カタカタカタとキーボードを叩く音だけが部屋に響いていく
「よし、次」
「はいはい」
そう言われて指示された動きを行っていく
「う~~んシンクロ率も中々高い数値を維持できてるね。これなら植物状態の人の意識をVR空間に再現しても問題ないかも」
高校に上がったタイミングで父さんに誘われてVR研究の手伝いという名のバイトもとい治験をしている。
どうも、俺はVR適正と言われるものがとても高いらしい。参考までに黒鬼などのプロゲーマーがAランクだとするとSSSランクらしい。
「あ、そうだ。父さん、スマコン調整してほしくてさ」
「了解了解、そこ置いといて。どう調整する?」
「どうも微妙に反応鈍いっていうか、使ってる装備の出力を上げようとすると吹かしすぎたりつんめっちまうんだよな」「おっけ~調整しとくね」
その影響か、どうも普通のスマコンだと俺は反応が良すぎて考える前に行動がガチで起きてしまうらしくとても不便していたので実は特別製のスマコンを父さんが入学祝にくれた。
さて、父さんがスマコン調整してくれてる間に飯でも作っておくかね
「父さん、事務所のキッチン借りるね」
「いいよ~食材も最近高坂さんが買ってきてくれておいてたりするから好きに使っちゃって」
「はいはい」
高坂さん、父さんに料理作ってあげろよ。父さんのこと好きなのかと思ってるけど大人って色々あんのかね?
「ま、俺も人のこと言えないんだけどな」
なんか、空しくなっているとスマホから通知が鳴り出した
「かぐや?」
珍しいな、今日は彩葉と出掛けてるはず。さっきタワマンの写真送ってきて
『パパ、かぐやここに住みたい』などと舐めたこと送ってきたので
『宇宙人は賃貸契約出来ないんだよ?知らなかった?』と返したのが最後だったはず
「もしもし、どうしたかぐ『パパ!!!どうしよ!!彩葉が!!!彩葉が!!!』落ち着け、彩葉がどうしたんだ?」
『彩葉の体熱々で倒れちゃった!!』
「は?」
『パパどうしよ!!彩葉が死んじゃう!!助けて!!』
彩葉が死ぬ?
『零士』
あいつの笑顔も取り戻せないのにこんなところで
『零士』
俺はあいつにたくさんもらってばっかなのにまだ何も返せてないのに
『零士』
死なせたくない。死んでほしくない。
「かぐや。とりあえず近くの建物かお店に彩葉を連れて行って少し休ませてもらえ。おそらく熱中症だろうから水分と塩分。あと、俺がくるまで彩葉を絶対に動かすな」
『わ、分かった。』
「俺もすぐそっち行くから帰ったらエアコンつけて彩葉寝かせよう。確か、彩葉は今日バイトだったはずだから戻ったら髪と体格を幼くして彩葉の妹のふりしてバイト先に連絡しろ。」
『わ、分かった。……パパ、すぐ来る?』
「心配すんな、マッハで飛んでいくから」
「だからそんな心配そうな声出すな。だいたい、俺が彩葉のために動くことに嘘ついたことあるか?」
『ない!!!パパ、彩葉大好きすぎるもん!!』
一言余計だ!!
「わかったら、お願いしたこと出来るな?」
『任せて場所はGPSつけてるから大丈夫だよね』
「大丈夫だ」
まさか、かぐやの迷子防止でつけたものがこんな形で役に立つとは思わなかった
とりあえず、父さんに事情説明しないと
「父さん、彩葉が」
「倒れたんでしょ。車用意するから30秒で支度しな」
「あんがと、10秒で十分だよ」
最低限スマホと家の鍵さえあればっていうかそれしかもってきてない
「準備できたからお願い父さん」
「任せな、法定速度の向こう側を見せてやろう」
「頼む、警察のやっかいになった瞬間置いていくから」
「まあ、ひどい息子!!誰に似たのかしら!!そんなに彩葉ちゃんが大事なの?」
何言い出すんだこのバカ親父はしかも謎のオネエ口調だし
「んなもん、大事に決まってんだろ」
「パパ!!こっちこっち」
かぐやが零士を呼ぶ声が聞こえる。
「彩葉、パパ来たからもう大丈夫だよ」
返事する気力もない
「よし、かぐや彩葉を俺の背中に乗せろ」
「分かった」
かろうじて、零士におんぶされてることは分かった
「俺が死なせない。俺の命の代えても死なせないからな」
ちょっとふらついただけで大げさだな……でも、大きな背中だな。安心する。
『中途半端が一番あかん』
『弱みを見せたら、足元すぐすくわれて終いや』
『あんたにできるんか?』
『あんたなんかに出来るわけない』
お母さんにいままで言われてきたことが頭の中でリピートされる。
『彩葉、すっげえな!!』
『彩葉、これ見ろよ。かっこよくね?』
『くっそ~~~!!また朝にぃに負けた!!今度こそリベンジだ!!作戦会議しようぜ』
お母さんに言われた棘に負けないくらい眩しい記憶が私の脳裏をよぎる。
そうだ、一度私は零士に聞いたことがあった
「なあ、零士」
「ん?どした?」
「なんで零士は諦めへんの?お兄ちゃんに勝つこと」
私達とお兄ちゃんは7歳も離れていて運動も勉強もゲームも何一つ勝てないのに零士は常に本気でお兄ちゃんに挑戦しつづけていた。全部負けてたしそのたびに心底悔しそうにしていたのを不思議に思った。
「勝とうとしなきゃ勝てない」
「え?」
「前に父さんが教えてくれたんだ。」
「聖牙さんが?」
「うん、朝にぃに勝てなくて相談したんだけどさ」
『零士、勝とうとしないやつに勝ちは転がってこないぞ』
「ってさ、それが俺の中でビビッときてさ」
「そうなんだ。でも私には……」
そうだ、その頃の私はピアノで賞を目指すことが苦痛になっていたんだ
「大丈夫だよ。音楽は楽しんだもの勝ちだぜ。朝久おじさんも言ってたじゃん」
「お父さん」
「今は、ピアノ見るのも触るのもつらいかもしれないけどさ。彩葉が本当に音楽が好きならいつかまたやりたくなるよ」
「そうかな」
「そうだよ、彩葉は今まで腹いっぱいピアノしてたんだしちょとした食休みみたいなもんだよ」
「ピアノはごはんじゃないんだけど?」
「ま、まあ言葉の綾ってやつだ。そういうわけでさ、次の作戦に彩葉の力が必要なんだ手伝ってくれない?」
「え~~、まあいいけどさ」
「よっしゃ!んじゃ、作戦の内容だけどな」
そうだ、この時の作戦。今思い返しても歴代トップ3に入るくらいしょうもなかったな。
なんだよ、私がお兄ちゃんをくすぐってる間にコンボ決めるって結局失敗して二人まとめてくすぐり攻撃されたし。
目を覚ますと見知った天井だった
「………………ここは」
「彩葉、起きた?しんどい?」
「平気、バイト行かなきゃ」
「行かせるわけないだろバカかお前は」
「彩葉、バイト休む連絡したから!!もう休んで!!」
そう言われてスマホを開くとバイト先に体調不良で休む連絡がされていた。妹ってかぐやのことか
言われてみれば髪の色が金じゃない。背も少し小さくなってる?
「ありがと、かぐや」
「彩葉、病院行こう。」
「………お金ないし、それにそんなたくさん休めない」
それに
「休んじゃったら、もう取り戻せないかも。そうなったら奨学金も出ないし何より」
お母さんに認めてもらうなんて出来ない
「なんで彩葉はそんなに頑張らなきゃいけないの?」
「彩葉!!死なないで~~!!!」
「お、大げさだな。人はそう簡単に死なないよ」
「だって映画とかだと人ってすぐ死ぬじゃん!!」
「彩葉死んじゃやだ~~~!!!」
「私は死なないからもう泣きやみなさいよ」
とりあえず、宥めてみるが全然泣き止まない。こういう時、零士なら『彩葉は死なないからもう泣きやめ』とかいいそうなのにさっきから黙ってて何も話そうとしてくれない
とりあえず、泣き止んだかぐやに私と零士の事情を説明した。
「それで、生活費と学費は自力で稼いで。零士の家庭教師をするのが家を出る条件だったの」
「えらい簡単に言ってるけど普通そんなことしてなくない?」
「お母さんも同じくらいの時に似たようなことしてたし。それに私も譲らなかったし」
まあ、叔父さんの面倒を見てたか幼馴染兼初恋の相手ってだいぶ違うとは思うけど。
そう思うとなんで零士ってお母さんに謎に気に居られてるんだろ?そういうフェロモンでも出てるのかな?
「この家に来て最初の朝をよく覚えてる。私の力で生きていくんだって思ってた」
『ラッキー』とさえ思ってた。まあ、結局一人で生きようとした私の隣に零士が居たんだけどね
「お母さん激ヤバおかしくない?変だよ変!!」
「かぐやには………」
『アンタにはまだ分からん』
お母さんにそう言われたときにショックだったことを思い出して言うのをやめた
「いや、何でもない。」
不思議そうな顔をしていたがどうもキッチンで料理をしていたらしくグツグツと音がしたのが聞こえたかぐやがキッチンに戻っていった。
「………………彩葉」
「………………零士」
私とかぐやが話していた間、ずっと黙ってた零士から怒りのオーラを感じる。絶対怒ってる。
「………………無事でよかった」
「え?」
完全に怒られると思ってた私は思わず気の抜けた声が出てしまった。
「怒ってないの?」
「怒ってる。」
やっぱ怒ってた
「でもそれはお前にじゃない。俺自身にだ」
「な、なんで?」
無茶したのも体調管理が出来なかったのも私なのにどうして零士が自分を責めるのだろう
「俺がもっとしっかりしてれば彩葉がこんなになることを防げてたんじゃないかって」
「もしも彩葉が死んだらどうしようって」
「もしも、彩葉が二度と目を覚まさなかったらってずっとずっと怖かった」
零士がこんなに私に弱音を吐くなんてこれで2度目だ
「彩葉がもしも死んでしまったら俺は……」
「なんで………」
なんで零士はそこまで
「なんで零士はそこまで私を気にかけてくれるの……」
ただの幼馴染なのに、もしもあの約束が貴方を縛ってるのなら私は解放してあげたい
「なんでってそら、俺はお前のこと子供の頃からずっとす「彩葉、ごはん出来たよ!!ネギみそショウガと卵おじや。あつあつだからフーフーしてね」……飯食えそうか?」
なんか、凄いいいところで邪魔された感が否めないが美味しそうなにおいにお腹が栄養を求めだした。
「ちょー美味しい」
率直な感想を伝えると
「ドヤァ!!」
凄い嬉しそうに零士に対してどや顔してた。
食べ終わった食器をかぐやが片付けてる間に聞きたいことを聞いておこうと思った。
「ねえ、零士。さっき何言おうとしてたの?」
「………………お前が元気になったら言ってやるよ//」
「気になるんだけど」
「気になるならさっさと寝ろ。今日明日は大人しくしてれば回復するだろうから」
凄く気になって寝れないとは言えない
「じゃあさ、いっこお願いきいてもらっていい?」
「俺ができることなら」
「眠るまででいいから手つないでほしいの」
「分かった、ほら」
そういって優しく手を差し出してくれた。
「ありがと、零士」
「いいから、さっさと寝ろ」
「うん」
零士の温もりを感じるといい夢が見れそうな気がする。
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できたもんからさっさと寄越せ!
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お前の好きにしたらええんやで