過去に戻ったので、破滅する推し箱の未来を変える。   作:匿名

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#076 ぺすとを襲う緑の悪魔

 この事務所には暴かれてはいけない禁忌というものが存在する。

 

 俺がメインイラストレーターのminaであることや、俺が所属タレントのみなしごエンドレスこと遠藤であること、頸椎という切り抜き師をしていたり、複数アカウントで自演コメントをしているなど、あとは病を抱えているだとか、ほぼ全て俺のことなんだけど、これらの内の半分以上が表に出てしまえば事務所の内外で厄介ごとが生まれてしまうだろう。

 

 俺には。南條亜紀人には、隠し事が多い。

 

 各仕事も多い。

 

 それらを所属ライバーから、視聴者から隠しきるためには、俺も少しばかり腹を括らないといけないだろう。

 

 事の発端は、萬屋ぺすととの会話。

 

『南條さん、遠藤は……遠藤さんは、今日も事務所に来ないのかしら? あの人だってVNIVEARTHの一員なんだから、一度くらい挨拶がしたいわ』

 

 毎日のように確認がなされる遠藤の安否確認。俺は察知した。勢いで『みなしごエンドレス』なんて名乗ってしまったあの男が、その実在を疑われつつあるのだと。

 疑惑。疑念。懐疑。猜疑。質問への答えを求めるように、萬屋ぺすと以外からも視線が向けられている気がした。

 

 だから俺は答えたのだ。できることなら避けたかった、最悪の事態に備えて想定していたサブプランである、奥の手を。

 

 ――金曜日の大喜利回には彼も来ますよ。

 

 先週の大喜利コラボでは、事務所に萬屋ぺすとと神海まりもがいたため、遠藤である俺は本社の方で配信を行った。今回もできるならそれで切り抜けたかったが、どうやらそうもいかないらしい。

 

 協力者として事前に正体を明かしたのは、拳藤正義のみ。社長として把握している伊能凛を除けば、6人から俺は、頼れるマネージャー南條が実は頼れないライバー遠藤であるという事実を隠し通さねばならない。

 

 この禁忌を――いや、切り替えろ。この禁忌(タブー)を秘匿し続けるために、俺はなんだってしてみせる――。

 

 

   *

 

 8月23日、金曜日。ついにあの謎の男、遠藤が事務所に来るのね。

 

 遠藤。自称" みなしごエンドレス "。

 VNIVEARTHの二期生。その予想の遙か斜め上を行く名前と発言で、男性ライバーへの逆境を有耶無耶にしてみせた男。

 

 ……その逆境も、アタシが二期生に立場を奪われるのを恐れてリスナーをけしかけた部分もあるので、それを思うと申し訳がない。

 南條さんはもう気にしなくていいって言ってくれているし、不要な軋轢を生むから自白する必要はないとも言っていたけど、できることなら遠藤さんにも謝りたいと思っている。

 

 せめて。コラボ配信でも悪者役を買ってくれている遠藤さんが、もし日々の出稼ぎで苦労をしているというのなら、アタシだけでも優しくしてあげたい。

 

 そして、奴は現れた――。

 

「皆(みんな)ぁ――お疲れ。俺が遠藤、みなしごエンドレス、だ!」

 

 シュビッ。頭の斜め上に2本の指を掲げた挨拶。

 

 前髪を上げた真ん中分け、目元をサングラスで覆い、耳にはイヤリング。

 

 極めつけは――

 

 ――アロハシャツ!

 

 ――短パン!

 

 いかにもチャラそうな男が、そこにはいたのだった。

 

 いや、いやいや、ちょっと待ってちょうだい! これはさすがに予想外だわ! 真面目そうな南條さんや拳藤くん、あと社長。これまでのVNIVEARTHの男性陣にはなかった属性がそこにあった。

 

 っていうか何よ、遠藤は漁船に乗っているって――それただのバカンスのことじゃないの!?

 

 騙された気分よ……。

 

 見て、他のみんなも若干引いてる。まりもちゃんなんか下を向いて、震えるほど怒っているわ。

 社長だって身体ごと壁の方を向いた。拳藤さんも顔を背ける。2人ともやっぱり身を震わせて、怒っているんだわ。

 

「差し入れに、今日の夕飯の材料を用意したぞ。今日は天ぷらだ! 揚げたての天ぷらと、そうめんだそうだ! 素晴らしい……」

 

 そう言って、野菜や海老なんかをテーブルに広げる。

 

 茄子(なす)、玉ねぎ、蓮根、ごぼう、しいたけ、舞茸、大葉。そして海老。

 

 頭に食卓の光景が浮かぶ。揚げたて……うっ、美味しそうじゃないの。

 海老は普通にスーパーのパックね。漁船で獲ったものじゃないわ。やっぱり遊んでいただけ……!

 

『やったぜ ٩('ω')و』

「ごちそうさまです」

「天ぷらですか。最近食べてないわ」

「うちもなす好きですー」

 

 あれ……? みんな普通の反応をしている。こんなに驚いているのはアタシだけ?

 

「いつも準備をしてくれているらしい黒宮院みやみには感謝だな!」

 

「いえいえ~♡ 今日はぁ、エンド様のためにも作ることができて、う・れ・し・い・ですっ♡」

 

 みやみちゃんもいつものキャラだし。この人と状況をおかしいと思っているのはアタシだけ……!? アタシたちはこれから、この男が目の前で司会を務めるオフコラボ配信をするのよ?

 

 南條さんも用事があるとかでまたどこかへ行ってしまったし、今日の大喜利はどうなってしまうのかしら……。

 

   *

 

 VNIVEARTH事務所に不審者が1人増えた。

 

 1人も2人も同じこと。ミナちゃんのためにも監視を続けるぞ。ぐっ。

 

   *

 

 配信とはちょっと印象が違うけど、思い返せばこんな感じだった気もする。

 

 これから少しずつ話をしてみて、頼れそうな人だったらおにいちゃん候補にしよう。

 

   *

 

 エンド様~♡ なるほど、配信外ではそういう感じで行くんですねぇ♡

 

 あ♡ 耳の裏にほくろ♡ やっぱり兄弟とか似てるだけで他人とかじゃないですよねぇ。

 不肖みやみ、亜紀人さんの力になれるよう、正体がバレないように立ち回りますよぉ♡

 

   *

 

 神海まりもは思った。

 

 すね毛剃ってる……。

 

   *

 

「さぁ皆(みんな)。準備はいいか? 配信、始めるぞ……!」

 

「え、え!? 普通に始まるの!?」

 

 ……? 俺が遠藤として事務所に来てから軽いリハーサルもしたというのに、萬屋ぺすとが戸惑っている。何かあったと言うのだろうか。

 

 俺は構わず資料を手に取る。配信開始時間までもう20分とない。この全員が集まるオフコラボのために揃えたピンマイクもちゃんとセッティングオーケー。

 ピンマイクとしては安物だけど、人数分となるとそれなりにする。今後も運営が続くと思えば安いもの。コロナ禍で集まることのできる機会は少なくなるが、あって腐るものじゃない。

 

 しかし、どうだろう、この完璧な偽装は。

 

 外見というものは大事だ。内面がどうこうというよりも、まずその見てくれでその人の印象が決まってしまうものなのだ。

 だから俺は普段は健全な会社員としてスーツ姿をしているし、社長にも美容院に行かせた。ちゃんとした服を着させた。

 

 だからこそ、マネージャー南條とライバー遠藤の共通点を潰すために、対照的、真逆、正反対な印象を植え付けるためにこの服装を選んだ(チョイスした)のだ。

 

 髪型を変え、サングラスで目元を隠し、立ち方や仕草を普段と違うものを心がける。

 

 極めつけはやはりこのアロハシャツ。社長と服を見に行ったときに古着屋で見かけたのを俺は覚えていたので、急遽買いに行った。そして短パンを合わせる。靴なんかサンダルだ。

 こうして俺は、どこからどう見てもハワイ帰りのチャラ男になり果てたのだ。決してタレント事務所のマネージャーをしているような人物と同じとは思えないだろう。

 

 むしろ配信をサボってハワイで遊んでいたところを事務所に転移させられた男だ。

 

 変な男、触れてはいけない男として今日1日を乗り切ることができれば、それでいいのだ。あとは男衆として俺の自宅に籠っていることにすれば、このオフコラボは安泰で終わるのだ。

 

 一昨日だけ試しにと、黒宮院みやみが俺の自宅を寝床に使いたがったことによって男3人は本社に泊まった。

 これでは自宅に籠ることができず、機材を本社に移動する必要が出てくるところだったのだけど、やっぱり女性陣は皆(みんな)で新スタジオの方にまとまって寝ることにしたみたいなので安心。

 

 ちなみに、住居ですらないビルの一室という環境で寝ることに、拳藤正義が少しはしゃいでいた。誰もいないビル内を3人で少し徘徊したのは余談だ。

 

:あ

:「「「「「「「「「「「「「

:来た

:萬屋ぺすと最強!

:きちゃ?

:全裸待機

:まだか

 

「……配信時間だ。まだ待機画面だから音は入らないけど、意識は切り替えてね」

 

 一同が頷く。波羅劾ざくろだけ小さく「はい」と呟いてしまい、少し恥ずかしそうにする。音入ってない平気だって。

 

「第3回、VNIVEARTH大喜利クイズ大会~!!」

 

「「「わー!」」」「きゃ~♡」「わー」「「おー!」」

 

「なんかバリエーションが少ないな? 準備は良いかお前ら!!」

 

「わーい!」「わー」「ぬーっ!」「きゃは~ん♡」「おーっ!」

 

:ウザ絡みやめろw

:無茶振り草

 

「 う お お お お お ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ! ! ! ! ! ! 」

 

:うるせぇ!

:黙れ

:殺すぞ

:!?

:声バグってて草

:スーパーうざ男ブラザーズ

 

 アドリブで入れたレスポンスの再要求に対し、少し遅れて拳藤正義が吠えてうるせぇと叩かれる。俺だけ片耳にイヤホンを付けて配信の音を確認してるけど、確かにうるさかったかもしれない。

 防音室でもないし配慮した声量だったとは思うけど、これはピンマイクゆえの弊害だな……。もう少し、普段の配信を1回全部、コラボ回をピンマイクでやるくらいの慣らしを入れた方が良かったか。

 

 つか微妙にハウリングして変な声になってたし。隣の社長のマイクにでも音が入ったかな。

 

「はーい、元気があってよろしい。リスナーからは不評なので、次やったらマイナスポイントにします」

 

「そんなぁ……」

 

:草

:ざまあwww

:お前が始めた物語だろ

 

 コメントを見ながらメモ帳に手書き。『ハウリングしてます』。自分のピンマイクを指さしながらメモを見せ、隣の伊能凛を指さす。拳藤正義が頭を下げる。よし伝わった。

 

 それからいつもの挨拶を順番に行い、まず導入として点数を配信画面に張り付ける。

 

 1位:詩星せるり  13.15pt

 2位:黒宮院みやみ 11pt

 3位:神海まりも  9.2pt

 4位:萬屋ぺすと  8.2755pt

 5位:波羅劾ざくろ 7.9pt

 6位:佐土原恭子  6.5pt

 7位:拳藤正義   6.1pt

 8位:伊能凛    3pt

 

「練習だった第0回を通して実質4回目。ただ今の順位はこんな感じ。少しずつインフレの傾向が見えてきたのと、上と下との差が離れてまいりました!」

 

:せるりつっよ

:優勝して夢の国に行きたいからね

:腹黒がバレてきた女w

:彼女とデートするためにブラックジョークで大喜利点狙ってるんだぞ

:遠藤相手だとツンツンしてっから……

:社長よっわw

:お前も夢の国のために頑張れよw

:ぺすの点と順位が間違ってるぞ

:82755点!?

:なら1位でしょ

:サイヤ人の戦闘力かよw

:佐土原高くね?

:佐土胸は心理学当ててでかくなった

:言い方終わっとるw

:まりも落ちたな

 

「神海まりもさんはモデルを新調したせいで、フリップ芸よりも身体の動きで遊び始めてしまい得点の機会を減らしました。2位になり立ち絵の動きがはく奪されてからも問題に恵まれず、3位まで転落です」

 

:なにやってんだ

:これは良いシーソーゲーム

:まりもが1位じゃつまらんし妥当

 

 なにやってんだは本当にそう。お前が勝ってくれないと、詩星せるりが優勝してしまう。

 なりふり構わず真面目ボケを乱投してくる詩星せるりはシュールな面白さがあるので、加点しないと不公平になってしまう。

 

 詩星せるりこそ何やってんだ。架空の人物と夢の国に行くために、清楚キャラさえもかなぐり捨てて捻った回答をしてくる。巷では臓物好きの腹黒歌姫といじられてんだぞ。

 

 どうしてこんなことに……。全世界の女児が目指すべき女神だったはずのせるりちゃんはどこへ……。

 

 人生は思うように行かないものだ。今日だってさっきから萬屋ぺすとが俺の方ばかり変な目で見てる気がするし。確かに今日の俺は変だけど、まさか実は南條だと疑っているのか。

 

 だがまあいい、萬屋ぺすとには妨害がある。俺を疑うことへの妨害がな。そのために用意したものじゃないんだけど、利用させて貰おう。

 

「さてここで、その神海まりもさんから優勝した際の褒賞の発表があります。今まで『社員になる』と適当なもので保留としていましたが、ついに決まりました」

 

「「えっ」」

 

 何人かが驚いた。本人と被害者にしか確認をしていないから、自然なリアクションだ。

 

「それでは神海まりもさん、どうぞ!」

 

 

『みやみさんの胸を揉む』

 

 

「!?」

 

 驚く俺。

 

「!?」

 

 驚く黒宮院みやみ。

 

:!!!??

:えwwwwww

:マジ!?

:やりやがったw

:いいぞもっとやれ!

 

 いや聞いてない聞いてない。何やってんの神海さん。

 

『というのは冗談で』

 

 冗談なのかよ。

 

『金! 新しいコントローラー!

 

 は、せっかく夢を叶えてもらえるというのにはもったいないので……』

 

:早くしろ

:胸でいいだろ

:揉め!

:今もんじゃえよww

 

 あらかじめ用意した手書きの画像を順番に操作していく。なんだこの茶番。最初からボケるつもりで準備してたのかよ。

 無駄に勿体ぶった末に、俺や本人に許可を得たものが出てくる。

 

 それこそ――

 

『ㅤ萬屋ぺすとのㅤㅤ

デビュー配信を

ㅤㅤ公開にするㅤ』

 

「え……?」

 

 萬屋ぺすと本人が、ぽつりと呟いた。

 

 彼女のデビュー配信は何かがあったらしく、今日まで非公開となっている。神海まりもが優勝した暁には、それを公開へと変更するというものだ。

 神海まりもと2人で間で話し合い(チャットで)、いくつかの候補の中から俺はこれを推したのだ。これなら社員などという無茶でもないし、予算の負担もない、そしてリスナーにも得があるという良い落としどころだ。

 

:おお

:マジ!?

:あれまた見れんのか!?

:やるやん

:俺録画してなかったんだよ……ウレシイ……

:まりも優勝してくれ!!

:古参が見たマウントしてくるやつね

:応援するしかねぇ

:まりも最強! まりも最強!

:٩('ω')وㅤ٩('ω')وㅤ٩('ω')وㅤ٩('ω')وㅤ٩('ω')و

 

 ほらこのとおり。一転して神海まりもは感染者の指示を得る。

 緑の悪魔が萬屋ぺすとを襲う。ファンだって悪魔の囁きには勝てず、魂を売ってしまうのだ。

 

 これによって、神海まりもは優勝してもしょうがないモブライバーから、リスナーの味方へと変貌を遂げる。大逆転劇だ。

 

『୧('ω')୨』

 

「イ、イヤァァアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 なんだそのリアクション。打ち合わせで伝えてあったし、了解してただろ。なんで初めて聞いたみたいな反応なんだ。まるで今の今まで忘れてたみたいな顔だぞ。

 

:ぺす;;

:声やばすぎて笑うwww

:ごめんな

:でも俺たち、また見てぇよ

:ざけんな嫌がってるだろ

:あれは古参限定なんだよボケ

:古参が全員録画してると思うな自己中

 

 見事にハウリングしている萬屋ぺすとの悲痛な叫びをよそに、コメント欄が争いを始めてしまう。いや独占したい層とかいるのかよ。喧嘩すんな。

 

 よく転載が流出されてないなとか、そのうち音声データに金額が付きそうだなとか呑気に考える俺。

 悲鳴を誤魔化すように、いや、いや、いやん、いやなのよ、と頭を抱えて可愛く頭を振っている萬屋ぺすと。

 

 でも萬屋ぺすとさん……モデルが動くのは1位の人だけなので、それ意味ない動きなんですよ。

 

 周囲から温かい視線と笑みを向けられながら、ああ普段からこんな感じで配信してんだろうなぁと思われる一期生にして年長者。

 おそらくこの姿を見た全員が、ここで無様を晒さないように決心した瞬間である。

 

「じゃあわたしもそれにするわね」

 

:!?

:佐土パイ!?

:きょこちゃんは優勝せんからええわ

:揉ませてください!!

 

「あらあら……」

 

 便乗ネタを披露した佐土原恭子が、コメントを受けて適当に微笑むような感動詞を口にする。これはセクハラコメントへの対処法として俺が提案したものだった。

 佐土原恭子の喋り方なら見下すような嫌味はなく上品な印象を与えるし、困ったらこう呟いてスルーしてくださいという案内だ。こうなったのは俺が悪い。すまない。

 

:ママ……

:放置プレイキター

 

 ……全部俺が悪いんだ。

 

「あらあら~♡ 私もいますよぉ♡ み・な・さ・まっ♡」

 

:ママァ……?

:でもお前遠藤の女だろ

:人妻かよ

:つまりNTR……?

:寝取りと寝取られ、両方に適性のある女です

 

 ……。

 

 もうめちゃくちゃである。

 

 大丈夫なのかこの後。今日は正直のところ、面白みのない『一般教養』がテーマだぞ。教科書の記憶や問題集から抜粋して改変したものとかが大半だぞ。

 

「……俺はついてゆけるだろうか、秩序のない世界のスピードに」

 

:急にどうした……?

:ポエムくっさ

:鰤w

:コピペね

 

「俺が悪いんだよ。お前の母親が食われたのは俺のせいだ! だらしないマネージャーですまない……」

 

:遠藤壊れちゃった

:司会だろちゃんとしろw

:ジャンプ読むんだお前

:遠藤はジャンプ読者だぞ少し古い

:おい嫁! 介護したれ!

 

「はいはぁ~い、エンド様ぁ~♡」

 

 

 この後は多少のヤケクソ進行で行われた。今回を含めて大喜利もあと2回。1位と最下位は10点もの差がある。配点を大盤振る舞いしてインフレさせていかないと、動画が盛り上がらない。

 

「本日のお題は『一般教養』。いずれ開催するVNIVEARTH学力試験の前座とお考え下さい。

 第1問。まずは国語から。この漢字の読み方は? 一斉回答です」

 

『天麩羅』

 

「えー、まず正解者を発表します」

 

『てんぷら』『てんぷら』『てんぷら』『てんぷら♡』『テンプラ』『てんぷら』『てんぷら』

 

「正解は『てんぷら』! 7人には1ptずつ進呈! ちなみに今日のVNIVEARTHの夕飯です! 黒宮院みやみさんが事務所で揚げてくれます! 揚げたてをいただきます!」

 

:はぁ!?

:いいなぁ

:これで1点ずつかよ……

:メシテロやめい

:配信するんだよな?

 

「もちろん配信もします。さて、ゲシュタルト崩壊しそうな画面の中、唯一カタカナだった波羅劾ざくろさん、リスナーの精神安定に一役買ったということでプラス1点!」

 

「えぇ……? や、やったぁ~、うちやりましたよみんなぁ!」

 

:えぇ……?

:かわいい

:さくろへにゃへにゃで草

:これは妹

:こんなので1pt……?

:かわいいからヨシ!

 

「さて審議に移ります。神海まりもさんと拳藤正義さんの解答がこちら」

 

『スシ! テンプラ! スキヤキ!』

『アマノギュウラ』

 

:舐めすぎだろww

:アマギュラはやばい

 

『食べたいじゃーん ٩('ω')و』

「いや、オレはこれ、仏像とかそういうのかと……」

 

「さーてリスナーに相談しましょう、どのくらい減点しましょうか!」

 

「マジすか!」

『不覚……』

 

:不覚……じゃねーのよw

:マイナス5点!

:-114514点

:萬屋ぺすとに3点!

:-1145141919!!!

 

「時間もないしさっさと決めちゃおう。安価いくぞ~。今からコメントを打つから、その前、上のコメントにするかな~」

 

:安価!?

:草

:公式企画で!?

:自由過ぎるw

:この思いついたこと全部やってみました感がヴニなんよ

 

「せっかくだから1位の詩星せるりさんにコメント打ってもらおうかな。さぁこちらへ」

 

「私ですか? えーっと、失礼します……」

「さ。詩星せるりが2人の未来を決めます。重大です」

「えぇ……。おふたり、ごめんなさい……えい!」

 

 どうにでもなれ。

 

:マイナス2

:1

:ぺすに4点

:萬屋ぺすと優勝確定!

:-145141919810

:逆に2点あげよう

VNIVEARTH公式:↑↑ごめんなさい~;↑↑

:-810

:遠藤からマイナス10点

 

「お? お? オレ生き延びました??」

『୧('ω')୨ コロンビア』

 

 うわあぶね。もしマイナス百億とかだったらその上のコメントにスライドして誤魔化すつもりだったけど、なんか上手くいったぞ。

 でも台本にないことしすぎたかな、時間も食ったし。なんか俺もおかしくなってきている。でも今の俺は遠藤だし、これくらいがちょうどいいかもしれない。

 

「えー、ええぇ? 俺この回答に2点付けるの? マジ?」

 

:お前が言うな

:なに困惑してんだ

:スシ! テンプラ! スキヤキ! 最強!

:あほくさwwwww

 

「というわけで、『てんぷら』が1点、『テンプラ』『スシ! テンプラ! スキヤキ!』『アマノギュウラ』が2点です……」

 

:どうなっとんねん

:これはキレていいww

:真面目にやれ遠藤

 

「-1145141919810(いいよこいよいくいくやじゅう)よりは真面目だろーが。んだコラ」

 

:アァン!?

:言うなってwww

:アオォン!?

:まずい

:これが公式……?

 

 まぁこれだけ好き放題やれば十分だろう。これで今の俺とあの南條亜紀人を結びつける者はいない。

 

 ふざけるのはここまで。あとは真面目な問題が続く──

 

 ──はずだったのに。

 

 過剰に強く切り替えてしまった意識は、そう簡単には戻らなかったのだ。

 

「第5問。ここからは算数に変わります。初めはとりあえず一斉回答。次の問題をお答えください」

 

『 x + 2y = 10

 

 x と y の値を求めよ』

 

「これはどちらかというと数学ですね。さておかしな回答がありました。

 ──黒宮院みやみさん、弁明をしてください」

 

『 x = エンド様♡  y = みやみ♡』

 

「これは、何?」

 

「か、解説いたしますね~。皆様ご存知エンド様♡ エンド様は私にとって大きな方なので、そのまま。みやみはぁ、この愛♡ も含めて全部捧げますということで2をかけて、やっとエンド様と釣り合うんです~♡」

 

「ふざけたこと抜かすと殺すぞ」

 

「えっ」

 

:こわ

:え

:うわ

:一線越えたね

:まずい

:切り抜き確定!

:頸椎見てるか~?

 

 こんな時だけ真面目な方に持っていくなコメント。というか俺の切り抜きアカウント頸椎はコメント欄にも認識されてんのか……。

 

「う、うぅ、うぇ~ん(泣)」

 

 わざとらしく泣く演技をする黒宮院みやみ。周囲の女性陣が声をかけ茶番が始まる。

 

「ああもう、どうしたのよみやみちゃん、泣かないの」

「だってぇ~」

「私見てました。遠藤さんが悪いです。クビにしましょう」

「酷い人どす……」

 

 ここで使う予定でもなかったけど、こういう展開もありかもねとキレ芸として事前に伝達しておいたコント茶番だ。

 しかし詩星せるりの目だけが少しガチな気もする。

 いやノリで開始した俺も悪い。ごめんて……。

 

 ところでこの後なんと弁解するかは俺のアドリブだ。う、まずい、俺もなんか動揺してきた。炎上するかこれ……?

 

「あ、ああ、あぁ……間違えた、愛す!愛する!

 

 ふざけたこと抜かすと愛すぞ」

 

「やったぁ~!!!!」

 

:草

:茶番すぎるwww

:みやみ;;

:喜び方が迫真なの草

:泣いてそう

:心からの歓喜だぞ

:遠藤お前を殺す

 

 

 そんなこんな。無難になるはずだったお題『一般教養』が、終始ぐっちゃぐちゃの混沌へと変わり果て、挙句の果てには予定時間を20分オーバーし急遽80分スペシャルとなったのだった。

 

 これで……。

 

 ここまでやれば、南條が遠藤であるとバレることはないはずだ。

 

 

 正直、後悔はしている。

 

 




 みゃみ「うぇ~ん ToT」
 

【誰のビジュアルを先に見たい? VNIVEARTH人気投票!!】四期生のデビューにともなって、二次投票の受付を開始します!! 現在公式Tvvltterにて公開されている画像は、制作途中のラフ段階のものです。そこで、本アンケートの結果に基づいて完成させる順番を考慮いたします。皆様の推しにぜひご投票ください!(※なお一期生については、本編では未改修のためネタバレが含まれます)

  • 萬屋ぺすと
  • 佐土原恭子
  • 神海まりも
  • 詩星せるり
  • 遠藤
  • 黒宮院みやみ
  • 拳藤正義
  • 波羅劾ざくろ
  • 伊能凛
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面倒なので黙っていたら天才参謀と誤解されました(作者:濃厚とんこつ豚無双)(オリジナル:ファンタジー/戦記)

後年、ノルトマルクの軍史家たちは、クラウス・フォン・ライフェンベルクを「沈黙の天才参謀」と記した。▼諸邦の利害を束ね、敵国の思惑を見抜き、ただ一言で戦役の方向を定めた男。と。▼だが、その大半は誤解である。▼確かにクラウスは名門ライフェンベルク家の嫡孫にして、陸軍高等軍学院首席、若くして統帥府(参謀本部)に配属されたエリートだった。▼とはいえ本人に言わせれば、…


総合評価:14654/評価:8.93/連載:89話/更新日時:2026年10月15日(木) 01:19 小説情報


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