大変急ではございますが、最後まで本小説を読んでいただき、本当にありがとうございました。
───作者代理『審査員』
今になって、昔のことを思い出していた。
死神からも、天使からも………そこに住まう全てから否定され続け、拒絶され続けてきた。そんな儂を、あやつは─────エニシは、自身の身分なども考えずに、他の誰かと変わらぬように接してくれた。
儂のせいで、あやつまで迫害されかけた。なのに、儂の目に映るエニシはずっと笑顔だった。それどころか、迫害してきた奴にいきなり生成したてのロケットランチャーをぶっ放すことまであった。あの時は流石にちょっと引いたがの………。
じゃが、エニシが隣にいる日々は、それまでの苦痛を忘れるほどに楽しく、温かく、なにより面白かった。エニシの行動はどれも突拍子ないし、奇天烈じゃし、おまけに自分のことを全く考えておらんかった。儂が思わず世話を焼いてしまうほどには、な。
やがて、儂とエニシを中心としたグループのようなものができた。その中では差別・区別なんて存在せず、誰もが手を取り合える仲良し集団じゃった。
………ずっと、あのままでいられたら、どんなに幸せだったことじゃろうな。
あれから、何度も違う世界に唐突に飛ばされてきた。最初は「もしかしたら、またエニシに会えるのかもしれない」と思っていた。じゃが、すぐにもう会わないと決めた。
そりゃ改めて考えれば、儂らは確かに一度死んでおる。たとえ会えたとしても、其奴は本当に儂の知るエニシなのか、不安になってしまったのじゃ。
もしそうなってしまえば………儂はどうにかなってしまうだろう、と。
じゃが、儂はいつの間にか忘れておった。
儂のせいで、エニシがもっと傷ついてしまうことを。
出会わなければよかった。
今になって、そう思う。
貴方と出会ったりしなければ───
───貴方が、こんなに苦しむことはなかったのに。
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「………ぅ、くっ………!」
墜落した輸送機の残骸が、辺りを炎で包む中、意識を失っていたクリムは、頭を打ちつけた鈍痛に耐えながら起き上がる。
周りを見渡すと、どうやら天之国の城下町近くの山に墜ちたのか、同じく炎に包まれた城下町が見える。
─────そして、翼のようなものを背部に展開し、町を攻撃し続けるガンゲットらしき姿も見えた。
『クリム、大丈夫!?』
後方から聞こえてきたスラスターの噴射音にクリムが振り向くと、緑色の本体装甲の上から黒地に金アクセントが入った増加装甲を装着し、背部に手のような形をした一対の翼を装備したガンゲット─────ガンゲット・イヴ[アドバンスド・アウスラ]低演算形態が、クリムの傍に降り立った。
「イヴ、そっちも無事そうでよかった………。それよりも───」
『うん、クリムの予想は多分合ってるよ。鹵獲したガンゲット・ネーティルの盾5つが急に格納庫から飛んでったのが見えた』
「───やはり、一手先んじられたか」
乱れた髪を手で直しながら、クリムは苦虫を噛み潰したようような顔をする。が、彼の心からはまだ光は消えておらず、むしろ力強く燃えたぎっていた。
彼が前世から受け継いできた特徴である緑色に輝く翼とヘイローを展開、イヴのコックピットへ文字通り飛び乗る。
「急ぐよ、イヴ!」
彼はガンゲット・イヴを通常演算へ移行させ、スラスターを全開にして、未だ燃え盛る城下町へと急ぐ。
(あとは、アレ………いや、彼?まぁアレでいいか………の、仕掛けが上手くいけばいいんだけど─────っ!)
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最早、原型を留めぬ程に壊滅した、天之国の城下町。
町の建物は全て炎によって燃えカス同然となり、港も徹底的に破壊され、丘の上の城に至っては、既に見る影もなく華やかさを失っていた。
最早、一切の命の息吹を感じられない。
天之国は─────死んだ。
そして、それを宙に浮いて眺めているのは、ガンゲット・ネーティル。しかし、その様子は前回の暴走とは比にならないほどの異質さを放っていた。
双尾連盾を新たに5つ装備し、背部に翼のように3対が浮遊している。そして、狐の面を模した頭部装甲とアイカメラは、紫色に輝いていた。
『ふむ………六基でもこれ程とはな。私自らが生み出しておいたものとは言え、末恐ろしいものだな』
そんなガンゲット・ネーティルのコックピットの中で、エニシ………否、BSSによって肉体を支配した死災因が、どこか他人事のように呟く。
死災因によるBSSを発症するには、その者が強力な力を保持している事と、強大な願いを抱いている事が必要である。エニシは2つとも満たしていたが、ネーティルや国民達のおかげで発症せずに済んでいた。
だが、自身の手で実父を殺害してしまった事が精神的なトリガーとなり、BSSを発症するに至ってしまった。
「貴様ぁ………エニシの体でこんな事をしておいて、無事に済むと思うでないぞぉ!!!」
ガンゲットの制御権を完全に奪われたネーティルは、自身の相棒の体を操り、非道を働く死災因に対し、己の無力さに涙を流しながら、ただ憤慨することしかできない。
『愚かな。貴様の存在のせいで、この者たちは傷付いた。貴様という存在がいなければ、この者たちは観測させることなく、ただ平穏に暮らせたというのに。』
「っあ、ぁ─────」
自身が思っていた現実を、躊躇いなく他人に突きつけられ、ネーティルは何も言えなくなる。最早、彼女の精神は限界寸前だった。
『さて、これでこの物語は原作に干渉せず、将の知らぬ所で終わりを迎える。
─────ではそろそろ、物語の幕を引こう』
そう言った死災因は、エニシが肌見放さず持っていた刀───今となっては、親からの形見となってしまったものだ───を引き抜き、その刃をエニシの喉元に近づける。
「ま、て………まさか」
『これで、この忌々しい二次創作も─────』
そして、刀を首につけ─────
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!」
『─────幕引きだ』
エニシの体は、赤く─────
ネーティルの顔は、絶望に─────染まった。
今ここに、生まれることすら烏滸がましかった一つの二次創作が、誰の目に留まることなく、幕を下ろした。