過去に戻ったので、破滅する推し箱の未来を変える。   作:匿名

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#074 まりもクライシス

 収益化の報を聞き、仕事に手が付かなくなった萬屋ぺすとが有休を使って早退してきた。

 

 やっぱり言わない方が良かったかもしれない。

 

「めでたいわ~。おめでたいわ~。アタシがついに、収益化よ! 収益化! これでただの趣味配信者じゃなくって、ちゃんとした収入のある職業配信者なのよ~!!」

 

 一度帰宅してから事務所に来た萬屋ぺすとの手には、宿泊用の荷物の他にケーキ屋の袋がぶら下がっていた。ショートケーキ、チョコケーキ、モンブラン。各3つずつ、合計9個。VNIVEARTHのライバー全員分だ。

 呼び鈴に対して玄関を開けたときの挙動から、もう飛び込んで来るような勢いがあった。腕とか振り回してケーキがぐちゃぐちゃになってないか気になるほどの、とんでもない喜びようである。

 

 ……念のため職場での立場を聞いてみるけど、早退自体には特に何も言われないらしい。

 

 出勤してからそれほど仕事をこなしていなかったので、いっそのこと半日分の有給を全日分で申請しつつ最低限の確認と引継ぎをして来ており、それに対して周囲はむしろお釣りがくるくらいの反応をするのだとか。なんとも理想的な職場だ。ゆるい。

 

「みんな~! ドラフト会議をするわよ~!! どのケーキがいいかしら~!?」

 

 浮かれ過ぎである。

 

 まあ、こんなとびっきりの笑顔を見れたのだから、彼女の仕事中にメッセージを送ってしまったのも一概に悪かったとは言えない。

 

 ……いや悪いわ。

 

 

   *

 

 午後4時。各々の用事を済ませたVNIVEARTHライバーたちは事務所に帰還したものの、あれ意外とやることがないぞという状況になっていた。

 

 平日の真昼間、いや真ではないか。平日の夕方手前、まだ勤労に励む人間も多いこの時間から配信を始めてしまうのは少々不自然だ。

 今日からすでにオフコラボをしているというのはリスナーには伏せている。社会人であればこの日に仕事を休んでいるという要素が身バレに繋がる材料になるかもしれないし、あるいは学生だから夏休みだと特定を避けるためである。

 

 まさかとは思うけど、オフコラボということは事務所に集合だなと安直な考えで実態を言い当てるリスナーがいる可能性もなくはない。それが重度のファンで、謎の行動力で事務所(ダミー)の方に凸することもありえなくはない。

 

 凸うんぬんは考え過ぎではあるけど、予防して損することではない。

 

 というわけで、予期せずして空いたこの時間を有効活用するために、なんか意外と暇していたライバーたちを集めてミーティングを行うことにした。

 

 これから行われるのはケーキのドラフト会議などではない。事務所の方針を語る重要な会議だ。

 

「皆様お集まりいただきありがとうございます。これからVNIVEARTH緊急ミーティングを開始します。今回の議題は『合宿中の配信における注意事項』です」

 

 これは遊びではない。炎上と身バレを対策するための、仕事の場だ。夏休み気分で臨むことなかれと、堅い口調に切り替えて取り仕切る。

 

 張り詰める空気。一触即発。しかし手元にケーキと紅茶、やっぱりただのケーキドラフト会議である。

 

 テーブルには佐土原恭子の姿もあった。ミーティングをすると言ったらすぐに来てくれた。

 実は暇だったのか、それとも意外とここでの集まりを楽しく思ってくれているのかもしれない。ただ真面目なだけという解釈もある。

 

「今日からライバーの皆様には、この事務所から普段と同じ配信を行っていただきます。自宅と違う環境にあることで慣れないことも多々あるでしょうが、私もできる限りのサポートをします。いつも通りの良い配信になるよう頑張っていきましょう!」

 

「はい! 頑張ります!」

 

 萬屋ぺすとが一番に返事をした。さすが社会人切り替えが早い。その実、収益化でるんるんぽわぽわしてるだけ、手にはケーキとフォーク。

 

 ここだけ見れば、本当に社会人かは怪しい浮かれ猫。

 

 お茶会ムードもあるので、まずは雑談半分に軽く配信上の注意事項のおさらいをしていく。

 

「言葉の選び方には注意が必要です。受け取り方のニュアンスが違うだけでのささいな火種が、SNS等で拡散され多少なりと炎上に繋がってしまうこともあります」

 

 ふんふむ。一様に頷く。ケーキ食ってて誰も喋らねぇ。ちょっと冗談を挟むか。

 

「拳藤様の初期の配信にて、冗談でファンネームを『観戦者』にしようとして特定のリスナーに燃やされそうになったのは記憶に新しいですね」

 

「ちょっ、それ言わないでくださいよ」

 

「その節はごめんね……」

 

 笑う拳藤正義。申し訳なさそうにする萬屋ぺすと。この話題はある種の禁忌であり、身内的には笑い話だ。

 

「とまあ、リスナーがどんなことで嫌に思うかはわからないので、配慮をするに越したことはありません。わかりやすいのは何かを貶める発言。

 

 ……詩星様と神海様。配信中に、タピオカがゴムの味だとか、味のしないミニブドウだのと言ってはいけませんよ」

 

「わ、わかってますよ……!」

 

『はいはーい ('ω')』

 

 ふと。つい出来心で、ちょっとうざがられたくなって言ってみた。

 

 このツンケンした感じの詩星せるりは通常の配信でもたまに見るが、あの未来ではほとんどなかった感触だ。

 キャラクターとしてもいじり甲斐があるので、リスナー受けには良い変化。彼女の成長とも言えるが、あの未来との乖離として少し寂しくはある

 

 導入はこの辺でいいだろう。こんなやりとりを挟みつつ、真面目な話にシフトしていく。

 

「合宿中の配信中で一番気を付けて欲しいのは、とにかく『身バレへの対策』です。誰かが配信をしている裏で、他の全員が集まっています。

 個人の基本的な配信は防音室で行いますが、間違っても配信者以外が突然防音室をノックしたり、無許可で扉を開けて突撃したりしてはいけません。防音室のある部屋で大声を出したりしないようにしましょう」

 

「あー、防音室も完璧じゃないっすもんね……」

 

 呟いたのは拳藤正義。いつぞやの決闘配信で、俺が防音室で絶命している様を思い出したのkまおしれない。

 中で叫べば漏れる、逆も然り。外で叫んでも、中に響いてしまう。

 

「まぁ、防音室がある部屋とこちらのオフィスは更にドアを1枚挟んでいますので、普通に話をする程度ならまず配信に乗ることはありません。

 ただ気を付けて欲しいのは、配信外だろうと大声で本名を呼び合うようなことはしないでください。配信をする方もきちんと防音室の扉を締めたか確認が必要です」

 

「あの……」

 

 そこで波羅劾ざくろが、遠慮しながらも手を挙げた。

 

「防音室の中にいるのって、リスナーにも伝わってしまいませんか? カラオケの時の配信コメントにもあったと思うんですけど、ノイズが少ないとか、ちょっと反響してるとか。うちは見かけたんですよ」

 

「あ。ありましたね。萬屋先輩の声がいつもより綺麗だとか、そういうの」

 

「感染者の皆さまですね~。『その防音室貰おう』ってコメントあって笑っちゃいましたぁ♡」

 

「みやみちゃんのところのファンだって、ここで収録しろーって盛り上がってたわよ」

 

 コメントへの感想に華を咲かせる女性陣。複数人で過去配信を振り返る回もありか……。メモしておこう。アイデアは常に書き留めておかないと、いざ使えるときに出てこない。

 

「そうなると、難しいかもしれないわね……。実はもう集まってるっていうのは、リスナーのみんなには内緒なのよね?」

 

「はい。ですが、完全に伏せようというわけではありません。24時間配信を行う日が近づくにつれて、少しずつですがオフコラボをしていってもいいと思っています」

 

「え!? いいんですか!?」

 

 詩星せるりが驚いたように言う。ここまでの方針と矛盾したこと言ってるしな。

 

 これは妥協した考え方だけど、身バレに一番繋がるのは休む期間に対してのオフコラボ参加率だと思う。5日間休んで5日間とも自宅外で配信していれば、当て嵌まる要素が増えて考察する情報が大きくなってしまう。

 逆に5日も休んだのに最後の2日程度しかオフコラボをしていなければ、何もしてない日数がある分だけ点と点が繋がる可能性は遠ざかる。

 

「せっかく集まっているのに、配信上で一切関わらないのはもったいないでしょう。

 直接的にもう集まっていますと公表するのはあまりしない方向で考えていますが、リスナーから見てライバーたちが少しずつ集結していってると感じられるのも面白いかもしれません」

 

 へー、ほえー、と何人かが感心したようにしているが、まぁこじつけである。自分たちの置かれている状況に、意味を持たせるために好意的に考えているだけ。

 それをその前提で振舞うことで、効果的に作用させるのはやはりライバー自身の対応力だ。

 

「ただ、男女の異性同士で遊びに行った、買い物に行った、とは絶対に言わないでください。男女が同じ空間にいたと察せられてもいいのは、全体コラボの大喜利だけです」

 

「そ、そんなにですか……?」

 

 絶対に言わないでください。俺の強い語気に、困惑する波羅劾ざくろ。

 

「むしろこれがリスナーが一番過敏になる、炎上に繋がる要素です。全体コラボでさえ別の部屋から収録しようかまだ迷っています」

 

 VTuberのリスナーというのは、男女の関係を持ち出すと異常に扱いが難しくなる。あの配信内容で受け入れられている黒宮院みやみが異常なのだ。

 

 手元のケーキもなくなってきたので、最後に重要事項を伝えて会議の締めとする。

 

「合宿の日数が経過することで、皆様はここでの生活や配信にも徐々に慣れてくると思います。

 そこで気を付けて欲しいのは、皆様の注意力も薄れていくことです。ちょっとしたはずみで個人の特定につながるようなことを口にしてしまうかもしれません」

 

 この一点を伝えようと思ったのが、今回のミーティングを始めた全員を集めたきっかけだった。

 

「リスナーに対する公開情報は人によってまちまちです。職業、年齢、出身。各々非公開の情報があれば共有して、絶対に個人情報を出さないように気を付けてください」

 

 配信の後から、実はそれ言っちゃ駄目なことでした、知りませんでした、となるような事態は避けなければいけない。

 

 これは事務所としても、ライバーの安全のために必要な話し合いなのだ。

 

   *

 

 モンブラン美味しかった。

 

 ケーキドラフト会議は平和だった。指名が被っても争うことはなく、譲り合いがこの場を収めた。

 私はじゃんけんする気だったのに。この拳を振りかざして血で血を洗う闘争を繰り広げるつもりでいたのに、平和が一番という言葉の前にその展開は訪れなかった。ちょっとつまんない。

 

 親しみ合いというよりも、遠慮がまだ強い。そういう意味でも、南條さんの言う通りまだみんなここでの生活に慣れていないのだ。

 慣れてきてからがどうなるか、それを前もって注意するためのタイミングで話し合いが行われた。

 

 今回のミーティングは多分、私のために開かれたものだ。

 

 少しでも気になったことや要望があれば、すぐに言って欲しいと南條さんは言っていた。私以外にも、全員に何度も言っている姿を見ているし、ライバー同士の雑談にも過保護気味と話題になった。

 

 で、それなら個人情報の取り扱いについて不安があるかもと送ったのが昨日の夜。

 機を見てお話しますと返事を貰って、私に角が立つ言い方をされたらどうようと別の不安が出てきたけど、コンプラに拘るだけあって上手く落とし込んでくれていた。

 

 ありがたや……。

 

 むしろ私以外の身バレ対策が雑すぎる。一番不安なのが、萬屋ぺすと。萬屋ぺすとさん。

 

 デビュー直後のまだよくわかっていなかったノリで、一期生には年齢と職業が出回ってしまっていた。私の情報を他のライバーに言っちゃうのはだいたいあの人。

 あの人自身も、雑談枠でぽろぽろ個人情報に繋がることを漏らしてるし。配信時間が長引くにつれて気が緩むのはわかるけど……あ、それを釘差す意味もあったのかな、今日の会議。

 

 あとは萬屋さんを信じるしかない。これでこの小さな不安はほとんど解消されたものとして、私はもっと平和な悩みに思考を移す。

 

 今晩の予定についてだ。

 

 夜になれば他の皆がVTuberらしいちゃんとした配信をするから、人の多い時間の終わる23時とかまで私のターンは回ってこないし、ゲームもできないしで暇になってしまう。

 

 ま、今日の戦利品(カード)の試運転とかあるし、遊べることはあるんだけど。

 南條さんと拳藤さん誘って決闘しよう。

 

 さすが秋葉原、よくわからないビルの中に、よくわからないカードショップがあって、今日はそれを梯子した。あのアングラな空気、たまんねーぜ。

 海外版限定のレアリティとか、掘り出し物があってもう私はほくほくだ。地元じゃこんなショップないから本当これてよかった。岩手とは全然ちげーぜ。

 

 ちげーぜ ٩('ω')و

 

 おっと地域下げNG。出身バレもNG。配信では絶対言わない。

 

 カードショップのついでに漫画とかも覗いたけど、そっちは収穫無し。欲しいものがあった店が、価値をわかってる店でちょっと高かったので諦め。

 

 そこに軍資金があるじゃろ? 心の中の悪い博士が言っていたけど、殴り倒した。ジャスティスパンチ。

 

 ジャスティスパンチ ٩('ω')و

 

 ……VTuberなのに喋らないのはどうなのってことで、せめてもの感情表現、萌え要素として使う用にした顔文字だけど、このノリを配信でやれよと南條さんにやんわり言われる。

 

 うーん、どうしよ。ゲームしながらタイピング難しいし。

 

 優雅で清楚なお嬢様を振舞いながら、頭の中ではそんなことを考えているとキッチンから良い匂いがする。

 そこには夕食の用意を買って出た黒宮院みやみさんと、その手伝いとして南條さんが並んでいる。

 

 スーツにエプロンて(笑)

 

 ……みやみさん、南條さんのこと狙ってるのかな。

 

 ああいうキャラだから、みたいな認識もあるけど普通にあれガチ恋だよね? というか遠藤LOVEのみやみさんが南條さんにも媚びてるってことは、やっぱり遠藤と南條さんは同一人物かな。

 

 声のトーンと口調で誤魔化してたけど、大喜利の司会になると口調が同じだもんね。まあそうかぁ。むしろわかってなさそうな他の人たちはどうなの。

 こういう推理で身バレがあるんだよね。怖い。私も気を付けよう。

 

 そして、そしてだ。

 

 ──夕食が近づく中、身バレリスクの管理が甘いと私の中で評判なあの人が、やらかす。

 

「他に私にできることはありますか?」

 

「ありがとうございます~♡ えっとぉ、あとは私の方でどうにかなるので、あ! お箸の用意とか、お願いしますね♡」

 

 箸や調味料なんかをテーブルに運ぶ南條さん。折りたたみテーブル2つでは少し狭いので、一部の人はソファで食べたりするっぽい。

 いいねぇこの秩序のないアジト感。

 

 運ぶくらい私も手伝おうかな……明日以降でいいや。

 

 南條さんの手にはいくつかのドレッシング。

 そしてマグロのたたき。別名ネギなしのネギトロ。それを、サラダに乗せた。

 

「サラダにネギトロ!? 何してるの!?」

 

 萬屋ぺすとが大袈裟に驚く。

 

「ドレッシング代わりですね。これに醤油を少々。魚特有の油分がドレッシングと同等の役割を果たします。

 野菜が苦手な方でも、別ジャンルの料理として楽しめるかと。よろしければ皆様もどうぞ」

 

 うーん、悪目立ち。今日は普通のドレッシングでいいって言うべきだったか。そのサラダは私のものだ、そっと席に近づく。

 

「まりもちゃん……。南條さん、まりもちゃんのこと甘やかしすぎじゃないかしら?」

 

 収益化が決まったせいで気が大きくなってる萬屋ぺすとさんが、言う。

 

「だって――

 

 

 ――まりもちゃんだけ1週間前からここに来てるんでしょ?」

 

 

 その瞬間、何かが凍り付いた気がした。

 

 その方向はキッチンの方。私は悟られぬようにそちらを伺うと、真顔になっている黒宮院みやみさんの横顔がかすかに見えた。見えてしまった。

 

 まずい……!

 

 その発言はまずいんですよ萬屋ぺすとさん。何してくれてんの。

 

 みやみさんだよ、あの黒宮院みやみさん。遠藤及び南條さんにぞっこんの、あの黒宮院みやみさん。

 

 言わないようにしてたのに。

 仕事を休んでこっちに来てるみやみさんを差し置いて、私だけ夏休みだからってここで南條さんと1週間多く過ごしてるとか、事実かもしれないけど有耶無耶にしていたことがまるっきりそのままお出しされた。

 こんなこと、あの人に知られたらどうなることか。

 

「……亜紀人さぁん、これで完成ですぅ♡」

 

 メインの料理が運ばれてくる。ああ、笑ってない。その心笑ってないね。表面上は笑ってるけど、たぶん本当は笑ってない。私にはそう見える。

 南條さんと2人で並んで新婚気分を味わっていただろうみやみさんの、幸せオーラが消え失せている。みゃみの幸せ霊圧が……消えた……?

 

 冗談言ってる場合じゃない。一瞬、冷たい視線を肉じゃがの皿に落とした。その皿が運ばれるのは私のところだ。あたたかい肉じゃがが冷たくなってしまう……。

 

 え、位置的にみやみさん私の隣じゃない? 嘘でしょ。な、南條! なんで私のサラダを先に用意しちゃったんだ! もう場所が変えられないぞ!

 

 (゚Д゚#) (゚Д゚#) (゚Д゚#) (゚Д゚#) (゚Д゚#)

 

 なんとかこの状況を打破する方法を見つけないと。夜の暇つぶし方法を考えるどころか、私は朝まで生き残る術を考えないといけない。

 

 どうして南條さんは自宅の方に行ってしまうんだ。私を置いていかないで。男女の配慮なんていいからここにいて、そしてみやみさんと一緒に寝てくれ!!

 

「では、皆様召し上がってください♡ いただきま~す♡」

 

 みやみさんの音頭で皆も口を揃えるように『いただきます』。私の体感する温度は絶対零度。エターナルフォースブリザード。私は死ぬ。

 

「ん~! おいし~!」「あ、本当においしいですみやみ先輩」「美味しいです!」

 

「じゃがいもよく味が染みています。絹さやがあるのも嬉しいです。こういうの久し振りにいただきました。ありがとうございます、黒宮院様」

 

「亜紀人さん……♡」

 

 眼を閉じて頬を赤らめ手を当てるという、てれてれ♡ と絵に描いたようなポーズ。

 

 私は悍ましい。この人が数秒後に私にその手にある箸を突き立てないものか。

 

 この肉じゃがにも毒が仕込まれていても不思議じゃない。じゃがいもの芽がすぐ近くにあったはずだ。

 

 しかしここで食べないという選択肢はない。私は意を決して肉じゃがを口に運んだ。

 

「おいしい……」

 

 冷たい心とは裏腹に、肉じゃがは温かかった。

 

「家庭の味……。そういえば、久し振りに食べた……」

 

「あ……すみません。まりもさんがこちらに来てから、カップ麺とか茹でただけのそうめんやパスタが続いていまして。

 野菜だけは1日に2〜3回、ほぼ毎食用意するようにしているので、飽きさせないためにとサラダだけこのように進化してしまい……。遠方から来ていただいているのに、苦労をおかけします」

 

「それでドレッシングがこんなにあるのね」

 

 私は肉じゃがの味に涙が出そうになりながら、黒宮院さんを見て呼ぶ。

 

「ママ……」

 

「ママ!?」

 

 そして南條さんを見る。

 

「パパ……」

 

「パパ!?」

 

「わたし、2人の子供になってここに住む……」

 

 

「ま、まりもちゃぁ~~~~~~ん!! ♡♡♡」

 

 

 みやみさんが勢いで私を抱きしめた。

 

 なんかよくわからないけど、どうにかなった気がする!!

 

 

 そして。この瞬間、私の中に電流が走る――。

 

 

 みやみさんが、私を抱きしめた。

 

 つまり。

 

 頭に当たっているこれは、胸! おっぱい!

 

 一度は揉んでやろうと思ったあの双丘がダイレクトに、ここにある。この感触、頭皮から脳髄に刻まねば。

 

 

 ……ん?

 

 

 ちょっと硬い。

 

 これはブラの硬さか。ブラめ、余計なことをする。ブラ越しじゃ駄目だ。寝る直前のもっとラフなナイトブラか、それかいっそ直に揉まないと柔らかさを知ることはできない……。

 

 ――こうして。

 

 私は無事に絶体絶命の危機を乗り越え、そして新たな使命を抱いた。

 

 

 まりもミッション ٩('ω')و

 

 

【誰のビジュアルを先に見たい? VNIVEARTH人気投票!!】四期生のデビューにともなって、二次投票の受付を開始します!! 現在公式Tvvltterにて公開されている画像は、制作途中のラフ段階のものです。そこで、本アンケートの結果に基づいて完成させる順番を考慮いたします。皆様の推しにぜひご投票ください!(※なお一期生については、本編では未改修のためネタバレが含まれます)

  • 萬屋ぺすと
  • 佐土原恭子
  • 神海まりも
  • 詩星せるり
  • 遠藤
  • 黒宮院みやみ
  • 拳藤正義
  • 波羅劾ざくろ
  • 伊能凛
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