護守天聖ガンゲット 異伝 〈アマツノソウコウ〉   作:毒撒

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どうも、ちゃんと晴らしてくれる曇らせは大好物な毒撒です。

さーて、曇らせるぞォ(白目)


第七章 妖狐顕現

 それから、丸一日が経った。天之国の復興はかなり進み、既にいつも通りの日常が戻りつつあった。

 

「いい眺めだろ。俺のおすすめスポットだ」

 

「おぉ………確かにいい眺めじゃ!」

 

 仕事も粗方片付き、暇になったエニシは昨日からずっと気の沈んでいるネーティルをゴリ押しで城から引っ張り出し、三日前に妖狐狩りを決意したあの櫓の上へと連れてきていた。潮風が頬を撫で、活気の戻ってきた町並みを眺め、ネーティルは少しだけ明るい表情へと戻る。

 

「どうだ、ずっと部屋にいるより、こうしてた方がすっきりするだろ」

 

「………すまんな、心配をかけて」

 

「気にすんなって。言っただろ、お互い様だって」

 

「─────そうじゃな」

 

 エニシの優しい言葉に、ネーティルは何処か寂しげな笑みを浮かべる。当のエニシもそれには気づいていたが、彼女に気を遣ってか、そこを訪ねることはしなかった。

 

 お互い景色を眺めながら、しばし無言の時が過ぎる。そしてそれを破ったのは、ネーティルの静かな問いだった。

 

「………なぁ、エニシ。一つ聞いても良いかの?」

 

「お?どうした?」

 

 

 

 

 

「お主は、輪廻転生、というものを信じるかの………?」

 

 

 どくん、とエニシの心臓が一段と脈打つ。縋るように絞り出された彼女の問いを聞き、エニシは2つの感覚を覚えた。

 

 

─────まず一つは、純粋な疑問。そのような事は今まで何も考えてこなかった為、急にそんな事を聞かれ、エニシは戸惑う。

 

─────もう一つは、謎の不快感。まるで、それについて考えることを阻まれているような、喉元まで出かかっているものが、何かに突っかかって出てこないような、何とも言えない気持ちがエニシの心を支配せんと広がっていく。

 

 自分はどう答えるべきなのか、何を言うべきか、彼女になんと伝えるべきなのか。その答えを知っている筈であるのに、エニシにはそれが何なのかが分からない。まるで、自身の胸の中に手を突っ込まれ、かき回されるような気持ち悪さに、彼は冷や汗をかく。

 

「ネーティル………それ、は、どういう─────」

 

 とうとうエニシは耐えきれず、ネーティルに質問の意図を尋ねる。

 

 

 

 

 しかし、城下町から突然聞こえてきた爆発音に、質問は途中で遮られる。

 

「何じゃ!?」

 

 

 見ると、町の外れから大きな炎が立ち昇り、辺りの町民が逃げ惑っている。そして、その中心にいるのは、二日前の夜、この町を襲った、武士を模した巨大な黒き機巧。

 

「あの時の奴か!?」

 

 GG-040ガンゲット・ジェネラル。一度城下町を焼き滅ぼしかけたその機体が、僅か二日ほどの間隔で再び奇襲を敢行してきた。

 

 しかし、冷徹に町を破壊し、人々を蹂躙せんと暴れていた前回とは違い、今回はまるで藻掻き苦しんでいるかのように、我武者羅に槍を振り回している。

 

「また性懲りもなく………ッ!行くぞネーティル、ガンゲットで迎え撃つ!!」

 

「言われなくとも分かっとる!」

 

 二人はすぐに櫓から飛び降り、城の中庭に停めたガンゲット・ネーティルへと急いだ。

 

 

 

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

 

 町を破壊され、民が逃げ惑う光景を、1週間と経たずに2度も見ると誰が思っただろうか。

 

 幸い、前回と比べて、エニシが最初から国にいた事と、ガンゲットにすぐ搭乗したことも相まって、町への被害は少なめの状態で、2機の交戦が始まった。

 

「おぉぉぉぉォォォォォォォォォッッッ!!!」

 

 ガンゲット・ネーティルのビームソードと、ジェネラルの崩我雷槍の刃がぶつかり合い、辺りに火花を飛び散らせる。お互いのコンディションは良好、殆ど互角の鍔迫り合いがしばし続いた後、お互いにバックステップで後ろへ飛び退き、獲物を構えたまま睨み合う。

 

「こいつ………この間より強くなってるのか!?」

 

「敵もなりふり構ってる場合じゃないのじゃろうな。こちらも油断せずにゆくぞ。………それと、くれぐれも─────」

 

「一人で突っ走るな、だろ?分かってる。一緒に立ち向かってやろうぜ!!」

 

「………っ、あぁ、任せるのじゃ!」

 

(例え、別人同然であろうと、儂は、エニシとなら………!)

 

 

 ガンゲット・ネーティルの瞳がより一層輝きを増し、出力がどんどん上昇してゆく。既にその出力は高演算発動ギリギリまで高められており、若干だが機体は仄かに緑色のオーラに包まれている。まるで、永い間共にあったかのように、二人のTエメラルドは同調し、その純度を高め合っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふむ………やはり事前審査には限界があるか。となれば、この代理は用済みだ』

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、ジェネラルはもがき苦しむような挙動をしながら、機体の形を変えてゆく。各部の装甲がスライドし、より鋭いフォルムへと変わってゆく。雷のような一対のブレードアンテナは、裏側が上を向くようにスライドし、二対のアンテナとなる。そして、マスク部の装甲が溶けるように分割され、クラッシャーが展開される。

 

 高演算─────それは、乗る者を死に至らしめるほどの力を与えるリミッター解除形態。まるで、死を受け入れるかのように、ジェネラルは躊躇いなくこの機能を発動した。

 

 

「高演算………っ!?あやつ、死ぬ気か!?」

 

「あれは、あの時の俺と同じ………いや、逆なのか─────ッ!?」

 

 

 驚く間もなく、ジェネラルはガンゲット・ネーティルへと飛びかかり、槍先を喉元に突き刺そうと迫る。

 

「ッ、クソッ!!!」

 

 

 エニシは覚悟を決めた(諦めた)ように叫び、迫り来る槍を横からビームソードを叩きつけることで軌道をずらす。槍は空を切り、そのまま勢いよく地面に突き刺さる。

 

 

 

 

 そして、エニシは左腕を目一杯後ろに引き─────

 

 

 

 

 

 

「だあぁぁぁぁァァァァァァァァァッッッ!!!」

 

 

 

 

─────装備していた双尾連盾の先端を、ジェネラルの頭部の真下、首関節部へ勢いよく突き刺した。

 

 

 すぐ上にある頭部も、勢いをつけたことにより大きくひしゃげ、ジェネラルのカメラアイから光が消え、脱力したように崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

「………え、えにし─────」

 

「悪い、嫌なもの見せたな」

 

 

 エニシは、普段と変わらないはずの声で、ネーティルに話しかける。しかし、その声は僅かだが震え、悲しみが交じったものだった。自身が想い、慕う青年が、目の前でコックピットを潰し(人を殺し)、ネーティルは声すら出せないほど狼狽える。

 

(儂は、また………どれだけエニシに背負わせれば、気が済むのじゃ………っ!!)

 

 ネーティルが自身の不甲斐なさに、血が滲むほどに両手を握り目に涙を浮かべる。

 

 

 

 

 

「………厄、災は………すぐ、そこまで………迫って、きている」

 

 

 

「………え」

 

 

 

不意に、接触回線で誰かの声が聞こえてくる。

 

 

 

低い男の声だ。

 

 

 

 

先ほどまで戦っていた、ジェネラルに乗る男の声。

 

 

 

 

 

そして、エニシのよく知っている声

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや、じ………?」

 

 

 

 

 

 

 

「守りたい、モノを………守れ、むす、こ、よ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、エニシはモニター越しに見てしまった。

 

 

 

 ひしゃげたジェネラルのコックピットハッチの隙間から、機械によって体を押しつぶされた父親の姿を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、ァ…………ッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッッッッアアアァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

エニシの叫びと共に、ガンゲット・ネーティルは突如、眩い光を放つ。

 

 

 

 

 

彼の悲しみを糧に、妖狐は顕現する

 




次回予告

第八章 妖狐蹂躙
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