その次の日から学校を休んだ。何もする気が起きなかった。そんなことは言い訳でしかなかった。
酒寄の顔を見ると、かぐやの声を聴くと、
誰からの連絡も出なかった。酒寄、かぐやの二人だけでなく。稲葉、諌山、綾紬とこの一か月で仲良くなった人からの連絡はすべて無視した。ツクヨミにもログインしなかった。ログインしたら誰かに会いそうな気もしていたし、自分勝手な都合で連絡を無視していることにも罪悪感があった。そして何より…『もし、ヤチヨカップで負けていたらいつも通りの日常がまだあったのかもしれない』という
「…なんか、食いものでも買いに行くか…」
部屋には、閉じこもっていた間に食べていたカップラーメンの山が出来上がっていた。
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ここ数日、伊織君が学校に来ていない。連絡しても返信がない。稲葉君に話を聞いても
「僕のほうでも連絡はしているが、あいにくと音信不通でね。正直、酒寄さんが連絡取れない時点で僕でも難しいんじゃないかな?彼、意外と一途だから」
連絡は取れていない様子だった。
他の人に聞いても誰一人として連絡が取れていない様子だった。というより連絡先を知っているのが、稲葉君以外は真実と芦花しかいなかった。
かぐやも、なんだかんだで慕っていた相手からの連絡が取れないからか、配信にキレがないような気がしている。
かくいう、私自身もあまり勉強に力が入らなかった。
「あ、ケアレスミス…」
普段はしないような、ミスをしてしまい消しゴムで間違いを消していく。
「集中しなくちゃ…あ」ビリィ
消しゴムをこする力が強すぎたのかノートの一部が破れてしまった。
頬に冷たい何かが流れ出した。
「伊織君…会いたいな…」ポロポロ
父を失ったときや兄が家を出た時とは違う涙が自身からあふれて止まらなかった。
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「こんなところで何してるんだろうな…」
食べ物を買いに行ったはずが気が付いたら近くのコンビニではなくかぐや達が住むマンションの前に来ていた。自分の気持ちも嫌な感情も何もかもを整理することもふたをし続けることもできず逃げている自分の姿を見たら、かぐやと酒寄はどう思うんだろう…本当はわかってる。笑顔で迎えてくれることを魂では理解しているがその温かさを、氷よりも冷たい感情を抱えている自分がそれに甘えていいわけがない…
「…帰るか」
家路に着こうと振り返った瞬間に、マンションから一人でてきた。
「え!伊織!!」
その人物は
「…!!」バッ
「あ!待って!!」
こちらを呼び止めるかぐやの声が聞こえたが構わずに駆け出してしまった、かぐやを拒絶するような行動にまた自己嫌悪に落ちていく。目が合った瞬間の驚きと悲しみが混ざったようなかぐやの表情を見た瞬間に理解してしまった。自身の
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「結局、逃げてしまったな…本当は、謝りたいことがたくさんあったはずなのに…」
そう思いながら公園で黄昏ている予想外の人物が現れた
「よう、こんなところで何してんだ?」
は?なんでこんなところにいるんだ…
「師匠!?」
「おう、久しぶりだなレイジ。なんか辛気臭い顔してんなぁ女の子にでも振られたか?」
「そんなんじゃないわ!!」
久しぶりに会っての第一声がこれとは何て残念なおっさんなんだ…
「なんだ、元気じゃねえか。どうした?俺でよければ話を聞くぞ」
「別に…」
誰かに聞いてもらったところで解決するものじゃないと言おうとしたその時
「それとも?この子に聞いてもらったほうがいいか?」
「…伊織」
「か、かぐや…」
師匠の裏からかぐやが現れた
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「……」
き、気まずい、ここしばらく避けてたし何ならさっき逃げたから余計に気まずい。そう思っていると
「…伊織、かぐや達の事嫌いになった?」
「そんなことない!あ、悪いデカい声出して…」
嫌いかだって?そんなことは天地がひっくり返っても絶対にありえない!ただ、かぐや達と出会ってからの日々が眩しすぎて大切すぎるあまり、新しい旅立ちを受け入れることが出来なくて子供のような癇癪を起している俺が悪いんだ…
「…ううん、その返事が聞けただけでうれしい。」
「そうか…こんなこと聞いてもいいかわからないけどさ、なんで師匠と一緒にいたの?」
「いやー、伊織を追いかけていたらぶつかっちゃって…んで伊織を見てないかって写真見せたら探すの手伝ってくれた!」
「いやー、にしてもレイジにこんなに可愛い知り合いがいたとは知らなかったぜ。しかもヤチヨカップ優勝したライバーのかぐやとは。どこで知り合ったんだよこいつぅ!」
「ニヤニヤすんな!師匠こそ何しに来たんだよ!今ロンドンって言ってなかったか?」
「うーん、俺のことを話してもいいが…」チラッ
なんだ?誰かいるのか?
「い、伊織君…ハアハア」
酒寄…なんで…ここに…
「お前の話が終わってからだ」
こ、こいつ!最初から嵌めやがった!!
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「「「……」」」
先ほどとはくらべものにならないくらいの沈黙が部屋を満たしていく
「「あの!…あ、どうぞ」」
「あー、こんなこと聞いてもいいのかわからないけど…みんな元気か?」
「うん、真実と稲葉くんは割と相変わらずだし芦花も元気だよ。でも、みんな伊織君の事心配してた。」
そうか…後でみんなにも謝らないとな…
「伊織君は、ここ数日どうしてたの?」
「俺は…」
可能な限り話した、何もする気が起きずに死んだような生活であったこと、無意識に酒寄達のマンションの近くに来ていたこと。そこでばったりかぐやと会って思わず逃げてしまったこと
「ほんとにごめんな、かぐや…顔見た瞬間に逃げるようなことして…」
「ううん、大丈夫。久しぶりに伊織の顔見れてうれしかったし噂に聞いてたお師匠さんにも会えたし」
「確かに、武術の師匠って言ってたよね?何の仕事してる人なの?」
師匠が何者かって?それは…
「実は、よくわからないんだよね。本人曰く、冒険家らしいけど」
「「へ?」」
そう、過去に数回ほど仕事について尋ねたことがあるが『異世界の研究』やら『タケノコ探してる』やらと本当か嘘か絶妙にわかりにくい回答しかしてこないのである極めつけは
「『俺はショッ●ーに改造された改造人間だ』って、それ言われてからどうでもよくなった」
「何それ…変人じゃん…」
「かぐやは宇宙人だけどね!」
そう返すかぐやの発言に思わず三人とも
「「「…っぷ、はははははは」」」
数日ぶりに全員が心の底から笑顔になっていた、それと同時に流れた光に気が付かないくらいに
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「…ねえ話して、伊織君が…ううん、零士がなんで私たちを避けていたのかを…どんなことでも受け入れるから」
「そうだよれーじ!どんなもんでもバッチこいだよ!実は宇宙人だったとかでも!」
「……俺は、あの日この部屋に戻ってきたときに『寂しい』って思ったんだ。かぐやがいて、彩葉がいて、俺がいて…くだらないことで笑ったり、みんなでご飯食べたり、しょうもないことで揉めたり…そのどれもが眩しい日々だった…最初はほんとに寂しいだけだった…心に穴が開いたような、心臓をえぐられるような気持だった…」
「うん…大丈夫だよ、全部受け入れるよ…」
「でも…ふとした時に思ってしまった…『もし、ヤチヨカップで負けていたらいつも通りの日常がまだあったのかもしれない』って…かぐやも彩葉も本気で優勝を目指してたし、それをできる限り手伝ったくせに…いざ叶ったら叶わないほうがよかったなんて感情が心の片隅に現れたのが…二人に対する冒涜でしかないのに…」
「零士(れーじ)…」
あれ?おかしいな…なんで涙が…こんなこと考えてた俺に泣く資格なんてないのに…
「グスッ、俺は、最低だ。二人のおかげで最高の日々を過ごせたのに…二人の頑張りを踏みにじるような考えを持った俺を俺自身が一番許せない」
だからこそ……
「俺は、二人の前から消えるべきなんじゃないかと思った…」
「「!!」」
驚くよな、急にこんなこと言われたって…困るよな…
「さっきも言ったけど、二人の頑張りを踏みにじってしまうような思いが、感情があるのが許せない。空っぽの心に寂しいって気持ち以外の黒い感情が、楽しかった思い出を塗りつぶすように浸食してくる…」
まるで完成した絵を塗りつぶすかのように…
「そんな気持ちがあるやつが二人の前に居ても迷惑なだけだ…コラボライブさえ終われば、この感情は消えてくれると信じて、ライブが終わるまでは二人の前に現れないようにしよう、ライブが終わったら『おつかれ』って声かけて、『ごめん』って謝りたかった…」
消えるわけないのに、この感情が消えることは絶対にあり得ないことをわかっているからこそ
「俺は、二人に謝りたかったんだ…こんな醜い感情を抱えてごめんって…いたずらに傷をつけて自分勝手の都合で避けるような真似してごめんって。」
こんな俺と仲良くしてくれてありがとうって…
「謝りたかったんだ…」
くっそ、止まれ!止まってくれよ!
「「零士(れーじ)!」」ダキッ
なんで、二人は
「かぐやは、れーじが色々教えてくれたおかげで、手伝ってくれたおかげで!頑張れたんだよ!かぐや一人じゃぜったいに上手くいってなかった!それだけはだれが何と言おうと関係ない!」
かぐや…
「私は、零士のおかげでお兄ちゃんと話せた。兄妹喧嘩もできた…そういえば、あの日のお礼が言えてなかったね」
お礼?何かしただろうか…身に覚えがない、なんのことだろうか
「お兄ちゃんに聞いたの、私と連絡を取らないことが家を出る条件だってそれを聞いた零士が『ぼこぼこにして彩葉に謝らせてやる』って本気で怒ってたって聞いた。うれしかった、だからありがとう」
「それは…」
確かに、KASSENの時に帝に聞いた話であった。しかし
「ぼこぼこってわけにはいかなかったけどな、全部勝つつもりだったし。」
「ううん、実はあの後、お兄ちゃん、私に謝ってきたの。『ごめん』ってだから約束果たしてくれてありがとう」
彩葉…
「俺は…二人とまた…三人で…笑っていいのか…」
「「もちろん」」
「そうか…本当にごめんな…」グイッ!
そう謝ると二人が急に頬が引っ張った
「にゃにすんだよ(何すんだよ)」
「「こういう時は、
二人はそう言って、ピースをこちらに出してきた
ああ…そうか…そうだったな…
「ありがとう、かぐや、彩葉」
3人で
「「「っふ、ははははは」」」
仲良く
この時の伊織君は、自責の念でメンタル超無理限界になりすぎて2つお願いを聞いてくれることになっているのを忘れています。つまり、ヤチヨカップで仮に負けていても対戦に勝利した報酬で保証人になってもらうことも可能だったというわけさ!
書いてて疲れた。メンタル的に…まさかの4000オーバー、もう一話書く予定だったけど元気でねえ
零士の師匠のイメージはイタリアの伊達男です。ウイングガンダム的なあれ
完結ではないよ!!安心してね!