【イナズマイレブン】shout out the ペンギン 作:NEW謝
やっと、軽く試合出来ます。
最初ちょっと重たいんですが、よろしくお願いします。
俺の中で処理できない感情があふれだしてくる。
廊下に人が増えてくるのはもちろんの事、なにより俺自身が抱えてる不安とか恐怖みたいなものを、横を通る人たちに分け与えてしまっていた気がする。
体の中はモヤモヤでいっぱいだというのに、表面は緊張で冷たく震えている感じ。
いわゆるゾンビ映画の主人公になってしまったような、
俺とそれ以外で世界を隔ててしまう程に、体の内側から鼻息と心臓の主張が激しく響いていた。
「スゥーー、フーーーーーーー」
とは言え、教室に入ってしまえばいくらか楽になる。
これ以上後戻りが出来ないからだ。
雷門中はマンモス校ではあるものの、
円堂先輩と風丸先輩の様な幼馴染、そういった存在も特段多いわけではない。
それを証拠に、周りは静かに、ただ誰かが支持をくれるまでじっとこらえているだけ……だと思う。
……主に俺とかがそうだから。
しばらくは学生手帳とか、時計とか天井の模様とか……まぁそういうのを眺めて待ってればいい。
楽なものだ。
少しづつ、周りにバレない様に呼吸を整える。
別に隣の人も前の人も、俺には興味ないだろうとは分かってはいりつもり……。
だが指先で学生手帳を雑にめくりながらも、耳と他の感覚は周りの声に意識が引っ張られる続けている。
「あ、えっと○○(名前)です」
「今日って何時に帰れるんでしたっけ」
ただの言葉の羅列なのだが、まるで俺をけなして聞こえてしまうのは自意識過剰だ。
──今すぐにでも耳に指を突っ込みたい……が、みっともない。
震える指先を、太ももの位置まで降ろす。
初日から挙動不審な人間と思われてしまうのも、溶け込むのを諦めてしまうのも、どちらも今までと変わらないではないか。
せっかくイナズマイレブンの世界にまで来て、まだ繰り返してしまうのか?
……こういうところだ。
ちょっとした会話の積み重ねとか、自分から相手に寄り添う周りの姿勢。
こういうのがこの一年で、いやもしかしたら今日の帰りにでも俺との違いを生んでしまうのではないか。
なら、そろそろ俺も……。
「すみませーん新入生の皆さん! さっそくですが入学式に向かいたいので、机の通り名前の順で、廊下に並んでください」
周りの男子にでも話しかけたかったのだが、どうやら俺は入室してから三十分近く黙りこくっていたらしい。
まぁ仕方がない。
今日の俺はサッカー部の見学だけできればそれでいい。
学年の先生かな?
が、名前の順で右から一列ごと、廊下にピシッと並ばせていく。
俺も前の生徒に遅れないよう気を張り巡らし、呼ばれている号車をしっかり確認しなければならない。
「まず一号車。出席番号一番から十番」
俺も水城なんて名前にならなければ、さっそく一号車から廊下へ抜け出せる筈だったんだがな。
そうそう大体、前から出席番号一、二、……。
「え、鬼道の妹」
……という印象が最初に来るのは失礼だろうか。
まぁ今は入学式を控た緊張で、これ以上頭が回らないんだけども。
音無春奈──これから雷門中のマネージャーになる人だ。
俺としてはそれこそ”鬼道の妹”とか”新生雷門の顧問”、
まぁあと”小暮と仲良かった人”という印象もあるくらいで、あまりイメージが定まらない。
……そう言えば、音無さんも一年生か。
いやまぁ気づかなくても問題はないんだけども、俺は相当自分にしか興味なかったらしい。
「えー次、三号車。出席番号二十一番から三十番の人廊下に並んでください」
おっとあぶない、俺の順番だ。
少し考え込んでしまった。
……とりあえず放課後目指して、なんとか式を耐えきるしかないか……。
あー席が後ろとか、せめて端くらいに座れればいくらか楽になるんだがな。
仕方ない、仕方ない。
そう言い聞かせないと、椅子から立ち上がるのすら辛くなってしまう。
「はい、では皆さん一日お疲れさまでした、また明日元気な姿で会えることを望んでおります」
懐かしのクラス全員での「さようなら」。
先生が一言挨拶をすると、教室ごと一気にクラスの空気が柔らかくなる……。
ざわざわとも違う、とにかく周りを気にもしない遠慮のない大きな声。
机や椅子のガタンガタンとぶつかり合う音。
朝とは違ってみんな周りに興味津々の抑揚だ。
これらがホント教室中を、なんなら廊下すらも埋め尽くしている。
「なんなんだよ、こいつらは」、と。
一人残らずコミュニケーション強者なのか? と思ってしまう程にとにかくうーるさい。
……いやあ、勿論転生者の俺の方が異物ではあるんだけどもね。
というより思い返せば、そもそも俺が現役の時も違う地域からの転入で、
最初っから慣れるにも大変時間がかかったものだ。
……まぁ入学なんてそんなもんか。
まーとにかく、もう、今日は疲れてしまった……。
おわった~
あーしんど、辛、苦しい~あー死にた―。
「いや、もう死んではいるんだったか」
諦めの嘲笑しかできない。
今すぐ布団にくるまりたい。
うーん、はやく誰か教室から出始めてくれないかなぁ。
最初に帰ったから目立ったりとかはしないよね。
そもそも俺はこの後一緒に写真撮ったり帰る親なんて……、あー家すらなかったな。
「あ、そうだ、サッカー部の見学行くんだった」
やっぱ今日上級生の登校ないっぽいし、やってるのかなぁ?
まぁ部室だけ見れるだけでも、相当進歩になる筈だ。
行くだけ行ってみるか……。
てってってって、てててー
てってってっててててー
てってってって、てててー
てーてーてーてーてーて
ここが雷門中である以上、このBGMが勝手に脳内にかかってしまう。
入学式を終えられた開放感とかもありつつ、やっぱりどこか高ぶるものはあるよね。
「ぼろっちい」
最近でいうと、うちの施設の倉庫くらい年季が入っている部室。
けどなんか不思議と触りたくなってしまうような。
「すっげー」
勿論俺が知ってしまっているからそう感じるというのはあるが、
”大事にされたものに神が宿る”、そういう類のパワーが手のひらから全体に広がってる感じ。
まぁ大介さんは生きてるんだから、誰のパワー?という疑問は残るが。
「プラシーボ? なんだか技に使えそうだな……」
まぁあると思えば、やっぱり存在するものなのだろう。
それが呪いだろうが神だろうが魔人だろうが、全部受け取る人の解釈しだいだ。
俺は死という経験を通して、より深くその姿を捉えている気がする。
「出来ると思ったことしかできない……人間だって俺だって同じこと」
今、たったこの瞬間だけでも、……勇気を出して俺もサッカー部に
ガンガン!
思ったよりも薄い鉄板の様な、指の力が一点じゃなく、扉全体に広がる感じ。
ちょい関節がヒリヒリするなぁ。
ガ、ガラガラ
開いた開いた。
今日もやっているようだ。
てか手汗がやばいな、この先に円堂・染岡・半田。
この誰かが居ると思うと……。
「おいおい、なんで俺らが入学式の後片付けなんかしなきゃなんねーんだよ」
「仕方ないだろ染岡、他の部活も今日は休みなんだ。 早く片付けた分だけグラウンドが使えるって冬海先生が」
「グラウンドが使えたってよ、結局俺とお前と円堂でたったの三人しかいないんだぜ? 新入部員が入ったところでまともに練習ができるのかよ……おい円堂」
「……部員はきっと集まる!
集まらなくったって絶対に集めてやる!
そして今年こそ、あこがれのフットボールフロンティアに」
あー……うんそうだよね、最初はちょっとギスギスしてるんですね。
ちょっとタイミング失っちゃったなぁ。
さっきの勢いのまま入れたら楽だったんだけど……。
いや、勿論そっちにもそっちの事情がありますよね。
……ごめんなさい帰ります。
てってってって、てt
──「君もサッカー部だよね?」
あ、すいません誰ですか?何処の先生ですか?
スーツ着てるからいかにも普通の先生だけど、少し目つきが高圧的。
体育とか運動部の先生だろうか?
おーこえぇ。
「体育館倉庫の片付けもすることになったから、あーお前一人で良いや、頼むね」
え、ちょとまてよ、俺も新入生なんですけど……。
先生、先生?
ひぃぃ、学校怖いよぉ。
えーてなわけで、新入生の下校時刻が十二時前とかだったんですけど……。
誤解が解けてただ今の時刻、午後十三時半ですよと。
それだけでもヤバいんですけど、ご覧ください。
えーサッカー部とラグビー部が喧嘩しております。
三対四とは言え、流石にサッカー部の圧勝だと思うんですけが、中々ミニバトルが始まりません。
「……」
これはあれでしょうか、私が行った方がいいやつでしょうか?
行った方がいいですよね、はい、行きまーす。
いや、勿論ふざけているわけではなく、やっぱりこんな機会はめったにない。
なんだかんだこの先の雷門には、とんでもないタレントたちが揃っていくはずだ。
それこそ代表になる選手たちから、十年後・二十五年後と続いていくサッカーモンスターたち。
そんな中俺がこのサッカー部に入る意味は?
俺が入ることでこのヴィクトリーロードに何をもたらせる?
勇気が出なくて帰ろうとはしたものの、俺はやっぱり自分がどれだけやれるのかを試してみたい。
いや、なんならここがラストチャンスと思ってもいい。
やる、やらなきゃいけない……自信はないが流石にそんな気がしてる。
……とりあえずあの人に声かけてみよう。
「あの木野先輩?ですよね、あ、はい新入生です、すいません。いやーえーっと、あそこの人が名前を教えてくれて。
あの僕昔サッカーをやっておりまして」
あ、いいですか、すいません。
じゃぁちょっとお邪魔します。
「おい、落ち着けって染岡」
「放せ、こいつら後から来たくせ、グラウンドを横取りしやがって」
「だったら、ボールを取り返してみろよ、弱小サッカー部さんよお」
「なんだ部員三人しかいねーから、俺たちラグビー部とすら戦えないってか?ww」
「なんだと!」
あぁやっぱりそうですよね。
ラグビー部はちょっと言い方悪いんだけど、イナズマイレブンにおけるヒール的な役割を担ってるような、そんなイメージありますから。
「円堂くーん、彼サッカー部に入ってくれるってー」
「……」
自分からは話しかけづらいので、木野さんを通して通訳してもらう。
が、まだホントに入れる実力があるかはどうか。
「あれ? お前は河川敷の……」
「あ、そうです、水城って言います。 春休みに一度お会いしたんですけども……そうですね、改めてご挨拶をと」
「君新入生なのか? 下校時刻はとっくに過ぎてると思うけど……」
「あ、いやあの手違いでちょっと」
よかった円堂さん覚えてた。
半田さんもそうですよね、十年後コーチ?監督業やられてますよね。
「あー、そうですね、ほんとによろしくお願いします」
「ああ、よろしくな!」
【先に一点取った方の勝ち】
ラグD
ラグC
ラグA ラグB
染岡
半田 水城
円堂
よーいドンッというよりも、ホントに試合って感じになっちゃたな。
ただ、いくら何でも未経験の人との試合。
俺とて、すごい上手いわけでは全くないが、付け入る隙くらいは十分にある筈。
「試合開始!」
木野さんの声と同時に、ボールを蹴ろうとするラグAと周りの選手の動きをなんとなく観察する。
そして、Aの右足が触れる瞬間、俺は全速力で走り出す。
「あ、おい新入生!」
「水城?」
──パスするなら大体ラグAからラグBだよな!
「取った」
「くっそお」
俺も痛感したからわかる事。
彼らはサッカーにおいて、選択肢を生みだす材料をまだ持っていない。
呆気にとられるラグAとラグBの間を通り抜け、とりあえず右サイドのライン際を駆け上がっていく。
とは言え、意外と俺も先を考えていたわけではなく……。
「いかせるかよ」
「そうくるわな」
DFのラグCが一気に俺のパスコース、そして中への侵入を防ぐように近づいてくる。
ラグビーをしてるだけあってかなりのデカさ、正直怖い。
──それに、初心者程ボールに集まってくるもの。
「舐めやがって弱小サッカー部が」
「調子に乗るのもここまでたぜ」
振り返ると、すぐ後ろにラグAとラグBがおいついてきてる。
どうする?
俺の個人技じゃ突破できない。
フィジカルでも流石に負けてしまう。
「ミズキ! こっちだ」
染岡さんがゴール前に!
「やらせるかよ」
ボールを利き足に持ち替える暇もなく、ラグCの足が伸びてくる。
相手の足が触れる前に取れるのは、
俺が今まで練習でやっていた動き。
──ラグCと対峙してからは、ずっと一定のリズムでドリブルをしてきた。
「ここ!」
「てっめ」
1度軽く蹴ったボールに、すかさずもう一度触れる。
すると、ラグABC揃って、一拍呼吸を置いて後ろに取り残される。
「くっそ、待ちやがれ」
「よし!」
少しボールが離れてしまったものの、
なんとか左足のつま先を当て、弧を描くように回転をかける。
「染岡さん!」
「ドンピシャだぜ! 食らいやがれぇ」
大げさなキックモーションからは、竜も青い光も出てこない。
それでも、ラグビー部を吹き飛ばすには十分な威力だったらしい。
「ゴーーーール! 勝者雷門サッカー部!」
「おっしゃあああ、見たか俺のシュート!」
「やったな染岡!」
はぁ、あぶねー安心した。
こう円堂さんがいる以上、負けるはずはないんだけども、
こんな俺が入ったから負けた試合なんて、正直シャレにならんとこだった。
今回はある程度やれたが、相手が未経験だからこそ通じた個人技。
このままじゃ相当キツイな……。
俺の寿命は持って野生中、土門さんが入ったらお払い箱だ。
もっとこう無双とか、なんならキラキラ王道主要人物みたいなのを期待していたが、
というよりもそれに憧れて、イナズマイレブンの世界へ飛ばされた?のかもしれないのだが
現実そう甘くもないな。
「なんだか、勝ったのにむなしい……」
もっと身の振り方を考えないと……。
「水城! これからよろしくな」
「あ、円堂さんいいんで……えーっとよろしくお願いします!」
「おう!」
「ミズキ! お前中々やるじゃねーか」
「あ、ありがとうございます」
けど染岡さん、すいません俺ミズキじゃなくてミズシロなんです……。
「よっしゃあ、新入生も入ったし」
「円堂?」
「雷門サッカー部! 目指すはフットボールフロンティア全国大会だ!」
「「おう!」」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
やっと試合が書けました。
ぜひ気軽に、感想などお待ちしております!