょっと怪しいのよね、ライバーの成り立ちに密接に関わってくる『パパ』が男性だとリスナーに嫌な気持ちをさせるかもしれないから、わざと曖昧にしている気がする。

 新生VNIVEARTHはそういう配慮をする企業だ。マネージャーの南條さんと話すときの内容からして、十分にやりかねない。

 

 みなしごエンドレス。遠藤。VNIVEARTHの社員エンジニア兼VTuber。

 

 金曜日の大喜利にはちゃんと来るのよね……。少し楽しみかも。

 

 遠藤さんと言えば、さっき来たばかりの黒宮院みやみちゃん。みやみちゃん、やけに気合が入った服だったわね……。

 

 清楚で上品、それでいてどこか色っぽい黒のコーデ。

 

 デートでいいとこのレストランに行くときの子が着てそうなイメージ。そうじゃなければどこかのお嬢様になる。

 

 普段の配信から――デビュー配信からずっと遠藤に好き好きアピールをしているみやみちゃんだけど、まさか本当にアタックするつもりだったのかしら。

 

 

 お嬢様、ね……。

 

 よくわからないけど、お嬢様みたいな服装でいるまりもちゃん。

 

 車で送迎があったらしい、言われてみればなんか見るからにお嬢様みたいな雰囲気の佐土原恭子ちゃん。

 

 そしてみやみちゃん。

 

 今このVNIVEARTH事務所には、お嬢様が3人いた──。

 

 白と黒の服のまりもちゃん、白い服の佐土原恭子ちゃん、黒い服のみやみちゃん。白と黒でバランスいいわね……。

 

 せるりちゃんといい、ざくろちゃんといい、若くて可愛い子ばかり。

 

 アタシだけが、アラサー手前……?

 

 うっ頭が。頭の中で萬屋ぺすとが頭を抱える。

 

 社員だから年齢も知っているというので、年齢差に関して南條さんに相談したことがあるんだけど、配信内容にはそこまで影響がないので強いていえば腰痛にだけは気をつけるように言われた。

 

 やっぱり年寄りじゃないの……。

 

 でもメリットも言われてるのよね。なんだかんだリスナーも似たような歳だから、若い子よりも同世代を推す方が抵抗感がないのだとか。

 

 それは盲点だったわ。とにかく若ければいいってわけでもないのね。

 

 よし。アタシは大丈夫。やれるわ。

 

 時刻は19時過ぎ、20時からせるりちゃんの配信が始まって、タイミングを見てゲストとして1人1曲ずつ参加する。

 

 みやみちゃんへの案内を終えた南條さんから、全員に向けてのど飴の差し入れがあった。歌枠じゃなくても配信者としてはありがたい。貝殻の形をした良くあるやつと、レモンのやつだ。のど飴。ありがたいわね。

 

 それから思い出したように、みやみちゃんからおまんじゅうのお土産があった。お、お土産……!? 確かに社会人たるもの、こういう集まりには菓子折りの1つでももってくるもの。

 

 不覚だわ。最年長のアタシがそんな気も利かせられないだなんて……!

 

 みやみちゃん。勝手に中の人は茶髪のイケイケギャルだと思ってたけど、黒髪清楚系だし、佇まいも配信と違ってしおらしくお淑やかだわ。

 普通に良い子じゃないの。こんな子が、配信ではあんなことに……。

 

 その元凶でもある、遠藤が事務所に来てしまったら。一体VNIVEARTHはどうなってしまうのかしら――。

 

 

   *

 

 

「今日も配信に来てくれてありがとう! はじめましての人はこれからよろしく、お願いいたしますっ!

 VNIVEARTHの歌唱担当、二期生・詩星(うたいぼし)せるりです! (うた)(ほし)と書いて、詩星(うたいぼし)と読みます!」

 

:きちゃ

:もう可愛い

:始まった

:あれやってよ

:挨拶しよう

 

「え、えぇ~! あれはその、冗談で言っただけで……むにゅにゅ。わ、わかりました~……ええ、こほん。

 

 よろしくお願いします! せるりっ」

 

:は?

:は?

:え……?

:は?

 

「ほ、ほら~。みんないじわるばっかりして。こ、これはぁ、ぺこりとせるりがちょっと似てるねってなったから、挨拶にできないかなって雑談でみんなと話して……」

 

:嘘嘘

:冗談だってw

:せる虐いいぞ

:セルフ解説までさせる

:せるりちゃんを虐めないでー!

:かわいい

 

 配信開幕、リスナーのコメントとじゃれ合う詩星せるり。身内ノリの身内ネタだけど、まあ可愛いからいいか。可愛く困ってる女の子は可愛い。リスナーの悪ふざけには柔軟にある程度乗っかれた方がいいと教えたのは俺である。

 

「みなさんもうご存知かもしれませんが、現在VNIVEARTHでは人気投票を行っております!」

 

:知ってる

:知ってた

:この説明何度目だよw

:投票した!

:1億票入れた

 

「投票は事前投票として、今日までが一次投票となっております! 今VNIVEARTHでは1日1回全員分のプレゼン配信を行ってまして、それが終わって明日から二次投票が始まります! 1人2回まで、投票できちゃうんですね!」

 

 まず投票についての軽い説明と宣伝。前置きとしてこれを行うのが今週の各配信の流れで、俺と社長の回はやっていないので除いて7回目ともなれば、これまでの積み重ねもあって洗練されてきてスムーズだ。

 

「そしてですね! 人気投票1位のライバーにはなんと――

 

 ――優勝賞品として、グッズ化が約束されます!」

 

:不正投票どうすんの?

:2回やる意味ねーよもう

 

 まあ毎度出てくる不満コメント。これは後々に紆余曲折会ってやっぱ全員分しますのちゃぶ台返しパワープレイで解決するからいいとして、過激なものを規制するにとどめる。

 

「高さ6cmくらいのアクリルキーホルダーです。推しをかばんに付けちゃったりして。そういうの、いいですよね! 私もミナちゃんのキーホルダーを付けたいところなんですが……投票ボタンがないのです。……非常に、残念なことに」

 

:草

:この子はもーまったくいいぞもっとやrt111

:ブレねぇ…w

:百合は万病に効く

:いいぞ。

:せる×みなで付けたいから2人作ってくれ!

 

 そのパワープレイで鎮火するんだ……。

 

 VTuberのリスナーというものは、百合が好きだ。大体は好きだ。大抵は好きだ。詩星せるりの嘆きでコメント欄が浄化されていく。

 

 これ意図的にやってるわけじゃないみたいなんだよなぁ。minaとして配信の感想会をするときに確認しているんだけど、逆に意図してminaとの仲を良いように利用したくないとまで返答をいただいている。

 

 なお、詩星せるりが惚気話として語ってリスナーが盛り上がるのはいいらしい。2人の仲を応援してくれてる判定なのだとか。

 

「では……っ! 今日の配信ですが、告知のとおり『カラオケ』です!」

 

:歌!

:よっしゃああああ!!

:歌枠リアタイ初めて

:稀有

:いつも歌やるとき昼間だもんな

 

「そうなんです。ちょぉーっと生活環境の都合で、ライブ配信での歌枠はいつもお昼時になっちゃってるんですけど……な、ななななんと! 今日はこの時間にできることになったんです!」

 

:やったぜ

:テンション高い!

:歌えー踊れー

:夜中に歌うとか近所迷惑だししゃあない

:そしてゲストもいます

 

「ふっふふ~。そうなんです。コメントにもありますとおり、ゲストの方にも来ていただく予定です。お楽しみに~!」

 

:みゃみとかぺすとだろうね

:あのシルエット意味ある?

:ヴニはそういうネタやるから

:ざくろも呼んでくれよ……

 

 

 カラオケ配信――つまり歌枠であることと、ゲストがいることについては告知済みだ。丁寧にシルエットを載せた画像まで作ったが、ライバー数人を重ねて合成獣(キメラ)の姿にしたので特定が難しくなっているものが掲載された。

 

 明らかにおふざけである。

 

 遠藤を切り貼りしてその形に収めた画像や、神海まりもの新モデルだという大喜利がリプ欄では目立っていた。始動役としてサクラ用のアカウントを使い『It's電気鼠! It'sギエピー! Fuuuuuuck!!!』みたいなリプライをした甲斐もあるというもの。

 

 同時に、配信後に別枠で1時間ほど続きがあることも、合わせて告知がしてある。

 

 明らかにこの1週間のプレゼン配信の中でも飛び抜けて豪華な内容だけど、他ライバーの露出機会にもなるから非難にはならないと思う。むしろ枠主の出演時間が下がるし、続きとやらに至ってはVNIVEARTHの公式アカウントで行う。

 もしも贔屓だのコメントが出るようなら、俺の持っているアカウント全てを使って擁護していこう。

 

 その材料にするためにも、昨日の社長のプレゼン配信でライバー全員を集結させている。インフレの前振りはしてあったのだ。

 

 

「では1曲目は~……こちらっ!」

 

 自作のオケ音源を流す。この辺の操作は今日は俺が行うことになっていて、ビデオ通話状態でミュートになっているスマホ画面に、頷いてみせる。

 

 まず定番。曲数はそんなにないのでほぼ全部が定番だが、その中でもド定番。ただの定番ではなくド級の定番の1曲である。

 

 夏祭りへ遊びに行ったカップルの曲だ。これを知らない人はあまりいないだろう。

 

:おお

:メジャーどころいくやん

:うまい

:かわいい!!

:夏やね

 

 自宅での配信とは違い、防音室という伸び伸びと歌える環境だ。今日こそライブ配信で本当の実力が発揮できると本人も意気込んでいたので、調子は良いように見える。

 

 ……いや、声ちょっと掠れてるか? 緊張かもしれないので少し見守るけど、1番が終わった段階でほんの少し万全でないと感じたので。音響設定いじって調整する。

 

 詩星せるりの歌は何度も聴いてきた。そして配信準備でも、配信としても何度も。だからある程度は理解しているつもりだ。

 移動疲れ、緊張、慣れない防音室。むしろ張り切りすぎている節がある。おそらく声量を出そうとして少しバランスを崩しているので、マイクの音量も少し上げてみるのがいいと判断。その旨を手書きで書いて通話画面へ移すと、こくり頷きが返ってくる。

 

 嫌そうな表情はないから、意図は伝わったんだと思う。

 

 1曲目が終わった段階で少しの調整不足が見えた気がするので、曲順を変更する提案メッセージを送る。状況を見てそういったサポートをするとは事前に伝えてあったので、これはすぐに了承される。

 

 本日のセットリストのテーマは『夏』。夏らしい曲が最後まで続く。2曲目はセトリの中でも特におとなしい曲で少年の夏を題材に歌った、これまた多くの人にカバーされている有名曲。

 原曲は割と激しいかもしれないが、このオケはおとなしいものとなっていた。某有名夏休みゲームのOPにもカバーが使用されていて、その際のアレンジを基にしている。

 

 しているというか、そうオーダーしたというか。本日使用するオケの7割は外注だったりする。これは1周年に向けて準備をする上での副産物というか、まあ社外のちゃんとした楽器に触れている人に依頼を出す上でついでとばかりに依頼をしたものだ。

 

 Vtuber事務所を運営していく上で、音楽関係では2つの選択肢があった。VTuberもまだまだ発展初期、有名ボカロPに今の内から先んじて依頼をしておいて、あの人がVTuberに書き下ろし!? の話題に乗っかるか、というのがまず1つ。

 

 2つ目は、これからヒットする人に軒並み声をかけておいてコネを作っておくか、だ。

 

 俺は後者を選んだ。今後のVNIVEARTHを考えれば、ただの依頼主の1人で終わるよりは太客になる方がいい、というか、言ってしまえば有名になる前に恩を売ってしまえ、というものだ。

 

 音楽活動に限らないが、クリエイター活動に際して悩みとなるのはまず収入だ。インタビュー記事か何かでも見たことがある。大ヒットアーティストによるあの頃はとにかく金がなかった語り。そこへ恩人の1つ程度に印象が付くのは、今後の力になるはずだ。

 

 未来の知識を使うのだと思慮を重ねた結果、新曲をいくつも書き下ろさせる、というのは未来への影響が大きすぎると考えた。アイデアの消費、レパートリーの枯渇、名曲の損失。こうなってしまうのは不本意なので、俺はついでとばかりにアルバイト程度のノリでカラオケアレンジを依頼したのだ。

 

 数人に持ち掛けたところ、2人は実績の伴う割のいいバイトとして食いつき、1人は難しいと辞退。1人はカラオケ作りを雑用だとして断るようなプライドの高さを感じた。

 

 プライドの高さに関してはそういう人がいると予想できたので、あらかじめ先方を軽視していませんよと慎重に言葉を選んだので問題にはならないと思う。

 こういった交渉事で言葉を間違えると、メッセージ履歴を晒して叩くようなことになりかねないのでとにかく気を使った。クリエイターの愚痴がSNSで大ごとになる例は大なり小なりいくつも見てきた。あちらにもこちらにもメリットはない。この交渉の経験も会社のマニュアルにするのだ。

 

 2曲目終了。ここで詩星せるりコメントを挟みつつ、ゲストの紹介に移る。

 

「ふぅ……。暑い! やっぱり歌うと体温が上がっちゃいますね! ちょっとお飲み物休憩とか頂こうかな……って!」

 

:すごい良かった!

:好き

:ほかほかせるりん可愛いね

:休んで!

 

「ではここでゲストの紹介! ――萬屋ぺすとさん!」

 

「アンタたち、せるりちゃんのライブは楽しんでる!? VNIVEARTH一期生、萬屋ぺすとよ!」

 

:ぺす!?

:きたああああぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!!!!

:ぺす最強! ぺす最強!

:やっぱぺすの出番だよなぁ!?

:お前ら出先だぞ静かにな

:マナーよくしろ

 

 自治厨が沸いている……。昨日の社長配信の影響がここに。

 コメント欄を追うに、ちょっと暴れてからその免罪符として反省してますと言っているだけなので、ここまでがネタとなっていそうなのでまあよかった。

 

 萬屋ぺすとは声優志望だったから、という程でもないが夏っぽいアニソンだ。

 

 ゲストはそこまで夏というテーマに固執せず、それっぽければなんでもいいとしている。むしろ夏っぽさの代表曲は詩星せるりでいくつも使ってしまった。夏っぽいとなれば、拡大解釈として作中時間が夏だったり夏時期に放送されていただけで夏っぽくなる。

 

 あとはあくまでゲストなので、歌うのは1番だけだ。

 

 フルで歌うのはチャンネル主で主役の詩星せるりだけ。詩星せるりに休憩時間を設けるためにインターバルを埋める役割とも言える。

 

 それに、9人全員がそれぞれちゃんと歌うとなると時間が足りない。やるのなら2時間は欲しい。1時間では詩星せるりが目立たなくなってしまう。

 

 詩星せるりが2曲歌って合間にゲストが挟まる。歌唱を特徴にしているだけあって、詩星せるりの歌の上手さも程よく際立つ構成。これが晒し上げや嫌味にならないように、会話でバランスを取っていくようにするのが意識しないといけないところだ。

 

 そして配信終了までに、()()()()()()()()()()()()

 

 萬屋(よろずや)ぺすとがアニメOP、佐土原(さどはら)恭子(きょうこ)が一般アーティスト、黒宮院(こっきゅういん)みやみがエロゲOP、波羅劾(ハラアバキ)ざくろがドラマ主題歌と、バラエティ豊かだ。

 

 ……4人。

 

 これでは計算が合わない。VNIVEARTHライバーは9人いて、詩星せるりを除けばゲストは8人なのではないか。

 

 まぁ。これにはVNIVEARTHらしさという免罪符によってオチがあった。

 

 若干1名、配信に声を載せたくないと譲らない彼女は、申し訳程度に口笛を披露した。おい、夢の国のテーマ吹くのやめろ。そのバラエティ補完はいらねぇ。

 

 萬屋(よろずや)ぺすと、アニメOP。

 佐土原(さどはら)恭子(きょうこ)、一般アーティスト。

 神海(しんかい)まりも、夢の国テーマ(口笛)。

 黒宮院(こっきゅういん)みやみ、エロゲOP。

 波羅劾(ハラアバキ)ざくろ、ドラマ主題歌。

 

 そしてあとは男性陣3人。

 

 遠藤、拳藤正義、伊能凛。

 

 このトリオはまとめて一枠の録音が再生された。

 

 

 ――テン! テテテン!

 

 

 ――Hせん お前は…… お前は性学の恥なんやで

 

 ――THE SとMワンセットマッチ 性感サービスプレイ

 

 ――うげぇ Hせん お前 農薬チェリーパイ

   俺 タティーノ 着せ替えGirl

 

 

 ……。

 

 某弐コ弐コ動画でブームとなった、某ミュージカルの空耳バージョンである。

 

 遠藤(えんどう)、ミュージカル。

 拳藤(けんどう)正義(せいぎ)、ミュージカル。

 伊能(いのう)(りん)、ミュージカル。

 

 

 1分たったあたりで音量を下げ再生終了。茶番として女性陣に愛想笑いの冷ややかコメントをいただく。そこまでがセットだ。

 

「な、なんだったのかしら……? 弐コ弐コ動画で流行ってたやつよね」

 

「あはは……一応カラオケのお店にもある曲らしいですよ」

 

「エンド様は歌もお上手ですよねぇ~♡ ふふふ~♡」

 

「あー……うちの情報ですと、録音はフルであるそうなので後日投稿されるそうです」

 

 1枠1時間の制約もあるので需要の薄い男性陣をお笑い芸人枠で消化して、あとはちゃんと女性陣の合唱パートを入れてリスナーの需要は抑えていく。

 

 最後に詩星せるりの歌枠では定番の、歌う度にアレンジが変わっていく自作オリジナル曲『星空色』を歌ってこの配信は締めだ。

 

 

 ――そう、()()()()()

 

「みなさんご視聴ありがとうございました! この後は、VNIVEARTHの公式アカウントの方で『VNIVEARTH夏の決起集会2019』があります!

 みんなでご飯食べるだけのゆるいお疲れ様会なので、よかったら来てくださいね! お夕飯まだの人は一緒に食べましょう!」

 

 カラオケ枠が終わる直前、チャンネル主が告知を行った。ここでリスナー達は、これが実は女性陣によるオフコラボだったと知るのだ。

 

:打ち上げ!?

:もう飯食べちゃったよ

:俺これからだわ

:オフコラボ!?

:Tvvltterにオフって今来た

:マジか

:男も来るの???

:いや女6人だけだって

:よかった

:わかってんなぁ

 

 

 

   *

 

 

 ――声が少し出にくい気が、しなかったわけじゃない。

 

 

 いつものように歌えばいいと思った。

 

 気にせずにちょっと頑張っていれば、そんな気がする程度のこと、すぐになくなってしまうって。

 

 でも。

 

 それをはっきりと不調だって判断して、すぐに対応した人がいた。

 

 言われてみればその通り、確かに声は万全の状態じゃなかったし、最後まで安定して歌うことを大事にするなら配信設定の方を変更して正解だったと思う。

 

 ――南條亜紀人。

 

 VNIVEARTHの社員で、ライバーのマネージャー。

 

 私にはミナちゃんという私のことをすべて理解した優秀なマネージャーがいるから、私とはあまり話すことがない人。

 

 だから、

 

 

 驚いたのだ。

 

 

 

 

 ――あの程度の私の不調を見抜けるような人が、ミナちゃん以外にいるだなんて。

 

 

 

【誰のビジュアルを先に見たい? VNIVEARTH人気投票!!】四期生のデビューにともなって、二次投票の受付を開始します!! 現在公式Tvvltterにて公開されている画像は、制作途中のラフ段階のものです。そこで、本アンケートの結果に基づいて完成させる順番を考慮いたします。皆様の推しにぜひご投票ください!(※なお一期生については、本編では未改修のためネタバレが含まれます)

  • 萬屋ぺすと
  • 佐土原恭子
  • 神海まりも
  • 詩星せるり
  • 遠藤
  • 黒宮院みやみ
  • 拳藤正義
  • 波羅劾ざくろ
  • 伊能凛
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