問 a, b を自然数とする。以下の問いに答えよ。
(1) ab が 5 の倍数であるとき、a または b は 5 の倍数であることを示せ。
(2) a + b と ab がともに 5 の倍数であるとき、a と b はともに 5 の倍数であることを示せ。
(3) a + b と a2 + b2 がともに 5 の倍数であるとき、a と b はともに 5 の倍数であることを示せ。
「問題数が増えた……?」
「はぁ……。整数の証明問題ですね。この手の問題は、まともに割り算を考えるより、
合同式(mod)*1を使うのが一番効率的です」
「合同式……? 名前だけ聞いたことあるけど、使い方がわからないやつだね」
「なんで放置してるんですか。……説明はするので、この問題を通して覚えればいいんじゃないですか」
「ケイちゃん……‼」
「まず(1)ですが、これは 5 が素数であることを利用します。」
「a を 5 で割った余りを 0, 1, 2, 3, 4 として考えればいいのですが……ab ≡ 0 (mod 5) ならば、積が素数 5 で割り切れる以上、因数の少なくとも一方は 5 の倍数である、というのは前回の因数分解の話からも分かると思います」
「どっちかが 5 を持っていないとおかしいっていう理屈はわかったけど、実際の答案にはどう書けばいいの?」
「そうですね。数学の証明ですから、言葉だけでなく論理的に示さなければなりません。一番確実なのは、『余りのパターンを全部調べる』方法です」
「えっ、全部調べるの? 大変じゃない?」
「いえ、5 で割った余りは 0 から 4 の 5 通りしかありません。a も b も 5 の倍数でない(余りが 0 でない)と仮定して、その掛け算がどうなるかを確認すればいいんです。やってみましょう」
「……どうです?できました?」
「うん。1 から 4 のどれかを掛けても、 5 の倍数(余り 0)にはならないんだね」
「その通りです。つまり、a, b がどちらも 5 の倍数でないならば、その積 ab も 5 の倍数にはなり得ません。」
よって、対偶*2
『a と b がともに 5 の倍数でないならば、ab は 5 の倍数でない』をとることにより、
『ab が 5 の倍数ならば、a または b は 5 の倍数である』といえます」
「……ふむふむ。じゃあ、メインの(2)は?」
「(2)は、背理法*3を組み合わせるとスッキリします。
もし a が 5 の倍数でないと仮定してみてください。
前提条件の a + b ≡ 0 (mod 5) より、b ≡ -a (mod 5) となりますよね」
「移行しただけだね」
「そうです。これをもう一つの条件 ab ≡ 0 (mod 5) に代入します」
「合同式は、割り算以外は特に普通の式と同じように扱っても大丈夫です。割り算は後々説明しますので」
a(-a) ≡ -a2 ≡ 0 (mod 5)
「-a2 が 5 の倍数になるということは、a が 5 の倍数であるということになります。」
「これは最初の仮定『a は 5 の倍数でない』に矛盾します。したがって、 a は 5 の倍数です。
a と同様に解けば、 b も 5 の倍数になります」
「おお……! 鮮やか!!」
「じゃあ、(3)の二乗が出てくる方は?」
「(3)こそ、合同式の独壇場ですよ。まず、前にやった対称式、これを変形してみましょう」
a2 + b2 = (a + b)2 - 2ab
「ここで問題の条件より、 a + b ≡ 0 (mod 5) かつ a2 + b2 ≡ 0 (mod 5) ですから、上の式に代入すると……」
0 ≡ 02 - 2ab (mod 5)
2ab ≡ 0 (mod 5)
「ここで、合同式の割り算が出てきます」
「合同式で両辺を割るためには、 『割る数と mod の数(今回は 6)が互いに素であること』 が絶対条件です。今回の問題(mod 5)なら、5 は素数ですから、0 以外の数字で割る分にはほとんど問題になりませんけどね」
「なので、2 と 5 は互いに素*4ですので、両辺を 2 で割っても合同式は成立します。つまり、ab ≡ 0 (mod 5) が導かれます」
「あれ? ってことは……」
「ええ。これによって『a + b と ab がともに 5 の倍数である』という(2)と全く同じ状況が作れました。あとは(2)の結果を引用すれば、 a, b がともに 5 の倍数であると示せます」
「一つの大門に複数個の問題があるときは、誘導(ゆうどう)』 という暗黙のルールが存在することが殆どです」
「誘導?」
「簡単に言えば、『(1) や (2) をヒントにして、(3) を解きなさい』 という出題者からのメッセージです。これを考えながら解けると、問題を解くヒントにもなりますので」
「なるほどね。次から意識してみるよ」
A, (1)〜(3) 略(上記プロセスによる)
神戸大2010年の類題です。