明るい少女に誘われて、ひとまずポケモンセンターで休憩することになった。圧勝したとはいえバトルをしたしね。
「あたしはタウニー。あなたは?」
「僕はキョウヤ。こっちは相棒のキルリア」
「るら…」
「へー、そのキルリアだいぶ鍛えられてるね!それにあなたになついてる!」
「それは当然。僕とキルリアの絆はそう簡単には壊れないとも」
「るら…♡」
すすすとキルリアが僕に体を寄せてくる。キルリアが僕のことを大好きなのは分かっているとも、可愛いキルリア。
「それにしてもそっかー、家出かぁ。うちにも家出してきた子がいるけど…やっぱり思春期の男の子は大変なのかなあ」
「僕に関しては思春期関係ないとも思うけどね……それで、案内ってどこにだい?」
「うん、あたしとその仲間たちが住まわせてもらってる…ホテルZ!」
「ホテルZ……?」
「あー…聞いたことないって顔してるね。まあ古いし路地裏だしで知名度は全然ないんだけど……でもその分綺麗だし広いから!」
「そうかい?それならまぁ…ってちょっと待って。ホテルだろ?僕お金持ってないよ?」
「大丈夫!もちろんちょっと手伝いとかはしてもらうけど……基本はタダだから!」
「本当に?」
「ほんと!疑うならこのままミアレで行く当てのない生活をする?」
「うっ……そう言われると」
「ふふ、それじゃあ決まり!暗くなってきたし、急いで……」
『バトルゾーンが 展開されます』
タウニーのスマホロトムから、無機質な音声が響いた。その瞬間、近くに赤いホロの仕切りが出現した。
「うげ…最悪、ここがバトルゾーンに設定されちゃったか」
「バトルゾーン?」
「うん、詳しいことは後で説明するけど…ミアレでは夜な夜なトレーナー同士がポケモンバトルをするの。その時にバトルが許されるエリアがバトルゾーン。ここだとトレーナーを見つけた瞬間に…」
「そこのあなた!!」
大きな声に振り向くと、ウェイター風の女性がモンスターボールを持ってこちらを睨んでいた。
「バトルゾーンをうろついているってことは参加者ね!バトルしてもらいます!」
「ちょっと待って、あたしはともかく彼は…」
「…ねえタウニー、そのバトルって賞金はもらえるのかい?」
「え?まあ、バトルだから当然……」
「そういうことなら!行っておいで、キルリア」
「るら!」
「ふふ、やる気みたいですね!ヤナップ!」
「ええ!?」
数分後。僕はウェイターのお姉さんにあっさり勝ったのでした。そしてもちろん賞金もゲット。いやあ嬉しいね。
「ああ、負けてしまいました…ポイントが…」
「ていうか、キョウヤはZAロワイヤルの参加者じゃないし。だからポイントは減らないよ」
「え、そうなんですか!?早く言ってくださいよ、バトルして損した……」
「聞かなかったのはそっちでしょ……ていうかキョウヤ!いくらお金に困ってるからっていきなりバトルするのは危険すぎるよ!」
「はは、ごめんよタウニー。賞金をゲットできる機会があると分かったらつい、ね」
「キョウヤって意外と守銭奴?」
「違うよ、お金が貯まっていくのが快感なだけさ」
「ほぼ同じようなものじゃん……まあいいや、とにかくホテルZに急ごう!できるだけトレーナーを避けて、ね!!」
「あっ、分かったよ……」
タウニーに念を押されて、僕はトレーナーたちを避けながらホテルZに向かうことになった。なんというか……ここらにいるトレーナーたちはみんな目がギラギラしてるな。
「よし、もう少しで…」
「タウニー!!」
「えっ?」
タウニーの体を急いで抱き寄せる。するとほのおわざが彼女の頬を掠めた。
「……危ないじゃないか」
「これは失礼。トレーナーに当てるつもりはなかったのですがね……ですが、あなた方もバトルゾーンにいるトレーナー。なら分かるでしょう?」
「その割には君たちは群れているようだね」
「賢いやり方と言ってちょうだい。チームを組んで、ポイントを稼ぐの。特にきみの横の……最近頭角を表しているランカーでしょう、倒したらポイントがいっぱいもらえるわ」
「なるほど……タウニー、大丈夫かい?」
「ぁ……」
「タウニー?どこかに技が当たった!?」
「ぁ、ううん!あたしは大丈夫!ていうか!あたしはともかく彼は参加してないから!せめて彼だけでも通してあげて!」
「嫌だ、と言ったら?」
「それは当然……ん?」
その時だった。空から、花がひらひらと舞い降りてきた。違う、ただの花じゃない。黒と赤の、美しい花。そして、青色の……フラエッテ?
「きゅるる……」
「あら、助太刀?でもフラエッテ1匹でこの状況が…」
「待ってフラエッテ、当てちゃだめ!!」
「え?」
フラエッテの花が淡く光ったと思うと。
ドシューーーーーーーン
………とんでもない、レーザービームが放たれた。もちろん、上空に向けて。タウニーが忠告していたからだろうが、もしあれが当たっていたら……と、想像したのは彼らも同じようだった。一目散に逃げていった。
「フラエッテ…助けてくれてありがとう。でも『はめつのひかり』は簡単に撃っちゃダメだよ、あなたのとっておきなんだから」
「きゅるる」
「……彼女、ただのフラエッテかい?」
「どうだろ、色々謎は多いけど……とにかく!もうホテルZだよ、急ごう!」
路地を通ると、そこには古めかしいホテルが建っていた。確かにちょっぴり古いけど、アンティークで綺麗なホテルだと思うな。
「よし、ここまで着いたら安心だね。それじゃあ……ようこそ、ホテルZへ。お客様」
「はは、なんだか緊張するな……」
「大丈夫だよ、ここのオーナーさんも優しい人だし!身長は3mくらいあるけど!」
「え?」
タウニーに押されて中に入ると、僕は圧倒された。エントランスは映画に出てくるような絶妙な古さと荘厳さが同居していて、とても知名度がないのが嘘のようだ。
「AZさん!」
「タウニー、戻ったか。そちらの青年は……」
「…初めまして、キョウヤです」
「家出してミアレに来たんだって。で、バトルの腕っぷしも強いからちょっと手伝ってもらおうと思って」
「……そうか。初めまして、私はAZ。このホテルZのオーナーだ」
「きゅるる」
「彼女はフラエッテ、私の最愛のポケモン。疲れただろう、今日のところは休みなさい」
「ありがとう、ございます……」
AZさんから202号室のルームキーを手渡される。タウニーも頷いてくれたので、今日のところはホテルにお世話になることにしよう。それにしても手伝いか、いったい何をさせられるんだろう……
「……キョウヤか。彼はどうやら、大きな力に導かれてミアレにやってきたらしい」
「きゅるる」
「……ああ、ミアレの悲しみを、解き放ってくれるといいのだが」
2人きりの屋上で、AZはそう呟いた。
「はぁ〜〜」
自室のベッドで、タウニーはゴロゴロしていた。思い出すのは、ついさっきのキョウヤの姿。咄嗟に技から自分を守ろうと、抱き寄せてきた。そして何より……
『タウニー、大丈夫かい?』
「うはぁーー!!」
あの時の自分を見つめる顔が、格好良くてたまらない。何度も脳内で反芻しては、悶えていた。
「ねぇ、みんなもカッコいいって思わない?」
「わぎゃ!」「ちこ!」「ぷう!」
「ね〜、キョウヤってイケメンだと思ってたけど……えへへ」
タウニーの胸に、淡いトキメキが生まれた瞬間であった。
キョウヤ
貯金が好き。
タウニー
キョウヤにドキドキ。