『月の世界に行く方法 著:伊織聖牙』
ある日、私の前に「かぐや」と名乗るウミウシと出会った。本人曰くただの偶然だそうだが私はそうは思えず、話を伺ってみることにした。
彼女は恐る恐る、自身の願いを話してくれた、彼女の願いは『「彩葉」という女性に会いたい。』という事らしい。
ウミウシ越しではあるが、彼女の願いがとても純粋な物であったため私は協力を申し出た。
最初は困惑していた様子だったが、やはり人手は必要なようで快い返事がいただけた。
かぐやに協力する傍ら、わたしは『もと光る竹』の修理ができないかと調査を開始した。
流石に現代でもオーバーテクノロジーなそれを解析するには一筋縄ではいかず、困惑した。
かぐやにも話を聞き分かったことは、『擬態』の機能にエラーが生じた結果今のウミウシの姿になったことくらいのものであった。
そこで私はアプローチを変えようと思った。少々強引かもしれないが、かぐやが居たという『月の世界』にこちらから赴き『もと光る竹』の修理について、月の住人(以下月人)に直接聞けないかと考えた。
だが、かぐやの話を考えると既存の月面に行く方法とは根本的に違う可能性が高かった。
そこで私は、自身の意識をデータ化できないかと研究を始めた。月の世界がプログラムで構成されたような世界だという事であれば意識をデータ化させることで月人と近い存在になることが可能ではないかと想定した。
そのために、【Luna.link.system】通称LLSの開発を開始した。
基礎のシステムは完成した。意識のデータ化も順調とは言い難いが進んではいた。だが、月とのリンクは中々上手くいかなかった。私はそこから一年かけて集めれるだけデータを集めた。
その結果、判明したことが二つある。
一つ目は、満月の夜だけ月と地球の時間がリンクしていること。
二つ目は、仮に意識のデータ化に成功した場合は元の肉体に戻れない可能性が高いこと。
時間のリンクについては朗報でしかなかったが、元の肉体に戻れない可能性があるのはリスクでしかなかった。
そこで私は三度アプローチを変えた。意識のデータ化を行うのは私の想像よりも危険なものだと判断したため、意識からデータを作るのではなくデータから意識を作れないかと考えた。
つまり、月人を人工的に作れないかの研究を開始した。
LLSの基礎システムと現段階で解析できている『もと光る竹』のデータを統合することで第一号が誕生した名前を『零士』と名付けた。日付が変わる瞬間に誕生したからと安直な名前を付けた。
だが、望むような結果ではなかった。かぐやの話では『擬態』の場合は超高速ともいえる成長速度で成長して2~3日でほぼ成人できるという事だったが、零士はほとんど普通の赤ん坊と変わらない成長速度であった。
零士の存在は、かぐやには隠す必要があった。私のやっていることは下手すると月に対する侵略行為に他ならないからだ。
そこで、零士を私の古くからの知り合いであるレオル・フェ二ーチェに預けた。彼にもこちらの事情を全て説明し零士の生態データを逐一連絡してくれることになった。そのデータを精査していくとある一つの事実にたどり着いた
『伊織零士がLLSを使うと月の世界に一時的に行ける』ことが判明した。
根拠は大きく分けて二つ
一つ目は、零士がアシムレイトを発現させていたから。恐らく無意識に発動しているそれは意識のデータ化に他ならないからだ。
二つ目は、零士が疑似的とはいえ月人に最も近いからだと考える。
しかし条件はあるそれはアシムレイトが制御可能な状態であること、そして月と地球をつなげる特別な何かが必要なことこの二つだ
一つ目については、レオルが何とかすると言っていたので信用するしかない。
二つ目については、かぐやがいつも歌っている歌がカギになるはず。
更にデメリットもある。仮に月の世界でダメージを受けた場合、それは従来のアシムレイトの比にならないダメージを受ける。もはや生身で行くのと同義なので軽減できない問題だ。
もう一つは、仮に滞在できたとしてもこちらの時間で1時間が限界なこと。
シュミレーションの結果だが、1時間をすぎると月と地球の回路が閉じて帰ることも行くこともできなくなる。
本当は私が生きているうちに完璧なLLSを完成させてあげたかったが、それも難しそうだ。
人工的に生命を生み出した代償か、私は不治の病に侵されてしまった。
LLSについては、レオルに託すほかなかった。かぐやの協力についてもこの研究の過程で取った特許でサーバールームの維持費は賄えそうだ。
最後に息子の零士にこの言葉を贈る『愛している』
レポートなんて書いたことほとんどないからこれであっているか分からん。