そっくりさんノ牢屋敷生活   作:蒼天 極

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そっくりさんの食事

「も、戻りました……」

 

「お〜、おかえり〜」

 

 監房に帰還しベッドに横になってしばらくするとメルルさんも房へと戻ってきた。

 そしてその直後に牢から電子音が聞こえ、出入り口が完全に閉ざされる。

 もし後少しでも遅かったら房から締め出されて、懲罰房行きになるところだっただろう。

 

「あ、あの……カレンさん……」

 

「うん?」

 

「あの後……ヒロさんは大丈夫でしたか……?」

 

「レイアさんと二人でベッドまで運んだらすぐに寝てしまったね。

 貧血だろうからしっかり栄養摂って休めばあるいは……食事も摂れないほど弱って死亡って結末にはなってほしくないね」

 

「そうですね。人が死んじゃうのはとっても悲しい事ですから……」

 

 ヒロさんの他に13人も少女がいるのだから、何かあったら誰かに血を分けてもらえばいいんだろうけど、牢屋敷に輸血設備があるか分からないからなぁ……。

 まぁ、死んでしまったのなら、それがヒロさんの運命なんだろう。咄嗟に行動できなかった罪悪感で魔女化が進行するだろうけど仕方がない。

 

「それはそうと、エマさん達はどんな感じ?」

 

「え、エマさんはとても怒ってました……。

 でも考えなしに立ち向かっても勝ち目はないのは分かっているみたいなので、別のやり方で反抗するんだと思います」

 

「別のやり方ねぇ……」

 

 真っ向からやり合う以外だと考えられるのは脱獄か……。

 だけどここは日本から遠く離れた絶海の孤島、脱獄なんてほぼ不可能と言っても過言ではない。

 ここへオレ達を運んだであろうヘリコプターをハイジャックできれば或いはだが、オレらが全滅するまではヘリもここには来ないだろうし……。

 

「ま、なんにせよ反抗するって事は怪我する可能性はオレ達以上に高いってわけだ。

 これはメルルさんの治癒の力が重要になるかもしれないねぇ」

 

「そ、そうですね。はわわ……責任重大です……」

 

「ま、困ったらオレに連絡してよ。

 妹を助けるのは兄貴の役目だしな。オレの身が危険になるような事じゃなければ手伝いくらいはするぜ」

 

「だ、だから私に兄はいません。

 でも、その時はお願いします……」

 

 

 ◇

 

 

 その後話す事もなくなったため、魔女図鑑をサクッと確認してから昼寝をして時間を潰すと、あっという間に自由時間になった。

 

「確か自由時間に食堂でご飯食べられるんだよね。

 メルルさん、腹減ったし一緒に行かない?」

 

「そうですね、私もペコペコですし行きましょうか」

 

 オレに慣れてくれたのか、先ほどよりも怯えなくなったメルルさんと共に監房を出ると、同じタイミングでヒロさんも房から姿を現す。

 

「よっすヒロさん」

 

「あぁ、カレンとメルルか」

 

「ど、どうも……。

 あ、あの……お身体は大丈夫ですか?」

 

「あぁ、少しだるいがお陰様でこの通りだ」

 

 そう言って軽く身体を動かしてみせるヒロさん。

 良かった、これなら貧血で弱ってあの世行きという最悪な結末を迎える事はないだろう。

 

「おや、ヒロくん。ちょうど迎えに行こうと思っていた所だよ!」

 

 ヒロさんの体調を見て胸を撫で下ろしていると、レイアさんもやって来た。

 彼女もヒロさんを心配……いや、問題を起こしたから暫くは監視をするつもりなのだろう。

 ま、こんな状況下で孤立するよりはよっぽどいいだろうし、別に気にしなくても良いだろう。

 

「ヒロくん達は食事に行くのだろう?

 私もお供していいかな?」

 

「オレはいいよ。メルルさんもいいよね?」

 

「は、はい。大丈夫です……」

 

「あぁ。だが、その前に……」

 

 含みのある言い方にヒロさんを向くと、彼女は深く頭を下げた。

 

「改めて……先程は本当に申し訳なかった。

 君達が誰か一人でも欠けていたら私は今頃この世にいないだろう」

 

「え、ええええっと……あ、頭を上げてくださいヒロさん!」

 

「ヒロさん、ノアって子からオレを守ってくれたじゃん。

 お返しだから気にしないで」

 

「キミの反省は私達には伝わっている。

 これだけ反省しているなら、もう考えなしな行動は取らないだろうしかまわないよ」

 

「……ありがとう」

 

「もう謝罪は良いからさっさと行こうぜ。

 オレ腹減っちゃってさ」

 

「そうしようか」

 

 空腹という事で足早に食堂へ向かうことにしたオレ達。

 建物のマップはきちんと確認したけど、この屋敷結構広いし気を抜いたら迷ってしまいそうだ。

 だがマップを完全に暗記したらしいヒロさんのお陰でなんとか迷わずに玄関ホールまで到着すると、そこから喧騒が聞こえた。

 

「てめぇっ! キモいんだよ離せよ!

 あんまウチのこと舐めんなよ!? ぶっ殺すぞオラァ!!」

 

「ア、アリサさん……」

 

 そこには先ほど反抗してラウンジを出て行った不良少女アリサさんと、そんな彼女を抱えてどこかへ向かおうとする看守。

 ジタバタと暴れて必死に抵抗するアリサさんであったが、オレらを視線に入れた途端キッとコチラを睨みつけてきた。

 

「っ、見てんじゃねぇ! んだよその目はよぉ!!

 覚えてろよテメーら!!」

 

「ひぅ……!」

 

「…………」

 

 そんな彼女を見たヒロさんは【処スノート】と書かれたノートにさらさらと何かを書き込んでいた。

 ……これは見なかった事にした方がいいかもしれん。

 取り敢えず一つ言える事は……アリサさん、あんまり抵抗してると看守にザシュッとやられるかもだから諦めて懲罰房に行って来なさいな。

 

 

 ◇

 

 

 その後、食堂へやって来たオレ達だったが何を思ったのだろうか?

 ヒロさんはビュッフェカウンターに置かれた食事を全種類、手早く一口分だけ皿に持って手早く口に入れるとコクリと頷いて食堂の入り口へと立った。

 

「蓮見レイア、氷上メルルおよびカレンはOKか……」

 

「えっと……ヒロくん?」

 

「橘シェリー、遠野ハンナ、OK」

 

「あ、あの……ご飯、あれで足りたんですか……?」

 

「毒味をしただけで後でいただく。

 佐伯ミリア、宝生マーゴ、OKだ」

 

「いや毒味て……まぁ、見るからにテンションダダ下がりな料理だけどさ。

 それになんか変な匂いするし」

 

「桜羽エマ、沢渡ココ、入っていい」

 

「……なぁなぁ、何目線なんそれ?」

 

「ヒロちゃんは点呼をしてるんだと思う」

 

「なんの点呼だよ……。

 つか勝手した奴に仕切られんのイヤなんですけど〜……」

 

「ふむ、確かにそれもそうだ……。

 レイア、点呼の続きをお願いしてもいいだろうか?」

 

 ココさんの言葉に納得を示したヒロさんは、そう言ってレイアさんに丸投げしてしまった。

 急に振られてもレイアさんだって困るだろうに────

 

「え……あ、あぁ! そうだね、私はリーダーだから!!

 こほん、ナノカくん、アンアンくん入ってくれて構わないよ!!

 ……おや、ノアくんが来てないみたいだけど食事はいらないのかな?」

 

「あ、城ケ崎ノアちゃんならご飯いらないって」

 

「食欲がないのかな? それなら仕方がないね。

 諸君! どうやらここでの食事はビュッフェスタイルの様だ!

 ヒロくんが毒味をしてくれたが、問題はないらしい。

 安心して、好きな席で好きな物を食べるといい!!」

 

「…………」

 

 ────前言撤回、この人めっちゃノリノリだ。

 多分レイアさんあれだ、目立つのが好きなお人なんだろう。

 

「ひ、ヒロちゃん、一緒に「断る」……メルルちゃん、一緒に食べよ?」

 

「は、はい。それでは私は失礼します……」

 

「うん」

 

 その後ようやく訪れたお食事タイム。

 別派閥であるメルルさんと別れると、取り敢えず全種類の料理とは名ばかりと謎物質を皿に盛って、先に料理を取って席に座っていたヒロさんのテーブルへと移動する。

 

「隣、いいかい?」

 

「ならオレ向かい側失礼〜」

 

「あぁ、構わないよ。君達と一緒にいた方がみんなも落ち着くだろう」

 

 危険な行動をとった件についてオレ達は許したものの他はそうでは無い。

 ほとぼりが冷めるまでは、ヒロさんはレイアさんと行動して目立つのは控えた方がいいだろう。

 

 これはヒロさんと他の人との間を取りなした方がいいかもしれないと考えていると、オレの隣にプレートが置かれる。

 咄嗟にそちらを向くと、そこにいたのは銃を背負った少女、黒部ナノカさんだった。

 

「私もここで食べさせてもらう。いい?」

 

「どうぞどうぞ」

 

 

 まさかナノカさんが入って来るとは……なんの接点もない筈なのに…………。

 

「……」

 

「……(汗)」

 

「な、ナノカくん……?」

 

「なにかしら?」

 

「少し、カレンくんとの距離が近いんじゃないか?」

 

「……そう?」

 

 いや、明らかに近すぎるだろ。あともう一センチで肩と肩がくっつくんですけど!

 わたくし、ナノカさんの事、銃を持っているんで苦手ですの! ソーシャルディスタンスはちゃんと守ってくださいまし!!

 

 オレが椅子をずらしてナノカさんと距離を取ると、いざ食事開始。

 さて……まずはこのよく分からない緑のモサモサから……

 

「こ、これは……どうやらサラダっぽいけどまさかここまで青臭さを残すとは……いや、素材が本来持つ青臭さが増幅してるのか……それにドレッシングっぽい黒いソースは苦い中に激烈な酸味もあって、それが青臭さと融合してとんでもない事になってやがる…………。

 これを作った人はある意味天才だ……ジャイアンシチューってまだマシな方だったのか……」

 

「うっ……た、確かにずいぶんな味だな、これは。

 ヒロくん、よく平気で食べられるね」

 

「どんなに酷い味でも顔に出すのは失礼だ。

 ましてや料理の至らない点を料理評論家のごとく口に出すなんてもっての外だ」

 

 そう言ってこちらを軽く睨むヒロさん。

 確かに作ったものに対してこき下ろすのはマナー違反ではあるけど、これは明らかに計算され尽くした不味さだ。

 悪意で出された料理を素直に不味いと言って何が悪い!!

 

「……おぇ」

 

 ほら見ろ。あのポーカーフェイスのナノカさんすらえづいたほどだぞ。 

 

 この牢屋敷で生活する上でこの料理には慣れておくべきと無理して料理を口に運んでいると、同じく微妙な表情で料理を口にしていたレイアさんが話を切り出す。

 

「ところでヒロくん、カレンくんも、キミたちはこの牢屋敷についてどう思う?

 どうにか脱出する方法はないものだろうか?」

 

「君も見ただろう? 看守は私たちの想像以上にずっと危険だった。逆らうべきじゃない。

 もっとこの牢屋敷や魔女の事を優先した方がいい。

 あ、あと……申し訳ないが、私は食事中の私語を慎む様にしている。

 話は食事の後でいいだろうか?」

 

「そ、そうか……」

 

「……オレはお話しオッケーだからオレと話そうぜ?」

 

「そ、そうだね」

 

 別に食事中に話す話さないは個人の自由だし、ヒロさんは食事中に話しかけるなとは言ったが、話すなとは言っていない。

 それにオレとレイアさんの会話を咎める気は無さそうだし、オレとお話ししてもらおう。

 

「キミは何か考えはあるかい?」

 

「残念ながら。

 でもさっきメルルさんが、エマさんサイドも看守に勝てないって分かってるから、別のやり方で反抗すると思うって言ってたんだよ。

 多分脱獄に関する事だろうし、脱出に関しては一旦エマさん達に任せたらどう?」

 

「そうか。それなら先ほどヒロ君が言った様に、私たちは牢屋敷や魔女について調べていこうか」

 

「その事についてだけど」

 

 突如、会話に乱入して来たナノカさん。

 彼女はオレをジッと睨むように見ながら続ける。

 

「氷上カレン、あなたは二階堂ヒロが看守を攻撃している時に言ったわね。

 看守……()()()()()()()()()()()だと」

 

「言ったね。それが?」

 

「あなた、随分と魔女について詳しいみたいね」

 

「……!」

 

「言われてみれば確かに、カレンくんは私たちが知り得ない情報を知っていたという事か!!」

 

 ナノカさんの言葉にそう言えばそうだと言った表情を浮かべるレイアさんと、話しかけるなと言った手前何も言わないが大きく目を見開くヒロさん。

 

「単刀直入に聞くわ。

 あなたは私達の知り得ない情報を、一体何処で入手したのかしら?

 あなたは牢屋敷について……どこまで理解している?」

 

「……なーるほど、ナノカさんがオレ達に……いや、オレに近づいたのは情報を得るためか。

 椅子を幅寄せしてくっつこうとして来たし、オレのことを気に入った同性愛者の痴女とばかり……」

 

「ち、痴女……!?

 ち、ちが……それは私の魔法で探りを入れようと……っ!!」

 

 直後しまったと言った表情で口を押さえたナノカさん。

 どうやらナノカさんは情報取得系の魔法を持っているようだ。くっつこうとした件も魔法のトリガーが触れる事だと考えたら辻褄が合う。

 

 ……というかうっかり口を滑らせる辺りなんかポンコツ臭がするな。

 

「な、何よその目は……!」

 

「べっつに〜、武器持ってるし無表情だからなんか怖かったけど、なーんか安心したな〜って」

 

「この……!」

 

「ナノカ、してやられて悔しいのは分かるが、銃で脅すのは間違っている!」

 

 悔しそうな表情で銃に手をかけるナノカさんをヒロさんが諌める中、レイアさんがこちらに視線を移しながらニコリと微笑む。

 

「……それで、カレンくんがなぜ看守が不死身だと知っていたのか、教えて貰えるのかな?」

 

「いいよ。別に隠してた訳じゃないし、ここで黙秘してもいい事ないし」

 

 まさか素直に話すとは思っていなかったのか、拍子抜けたような表情を浮かべるレイアさん達。

 

 仮にここで黙秘なんてした日には、怪しいからと言う理由でぶち転がされたり、怪しいからと言う理由で魔女裁判で真っ先に吊られるのは目に見えている。

 ならば素直に全部話して信頼を得た方が遥かにいい。

 

「教えてくれるなら助かるよ」

 

「と言っても大した理由じゃないんだけどね」

 

「それは私達が決める事、早く教えて」

 

「はいはい……なぜ、オレがみんなが知らない事を知っているのか。

 ……答えは簡単、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

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