「ふわぁ〜、よく寝たっと。あれ?シンちゃん?」
さきの使徒戦から数日たった朝、起床したミサトはすでに起きているであろうシンジが、リビングにいないことに気づく。
ミサトはシンジの部屋に向かう。
「あれ、おかしいわね。いつもだったら起きてる時間なのに。シンちゃーん? 入るわよー」
ミサトはシンジの部屋に入る。
「シンちゃーん?あれ、いない。どこか出かけたのかな? ん?手紙?」
机にシンジが書いたであろう置き手紙が置いてあった。
そこに書いてあったのは•••
『ミサトさんへ しばらく旅に出ます。必ず帰るので心配しないでね』
「!! 私に黙ってどこ言ったのあの子! 保安部に連絡!」
ミサトは急いで保安部に連絡した。
「もしもし! サードチルドレンがいなくなったの! 補足してる? うん•••うん•••はぁ! 何ですって! 補足できていない!?」
シンジはNERVの保安部を出し抜いてどこかに行ってしまった。
————————-
〔シンジがいなくなる2日前〕
「結界ですか?」
「はい。この第3新東京市全体に結界を張ろうと思うんです」
「それはスゴイ規模ですねシンジさん」
シゲルはシンジからとある相談を受けていた。
結界。それはヘルベルトの魔法を半永久的にかけるものである。
魔法大国ヘルベルトがある大陸にも、検知不可魔法をかけてあるため、魔法使い以外ではヘルベルトの案内なしに大陸にたどり着くことはない。
「しかしどう言った内容の結界なんですか?」
「それはですね•••」
「•••! まぁそれはいかにもシンジさんらしい結界ですね」
シンジらしい結界の内容に驚きつつも感動を覚えるシゲル。
しかし次に告げられる内容にもっと驚く。
「まず、第3新東京市の端っこのこのポイントから結界点を配置します。ここへは僕が魔法なしで向かいます」
「魔法なしで! 何でですか?」
「ちょっとNERVの保安部がどのくらいできる人なのか、確認したいので」
「何とまぁ」
「まあ、先に捕まったら魔法でやり過ごしますけど」
こうして、シンジの結界を張るための探検が始まった。
————————-
〔第3新東京市某所〕
「よし、何とか保安部を撒いたな」
シンジは保安部の監視を撒いた後、駅に来ていた。
ずっとNERV付近で過ごしていたので、電車で遠出しようという魂胆である。
第3新東京市の端っこへは5駅ほど電車に乗り、そこから徒歩で山の中を歩いていく。
「しかし少し離れると繁華街があるんだな•••」
駅を降りたシンジは辺りを散策。
「おっ、こんなところに映画館。初めてみたな。ちょっと寄ってみるか」
シンジはヘルベルトに行ってから映画館など入ったことはなく、どんなものなのか行ってみることに。
(•••全然人いないし。映画もつまらん•••出よ)
シンジは映画館を出た後、繁華街をほっつき歩く。
周りにはNERVの保安部はいないようだ。
(ん?)
しばし繁華街を歩いていると、向こうの通り、海鮮居酒屋横の路地裏に違和感を感じたシンジは、違和感の正体を探るべく路地裏を歩く。
(保安部ではないな。というよりこれは、変な魔力を感じる。まさか!)
路地裏を進むと、ほんのわずか空間の乱れが見れる。おそらくヘルベルトの民にしか見えない代物。
(やっぱり! 種ができてる•••)
シンジが種と呼んだ、その空間の乱れは消し去らなければならない。
シンジは速やかに周辺を検知不可魔法で囲い、普通の人にはわからない状態にする。
(種であれば僕一人でも何とかできる。はぁぁあ〜!)
シンジはその空間の乱れに対し、特殊な魔法をかける。
空間の乱れを消そうと、かなりの集中力をかける。
(くっ! あともうちょっと•••)
種と呼ばれた空間の歪みも、消されないよう必死に抵抗している。
しかし所詮は”種”。シンジの魔力の前に、なすすべはない。
ピカ!
やがて空間の歪みは強い光と共に消えていった。
(はぁ、はぁ、はぁ。やっと消えた。種とはいえ1人でやるには疲れるな。とりあえずテレパシーでヨミさんに伝えなきゃ)
シンジはテレパシーで、ここで起きた内容をヨミに伝えると、足早でこの場を後にする。
数分後にはヘルベルトの民が数人やってきていた。
—————————-
〔NERV本部 発令所〕
NERVの発令所では零号機の起動試験の最終チェック、並びに零号機と初号機の連携について議論する予定だった。ここにはミサトやリツコをはじめとし、メインオペレーター3人も揃っていた。
しかし、現在は午前中に起きた騒動でそれどころではなくなっていた。
「はぁー。全くシンジくんどこに行っちゃったのよ」
「差し詰め、ミサトとの共同生活に嫌気がさしたのね」
「ちょっと!どういうことよ!」
「だって貴女、料理作らない掃除しない家事もしない、全てシンジ君にやらせているみたいじゃない」
「うっ」
「全く。シンジ君はエヴァのパイロットなのよ。それに中学生に家事全般やらせる大人がどこにいるのよ」
「オッシャルトオリデス•••」
リツコに叱られ、しょんぼりするミサト。
「保安部から連絡はまだないんですか?」
「それがないのよ。全く保安部の連中は何してるのよ!」
マコトから問われ、保安部に起こるミサト。
(感情がコロコロ変わるわね。面白いわ)
そんなミサトをみて面白がるリツコ。
「•••」
シンジが何をしているか知っているシゲル。
(シンジくん、どこに行ったのかな?)
思っていることはちがえど、シンジのことを心配しているのは皆同じだった。
「ミサト、前々から聞いてみたかったことがあるんだけど」
「何かしら?」
「あなた、シンジ君のことどう思ってる?」
それはリツコがずっと抱えている疑問だった。
「どうって何?」
「前も話したけど、戦闘未経験かつ訓練無しで突然戦闘に参加させられ、それでも華麗な身のこなしで使徒を倒し、かつほぼ無傷。街の被害も最小限。疑問に思わない方がおかしいわ」
「シンジ君は過去何か格闘経験が無いっていう調査結果でしたもんね」
「日向君のいう通りよ。しかもこれをみて」
「なにリツコ?」
リツコが見せてきたのはとある書類だった。
表題には、サードチルドレン監視報告書と書かれてある。
「シンジ君が碇司令の知り合いである、『先生』と呼ばれている人のところに預けられてから、NERV保安部が監視していた報告書よ。この間も話したけど改めて詳しく確認したのよ」
「ふんふん」
「7歳あたりまでは事細かに書かれてある。他の児童とトラブルになったとか、怪我をしたとか人間関係や身体のこと、帰りにコンビニに寄ったとかどうでも良い細かいところまで」
「確かに細かく書かれているわね」
「でもここからをみて」
「!! これって」
「そう。この日を境に記載内容が全く同じ。学校に行き勉学に励む。家に真っ直ぐ帰り復習を欠かさない。とてもありきたりな内容ね。今まで同じ内容がなかった報告書が、この日を境に全く同じ内容になっている。おかしいとおもわない?」
本来の報告書であれば、毎日同じ内容などあり得ない。リツコはこの点の不可思議な状況を指摘した。
「リツコの言う通り、確かにおかしいわよね•••」
「しかもそれだけじゃ無いわ」
「どういうこと?」
「最初の使徒戦の時、映像を確認したら何も無いはずの初号機の手のひらから、大爆発が起きたわ」
「「「!!!」」」
「さらにコアの破壊よ」
「どういうこと?」
「普通あんなに簡単に壊れる?使徒の弱点なのよ。それをエヴァの手刀で破壊って•••」
「そうね•••まっエヴァの特殊能力なんじゃ無い?」
「そんなものは無いはずよ」
「でも、まだ未解明なんでしょ?エヴァそのもの」
「まぁ、確かにそうね」
「気になるならいっそのことシンジくんに聞いてみたら?」
「そうね、まあそのシンジ君は今行方不明だけどね」
「うっ•••」
リツコは今までのシンジに対する疑問点を列挙した。
たった2回しか行われていない使徒戦ですらここまで摩訶不思議なのだ。
科学者のリツコが疑問に思わないはずがない。
「でもねぇリツコ。いろいろ不思議なところはあるけど、私はシンジくんを信じているわ」
「•••」
「だって急に訳のわからない状況に置かれているのに、ここまで頑張って使徒を倒して私たちを救ってくれているのよ」
「•••」
「そうですよね。葛城さんの言う通りだと思います。シンジ君、いつも優しくて朗らかですよね」
「そうそうマヤちゃん。しかもこないだ手作りのお菓子もらったぜ」
「あっ日向君ももらった?私ももらったわよ。リツコは?」
「まぁ私ももらったけど•••」
「美味しかったわ〜。シンジくん、料理もすごい上手なのよ!何作ってもすごい美味しい!」
「えっそうなんですか! いいなぁ〜」
「なら今度うち来る?シンジくんの料理食べにおいでよ」
「いいんですか?今度お邪魔します!」
「日向君や青葉君もいらっしゃいよ。もちろんリツコも」
「「お邪魔します!」」
「そうね。私もシンジ君の料理食べてみたいわ」
「というかシンジ君の了解もとらず大丈夫ですか?」
「いいのいいの!今回の件で反対なんかさせないから!」
(何だか丸め込まれた気分だけど、私はシンジ君の秘密を暴いて見せるわ)
リツコは科学者のプライドで、わからないことをそのままにすることはできなかった。
それは本当にプライドだけか、それとも母への対抗心か。
「そういえばマヤちゃん。いつも呼んでる本は何を呼んでるんだ? 科学の本じゃなさそうだけど」
「あっこれですか日向さん。じゃーん!」
それは、知らない人もそれなりに知っているオカルト雑誌だった。
「科学者なのに本当かどうかわからないものに、うつつをぬかすなんてねマヤ」
「まぁセンパイったら!こういうところからも知見を入手することが大事なんです!」
「そういうものなのかしらね」
かわいい後輩の言うことにあきれつつも、理解を示すリツコ。
そんなマヤに、オカルトに興味があるマコトが話しかける。
「今熱いオカルトは何なんだい?」
「よく聞いてくれました日向さん! 今はですね•••」
オカルト雑誌をペラペラめくりながら、話したい内容を確認するマヤ。
「ビッグフット、UFO、宇宙人、え〜これじゃない•••あった!これですこれ!」
「なになに〜」
「今一番アツイのは、ヘルベルトの民です!」
「「「ヘルベルトの民?」」」
「•••」
マヤの言葉を聞いて、表情は変わらないが聞き耳を立てるシゲル。
「ヘルベルトの民って何なの?マヤちゃん」
「葛城さんよく聞いてくれました!これはですね、世間には知られていない秘密の組織と言われています」
「秘密の組織? 何をやっているの?」
「いろいろ言われています。世界を滅亡させる悪の秘密結社だったり、人類の平和と安寧を保つために秘密裏に何かをやっていたり、ただ単に金儲けのために犯罪をしていたりと説が多いんです」
「へぇ〜。何だか言われていることが全然違うのね」
「何でもフシギな力を使うと言われています」
「フシギな力?」
「何でも、魔法を使うんだとか」
「「「ふ〜ん」」」
「あっ興味ないんですね!!」
マヤからのオカルト話を聞いているミサト、リツコ、マコトだったが、黙っていたシゲルが口を開いた。
「くだらない。ヘルベルトだか魔法だかあるわけないだろ」
「な、何ですか急に」
「別に、思ったことを言っただけだよ」
「「「「•••」」」」
(魔法ね、いやまさかね•••)
リツコは魔法という言葉にシンジの不思議なところの答えがもと少し思ったが、現実離れすぎてすぐ否定した。
(オカルト雑誌でヘルベルトの名前があるとは•••。シンジさんとリュージュ師に伝えないと)
——————————-
〔第3新東京市某所〕
「かなり遅くなってしまったな。こりゃ今日中には辿り着かなそうだな」
種を消したシンジは目的地に向かって歩いていた。現在は街を見渡せる原っぱを歩いていた。
「ん? 何か聞こえるな•••」
「ダダダダダダ 小隊長殿を置いては•••」
「ケンスケ?」
「? おう!碇!」
そこには迷彩服をみにまとっているクラスメイト、ケンスケだった。
「何やってんだ?碇?」
「それはこっちのセリフだよ。ケンスケこそ何やってるの?」
「はは。俺はただのミリタリーごっこさ。碇は何やってんだよ」
「僕はただ街の散策さ。ここに来て日が浅いからね」
「へぇ〜。しかしこんな遅くまで散策してるのか?」
「いやぁ〜。ちょっとぶらぶらしすぎたね」
「まぁこっち来いよ。飯、食うだろ?」
「えっいいの? じゃあお言葉に甘えて」
シンジはケンスケのテントとキャンプファイアの近くによった。
「夜はいいよな。あのうるさいセミが鳴かないから。最近は増えてきてるみたいだな」
「そういえばミサトさんが、生態系が戻ってるって言ってたな」
「ミサトさんか。全く羨ましいよ。あんな綺麗なお姉さんと住んでてさ」
「ははは。でもあの人家事が全然できないんだぜ」
「えっそうなのか?」
「そうなんだよ。初めて部屋行った時なんか部屋中ゴミだらけでさ。掃除に3時間かかったよ」
「はははははは!そりゃ大変だったな」
「料理は趣味だしやりたいからいいんだけど、自分の部屋くらい掃除して欲しいよ•••」
「こりゃ、ミサトさんの恋人になる人は大変だな」
「そういえばミサトさんには恋人?元恋人かな?がいるっぽいんだよね」
「マジ! どこでそれを知ったんだよ碇!」
「いや、前に結婚しないんですかって聞いた時の反応がそうっぽいんだよね。どういう理由で別れたか知らないけど、未練たらたらって感じ?」
「へぇ〜。まっあんだけ綺麗な人だから恋人くらいいるか」
「もし、まだミサトさんと元恋人さんの間で気があるなら、くっつけちゃおっかなって思ってるんだ。もちろん本人の意思を尊重するけど」
「ははは、碇もいい性格してるな」
「まあね」
たわいのない話をしているケンスケとシンジ。
次の話題はエヴァの話に移った。
「すごいよなシンジは。エヴァのパイロットなんだもんな。俺も一度でいいからエヴァンゲリオンを思いのままに操ってみたい!」
「やめといた方がいいよ。危険だし、命がいくらあっても足りないよ。それにお母さんが心配するよ?」
「あぁ。俺そういうのいないんだ。碇と一緒だよ」
「•••ごめん」
「いいってこと」
「•••碇、この前はごめんな」
「? なんのこと?」
「ほら、こないだの使徒のやつ」
「あぁ。大丈夫だよ。みんな無事だったし」
「•••そっか」
その後は2人でケンスケの作ったご飯を平らげた。
夜も更けてきたので、ケンスケのテントでシンジとケンスケ2人で寝ることにした。
————————
〔次の日の朝〕
ザッ ザッ ザッ
ケンスケのテントに黒服の男たち数名が近づいてくる。
それに気づいたシンジとケンスケは、テントの外に出た。
そして黒服の男がシンジに話しかける。
「碇 シンジ君だね」
「はい、そうですがどちら様ですか?」
「NERV保安部の者だ。保安条例第8項の適用により、君を本部まで連行する。いいね?」
「•••」
突然状況にケンスケは、黙ってみていた。
程なくしてシンジは口を開いたが、シンジの発言に保安部の人間とケンスケは驚かされる。
「あー、えーっと、ミサトさんに、必ず帰りますから心配しなくて大丈夫ですと言っといてくれませんか? そして僕のこと見逃してくれません?」
「何?」
「ちょっとやりたいことがありまして、まだ帰れないんですよ」
「ダメだ」
「そこを何とか」
「わがままを言うな」
「子供のわがままを叶えると思って•••」
「いい加減にしろ!」
パシーン!
NERV保安部の1人は、シンジの頬を平手打ち、いわゆるビンタをした。
その衝撃で地面に倒れるシンジ。
「なっおい!碇に何すんだ!」
「部外者が黙れ! 碇シンジ。貴様がやったことがどういうことかわかってんのか?」
「•••」
「貴様はエヴァパイロットだ。保護と機密保持のため常に監視対象となっている。勝手に行動することは許されない」
「•••」
「わかったらさっさと来い!」
シンジは静かに立つと、保安部の黒服と対峙した。
「はぁ。やっぱりダメかぁ。しょうがない、あまり使いたくはなかったけど」
「何だ?なにをするきだ!やめろ!」
「ふっ、すまんね」
「「「!!!」」」
スッ ピカッ
ドサドサドサ
シンジは右手を振り上げた瞬間、辺りを光で包んだ。
包まれた光の中にいた黒服たちとケンスケは気を失いその場に倒れてしまった。
(このままじゃケンスケ風邪ひいちゃうから、テントの中に戻そう。ごめんねケンスケ。)
(しかしNERVの保安部は意外と優秀なんだな。用心しないと)
シンジは、ケンスケをテントの中にあった布団の中に戻し、黒服たちはそのまま外の草むらに寝かせといたまま、その場から離れた。
シンジが放った魔法は失神魔法。光に包まれた人はその場で気を失う。
工夫すればその瞬間の記憶を消去することができる。
シンジはこれを実施し黒服、ケンスケの記憶からこの魔法の出来事の記憶を消去していた。
———————-
〔二時間後〕
プルルルルルルルル
(ん?なんだ?)
原っぱの中で寝ていた保安部の黒豚の1人が、電話の呼び鈴で目を覚ました。
「はい。NERV保安部」
『こちら作戦課の葛城。シンジくん見つかった?』
「は、シンジ君•••あっ! おい!シンジ君はどうした!?」
「み、見当たりません!」
「申し訳ありません葛城一尉。見失いました•••」
『え! ちょっとどう言うことよ! すでに1日行方不明なのよ! エヴァパイロットで重要人物なの分かってる?!』
「も、申し訳ありません。すぐに探します!」
「おい!碇シンジを探せ! 必ず見つけろ!」
「「「はい!」」」
「うーん••• あれ?碇はもう出ちゃったのか」
こうして黒服たちは再度シンジの捜索を再開した。
————————
〔ミサト宅〕
「ほんっとにもう。シンちゃんどこに行っちゃったのよ〜」
「昨日からずっと見つからないし•••」
「シンジのバァカァーー!!」
————————
ケンスケのテントを離れてさらに4時間、シンジは歩き続けた。
(おぅ•••何だかミサトさんの怒鳴り声が聞こえた気がする•••)
そんなことは気にせず、目的地に向かって歩くシンジ。
「よし!もうすぐ着くな。あれ?誰かいる。!!」
目的地
そこにいたのは、シゲル、ヨミ、そして•••
「師匠!!」
「よう!久しぶりだな、シンジ!」
タッタッタッタ! ギュ!
シンジは師匠であるリュージュに近づき、ギュっと抱きしめた。
「久しぶりです。師匠!」
「大活躍だなシンジ。順調に使徒を倒しているな。国王も喜んでいるぞ」
「ホントですか!? よかったぁ」
シンジの活躍はシゲルを通じてヘルベルトにも知れ渡っている。
誰もがシンジの活躍を喜んでいる。
「そういえば師匠は何でこちらにいらっしゃったんですか?」
「なに。シゲルから結界のことを聞いてな。見に来たんだ。シンジの晴れ舞台だからな」
「なんか恥ずかしいです•••」
「全くシンジらしいな。皆を守るための結界を張るとは」
「この結界はいずれみんなを守るのに役立ちます。最後の敵は人間になりそうな気がするんです」
「なるほどな。全ての使徒を倒した後の話か•••」
シンジはリュージュと会話しながら、結界点の設置の準備を始める。
魔法を展開し結界点を作る。
「えぇ、なんでこの結界点を基準に結界を張るのを手伝って欲しいんです」
「わかったわ。戦闘部隊日本支部ができたら本格的に始めるわ」
「ありがとうございます。ヨミさん」
戦闘部隊の力があれば心強いと張り切るシンジ。
結界点を設置する魔法は時間がかかる。
「そういえば師匠、リツコさんのことなんですけど」
「リツコ? あぁ、あやつの娘か•••」
「はい。あの人のいう通り、リツコさんもアイツに利用されているみたいです」
「シンジの実の父親にか」
「シゲルさんに調べてもらったんです」
「はい。私がNERVに潜入してから赤木博士と碇司令のNERV内の足跡を調べていたんです。そしたら、NERV内の誰も使ってない部屋に、たびたび2人きりでいることが確認されたんです」
「あやつの時と同じ手口だな」
「はい。なので赤木博士も碇司令と関係を持っていると見て良いかと」
「ではその関係や想いを利用して、あやつの娘も自分の計画のために利用しているのか、あの男は」
「あの男と同じ血が流れていると思うと虫唾が走ります。あの人やリツコさんの想いを利用して駒のように扱うなんて••• あの人やリツコさんに申し訳ない•••」
シンジは、ゲンドウの非道な行いに腹を立てていた。ましてや自分の父親がそんなことを行なっているなんて•••
無意識のうちに、シンジは自分の拳を握りしめていた。
それを見ていたリュージュが声をかける。
「シンジよ」
「はい」
「確かにシンジはあの男の実の息子であることに変わりはない。だがそれだけだ。シンジは心優しく、皆に愛され、皆の幸せを守ろうとする男であることは、わたしをはじめヘルベルト皆がわかっている」
「•••」
「だからあの男の息子だからって自分を責めるな。シンジとあの男は違うのだからな」
「はい。ありがとうございます」
「それに、あやつもそんなことを望んでおらんからな」
シンジはリュージュの励ましで落ち着きを取り戻した。
(やっぱり僕のお父さんは師匠だな。今日会ってよかった)
「それでもリツコさんを救ってあげたいんです。あの男から解放させてあげたいんです」
「そうか」
「ただ、万が一リツコさんがあの男を好きだったら話は変わりますけど」
「多分だがそんなことはないと思うぞ」
「? そうなんですか? でもそんなことわかるんですかね?」
「あやつが言っていたんだがな•••」
リュージュの説明を聞くシンジ、ヨミ、シゲル
「なるほど•••リツコさんも振り回されているんですね。僕やミサトさんと同じだ」
「ミサト? あぁシンジと一緒に住んでいる作戦課の人間か」
「はい。あの男の息子として、リツコさんをあの男から解放して幸せになってもらわないといけないですね」
「なにもシンジがそこまでしなくてもいいんじゃない?」
「ヨミさん。確かにそうかもしれません。でもやっぱり僕は皆んなを幸せにしたいんです。皆んなが幸せであることが僕の願いです。僕のエゴですかね?」
「そうかもしれないわね。でもそれで皆んなが幸せならそれでいいとおもうわ」
「ありがとうございます」
皆んなを幸せにする。それはシンジの決心とも取れる願いだった。
それはかつて叶えられなかった願いでもあった。
「•••ふぅ。終わりました。結界点できました」
「おぉさすがシンジだ。完璧にできておる」
「ほんとね。シンジはなにやらせてもすごいわ」
「へへへ〜」
シンジの結界点魔法が完了した。周りも驚く完璧ぶり。
「そういえばヨミさん、シゲルさん。NERV地下への潜入は次の使徒が現れたタイミングで実施したいと思います。次はここ4日以内と聞いているので準備しておいてください」
「わかったわ」「わかりました」
「そろそろ時間も遅いので帰りますね。師匠また」
「おう、またな。いつでもヘルベルトに来ていいからな」
「はい。ヨミさんもまた」
「えぇ。またねシンジ」
「それでは私も失礼します」
「おう。シゲルも頼むな」
こうして魔法使いたちはそれぞれの帰路についた。
シンジがミサト宅に着いたのは、夜の6時頃だった。
———————-
〔ミサト宅 夜11時〕
「ただいま〜。疲れた〜。やっと仕事終わった。結局シンジくんは見つからなかったし•••」
ミサトは溜まっていた仕事を片付け帰宅。時計は夜11時を過ぎていた。
「はぁ、まったくシンジくんは何処に•••ってあれ? シンジくんの靴がある••• !!」
玄関にシンジの靴があることに気づき、急いでシンジの部屋に行くミサト。
そこには寝息をたて、ぐっすり眠るシンジの姿があった。
(っっ 帰っているなら連絡よこしなさいよ! もう!)
(でも、この寝顔見ると怒る気無くすわね••• まあいいわ。明日問い詰めてやるんだから!)
ミサトはシンジの無事を確認し、遅めの夕食をとるべくリビングに行くのだった。
続く
次回、レイの家へ家庭訪問!