そっくりさんノ牢屋敷生活   作:蒼天 極

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そっくりさんの目覚め

「……んぁ?」

 

 目を開けると知らない天井。

 辺りを見回すとそこは、薄暗く家具がほとんどない空間。

 視界の端には鉄格子が見える。どうやらここは監房か何かのようだ。

 

 …………。

 

「……ぁ。め、目が覚めましたか……?」

 

「……二度寝しよ」

 

「ふぇ……!?」

 

 中途半端に起きてしまってまだ眠い。それにこれが変な夢の可能性もある。

 ならば寝てもう一度目が覚めたら、ちゃんといつものベッドで起きられるかもしれない。

 

 と言うことでおやすみ〜……

 

 

「ねえ! ここどこなのかな!?」

 

「こんなところに閉じ込めるだなんて、何を考えていますの!?」

 

「少女監禁とか、犯罪だよこれ! 人生終わっちゃうよ!?」

 

「ぶっ殺すぞ! ざけんな! こっから出せっ!! おい!!!!」

 

 

「うるせぇええええっ!!」

 

「ひゃあぁ!?」

 

 うるせぇよ、寝られねぇじゃねえかコラァッ!!

 拉致られて戸惑うのは分かるけど、まだ寝足りない奴もいるんだからもう少し静かにしやがれってんだ!!

 

 オレがテメェらぶち殺したろか! アァンッ!?

 

 ……あぁ、ダメだ。完全に目が覚めた。

 意識がハッキリしたから分かる。この状況、夢ではないようだ。

 ……てか、そもそも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……。

 

「ぅ、うるさくしてごめんなさい……ほんとに、ごめんなさいぃ……」

 

「ん?」

 

 二度寝という現実逃避が出来ずため息を吐いていると、薄い小麦色の髪をした少女が涙目でペコペコと頭を下げてくる。

 ……どうやらこの監房、一人部屋ではなく同室の子がいたようだ。

 

「いや、他の房の人達がうるさかったからキレただけで、君に対して怒ったわけじゃないよ。

 こちらこそ急に怒鳴り散らして申し訳ない。

 えっと……キミは?」

 

「い、いえ……そ、それなら良かったです……。

 あ、私、氷上メルルです」

 

「え、同じ苗字じゃん。オレ、氷上カレン」

 

「ほ、本当ですね。

 そ、それに髪の色も私のと同じですし、顔つきもなんだか鏡の私と似てるような……

 も、もしかして…………」

 

「生き別れの姉か妹かなんかかな?

 だとしたらオレのことはお兄ちゃんでもお兄様でも好きに呼んでくれたまえ」

 

「え、えっと多分違うと思います。私の家族は大魔女さケフンケフン……あのお方だけですし。

 ……あ、あとカレンさん、あなた女の子……ですよね? なのにお兄様というのは……」

 

『あ、もしもし……映像って見えてます? 何せ古くて故障が多いので……やれやれ』

 

「「え?」」

 

 突如ノイズのかかった声を聞き、話を中断してそちらを向くと、監房の壁に取り付けられていたモニターが砂嵐と共に音声が流れてきた。

 

 映像見えてないです〜。とっととモニター新調しやがりください〜。

 

『私、ゴクチョーと申します。詳しい説明がしたいので、ラウンジに集合して下さい。

 抵抗とかは自由ですが……命がなくなっちゃうので……はい』

 

 ズル……ズル……

 

 砂嵐の酷いモニターがそう言った直後、今度は牢の外から何かを引きずるような音が聞こえる。

 今度はなんだってばよ。

 

「ぁ……」

 

「……おぉう」

 

 格子の向こうにいたのはオレの身長の2倍はあるであろう黒衣の人ならざる存在。

 それが格子越しにオレらを見つめた直後、ガチャリと格子の鍵が開錠される音が聞こえた。

 

『…………』

 

「……何もしてこないな。

 てっきりあの手に持った大鎌で真っ二つにされるのかと思ったんだけど。

 ……むしろそっちの方が楽かもしれないねぇ」

 

「ら、ラウンジに集合と言われましたし、この子が案内してくれるんじゃないでしょうか……」

 

「あぁ、そういうこと」

 

 あまり待たせすぎても痺れを切らした化け物が何してくるか分からない。

 意図を理解したオレとメルルさんは牢を脱出し化け物と向き直る。

 それを確認した化け物はズルズルと黒衣を引きずりながらゆっくりと歩みを進め始めた。

 

 

 ◇

 

 

 化け物の後を追って建物の中を歩く事数分。

 階段を登り地上に出ると、建物の内装が牢屋から古びた洋館へと変化。

 急な内装の変化に若干戸惑いながらも大部屋へと通された。

 どうやらオレ達が一番乗りだったようだ。

 

「うぅ……ど、どうしましょうか……?」

 

「う〜ん、さっきモニターで事情を説明するって言ってたし、多分他の房の人達も全員集まってから説明があるんじゃない?」

 

「な、なら他の人たちを待ちましょう……」

 

 適当なソファに腰掛けて暫く待っていると、他の房から来たらしい少女達が次々とラウンジへと足を踏み入れていく。

 そして黒髪の少女と白髪に赤いグラデーションが入った少女がラウンジに入ったのを最後にラウンジの扉が閉められた。

 

 どうやらこれで全員のようだ。

 えぇっと、ひーふーみー……オレ含めて14人も拉致られてたのか。多いな。

 

「いや〜、すごいですねっ!

 突然牢屋で目覚め! 化け物に見張られていて! なんだか凄いことが起こっているのを感じます!

 高まっちゃいますね〜!!」

 

「な〜にが高まっちゃいますね〜ですわ!

 やべー事になってるんですわ! もっと危機感持った方がいいんじゃないかしら!?」

 

 突如ハイテンションでニコニコ目を輝かせる探偵風の少女を諌めるお嬢様風の服着たエセお嬢様言葉のちびっ子。

 その直後、ふふっと笑い声が聞こえ、それにちびっ子が反応した。

 

「今笑ったのは誰でやがりますの!?」

 

「いや、すまない。

 少し変わった喋り方だなと思ってね」

 

 そう言って申し訳なさそうに謝罪する中性的なレイピアを携えた少女。

 …………。

 

「キミ、流石に話し方で笑うのはダメだと思うよ。

 悪気があるない関わらずそう言った話題はデリケートなんだからさ」

 

「そうだね、本当に申し訳なかった。次から気をつけるよ。

 キミも改めて謝罪させてほしい。えぇっと……?」

 

「……遠野ハンナですわ。

 お見知りおきゃ……お見知り置きあそばせ?

 ふん……」

 

 ハンナと名乗ったちびっ子はそっぽを向く。

 それを見たレイピア少女は困ったように頬をかくと、ラウンジ内のみんなに聞こえるように声を上げる。

 

「みんな初対面だと思うし、良かったら自己紹介しないかい?

 先に名乗らせてもらうよ。私の名前は蓮見レイア」

 

「はいはーい! 私、橘シェリーっていいます!

 時間ある所に私あり! この名探偵にお任せ下さい!!」

 

「実際に事件を解決した事はあるのかい?」

 

「ありません!!」

 

「……なんか頭痛くなってきたな」

 

 シェリーと名乗った探偵風少女の姿に頭を抑えたレイアさん。

 

「つ、次に行こうか。

 キミの名前を教えてくれないかい?」

 

「ボ、ボクは桜羽エマ!」

 

 最後に入ってきた白と赤のグラデーション髪の少女が戸惑いながらそう名乗ったと同時、メルルさんが彼女の傍らへと寄る。

 

「わわわ、わ、私の名前は……ひ、氷上メルル……です。

 そ、それでエマさん。えっと……あ、あの……あのあのあの……」

 

「ちょ、落ち着いてメルルさん。ゆっくり話しな?」

 

「は、はい……。

 エマさん、け、怪我……しちゃってます」

 

「あぁ、確かエマさん。さっきあの人に突き飛ばされてましたね!」

 

「…………」

 

 そう言って同じく最後に入ってきた黒髪ロングの少女に視線を向けたシェリーさん。

 ……いや、何やってんだよ。突き飛ばすのはあかんやろ。

 

「大した事ないよ」

 

「た、大した事……あります」

 

 そう言ったメルルさんがエマさんの足に手をかざす。

 その直後、エマさんの怪我がみるみるうちに塞がっていくではないか!!

 

「痛くないですか……? 大丈夫ですか……?」

 

「う、うん。ありがとう……」

 

「その不思議な力について詳しく聞きたい所だけど、まだ他の子も残ってるし後にしようか。

 次はキミ、名乗ってもらえるかな?」

 

「あ、オレ? オレは氷上カレン。

 そこのメルルさんと苗字同じだけど、血が繋がってるとかじゃない他人だから勘違いしないように」

 

「え〜、そうなんですか?

 それにしては二人とも双子さんと勘違いするくらいにそっくりですけど」

 

「なになに〜、喧嘩でもしたん?」

 

「い、いいえ。本当に初対面なんです……」

 

「別に喧嘩してテメェなんて家族じゃねぇ!! ってなってるわけじゃないんよ。

 実際オレも同じ苗字に似た見た目って事でビビってるくらいで……」

 

 他のみんなは怪訝そうな顔で首を傾げるものの、オレらの様子から本当に初対面なんだと感じ取れたのだろうか? これ以上追求してくる事はなかった。

 

 そしてそれからも自己紹介は続く。

 

 配信をしていると言う猫耳カチューシャの少女が沢渡ココ。

 ギャルっぽい見た目の癖して喋るのが苦手なのか、無理して自己紹介したのが佐伯ミリア。

 なんだかアダルティな雰囲気を醸し出す和服っぽい少女が宝生マーゴ。

 私のそばに近寄るなオーラを発する、マスクをつけた不良っぽい少女が紫藤アリサ。

 口ではなくスケッチブックによる筆談で名乗ったゴスロリ少女が夏目アンアン。

 淡々と名前のみを名乗った、なぜか銃を背負った少女が黒部ナノカ。……取り敢えずこの人とは距離をとろう。

 エマさんに怪我をさせた犯人らしい、黒髪の委員長っぽい雰囲気の少女が二階堂ヒロ。

 

 そして…………

 

「ふんふんふ〜ん♪ ふんふんふ〜ん♪」

 

「……あ、あの、キミ?

 オレの服に何かご用かしら?」

 

 オレの服をペタペタ触っている、ペレー帽を被った少女。

 で、出来ればあまり触らないでいただきたいのですが……。なにせオレの服チャイナ服で身体のラインがハッキリしててなんだか落ち着かないので……。

 

「……うん。このお洋服ならお絵描きできるかも!!」

 

「っ!? ちょ、そのカラースプレーはどっから出したし!?

 ちょ、ま、そんなもの人に向けちゃらめぇええええええ!!」

 

「あ、もぉ動いちゃダメ〜」

 

「コラ、キミ! 人にスプレーを吹きかけるのは間違っている!!」

 

 ペレー帽少女に危うく我が一張羅をカラフルにされる所であったが、すんでの所で委員長少女、二階堂ヒロがオレらの間に入ってカラースプレーを取り上げてくれた。

 ありがとうヒロさん。ボク、君のことを誤解してたよ……。

 そして城ケ崎ノアというらしいペレー帽少女よ。取り敢えず今すぐオレの半径3メートル圏内に入んじゃねぇ。

 

「あ、人がいっぱい……」

 

 ヒロさんにスプレーを取り上げられ、取り返そうとぴょんぴょん跳ねるノアさんから距離をとっていると、先ほど監房で聞いたような声。

 咄嗟にそちらを振り向くとそこには、先ほどラウンジまで案内してくれた化け物を従えたフクロウの姿があった。

 

「えっと、改めまして……この屋敷で管理を任されているかわいいフクロウ、ゴクチョーと申します」

 

 部屋のモニターは砂嵐が酷くて姿までは見えなかったけど、正体は鳥だったのか。

 鳥のくせに一体どんな声帯を持ってるんだ? あと、可愛くはねーよ。

 

「定時とかもあるので……さっさと説明をしていきますね」

 

 ゴクチョー曰く、ここに連れてこられたオレ含めた14名の少女は魔女因子と呼ばれる、国に対して脅威となる因子を持っているらしい。

 時が来れば魔女になる……国に厄災をもたらすような存在を野放しにしておくわけにもいかないという事で、この牢屋敷でオレらを拉致ったようだ。

 

 ……事前に教えられた情報と全く同じだな。

 

「つまり皆さん、この世界に害をなす悪者という事で……ご納得ください」

 

 ……は?

 

「はぁっ!? なんなんお前、キモッ!!」

 

「そうだそうだ! オレはまぁ過去に色々やらかしたから別として、なんの罪もない少女達を拉致ってるテメェらの方が悪もんだろうが!!

 なのに被害者に悪者と言うなんてなんて躾のなってないフクロウだ。ケンタッキーにすんぞコラッ!!」

 

「あー……はい。

 なら私達が悪者でいいので納得して下さい。

 あと、食べるのは勘弁してくれませんかね?」

 

 あっさり折れた。

 別にどっちが悪でどっちが正義ってのはどうでも良いようだ。

 

「皆さんにはこの春から囚人として生活してもらいます。

 救済がなくもないのですが……大魔女さえ見つかればみなさんの呪いを……あ、でも期待とか持たせても良くないですよね……忘れて下さい」

 

 おい、なんか重要な情報知ってんなら勿体ぶらずに教えろよ。

 ……てか大魔女? なんかさっき書いたような……聞いてないような……ま、いっか。

 

「間違いです。私は悪ではない」

 

 突如、一歩前に出てゴクチョーと看守というらしい化け物と対峙したヒロさん。

 

「この国に災厄をもたらす危険因子はこの子の方だ」

 

「っ……!」

 

 そう言って彼女はビシリとエマさんを指差す。

 突如そんな言いがかりをつけられたエマさんを心配してか、近くにいたメルルさんが彼女の二の腕を優しく掴む。

 

「エマさん……」

 

「えへへ、ヘーキヘーキ」

 

「はぁ〜……。あの、頼みます。私達が悪者でいいんでこの状況を受け入れて下さい。

 私は残業したくないですし、みんな平和に楽しく平和がいいので……。

 ここには娯楽室やシャワー室などもありますので、余生はここで静かに過ごしてはいかがでしょう」

 

「間違っている私は悪じゃない。

 この世界の悪を正すことが出来るのは、私だけだ。

 私はこの世の悪を排す。まずは────」

 

 そう呟きながら暖炉へと歩みを進め火かき棒を手に取ったヒロさん。

 そしてエマさんに視線を移した。

 

「…………」

 

「あ、カレンちゃん……」

 

 流石にここを殺人現場にはしたくないため、エマさんとヒロさんの間に割って入らせていただく。

 来るなら来い。だが最初に言っておく。オレはかーなーり強い。

 火かき棒を装備した程度でこのオレを突破出来ると思わないことだ。

 

「貴様だ。化け物ッ!!」

 

「ほぇ?」

 

 だがそんなオレの考えとは裏腹に、回れ右したヒロさんはフクロウの背後に控えていた看守を殴りつけたではないか。

 

 なーんだ。意味深にエマさんを向くから勘違いしちゃってたよ。

 って考えてみれば、ノアちゃんの脅威から守ってくれたヒロさんが人を殺すなんてそんな事するわけないよね。

 ……だが、看守はマズい!!

 

「悪は死ね! 死ね死ね死ね!!」

 

「ヒロさん! 看守……いや、魔女のなれ果ては不死身だ!!

 いくら攻撃を加えた所でコイツは死なない!!」

 

「え……!?」

 

「死ね! 死ね! 死ねぇええっ!!」

 

 咄嗟に叫んだが暴走特急と化したヒロさんは止まらない。

 重い火かき棒を軽々と振り回し、看守をこれでもかとめった打ちにしていく。

 

「だ、ダメだよヒロちゃん! 危ないから離れて!!」

 

「うるさい! 私は悪を絶対に許さない……!!

 コイツはここで排除するんだ!!」

 

 オレの言葉を聞いてマズいと感じたエマさんが叫ぶが、暴走特急と化したヒロさん以下略。

 だが看守もこのまま延々と攻撃させてくれる筈はない。

 大鎌を持つ看守の腕に力が入る。

 

「っ! ヒロちゃん、危ない!!」

 

「え──」

 

「チィッ!」

 

 ここで誰かが死ぬのも目覚めが悪い。

 それに彼女には一張羅に落書きされそうだった所を助けてくれた恩もあるんだ。

 仕方ない。今回は守ってやろうじゃねぇか!!

 

 看守が動くよりも早くヒロさんの元へ到着すると、ヒロさんの襟首を掴んで思い切り後ろへ引く。

 それとほぼ同時、ヒロさんの首があった場所に黒い閃が走った。

 

「ぐぁあああ!!」

 

「ヒロちゃん!!」

 

 後ろに引いたことでかろうじて首チョンパを免れたヒロさんだったが、オレが動くのが遅れたせいで顔に横一文字に大きな斬り傷が入ってしまった。

 なんというか申し訳ない。でもオレが動かなかったら生首になっていたんだから許してほしい。

 

「カレン君!」

 

「分かってる!」

 

 ヒロさんを始末し損ねたと瞬時に判断した看守が再び鎌を振り上げている。

 あれだけボッコボコにされたんだ。そりゃ殺すまでは納得しなかろうて。

 

 しかしヒロさんには恩がある。殺させるわけにはいかない。

 故に魔法を行使させてもらおう。

 

「バリアーッ!!」

 

 オレがそう唱えると同時、先ほど以上の横薙ぎがオレとヒロさんの首を捉える。

 どうやらオレも攻撃対象に入れられてしまったようだ。

 しかし────

 

「な……っ!?」

 

「おや……?」

 

 看守の鎌はオレの首ギリギリでピタリと止まった。




 氷上カレン

 囚人番号:671
 魔法:???
 トラウマ:???
 誕生日:12月24日
 原罪:虚構の武芸者
 好きなこと:二度寝、料理
 嫌いなこと:嘘

 見た目のイメージ:チャイナ服メルル。(なおメルルより吊り目である)
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