「それでは、神海まりも様。2週間以上の東京滞在、お疲れ様でした。
慣れない環境での生活でしたゆえ、自覚している以上に疲労は溜まっているはずです。帰宅後はゆっくりと休んでください」
『南條さん……! (’;ω;`) 』
「忘れ物はありませんね? あとはこちら、茎わかめと、柿の種と……。軽く摘まめるものが入っていますので、旅のお供にどうぞ。飴もあります。
『おじいちゃん……! ;'・(´□`.)・'・.』
「あまり遅くまで起きてゲームをしてはいけませんよ。1日2~3時間くらいまでにしておきましょう。ここでの生活でしていただいたように、1時間ごとに10分程度の小休憩を挟むこと、休憩中に目の体操をすること。軽いストレッチも効果的です。creatureは2日に1本程度にしてください。量が少ないと思ったら炭酸水で割りましょう。カップ麺は1日1食まで、1日に2~3食は野菜を食べること。あと手洗いうがいは忘れずに。お渡ししたマスクや消毒液はインフルエンザなどが流行った時にでも使ってください。外出時の買い食いは感染の原因です、特に人ごみで滞在した時にそのままの飲食は厳禁ですからね」
『ジジイ……! ☝︎(゚Д゚#)』
最寄りの駅まで付き添った俺は、改札口で神海まりもを見送った。
来た時よりも重くなっているキャリーケースには、事務所から持ち帰ったカップ麺やcreature(怪物的なエナジードリンク)が詰め込まれておりパンパンだ。
ついでとばかりにマスクと消毒液も持たせている。
譲ることにした漫画についてはさすがに入らないだろうから、郵送を提案したがまた来た時に読むからとりあえずいいとのこと。
そうか……また、来るのか。
彼女の帰宅を以って、VNIVEARTH事務所に所属ライバーが一堂に会するこの配信合宿も完了となる。
一抹の寂しさ。けれども、もう二度とない集まりではないのだ。
また来年。次がある。VNIVEARTHが、存在し続ける限り。
――次が、ありさえすれば。
事務所に戻ると、そこは数日前までの賑やかさが嘘だったかのように静まり返っている。
大人数で使用するために展開していた折りたたみ机を折りたたんで、部屋の隅に立てかける。少し額に滲んだ汗を、頭を振って乾かす。
そして俺はミュートにしていた配信を再開する。
「戻ったぞー」
:おせぇぞ
:何してたんだ?
:ライバー襲ってたんじゃねえだろうな
:ぺすと何かしてたら許さねーぞ
「そんな時間なかっただろーが」
……8月28日水曜日、時刻は11時21分。平日の真昼間だというのに彼らは一体何をしているのだろう。
24時間配信が終わってからというもの、俺は可能な限り仕事と私生活を行う時間をライブ配信つけたまま過ごしていた。食事や風呂を除いて、コメントにはすぐに反応するようにしている。
なぜそんなことをしているのかと言えば、ひとえに潔白の証明のためである。
女性ライバーの安全を危惧するリスナーたち。その気持ちと構造は理解しているので、俺はできるだけ彼らの不安を取り除くためにそんな時間ありませんアピール配信をすることにしたのだ。
無論、リスナーが知らないだけで俺たちはオフコラボよりも前の日からも集まっているし、オフコラボの無い期間に密会することも可能なので、この配信にそこまでの意味はない。
ただまあ、ただでさえ配信の多くない俺が、オフコラボの前と実施中で更に配信頻度が減っていたのだから、その埋め合わせというわけじゃないが、作業をしている間ずっと配信を点けたままにしてコメント返しをするくらいの反動があったっていい。
「
:あ?
:テメェ……
:煽ってんのか?
:くぉら!
:クッキー★
「なぜ怒る? 妙だな……むむむ」
:めっちゃ煽るやん
:どこの名探偵だ
:せるりの物真似すんなw
:仕事中だわ
:↑仕事して、どうぞ
適当にプロレスをして場を持たせていく。リスナーだって、本当に俺を疑ってここにいるだけではないのだろう。暇つぶし程度に、俺とじゃれ合ってくれる程度には遊ぶためにここに来てくれている。
:いちおー学生です!
「お。ほら、学生がいた。VNIVEARTHの配信には子供から大人まで分け隔てなく楽しんで欲しいからね。
むしろ学生は大歓迎。ちびっこあつまえーってことで、夏休みの宿題配信も31日の22時から朝方までするから。宿題があってもなくても、大人も子供も押し寄せてくれ」
:夏休み最終日やんけw
:ギリギリまで放置するな
私情や願望にまみれたことを言っている自覚はあるけれど、まだまだ発展がこれからのVTuber界隈の現状において中高生をターゲットにするのは理に適った戦略だ。
これから迎える最盛期に向けて、居ついてくれるファンを育成していく。
今すぐ収入に繋がるファンも大事だが、未来の収入となるファンを確保しておくことも重要となる。
:今なにしてんの
:本当に配信してる?
「配信してるって。録画じゃないよ。今は作業中、というか昨日も一昨日も、今日も明日もずっと作業配信だよ。会社にいるんだぜ、やることはいっぱいあるの」
:へー
:そう……
もぬけの殻となっているVNIVEARTH事務所、そのオフィス。
日曜日の昼過ぎには波羅劾ざくろが帰った。それから少し間を開けてから、詩星せるりをご実家まで護送した。
なんとなく距離を感じる俺と詩星せるり。
普段からminaという架空の人間を介したやりとりをしていたせいで、俺から彼女に対する感覚と、彼女から俺に対する感覚にはギャップがあるのだ。
俺からすれば1年以上一緒にやってきた相棒だけど、詩星せるりにとっての俺はなんか急に距離を詰めてくる社員のおっさん。
身近な距離で生活をしていたことで少しは打ち解けたかと思ったが、帰路でも少し警戒されていた気がする。
帰る間際の波羅劾ざくろから『鬼』と言われた気がするし、この配信合宿での俺の振る舞いは失敗だったのかもしれない。
東京在住の萬屋ぺすとと佐土原恭子、そして拳藤正義らは普通に帰宅。
月曜の夜には、黒宮院みやみも名残惜しそうにしながら新幹線に乗っていった。
俺の着古したワイシャツを油の掃除用にリサイクルすると言っていた彼女は、ここを出る前に新品のワイシャツを渡してきた。いつの間に買っていたのだろう。
元々は捨てる予定の物だったのだ。律義にそんなことしなくていいのにと思ったけれど、聞けばそこまで
受け取ったワイシャツは、新品のはずだけどなんとなく黒宮院みやみの匂いがする気がした。
いや匂いがするじゃねーよ南條亜紀人、お前は変態か。自重しろ。自戒しろ。
所属ライバーだぞ、シャンプーか柔軟剤の香りが移っていたことくらいで気に留めるな。ストーカーみたいな思考だぞ、気を付けろ。
つーか合鍵を返して貰っていないことに気付いた。立ち退くことがあったらどうするんだ。わざわざ東京まで持ってきてもらうわけにも行かないだろうに。……郵送で良いか。
こうして社員以外のライバーが誰もいなくなったVNIVEARTH事務所。
だがそれでも、やることは、やれることはいくらでもある。
まず明後日、金曜日にある大喜利に向けた準備。全4回という8月全部を使った企画の最終日だし、最下位が頑張れば挽回できるような、ちゃんと盛り上がるような問題づくりと配点を考えなくてはいけない。
そしてどうにか詩星せるり以外が優勝するように祈るか、もしも詩星せるりが優勝してしまった時の対処法を想定しておくのだ。
さすがにこの企画で完全に台本を使ったやらせで済ませるのは、エンターテイナーとしての俺が認めなかった。
更に月末、土曜日になる8月31日には、例の『萬屋ぺすとのホームランダービー』を使用したVNIVEARTH甲子園も控えている。
あくまでリスナー手動の企画として試み、上手く軌道に乗った通称『ペネキ』。
開発に関わりたい有志によってdlscordサーバーが立てられ、誰でも作り手として参加できる企画だったはずが、先週ついに仕切りたがるリスナーが優秀な者だけを選別して更に別のサーバーに引っ越してしまった。
『豹柄鼠』とかいう、お前Yovitubeアカウントと同じ名前なのかよと言いたくなる強火感染者による厳選行為。
それまで好き勝手にあれやってこれやってと、俺も複数の捨てアカウントを使って意見し舵を取っていたが、ここでついに発言権をなくしてしまう。
……かと思われたが、良いアイデアを出す奴として採用の個別メッセージが来ていた。
捨てアカの1つ。その名は『富岡義』。法則性を持たせないように適当に名前を設定しているが、よりによってこれかぁ。勇を失ったな。
今月の企画は順調で、もう完成形が見えている。
あとは今後のこと。収録した企画の編集作業に、新たな企画の考案。一期生の改修モデルを簡易版から正式版へアップデートするデータの構築と、その後に続く新衣装のデザイン。
数ヵ月後にはもう年末で、クリスマス企画と、そして1月となればVNIVEARTHの1周年になるわけで、同時に萬屋ぺすとの1周年企画。ついでにもう2人の1周年でもある。
……なんで年末年始にこんなにイベントが渋滞してるんだよ。
それもこれも、全ては奴のせいである。
「──エンド、この蜂蜜の効率のいい集め方はないのかい?」
「……2ndGの時点ではないですよ。3rd以降はやってないので詳しくないのでわかりませんが」
:うわでた
:社長じゃん
:部下に仕事させてゲームをする上司
:ウィィイインwwwガガガww
:ご愁傷様です
:女どころか、男とずっと一緒♡
:┌(┌^o^)┐エンド エンド
:はちみつくださいwww
実態としてはマジでゲームしてるだけだけど、この状況下ではあながち無駄でもなかったりする。
社長がいることで会社で仕事をしていることが証明されるし、なんなら女性ライバーと裏でいちゃつくどころか社長と2人きりという構図に同情のコメントまで寄せられる始末。
「というか社長が効率の話をしないでください。なんで正月に一期生をデビューさせたんですか。やる企画が渋滞してますよ」
「? そんなもの、一度にまとめてやれば効率的だろう」
:うわ……
:そ ん な も の
:はい炎上
だからそういうこと言うなって……。
不思議そうな顔でカスのような即答をかましてくる我が社の社長、伊能凛。
イベントとは全てが集客のチャンスだろうに、むしろこじつけてでもやるべきではないのか。本当にタレント事務所の事業主か?
:っていうか企画あるんだ!?
:ぺすの1周年に決まってんだろ
:正月と一期生の1周年配信だよな
「あるよ。なにかやるよ。実は少し前から準備を始めてる。その内Tvvltterで告知するからね、だから公式とライバー両方、フォローして待っててね。お楽しみに」
:マジか
:どんだけ前から準備してんねんw
:ぺすの1周年配信の準備任せたからな!
さっきまでライバーとの不適切な交遊を疑って関わるなと言っていたのに、今では任せたと言うこの手の平の返し様だ。ただのコントである。
:エンドはゲームしないの?
横で狩りをしているゲーム音が入っている俺を不憫に思ったのか、疑問のコメントが投げられる。
:お前ゲームしないよな
:社員だから許諾気にしてできるゲームがないんだよ。真面目。
:マイクラとかやってたじゃん
:どうなったのあれ
:みなしごエンドレスキングダム な
:お前ら黙れ
「ああ……マイクラなら禁止令が出てるよ。マネージャーから、お前は鯖に入るなって。見るのも触るのも禁止されてる。出禁」
:出禁ww
:草
:何やったんだよw
何もやっていない。そもそも禁止令を出したマネージャーとは俺のことだ。
というのも、今マイクラのVNIVEARTHサーバーでは、俺が『みなしごエンドレスキングダム』などと宣言した土地を中心にして黒宮院みやみが城を建設している。
表向きには俺には秘密ということになっているので、事情を理解しているリスナーはさっきも話題を抑制しようとしていたし、俺も空気を読んで知らないということにしている。
リスナーと雑談しながら建設しているとはいえ、丁度良い、と言ってしまっては申し訳ないけど、ちょうど今日の夜に行う企画で活用させて貰う予定があったりする。
「まあゲームならするよ、今夜あたり」
:今夜ってコラボか!?
:なにそれ
:なんか全員で企画やるんでしょ20時から
「そうそう。20時からで告知してある枠で。所属ライバーから運営に大事なお話があるらしいから、
:はーい
:オフコラボ中の暴走っぷりが嘘みたいだぁ……
:せんせー
:いや今なんかゲームしろよ
「ゲームねぇ……今はそんな時間はないかな」
:配信する時間はあるのに
「今は作業をしながら、そのついでに雑談してるだけだし。本当は配信せずに作業に集中したいんだけど、まぁ、そこは集中力が欠けててもいい作業を優先してるわけで」
:お仕事できてえらい!
:もっと働け!
:マジで大変なら休めよな
:作業優先でいいから配信切ってもええんやで
ガラの悪いコメントが基本なので、たまに優しいコメントがあるとありがたさが際立つ。
そんな中、ふと別のコメントが目についた。
:ならなんで配信してんの?
なんで、か……。
俺が配信をする理由。
俺がVTuberになった理由。
俺が、VNIVEARTHの運営に関わった理由。
真面目に返事を考えようとして……まあ、正直に言うことでもないか。適当に返しておこう。
「配信する理由? んなもん、決まってる。
ほら──世界平和だよ。俺は世界が平和になることを願って配信をしている」
:草
:適当w
:んなわけ
:いや潔白の証明のためだろww
……あ、そうだった、潔白のためか。この配信枠の理由か。何を考えているんだ俺は。
:平和のためではあるけどもw
:炎上しないためのな
:俺たちはお前を監視しているぞ <●> <●>
:なんか淫夢みたいな顔文字なかった?
:目だよ。男が並んで寝てるわけじゃねーからw
平和のため。
あながち間違いでもない。俺はVNIVEARTHの平和のために配信をしている。
俺は平和主義。平和を求めてここに来た。
だから。
「エンド。ねぇエンド。もしかしてこの大剣って武器は、効率が悪いんじゃないか?」
隣に座って、仕事をしている俺の肩にゲーム機を乗せてディスク読み込みの振動を与えてくる男。
平和主義者の俺は、奴を殴ったりはしないのだ。
*
そんな世界平和を語った男が企画をした、この日の夜に行われる配信が、これ。
【緊急企画】運営VSライバー! 結成、遠藤討伐隊!【VNIVEARTH・箱コラボ】
:きた?
:わこつです
:きいいいちゃああああああああ!!!!
:草
:遠藤なにしたのww
内容は伏せられた告知によって、配信枠に集まってくれたリスナーたち。全員参加企画のため、各ライバーのファンがこの枠に訪れている。
配信時間になると、まずは俺の第一声を皮切りに茶番が始まる。
「なんだ、なんだこの配信は! 遠藤討伐隊……? 社員であるこの俺を、討伐してただで済むと思っているのか……? 誰だ首謀者は。次の箱企画には呼んでやらないぞ」
:お
:エンド!
:初手パワハラ
:はい切り抜き
表示されるみなしごエンドレスのLive2D。もちろん、企画を立てた首謀者は俺である。
「リスナーの
:お前と一緒にするな
:やさしい?
:茶番言うなw
設定としては、俺はライバーたちに呼び出された。リスナーが集まりきるのを待つ間、一緒に待たされている体で喋りながらコメント欄が整うのを待つ。
タイミングを見てゴーサインを送ると、ライバー達の立ち絵が画面上に現れる。
「待たせたわね! VNIVEARTH一期生萬屋ぺすとよ!」
「……本当に待たされたぜ! ったく、呼び出しておいてそっちが遅く来るなよな」
ライバー代表としてまず自己紹介をした萬屋ぺすととのプロレスから、導入を組み立てていく。
「ア、アンタが先にやるからまだ来るなって言ったんでしょ! ……悪ぶっておいて、リスナーのみんなが集まるのを待つ間はずっと喋ってるからって」
:へえー
:優しいじゃん
:ツンデレか?
あれ、予定にない暴露。萬屋ぺすとさん俺を持ち上げる必要はないんですよ。
「俺のことはいいんだよ。お、お前たちのためじゃないんだからね。本題に入れいッ!」
「照れちゃって……。遠藤も可愛いわね、ねぇみんな」
「ツンデレですね」
「エンド様は優しい人ですよぉ♡」
「頼れる人です」
「……あったけぇセリフ」
:は?
:ふざけんな
:俺たちの方がかわいいよな
:遠藤を殺せ
:男を褒めないでくれ
「……つめてぇコメント」
神海まりも:遠藤は裏表のない素敵な人です
「……ネタに走ったコピペ」
:草
:絶対裏表あるわ
:ライバーに自分上げさせるとかサイテーw
「それじゃあ、こほん。本題よ!
遠藤! ライバーから運営に、物申すわ!
8月から始まったVNIVEARTH人気投票、その優勝者にはアクリルキーホルダーが作成される。VNIVEARTH初のグッズ化。それはありがたいことよ。でも! はいせるりちゃん」
「はい……っ! グッズ化は1位になった1人だけ! 私たちは戦いたくない、争いたくないのに! みやみさんお願いします」
「人気投票といい、大喜利といい。運営さんは私たちを戦わせようとしてばかり……♡ いじめるのは私だけにしてください♡ はぁい、ざくろちゃん」
「ええ!? う、うちのことは存分にいじめてください? ……じゃなくって! ええと、ライバーの絆を引き裂こうとする運営さんに、異議申し立てますっ!」
:ざくろ!?
:いや草
:なんか始まった
:いつもの茶番キターw
なんだこれ。最後の方、台本にないアドリブに呑まれかけてたぞ。先輩から悪い影響を受けるな。
「なるほど……言いたいことはわかったぞ。つまり、ライバー同士を争わせようとするのはやめろ、と」
「え、ええ……!」
「お前たちは戦いたくない、と」
「は、はい!」
「仲良し手を繋いで全員でゴールがしたい、と」
「そうでぇす……♡」
「1位だけはケチくさいから、上位3人くらいはグッズ作れ、と」
「そ、そこまでは言ってませんよぉ……」
「――いいだろう。その挑戦、受け取った!!」
:いいのかよw
:簡単に屈する運営
:学芸会かな
:挑戦って?
まあこういう仕込み。台本である。人気投票という1位をグッズ化するという目を引くイベントを催したはいいものの、これではリスナーの派閥同士で遺恨が残ってしまう。それを考慮して、最初からグッズ制作を全員分に変更するという予定で事を進めていた。
この運びの企画をするために、ライバー達には度々競う事への抵抗を配信中に話してもらっていたりと、無駄に周到だったりする。
画面が切り替わる。そこは某サンドボックス系のクラフトゲーム。通称、略称、マイクラ。画面には9体のプレイヤーが並んでいた。
「自由が欲しければ戦え! 戦って勝ち取るのだ!
運営VSライバー、遠藤討伐ミッション!」
:草
:いやお前が言うんかいw
:自殺宣言ww
VNIVEARTHライバー9人全員が参加する。となれば、自機キャラの見分けは付かなくなるだろう。
そこで、リスナー視点でも操作キャラの区別を付けるためにスキンを使用してはいるのだが、今回は服と髪の色を変えただけの簡易的なものとなっていた。
素材の用意が豊富なVNIVEARTHであれば、完成品があっても不思議ではない。
だがそこをあえてクオリティを抑えたスキンで配信を行なうことで、今回の企画があたかもライバーと運営側話し合って急遽開催が決定したかのような筋書きに説得力が生まれるのだ。
急に全員が作り込まれたスキンを使っていたら、どこからどう見ても予定されていた企画として受け取られてしまい、冷めたコメントが増え没入感を妨げるノイズとなってしまう。
加えて、これは俺の勝手な印象だけど、黎明期のVTuberが使うマイクラのスキン画像というものはリスナーの手作りであることが多かった気がする。
1枚のイラストよりは敷居が低いこともあって、ライバーと絵が描けるリスナーが交流するためのワンシーンという側面があったから、それを俺が先手で作って機会を潰してしまうのは悪手に思えたのだ。
「見よリスナー諸君。この広大な城を。これが俺の城――
――みなしごエンドレスキングダム!!」
そびえ立つ城を見上げた俺達。リスナー達もまた、思い思いのコメントをしていく。
:だっせぇ名前……
:お前センスないよ
:いつの間にこんなものを!?
「黒宮院みやみが作ってくれた」
「愛を込めて作りましたぁ♡」
:女に作らせるな
:だっせぇ男
:みゃみ目を覚ましてそんな男……;;
「ルールは簡単。ライバーの手で俺を殺すこと。落下や炎上、空腹などの自然死はカウントしない。
今から1時間、俺を殺した分だけ、作成するアクリルキーホルダーの数を増やしてやろう! 最大9人分だ!」
「え、ええ!? 全員分!? アタシたちもそこまでしろとは……」
「いえ萬屋先輩、やりましょう! 遠藤さんの息の根を止めるチャンスです!」
「うちもやります!」
:怖すぎで草
:せるり「殺りましょう!」
:ざくろ「うちも殺ります!」
:wwww
:結局戦いじゃねーかwww
「俺は玉座で待っている。城内には罠が張り巡らされているらしいが、無事に俺の元まで辿り着けるといいなぁ!?
ちなみに俺はマイクラ禁止令が出ていたので、今初めて見ました。こんなことになってるとは……。
スタートはここから。先に俺が動き始めて、時間差で他のライバーも行動開始になるんだけど、俺これ玉座まで辿り着けるかな……」
:ww
:いっぱい罠あるよ
:100回は死んでそうw
:絶対追い付かれる
黒宮院みやみの配信を見ているリスナーは内容をもう知っている。リスナーのコメントを聞いたり、神海まりもに突発的なコラボでアドバイスを受けて築かれたのがこの城、みなしごエンドレスキングダムだ。
「……キングダムって、王国のことか。王城だけで城下町はないから、みなしごエンドレスキャッスルだったか……」
:ださい
:ダッサ
:やかましいわw
「それでは拳藤正義には、勇者の剣を授けよう」
「えっ、オレ!?」
神海まりもがダイヤの剣を床に投げた。
「神海まりもが作った」
〈 marimo 〉私が作りました ٩('ω')و
:自分で作れよ
:だっせぇ男
:マイクラ禁止中だったからw
「……神海まりも、俺にも何かないの? こう……鎧とか」
これは打ち合わせになかったけど、聞いてみる。神海まりもが床に何かを投げた。拾いに行く。
「これは……乾燥した昆布?」
〈 marimo 〉今日の夕飯 (*´ω`*)
:草wwwww
:草に草生やすな
:いや海藻生えるww
「わかめでも食ってろってことか……ちくしょう、馬鹿にしやがって……。後悔するなよ、社員の権力見せてやる」
「ゲームの実力じゃないのね……」
萬屋ぺすとのツッコミが突き刺さる! ナイスアドリブ!
「これは運営対ライバー! 社長が俺の護衛となる」
「エンド、キミはボクが守る」
「まあ実質俺1人だ」
「エンド……!?」
「ただし。黒宮院みやみは、運営側ね。城の制作者が狩る側なのはまずい」
「狩られる側だって自覚があるんですね……」
「詩星せるりのツッコミが突き刺さる! 臓物を出させてあげます、とか言いそうだ」
「い、言いません……っ!」
:草
:実は仲良いだろ二期生w
「な、仲が良いわけじゃ……!」
「というわけでスタート! 俺は先に行くぞ!
ライバーのスタート時間までにそれぞれのチャンネルで配信枠を始めるから、リスナーは各自で見たい視点に行ってくれ! 複窓も歓迎! 鳩されたって俺は負けないぜ! あばよ!」
同時視聴数がみるみる内に減っていく。ただここに残ってくれている人や、同時視聴してくれる人もいるようで心温まる。
:ぺすにお前を報告する
:見てるぞ^^
いや俺の動きをリークする用だわ。心冷え込む。
「行くぞ、社長! 黒宮院みやみ!」
「待ってくれエンド、操作がまだ……」
「お供いたしまぁす……♡」
こうして、ライバー達による俺を殺す為のミッションが幕を開けた。
[ Inorin は高い所から落ちた ]
[ Inorin は高い所から落ちた ]
[ Endless は高い所から落ちた ]
「エンド様ぁ〜……」
いや、無駄にアスレチックになってるんだけど?
:草なんだ
:うーん、下手!
:社長の名前いのりんてw
「ああ、社長ならモンハンの時もいのりんだったよ。というか普通にローマ字だし……」
「!? エンドが、ついにボクをあだ名で呼んでくれた……!?」
「まずい、社長にハメられた」
:ハメられた!?
:悲報、遠藤ついに社長にハメられる
:┌(┌^o^)┐アダナ デ ヨンデモラッチャッタ///
「エンド様ぁ、私をハメてください〜♡」
お前はアウト。もうこの配信で喋るな。
社長が死にまくっている間にライバー組がスタートする。もう道中で死ねなくなってきた。
「エンド様っ♡ ここで一度ベッドを作った方がいいかもですぅ〜♡」
:おい
:教えるな
:ズルやめろ
:まあここで死んだらライバーの所からリスポーンしちゃうししゃーない
「……わかった。でも俺はそこまで下手じゃないんだ。もうこのゲームには慣れてきたし、まさか。そんなわけ」
素直にベッドを作りながら、ネタに走る。まさかね。はは。んなわけ。
:フラグ立てるなw
:オイオイ死んだわアイツ
:いやでも上手いぞ!?
:社長なんかもう他のライバーより後ろにいるぞ
「社長、奴は社員の中でも最弱……。あれ落ちた。くそー。ああー……いやどこまで落ちるんだよ、って、マグマやないかーい」
[ Endless は床が溶岩だったと気付いた ]
:なんだそのテンションw
:はいフラグ回収
:この城まりもプロデュースだからな
「エンド様ぁ〜(泣) みやみもお供します〜(泣) ……あぅん♡」
[ Forever は床が溶岩だったと気付いた ]
「いやお前も落ちてくるのかよ。というか名前 Forever なのかよ。わかりにくいから直せや」
突っ込みどころが多いので、雑に突っ込んでおく。名前は配信後に連絡して直して貰おう。
その後も城のセキュリティは俺達を阻んだ。
無駄に謎解きもあったり、神海まりもお手製の配信に映してはいけない夢の国の王の像……と見せかけたたこぶえがあったりして、25分ほどかけて俺はついに玉座へ辿り着いた。
「やっとか……。なんでこんなにしちゃったの。俺が住む城じゃないのかよ、殺す気か。
帰れる気がしねぇ、地獄への片道切符だったか」
「エンド様♡ こっちに休憩所がありますので、よろしければベッドを配置してください♡」
玉座の間の横から繋がる部屋。素直について行くと、そこはなんかベッドの置いてあるピンク色の部屋だった。
「みやみとエンド様の、愛の巣です♡」
:確かにこれは立派な休憩所w
:ラブホじゃねーかw
:みゃみ;;
:悪ふざけしたリスナーが作らせたやつw
そして5分が経過。玉座の間にライバーはまだ来ない。俺を殺す筈のライバー達の死亡ログが何度も出ている。
音沙汰のないまりもは何をしているんだ。このままじゃ放送事故だぞ。
「あーあ、誰も来ねぇや。社長も来ないし、飲み物取ってこよ」
俺はわざとらしく言ってから、放置したフリをして他ライバーの配信枠に視線を移す。
:舐めプ……
:殺すぞ
:ぺすがゲーム下手すぎてどうにもならねぇ
:せるりもざくろもダメダメだぁ……
「くっ、こんなの無理よぉ……」
「ここまでですね……。私はもうだめです」
「うちに力があれば……力が欲しい……!」
そこでは女性陣が、情けない泣き言を零していた。彼女たちは、へっぽこ3人組。
あれ、佐土原恭子は?
:がんばれ!
:うーん、ゲームヘタクソ漫才集団
:なんなら俺ら感染者で事務所に突撃するぞ
:やっぱダイレクトアタックやね
そこへ、状況を打破するための真打が現れる。
「みなさぁ〜ん、こっちです〜!」
「あ、あれは──みやみちゃん!?」
物陰から接近していた黒宮院みやみ。一同は何の疑いも
絆か。
「実はぁ、こんなこともあろうかと、隠し通路を用意しておきましたぁ♡ ささ、こちらです〜♡」
:!?
:熱い裏切り
:やっぱVNIVEARTHの絆よ
:これいいのか?
:面白いから無問題!
「みやみちゃん……! え、助かるけど、これって良いのかしら……?」
「ふふふふ〜♡ たぶんですけど、おそらくきっと大丈夫です♡ エンド様なら許してくれます♡」
:何も良くねぇw
:クソ女ww
:よくやったw
:そういやみやみ元は遠藤燃やす芸だったなw
──とまあ、これは仕込みである。もしもライバーたちがダメダメだったときのリカバリー策として、黒宮院みやみには説明をしてあった。
余裕ぶっこいて飲み物を取りに行くと言いつつ、俺は裏で彼女に指示を送り、こうして無事に実行されたのだ。
「はー。だぁれも来ねーぜ。今回は俺の勝ちかなー。わかめが美味ーぜ……ってうおあああー!?
なんか来た!? 休憩所だろそっち!!」
隠し通路は玉座と休憩所の中間にあった。
面白い具合に俺の発言中に突っ込んできたので、良い感じに即落ち2コマにすることができた。偶然なのか、誰かが調整したのか。
そして俺の知っている台本にはないのだが、全員がダイヤの剣と防具で全身を固めている。
「なんだその装備!? どっから持ってきた!?」
「まりもちゃんが持ってきてくれたわ」
〈 marimo 〉私がやりました ٩('ω')و
:お前かよwww
:有能
:見直した
:ひでぇww
「さあ遠藤、覚悟なさい!」
「更迭します!」
「お覚悟を!」
順に萬屋ぺすと、詩星せるり、波羅劾ざくろ。いつもの会話コンボの順番だ。
「待て、話せばわかる! あーっ!
俺はわかめしか持ってな……ああーっ!」
[ Endless は seruri に殺害された ]
俺は規定のベッドへリスポーン。そこはやたらピンク色の部屋。
「復活ここからかぁ……」
部屋から出れば、待ち構えるは武器を携えた3人のライバー。
「あーあ、無限湧きみたいになってら。なぁ皆。俺、メタルスライムの気持ちがわかった気がする」
:どんまい!
:ざまぁwww
:100万回死んだ遠藤
ここで俺はさらに予想外のものを目にする。ダイヤ装備で判別は難しいが、おそらく波羅劾ざくろ。彼女が装備するロケットランチャーの存在を。
「ふふふ、うちは力を手にしたんです。これで勝利を掴みます」
「絶対強い武器じゃん。誰だよあんなもん渡したの」
〈 marimo 〉私がやりました ٩('ω')و
:やっぱお前かw
:いいぞもっとやれww
「遠藤先輩、お覚悟を! えぇっと──
──爆撃感謝祭やぁ!」
……。耳に突き刺さった、俺の脳裏に刻まれているフレーズ。
その言葉に、俺は驚くほど冷たい声が出た。
「え? 波羅劾ざくろ。今なんて言った……?」
「ひえぇっ、す、すいません!」
「萬屋先輩! 遠藤がざくろちゃんをいじめてます!」
「いけない! やっつけるわよ!」
「はいっ!」
「ああーっ!!」
俺の冷たい声なんかどこかへ行ってしまった。
「こ、黒宮院みやみ! 誰を斬ってる! ふざけるなーっ。待て、黒宮院みやみは、俺を助けてくれるよな……?」
「剥製にすればぁ、ずっと一緒にいられますよね……♡」
:ヒエッ
:こわ
:ヤンデレもできたのかこの女
そして俺は7回ほど殺された。
「もう、負けたくないーっ! 俺は逃げるぞ!」
ほぼ無理矢理3人の包囲を突破してここまでの道のりを戻っていく。場合によっては逃げるから、その時はまりもに容赦なく俺を殺せと言ってある。
さあ来い。
「ぎゃーっ!」
「あれ遠藤先輩じゃないすか。どうしてここに?」
[ Justice は Endless を殺害した ]
良い位置にいたなぁ、拳藤正義。いないことに気付かなかった。
「これで8デス。次負けたら全員分だ……なんとしても、これ以上は、負けられねぇ……!」
:いやもう負けだよ
:社員の分以外は確保されてる。
:みんなお前の分のアクキーのためにお前を殺そうとしてるよ
俺は使わないのが暗黙の了解である、隠し通路を通って外へ向かう。
そして俺は逃げ延びた──ということはなく、そこへ洗練された操作で追いついたのは神海まりもだった。
巧みに弓で俺を攻撃してはライフを残り1にして、そして回復薬を投げてくる。実質、俺は生け捕りにされていた。
「ク、クソガキまりもん〜!!」
:クソガキまりもんw
:すげぇよお前ら、芸人だな
そして俺を追ってきたへっぽこ3人組に追いつかれ、俺は9回目の死を迎えた。
企画は終了。俺は配信開始時の地点に置かれたベッドでリスポーンする。
「私たちの勝ちですね!」
「遠藤先輩、どこに行ってしまったのでしょうか」
「まあ、いいわ。この城はアタシたちで住みましょう」
「エンド様と2人で過ごす新居はぁ、別の場所に建てますから、遠慮なく使ってください〜♡」
:適当で草
:可愛い
:住めねえだろこんなところw
勝利の裏には敗者がいる。俺は1人わざとらしく悔しがって見せる。
「く、くそが……。俺はここを新たな拠点として力を蓄える……。そしてあの城に攻め込むぞ……!
次回はみなしごエンドレスキャッスル、奪還編だ……!」
:もういいよww
:なんだこの綺麗なオチwww
俺はその場に看板を建てる。みなしごエンドレスキングダムと一度入力してから、消す。そしてふさわしい名前を付ける。
再起を誓ったこの地の名は──
:お前のセンスどうなってんだよ
:濃い1時間だったなw
:佐土原恭子 is どこ?
【誰のビジュアルを先に見たい? VNIVEARTH人気投票!!】四期生のデビューにともなって、二次投票の受付を開始します!! 現在公式Tvvltterにて公開されている画像は、制作途中のラフ段階のものです。そこで、本アンケートの結果に基づいて完成させる順番を考慮いたします。皆様の推しにぜひご投票ください!(※なお一期生については、本編では未改修のためネタバレが含まれます)
-
萬屋ぺすと
-
佐土原恭子
-
神海まりも
-
詩星せるり
-
遠藤
-
黒宮院みやみ
-
拳藤正義
-
波羅劾ざくろ
-
伊能凛