【イナズマイレブン】shout out the ペンギン 作:NEW謝
春に轟く、出会いの季節。
「い、いつから、いつからだ……」
自室でパソコンをいじっていたら、画面の右下に「三月十五日」と表示されていた。
胸がざわりとする数字だ。
見なかったことにするには、あまりにも現実的すぎる。
俺は慌ててブラウザを開き、一般的な学校の始業日を調べた。
このパソコンで、みんながサッカーの動画ばかり見ているせいだろうか。
検索結果には帝国学園……とか、木戸川清修なんて名前も出てくるが、そんなのは無視無視。
「四月……」
いやいやいや、これはあくまで始業日だ。
授業が始まるのはもっと先のはずだから!
カタカタとキーボードを触りながら、さらに調べる。
決して、自分の学校のホームページには辿り着かないように注意しながら。
「四月……十一日……」
あ、終わった。
画面を見つめたまま呟く。
あと一ヶ月で、俺はあの舞台へ上がらなくてはいけない。
脳裏に浮かぶのは、円堂守がサッカー部員の勧誘をしている瞬間。
──来たれ!サッカー部へ!!
「あーもういやだ、どうしよう。もう本当に嫌だ、わけわかんねーよ」
サッカー部なんて無視して平凡な中学生活をやり直すのも……。
いや、そんなのいやだ。
せっかくイナズマイレブンの世界に転生したんだ。
全国行って必殺技撃って、あわよくば同級生にもてはやされたり。
……そういうのしたいんだよ、俺だって。
とりあえずパソコンの電源を落として立ち上がる。
足首を回して、右に左に肩をほぐす。
「っし行くかー、練習!」
────────
足の燃えるような痛みに耐えながら、ゆっくりとペースを落としていく。
「はぁ、はぁ、はぁ……ついた」
毎日ジョギングしてるせいで、ふくらはぎも相当凝っている。
だが技術や視野で劣る分、体力くらいつけないと超次元にはついて行けないだろう。
誰かに見られているわけではないが、少なくとも春休み中は続けようと思う。
──しかしまぁ、この河川敷には何度来ても慣れないものだ。
上を見上げれば橋がある。
御影専農や豪炎寺が落ち込んだ鬼道へボールを蹴ったシーンを思い出す橋だ。
しばらくイナイレに触れてない俺でも、流石に覚えているレベルの橋だ。
それに橋の向こうでは、稲妻KFCが練習している。
「あー、まさに聖地ってかんじだなぁ」
俺も転生前は、円堂守の影響でサッカーを始めた一人。
この世界じゃ円堂先輩か。
……ややこしいな。
まぁ俺がリアルタイムで見てた時でも、円堂たちと十個くらい離れてたし。
そもそも俺はGO世代。
そう考えると、転生前ですら全然年下だな……。
「やっぱ、一貫して円堂先輩かな」
先輩たちはこれから日本一になって、中学生ながら日本を救って。
そんな彼らに少しでも追いつくためには──
「練習あるのみ!」
施設から持ってきたサッカーボールを落とす。
俺の頭の中でイナイレ3のサッカーバトルのBGMが鳴り響く。
デーデッデーデー、デーデッデーデーデー
────────
イナズマイレブン!
────────
俺のイメージは攻守ともに汗をかいて頑張るサイドバック。
転生前にサッカーを習っていた頃も一応このポジションが多かった。
まぁ当時はCBもSBも同じDFくらいの認識でプレイしていたが……。
けど、まあ、やらなきゃいけない事は多分分かる。
──サイドライン際。
相手が縦へと仕掛けてくるイメージ。
俺は相手と絶妙な距離を保ちながら、パスコースとシュートコースをつぶす。
対峙する選手は俺がわざと開けたスペースを認識し、軽くドリブルを始めた。
足からボールが離れるほんの一瞬。
「ここで、スピニングカットー!」
……勿論言ってみただけ。
だが、多分今、目の前に敵選手はいない。
──ここから十秒くらい全力疾走!
足を前に出すたびに、膝が草むらを割いていく。
こっち側の河川敷は正式にはサッカーグラウンドじゃない。
……バッタとか絶対いそう。
「はぁ、はぁ、はぁ……、ここで、豪炎寺先輩にクロス!」
やり方はよく分からない。
が、勢いのままに、とりあえずボールを蹴り出してみる。
「おらぁあああああああああ……あ」
ボールを蹴った瞬間に分かった。
──宇宙開発。
「シャイセ!」
全然だめだ。
才能が1ミリもない。
ボールは勢いよく川を越え、対岸へ。
「うわぁ……」
見間違いだろうか。
ボールに強烈な回転がかかり、形がまん丸ではなくなる。
そしてギュンっと軌道を変え、トポンっと川の方に落ちてしまった。
……一人ワンツーとかの類だろうか。
「あ、ボール取りに行かなきゃ」
────────
オレンジ色に揺れる川に、夕日の様に浮かぶサッカーボール。
あれから急いで橋を渡り、かれこれ三十分近く。
近くにあった木の棒で水面を叩いて波を作ったり、石を投げ込んだり色々してみた。
しかし、サッカーボールは毎回思った方とは反対に流れてしまう。
「あーもう、取れない!」
施設にサッカー好きが多いからと、社長がせっかく共用に買ってくれたボール。
このままボールを無くしてしまえば、寮の職員さんに怒られてしまう……。
「おい君、大丈夫か?」
現実逃避しようとした頭を、一気に呼び戻す声。
DSから、テレビから、とにかく聞き馴染みのある声だ。
振り返ると、少年漫画みたいな丸い顔。
雷門中のジャージに、使い込まれたグローブ……。
そして何より──このオレンジ色のバンダナという疑いようのないアイデンティティ。
「どうした? そんなに大事なボールだったのか?」
「い、いや、大事ではあるんですけど」
目の奥に力が入る。
──申し訳ない。
サッカーも下手で。
イナイレの知識だってもう曖昧で。
──それなのに。
「俺だけ、こんなのずる過ぎるだろ……」
──俺は、本当にイナイレに関わっていいのだろうか。
勢い重視で書いている作品です。
読みにくい部分もあるかもしれませんが、
気に入っていただけたら、感想などいただけると嬉しいです。