プロジェクトセカイ feat  仮面ライダー   作:ミッツー116

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お話のペース配分が難しいことを実感する日々です




第二話

 

 

 宮益坂学園屋上に繋がる扉、その前で愛莉と雫はなかの様子を伺っていた。なかの様子を聞こうと壁につけた耳からはダンス練習に励むみのりの声が聞こえてくる。

 

 

 『ワン、ツー、スリー、フォー!』

 「ねぇ、愛莉ちゃん。気になるなら中に入ればいいんじゃない?」

 「べ、別に気になってなんかないわよ!これは…往生際が悪いやつを馬鹿にしてやろうと思っただけ!」

 

 

 古き良きツンデレ仕草で否定する愛莉に雫は困り顔を見せている。昨日の言葉からみのりのことが気になっているのは雫も一緒だ、何とか中に入るきっかけはないだろうか。

 

 

 「2人とも何やってるんですか?」

 「きゃあーー!!?」

 

 

 第二話  「交差する拳」

 

 

 「なるほど、昨日はストーカー被害者だったのが加害者になったわけね」

 「誰がストーカーよ!」

 

 

 大声を上げたことで存在がバレた愛莉が葵の言葉を否定する。音だけでは気づかなかったが昨日ここに隠れてたメンバーはそのまま集まっていたらしい。

 

 

 「お前は何しに上がってきたんだ?」

 「お昼です、クラスに馴染めなくて」

 

 

 馴染むつもりがあるならクラスにいるべきだと思うが口にほ出さない、自分のペースがあるんだろう。そんな会話を太陽たちがしている間にみのりが愛莉たちに話しかける。

 

 

 「あ、あの!桃井先輩達にお願いがあるんですけど!」

 「お願い?」

 「その…私歌とダンスをずっと練習はしてるんですけどちゃんと習ったことはなくて…太陽くんと調べてみたりするのも限界があるし、それでもしよければ私の練習を見てもらえないでしょうか!」

 「何で私たちがあんたの練習を観なきゃいけないのよ!」

 

 

 みのりのお願いをつよい言葉で否定する愛莉、確かにメリットと呼べるものはないし仕方がないのかもしれない。そんなとき予想外の方面から援護射撃がくる。

 

 

 「…私は、私でよければ力になるわ」

 「雫ぅ!?あんた何言ってんの!?」

 「貴方をみていると、昔のひたむきに努力していた頃を思い出すの。その夢の力になってあげたい、あの時愛莉ちゃんがしてくれたみたいに」

 「雫…あーもう!わかったわよ!私も手伝ってあげる!」

 

 

 雫の真剣な表情を見ると愛莉も根負けしたのか了承する。

 

 

 「主体性がないなぁ」

 「まぁまぁ、丸く収まりそうなんだから黙っててくれよ」

 「そこ!うるさいわよ!」

 

 

 呆れる葵を太陽が諌めていると愛莉から怒りの咆哮が飛ぶ。レオといい最近吠えられてばかりだ、こんな所でよく遥は読書が出来る。そうしていると愛理はみのりに条件をだす。

 

 

 「いい!教えるのは次の応募まで!そこで結果を出せなかったらもう知らないからね!」

 「はい!よろしくお願いします!桃井先生!」

 

 

 ひとまず丸くおさまったのを見届けるとあることに気づく。

 

 

 「そういやあいついないな、あの…こうやって首根っこつかんでたイケメン」

 「再現のためだけに掴まないでください」

 「あぁ、拳治くんなら今日はお仕事よ。午後も来ないで道場に行くって言ってたわ」

 「仕事に道場?」

 

 

 首を傾げながら尋ねる。学校より優先なのだろうか。

 

 

 「拳治くんは私と同じ事務所でモデル業をしているの、私とは違ってモデルが本業よ」

 「まぁイケメンだったしな。それで、道場は?」

 「昔からお友達の家の道場で格闘技をやってるの。確か中学で空手日本1になったって言ってたわ」

 「はぇ~そんな奴に首掴まれてたんだ烈」

 「命の危機でしたね」

 「いや~でもだとしたら…」 

 

 

 太陽は話を聞きながら昨日もらったドライバーを取り出す。

 

 

 「仮面ライダー手伝ってくれたら助かるなぁ」

 「太陽くん、また戦うの?」

 「うーん、多分また出ると思うんだよなぁ。こういうの1年くらいのイメージない?」

 「まぁテレビではそうですよね」

 

 

 そう言うと烈と葵もそれぞれドライバーを取り出す。烈に関してはスフィアも取り出すがその色は灰色だ。

 

 

 「でもこれ、太陽くんみたいに色変わらないんですよ」

 「本当の想いを見つけたら力が宿るって言ってたね」

 「俺それよくわかんないんだよな〜、持ったら変わったし」

 

 

 思い当たる節が全くないのになぜ色がついたのか、謎が謎を呼ぶ中みのり達の練習風景を見る。とにかく行動のみのりをみていると答えの出ない問いを考えるのもバカらしくなります立ち上がる。

 

 

 「俺等も踊るか」

 「何で?」

 「じっとしてられないんですか?」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 怪人のセカイでまた一匹異形が生まれていた。黒い甲殻に全身を包んでおり頭から小さな触角、口元には強靭な顎が横向きに開閉している。

 

 

 「アントノーネイムってとこだね」

 

 

 怪人の出現をメガネのマッシュヘアーの青年が見つめる。その青年が手のひらを下向きにしながら前方に手を伸ばすと赤黒い泥がたれ地面に泥だまりをつくりそこから戦闘員が生まれる。

 

 

 「君に頼みたいことがあるんだけど、いいかな?」

 

 

 アントに問いかけるも返事はなくどこかに向かって歩き出すとその後ろを戦闘員がついていく。

 

 

 「話通じてんのかなあれ」

 

 

 まぁ奴が外で暴れれば目的は達成されるだろう。そう考えると自身もセカイの外に出る、タイヨウの写真を持ちながら。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 「はい、目線こっちお願いしま~す」

 

 

 スタッフの指示にしたがい目線を調整する、写真を撮り終えると写真を共に確認し仕上がりを確かめる。これで今日の仕事は終わりだ、約束の時間に間に合うようにスタジオを出る。

 

 

 「ねぇねぇ今度一緒にまたご飯行こ〜よ」

 「え〜いいんですか〜?」

 「お疲れ様でーす」

 

 

 カメラマンとモデルが食事の約束をしてる横を通り抜けると思う、モデルって思ってたのと違うなと。町中でスカウトされたときはもっと楽しい思いが出来ると思っていたが意外と制約も多く窮屈だ。そんなことを考えながら進んでいる内に約束の道場に着く。

 

 

 「お邪魔します」

 「うむ、来たか拳治くん」

 「お疲れ様です、師範」

 

 

 道場に座っている初老の男性に挨拶する。弟の友達の父親ーー些か遠いが自分に良くしてくれている人だ。その場で道着に着替えると中心で向かい合う。

 

 

 「今日は本気でお願いします」

 「何時もの軽い運動ではなくか、珍しいな」

 

 

 そう言うと拳治が襟を掴もうとした手を弾き逆に掴みにくる、それを下がることで回避すると右手で牽制の一撃を放ち本命の一撃をつくる隙をつくろうとするが中々見当たらない。一気に攻め込むために踏み込み相手の懐に入り込み掴む。そのまま投げようとした腕を掴まれると硬直状態になる前に足払いをかけ倒す。地面に師範が倒れ込むと上から体重をかけ動けないようにする

 

 

 「強引だな…!待ったがかかるだけで一本にならないぞ…!」

 「これは試合ではないので…!」

 「…ふう、ここまでにしよう」

 

 

 師範の言葉に手を離し着替えを取りに行く。何時もこうやって一試合だけ行うとすぐに帰る、あくまで勘をいつでもスイッチ出来るようにする目的のもので訓練とかではないのだ。

 

 

 「本当に格闘技も刑事も目指さないか?君には才能がある」

 「才能を活かすならこの顔です。俺の美貌で世界を笑顔にしますよ」

 「ふ、そうか。本が出たら教えてくれ、また買うよ」

 

 

 着替えながらもう少し話す。そう頻繁に会うわけではないので話せるときに話しておきたい、と言っても雑談程度だが。

 

 

 「警官やるってんなら新一はどうなんです?」

 「あの子は優しすぎて向いていない…兄とは違って辛い思いをさせるだけだろう」

 「優しいと警官は出来ないってのも変な話な気がしますけど」

 

 

 着替え終わると拳治は荷物を持って出口にむかう。

 

 

 「そもそも、法律が覚えらんないので警官とか俺には無理です。捜査してる内に自分が法を犯してそう」

 「それは問題だ」

 「だから、もっと簡単な理屈なら動いてもいい。頭悪いなりに理解できる範囲でね」

 

 

 これもそのための準備なのだから、そう思いながら道場をあとにした。

 

 

ーーーーーーー

 

 

 放課後、太陽は屋上で愛莉とみのりの練習を見ていた。雫は仕事があり、烈も何やら用事らしい。遥と葵は分からないが…詮索する必要もないだろう。

 

 

 「ふぅ、一旦休憩にしましょうか」

 「はい!ありがとうございます!」

 「あんた体力あるわね、今までずっと練習してきただけはあるわ」

 「え!?本当ですか!?」

 

 

 練習を続けるなかで愛莉の態度が軟化しているのを感じる、そもそもこちらが本来の性格なのだろう。2人に飲み物を渡しながらその場に座る。

 

 

 「ねぇ太陽くん…朝にも聞いたけど、また怪人が現れたら戦うの

 「う〜?まぁそのつもりだけど」

 「そっか…」

 

 

 そういうみのりの顔は不安そうだ。

 

 

 「…あれって、本当にあんたたちがやらないといけないことなの?警察とか…もっとしかるべきところに渡すべきなんじゃないかしら」

 「それが出来ないから俺らに渡してんじゃね?」

 「そうかもだけど…この子、あなたのことが心配なのよ」

 「うーん…」

 

 

 愛莉の言葉に頭を悩ませる。言うことはもっともだ、しかし戦うのをやめるわけにもいかない。そこまで考えると太陽は決める。

 

 

 「よし!みのり、手を出せ!」

 「へ?手?」

 「おう、約束だ!」

 

 

 そう言うとみのりの小指と自分の小指を絡める。

 

 

 「約束する、今後どんな敵が現れたって俺はみのりの所に帰ってくる。みのりを悲しませるようなことは絶対にしない」

 「太陽くん…」

 「俺、みのりとの約束破ったことなんか無いだろ?」

 「…うん!」

 

 

 そう言うと2人は指切りをする。世界の平和と同じくらい守らないといけないことが一つ増えたことを太陽は感じた。

 

 

ーーーーーーー

 

 

 一本その頃、葵と遥は2人で帰っていた。アイドルを辞めて普通に学校に通い始めてからの恒例になった、久しぶりの2人の時間だ。アイドルになる前はよく一緒に帰っていたが…葵が距離をとっていた。

 

 

 「遥ちゃん、学校はどう?楽しい?」

 「?葵、お父さんみたいなこと言うね」

 「まぁ保護者みたいなもんだよね」

 「違うでしょ」

 

 

 笑いながら葵の話に応える、茶化してしまったが要は自分を心配してくれているのだろう。幼なじみの気遣いを感じながら言葉を続ける。

 

 

 「楽しいよ、授業もしっかり受けられなかったから新鮮だし。葵とも一緒にいれるしね」

 「じゃあ…屋上は?辛くない?」

 「…そっちが本題だよね」

 

 

 屋上で出会った自分を推している女の子、ただひたむきに夢に向かって…アイドルになろうとする姿を見るのは確かに葵に気を遣わせてしまうだろう。何より自分がアイドルをやめるきっかけを、ひたすら努力する彼女の姿は被ってしまう。

 

 

 「正直…つらくないわけじゃないよ。でも、もう少し…みのりをみていたいかな」

 「…そっか」

 

 

 そう言うと葵は黙ってしまう。不器用な幼なじみだ、こういう時に場を盛り上げるようなことが思い付かないんだろう。ここは人肌脱ぐとしよう。

 

 

 「部活とか初めて見る?中学のバスケ部みたいに」

 「遥ちゃんはやればいいと思うよ。僕は団体行動とか無理だから」

 「社会不適合者?」

 「言い過ぎだよ」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 「お疲れ様、みんな」

 

 

 レッスンを終え、メンバーにねぎらいの言葉を雫はかける。久しぶりにみんなと一緒に練習が出来た。普段センター抜きの練習をさせてしまって迷惑をかけている分ここでしっかり挽回しなければ、そう思い自主練に移ろうと思った時に後ろから声をかけられる。

 

 

 「雫、ちょっといいか。次の仕事の件で話がある」

 「あ、はい…分かりました」

 

 

 マネージャーに呼ばれ向かう、話の内容は単独でのモデルの仕事の話だったが…撮影日がライブの日と被っていた。

 

 

 「その…モデルの仕事はもちろん嬉しいんですけど、その日のライブは…最後に出たのも大分前になりますし…」

 「雫、確かにお前の言うことはわかる。だがお前がモデル業をやることでグループ全体の宣伝に繋がるんだ。それはやがてはグループの、そしてファンへの恩返しに繋がる。分かってくれるな」

 「…はい、分かりました」

 

 

 その言葉を最後にスタジオに戻る、ドアの前まで来ると中からメンバーの声が聞こえる。内容はいつもと同じ、事務所に押される自分への不満だ。

 

 

 『顔がいいからってゴリ押しされんのマジムカつく』

 『練習にもろくに来ないくせにセンターとか調子のってる』

 「っ!みんな、お疲れ様。抜けちゃってごめんなさい」

 「あっ雫、そんなの気にしないで良いのに〜」

 

 

 自分が戻って来たと共に取り繕った表情になる、私が気付いてないと思っている。そうしたほうがグループが上手く回るならと自分も深く追求しないし相談もしていない、だが噂も出回り初めて愛莉の耳にも入っていた。

 

 

 (もう、限界なのかな)

 

 

 帰路につきながら考える。自分はもう夢みたアイドルにはなれないのかもしれない、昔愛莉をみて憧れたようなアイドルには。そう思いながら歩いていると曲がり道で予想外の人物に会う。

 

 

 「うぇ!?雫ちゃ…日野森先輩!?」

 「あら?あなたは…確か愛莉ちゃんのファンの…烈くんって言ったわよね?」

 「あ、はい…あ!」

 

 

 そう言うと烈は何かに気づいたかのように手に持った買い物袋を後ろに隠す。

 

 

 「?どうして隠すの?」

 「へ!?いや…その〜」

 

 

 ごまかそうとしばらく目を泳がせたあと、観念したかのように袋から中身を取り出す。何処かのアイドルグループのCDだった。

 

 

 「違うんです…これは、決して浮気とか…愛莉ちゃんから心が離れてるとかではなく…最近結成して推せるなぁと思って…」

 

 

 どうやら他のグループを推してることを愛莉にバレるのが気まずかったらしい。自分としてはもしファンの人が他のアイドルを推してても気にしないが…ファン側が気にしてしまうのだろう。本気で申し訳なさそうな烈を見ると少し笑みが浮かぶ。

 

 

 「ふふ、ホントにアイドルが好きなのね」

 「え?あ、はい…大好きです」

 「ねぇ、烈くん…やっぱり好きなアイドルに会えなかったら、ファンの人は悲しいわよね…」

 「え…ま、まぁそれはそうだと思いますけど」

 「…やっぱりそうよね」

 

 

 烈の言葉に雫の表情が暗くなる。最後にファンの顔を見たのは何時だろう、こんな自分がアイドル続ける意味があるのだろうか。

 

 

 「あの…日野森先輩、大丈夫ですか?」

 「…ええ、大丈夫よ。レッスン終わりだから…疲れちゃってるのかも」

 「あ、あの!」

 

 

 雫の言葉に突然烈は声を上げる。

 

 

 「その…あんまり良くないかもですけど、僕でよければいつでも相談してくださいね」

 「え?」

 「いやまぁ同じアイドルの愛莉ちゃんもいるし、拳治って人のほうが頼りになりそうですけど…近いからこそ言いにくいこともあるでしょうし。一応同じ学校ですししばらく友達も出来ず暇にしてると思うので…」

 「…優しいのね、烈くん」

 

 

 自分を気遣ってくれるその姿に胸が苦しくなる。こんな子を関係のない問題に巻き込むのは申し訳ない、その場を去ろうとしたその時。

 

 

 「烈!雫!」

 「え?あ、日比谷くん」

 「太陽って呼んでくれよ!じゃなくて、大変なんだ」

 「どうしたんですか?」

 「また怪人が出た!この先で暴れてる!」

 「え!」

 

 太陽の言葉に声を上げるがある意味そうでもなければここまで走ってこないだろう、しかしそれより気になることがある。

 

 

 「それで…なんで花里さん達まで?」

 「へ?うわぁ!?お前らなんでついてきてんだよ!?」

 「だ、だって心配で…」

 「戦わないんだからきてもしょうがないって!?んぐ…!?」

 

 

 どんどん頭痛が強くなる、怪人の規模がひどくなっているようだ。

 

 

 「しょうがない!危ないことはするなよ!」

 「うん!」

 「烈!お前一緒にきて見張っててくれ!」

 「え!でも僕戦えない…」

 「来てくれるだけでいいから!」

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 「うわぁーーー!!」

 「助けてくれぇー!!」

 

 

 とある工場で従業員たちが逃げ惑っている。全身黒ずくめの謎の集団による襲撃を受けていたからだ。一刻もはやくこの場を離れるべく走っていると足が動かなくなりその場に倒れ込む。

 

 

 「いでっ!」

 

 

 顔を地面に打ちつけ鈍い痛みが走る。何が起こったのか理解できず足元をみると、地面から生えた黒い手が自分の足を掴んでいる。だが恐ろしいのはここからだった。

 

 

 「ひっ!」

 

 

 地面から生えた手がもう一本増える、その手はどんどん地上に伸びていき肘、肩にまで達そうとした時今度は黒い2本の棒のようなものが生えそちらもどんどん伸びてくる。伸ばした手で地面を掴み這い上がるようにすると棒の根元から世にも恐ろしい顔の化け物、アントノーネイムが現れる。

 

 

 「うわぁーー!!」

 

 

 屈強な作業員が情けない悲鳴を上げるとアントはその身体を掴み口を開く。開いた口からは蟻酸が垂れ落ち、それが作業員の身体や服に落ちると煙を上げながら蒸発していく。身体が溶かされる恐怖にさらなる悲鳴が上がるのをみてアントの無機質な瞳が愉悦の表情を浮かべる、その時。

 

 

 「うおらぁ!」

 

 

 駆けつけた太陽の飛び蹴りがアントに激突し吹き飛ばす。地面を転がる姿を流しすぐに倒れている男を抱え起こす。

 

 

 「大丈夫か!?早く逃げろ!」

 「あ、ありがとう!」

 

 

 走り去っていく男が出ていった出口の隅にみのりたちが隠れながらこちらを見ている。取り敢えずは襲われていないことに安堵しながらベルトを装着し怪人に向き直る。立ち上がったアントの周りには戦闘員が集まっていた

 

 

 『セカイドライバー!!』

 「戦闘員ってやつか?イー!って鳴いてみろ!」

 

 

 スフィアを取り出し変身しようとしたその時後ろから戦闘員が刃を振るい襲いかかる。

 

 

 「うわぁ!ちょっ!待てよ!」

 

 

 襲いかかる刃を持つ腕を掴み振り回すように投げ回すとさらに多くの戦闘員が襲いかかる。工場の建物のなかでこれだけの数を相手するのは厳しいが外に出ようにも出口にいるみのり達のところを通るわけには行かない。

 

 

 「っこっちだ!」

 

 

 工場の機械をよじ登り上を走り抜ける、進行方向上に同じくよじ登った戦闘員がいるが狭い足場ゆえに1体ずつしかくることが出来ない。長々戦うことはせず機械から叩き落とすことで処理をしていく。

 

 

 「よっ!」

 

 

 機械からジャンプし上の足場を掴みよじ登る、梯子を使わなければ登れない位置。ここなら時間を稼げると判断しスフィアを起動する。

 

 

 『タイヨウ!!』

 

 

 ベルトにスフィアをはめ込むと開いた右手を天にかざす、ゆっくり下ろして顔の前に来ると大きく身体をねじりながら腕を横に振りかざし拳を身体の前で握り締める。

 

 

 「変身!!」

 『CHANGE THE TAIYO!!』

 「行くぜ!」

 

 身体を炎がつつみ込み変身が完了すると足場から飛び降りる。戦闘員の中心に着地すると戦闘員が次々迫ってくる中両手に炎をまとい迎撃体勢をとる。

 

 

 「ほっ!よっ!」

 

 

 炎を纏った拳が戦闘員を殴り倒す、一発で倒れ伏していく戦闘員を横目にみながら次々とその姿を量産していく。振るわれた刃も炎越しなら刃そのものを掴むことが出来る、左手で刃をとめ右手で殴り飛ばす。順調に数を減らしていくタイヨウに安堵の表情をみのりは浮かべる。

 

 

 「よかった…こないだみたいなことにはならなそう」

 「でも、これはこれでまずいんじゃ…」

 「へ、どうして?」

 

 

 優勢のはずのタイヨウをみて不安げにする烈に雫が疑問の声を上げる。今どう見ても順調なのに何が心配なのだろう。

 

 「だってこないだすぐ体力切れてましたよね?あんなに大勢と戦ってたら」

 「う、動けなくなっちゃうかもってこと!?そんな…」

 「くそっこれが使えればな…」

 

 

 手元のブランクスフィアをみつめる。2人で戦えば体力消費も抑えられるだろう。しかし未だに本当の想いというのが分からない、歯がゆい想いをしながら見つめることしかできない。

 

 

 「うらぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 その場で炎を噴き出しながら回転し、一気に残りの戦闘員を焼き払う。これで雑魚は片付いた、基本的に炎も抑えたし十分に余力はある。そう思い周りを見渡すと、アントの姿が消えていることに気づく。

 

 

 「?どこに…」

 

 

 次の瞬間、タイヨウの後ろの地面からアントが飛び出し首を絞め上げる。

 

 

 「!?こ、こいつ…」

 

 

 ここに来た時には既に出ていたため地面に潜れることを知らずまんまと罠にかかる。かなりの力で絞め上げられ息ができない、振りほどくにもアントの力がこちらを上回っていた。打開策を探すと近くの金属片に自分の後ろの状況が見える。

 

 

 「よ、よし…!一か八か…」

 

 

 意を決すると思いっきりアントを思いっきり持ち上げおんぶのような体勢になる。腕を固めることに集中していたためか大した抵抗もなく持ち上がる。

 

 

 「うぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 そのまま後ろに向かって走り出す。むかうは一つ、壁に取り付けられた窓ガラスに向かって思いっきり突っ込みぶち破る。破片をまき散らしながら地面を転がると予想外の一撃に拘束も外れさらに距離もとる。

 

 

 「〜〜、空気がうまいぜ。こっちのが広いしな」

 

 

 解放された肺に空気を取り込みながらファイティングポーズをとる。結果的に外の広いスペースに出ることもできた、中で戦うよりも工場への被害も抑えられるだろう。流れがこちらに向いてきたのを感じながらアントに向かって走っていく。

 

 

 「ハァッ!」

 

 

 炎の拳がアントの胸を打つ、戦闘員より強固な装甲は甲高い音を響かせるだけで大したダメージにはならない。乱打を繰り出しダメージを狙うが反撃に爪が振るわれ紙一重で回避する。前回のレオに比べれば戦闘力自体は高くない、つけ入る隙もある。そう判断し攻めの姿勢を継続する。

 

 

 『問題、蟻は一度の交尾で20年子供を産み続ける、◯か☓か?』

 「は?」

 

 

 突然どこからか問われる。意味不明な質問、いやクイズか。理解が及ばないなかアントの攻撃をさばく、目の前のこいつが言ったわけではなない。何が起こったのか考えているうちに天から雷撃がタイヨウに直撃する。

 

 

 「!?ぐわぁぁぁぁぁぁ!?」

 「太陽くん!?」

 

 

 突然の攻撃にタイヨウは悲鳴を上げる。全身を貫く痛みにどうすることもできず、雷撃という特性上攻撃が止んでも身体が痺れて動かない。その隙にアントの強靭な爪による突きで吹き飛ばされる。

 

 

ーーーーーーーー

 

 「正解は◯。女王アリは最初に交尾したときの精子を保管し続けて生涯子供を産み続けるんだ」

 

 工場内の離れた位置に一人の戦士が立っている。腕がついたドライバー、胸には◯と☓の描かれた装甲が纏われており顔には巨大なクエスチョンマークが付いている。その視線の先では強烈な一撃を食らったタイヨウが地面に仰向けに倒れている。

 

 

 「ま、聞こえてないかな」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 「くそ!なんや今のクイズ!」

 

 

 どこからか飛んできた意味不明な横槍に烈が声を上げる。なにがなんたか分からないがどう考えてもあの蟻怪人を助けるための一撃だ。しゃべったということは人間なのか?疑問が尽きない中アントはタイヨウに近づく。

 

 

 「あ…うぐ…」

 「っ!!太陽!早く立ちなさい!」

 

 

 愛莉が叫ぶもタイヨウは立ち上がることができない。今の爪もライダーの装甲でなければ身体を貫通するレベルの攻撃だ、無防備な状態で食らえばこんな状態になってしまう。アントはタイヨウを掴むと持ち上げその首筋に噛み付く。

 

 

 「!?ぐあぁぁぁぁぁ!!」

 「いやぁぁぁ!?」

 

 強烈な痛みにさらなる悲鳴を上げる。生きたまま喰われる幼なじみを前にみのりが悲痛に叫ぶ。バリバリという音をしながら飲み込みさらに喰い進もうとしていく。

 

 

 「何とか…なんとかしなきゃ…」

 「ちょっと!無理に決まってるでしょ!」

 「でも!このままじゃ太陽くんが!」

 

 

 なにか武器になりそうな物を探し始めるみのりを愛莉が止める、自分たちが行ってどうにかなる状況ではない。烈がブランクのままでも変身出来るか試そうとドライバーを取り出した時、アントが後ろから頭を蹴り飛ばされる。

 

 

 「ギィッ!?」

 「ぐっ!」

 

 

 アントが吹き飛んだことで解放されたタイヨウが地面に倒れ込む、肩で大きく息をするタイヨウに蹴りを放った人物が話しかける。

 

 

 「大丈夫か?太陽」

 「お前は…拳治!?」

 

 

 アントを蹴飛ばした人物が拳治であることに驚く。変身もせずに怪人を蹴り倒した、空手日本一は自分が思っているよりはるかにすごいことを実感するとアントが立ち上がる。

 

 

 「フシィィィィィ!!」

 「蟻って怒るんだな」

 「…ありがとう、下がっててくれ。こいつは俺が…」

 

 

 立ち上がりアントに向き直ろうとするタイヨウの肩を拳治が止める。その手にはドライバーが握られていた、それをみた愛莉が走ってくる。

 

 

 「ちょ、ちょっと!」

 「愛莉か、こいつ頼む。肩から凄い血が出てる」

 「あんた戦う気なの!?分かってるの!?すっごい危ないのよ!」

 「?だからだろ」

 

 

 愛莉の言葉に首を傾げながらドライバーを装着する。

 

 

 「こいつ年下の後輩だぞ?そんなやつ一人で戦わせられるかよ」

 『ツカイドライバー!!』

 

 

 当然のように言い放つと水色に輝くスフィアを取り出し起動させる。

  

 

 「まぁ心配するな、俺はこいつより強い」

 『スマッシュ!!』

 

 

 起動させたスフィアをベルトに入れると刀を閉じる。

 

 

 「スゥーー」

 

 

 目を閉じ深く息を吐き両手を前に持っていき軽く合わせる、少し間を置いて目を開き右手でドライバーを開き握り締める。

 

 

 「変身!!」

 『START ABILITY SMASH!!』

 

 

 地面から2本の光る棒、サイリウムが飛び出す。光の軌跡を残しながら拳治の周りを飛ぶと光と重なった部分の姿が変わる。それを繰り返し全身を包んだあと、小型化したサイリウムがベルトのしたにくっつくとそれを拳治は指で弾く。

 

 

 「帯か?どっちかと言うとズボンのゴムひもみたいだけど」

 

 

 肩までを水色の装甲が覆うがそこから先は黒い網目のアンダースーツ手だけは体と同じ装甲に包まれ守られている。装甲は胴着を模しているのか胸元が襟のような形になっている。下の装甲も服のように全身一体ではなく裾のような部分から黒いアンダースーツと水色のブーツに纏われた装甲が出ている。

 

 

 「名前をつけるなら仮面ライダースマッシュッてところか?」

 

 

 自身の変化を確かめていると新たな敵に向かってアントが走ってくる。腕を振るい爪の一撃を食らわせよとした次の瞬間、その身体が宙を舞う。

 

 

 「????」

 

 

 宙を舞う感覚に理解が及ばない。合気道、昆虫には理解できない人間の技術によるカルチャーショックを覚えながら身体が地面に墜落する。

 

 

 「めちゃくちゃ飛んだな」

 

 

 スマッシュ自身も能力に驚く。軽く投げ飛ばしたつもりがずいぶん飛距離が出た、ライダーの力を上手く制御しないと余計なものまで壊してしまいそうだ。

 

 

 「ギギッ!」

 

 

 再び振るわれた爪に対し手首を甲でリズムよく2回たたくと勢いよく弾かれる。理解出来ず今度は肩を掴んで噛みつこうとすると逆に片手をもたれ後ろ手に押さえつけられる。

 

 

 「ギギギィッ!」

 

 

 人生初の関節を痛めつけられる感覚に悲鳴を上げる。少しして手を離すとアントが怒りのまま振り返り、そのまま腹に正拳突きを食らわされ吹っ飛ぶ。   

 

 

 「予想よりはるかにに弱いな、こないだの見る限り太陽でも勝てそうだが…」

 

 

 初陣の相手として歯ごたえのない相手だとスマッシュは手を振りながら近づく、タイヨウの炎の拳にも怯まなかった装甲は拳治の拳一発で大きく凹んでいた。

 

 

 『問題、蟻は威嚇の際顎を鳴らす、◯か☓か』

 「ん?知らね、なんだそれ」

 

 

 再びどこからかクイズが飛んでくる。何も考えず答えるも◯か☓かで答えなかったためか雷が落ちてきて直撃する。

 

 

 「ギギッ!」

 

 

 本日2度目の天からの救済にアントは追撃とばかりに飛びかかる。すると再びその腹に拳がめり込み吹き飛ばされる。

 

 

 「びっくりした、こんな事もできるのか」

 

 

 突然の雷撃により痺れを全身に感じながらスマッシュは続ける。タイヨウを反撃不能にした攻撃にも関わらずピンピンしている。長年鍛えた反射神経により痛みを無視して反撃までしてきた。叶わないと悟ったアントの背中から羽が生える。

 

 

 「な!?お前逃げる気か!」

 

 

 スマッシュの追求を無視し飛び上がる。そもそも戦いに興味はない、ここを離れて別の場所で人間を襲えばいい。地面のスマッシュを見下ろしながらそう考えていたアントの頭が後ろから掴まれる。視線を向けると炎で空を飛んだタイヨウがそこにはいた。

 

 

 「逃がすわけないよなぁ!虫野郎!」

 

 

 炎を纏った蹴りでスマッシュの所に叩き返す。急降下しながらスマッシュを見るとベルトを操作し必殺の準備を終えていた。

 

 

 「ナイスだ太陽。さて、俺の拳は痛いぜ?」

 『MASTER ABILITY SMASH!!』

 

 

 スマッシュの腕が輝く、腰を落とし変身ポーズのときと同じ構えを取りながら叫ぶ。

 

 

 「ストロング!スマーッシュ!!」

 

 

 拳が突き刺さり、タイヨウのもとへとんできたのを回るようにかわす。そのままアントは空高くとんでいき、空中で大きく爆発する。

 

 

 「あぶな!た~まや~!」

 「汚え花火だ」

 

 

 爆散を見届けるとタイヨウが地上に降りてきて変身を解除する。すると痛みが走ったのか肩を抑える。

 

 

 「てて…また病院だよこれ…学生で良かった」

 「太陽くん!大丈夫!?」

 「あの蟻に噛まれたとかばっちいな」 

 「拳治!あんたも雷撃たれてたわよね!?」

 「そうよ!大丈夫!?」

 「ん?」

 

 

 心配する愛莉と雫の言葉に自分の身体をポンポンと叩く。

 

 

 「うん、大丈夫だ」

 「いやあれ無茶苦茶痛かったぞ…」

 「鍛え方が違う」

 「ていうか、本当の想いっての見つかったんですか?」

 「ん?いやもらったときに色変わったぞ俺」

 「えぇ!?」

 

 

 予想外の返答に烈が声を上げる、まさか色がついていないのは自分だけなのか。

 

 

 「これ本当に想いってのいるのかぁ?俺もすぐ変わったぞ」

 「お前ら難しく考えすぎじゃね?アイドル4人でステージ出来てんだからこれ人生の目標とかの意味だろ」

 「にしたって俺ないけど」

 「普段から大事にしてることとか、無意識でもちゃんと守ってれば持ってる扱いなんじゃないか?」

 「大事にしてること…」

 

 

 そう言われ少し考えると走るポーズをとる。

 

 

 「いつも全力全霊!」

 「それだ」

 「それでいいんですか!?」

 「それじゃあ、拳治くんは何を込めたの?」

 

 

 雫の問いに拳治は答える。

 

 

 「モテたい」

 「え?」

 「モテたい」

 「…それで変身したんですか?」

 「うん」

 「え〜…」

 「モデルにスカウトされた時も…」

 

 

 中学3年、町中で歩いていた時。

 

 

 『君!モデルとか興味ない!?』

 『(モデル…モテそうだな…)あります』

 

 

 ベルトをもらった時。

 

 

 『それじゃあベルトとスフィア渡しておくね』

 『(ライダーの俳優ってお母さん人気凄いらしいしモテそうだよなぁ)あ、光った』

 

 

 拳治の話に烈はわかりやすく凹む。

 

 

 「モテそうで光るって…なんで俺のは…」

 「え、え~と…なんかごめんな」

 「き、気にしないでいいのよ烈くん!自分のペースってあるもの!」

 「いやマジで気にしなくていいわよこんなの」

 「てかそんなん言うなら俺かてモテたいわ!」

 「もっと心の底から思わないとダメなんじゃね?」

 

 

 実際は自分の気持ちに嘘をつかないという拳治の信念がスフィアに宿っているのだが、それに気づけるものはいなかった。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 『ストロング!スマーッシュ!!』

 「彼は厄介だな」

 

 

 アントとスマッシュの戦いの映像をみながらマッシュの青年が呟く。クイズの攻撃にも怯まず、高い戦闘能力をもつ。こちらも別の手段を考えなくては。

 

 

 「君らの中に打開策があるといいけど」

 

 

 彼は机のうえに置かれたいくつものスフィアを眺めながら呟く、そのうち一つにはクエスチョンマークが付いていた。

 

 




設定
 
 仮面ライダースマッシュ
  拳治が変身するライダー。岩石などを生み出し操れる。得意戦法は空手、柔道、合気道などを織り交ぜた近接戦闘。ツカイドライバーのあらゆる武器を使いこなす能力が狂気レベルまで押し上げられた拳治の身体に適応されておりとんでもない戦闘力を発揮する。
  ベルトが帯代わり。

 仮面ライダー??? クイズセレクト
  仮面ライダークイズの力が込められている。2択のクイズを出し間違いや時間切れで雷撃を食らわせる。クイズに正解出来なかった時点で防御は不可能。


 アントノーネイム
  蟻型の怪人。硬い装甲とパワーが武器。口から出す蟻酸は生き物なら溶かせるがライダーなどの一定の高さを持つものには無意味。オス。


次回予告
 「あなた、本当にアイドルが好きなのね」
 「今度はまた変わった怪人が出たな」
 「攻撃が効かねぇ!」
 「僕が何とかしないと」

 『第三話 ヤンキー君はドルオタ』

 「結局…僕はこんなことしかできない」
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