新世紀エヴァンゲリオン二次創作 ヘルベルトの民   作:全々

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何とか続きました。
駄文が続きますがよろしければご覧ください。


第一話 使徒、シンジ襲来!(後編)

 ヘルベルトの民 第一話 使徒、シンジ襲来!(後編)

 

「ええ、心配ご無用、彼は最優先で保護してるわ…だから、カートレインを用意しといて、直通でお願い…そっ、迎えに行くのはわたしが言い出したことですもの…ちゃんと責任持つわよ、じゃ!!」

 

先ほどのN2爆雷の爆発による衝撃波が来ないことに対して疑問が尽きなかったミサトであったが、シンジの声掛けで本来の目的を思い出し改めてNERVに向けて出発。その後は特に問題なく、先ほど無事にカートレインに到着した。

現在は地下へ向かって移動中である。

 

「シンジくん。そういえばお父さんからIDもらってない?」

「あぁ。これですか?」

 

シンジはズボンのポッケに手を突っ込むと、手紙に同封されていたIDと、ついでにゲンドウから送られてきた手紙をミサトに手渡した。

 

「ありがとー。じゃあこれよんどいて」

 

そう言われてIDと引き換えにミサトから手渡されたのは、一つのパンフレットが挟まれたファイルだった。

 

それは〔ようこそNERV江〕とデカデカと書かれたファイルで、まるで観光地か何かのパンフレットのようなものだった。どういうわけか右下に大きく〔極秘〕と書かれてある。

 

(極秘と書かれてあるのに”ようこそ”? 極秘なものを見せちゃっていいの?)

 

少し疑問に思ったシンジだったが、中身をみるためファイルを開く。

ぺらぺらと中を見てみたが、当たり障りのない内容ばかりだった。

NERVのこれまでの軌跡、施設案内、食堂のメニューetc...

 

(こんな内容だったら極秘じゃなくてよくない?)

 

そんなことを考えながらぼんやりと眺めていたら、隣にいたミサトから声がかかった。

 

「ちょっと手紙の内容見てもいい?」

「はい。かまいませんよ」

 

読まれても困るようなものではないため、シンジは許可を出した。

すると、手紙の内容を確認したミサトの動きが止まった。

 

(あー、あの内容をみたから絶句したのかぁ)

 

絶句しているミサトを見て、シンジは苦笑いした。

たしかにあれは手紙と呼べる代物ではない。

動きが止まっているミサトに対し、シンジは話しかけた。

 

「なんだかよくわからないですよね、その手紙」

「そっそうね・・・」

「まったく。10年ぶりに連絡をくれたと持ったら"来い"だけ。どのような理由があって僕を呼びつけたんでしょうね

「・・・」

 

半ば呆れるようにシンジは言った。

まさかこんな内容の手紙を碇指令は送っていたのかとびっくりしたが、その後のシンジの発言に対して感情を顔には出さなかった。

なぜならミサトはシンジが呼ばれた理由を知っていたから。

 

「こんな内容もない手紙を送り付けてどういうつもりなんですかね?うちの父親殿は」

 

最後に吐き捨てるように言ったシンジに、何とか話題を変えようとミサトは話しかける。

 

「まぁーーそうね。不器用なのよ!お父さんは。ところでお父さんの仕事は何か知ってる?」

「たしか〔人類を守るための仕事〕と聞いたことがあります」

「そう!私もその人類を守るための仕事をしているの。すごいでしょ」

「そうなんですね」

(反応薄!)

 

人類を守るための仕事をしているといって食いつくかと思ったら、一言で片づけられてしまったミサトは少しがっかりした。しかしシンジは別のところに関心がいっていた。

 

「そんな〔人類を守るための仕事〕をしている父からの呼び出しって、何をさせようとしているんでしょうかね?」

「・・・それはお父さんに直接聞いてみたらいいんじゃないかしら?」

「ミサトさんは知らないんですか?」

「・・・私はなにも言えないわ」

「•••そうですか」

 

シンジは少しため息をつきながら外を見た。ちょうど開けたその景色は、真下に大きなピラミッドのような建物が建っている。

 

「あの建物がそのファイルに書いてあった特務機関NERV、その本部よ。あなたのお父さんと私が仕事をしているところよ」

 

ミサトがピラミッドのような建物について説明をしたがそれに答えず、食い入るようにNERV本部をシンジは見ていた。

 

(あんなに真剣に見ちゃって、やっぱり男の子はこういうのが好きなのねぇ~)

 

ミサトはシンジに対しかわいい男の子のような印象を持った。

 

(•••)

 

最も、シンジは全く別のことを考えていた。

 

----------------------------------------------------

「冬月、後を頼む」

 

シンジがNERV本部に到着したのを確認し、司令室を後にした。

 

(10年ぶりの再会か•••)

 

冬月は碇親子の普通ではない再会に思いを馳せたが、司令室の下で慌ただしく動いている部下を見てそんな暇はないと気を引き締め、部下に指示を出した。

 

「総員、第一種先頭配置!」

 

----------------------------------------------------

 

NERV本部に到着したシンジは、前を歩くミサトについて行く形でNERV本部を歩き初めて30分、目的地に一向につく様子はない。

 

「あれぇ〜おかしいわねーこっちだと思うんだけど•••」

(ミサトさん。迷ったな)

 

ミサトは地図を見ながら、あーでもないこーでもないと言いながら同じ場所を何度も通っている辺り本格的に迷っている。

一向に状況が変わらない。

 

「ミサトさん、迷いましたね」

「うっ、まっまだわたしもここに配属されたばかりで慣れてないのよぉ」

「ミサトさん、誰かに連絡して迎えに来てもらった方がいいんじゃないですか?」

「そっそうね。システムは使うためにある!!」

 

そういうとミサトは内戦に手を伸ばし連絡を入れ、迎えに来てもらうよう頼んだ。

迎えを待っている間、シンジはミサトに会話をしようと試み、質問してみた。

 

「そういえばミサトさん。このNERVというのはなんなんですか?」

「NERVはね、特務機関NERVって言って国連直属の非公開組織なの。いわゆる国家公務員でやつね」

「へぇ国家公務員ですか」

「そうよ。あなたのお父さんはここで総司令をしているわ」

「はぁ」(あんな男が司令をやっているって、どんな組織なんだNERVは)

 

そんなことを思っていると、シンジたちのいるフロアのエレベーターが開き、1人の女性がシンジたちの前に現れた。

呼び出されたことに対して不満の表情を隠さずに。

 

「何やってたの葛城一尉。人手も無ければ時間も無いのよ」

「あらリツコ•••ごめん!!」

 

そう言うと女性はシンジに気がついたように振り返る。

金髪に染めた髪に白衣という研究者のような服装の女性だ。

 

「この子が例の子供ね?」

「そうよ。マルドゥック機関から報告のあったサードチルドレン!」

 

その女性はシンジのことを観察するように見た後自己紹介した。

 

「初めまして碇シンジ君、E計画開発責任者の赤木リツコです」

「初めまして赤木さん、碇シンジです」

「リツコでいいわ」

「わかりましたリツコさん。改めてよろしくお願いします」

 

簡単に自己紹介した後はリツコの先導でNERV本部内を進んで行った。

 

「で、初号機はどうなの?」

「B型装備のまま現在冷却中」

「それ、ほんとに動くのぉ~?まだ一度も動いた事無いんでしょう?」

「起動確率は0.000000001%。O9システムとはよく言ったものだわ」

「それって動かないって事?」

「あら失礼ね。0ではなくってよ」

「数字の上ではね。ま、どのみち動きませんでした。じゃもうすまされないわ」

 

ミサトとリツコは何か専門的なことを会話しているが、シンジは別のことを考えていた。

 

(この人がリツコさんか。あの人が心配していたけど、どうやら元気そうで良かった。だけど油断できないな、何か辛い状況にあるかもってあの人も言ってたし、隙を見て確認しよう)

 

その後ミサトとリツコの会話が続く中、歩いたりゴムボードに乗ったりしていたら、真っ暗な部屋にやってきた。真っ暗で何も見えないが広大な空間の中にいるとシンジは感じた。そんな中リツコがシンジに話しかけた。

 

「シンジくん、あなたに見せたいものがあるの」

「見せたいもの?」

 

そう言ったリツコは部屋の電気をつけた。

 

(!!!!!!!!)

 

部屋の電気がつくと紫の大きな顔のようなものが目の前にあらわれた。

 

(これがあの人が言っていたエヴァか!)

 

シンジが顔のようなものを見てじっとしているところを見たリツコとミサトは、シンジが驚いていると感じていた。

そんな中リツコが説明を続ける。

 

「人の造り出した究極の汎用人型決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン。その初号機よ。その製造は極秘裏に進められた」

「エヴァン•••ゲリオン•••」

 

“NERVにはエヴァンゲリオンというものがある”話には聞いていたシンジであったが、実際に見るとかなりの大きさと存在感に驚いた。

と同時にどこか謎の高揚感に包まれていることにも気づいた。

 

「これが、父の仕事ってやつですか?」

「そうだ」

「!?」

 

スピーカー越しの声が聞こえたと思ったので辺りを見渡すと、エヴァ初号機のさらに上にあるガラス張りのスペースに1人の男が立っていた。

それはシンジの実の父親であり、ここNERVの総司令、碇ゲンドウであった。

ガラス越しにシンジを見下ろしている。

 

「久しぶりだな、シンジ」

「•••••••••」

 

ゲンドウがシンジに話しかけるが、シンジはゲンドウの顔をじっと見つめるだけで何も話さない。

 

シンジはビビっていて何を話せばいいのかわからない•••そう判断したゲンドウはこのままシンジを初号機に乗せるべくシナリオを進める。

 

「出撃」

 

「出撃!?零号機は凍結中でしょ!?まさか、初号機を使うつもりなの!?」

「他に方法はないわ」

「ちょっとレイはまだ動かせないでしょ?パイロットがいないわよ」

「さっき届いたわ」

「•••マジなの?」

「碇シンジ君。あなたが乗るのよ」

「•••••••••」

 

ミサトとリツコが勝手に話を進めているが、シンジは先ほどと同じようにゲンドウの顔をじっと見つめるだけで何も話さない。

 

「ちょっと待ってよ!レイでさえエヴァとシンクロするのに7ヶ月もかかったのに、今来たばかりのこの子にはとてもムリよ!」

「座っていればいいわ。それ以上は望みません」

「しかしっ•••!!!」

「今は使徒殲滅が最優先事項です。そのためには誰であれエヴァと僅かでもシンクロ可能と思われる人間を乗せるしか方法はないわ。分かっているはずよ、葛城一尉」

「•••そうね」

「•••••••••」

 

ミサトとリツコが話をさらに進めて行くが、シンジは先ほどと同じようにゲンドウの顔をじっと見つめるだけで何も話さなかった。

やがて少し沈黙の時間が流れた後、ゲンドウが現れてからずっと黙っていたシンジが言動に声をかけた。

 

「父さんが僕を呼んだのはこれが理由?」

「そうだ」

「僕がこれに乗って地上にいる怪物と戦えと言っているの?」

「そうだ」

「ほう•••••••••」

 

そこからまたしばらくシンジは先ほどと同じようにゲンドウの顔をじっと見つめるだけで何も話さない。

また何も話さなくなったシンジに対し、ゲンドウは怒鳴りつけるように言った。

 

「乗るなら早くしろ、でなければ 帰れ!!」

「•••••••••」

 

エヴァ初号機があるゲージ中に言動の声が響き、ミサトやリツコをはじめゲージにいる作業員全員も碇親子のやりとりを見ていた。

 

「父さん」

「なんだ」

「それが人に物を頼む態度かい?」

「「!?」」

「なんだと?」

「だから、それが人に物を頼む態度かって言ってんの」

 

ゲンドウは驚いた。シンジは内向的で自分から意見を言い出すような性格ではないことは知っていた。まさか何か意見を言ってくるとは思ってもみなかった。

しかし、シンジがさらに言葉を紡いだ際言動はもっと驚くことになる。

 

「ここまで降りてきてよ。そして僕に頭を下げて、『お願いします。乗ってください』って言ってよ。そしたらエヴァに乗るか、考えてあげる」

「「「!?」」」

 

そう言ってシンジはゲンドウから視線を離しそっぽを向いてしまった。これ以上ゲンドウと話す必要はないと態度で示すように。

 

ゲンドウのみならずミサトやリツコもビックリしていた。実の父親に対しに頭を下げろと言っている。聞いていた性格と違うことも相まって言葉を失った。

しかしシンジの言っていることは一理ある。乗って欲しいなら、やって欲しいならお願いしろ、至極真っ当なことだ。

だがゲンドウは自分の計画のための駒としてしか見ていなかった息子にそんなことを言われ、一瞬どうすれば良いかわからなくなってしまった。有無を言わせず無理やり乗せようと企んでいたためだ。

 

やがて、いち早く正気を取り戻したリツコとミサトがシンジに話しかける。

 

「シンジ君、使徒が迫っているの。時間がないから申し訳ないけどエヴァに乗ってもらうわ」

「そうよシンジくん。何のためにここに来たのよ。逃げちゃダメよお父さんから、何よりも自分から」

「••••••リツコさん。時間がないなら僕ではなくあそこにいる父さんに言ってください。僕はあの人がここまで降りてきて僕に頭を下げたら考えてあげてもいいと言っているんです。時間がないのはNERVのみなさんの都合です。早くしたいなら父さんに言ってください」

「っつ!」

「それにミサトさん。僕は逃げも隠れましていません。何度も言いますが僕はあの人がここまで降りてきて僕に頭を下げたら考えてあげてもいいと言っているんです。そこまで僕に、えーっとエヴァでしたっけ?それに乗せたければ父さんに言ってください」

「•••」

 

リツコとミサトは、シンジにエヴァに乗るように促したが言い返されてしまい言葉が出なかった。シンジの意思は硬いようだった。

 

やがてゲンドウはシンジをエヴァに乗せようと、再度シンジに話しかける

 

「シンジ、時間がない。お前がエヴァに乗るんだ」

「あれ、お願いは?僕のところまで来て頭を下げないなら乗るつもりはないよ?」

「説明を受けろ!」

「あらあら、ムキになっちゃって。そこまで頭を下げたくないのかねぇ」

「子供のわがままを聞いている余裕はない!!」

「わがまま?わがままはどっちだよ。頭を下げれば考えるって言ってるのに、頑なに頭を下げないあなたの方がわがままでは?」

「何だと•••」

「ましてやミサトさんやリツコさんまで使って、僕の気持ちや都合を無視して勝手に話を進めて断れないような状況を作って無理やり僕を乗せようとしてたけど、それが失敗してあたまにきちゃったのかな?非常に不愉快だけど」

「•••••••••」

 

シンジとゲンドウの応酬にゲージ中の人々が注目していた。

 

リツコはシンジとゲンドウのやり取りを興味深く観察していたが、最後にシンジが放った指摘に肝を冷やした。無理やり乗せようとしていたことがバレている。大人の汚いところが14歳の少年に看破されてしまっている。リツコはシンジに対して考えを改めた。一瞬で気づいたこの洞察力は並の大人以上であると。

 

またミサトは、無理やり乗せようとする考え自体していなかった。だがシンジの指摘を聞いて気づいた。確かにシンジの気持ちなど考えていなかったと。使徒を倒す、そのことだけを考えて行動してしまったと。ミサトはシンジに対し申し訳ない気持ちが湧いてきていた。

 

やがてゲンドウは、シンジと会話しても進展がないと察し、シンジではなく自分の腹心と会話すべく通信を開いた。シンジをエヴァに乗せるためのシナリオを進めるために。

 

「冬月、レイを起こしてくれ」

「•••使えるかね?」

「死んでいるわけではない」

「•••わかった」

 

ゲンドウと冬月の会話はゲージ内にも聞こえた。まるでゲージ内にいる人たちに聞かせるために。

 

程なくして、全身に包帯を巻き大怪我を負った青い髪の少女が、病院のキャスター付きベットに横たわりながらシンジのそばまで運ばれてきた。点滴もつながっている。

 

その少女を見たシンジば、半ば睨むように少女を見た。

 

(あの子は何だ?何か違うぞ?)

 

少女に対し何か違和感を感じ、その違和感の正体を掴みたかったが、それを邪魔するようにゲンドウが少女に話しかける

 

「レイ」

「はい」

「予備が使えなくなった。もう一度だ」

「はい」

 

レイと呼ばれた少女はゲンドウに言われると、エヴァに乗ろうと起きあがろうとしている。それに対して周りの大人達は誰も助けようとしない。

 

(大怪我を負っているのにエヴァに乗せるのか。しかも誰も手助けしない。酷いもんだね、この人たちは。まぁこの光景を見せて僕を乗せようとする魂胆だろうね)

 

怪我を負いながらもエヴァに乗ろうとするレイを助けようとしないNERVの大人たちに、憤りを感じていた。

 

(っつ!!まさか碇司令はレイを使って、シンジくんをエヴァに乗せようとしているの!?)

 

ミサトも気づいた。碇司令は大怪我を負ったレイをわざと見せることでシンジの良心に訴えかけ乗せようとしていることに。

世界を救うため、そして使徒を倒すためとはいえここまで酷いことをしている状況に、ミサトは罪悪感が湧き水の如く湧いてきていた。

 

そんな中、シンジは不快感を隠さずゲンドウに話しかける。

 

「父さん。彼女を乗せようとしているのか?」

「そうだ」

「可哀想に。こんな怪我を負っているのに誰も助けない。ましてやこのまま乗っても衝撃で彼女死んじゃうよ?」

「それは貴様が乗らないからだ!」

「それは違うよ父さん。父さんが僕に頭を下げればいいだけだよ。それなのに今度は彼女を使って、君が乗らないと大怪我を負った彼女が乗ることになるけどいいのか、みたいな僕を脅すようなマネをしているけどどういうつもり?」

「••••••」

「安全にことを運びたかったら、とっとと頭を下げにくるんだね」

「••••••」

 

リツコもミサトも言葉を失った。この少年は全て気付いている。無理やり乗せるためのシナリオに。

シンジの指摘に、リツコは改めてシンジに対して考えを改めた。この少年は想像をはるかに超えるほど頭が切れると。

そしてミサトはシンジやレイに対し、エヴァに乗せて使徒を倒す駒として見ようとしていた自分への罪悪感に耐えられなくなっていた。

そしてミサトはシンジに近づき、ゲンドウに変わってシンジに対し頭を下げた。

 

「ミサト!」

「ミサトさん?」

「ごめんなさいシンジくん。確かに最初、あなたに無理やりエヴァに乗せようとしていたわ。まずこのことについてNERVを代表して謝らせて。」

 

ミサトはシンジに無理やりエヴァに乗せようとしていたことを謝罪した。

 

「私は使徒を倒すためにここ数年過ごしてきた。だけど自分の手で使徒を倒すことができないからあなたやレイといったエヴァに乗れる人を頼るしかなかった。あなたたちを自分の使徒を倒す願いのために利用する駒として見ようとしていた。本当にごめんなさい」

「••••••••••」

 

さらにミサトは使徒に対しての思いや、シンジたちを駒として見ようとしていたことに対しても謝罪をした。

シンジは黙って聞いている。

 

さらにミサトは話し続けた。

 

「でも使徒を倒さなければならないの。使徒を倒さないと人類が滅んでしまうと言われているわ。そして今、それが出来るのはシンジくんしか居ないの。勝手に重積を押し付けて、シンジくんの気持ちを無視しているのは重々承知しているけど改めて言わせて」

 

そういうとミサトは、一度頭を上げシンジの顔を見てからもう一度深く頭を下げた。泣きそうな顔になりながら。

 

「シンジくん、エヴァに乗って下さい•••。そして使徒を倒して!お願いします」

 

ミサトはシンジにお願いした。これを見ていたリツコもシンジの近くに来て頭を下げた。

 

「シンジ君。私からもお願いするわ。もちろん私たちも全力でシンジ君をサポートします。お願いします」

 

(まいったな、僕としては父さんがここまで降りてきて欲しかったんだよな。どうしよ)

 

シンジが1人考え事をしている直後、大きな振動がNERV本部を襲った。

どうやら使徒が攻撃してきたらしい。

その振動で近くにいたレイとミサト、リツコは尻餅をついた。

 

ガコン!!

 

その直後、振動によって天井の照明が外れシンジめがけて落っこちてきた。

ミサトはシンジを守ろうとしたが、尻餅をついていたためすぐに動くことができず救助には間に合わない。

 

「シンジくん!」

 

ただシンジは特に焦っている様子はない。じっと落ちてくる照明を眺めている。

 

(まずいな。このままだと照明がぶつかってしまう。ここでは使いたくなかったけどしょうがない! プロテクト!!)

 

心の中で唱えたシンジであったが、どういうわけか効果を発揮しなかった。なぜなら、目の前にある起動していないはずのエヴァンゲリオンが動き、エヴァの腕がシンジの上に覆い被さるようにしている。そのおかげでシンジ達に落ちてきた照明が当たることはなかった。

このおかげでシンジ含め誰も怪我しなかったが、なぜエヴァが動いたのか皆びっくりしている。

 

『エヴァが動いたぞ。•••どういう事だ』

『右腕の拘束具を引きちぎっていますっ!!』

「まさか!?ありえないわ!!エントリープラグも挿入していないのよ!!動くはずないわ!!」

「インターフェイスもなしに反応している。・・・というより、守ったの?彼を?」

 

そんな喧騒の中、シンジばベッドから落ちたレイをそっとベッドに戻し、ひたいに手を触れた。

 

「貴方は•••誰?」

「僕?僕は碇シンジだよ」

「イカリ•••シンジ•••」

「もう大丈夫だよ。だからゆっくりおやすみ」

「••••••」

 

シンジがそういうと、レイは目を閉じて寝息を漏らして気持ちよさそうに寝ている。

それを見届けたシンジは上を見て考え事をしている仕草を見せたかと思ったら、おもむろにミサトとリツコに向き直った。

 

「ミサトさん、リツコさん。ありがとうございます。そして迷惑をかけてすみません。分かりました、僕がこのエヴァになります」

「「乗ってくれるの?!」」

「はい。僕がエヴァに乗って使徒を倒します」

「•••ありがとうシンジくん。本当にありがとう」

 

ミサトは改めて深くお礼を言った。

 

「ありがとうシンジ君。早速だけど準備を始めましょう。着いてきて」

「わかりました。お願いします」

 

リツコもお礼を言い、準備のためシンジはリツコについて行こうとするが、未だゲージ上部のガラス張りの部屋にいたゲンドウに向かって声をかけた。

 

「優秀な部下がいて良かったね父さん。あとでミサトさんとリツコさんに、ちゃんとお礼言ってね」

「!!」

 

ゲンドウにそう声をかけたシンジはリツコについて行き、初号機に乗り込む準備を始めた。

シンジに声をかけられ呆気に取られたゲンドウは、シンジが初号機に乗り込む姿を確認した後、その場を後にした。

 

----------------------------------------------------

 

ゲージから発令所へ移動中のゲンドウはゲージでのことを思い出していた。

 

完全に予想外だった•••

元々はシンジを自分のシナリオで無理やり初号機に乗せるつもりだった。

そして自分の駒として言うがまま動いてもらう予定だった。

それが、あんなことになろうとは。

頭を下げろ。シンジは確かにそう言った。

 

このままでは自分の計画は上手くことを進められないのではないか。

 

いや、所詮は子供。どうとでもなる。

いざとなれば力ずくでも言うことを聞いてもらう。

 

ゲンドウはそう心に決め、発令所へと急いだ。

 

----------------------------------------------------

 

「日向くん?さっきの使徒と戦時が戦っていた映像をまとめといてくれない?」

「戦時が戦っていた時の映像ですか?」

「そっ。使徒がどのように行動しているか情報収集してこの後の戦いに備えたいの」

「了解しました。葛城さん」

「うん。頼むわ」

 

発令所に移動する間に、部下である日向マコトに指示を出している間に発令所に到着すると、エヴァ発進準備が進んでいた。

 

『冷却終了』

『右腕の再固定終了』

『ゲージ内全てドッキング位置』

『停止信号プラグ。排出終了』

『了解。エントリープラグ挿入』

『プラグ固定終了』

『第一次接続開始』

 

発令所ではエヴァンゲリオン初号機の発進準備が進められていた。

メインモニターにはエヴァの操縦室、通称エントリープラグに乗るシンジの姿が映っていた。

じっと目を瞑って準備が終わるのを待つ。

 

『エントリープラグ、注水』

 

オペレーターの1人が声をかけると、エントリープラグに赤い水が注水された。

 

「? リツコさん、この水は何ですか?」

「これはL.C.Lといって肺に取り込めば呼吸することができるわ」

「L.C.L•••なるほど」

 

そういうとシンジは、さほど慌てる様子を見せることなくL.C.Lを肺に取り込む。

 

「彼、落ち着いているわね」

「ええそうね。普通は水が入ってくるから焦りそうなものだけど•••」

 

リツコがミサトに疑問を投げかけると、ミサトも同様の疑問を感じていた。

そういえば迎えに行った時から、シンジはやけに落ち着いていた。

目の前で二度も爆発した時も、ゲージで照明が落ちてきた時も。

 

「主電源接続」

「全回路動力伝達」

「第2次コンタクト開始」

「A10神経接続異常なし」

「初期コンタクト全て異常なし」

「双方向回線開きます」

 

エヴァの準備は進められて行き、いよいよパイロット碇シンジと初号機のシンクロが始まる。

程なくしてシンクロ率がメインオペレーターの1人、伊吹マヤから告げられた。

 

「シンクロ率、62.5%!」

「62.5!? 確かなの?マヤ」

「はいセンパイ。確認のため5回実施ましたが全て同じ値です」

 

マヤの報告にリツコは驚いた。

何年も関連しているセカンドチルドレンよりも、初めてシンクロした目の前の少年の方が数値が高い。

この少年は何者なの?•••

 

「リツコっ初号機はいけるの?」

「えぇ、問題ないわ。無事初号機は起動したわ」

「そう、問題ないならいいわ。初号機発進準備!」

 

ミサトの指示で初号機の発進準備が慌ただしく進められて行く。

 

『発進準備!!』

『第一ロックボルト外せ』

『解除確認』

『アンビリカルブリッジ移動開始』

『第2ロックボルト外せ』

『第1拘束具を除去』

『同じく第二拘束具を除去』

『1番から15番までの安全装置を解除』

 

準備が進められて行くにつれ、初号機についていた拘束台が外されて行く。

 

『内部電源充電完了』

『内部用コンセント異常なし』

 

そして最後の台ごと初号機が移動し、レールのある壁に到着したところで止まる。

 

『了解。エヴァ初号機射出口へ』

『進路クリア。オールグリーン』

「発進準備完了」

 

リツコの言葉を最後に発信するまでの全ての準備が終わった。

エヴァが発信してしまえば、あとは戦うシンジのサポートを全力でやるのみ。

発令所が緊張感と不安に包まれている中、メインモニターのシンジが発令所に声をかけた。

 

「ミサトさん、リツコさん、発令所の皆さん」

「どうしたのシンジくん?」

「何も心配はいりません。必ず使徒を倒し、皆さんと人類を守ってみせます」

「「「!!!」」」

「もちろん、皆さんのサポートと一緒にね」

 

シンジは優しくも強い決意を表す柔らかな笑顔を発令所にいる人たちに向けた。

 

そんな破壊力抜群の笑顔を見た発令所の人たちは、ミサトやリツコ、マヤをはじめとする女性陣は顔がポッと少し赤くなった。いわゆる照れである。

•••なぜか男性陣も。(ゲンドウと冬月は除く)

 

「っちょっとミサト、発進の号令!」

『ミサトさん?どうかしました?』

「い、いや何でもないのよ」

 

ミサトはそう言うと気持ちを落ち着かせるために背後を振り返り、ゲンドウに声をかけた。

 

「よ、よろしいですね?」

「あぁ、使徒を倒さぬ限り我々に未来はない。」

「エヴァ初号機発進!」

 

その掛け声と共に初号機は地上に射出された。

 

(いよいよ僕の初陣だ。やっとみんなと同じ立場にたてられる。見ててください。必ずやり遂げます!!)

 

地上に射出される最中、シンジはこれからはじまる戦いに異様な高揚感と歓喜歓喜に包まれていた。

 

 続く




シンジ、エヴァに乗れず!
次回はやっと使徒とシンジの戦いです。
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