【イナズマイレブン】shout out the ペンギン   作:NEW謝

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shout out the ペンギン① 根性って何なの……。

 何故人にやさしくして来たのか?

 そう直面した時に、「自分なんか」という意識。

 これが一歩引いてしまう自分を作っていて、罪滅ぼしのために人助けをしてたんだなと気づいた。

 

 「それがやっぱ皆が噂していた、『知新は偽善者』ってことなのかな……」

 

 けど、居場所を分けてもらうような、そんな接し方もためらってしまった時、

 ただ、罪悪感だけが残ってしまって。

 人ごみの中どう動いたら良いかもわからず、ただ人の刺激ばかりが入り込み、息を吐くことすら苦しいと感じることがある。

 

 「それでも……やっぱり気持ち切らしちゃいけないのかな?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 あー、もうなんというか……。

 

 「入学式終わって次の日に、早朝から施設の倉庫整理なんかやらせんのかね……」

 

 いや勿論寝泊まりして食事もあって、お世話になってるのはこちらも重々承知ですよ。

 けど、こちらとしては昨日に今日と、大掃除二回目なんでね……。

 

 「はぁあぁあぁ」

 

 それに一日とは言え、まだ体の疲れがたまってる感じ。

 

 で、校長(施設長)の趣味だろうか?

 施設で使う工具から、ザラザラと錆びついた小判。

 マイクの金色の部分をトントントンっと。

 ……辺りにはガラクタなのか宝なのか、俺じゃ見分けのつかない物ばっかりだ。

 

 ズルズルズル

 

 「粉、やばいって!」

 

 ブルーシートを引っ張り出すと、辺りは木くずに支配される。

 学校に行かない生徒だったり、それこそ休日だって誰か使ってるはず。

 使用頻度と比例してそれなりに掃除もされてるだろうに、なんでこうブワっと飛び交ってくんのかね。

 

 「あーちしん、粉ヤバいよな」

 

 「げっほげほ、あ、はい、すいません」

 

 「いつも最後にホウキしちゃうから、とりあえずブルーシート畳んだり長靴並べたりそこらへん先お願いね」

 

 「はい」

 

 「よろしく」

 

 奥で工具箱らしきものを確認していた、御影専農の二年生──しんさんと入れ替わり、

 俺も奥へと進んでいく。

 狭い通路をまたいで進んでいると、薄暗い倉庫の中もう一人の影。

 低く腰を落としながら、だるそうにしている……。

 

 「不d、あきおさん……」

 

 

 

 一時間二時間?多分それくらい経ったんだろうね。

 進んでくる内に意外と気持ちも高揚してきまして……。

 

 「いーや、けどよくやりきったな俺」

 

 マジで色んな意味でね……。

 

 「じゃ、こっちは先帰ってるから、お前逃げようとすんなよ」

 

 「ははは……。お疲れ様です」

 

 面倒なんだよと言い残し、あきおさんが施設へ戻っていく。

 

 結構メンタルに来るような詰められ方、は作業中に何度かされたんだけども、まぁ愚痴っててもしゃーない。

 人の悪口言うのはよくありませんよって、古くからいろんな人が説いているからね。

 それに彼もこんなとこに閉じ込められてストレスが溜まってるだけなんじゃないかな?

 それだけの話だ……。

 

 「……うーん」

 

 モヤモヤと浮かん出くるものを意識しないように、深く息と共に吐き出してしまう。

 

 まぁ俺もついに入学して、イナズマイレブンの年が始まったんだ。

 影山も、そろそろ本格的に動き出す時期だし、不動さんも卒業が近いとは噂だもんね。

 

 

 「まぁそんなことより、今はこれよなぁ」

 

 作業中に見つけた、メモ帳の束。

 

 くすんだ青っぽい表紙の中央には、【料理】だとか【スキー】だとか、色んな趣味のメモがだらぁーっと並んでいる。

 確かに多趣味さを感じさせるものの、誰も興味を持たなそうなレイアウトではある。

 

 あ、別にありがたいものですから本当に、わざわざ校長先生を否定したいとか、決してそういうわけじゃないんだけどね。

 

 「けど”ご自由にお取りください”ね……」

 

 いろんな知恵がずっしりと詰まっているにも関わらずだよ。

 長らく倉庫にしまわれ、おそらくだけど一冊も借りられていった痕跡がない。

 

 いや勿論俺自身、最初はなんかあるなぁ程度の、

 それこそほんと数十分後とかには忘れてそうなくらいなね、それくらいの興味ではありましたけど……。

 だから、俺がこの一冊を拾ったのもほんの偶然に過ぎないわけで。

 

 「Ich heiße Bassstein」

 

 私の名前はBasssteinです、みたいな感じ?

 教科書一ページ目にあるくらいの、アインシュタインとかフランケンシュタインとか、多分そんなかんじのペンネームなのかな。

 

 中身をバババっとめくってみるが、

 実際に書き込まれてるのは殴り書きされた日本語で、デフォルメされた人体とかちょっと興味深そうな……。

 

 「~♪」

 

 あ、丁度みんな起き始めて、朝のストレッチの時間かな。

 ちょっとかけ足で戻らなきゃ。

 

 今はまとまった時間がないんでね、学校ついてから読もうかな。

 メンタルヘルス的なことも書いてあれば、本自体がお守りにもなりそうだし。

 

 はぁ、今日も頑張るかあ。

 

 

〜〜〜〜

通学中

 

 

 「皆さん、どこの中学行かれるんですか?」

 

 「偏差値とかはともかく、籍を置くだけなら栄都学園が多いかもな」

 

 「通信教育が進んでるからですか?」

 

 「多分地区の通信とうち提携してんだよね、あと秋葉名戸も何人かね」

 

 「へー、それって冬……」

 

 「ごめん、俺このまま電車乗ってくからまたね」

 

〜〜〜〜

 

 

 俺も教室までの道のりを、

 イタリアから帰ってきた染岡さんばりに、肩で風を切って歩いてきたんですよ。

 形だけでも、自信をつけられないかとね……。

 

 「あれやばいよね、私もあのアイドル好き」

 

 「はっはっはっはお前マジヤバいって」

 

 スゥー苦しい……。

 あのー昨日の今日の、いつの間にこんなクラスの輪ができかけてるわけ?

 いや勿論ね、その昨日我関せずに逃げかえったのは俺なんですけども。

 ごめんね自分基準で考えちゃって……。

 

 自業自得のくせ、

 何となく鉛筆を握ってる方の手が、より温かく、そしてじんわりと湿っていく。

 

 まぁまぁまぁ、俺だけ時代も経験も別の道を歩んで来てる。

 俺なんかが周りを傷つけない様、どこか距離を取らなきゃな、と。

 そういう覚悟というか、諦めみたいなもんは、入学前からずっと持っていましたよ。

 

 ──鼻をすするような音が、ところどころから聞こえてくる。

 

 端で固まっている集団は何を話しているのか……。 

 会話に途中で挟まれる代名詞は、俺の事か?

 

 衣擦れの音が「気持ち悪い」とさえ聞こえる。

 

 「あーやばいな、自意識過剰になってる」

 

 周りのことを気にし過ぎて、鼻から息が吐けない感じ。

 別に白くなったりもしてないはずの視界が、なんだか濁っているような気もする。

 

 「何か気を紛らわせないと……」

 

 ──気づいたらカバンに手を突っ込み、何かやることを探していた。

 

 何もある筈ないとは分かりながら、なんだか脱出の糸口がある気がした。

 ……というかそう願うしかなかった。

 

 「ん?」

 

 新品のカバンの中にはふさわしくない、ザラザラとしたボロっちい感触。

 

 「そういえば、メモ帳持ってきてたな」

 

 人前で読むのをちょっとためらってしまうような分厚い束。

 俺は表紙以外が見えないよう手で角度を調整しながら、ゆっくりと一ページ目を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「一歩でも多く進み、感覚を吸収しようとすること!」

 

 まずは、古本屋に行けば人生論のコーナーにたくさん書いてありそうなこと。

 最初のページは、そんな人生の楽しみ方みたいなのがいくらかまとめてあるみたいだ。

 

 「とにかく行動しろ、失敗と経験を積め……自分の人生、恥をかいて、いつからでも……」

 

 ところどころ矛盾しているような、その時考えたようなことがそのまま、ただ書きなぐられている。

 支離滅裂でいてどこか、人間の温度を実感する。

 

 俺は本と自分との重なりを探しながら、いくつかの言葉を自分の中で吸収しようとした。

 まぁそうでもしないと、気が散ってしまう。

 

 ──そしてそれを見つけた時、

 息が吐けないことなんかどうでもよく、いつの間にかすっと胸が軽くなっていた。

 

 ページをめくるたびに濃くなっていた、ボールペンの跡。

 そして、その正体……。

 やっぱり、そうだよなぁ。

 

 「ペンギン、でしかないよな」

 

 緑色の背景、多分ピッチだろう。

 中央にはサッカーボールを足で転がしている……とにかく人間のように立つペンギン。

 一応赤いライトと青白いライトが二本、空から彼を照らしているようにも見える。

 

 「ペンギンと言えば、帝国……」

 

 とは思いつつ、自分の事をペンギンと思い込もうとした人生に行き詰まった人の逃げ口だったのだろうか?

 俺も、周りとしゃべる言語が違えばなんて……自分と他の人を完全に別の生物だと思い込みたくなる時はある。

 

 「まぁとにかく、これは”必殺技”に近い的な何かなのだろうか」




読んでいただきありがとうございます。
ぜひ感想など気軽にお願いします。

日々色々学び、感じながら、作品を積み上げていきたいです。
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