「先生、また難しい顔をして……。今度は『必要条件と十分条件』ですか」
「あ、ケイちゃん! そうなんだよ。この『必要十分』っていう言葉、どっちがどっちだかいつも混乱しちゃって……」
「はぁ……。主語が『矢印の根元』なら十分、『矢印の先』なら必要。ただそれだけのことですが、理屈で覚えるより問題の構造を理解するのが近道です。例えば、この問題を考えてみてください」
問 x, y, z を実数とするとき、次の空欄に当てはまるものを下記の選択肢から選び、その番号を書け。
(1) x = y = z = 0 は x2 + y2 + z2 + xy + yz + zx = 0 であるための《ア》。
(2) x + y = 0 であることは
[選択肢]
① 必要条件であるが十分条件ではない。
② 十分条件であるが必要条件ではない。
③ 必要十分条件である。
④ 必要条件でも十分条件でもない。
「(1)だけど……これ、左から右(x=y=z=0 ならば 式=0)は、代入すればすぐ 0 になるから正しいよね? つまり『十分』ではあるのかな」
「ええ、そこまではいいでしょう。問題は逆です。
x2 + y2 + z2 + xy + yz + zx = 0 のとき、
必ず x = y = z = 0 と言えるかどうか。先生、この式……どこかで見覚えはありませんか?」
「えーっと、因数分解の公式で似たようなのが……」
「そうですね。これは平方完成の応用で変形できます。 2倍して全体を半分にしてみれば、
1/2 { (x+y)2 + (y+z)2 + (z+x)2 } = 0 と書き換えられます。実数の二乗の和が 0 になるということは、各括弧の中身がすべて 0 でなければなりません」
「……ってことは、 x+y=0, y+z=0, z+x=0 だから、結局全部 0 になるってことか!」
「そうです。つまり逆も真。したがって(1)は必要十分条件となります」
A, (1) ③
「じゃあ(2)を解いてみると。 x + y = 0 なら、右辺の
左辺は
「正解です。 x + y = 0 であっても、x が 0 でなければ式は成立しません。つまり『十分条件』ではありません。では、逆はどうでしょう?」
「式
(x - y) 2 = (x + y) 2
x 2 - 2xy + y 2 = x 2 + 2xy + y 2
4xy = 0
「つまり xy = 0 、よって x = 0 または y = 0 ということですね。先生、
x + y = 0 からこの条件は導けますか?」
「いや、 x = 1, y = -1 のときは xy = -1 だからダメだね。逆に、 xy = 0 だったとしても、必ずしも x + y = 0 にはならない(x=1, y=0 など)。」
「その通りです。どちらの方向の矢印も成り立たないため、(2)はどちらでもない、となります」
A, (2) ④
「うぅ……やっぱり条件分岐を丁寧に洗わないとダメなんだね」
「論理学は力任せでは解けません。命題の真偽を一つずつ、反例がないか確認する癖をつけてください。……まぁ、先生にしてはよく考えられた方ですよ」
「ケイちゃんに褒められた! 今日はいい夢見れそうだよ」
「寝る暇があったら……いや、しっかり寝てください。いいですね?」
松山大学2006年の類題です。