IS 教師の一人が月村さん   作:ネコ削ぎ

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『IS 教師の一人が月村さん』をご覧になっている皆様、あけましておめでとうございます。この場を借りてご挨拶申し上げます。
感想返しをしていませんが、皆様からいただいた感想は楽しく読ませてもらっています。ありがとうございます。これからも『月村さん』をよろしくお願いします。
では、どうぞ。


6話

 クラス対抗戦当日は、午前中を普段通りの授業で終え、午後をクラス対抗戦の時間に当てている。4クラス4人の代表者がトーナメント戦を行う。三位決定戦は行わないので、試合回数はたった3回と少なく、午後の全ての授業時間を全て使いきることはない。対抗戦を終えたら、クラスごとに試合について解説したり、どこが良いどこが悪いと議論する時間が設けられるのだ。つまり、見物人は見物人のままで試合を眺めていることはできない。試合を見るのではなく視る必要があるのだ。

 最初の試合は一組と二組だ。織斑一夏と凰鈴音の闘い。

 観客席はどこか熱意にかけていた。ほとんど客席が埋まっていない訳ではない。むしろ満席だ。だというのに、観客である一学年は興奮しているということもない。冷静に、極めて冷静に事態を眺めていた。

 

「はぁ、面白みに欠ける試合ですわね」

 

 観客席に漂う雰囲気を肺に取り込んで、セシリアは誰に聴かせるでもなく呟いた。その表情はとてもつまらない見世物を見なければいけないことに、げんなりしていた。周りには同じクラスの留学生組が揃ってつまらなそうな顔を見せていた。

 あの日の自分が如何に退屈な舞台を演出していたことか。セシリアは目の前の光景を見て、軽い自己嫌悪に陥っていた。一夏のあり方に苛立って、一方的に攻撃を加えていたあの日を思い出してしまったのだ。あれは、怒り心頭に発して我を忘れた未熟な自分だ。今は少しは成長している。そう自分を納得させる。

 

「帰っちゃ駄目なの? セシリアの試合もそうだったけど、今回の試合もつまらないわ」

「うっ!? わたくしが気にしていることをよくもまぁズケズケと」

「アハハァ。ミシャの言い様は酷いよぉ」

「仕方ないよ。この試合は試合として見るには無理があるから」

「そうですよね。これは試合というよりも、中国の新型機のお披露目会というべきでしょう」

「どうよ、みんなで立ち上がって出て行くのは?」

「何が『どうよ』なのか分からないですよ。その『どうよ』はきっと言葉の最後に持っていくべきですよ。みんなで立ち上がって出て行くのはどうよ? ズバリこうなるべきですよ」

「刹那的、立ち去る。拙者達、支配者、恐れず、生きる」

「あぁん、もう、ルベリーちゃん。あれほど日本の漫画に影響されちゃあいけないって言ったのに。どうして、そぉんな個性的キャラを演出しているのよ。日本語もたどたどしいのに」

「これ、世を忍ぶ、仮の姿」

 

 試合批判から始まった会話は、段々とズレていく。だが、その会話は明るく楽しいものであり、試合を眺めることに飽きていた周囲の生徒達からの注目を集めていた。

 そんなことをしらない留学生組は、試合そっちのけで会話を続けていた。

 

「セシリア、他人、欺く。故に、試合、退屈」

「意味が分かりませんわ。それに堂々と退屈って言ってしまってますわよ、ルベリー!」

「ふぅん。やぁね、セシリアちゃん。冗談に決まっているでしょうに」

「今のが冗談に聞こえてるの? 耳馬鹿よ、アンタ」

「仕方ないよ。みんな都合の良い解釈しかしないから」

「そのセリフじゃなくてもいいですよ。ここは、みんな都合の良い解釈しかしなから仕方ないよ、でもいいはずですよ」

「どうでもいいじゃん、そこは別に」

「あーあぁ、そこもつっこまれちゃうよぉ」

「大丈夫ですよ。マリさんもそこまで厳しい人ではありませんから」

「キキラもですよ。そこは、そこは別に――」

「超嘘つき! フィラカルイアの嘘つき!」

「あらあら、すみません」

 

 試合後に控えている議論を忘れて、話し続けるセシリア達とソレを笑いながら聞き入る聴衆。彼女達にとって参考になりえない弱い者をいたぶる試合よりも、統一性のない個性豊かな会話の方が何倍も楽しかったのだ。

 

「そういえばぁ、セシリアぁ」

「何ですか?」

「射撃部はどうなのぉ? 上手くいってるぅ?」

 

 質問に対して、セシリアは自然な笑顔を浮かべた。周囲はそれで察することはできた。

 

「大変ですが、とても充実させていただいていますわ」

 

 エミリアの的を狙う真剣な眼差しを、思い浮かべながらセシリアは言った。

 エミリアに憧れていたセシリアであるが、部活動の最中はその憧れを見せることはない。遊姫から貰ったアドバイスを忠実に守っている。憧れを押し殺して、徹底的に生徒と先生の位置関係を維持していた。それが功を奏したのか、一度だけエミリアから直接指導を受けることができた。2・3の短い言葉だ。それでも、セシリアからしてみれば手放しして喜ぶものだった。部活動中だったので表情にも雰囲気にもそれを出すことはしなかったが。

 セシリアは試合が行われているフィールドを一瞥した。

 空中に浮かぶ鈴のIS『甲龍』。その肩部スパイク・アーマーの装甲の一部が開く。そこには球状のパーツが見える。それが一瞬の発光したかと思うと、対戦者である一夏が吹き飛び。

 セシリアはその現象の正体を推測した。第三世代型のカテゴリーに入るISであるからして、特殊兵器だろう。球体パーツが発光してすぐに一夏が吹き飛ばされた。このことから不可視の攻撃である。彼女は付近の教師の眼がないことを確認して、ISのハイパー・センサーだけを起動する。様々な情報を以て鈴の攻撃に注意すると、特殊兵器の正体がぼんやりとだが見えてきた。圧縮した空気を弾丸として相手に撃ち出すのだろう。

 情報が足りないので確証はできませんが、おそらく――

 セシリアがフィールドから視線を外そうとした時、ハイパー・センサーが反応した。

 何だろうかと、セシリアが天井を見上げる。

 ISアリーナは半円状のフィールドとソレを囲むように観客席がある。観客席の天井には屋根があって空を見上げることはかなわない。雨をしのぐためだ。

 フィールドはシールド・バリアーに守られている為に屋根はなく、青空がよく見える。

 セシリアは上を見上げるのに屋根が邪魔だと思いながら、フィールドから見える青空に視線を移した。ハイパー・センサー越しに青空を視ると、何か黒いシルエットを見ることができた。それが、何であるか判断するより早く、黒いシルエットがピカリと光を発した。それは、垂直に落下してくる流れ星のような、光の線だった。

 圧倒的な熱量!? まさか熱線!!

 セシリアが思い浮かんだのは自身のIS『ブルー・ティアーズ』の武器であるレーザー・ライフルだった。しかし、あの光はブルー・ティアーズのレーザーよりも何倍も太く、熱量も圧倒的である。

 

「まさか……ビーム?」

 

 ビームは堅牢な不可視の障壁を容赦なく突き破り、中にいる一夏と鈴の試合を破壊したのだった。

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