そっくりさんノ牢屋敷生活   作:蒼天 極

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そっくりさんと舞台上の偶像

「ん"あ"〜……生き返る〜……」

 

「え、えっと……い、痛くないですか……?」

 

「うん、いい感じいい感じ〜……」

 

 シェリーさん救出後、時間内に房に戻らなかったと言う事でみんな仲良く懲罰房にぶち込まれた後、オレは医務室へと足を運んでいた。

 と言うのもずっと磔にされてたせいで全身が凝ってしまったため、メルルさんにマッサージをお願いしに来たのだ。

 あ"〜……めっちゃ気持ちいい……メルルさん、整体師の才能あるよ〜……。

 

「ほ、本当に凝り固まってますね……」

 

「全くだよ〜。何日かは柔軟しないと元に戻らないかも〜……」

 

「あちゃ〜、本当に今回は迷惑かけちゃいました。ごめんなさい」

 

「本当だよこのやろ〜。

 明日の20時54分まではこのネタで弄ってやるからな〜?」

 

「……なんでそんな中途半端な時間なんだ?

 だがカレンの気持ちは分かる。シェリー、お前は【反省しろ】」

 

「はい、今回ばかりは流石のシェリーちゃんも考えさせられちゃいました……」

 

 懲罰房に入れられたのが原因で三たび体調を崩したアンアンさんの洗脳が聞いたのか、流石に今回の一件は迷惑をかけた自覚があるのか、申し訳なさそうに頭を下げるシェリーさん。

 

 普通ならば洗脳の魔法を使ったアンアンさんを注意すべきだろうが、大戦犯を庇うほどオレは良い子じゃない。

 流石にアリサさんみたいに拳骨したりはしないけど、せいぜい反省しろってんだ。

 

「……それで、シェリーさんはどんな感じなの? 後遺症とかは?」

 

「そうですね〜。身体の感覚はちゃんとあるんですけど、力が入らないんですよね〜。

 私自身びっくりしちゃうくらいで……」

 

『血を流しすぎたんだな?』

 

「はい……。

 だから早急に失った血液を補わないといけないんですが、ここには輸血設備がなくって……。

 正直こんな風にお話し出来るのが凄いくらいで……」

 

 多分今のシェリーさんは怪力の魔法で無理やり身体を動かしているだけで、本当は指一本動かすのも苦労するほどに衰弱してるんだろう。

 聞けば牢屋敷の食事をモリモリ食べているらしいが、今シェリーさんに必要なのは鉄分とタンパク質。

 それを牢屋敷の食事で補えるかどうかは分からないし……。

 

「……フクロウを狩れるのが一番なんだけど、アイツらオレの近くに来てくれないからなぁ……」

 

『食われると分かってるのにわざわざ近づく阿呆もいまい』

 

「ほんと、ここのフクロウはゴクチョーも含め、賢いですよね」

 

「可哀想ですから、食べるのはやめてほしいです……」

 

 ふむ、だとすると…………

 

「おや、みなさんお揃いで……」

 

「お、ゴクチョー、丁度いいところに」

 

 シェリーさんの様子でも見に来たのか、最高のタイミングでやって来たゴクチョー。

 だがゴクチョーはオレをみるなりなんだか嫌そうな顔を浮かべて……

 

「言っときますけど、私を食べようとしたら処刑しちゃいますからね……?」

 

「しないしない。流石に喋る個体は生理的に無理だ。

 ……いやね、牢屋敷の外壁の外……海に出たいから許可してくれないかと思って」

 

「海……ですか?」

 

「え、脱獄するんですか?」

 

『実行しようとしたシェリーが怪我したばかりだろう。

 考え直せ』

 

「んなわけねぇだろ。

 仮にするなら何故ゴクチョーに許可取るんだよ」

 

 見当違いな事を宣うシェリーさんに呆れながらも、オレの目論見を話す。

 

「海産物……食いたくてな」

 

「海産物……ですか」

 

 実は前々から思っていたのだ。海に出られたら美味しい魚や貝が食べられるのにと。

 それにこの島は絶海の孤島。

 つまり東西南北が全て海に隣しており、まさに食糧の宝庫と言っても過言ではない。

 だと言うのにそこへいけないのが本当にもったいない! 損してる!!

 行きたくても行けないストレスで魔女化不可避!!!!

 

「シェリーさんの体調を一刻でも早く治すには栄養が…… 特にタンパク質や鉄分が必要。そしてその二つは海で赤身魚を確保したらすぐに揃えられるんだよ。

 それだけじゃない。魚介とかイカとか取れればそれだけで料理のバリエーションが広がるんだよ!!

 と言うわけでどうかお慈悲を!!

 監視にフクロウをつけていいからさ。あ、もちろん監視中はフクロウは狩ったりしないし!!」

 

「海に出てない間は狩るのをやめるつもりはないんですね……。

 しかし、それを許可すると思っているんですか?」

 

「マジお願い!

 なんならゴクチョーにも獲れた魚お裾分けするから。

 オレも久しぶりにアヒージョとか海鮮パスタとか食べたいんだよ!!」

 

「ほぉ、魚ですか。

 確かに頂けるならこちらとしてもありがたい話ではありますが……」

 

「アヒージョ……海鮮パスタ……。

 ゴクチョー、【許可しろ】」

 

「アンアンさん、ゴクチョーさんにそれはダメです……。

 し、しかしシェリーさんに栄養満点のものを食べさせなくちゃいけませんし…………。

 お願いしますゴクチョーさん」

 

「メルルさんまで……困りましたねぇ…………」

 

 シェリーさんの体調を考慮したメルルさんも味方につき、兄妹二人係でゴクチョーを拝み倒す。

 やがてゴクチョーは根負けしたのか、大きくため息を吐いた。

 

「……ハァ、仕方ありません。

 別に脱獄ってわけでも無さそうですし、そこまで言うなら特別に許可しましょうかね……」

 

 

 ◇

 

 

 その後オレとメルルさんの二人がかりの懇願に屈したゴクチョーにいくつかの条件付きで特例をいただいた。

 

 ①午前のうちにゴクチョーに申請をした場合に限り、午後の自由時間のみ外壁外への外出を許す。

 時間外もしくはゴクチョー不認可で海岸にいた場合は脱獄するものと判断する。

 

 ②海に出ていいのはオレと付き添いの一人のみ。

 三人以上もしくはオレ抜きでの外出は認めない。

 

 ③素潜りする場合は沿岸から100メートル以上行かない事。

 また、仮に溺れたとしても自己責任。そのまま溺死しろ。

 

 ④監視のためフクロウを近くにつけるが、海岸にいる間は絶対に狩らないこと。

 ……と言うかそもそも牢屋敷内でも狩りは控えろ。(本当はフクロウ狩りはするなだったが、ゴネて妥協してもらった)

 

 ⑤獲れた海産物のうち1割はゴクチョーに献上する事。料理したものを献上したらなおよし。

 収穫がなかった場合は普段作っているアレンジ料理の献上でも可。

 

 ①から⑤が遵守できなければ、その時点で処刑とのこと。

 いや〜、なかなかに厳しいね。しかし、海岸に出る許可を貰えただけありがたいと思うべきだろう。

 

 と言うことで早速昼の自由時間を使い、オレは魔法であの壁を越え海岸へとやって来ていた。

 

「さぁ、みんなに美味しい海産物を食べさせてあげようじゃないか!!」

 

「…………」

 

 …………レイアさんと一緒に。

 

 本来は一人で海産物を集めようと考えていたのだが、あの後偶然シェリーさんのお見舞いに来たレイアさんにアンアンさんが口を滑らせてしまい、同行を志願してしまったのだ。

 

 …………前回はシェリーさんの件で話が出来なかった。故に未だオレを狙うのを諦めてないのかもしれない。

 ……しかしあの壁を越えられるのがオレしかいない以上、ここで殺したらレイアさんは牢屋敷へ帰還できない。それにあれだけメルルさんに心配かけた以上流石に殺されてやるのもなんかな〜……。

 

 だが、当のレイアさんはオレの心配をよそに、ずんずんと海岸を進んでいく。

 

「ここは貝が沢山あるね。拾っていこうか」

 

「……そうだね。ここかなり滑ってるから足を滑らせないように気をつけて。

 あ、張り付いてる貝はこれを使って」

 

「分かったよ」

 

 早速貝が沢山張り付いている岩場を見つけたため、ナイフを創造しそれを剥がしに行く。

 これはマツバガイか。確か茹でてもいいし味噌汁でも食えたっけ?

 

「……それにしてもカレンくんは凄いね。

 料理のアレンジといい、よくここまで適応できるものだ」

 

「……まぁ色々あって、政府に拉致られる前はホームレス生活だったから」

 

「ホームレス……確かキミの家は政府の高官、かなり裕福な暮らしだと思ったが……」

 

「言ったでしょ。色々あったんだよ。正直、あんまり思い出したくねぇ記憶だな。

 もっとも、あの生活があるから今こうして食で苦労することは無いんだが……」

 

「……そっか」

 

 中学まではそこそこ幸せだったんだけど……どうしてこうなっちまったかねぇ。

 あの日のあの時……あそこから大きく運命が狂っちまった。

 人生、本当に何があるか分からないもんだ。

 

「…………」

 

「…………」

 

 そこからは互いに無言で貝拾いに専念する。

 あぁ、嫌なこと思い出しちまったせいで気分がブルーになってしょうがねぇ。なんとか明るい話題に持っていくべきだろうなぁ。

 

「……カレンくん」

 

「……うん?」

 

「キミは気づいていたんだね。

 私がキミを殺そうとしてる事を……」

 

「!!」

 

 なにをを話すかテーマを模索していると、突如レイアさんがぶっ込んで来た。

 

「……まぁね。オレとノアちゃんを殺すって決心したシーンを偶然聞いてしまって。

 殺すなら今が絶好のチャンスじゃない?」

 

「まさか。この場で殺したら私は牢屋敷に帰れなくなるし、そもそも私がカレンくんに真正面から立ち向かっても勝てないだろう」

 

「ま、オレの魔法、最強ですから。

 ……それで、殺す気がないなら何故そんな事を? こんな所でのカミングアウト、オレを警戒させるだけだろうに……」

 

「信じてくれるかは分からないが……」

 

「……レイアさん?」

 

 レイアさんはそう言って貝拾いを止めると、なんとこちらへ向けて頭を下げて来たではないか!!

 

「本当に、申し訳なかった」

 

「うぇ!?

 え、ま、まさか殺すのを止めるって言いたいわけ!?」

 

「そのまさかだ」

 

「い、一体どんな心変わりだってばよ……。

 一度殺意に侵されたら止まる事なんて至難の業だっていうのに……」

 

「キミを……いや、キミとノアくんを殺そうと考えた自分が恥ずかしくなってしまってね」

 

「恥ずかしく?」

 

 レイアさんは続ける。

 確かに二日前まではオレとノアちゃんを排除しようと考えていたそうだ。

 ノアちゃんは常にアンアンさんが近くにいるため、まずは比較的無防備なオレを殺害し、そしてその後の魔女裁判でノアちゃんに罪を被せて処刑台に送る。

 ノアちゃんは以前オレを殺しかけている。故に、復讐を恐れて殺したという筋書きならば上手くいくと踏んだようだ。

 

 …………。

 

「冤罪……ね」

 

「本当に我ながらどうかしていたよ。

 こんな三流なシナリオ、頭のいいヒロくん辺りが暴いてしまうだろうに……」

 

「……というかレイアさんがオレ狙ってるってメルルさんには伝えてたし、マーゴさんとヒロさんはなんだか察してたっぽいから、オレをやった時点ですぐに容疑者に挙げられただろうて……」

 

「な、なんだって……!?

 察せられていたか……舞台女優として不甲斐なし、穴があったら入りたい!!」

 

「鬼滅パロやめい!」

 

 つかこの場で演技を入れるんじゃないよ。

 オレじゃなかったらさては反省してねぇなテメェ? ってなってもおかしくないんだからな……。

 突如芝居がかったオーバーリアクションを受けて軽く呆れていると、「でも……」とレイアさんが続ける。

 

「シェリーくんが枯れ井戸に落ちた際、ヒロくんが言ったんだ。

 配信でみんなを呼び集めてくれ。一番目立っている私にしかできない事だと。

 だから私は配信をした。結果……」

 

「全員来たんだよね?」

 

「……もちろん、全員が見てくれたとは思っていない。聞けばミリアくんが呼び集めてくれたみたいだからね。

 しかしそれでも大半の人が私を見てくれてたのは事実だ。

 そこで私は気づいた。私はとっくに、みんなから見られていたと。カレンくんやノアくんを殺す必要はなかったんだと」

 

「……そっか」

 

 レイアさんがオレに感じてた不満、それは目立つ事だったようだ。

 オレは少しでも生活を良くするためにと考えて行動していたが、結果周りからはそこそこ注目されていた自覚がある。

 ノアちゃんも聞けばあの子はバルーンっていう有名なストリートアーティストらしい。

 

「目立っていたオレとノアちゃんが許せなかった……それが動機だったんだね」

 

「あぁ、カレンくんとノアくん、キミ達に舞台の主役を奪われたと感じてしまったんだ。

 キミ達が邪魔だと感じたんだ……」

 

 

 ◇

 

 

「……それで、どうして目立たないと気が済まないのか……聞いてもいいのかな?」

 

 その後、貝はある程度拾えたと言うことで、釣りを開始したオレ達。

 チネリ米の生地を餌がわりに、鎖を釣り竿がわりにしたものだがこれが案外釣れる。

 だが釣りとは基本暇なもの、故に釣りの待ち時間で思い切って彼女のルーツを聞いてみたいと考えたのだ。

 

「……そうだね。キミには知る権利がある。芸能人である私の舞台裏、私の半生を。

 これはオフレコで頼むよ?」

 

 恐らくトラウマに踏み込むものだろうから答えてはくれないかもと考えていたが、彼女は軽く微笑むと自らの禁忌話し始める。

 

「私がアイドルに……いや、目立とうと思った理由、それは母が理由さ」

 

 曰く、レイアさんの母親は彼女が幼少の頃から大きな病気を患っているようで、それにより心を閉ざしてしまったことが原因でレイアさんの事を認知してくれなかったのだと言う。

 そんな彼女をレイアさんは毎日のようにお見舞いに行き、なんとか認知して貰えるようにと試行錯誤していたようだ。

 

「そんなある日、母がテレビを見ていたんだ。舞台の演劇を。

 そこで私は思ったんだ。テレビの向こうの一番目立つ場所へ行くことができれば……舞台女優としてトップに立てば、お母さんはきっと私のことを見てくれると」

 

「それがレイアさんがアイドルになった理由。目立たないといけない理由……か」

 

「……しかし舞台女優になっただけでは、母は私のことを見なかった。

 だから私は一番目立とうと、主役になろうと常に一番を心掛けて来た」

 

「しかし……」とレイアさんは突如俯く。

 

「結局今の私がトップ女優としてここまで来れたのも魔法によるものが大きい。

 視線誘導……それが私の魔法なんだ」

 

「ヒロさんに魔法を使っている所は見たことがあるから、ある程度は察しついてたよ。

 あ、視線誘導ってことはつまり演技中に観客の視線を自分に固定してたってこと?」

 

「あぁ、それが私がここまでの人気を得た秘訣さ。

 ……ズルだと思うかい?」

 

「魔法も実力のうちじゃね?

 少なくとも魔法普段使いしてるオレが文句言えないわ」

 

「そうだね、私も今まではそう思っていた。

 ……しかし、今回の一件で色々考えさせられたよ。

 今回の一件で分かったが、どうやら私は一番になる為なら手段を選ばなすぎる節があるようだ」

 

「…………」

 

「きっとお母さんは、そんな私の醜い本性が分かっているから見てくれないんだろうね……」

 

「…………っ! キタキタキタァッ!!」

 

「ど、どうしたんだい!?」

 

「どうしたもこうしたもあるか! 魚が食いついたんだよ!!

 ぐっ! こ、これはデカいぞ……レイアさん、手伝って!!」

 

「あ、あぁ!!」

 

 レイアさんの話を聞来ながら釣り糸(鎖)を垂らしていたが、どうやら大物が食いついたようだ。

 こんな大物、絶対に逃してたまるかってんだ。

 ぜってぇ釣り上げてやる……!!

 

「ぐっ……か、カレンくん!

 こ、これはいくらなんでも大きすぎるのでは……このままでは二人仲良く海に引きずり込まれてしまうよ…………!!」

 

「そんときゃ死ぬだけ!

 死ぬのが惜しいなら手を離していいぜ!!」

 

「キミは……シェリーくん救出のときもそうだったが、もう少し命を大切にするべきだと思うよ……!!

 殺そうと考えてた私が言うのもなんだけど……ね!!」

 

「……確かにここで散ったらレイアさんが帰れなくなるからな。

 ならこっちも本気で引き上げるまでよ!!」

 

「それでも釣り上げる気なんだね……!!」

 

 当然! これだけの重さだ。

 釣り上げることに成功したら今夜の食事がとてつもなく豪勢になるからな。

 それにこんなチャンスはもう二度と無いだろうし、みすみす逃してたまるかってんだ。

 

「せーので行くぞレイアさんっ!!」

 

「わ、分かったよ……!!」

 

「「せーのっ!!」

 

 掛け声に合わせ両腕そして足腰に力を入れて思い切り鎖を引っ張る。

 次の瞬間、海面から水飛沫と共に鎖を加えた魚が飛び出す。

 こ、これは……!?

 

「マグロキタァアアアアッ!!」

 

「おぉ、まさかマグロの一本釣りを成し遂げてしまうとは……!!」

 

 やった、やったぞ!! 刺身が食える……!! ……いや、食中毒怖いしちゃんと火を通そう。

 くそう、牢屋敷に冷凍庫があれば……後でゴクチョーにないか聞いてみよう。

 

 まぁ、それはともかく……

 

「……ねぇレイアさん。

 オレさ、軟禁されてたからレイアさんの劇を見たことないんだよ。

 ……でもこれだけは分かる。

 レイアさんは本物の演者だって」

 

「え……?」

 

 彼女のアイドル特有の整った体型は食生活や日々のトレーニングなど、相当ストイックに意識しなければ作れないもの。

 また、立ち振る舞いや所作についても、ごく自然で相手を不快にさせない動きが身体に染み付いている。

 

「それにさっきレイアさんは魔法をズルって言ったけどさ、たかが視線を誘導する魔法程度でトップに登り詰められるとは思わないんだよね」

 

「!」

 

「魔法もきっかけではあるだろうけどさ、結局のところ演技を見た人がどう思うかが重要なんじゃない?

 レイアさんの人気は、レイアさんの弛まぬ努力の結果なんだと思うよ」

 

「カレンくん……」

 

 いくら視線誘導で周りの視線を集めてたとしても下手な演技をしたなら、地味だから、下手だから逆に目立つと嘲笑の的になっていただろう。

 

 かと言ってそこそこ程度の演技ができたとしても、なんとなく見入っただけと、レイアさんが望む評価はされないだろう。

 

 牢屋敷の大半が知ってるような有名人に成り上がるには、相当な実力も必要不可欠なのだ。

 

「少なくともオレはレイアさんの事は手段を選ばないチート野郎じゃなくって、努力して夢を掴み取った凄い人だって思ってる。

 一番になりたい? 結構な目標じゃんか。

 少なくともオレは応援するし、その為の協力だってしたげるよ」

 

「……キミは心が広いね。

 私はキミを殺そうとしたんだよ?」

 

「結局実行には移さなかったじゃん。なら少なくともオレはそれでよしだよ。

 それにレイアさんには色々助けられてるし、恩は返さないといけないからな!」

 

「……ありがとう」

 

 そう言って彼女はふっと笑顔になった。

 

 ……レイアさんと仲直りできて良かった。

 運命を受け入れて殺されようとしたり、メルルさんが頑張るからやっぱり殺されないようにしたりと優柔不断に立ち回ってたけど、仲良くなった人に殺意を向けられるのは内心悲しかったんだ。

 

「……せない」

 

「え?」

 

「ダメだ。やっぱり許せない!!」

 

「うぇえ!?」

 

 これはメルルさんに嬉しい報告が出来ると考えていると、突如レイアさんがそんなことを言い放った。

 ま、マジか〜……このままハッピーエンドを迎えられると思ったら、魔女の殺意がここまで厄介だったなんて…………

 

「……いくらカレンくんが許してくれたとしても、これでは私が私を許せない!

 カレンくん、私を殴ってくれ!!」

 

「…………」

 

「さぁ、カレンくん!」

 

「あ、あ〜……許せないってそっちか」

 

 どうやら魔女の殺意によって怒りが増幅したわけではなく、オレとノアちゃんを殺そうとした自分自身を許せないようだ。

 ビックリした〜、急に許せないって言うから肝が冷えた……。

 なんならショックで魔女化進んだかも……1ミリくらい。

 

「遠慮しているのかい? でも気にしなくていいんだ!

 こうでもしないと私が私を許せない!!

 さぁ、思いっきりやってくれ!!」

 

「あ〜、悪いけどパス。

 オレは人は傷つけないって決めてんの」

 

「しかしそれでは「でも……」……カレンくん?」

 

「それならオレの企みに乗って貰おうかな?」

 

「企み……それで償いになるなら私は一向に構わないが、一体なにをしようというんだい?

 キミの事だから悪い事ではなさそうだが」

 

「いやね、今日オレと君が仲直りしたみたいにヒロさんとノアちゃんを仲直りさせたいと思っててさ」

 

 大喧嘩した結果、今も気まずい関係が続いているヒロさんとノアちゃん。

 今回オレはレイアさんが立ち直ってくれたお陰で助かったものの、本来ここはいつ誰が魔女になって、誰が死ぬか分からないような場所だ。

 故に仲直りできないまま死別なんて十分あり得る。

 でもそんなのは悲しいからな。死ぬにしたって仲直りした後の方がいいに決まってる。……まぁ死なないのが一番だけど。

 

「ヒロくんとノアくんを……

 確かに今の二人の関係は良いものではないからね。

 仲直りできたら素晴らしいと思うが、果たして上手く仲直りしてくれるだろうか……」

 

「ノアちゃんはともかくヒロさんは石頭だからね。

 仲直りさせるなら仲裁とかじゃなくて、仲直りする為のキッカケが必要だと思う」

 

「仲直りのキッカケ……それを、私たちで起こそうと言うんだね!

 しかし仲直りのキッカケか……果たしてどのような事をするべきなんだろうか……」

 

「あぁ、それなら実は既に温めているものがありましてな……。

 ただ、これにはレイアさんの協力が必要不可欠なんだよな」

 

「私の協力が必要不可欠な作戦……。

 それは今聞いても良いのかな?」

 

「もちのろんオレの考えた作戦、それは…………

 

 

 

 

 ()()()()()()だ」

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