プロジェクトセカイ feat 仮面ライダー 作:ミッツー116
「ハァッ、ハァッ…」
髪を掻き上げた烈が肩で息をしている。何処かのトイレ、宮益坂とは違う制服を着ており眼鏡もしていない。周りには同じ制服の男子生徒が何人も倒れている。烈はそのまま歩き出し一つの個室を開けようとするも中から鍵がかけられている。
「…おい、もう出てきても大丈夫やぞ」
中にいる誰かに声をかける。すると中から鍵が開く音がして勢いよく扉が開くと隠れていた人物が悲鳴を上げながら走り去っていく。
「助けてくれぇー!!」
「…助けたやろ」
悲鳴を上げながら走り去る背中を見つめて烈は呟く。その後ろで倒れていた男がゆっくりたち上がり背後から烈に殴りかかろうとするが、その顔に烈の肘がめり込む。
「がっ…」
「…」
肘鉄をくらい倒れ込んだ男に近づき胸ぐらを掴む。
「ゆ、ゆるし」
言い切る前に拳がめり込んだ。
第三話 「ヤンキー君はドルオタ」
何処かの山奥、そこでタイヨウとスマッシュが対峙していた。周囲を静寂が支配する中、合図もなくお互いに向けて駆け出す。
「ハァっ!」
「フンッ!」
タイヨウの振るった拳をスマッシュが弾きカウンターの拳を腹に決める。痛みに後退したところを距離を詰めハイキックが決まり大きく吹っ飛ぶも空中で体勢を立て直し着地する。
「んなろ!」
タイヨウが手から炎のボールを投げつける。それをかわすと今度は5つの指すべてに少量の炎の球が付いている。
「タイヨウフィンガーショット!」
指から放たれた5つの炎弾に対してスマッシュは下がらず逆に間を通り抜けるように突っ込む。
「いい!?」
『MASTER ABILITY SMASH!!』
必殺の一撃を起動させ腹に拳がぶつかる、その瞬間アラームが置いていたカバンから鳴り響く。その音を聞くと2人は変身を解除する。
「あ~1回も勝てなかった〜!」
「そりゃそうだ、日本一だぞ俺」
「そりゃそうかぁ…」
2人はカバンを取ると山から下りるため自転車に乗る。
「朝礼間に合うかなぁ」
「地図アプリの時間設定を信じろ」
ーーーーーーー
昼休み、何時もどおり8人は屋上に集まっていた。
「それじゃあ、2人は今日特訓してから来たんですね」
「うん」
「2人になったとは言えまだまだ敵の規模もわからんしな」
先日のクイズの件もある。あれが一体何だったのかを突き止めることがしばらくの目標だろう。
「みのり、動きが落ちてきてるわよ!」
「指先の意識も疎かになっているわ、もう少し細部まで意識してみましょう。」
「はい、先輩!」
愛莉と雫の指導に今日も熱が入る。みのりのレベルが徐々に上がり、応募の期限も近づいていたことから何度の高いことも要求されてきている。
「…」
「皆大変そうだねぇ」
「葵は参加しないの?」
「興味ないね、どっちにも」
読書しながらみのりたちを見ている遥の隣には何時もどおり葵が座っている。彼もドライバーをもらったはずだがタイヨウたちに混ざる気はないらしい。しばらく考えると遥が立ち上がる。
「みのり、ちょっといいかな?」
「遥ちゃん!どうしたの?」
「実はね、明日からは別の場所で読書しようと思って」
「…唐突ね」
遥の言葉に側の愛莉が反応する。確かに急な話だ。
「ごめんね突然、やっぱりダンスしてる横だと読書に集中出来なくてさ」
「そりゃそうすぎるな」
「内容入んのかなって思ってたよ俺も」
「そこ、盗み聞きやめなさい」
別の会話をしていたはずなのにこちらの話を何時も聞いている、この屋上で何度も見られた光景だ。最も遥も読書しながらこちらを伺っていたが。
「…そっかあ、残念だけどしょうがないよね。元々静かな場所を探してたんだもん」
「ごめんね…時間があったらまた一緒に帰ったりしよ?それと…応援してる」
「うん!私、絶対遥ちゃんみたいな皆に希望を届けられるアイドルになるから!」
「…」
その言葉に遥は何も言わずドアから出ていく。それを見た葵も立ち上がる。
「それじゃ、僕もこれで」
「あっ、ちょい待ち!俺まだ葵だけ連絡先もらえてない!」
「逆に他の人のはもらったんですか…?」
「雫と遥のすら手に入れたぜ」
「すごいなお前」
「必要ないでしょ、君たちとはこれっきりだ」
そう言うと葵はドアをあけ出ていこうとする。
「あ!ベルトは!?」
「病気じゃないならもらっていくよ」
その言葉を最後に出ていく葵を太陽は見つめる。屋上にいる間にあまり仲良くなれなかった、あちらからも避けられていたような気もする。
「なんか一気に人が減った気がするわね…」
「2人減っただけなのにな」
「四分の一ですからね」
「…よーし!2人に見てもらえるくらいのアイドルになるために、練習頑張るぞー!」
喪失感を味わうなかでみのりが声を上げる。彼女もさみしいだろうが周りを元気づけようとしているんだろう、その想いに応えようと太陽も声を上げる。
「よーし!昼休みもそろそろ終わるし放課後も頑張るぞー!」
「あ、今日僕用事あるんで来れません」
「…私もちょっと用事あるわ」
「私もお仕事が…」
「出鼻ぁ!」
「独特なツッコミだ」
ーーーーーーーー
みのり達と別れたあと、遥は階段を一人下っていた。うつむいたその様子はステージの上で笑顔を振りまいていた姿からは程遠い。
「遥ちゃん!」
階段を降りる遥に葵が大きく声をかける。気づいた遥が振り返ると葵は駆け足気味に近づいてくる。
「大丈夫?遥ちゃん」
「葵…私、ひどいことしちゃった…」
「…そんなことないよ、元々あったばかりなんだし…付き合ってた方でしょ。アドバイスもちょくちょくしてたし」
遥に慰めの言葉をかけるも、本当はこうではないことは分かっている。遥が気にしているのは屋上に来るのをやめることではないのだ。分かっているのに分からないフリをしてしまう、触れてしまうことが葵自体少し怖かった。
「私、わかってるのに、アイドルがそんなに良いものじゃないって。わかってるのにみのりに言わなかった…あのままじゃ、きっとみのりは傷つくことになる」
「遥ちゃん…」
罪悪感に苦しむ遥に手を伸ばすも、すぐに下ろす。伸ばすのをやめた手の変わりに言葉を出す。
「大丈夫だよ、上には…他のアイドルの子もいるんだし。大事なことならあの2人が教えてくれるでしょ、そこそこ長いんだろうし」
「…ごめんね、葵」
「…何がさ」
遥の気遣いに気の利いたひと言も返すことができない、こんな自分が何より嫌いだった。
ーーーーーーーー
放課後、制服姿で烈は人を待っていた。行き交う人のなかで待っている相手がいないかを探す。中々見当たらないでいると肩を叩かれ振り向く、すると頬に指が突き刺さる。
「イタズラが古ない?」
「まあまあ、可愛いボクのイタズラなんだからそれだけで価値があるでしょ?」
そうおどける友人に向き直る、お互い放課後のはずなのにアチラは私服姿だ。ガーリーファッションにピンク色の髪をリボンでまとめた可愛い子、暁山瑞希がそこにいた
「また学校サボったな?お前」
「いや~面倒くさくてさ〜烈がおんなじ学校来てくれたら良かったのに〜」
「アホ言え、めちゃくちゃ遠いわ」
近くのファストフード店に入り2人は駄弁る。高校に入ってまだ1週間と少しだが既にお互い話すことが増えていた。
「え〜!?それじゃあ推しのアイドルと同じ学校だったの!?」
「そう、腰抜けるかとおもったわ」
「え!サインは!?写真は撮ってもらった!?」
「…そういやまだそういうのしてもらってないな」
「えぇ〜!?真っ先にでしょ普通!!」
「それどころじゃなかってん、命の危機やったわ」
「え?どういうこと」
ライダーの話はできないがそれでも拳治に首根っこ掴まれたのは命の危機と差し支えないと最近分かってきた。その調子で会話を続けると友人関係の話になる。
「友達はできた?」
「友達…どうなんやろ」
「なんで曖昧?」
太陽のことが頭に浮かぶが個人的には微妙だ。アチラは自分と友達になろうとしてくれているのだろうが自分としては少し距離を置いてしまう。彼に原因があるわけではなく、こちらが後ろめたいのだ。
「やっぱり、皆本当の俺を知ってるわけじゃないし…」
「…烈」
それを聞いた瑞希の表情が微妙なものになったのを見て失敗したことを悟る。瑞希の前で言うべき発言ではなかった、気分を変えようと別の話題を切り出す。
「そう言えば、面白い子と知り合ったわ。あれは多分俺レベルのドルオタ」
「え!本当!?末期じゃん!!」
「末期やめい」
ーーーーーーーー
怪人のセカイ、赤黒い肉からまたノーネイムが生まれていたが何時にもまして異形だった。一言で言うなら液体だろうか、ブヨブヨとした液体が肉から漏れ出し溢れてくる。全てが出来ると人型の輪郭を取り息をするように上下に揺れる。スライムノーネイム、無機物を模した新たなノーネイムだった。
「今度はまた変わった怪人が出たな」
その姿を一人の青年がみていた。ツンツンとしたショートヘアの男、その男のキツイまなざしがまっすぐと怪人を捕らえていると後ろからゴスロリの女が声をかける。
「あら珍しい、あなたがこのセカイに来ているなんて」
「発明の実験だ、そしたらこれに出くわした」
スライムを指さしながら答えるとのっそりとした動きで男に近づいてくる。
「…なんだこいつ」
「最初に見たから親だと思われてるんじゃない、おとーさん?」
「迷惑だ、さっさと外にいけ」
男が手をかざすとスライムがセカイの外に追い出される。
「あら、ひどい」
「ふん、どうせ他の奴が見つけても自分の作戦に利用するんだろうさ。自由を与えてやるんだ、感謝してほしいね」
男は話を終えたとその場を去ろうとするが後ろを女が付いていき構わず話し続ける。
「しかし、どうして怪人は生まれてすぐ外に出すのかしらね」
「こちらで能力を調べて具体的に目的に向いたやつだけ送るべきだとは思うが…大体予想はつく」
男の発言に女はニタリと不気味に笑う。本当は女にもここの主が何を求めているのか分かってきた。
「悪趣味な神様はどんな混沌が欲しいのかしらね」
「混沌なんて事象が結果に向かうまでの過程でしかない。俺の求めるものは別にある」
そう言うと大きな肉塊を乗り越える。そこはいくつも黒煙が上がり焦げ付いている、彼がここで行った実験の影響だ。
「俺の頭脳をこの世に証明する、本当に価値があるものが何かをな」
「頭脳ねぇ、それならさっきの子の手助けでもしたら?」
「…」
その言葉に男が手を上げると泥が垂れ始め戦闘員を生み出す。生み出した側から戦闘員は次々セカイから出ていく。
「こいつらが暴れればライダーどもも分散するだろ」
「雑ね」
ーーーーーーーー
とあるアイドル事務所、その前で愛莉は立ち尽くしていた。
(何やってるのかしら、私)
今さらアイドルへの未練が湧いてきたのかと思うと馬鹿らしくなる。それでもどうしてもよぎってしまう、自分が望んだようなアイドルになるもしもの可能性が。心当たりはある、まっすぐなみのりを見たせいだ。
『私、絶対遥ちゃんみたいな皆に希望を届けられるアイドルになるから!』
「あのこ、本当にまっすぐよね」
あんな時期が自分にもあったなと思う。ただひたすら夢に向かって努力し、それがいつか叶うと疑わなかった頃。いつからか理想と現実のギャップに心が折れ、諦めてしまった夢。
「愛莉ちゃん…?」
「っ!雫…何でここに…」
突然後ろから声をかけられ振り向くと雫が立っていた。仕事と言っていたがこの近くだったのか。
「愛莉ちゃん…もしかしてまたアイドルをするの?」
「…そんなわけないでしょ、たまたま通りがかっただけよ」
雫の驚きと期待が入り混じった表情を見て咄嗟に嘘をつく。彼女には見せたくない弱味だった、アイドルというものを体現したような彼女には。
「愛莉ちゃん、やっぱりアイドルやりたいんじゃないの?愛莉ちゃんにとって大事な夢でしょう?」
「!」
雫の言葉に心臓が締め付けられる。自分が誰よりも分かっていること、それでも諦めたのには訳があるのに。それに何より密接に関わる彼女に言われた。
「あんたに…あんたに私の何がわかるのよ!」
「っ…愛莉ちゃん…?」
声を荒げる愛莉に対し今度は雫の心臓が早まる。何かとても嫌なことの前触れのような。
「あんたに分かるの!?バラエティアイドルなんて呼ばれて…ライブよりも変な番組に呼ばれる私の気持ちが!誰からもアイドルなんて見られてない笑いものの気持ちが…分かるわけない!見た目だけでアイドルやれて、ライブでも皆の歓声を浴びるあんたなんかに!」
「!!」
愛莉が勢いのままに言葉を放つ。その一つ一つがナイフのように胸に突き刺さっていく、雫の中で大切なものが音を立てて崩れていくのを感じる。
「…愛莉ちゃんにだけは」
「あっ」
好き放題叫んだあと、雫の顔が見える。端正な顔立ちをゆがませ、目尻いっぱいに涙を浮かべた姿が。それをみてすぐに自分が何をしたか理解するが…もう遅かった。
「愛莉ちゃんにだけは…そんなこと言ってほしくなかった!!」
「雫!!」
涙を流しながら走り去る雫の背中を…追いかけることが出来ない。仮に追いかけて何を話すと言うのか、今の醜い発言こそ自分の本質なのだろう。やはり自分はアイドルにふさわしい人間ではない。
「あ、愛莉ちゃん?」
「…今度はあんた?」
自分を呼ぶ声がまた聞こえると今度は烈がいる。知り合いを引き寄せる効果でもあるのだろうかこの場所は。
「…あの、なんかおっきい声が聞こえてきたんですけど今のって…」
「…雫よ、喧嘩したの」
「喧嘩…そうなんですね」
理由を直接問いつめるようなことはしてこなかった、ただ目の前の建物を見つめるのみだ。
「あんた、本当にアイドルが好きなのね」
「うぇぇ!?」
「ここ、アイドル事務所って気づいたんでしょ?」
「え、あ、それはぁ…その〜」
何故かごまかそうとしている、ここを知っているとやましいことでもあるのだろうか。
「違うんです…浮気とかではなく…ここのアイドルにファンレターを送りはしたんですけど…」
「別に気にしないわよ」
愛莉が言葉をかけるが烈の顔色は戻らない。しばらく独特な表情を浮かべた後気まずそうな表情で切り出す。
「あいりん…桃井先輩はやっぱりもうアイドルはやらないんですよね」
「…えぇ、あなたには申し訳ないけど。もう決めたの」
「申し訳ないなんてそんなこと無いですよ…アイドルの人生はアイドルのものなので、ファンは受け入れるだけです」
烈の言葉に申し訳なさそうに俯いていた愛莉が顔を上げる。烈は目を瞑りながら歯を食いしばっていた。
「全然受け入れてる顔じゃないわよ」
「お気持ちツイートしてる時のオタクは全員この顔です」
そこまで好かれているとなおさら申し訳なくなる、他にもこんなふうに悲しんでもらえているのだろうか。そんなことを考えていたときだった。
「きゃーー!!」
「!?」
「悲鳴!?」
突然鳴り響いた悲鳴に2人はすぐさま聞こえた方に向かい走り出す。曲がり角を越えた路地裏に入ると小さい娘を抱えた母親が戦闘員に襲われていた。
「やめろ!」
戦闘員の一人を突き飛ばし母子の前に庇うように立つ。
「今の内に逃げて!」
「で、でも…」
母親の足を見ると大きく切り裂かれている。先ほどの悲鳴は察するにこれをつけられたときだろう。
「あいりん!!太陽くん呼んでください!」
「今電話してる!」
数コールほどなった後、太陽が電話に出る。息の具合からして走っているようです。
「太陽!大変なの!」
『わかってる!怪人だろ!今拳治と向かってるぜ!』
「そうなの、すぐに…」
『妙なスライムがプールで暴れてるらしい!』
「え?」
太陽の言葉に呆けた声がでる。スライム?周りを見るもそんなのは見当たらない、そもそもプールとは。最悪の可能性が浮かぶ。
「違うのよ!こっちにもあの変な黒い奴らがいるの!」
『はぁ!?2箇所ってことか!?てか戦闘員に反応しないのか俺の頭痛!!』
まさかの事態に太陽の焦った声が聞こえる。こちらとしても予想外だ、こうなるとどうするべきか。
『しょうがない!拳治にそっちに行ってもらう!』
「大丈夫なの?一人で怪人を相手することに」
『そっちが戦闘員だけならすぐ終わるだろ!頼んだぜ拳治!』
その言葉を最後に電話が切れる。とにかく烈にこのことを伝えなければ、そう思ったとき戦闘員の拳が烈を捕らえ眼鏡がとぶ。
「ぐっ!」
「烈!」
戦闘員相手とはいえただの人間の実力は大きく超えている。倒れた烈を放置すると今度は愛莉にむけてジリジリ迫りよる。
「烈…」
何とか救い出そうにもこの包囲網を抜けて烈や親子を救い出すのは至難の技だ。何とか方法を考えようとする中烈がドライバーを取り出しながら立ち上がる。
「あいりん…!下がって…!」
『ネライドライバー!!』
「烈…あんた…」
手に持ったブランクスフィアを見つめる。そもそもこれで変身出来るのか分からないが、そこは問題じゃない。変身出来ようと出来まいと覚悟は決めた、もう二度とやらないと誓ったことを。
「変身…!」
ベルトにスフィアを装填し引き金をひく。灰色の輝きが全身を包み込むと烈の姿が異形へと変わる。装甲も色も付いてない簡素な姿だが先ほどよりマシだろう。自身の変化を確かめていると戦闘員が刃を持って襲いかかる。防ごうと両手を交差させるもそのまま壁に背中を叩きつけられる。
「烈!」
強烈な一撃に愛莉が心配の声を上げる、すると次の瞬間怪人が反対側の壁にめり込む。
「え…?」
あまりにも突然の展開に戦闘員も驚く、次の瞬間一体の戦闘員に烈が飛びかかると馬乗りになり顔面に拳を叩き込む。
『ギッ!ガッ!グッ!』
戦闘員の悲鳴が上がるのを無視し何度も拳を叩きつける。戦闘員の顔がつぶれ中身なのか赤黒い泥が血のように飛び出す。しばらく続け戦闘員が動かなくなってようやく別の戦闘員が切り裂かる。
『ガッ!?』
刃が届く前にその顔が掴まれる。そのまま持ち上げられ地面から浮く。ブンブンと手足を振りながらもがくが意味はなくそのまま窓ガラスに後頭部から突っ込まれる。
「おぉぉぉぉらぁぁぁ!!!!」
突っ込んだ窓ガラスを横切るように走る。並んだ別の窓ガラスを壊すと壁に激突しさらに走り続ける、次の窓ガラスに横から突入しまた叩き割る。壁際をぶち抜き露わになった戦闘員は顔がズタボロになり泥が垂れている。
「次は…」
余りにも凄惨なやられ方に他の戦闘員たちが後ずさるも後退の道はないのか一斉に飛びかかる。先頭の一体を掴むと2体目に突きだしその身体に刃が突き刺さる、さらに思ったより深く刺さったのか刃が抜けず動けない2体目を掴み頭を地面に叩きつけ粉砕する。そのまま1体目の身体の刃を引っこ抜くと頭に突き刺し息の根を止める。
「…」
最後の戦闘員が攻めてこないのに気づき顔を上げるとこちらに背中を向けて逃げているのを見つける。1体目の頭から刃を引っこ抜くとベルトを操作し必殺技を発動させエネルギーを込め投げる。ネライドライバーの能力により正確な軌道を描いたそれに頭を貫かれ戦闘員は倒れ伏す。
「これで全員…」
戦闘員を全員倒したことを確認し辺りを見回す。ひどくしんどい、身体のそこから冷えてくるのを感じ息も上がってくる。親子を見つけると少し考えた後近づいていく。
「もう大丈…」
「こ、来ないで!」
母親はそう叫ぶと足の怪我も無視して娘を抱え走り出す。
「ちょ、ちょっと!」
愛莉が声をかけるもその背中が振り返ることはない。落としたメガネを探すため烈が辺りを見下ろすと戦闘中に割れた窓ガラスに自分が映る。身体中に戦闘員の泥がついて返り血に染まったようだ。灰色の部分はもう数えるほどしか見えなくなっている。
「結局…僕はこんなことしかできない」
「え?」
烈は呟くと変身を解除し見つけたメガネを拾う。戦闘中に巻き込まれたらしく壊れたらしい。それをそこら辺に捨てると歩き出す。
「もう付けれないな…」
「ま、待ちなさいよ!」
烈はすぐに追いかけようとするが、ふと思い出したようにメガネを拾う。そう、確かこれは…
「烈!」
呼び止めようとしたが、既にその姿はなかった。
ーーーーーーー
スイミングスクールの生徒たちが使用する市民プール、その出入り口に太陽は駆けつけていた。
「おわっ!っとと」
大量の水着姿の男が逃げ出してくる。狭い出入り口に殺到するせいでぶつかりそうになるが何とか抜け出しプールにつく。
「お、おぉ」
「いやー!助けてー!」
たどり着いたその場は少々シュールな絵面だった。人型のスライムが手や身体から触手を伸ばし女性を絡めている、そう言えば逃げてるのは男性ばかりだった。
「エッチな本みたいだな」
『セカイドライバー!!』
最低な感想を述べながらベルトを装着するとスライムがこちらに振り向く。スフィアを起動させ走りながら叫ぶ。
「変身!」
『CHANGE THE TAIYO!!』
仮面ライダータイヨウに変身しスライムに向けて拳を放つとその体を貫く。
「あ、あれ!?」
まさかの一発KO勝ちかと思いきや貫いた腕が抜けない。スライムを見るとまるで答えた様子もないことに驚くと胴体から巨大な拳が飛び出し吹き飛ばされる。
「グホォッ!?」
予想外の反撃に吹き飛びながら驚く。厄介な相手だ、奴の身体には物理攻撃が効かないらしい。少し考えると再びスライムに向かい拳で貫く。
「グポッグポッ」
「独特な笑い方だな。そんなに可笑しいか?」
同じことを繰り返すタイヨウを馬鹿にしたようにスライムは笑うが、体の異変を感じ取る。身体からボコボコと音がなり泡が出てきている。
「タイヨウファイヤー!」
全身に炎を纏うことで腕を突っ込んだスライムの身体が沸騰し始める。するとスライムの身体が形を保てないのか触手が崩れ女性たちが解放される。このまま消し去ろうとするとスライムの全身がはじけ飛ぶ。
「なんだ!?自爆したのか!?」
突然バラバラになったスライムに驚く、なんだか変な怪人だ。拍子抜けな最後に唖然としながら帰ろうとするとバスケットボールほどの球が顔面に激突し吹っ飛ぶ。
「ごほ!?何!?」
地面を転がりながら急いで顔を上げるとぶつかってきた球がぴょんぴょん飛び回っている。あれはスライムの中に入っていたものだ、どうやらあの核をつぶさないといけないらしい。さらには飛び散った破片が集まり再び人型になる。
「面倒なやつ…!」
ーーーーーーー
タイヨウがスライムに苦戦し始めているころ、拳治は烈と愛莉の所に向かっていた。既に戦闘員は倒されてることも知らないため焦りが胸を支配している。そんなとき下を向いて歩く知り合いを見つける。
「雫!?」
「あ…拳治くん…」
今日は仕事と言っていたと思うがなぜこんなところにいるのか。いやそれどころではない、早く烈たちを助けなければ。そう思い走り出そうとすると雫の目が赤く腫れていることに気づく。
「…どうした、雫?何かあったのか?」
「…そう思う?」
そう言うと雫はぎこちない笑みを見せる。今まで見たことのない表情に躊躇いながら話を聞く。口を開いて言われたのは予想外のひと言だった。
「私ね…アイドルやめたの」
そう言いながら笑う雫はどうしょうもなく辛そうだった。
設定
仮面ライダー??? ブランクセレクト
烈がブランクスフィアで変身した姿。スペックが低く、体力の消耗も激しい。ドライバー備え付けの電撃を放つ能力があるが余裕のない烈は気付かなかった。
次回予告
「お前がアイドルだろうとなかろうと興味はないな」
「私、やっぱりアイドルになりたいです!」
「私、最低なこと言っちゃった」
「アイドルなんか意味ないよ」
『第四話 破壊の力』
「見せてやる…本当の僕を!」