転生したら透明人間だったのでヤりたい放題する   作:TS貞操帯

1 / 1
異世界に転生したら透明人間だった件

東名(とうめい)さんって、影薄いっスよね」

30歳の誕生日、先日あった会社の大規模パーティーにも呼ばれず、俺を軽々追い抜かしていった部下からそんなことを言われた。

 

そんなこと、俺が一番よく知っている。

 

生まれは平凡な家庭だ。

父は公務員で母は専業主婦。昔ながらの亭主関白であり、日曜日は椅子から動かなかった。

長男として生まれた俺は、西本東名(とうめい)という、変な名前を付けられた。

後から知ったが、東名、という地名で両親は出逢ったからだそうだ。

そんな余談はさておき、幼いころから物静かな家庭で育ったことが要因なのか、一日も言葉を発しない日が多かった。

母は父の命令に頷き動き、父は目線とカタコトのような言葉だけで母を動かす。

そんな両親を見ていたからか、俺は言葉を話すのが遅かった。

精神的な問題だろうと医者は言っていたが、脳内ではお喋りさんだったことをよく覚えている。

ただ友達付き合いはそれでは成り立たない。

会話もせず、ニコニコするのも苦手だった俺は幼稚園ですぐ腫れもの扱いとなった。

小学生、中学生でも影が薄く、名前の通り、俺は透明人間のようだと揶揄された。

ただ幸い虐められることはなかった。しかし、誰からも構われないのも寂しいというものだ。

こんな自分が嫌で変わろうとしたことはある。

だが、三つ子の魂百まで。俺は、そう簡単には変われなかった。

そのまま退屈な人生を歩んだ。晩婚だったので両親とは早くに死別。最後の言葉は特になかった。

そんなこんなで会社に就職。淡々と事務仕事をこなす俺は重宝されたが、会社の飲み会や昇進にはてんで縁がなかった。

当然、恋人なんて出来たことはない。仲のいい友人は中学時代にいた鉄道の好きな田中くんくらいだ。

彼も今何をしているのかはわからない。

 

「……俺の人生って何のためにあったんだろうか」

 

30歳。男としてはまだまだかもしれないが、10代20代と何もなかった俺からすればもはや緩やかどころかこのまま転落の一途をたどるのは目に見えていた。

特に趣味というものはない。だがやはりモテたいという気持ちだけは沸々とどこかにあった。

キャバクラや風俗に行こうと思ったことある。実際キャバクラには何度かいったが、何回通っても誰も覚えてくれなかったので辞めた。風俗は、入り口でいつもUターンした。理由は、なんかドキドキ怖くて。

 

スーパーで缶ビールとショートケーキを購入した。

 

「ポイントカードありますか?」

 

これを聞かれるのは三十回目だ。いつも同じ。俺は持っていない。

いや、実際は持っているのだが、出しても気づかれないことが多くて面倒で辞めた。

 

「持っていません」

「ソッすか」

 

スーパーを出て缶ビールを開ける。

ごくごくと喉に炭酸が染みわたり、胃にストンと落ちて幸せを感じた。

 

「いっそのことマジで透明人間ならなあ……」

 

名前と境遇のせいか、何度も妄想したことがある。

透明人間ならしたいことが何でもできる。

コンビニでお金を払わなくていいだろうし、仕事だってしなくても大富豪の留守中に家でのんびりすればいい。いや、誰かいても息を殺していればいいだろう。

 

そして……あんなことやこんなことも。

 

 

なんて、こんな妄想しても意味はないが。

 

それこそ人助けだってできるだろうな。

歌舞伎町とか歩いていたら暴力事件も多いし、影の英雄、何てのも楽しいかもしれない。

 

「いっそのこと異世界で透明人間になりてーよ」

 

呟き。そんなことを言った数秒後。

 

俺は、トラックに撥ねられた。

 

 

「先輩、今なんかハネませんでしたか?」

「猫かなんかだろ」

 

と、最後に聞こえた…………。

 

 ――――

 ――――

 ――――

 

チチチチ。

鳥の声が聞こえて目を覚ます。

目に見えるのは青空と木々だ。風が可視化されるかのように柔らかく肌を撫でる。

キャンプ? え? なにこれ? え?

 

「ど、どこだここ!?」

 

ハッと起き上がって周りを見渡す。そこは、森だった。

 

いやほんと、そうとしかとらえようがない。

だが不思議だったのは、どこか日本とは思えなかったことだ。

木々の感じも見たことないし。不安になった俺は近づいて木の実のようなものをジッと見つめる。

 

「……なんだこれ」

 

ドラゴンの形の七色のフルーツだ。

こんなのゲーム(・・・)じゃねえとありえない。

 

そこでハッとなる。まさか、異世界に転生……なんて。

 

「ありえないか。いやまて俺、トラックに撥ねられ――」

 

心臓の鼓動がとてつもなく早くなる。誰かに会いたくてその場から逃げるように走る。

怖い、怖い怖い。

 

ここはどこだ、誰か、誰か――。

 

「ギギギ?」

 

そのとき、ゴブリンがいた。

緑色の小型の人間。ちゃんと右手に棍棒を持っている。

作り物に見えなかったのは、なんかわからんが空気感だ。

俺は思わず足を止め、ゴブリンと視線を合わせた。

 

「……ギギ?」

 

だが、ゴブリンはまるで俺に気づいていないかのように首を傾げた。

それからあくびをし、そのままどこかへ行く。

 

なんだったんだあいつは……のんびり屋さんなのか?

 

不安と不思議な感覚に陥っていると、奥に小川が見えた。

喉の渇きにも気づき、ゴブリンに気づかれないように小走りで向かう。

 

「はあはあ……」

 

手で水を掬って飲む。冷たくて気持ちがいい。さっきまでビールを飲んでいたが、やはりこういったときは水が一番いい。

 

「……あれ」

 

小川に視線を戻すと、なんだか不思議だなと思った。

その理由に気づいたのは、小さな違和感だ。

やがてそれが大きくなり、俺の心臓はさらに鼓動した。

 

――俺が、映っていない。

 

「は? は?」

 

後ろの木々は見える。にもかかわらず、俺だけがまるで忽然といないようなのだ。

 

――『いっそのことマジで透明人間ならなあ……』

 

 

まさか、と思って近くに落ちている石を拾う。

そして小川を覗き込むと、なんと、石だけが明らかに浮いていたのだ。

 

「嘘だろ。おい、おい!?」

 

だが説明がつかなかった。木の棒にしても、枯葉をまき散らしても、俺だけが映っていないのだ。

 

まさか、本当に透明人間に……。

 

いや、ありえる。

そもそも、ここはなんだ。夢か? 

 

不安と同時に妙な感覚に陥る。おそらくこれは好奇心だ。

もし、もし異世界で透明人間だったなら……色々できるんじゃないか。

今まで妄想していたことが、現実に……。

 

誰からも見られないのはつらいが、そんなの今までの経験と同じ。

 

……街とか、探して、みる、か?

 

 

「や、やめてえええええええええええええええええ」

 

そのとき、女性の叫び声が聞こえた。

テレビでしか聞いたことのない心からの叫びだ。もしかしてさっきのゴブリンか!? と思いながら急ぐと、そこはまさに修羅場だった。

 

聖女のような恰好をした女性が、男たちに襲われかけていたのだ。

 

 




評価頂けると凄く嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

若返った老騎士、落ちこぼれ公爵令嬢の使い魔になる(作者:ですわお嬢様スキー)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

 王国唯一の独立騎士にして、騎士の中の騎士と謳われた男、ラングリッド・ラントブルグ・フォン・エシュタール。▼ 七十年の生涯を祖国に捧げ、最後は王国に迫る竜を討ち果たした彼は、確かに己の人生を終えたはずだった。▼ だが次に目を覚ました時、ラングリッドは最盛期の肉体を取り戻し、見知らぬ場所に立っていた。▼ 彼を呼び出したのは、赤髪赤目の公爵令嬢。▼ 気位が高く、…


総合評価:1359/評価:8.72/連載:7話/更新日時:2026年05月30日(土) 20:31 小説情報

TS女神の体が万能薬なので気持ちよく配ってたらなぜか周りが全員泣いてる(作者:なほやん)(オリジナルファンタジー/コメディ)

前世は取り柄のない男だった。目が覚めたら異世界で女神になっていた。▼体が万能薬らしい。切って食べさせれば難病が治る。しかも再生するし、皆に感謝される。▼——なのに、なぜかみんな泣いている。▼---▼ハーメルン匿名杯2で5位をいただきました。▼応援してくださった皆様、ありがとうございました!▼


総合評価:3221/評価:8.25/完結:20話/更新日時:2026年03月22日(日) 19:00 小説情報

エロゲ転生〜やり込んだ知識でハーレム無双〜(なお特殊性癖)(作者:星野林(旧ゆっくり霊沙))(オリジナル現代/冒険・バトル)

やり込んだエロゲに転生してしまった主人公。▼抜きゲー世界であるが、バトルもあるので、死なない、詰まない様にしながらエロく生きたいと思います。▼なお初っ端から周回用アイテムを回収する模様。▼カクヨムとマルチ投稿


総合評価:4661/評価:8.36/連載:130話/更新日時:2026年06月01日(月) 18:00 小説情報

ソシャゲみたいな世界で「ここは俺に任せて先に行け」をやったら生き残ってどうしよう(作者:アサリを潮干狩り)(オリジナル現代/冒険・バトル)

特異な力に目覚めた十代の少年少女が、国や家族を守るために怪物相手に命懸けで戦うゲームのような世界。▼そんな終わった世界に転生して、仲間を守る為に敵を引き付けて死のうと思ったら生き残っちゃった。別れる前に色々言っちゃったしクソ気まずい。これどうすんの。▼※一発ネタです。そこまで長く続きません。


総合評価:16306/評価:8.58/完結:8話/更新日時:2026年04月05日(日) 00:52 小説情報

救いのない鬱ゲー世界で主人公御用達の喫茶店をやる(作者:音塚雪見)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

女しか魔法が使えない世界に転生した主人公。▼しかし彼だけは男ながらに魔法が使える。▼──これは俺が主人公ですね間違いない。▼馬鹿みたいな勘違いの末、彼は「世界最強の魔女」と呼ばれるほど実力を高める。▼だが見覚えのあるキャラクターと遭遇し、とある救いのない鬱ゲーに転生してしまったのだと知った。▼──ワッツ!? あかんこのままじゃ世界が死ぬゥ!!▼ということで爆…


総合評価:6475/評価:7.74/連載:39話/更新日時:2026年06月01日(月) 19:46 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>