今日から始まるミアレハーレム   作:三笠みくら

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クロワッサンカレーは何の味

 

 

「へえ……アンタも家出してきたんですか、親とそりが合わなかったんですか?」

 

「なんというか…親子関係が破綻してたっていう方が正しいかな、道具としてしか見られてなかった感じ」

 

 

エントランスで、僕はピュールと少し話をしていた。なんでも彼も家出してここにやってきたらしく、彼から声をかけてきたんだ。

 

 

「大変ですよね……子供にとっては親がすべてなのに、親にとってはそうじゃないことがあるなんて」

 

「全くだよね……でもキミの場合はおばあさんなんだろ?」

 

「そうですよ、あのクソババア……僕の裁縫道具を捨てたんですよ!?夢を否定するだけじゃなくて、道具まで!本当に許せません!」

 

「大切なものを捨てられたのか……僕はそういう方面には親が無関心だったからある意味ありがたいのかもな」

 

「それはそれで悲しいですね……そうだ、お近づきの印といえばなんですが」

 

 

そう言って、ピュールは何かステッカーを取り出してきた。黄色と青のツートンカラーが可愛い、何かのキャラかな?

 

 

「へぇ……かわいいね」

 

「でしょう?これは僕が推している配信者……カナリィさんのステッカーです。ラインギリギリの毒舌と純粋なゲームの腕前が人気なんです。布教も兼ねてどうぞ」

 

「ありがとう、大切にするよ」

 

 

それからしばらく時間を潰して、いつの間にか夜になった。スマホロトムに、無機質なボイスが響く。

 

 

『バトルゾーンが 展開されました』

 

 

「始まったね、ここらはZランク…1番低いランクのトレーナーの集まるところだから腕鳴らしには1番いいかも」

 

「そうだねえ。大丈夫だよキョウヤ、あたしたちがサポートするからねえ」

 

「サポート?バトルに何か秘訣でもあるのかい?」

 

「秘訣というか……ZAロワイヤルは不意打ちOKなんです」

 

「……不意打ち?」

 

 

何やら不穏な単語が聞こえたような。不意打ち……それってポケモンバトルとして大丈夫なのか?

 

 

「最強のトレーナーには戦略も必要!だから背後やよそを向いている隙を狙って攻撃するの!それが秘訣!」

 

「うーん、なんだか良心が痛む……」

 

「買ったら賞金がもらえるし、ランクが上がったらもらえる賞金も多くなるよ」

 

「よし、やろう」

 

「お金大好きじゃん……まあいいや、それじゃあキョウヤ、ファイト!」

 

 

意を決して、バトルゾーンの中に足を踏み入れた。なるほど、すぐにバトルができるようにトレーナーたちがポケモンを出しているのか。不意打ちが流行るわけだ。

 

 

「……よし、キルリア。あのマダツボミにサイケこうせん」

 

「るら!」

 

「あぁ、わたしのポケモン!」

 

 

不意打ちして賞金ゲット……字面が最悪だけど、ポイントも賞金も稼げるからやるに越した事はないのか。よし、どんどん不意打ちしていこう!

 

 

「キョウヤ、あの人見て」

 

「ん?警察官かい?警察もZAロワイヤルに参加するのか……」

 

「それもそうだけど!あの人…Xランクだよ、すごく強いの。格上だから挑まない方が……」

 

「キルリア、サイケこうせん」

 

「ちょ!?」

 

 

格上ならもらえる経験値も多いはず。それにまだピジョンってことはそんなにレベルも高くないはずだ。……流石に一撃じゃ倒せないだろうけど。

 

 

「おっと!やるねぇ、君!ピジョン、かぜおこし!」

 

「キルリア、テレポート!」

 

 

テレポートは遠い場所に一瞬で移動する技。だからポケモンによってはかかる負荷も大きいんだけど…こういう近距離なら負荷も低く連発できる。

 

 

「キルリア、サイケこうせん!」

 

「ピジョン!ああ、なんてこった……でもまだまだ!イワーク!」

 

「イワークか……それなら君の出番だよ、ワニノコ!」

 

「わぎゃ!」

 

 

イワークは大きく力強いポケモン…に見えるけど実は特防とかは低くて攻撃も高くはないからそんなに怖くなかったりする。

 

 

「ワニノコ、バブルこうせんをイワークの顔に向けて!」

 

「ああ……ふふ、君強いね。負けたよ」

 

「こちらこそ、経験値ありがとうございました」

 

「ちょっとキョウヤ!!」

 

「ん?なんだい、タウニー」

 

「なんだいじゃないし!なんで格上は危ないって言ったそばから行くの!」

 

「いやあ、レベルはそんなに離れてないからいけるかなって」

 

「だからってねえ……はあ、まったく。まあいいや、ポイントが貯まったからランクアップ戦!」

 

『ランクアップ戦の相手が決まりました 対戦相手:ザック Zランク』

 

「ザックさん……永遠のZですよね」

 

「なんだいそのかっこいいようで不名誉っぽい肩書きは…」

 

「お察しの通りですよ。何度もランクアップ戦をしているのに負けだらけでずっとZランク。だから永遠のZなんです」

 

「うーん、諦めが悪いんだね…」

 

 

それから僕はタウニーと一緒にザックさんのいる場所に歩いていった。タクシー乗り場に、彼はいた。

 

 

「あなたが私の対戦相手ですか……私、ザックには夢があります!」

 

「へえ、どんなですか?」

 

「ふふふ……Aランクになった暁には、ミアレシティの移動をタクシー限定にするのです!」

 

「純粋な悪!!」

 

「なんとでも言いなさい、さあ、バトルです!」

 

 

数分後

 

 

「ああ、負けてしまった……相手の勝利を見るのはこれで100回目……」

 

「やったねキョウヤ!圧勝じゃん!」

 

「うん、そうだね……あの人を勝たせてはいけないと思ったから……」

 

「今日はお祝いだね!あたしが腕によりをかけて料理作るから!」

 

「本当に?嬉しいな」

 

「まあ楽しみにしててよ!」

 

 

タウニーの料理か……タウニーって料理とか慣れてそうだし、期待できるな。人の作った料理なんて久々だな、アラタの作った焼きそばが恋しいよ。

 

 

「…………」

 

「はあ……いい匂い、タウニーの料理はいっつも食欲をそそるよねえ」

 

「キョウヤ…気持ちは分かりますよ」

 

 

今僕の目の前には、山盛りのカレーをクロワッサンで囲んだ何かがあった。何この……何??

 

 

「タウニー」

 

「何?」

 

「なんだいこれ」

 

「食べて」

 

「これが何かを聞いてるんだけど…」

 

「あたしの得意料理、カレーとカロス名物、クロワッサンを合わせたクロワッサンカレーだけど」

 

「…………」

 

「大丈夫だよお、タウニーの料理は美味しいから!」

 

「僕は認めてませんけどね」

 

「もう、ピュールったら。いつもちゃんと完食するくせに」

 

「それは僕の育ちがそうするんです。キョウヤ、無理はしなくていいですからね」

 

「キョウヤ」

 

「…………」

 

「食べて」

 

 

タウニーの笑顔には、とんでもないプレッシャーを感じる。しかしデウロが喜んで食べている以上、不味い訳ではないのだろう。ええい、ままよ!!

 

 

 

………そこからのことは覚えていない。唯一覚えているのは、次に目を覚ましたとき、やたらと疲れているということだけだった。

 




キョウヤ
守銭奴。お金と経験値が貯められるなら格上にだって挑む。

タウニー
クロワッサンカレー。食べて。


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