プロジェクトセカイ feat  仮面ライダー   作:ミッツー116

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 なんかアイドルの話なのにモモジャンの方がレオニードより話暗くない…?


第五話

 

 

 葵が変身した姿、仮面ライダーブルを謎のライダーは見つめる。

 

 

 「これは予想外だな…さすがに君を無視して残りをやるのは無茶だろうし」

 「おとなしく逃げ帰る?」

 「まさか」

 

 

 ライダーが手を上げると戦闘員が葵に向き直る。

 

 

 「君という戦力がどれくらいのものか、そこを確かめさせてもらうよ」

 「あっそう…」

 

 

 その言葉を受けた葵は両手を顎の下に構えステップを踏み始める。

 

 

 「あの動き…ボクシングか!」

 「シッ!!」

 

 

 独特な発声と共に戦闘員に向かっていく、最初の戦闘員の顎を打ち上げると脇を通り抜けるように抜き去り2、3人と強烈なブローを顔面に浴びせ4人目をストレートで吹き飛ばし後続ごと倒す。

 

 

 『ギギッ!』

 「シッ!」

 

 

 後ろからきた戦闘員の刃を紙一重で躱すとそのまま勢いを利用して回転しながらのフックで顔を打ち抜く、気づけば周りに戦闘員はおらず葵一人だけがその場に残ることになった。

 

 

 「強い!」

 「あいつボクシングできるんだなぁ」

 「…聞いたことないけど」

 

 

 タイヨウたちが葵の戦いに感心するも遥は首を傾げる。格闘技の類をやっている話など聞いたことがない、アイドル時代そこまで話せたわけではないが。

 

 

 「ベルトを貰ってから独学で勉強したよ、付け焼き刃だけど…こいつら程度なら問題ないね」

 「なるほど、ベルトの強化込みなら基礎だけでここまで性能が上がるのか…面白いね君。それじゃあ…これで行こうかな」

 『クイズ!!』

 「クイズ…俺たちを邪魔してたのはお前か!」

 

 

 ライダーは手に持ったクエスチョンマークのスフィアを起動させるとベルトに装填する。

 

 

 『LETS ACTIVE QUIZ!!』

 『ファッションパッションクエスチョン!クイズ!』

 

 

 地面から溢れた泥から赤い◯と青い☓が現れ胸にくっつくと顔の複眼がハテナマークになる。仮面ライダークイズ、その力をその身に宿したクイズセレクトに謎のライダーが変わる。

 

 

 「さて、それじゃあ問題…」

 

 

 変身を見届けた葵は地面のマンホールを蹴り上げると拳でクイズセレクトの方に飛ばす。その攻撃に咄嗟に転がることで回避すると再度問題を出そうとするも今度は葵の手に野球ボールほどの光が集まりそれを思いっきり投げてきたのを躱す。

 

 

 「くっ!もんだ…ぐあっ!?」

 

 

 唐突に背中に猛烈な痛みを感じる。振り返ると強烈なスピンをかけられていた光球がはね返って背中に激突していた、そのまま葵の方に吹き飛ばされストレートを腹に決められる。

 

 

 「ゴホォッ!!んぐ…がはっ!」

 「その姿のことはもう知ってるんだよね」

 「なに…?」

 

 

 こちらの能力を知って対策済みと言う態度にライダーは納得がいかない。こいつが前線に出てくるのは初めてだ、いる場所でクイズを使ったこともない。

 

 

 「君は知らないかもだけど…怪人が出るとセカイって奴が教えてくれるんだよね。でも僕はそこで来ずに皆の戦いを見物してたってわけ」

 「はぁ!?」

 

 

 葵の言葉にタイヨウたちの方が声を上げる。そう、葵は今まで怪人が出てきたときに現場に来ずセカイからモニターで見物していたのだ。自分たちが命がけで戦っている中やじ馬に徹していたと言うのか。

 

 

 「逆に全員一緒に戦って一網打尽にされる方が馬鹿でしょ、誰かのこって対策ねって2回目で勝てばいいんだよ」

 「お前マジで言ってんのか…?」

 「なるほど…合理的だ…」

 

 

 タイヨウたちが不満げにする中敵であるクイズセレクトが理解を示しながら立ち上がる、クリーンヒットした腹を押さえているところを見るにダメージは大きそうだ。

 

 

 「君とはもっと合理的な話ができそうだ…今日はこのくらいにしておこう」

 「逃がすと思う?」

 「逃げれるさ」

 

 

 そう言って遥たちの方を指さす。何をする気かと振り返り警戒するが…何も起こらない。訳が分からずライダーの方に目線を戻すと。

 

 

 「!?いない!」

 「ハッタリかよ!!」

 

 

 第五話  「蒼・刀・乱・心」

 

 

 「雫、今までのこと…ごめんなさい。私、貴方のこと何も考えずにひどいことを言っちゃったわ…最低よね…」

 「愛莉ちゃん…ううん、もういいの。ここに私のために来てくれたんでしょ?そこまでしてくれるなんて嬉しい、やっぱり…愛莉ちゃんは私の憧れだわ」

 

 

 愛莉と雫がお互いの気持ちを伝える。紆余曲折あったが何とか2人も仲直り出来たのだが…

 

 

 「ごめんなさいってなんのことだ?」

 「勝手に事務所来たことか…?いやひどいこととか言ってないし…メンバーに喧嘩売ったのを不味いと思ってんのかな」

 「あ、昨日2人が喧嘩したことは知らないんですね」

 「僕ですら知ってるのに」

 

 

 変身をといた太陽たちがそれぞれ話す。元々アイドルを辞めた雫を励ますために愛莉を探していたがだけなので2人の喧嘩を知らなかった、メンバーの件で辞めたと疑ってもいなかったので他に落ち込む原因があるとは。

 

 

 「ま、何やかんやいいことづくめだよな!愛莉と雫も元気になって!クイズの原因も分かって仲間も揃った!」

 「…仲間?」

 「へ?だって…」

 

 

 葵の言葉に太陽が自分たちを交互に指差す。ライダーが4人揃ったのだからおかしくないはずだが…

 

 

 「僕は君たちの仲間になったつもりはないんだよね」

 「えー!?何で!?」

 「べつに君たちと仲良くする必要はないでしょ」

 

 

 そう言って葵は遥に声をかける。

 

 

 「そろそろ戻ろうか、多分午後の授業始まってるし」

 「あ、うんそうだね…それじゃあ皆、また学校で」

 「あ、ちょ待てよ〜!」

 

 

 太陽が叫ぶも二人はそのまま歩いてゆく。

 

 

 「何だよ葵のやつ〜」

 「まぁまぁ、僕らも戻りましょうか」

 「そうだな」

 

 

 そう言って残りのメンバーも歩き出そうとするも愛莉だけ立ち止まる。

 

 

 「…あんたら先に行っていて頂戴、ちょっと用事済ませてくる」

 「用事?」

 「まさかメンバーを殴りに…」

 「そんなわけないでしょ!ただの野暮用よ、練習までには戻るわ!」

 

 

 そういうとどこかに走り去っていく、その背中を見て思わず拳治は呟く。

 

 

 「練習より授業に間に合うようにしないとだろ」

 

 

ーーーーーーー

 

 

 「あいたたた…」

 

 

 怪人のセカイ、そこでマッシュの男が腹部を氷で押さえていた。付近にはハカイドライバー、何を隠そうこの男がクイズの力をつかう謎のライダーの正体だ。葵に殴られた箇所の治療を続けていると空間に声が響く。

 

 

 『手痛くやられたようだな』

 「ありゃ、見てました?」

 

 

 自身に力を与えた張本人でもあるこの空間の主、その野望のための駒を常に監視しているのだろう。そう結論づけながらも会話を続ける。

 

 

 「貴方の計画を知ってきちんと協力の意思を示してるのは僕くらいなんですから大目に見てもらえますよね?」

 『どの道作戦の成否は重要視していない』

 「そうでした」

 

 

 ここまで多数の人々を傷つける存在を生み出すセカイの主とは思えない発言に返事をしながら立ち上がる。確かにうまくはいかなかった、だが同時にもっといい作戦も浮かんだのだ。

 

 

 「もう次のプランはあります。そのために…ちょっとお願いがあるんですけど?」

 

 

 男が声の主との交渉を始める、しばらくして望んだ結果を得られたその顔には笑みが浮かんでいた。

 

 

ーーーーーーー

 

 

 放課後の屋上、愛莉や雫たちが屋上に集まっていた。みのりの練習をみるため、何より再びアイドルをする決意をした自分たちの練習のためだ。

 

 

 「イィィィヤッッタァァァァ!!!」

 「推しの復活への喜びってこんなになんだな」

 「キリスト復活したときの教徒もこんなだったのかな」

 

 

 もし遥が復活したらみのりもこのくらいの声をあげるのだろうか、そんなことを考えていると愛莉が雫に喋りかける。

 

 

 「でも、よかったわ。雫もアイドル続ける気になってくれて、雫がアイドル辞めるなんて私絶対嫌だもの」

 「愛莉ちゃんが私のために怒ってくれたって話を聞いて思ったの…やっぱり私も、愛莉ちゃんみたいに誰かのために全力で希望を届けたいって。だから、また一緒に頑張ってくれる?」

 「…!えぇ、もちろんよ!」

 

 

 愛莉と雫が夢へ共に歩んでいく約束をする、その姿を拝みながら烈は涙をながす。

 

 

 「尊い…」

 「感想あってるか?」

 「これ以外の言葉はありませんよ」  

 「…そっか!」

 

 

 幼なじみで長年鍛え続けたオタクへのスルースキルを太陽は遺憾無く発揮する。すると、愛莉が突然烈に何かを渡す。

 

 

 「烈、これ!」

 「え、これ…僕のメガネ!?なんで!」

 「あのとき捨てていったのを直しておいたのよ、あなた初めて会ったときはつけてなかったけど2回目からはずっと一緒のつけてるでしょ?大事なものなのよね?」

 「愛莉ちゃん…僕!生涯推し続けます!」

 「ちょ、泣かないでよ!」

 

 

 烈が感激の涙を流すなか拳治は一つの疑問を口にする。

 

 

 「ところで…花里は何処だ?何時も最初に来てるだろ」

 「あぁ、今日飼育委員の仕事あるから終わったら来るよ、曜日で担当決まってるらしい」

 「それじゃ、それまで二人で練習しましょうか雫」

 「えぇ!頑張るわ!」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 「すいませ〜ん!飼育小屋の鍵をもらいに来ました!」

 

 

 職員室のドアをあけ、元気よくみのりが声をあげる。すると鍵の前の教師が返答する。

 

 

 「あぁ〜、さっきもう一人の子が持っていったよ。」

 「え!?そうなんですか!?」

 

 

 結構早く来たつもりだったが遅かったらしい、教えてくれた教師に礼を言うと急いで飼育小屋に向かう。

 

 

 (もう一人の子ってたしか蒼刀くんだよね。遥ちゃんが屋上に来てたときに一緒にいたことはあるけど、2人きりって初めてかも)

 

 

 思考を巡らせながら飼育小屋への角を曲がる。直にしゃべったことはあまりないが少々気難しい彼だ、これを機に仲良くなりたい。

 

 

 「よ〜しよし、可愛いね〜」

 

 

 飼育小屋の中で今まで見せたことのない笑顔と猫なで声を上げている葵を発見する、いや実際に撫でているのは兎だが。しばらくそのまま撫で続けていたがこちらに気づき葵が固まる。

 

 

 「…」

 「遅れてごめんね蒼刀くん!まだお仕事のこってる?」

 「えっと…うん、掃除はもう一人の子が来たらやろうと思ってたから…君だったんだね」

 

 

 葵は気まずそうだがみのりに気にした様子はない。男性陣ならいざ知らずこういうのを馬鹿にする発想すらないのだろう。最も葵が恥ずかしいのは変わらないが。掃除をしながらみのりは葵に積極的に話しかける。

 

 

 「蒼刀くんは動物好きなの?」

 「…じゃなきゃ飼育委員なんかやらないでしょ」

 「そっか〜何か動物は飼ってる?私はサモちゃんって言うワンちゃんを飼ってるんだ〜!おっきくてモフモフ何だよ〜!」

 「サモちゃん…サモエド?」

 「うん!」

 「へぇ〜そうなんだ…」

 

 

 分かりにくいが今までの会話で一番興味を示してくれている気がする。相当動物が好きなのかも知れない、そう思い会話を続ける。

 

 

 「蒼刀くんは?何か飼ってる?」

 「猫ちゃんが男の子と女の子いるよ、品種は分かんないけど」

 「猫ちゃんか〜可愛いよね〜!」

 「…写真もあるけど」

 「へ!?見せてくれるの!あ!じゃあ私もサモちゃんのとっておきの写真見せてあげるね!」

 「…可愛いね」

 

 お互いに写真を見せあう、こんな共通点があるとは思わなかった。想像以上に仲良くなれそうなことに喜びながら次回一緒になる時までにもっと写真を用意しておこうと決意していると葵が口を開く。

 

 

 「…花里さんは、アイドルの遥ちゃんのファンなんだよね」

 「へ?うん、そうだよ!」

 「そんなに良いもの?ステージの遥ちゃんって」

 「そりゃ最高だよ〜!!」

 「…どんなところが?」

 「まず、当たり前なんだけど見た目が最高に可愛いの!顔がちっちゃいのに目はくりくり大きくて青いツヤツヤの髪色と合わさって宝石みたいでね!口元もチャーミングだしスタイルも抜群!それだけじゃなくて歌もダンスもとってもうまくてね!それも遥ちゃんが日頃から練習に練習を重ねてるならなんだけど!そういうストイックなところも〜」

 

 

 まさしくマシンガントークを繰り出す、彼女の中のスイッチを押してしまったようだ。少し…しばらく話し続けるとようやく止まり、葵が次の質問をする。

 

 

 「それじゃあさ、ステージの上の遥ちゃんって…楽しそうだった?」

 「へ?それは…」

 

 

 葵の質問に少し考える。何時も眩しい笑顔を見せてくれていた遥、だが楽しいから笑顔だったのかファンにサービスとして笑顔を見せていたのかは分からない。想像で語るしかないことだ。

 

 

 「私たちからしたら何時も笑顔に見えたけど…ファンサービスかもしれないし…でも、なんで私に聞くの?遥ちゃんに聞けば…」

 「まぁ、そうだよね…」

 

 

 みのりの返答に対し葵の表情は暗い、何か踏み込んではいけない部分だったのだろうか。そう思っていると掃除が終わる。

 

 

 「鍵は僕が返して来るよ、今日も練習するんでしょ?」

 「あ、うん。ありがとう…」

 

 

 鍵をもち校舎の方に葵は歩いていく。…なんだかこのまま行かせてはだめな気がする、今日で開いてくれた心が閉じてしまうような…そう思うとみのりは葵を呼びとめる。

 

 

 「あ、あの!蒼刀くん!」

 「?どうしたの花里さん」

 「私のこと、名前でいいよ!」

 「…へ?」

 

 

 予想外の進言に葵が呆けた声をだすも、そのままみのりは続ける。

 

 

 「前に遥ちゃんが言ってくれたんだ!同い年だし名前で呼んでいいよって!だから、私も!」

 「…気が向いたらね」

 「うん!それじゃあまたね!葵くん!」

 「…また」

 

 

 その言葉を最後に葵は今度こそ歩き出す、それを見届けるとみのりもその場で気合を入れる。

 

 

 「よし!それじゃあ私も練習行かなくちゃ!」

 

 

 小さくガッツポーズをとり屋上に向かう、一方葵も先ほどの会話を思い出していた。

 

 

 

 『またね!葵くん!』

 『葵くん、か…』

 

 

 遥以外に名前を呼ばれたのなんていつぶりだろう、もう一人の幼なじみを除けばろくに親しい人物がいない自分には名前呼びだけで貴重な相手だ。

 

 

 「いや、もう一人いるか…」

 『葵!連絡先くれよ!』

 

 

 最近知り合った声のデカい男のことを思い浮かべる。誰に対しても馴れ馴れしい、距離の近い男。悪いやつではないだろう、クラスなどでは人気が出るタイプだと思うが…自分はそういうグループに入ったことはない。何時も端にいるタイプだった、遥が初めて友達になってくれるまでずっと一人だったのだ。

 

 

 「やぁ、葵くん」

 「…今丁度余韻に浸ってたのにぶち壊してくれるね、君」

 

 

 校門を出て少ししたところでマッシュヘアーの男に話しかけられる、初対面のはずだが正体を察しているのかドライバーを取り出す。

 

 

 「本当に話が早くて助かるよ、好感が持てるね」

 「ならさっさと終わらせよう」

 「いやいや誤解だよ、戦いに来たわけじゃない」

 「何?」

 

 

 男の言葉に顔をしかめる。その表情を気にもとめないのか笑みを浮かべながら男は続ける。

 

 

 「君に話したいことがあるんだ」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 「う〜ん、今日もいい感じの練習だったな!」

 「なんでお前がやりきった感出してんだ」

 「僕ら見ながら駄弁ってただけですよ」

 

 

 放課後の下校時間になり6人で校門にむかう。今まで手を抜いていたわけではないがやはり気合の入り方が違うのかいつもより熱の入った練習だった。そんななか愛莉たちが声をかけられる。

 

 

 「あの…もしかしてQTの桃井愛莉さんとCheerful*Daysの日野森雫さんですか?」

 「へ?」

 「雫の知り合い…じゃなさそうね。まさか…脱退の取材とか!?そうならお断りよ!」

 

 

 見たことのない人物を前に憶測が飛び交う。だがすぐに真実は明らかになる、2人のオタクによって。

 

 

 「「あぁ〜〜〜!!!」」

 「ももももも元ASRUNの真依ちゃん!?」

 「へ、あ!あ!え!あの!僕ASRUNだと真依ちゃん推しでぇ!グッズとか集めて…は!?」

 

 

 はしゃいでいた烈が愛莉の方に振り返る。

 

 

 「ちちち違うんですよ!?一番はあいりんでぇ!」

 「別にいいわよ」

 「忙しいなお前」

 「あ、あの私!遥ちゃんと真依ちゃんが二人で歌ってた『虹色パラメータ』が大好きなんです!」

 「みのりもおちつこ、な?」

 「え、え〜と、ありが、とう?」 

 「悪いな、なんかうちのオタク2人が」

 「あ、いえ!大丈夫です!」

 

 

 烈とみのりは一旦置いておいて拳治が当然の疑問を口にする。

 

 

 「それで?なんの用があったんだ?桐谷に会いに来たとかか?」

 「あ、はい…話したいことがあって…」

 「うーんさすがに帰ってそうだけどなぁ…ちょっと待ってて、俺電話かけてみるわ」

 

 

 太陽が遥に電話をかける、数コール待ってみるも繋がらず取り敢えずあきらめる。

 

 

 「だめだ、出ねぇ」

 「そもそもここに来てる時点で真依ちゃんが連絡したけど繋がらなかったってことでは?」

 「遥、携帯とか見ないタイプなのかなぁ」

 

 

 手詰まりになった太陽達が頭を悩ませているとみのりが閃く。

 

 

 「あ!私今日葵くんの連絡先もらったよ!もしかしたら遥ちゃんと一緒にいるかも!」

 「えぇ!?俺もらえなかったのに!」

 「そこは今どうでもいいでしょ。みのり、お願いできるかしら」

 「はい!おまかせください!」

 

 

 そういうとみのりが電話を取り出し葵に連絡しようとする。

 

 

 「…出てくれませぇん」

 「二人で一緒にいんのかなぁ」

 「本当に手詰まりだな」

 『う〜ん…』

 

 

 全員揃って頭を悩ませる、そして…

 

 

 「取り敢えずファミレスか」

 「どう繋がりました?」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 ファミレス、店内ーー

 

 

 「あの〜聞きたいことがあるんですけど…」

 「なんだ?」

 「この席割りなんですか?」

 

 

 今現在、席は男女別のテーブルだった。6人組テーブルもあるのにわざわざ4人組テーブルを2つに分けてるのもそうだが、男子が1列に並んで最奥に烈が押し込まれる形だった。

 

 

 「いや~…だって…なぁ?」

 「お前前科あるし…」

 「まだ言ってんのか!」

 

 

 出会った初日の話を永遠に引きずり続けられている、さっきの真依相手のはしゃぎようで尚更疑いが強まっているらしい。不本意だ。

 

 

 「それで、遥に話したいことって何だったの?」

 「その…遥ちゃんに、謝りたいことがあって…」

 「謝りたいこと?」

 「…遥ちゃんがアイドル辞めたのは、私のせいなんです…」

 「え?」

 

 

 まさかの発言にその場の全員が固まる、遥がアイドルを辞めたのにはそれ相応の理由があると思っていたが雫と同じようにメンバーとの確執だったのか。しかし彼女が遥を悪くいうようには思えない、一同が疑問に思っていると真依が話を続ける。

 

 

 「私、元々遥ちゃんのファンだったんです。アイドルして輝く遥ちゃんに希望を貰ってるうちに自分もアイドルになりたいと思ってASRUNのオーディションを受けました」

 「それで実際に入ったのか、すごいな」

 「実際すごく嬉しかったです。遥ちゃんとも仲良くなれて…一緒のステージにも立って毎日夢のようでした、でも…私はスランプになっちゃったんです」

 

 

 突然新曲の振り付けや歌詞を間違えるようになってしまった、そこを気にするうちに他の部分も疎かになる悪循環に陥りネット上でも叩かれるようになった。

 

 

 (そうなのか?)

 (実際ネットでそういう動きはありましたね…他の子を推してるファンは特にその時目立ってる人間のミスを叩き出しますから)

 (有識者助かる)

 「それでも遥ちゃんは私を助けようとしてくれたんです、『今日はダメでも明日はきっといい日になる。』その言葉に実際私は勇気を貰えました」

 

 

 みのりが話を聞いていると自然と手に力がこもる。彼女の気持ちが痛いほど分かる、自分も何度遥の言葉に勇気をもらったか分からない。

 

 

 「でも、私は焦っちゃって…トレーナーさんに休むよう言われた後も自主練を続けて喉を壊しちゃったんです。そのせいでアイドルを続けられなくなった私は荒れて…遥ちゃんにひどいことを言ってしまいました。その後に遥ちゃんが引退を発表して…だから私!どうしても遥ちゃんに謝りたいんです!」

 「真依ちゃん…」

 

 

 真依の言葉を聞いて押し黙る。遥がアイドルを辞めたのにこんな事情があったとは、正直真依が悪いというわけでもないだろう。それでもその気持ちに応えたいと思うのは自然のことであった。

 

 

 「よし!明日にでも遥と真依が会えるようにしようぜ!」

 「でもどうやって?」

 「こないだ雫を事務所に連れて行ったときと同じだよ、俺が授業中にこっそり抜け出して真依を連れて屋上まで飛んでいけばいいんだ。あとは昼休みに遥を連れて行くだけ。」

 「…飛んでいく?」

 

 

 ライダーの事など知らない真依が首を傾げるが取り敢えず問題は解決できた。話がまとまる中みのりだけが心配そうな顔をする。

 

 

 (遥ちゃん…真依ちゃんに会って大丈夫なのかな…でも会わなかったら真依ちゃんは…)

 

 

 迷っているも口には出せない、何が正解か分からないから。このとき口に出せば、このあとの最悪の展開も何かは変わったのかもしれない。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 「なんか…すごいドキドキしますね」

 「そうね…遥ちゃんと真依ちゃんが仲直り出来るといいけど…」

 

 

 次の日、屋上に太陽達は集まっていた。不安そうにしている烈たちを余所に愛莉は真依に声をかける。

 

 

 「真依、準備はいい?」

 「はい!…さっきの体験に比べたらドキドキもマシです!」

 「いやぁ、中々面白い反応だったぜ」

 

 

 変身してここに連れてきたとき。

 

 

 『ファイヤー!!』

 『きゃぁぁぁぁぁ!!!??』

 「何だその掛け声」

 「宇宙忍者なんですか?」

 「そもそもそんな速度を出す必要はないわよ」

 

 

 太陽の動きは素早かった。そんな事を話しているとドアが開き、遥と葵が入ってくる。

 

 

 「ありゃ、葵もいる」

 「何、悪い?」

 「いや別にいいけど…」

 「…ちょっと嫌な予感がしてね」

 

 

 太陽と葵が話していると遥と真依の話も始まる。

 

 

 「真依…!?何でここに…」

 「遥ちゃん!ごめんなさい!!私があの時ひどいことを言ったせいで遥ちゃんからアイドルを奪って…遥ちゃんはずっと私に寄り添ってくれてたのに…」

 「真依…そっか、そういうことだったんだね」

 

 

 真依の真意を察したのか遥は肩に手を置き優しく語り出す。

 

 

 「真依が謝ることなんかないんだよ、確かにあの子とはきっかけになったけど…アイドルを辞めたのは結局、私が普通の学生生活を送ってみたかっただけ。」

 「そんなの嘘!遥ちゃんがアイドルをどれだけ真剣にやってたか知ってるもん!自分から辞めるわけない!」

 「…本当だよ、その証拠にほら!」

 

 

 遥は突然葵の腕に飛びつく。

 

 

 「こんなに仲のいい男子もいるんだから!もう満喫って感じかな!」

 「遥ちゃん…」

 

 

 どう見ても無理をしているとわかる。そんな中葵が口を開く。

 

 

 「そんな仲のいい男子から提案なんだけど、そろそろ遥ちゃんは教室に戻ったほうがいいと思うよ。お昼誘われてたじゃん」

 「…でも」

 「…」

 「…わかった、それじゃあ真依!またね、久しぶりに会えて嬉しかった。また今度遊びにいこ?それじゃ!」

 「あ、遥ちゃん!」

 

 

 追いかけようとした真依の前に葵が飛び出す、その間に遥はドアから下の階に下がってしまう。

 

 

 「…あの!」

 

 

 真依が葵にどいてもらうため声を出そうとしたその瞬間、葵の拳が壁を貫く。

 

 

 「うぇぇぇっ…!?」

 「俺よりバケモンじゃねぇか…」

 「さ、さすがにライダーの力込みだろ…」

 

 

 あまりの馬鹿力に太陽達がドン引きするが真依はより恐ろしいものを見ていた。彼女の位置から見た葵の表情、それは誰がどう見ても怒髪天だった。

 

 

 「こんなだましうちみたいなやり方で…余計なことをしてくれたな…!」

 「ま、待ちなさい蒼刀!」

 

 

 咄嗟に愛莉が真依と葵の間に割り込む。

 

 

 「ま、真依に今回の作戦を持ちかけたのは私たちなのよ!それに、真依だって遥を傷つけたかったわけじゃ…」

 「それが余計なお世話だって言ってるんだよ!!」

 

 

 いつか中庭で二人で話した時よりはるかに感情を露わにし叫ぶ。あの時葵の中身を知れた気がしたが…間違いだった。本当はもっと強いものが彼のなかにはあったのだ。

 

 

 「ほっておけばそのうち忘れられたはずのことだったんだ!それをこんなふうに掘り返して!傷つけるつもりはなかった?ふざけたこと言うなよ!」

 「…!でも、遥ちゃんだって本当はアイドルを辞めたくないはずです!だって…あんなにアイドルであることに真剣で…一生懸命だったのに…!」

 「…自分の自己満足のために謝りに来ただけのくせに偉そうに…!」

 「あんた…そんないいかた…!」

 

 

 あまりにもキツイ言い方に愛莉は堪らず反論しようとするも…葵の顔を見た途端やめてしまう。

 

 

 「いいさ…!どうせ遥ちゃんの口から君に伝わることはないだろう…!だったら僕から言ってあげるよ…」

 「言うって…何を…」

 

 

 真依が戸惑っていると葵はキッと睨みつけながら叫ぶ。

 

 

 「もうステージに立てないんだよ!お前のせいでな!」

 「それ…どういう…」

 「膝が震えて動けなくなるんだ!お前の希望を奪ったことを思い出して!誰かの希望を奪った自分にアイドルの資格はないって思ってる!」

 

 

 葵の言葉はどんどん熱を帯びてくる。常に冷ややかに嫌味たらしい彼からは考えられないほどの感情的な姿だ。

 

 

 「ステージに上がれるんなら…どんな辛いことだって遥ちゃんはするさ!でももう立てないんだよ!あんなに必死になって頑張った初めての夢を!そうだよ、さっき自分で言ってたとおりだ!お前が遥ちゃんからアイドルを奪ったんだよ!!」

 「お前…言い過ぎだぞ…!」

 

 

 真依を庇うように愛莉のさらに前に拳治が立つ。それを見た葵はドアの方に向けて歩き出す。

 

 

 「言い過ぎでも構わないよ、どうせ金輪際会うことなんかないんだ。僕とも、遥ちゃんともね」

 

 

 その言葉を最後に屋上から去っていく。正直かなりショッキングな出来事だ。苦しそうな表情の真依に太陽も近づく。

 

 

 「…大丈夫か?」

 「大丈夫…です」

 「無理しないでいいのよ。あいつも…ちょっと感情的になっちゃっただけで真依ちゃんが悪くないことだってわかってるわ」

 「いえ…私が悪いんです、やっぱり」

 「…帰るか、送ってくぜ俺。ファイヤー!って」

 

 

 そういうと太陽は変身し真依を抱き上げ飛び上がる。それを見送りながら愛理たちも話し合う。

 

 

 「どうする…っていっても私たちに何とかできる問題なのかしらね、これ」

 「…俺は正直、葵のアイドルのこと忘れさせるってのはそこまで間違ってないと思うぜ。俺も雫の時無理してアイドル続けさせる必要はないと思ったからな」

 「…でも、重要なのは遥ちゃんが何がやりたいかだと思います」

 「そうね、話を聞いた限り…やりたくてもやれないってことだと思うわ。それなら…私たちに出来ることもあるんじゃないかしら」

 「出来ること…」

 

 

 その言葉を聞いてみのりは思い出す、あの場所で遥が言っていた言葉を。

 

 

 「皆、聞いてください!」

 「みのり、何か思いついたの?」

 

 

 その言葉にみのりは勢いよく答える。

 

 

 「セカイにいきます!」

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 太陽たちと別れて葵が階段を降りると廊下に遥を見つける。出来る限り何時もの調子にしながら話しかける。

 

 

 「遥ちゃん、まだいたの?」

 「その…上から凄い音が聞こえて…話も聞

いちゃった」

 「そっか」

 

 

 思えば当たり前だ。壁をぶち抜いたりしたら気づかれるし大声も下に響いてしまう、感情的になってしまい気付かなかった。

 

 

 「ごめん、勝手に話しちゃって…」

 「ううん、自分で話す勇気がない私が悪いから…」

 「…そんなことないよ、真依って子に気を使ったんでしょ?まぁ僕がぶち壊しちゃったけど…」

 「…そろそろ戻ろっか、お昼食べよ」

 

 

 暗い表情の葵に気を使い遥が教室に戻るよう促す。

 

 

 「そうだね、遥ちゃんのこと待ってるだろうし」

 「…ねぇ、今日は葵も一緒に食べない?放課後も誰かに私が誘われてると一人で帰っちゃうし」

 「…遥ちゃんの友達作りを邪魔しちゃ悪いからね」

 「葵だって私の友達でしょ?」

 

 

 その言葉に葵は黙る。顔を見るに反論を考えているようだ。

 

 

 「葵、私に対して無理に気を使いすぎてない?動画も…もう随分出してないよね?」

 「…気遣い云々は置いといて、動画の方は関係ないよ」

 

 

 そういいながらポケットの中のスマホを触る。

 

 

 「あれは…もう意味がないものだから」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 「遥にライブを見せる?」

 

 

 放課後になり、真依を送り届けた太陽がセカイに合流したところで拳治達から話を聞く。

 

 

 「ここって遥ちゃんの想いでもあるわけですから手がかりを探しに来たんです」

 「そしたらミクのライブを見たみのりからライブの提案をされて、今三人は練習中だ」

 「なるほどなぁ」

 

 

 椅子に座りミクたちと練習するみのりたちを見学する。するとセカイが太陽に話しかけてくる。

 

 

 「お久しぶりです、太陽くん」

 「お、確かセカイだっけ?久しぶり」

 「いやほんとお久しぶりです…あれ以来葵くん以外誰も来てくれないんですもん」

 「まぁ特に用事もないしな…」

 

 

 それにここ最近やけに忙しかった気がする。ほぼ毎日怪人と戦い雫の事務所に乗り込んだ愛莉を追いかけたり、ここに来る余裕などなかった。

 

 

 「まぁそりゃ…来てもらってもライブ見せるくらいしか出来ないけど…」

 「僕はそれで十分です」

 「お前はな」

 「…そう言えば僕たちって…あいりん達の側にいていいんですかね?」

 「え?」

 

 

 烈が突拍子のないことを言い出す。

 

 

 「いやアイドルの周りに男いるのヤバくないですか?しかも人数分」

 「お前杞憂民かよ」

 「困るんだよなぁ…僕もミクちゃんたちといるの気を使うし」

 「一般論です、僕はアイドルの熱愛もきちんと受け止めますから」

 「お、偉い」

 「祝福ツイートしてから2週間落ち込むだけです」

 「やっぱキショいかも」

 「なんでや!!」

 

 

 烈のことは置いといて少し考える、考えていなかったがみのりがもし本当にアイドルになるんだったら距離を取らなければいけないのだろうか。正直嫌だ、何か対策を考えたいところだ。そう思っていると拳治が口を開く。

 

 

 「俺等もアイドルやるか」

 「何で?」

 「いいか?理論としてはこうだ」

 

 

 アイドルは恋愛禁止→だから異性が側にいるのは不味い→側にいるのもアイドルなら?→両方恋愛禁止→問題無し!!

 

 

 「お前…天才だな!!」

 「だろ?」

 「いやいやいやいや!!飛躍してるやろいろいろ!」

 「俺ちょっとアイドル興味あったしな」

 「モテそうだもんな」

 「そんなんで務まるもんちゃうからな!?」

 

 

 一人反対する烈に肩を置いて拳治は続ける。

 

 

 「いいか?よく聞け烈」

 「はい」

 「俺たちはまだ高校生、軽率に思いつきで物事を初めていい時期だ。それが人生を変える時もあるしすぐにやめることもある、そしてそれを笑い話にするのが許される。だから人は青春に想いを馳せるんだ」

 「深い言葉だ人類史を貫く」

 「貫かんわ、舐めるなよ人の歩みを」

 

 

 拳治の言葉にすこし考えるも太陽は口を開く。

 

 

 「でもアイドルいいかもな〜俺も興味あるかも」

 「いぃ!?マジでいってんの!?」

 「逃走中とか出たい」

 「欲望小学生やん!」

 「いいぞ太陽、その調子だ」

 「葵も誘って4人でやろうぜ」

 「え?」

 

 

 予想外の名前に思わず呆けた声がでる。

 

 

 「それは…さすがに無理なんじゃないですか?アイドルのこと嫌いそうだし」

 「そんなこと言ってたか?遥が傷ついたのが許せないんであって、アイドルそのものに恨みがあるわけじゃないだろ」

 「なるほど、今回の作戦が成功すればチャンスはあるわけだ」

 「そこまで考えてるわけじゃないけど…どの道遥呼び出す方法考えるのに連絡したほうがいいだろうしついでに誘ってみるか!みのりー!携帯かしてー!」

 

 

 練習の休憩に入ったタイミングを見計らいみのりに携帯を借りると葵に電話をかける。しばらくコールが続くと電話が繋がる。

 

 

 『もしもし』

 「あ、葵?遥の事で話したいことがあってさ」  

 『何だ君か…出なけりゃよかった』

 「何だよそれーみのりなら出るのか?」

 『君よりはね』

 「まぁいいや、それで話なんだけどさ」

 『ちょっと待った』

 

 

 本題に入ろうとしたところで制止される。

 

 

 『…直に話そうよ、今から言う場所に来てもらえる?』

 「ん?いいけど…」

 『それじゃ、待ってるから』

 

 

 場所と伝言を言うと電話を切られる。

 

 

 「どうだったの?」

 「直に会って話そうってさ」

 「なんか意外ね、もっとゴネるかと思ったわ」

 「あいつも遥が心配なんだよ、あと…烈と拳治も来てくれってさ」

 「僕たちもですか?」

 「…まぁ別にいいが」

 「よーし!それじゃあ行くか!」

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 町外れの団地跡地、そこに太陽たちは来ていた。葵からの呼び出しはここだが…何故こんなところなのだろうか。

 

 

 「ほ、ホントに蒼刀のやつはこんなところに呼び出したわけ?」

 「お化けとか出そうだよ…?」

 「だ、大丈夫だ。オカルト好きな弟がここにはなんの曰くもないって言ってた」

 「わざわざ聞いたってことは拳治さんも怖かったんですね」

 「んじゃ、はいるぞー」

 「ちょ!心の準備出来てないってぇ!」

 「拳治くん、怖いのなら私と手を繋ぎましょうか?そしたらもう怖くないわ」

 「つ、ついてこなきゃよかったわ…」

 

 

 なんだか気になりみのりたちもついてきたが後悔し始めているようだ。拳治だけは雫と手をつないで恐怖が和らいでいるので得をしている、最年長なんだからしっかりしてほしい。

 

 

 「あ、いたいた。葵ー!おーい」

 「どういうつもりでここにしたか教えてもらおうか」

 「日野森先輩の手を握りながらよく強気に出れますね」

 「…」

 「っ!」

 

 太陽に呼ばれて振り向くも葵は何も発さない。その様子をみた拳治が進もうとする太陽の肩を掴んで止める。

 

 

 「おわっと!何だよ拳治…」

 「いやぁ〜素晴らしい危機感知能力だ、やはり君は要注意人物だね」

 

 

 太陽が抗議の声を上げるなか団地のなかからマッシュヘアーのメガネの男が出てくる。

 

 

 「…?だれだ?」

 「この姿では始めましてだね、これを見せればわかるかな?」

 『ハカイドライバー!!』

 「お前…あのクイズ野郎か!」

 

 

 目の前の人物が今まで自分たちを苦しめていた相手であることに気づくも、何故それが葵と一緒にいるのか。

 

 

 「まずは自己紹介かな、僕は水野紫苑。怪人のセカイの主と契約した戦士、仮面ライダースニアさ」

 「スニア…?誰か意味わかるか!」

 「冷笑ですね」

 「こいつ噂の冷笑界隈か!」

 「契約ってのは何の話だ?」

 

 

 拳治の無知を無視しながら太陽は紫苑に問いかける。

 

 

 「君等も知ってると思うけど、セカイの住人ってのは外に出ることが出来ないんだけど…裏技があるらしいんだよね。その裏技のために怪人を暴れさせるように頼まれてるんだ。」

 「何でそんなこと…色んな人が傷つくのよ!?」

 「僕がやらなきゃ誰か別の人がやるよ?現に僕みたいな人は他にもいるし」

 「同じようなのが他にも…!?」

 

 

 もしやドライバーの数だけ協力者がいるのだろうか、だとしたら恐ろしい話だ。

 

 

 「それで、外に出たあかつきには彼は人類を滅ぼすらしいんだけど…そこで僕との契約なんだよね」

 「一体どんな契約だって言うんだ…」

 「そ・れ・は」

 

 

 勿体付けながら大きく手を広げ宣言する。

 

 

 「なんと!僕の選んだ人間だけは生き残ることができま〜す!!イェ〜!!パチパチ〜!!」

 

 

 わざとらしく手を叩きながら笑う。実に腹の立つ態度だ、こちらをおちょくってるとしか思えない。

 

 

 「それでお前は何がしたいんだ?滅んだ世界で生き残って…自分もそのうち死ぬだけだろ!」

 「誰もいない世界で自分の選んだ人間に身の回りの世話をさせながら悠々くらす…魅力を感じる人間は多いと思うけど?彼みたいにね」

 

 

 そう言って顎で葵の方を指す。

 

 

 「蒼刀…お前、ホントにこんな奴と手を組んだのか!?」

 「…グダグダ喋るのも面倒なんだよね」

 『ハカイドライバー!!』

 

 

 葵はドライバーを装着しスフィアを取り出す。

 

 

 「あれ、お仲間との感動の別れなのにいいの?」

 「彼らとは仲間なんかじゃない」『ブルー!!』

 「ふぅん、じゃあ手加減はいらないわけだ」『シニカル!!』

 

 

 二人は並んでスフィアを起動させる。

 

 

 「変身」

 『LETS ACTIVE BLUE!!』

 

 

 巨大な腕がライトで葵を照らし仮面ライダーへと変身させる。

 その横で紫苑が眼鏡を外すと胸ポケットにしまい2本揃えた指を目の上でスライドさせこめかみを叩く。

 

 

 「変身!!」

 『LETS ACTIVE CYNICAL!!』

 

 

 地面から泥で出来た腕が紫苑を握り潰す。しばらくすると内側からはじけ飛びそこから姿を変えた紫苑が俯き組に出てくる。

 肩に紫色のペリースや胸元に宝石を埋め込んだブローチのような装飾が宛てがわられた豪華な印象だが全身を泥につけたあと放置されたためか色あせボロボロだ。

 ヘルメットは複眼を覆うように装甲が纏われるが内側から両目に沿うように泥が垂れると水色のラインが引かれ、大きく吊り上がった口とアンバランスな印象をうける。

 嘲笑しているかのような表情の戦士、仮面ライダースニアへと変身を完了させた。

 

 

 「さて、それでは…手筈通りに」

 

 

 スニアがブルへと両手を合わせながら促す。するとブルの片手に光が集まり鞭を作り出す、それを思いっきり振るい拳治の首に巻くと屋上に跳ぶ。

 

 

 「うぉっ!?」

 「先輩!」

 

 

 変身していない状態では堪える事など出来ずそのまま引っ張られていく。

 

 

 「さて…あとは君たちを僕が倒すだけだね」

 「舐めやがって…行くよ太陽くん!」

 「まて!相手人間だぞ!」

 「ハァ!?」

 

 

 太陽の反応に思わず烈は声を荒げる。

 

 

 「そうだよね、こないだ上の彼と二人で居たときもろくに力を出せてなかった。まぁあのときは中身が葵くんだと思ってたこともあるだろうけど…それでも人を全力で倒しにはこれないでしょ?」

 「まさか先輩に蒼刀くんを宛てたのは…」

 「そ、裏切ったとはいえ知り合い相手に彼も本気を出せないのは分かりきってる。割り切ろうとしても出来ないだろうね、それ込みなら2人の実力差は逆転するよ」

 

 

 それを聞いた烈はドライバーを装着するとスフィアを取り出しながら前に出る。

 

 

 「残念やな!!俺は嫌いなヤツならぶん殴るのに躊躇わない!」

 『ネライドライバー!!』『レッド!!』

 「それ込みで勝てると思ってるけど?」

 「舐めるな!変身!!」

 『MY LOCK RED!!』

 

 

 クリムゾンがスニアに向かって走っていく。その頃屋上でも戦いが始まろうとしていた。

 

 

ーーーーーーー

 

 

 「ゲホゴホッとんでもない運び方しやがって…」

 「…」

 

 

 首吊りになりながら屋上まで連れてこられた拳治は咳き込む。最悪死んでたのではないかと思いながらベルトを装着しスフィアを取り出す。

 

 

 「お前…こんなことして桐谷が悲しむとか思わないのかよ!」

 「…むしろ感謝するさ、僕が頑張れば彼女は生き残れるんだ」

 「なに…?」

 

 

 話についていけない拳治にブルは説明する。

 

 

 「僕は彼の生き残らせるメンバーに入れてもらうんじゃなくて彼と同じ権利をもらったんだ。選んだ人間を生き残らせる権利をね」

 「それはつまり…」

 「そう、遥ちゃんを助けられる」

 「…なるほどな」

 『ツカイドライバー!!』『スマッシュ!!』

 

 

 ようやく合点がいった。つまりは遥を救うために他の人類を犠牲にしようというのだ。

 

 

 「お説教が必要らしいな!変身!!」

 『START ABILITY SMASH!!』

 「そう、それでいいよ」

 

 

 互いに向かってスマッシュとブルが走り出す。

 ブルが放ったジャブを弾くと前蹴りで牽制するも身体を曲げて躱されステップで距離を取られる。

 再びのジャブを躱すと今度は掴みにかかるが身体に潜り込んでアッパーを放ってくるのを後ろに下がって回避する。

 

 

 (互角か…)

 

 

 思ったより練度が高い、そもそもの身体能力の高さかセンスなのか覚えたばかりのボクシングとは思えない。すっと勝てるわけではなさそうだ。

 

 

 「このままダラダラやるのも面倒だよね」

 「なに…?」

 「空手に自信があるんでしょ?だけど…もっとこの力を活かすんだね!」

 

 

 ブルの全身から強い光が発され視界が青一色に埋め尽くされる。あまりにも強烈な発光に目に激痛が走る中スマッシュの耳が後ろに回る足音を捉える。

 

 

 「くっ!」

 

 

 苦し紛れに裏拳を放つも手応えはなく顎に強烈なアッパーが命中し、そのまま空中に打ち上げられると足を掴まれる。

 

 

 「ぬお!?」

 「うぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 そのままブルが全力でジャイアントスイングをする。全身を襲う浮遊感に吐き気を覚えながら投げ飛ばされると階段に繋がる部屋に激突する。

 

 

 「ぐっ…こいつ…ッ!?」

 『FULL ACTIVE BLUE!!』

 

 

 部屋が壊れた粉塵の外から必殺の音声と共に再び光の鞭が首に巻き付くとそのまま引っ張られる。煙を抜けると鞭ではない手を青く光らせたブルが見えこちらもカウンターを狙うが、再び全身が発光する。

 

 

 「うぐっ…っ!」

 

 

 光が止むと同時にこちらに飛び込んできたブルが大きく振り被った拳をこちらに放つ。

 

 

 「ハァッ!」

 

 

 青い閃光がスマッシュを貫く、そのまま地面を跳ねていくと変身が解除される。動けない拳治に対しブルは近づくとベルトを奪い取る。

 

 

 「かえ…せ…!」

 「悪いけど、これを取るのが僕の契約なんだ」

 

 

ーーーーーーー

 

 

 スニアが手を前にだす、そこから滴る泥が戦闘員を生み出す。スニアはその最後尾で腕を組む。

 

 

 「雑魚を揃えてひと安心か?なめんな!」

 

 

 電流を纏った突進で戦闘員を貫きスニアに拳を突き出す。しかし地面から吹き上がった泥にぶつかると硬い壁に阻まれたように動かない。

 

 

 「なに…!?」

 「見た目は泥だけど…実際はこのスーツや戦闘員を生み出すエネルギー。それをこのドライバーの能力で操作する、僕の基本戦術さ」

 

 

 その言葉と共に壁から棘が生えクリムゾンを吹き飛ばす。

 

 

 「この…めんどくせぇ…だったら!」

 

 

 クリムゾンが再び突撃する。そして再び壁を殴る…寸前に姿が消える。

 

 

 「…!?甘い!」  

 

 

 一瞬の動揺のあとに右に手をむける、向けた先には自分に向かってくるクリムゾン。だが再び生成した壁に当たる寸前に姿が消える。そして再度逆向きに現れたのを見るとそちら向きに壁を生成し後ろと上にも泥のバリアを生成し完全に自分を包む。

 

 

 「これで選択肢は一つだよね」

 

 

 その言葉とともに足にエネルギーを込める。次の瞬間、地面が粉砕し中から飛び蹴りが胸に直撃する。

 

 

 「おらぁ!!…!?」

 

 

 ぶつかった足に違和感を感じ、マスクが相手胸部の情報をスキャンする。胸についていたブローチ、そこから光の力場が発生して防御している。

 

 

 「まぁ…痛くないわけじゃないさ…!落ち込むな…よ!」

 『FULL ACTIVE CYNICAL!!』

 

 

 音声と共にさらにエネルギーが増幅する。通ってきた穴から逃げようとするが…既に泥で埋まっていた。強烈な爆発音と共に2人を包んでいた泥が吹き飛ぶ、中からはスニアに踏みつけられ変身が解除された烈が倒れていた。

 

 「烈!!」

 「さてと…次は君だね」

 

 

 烈のベルトを外しながらスニアが太陽に告げる。その時、団地からブルが歩いて現れこちらに何かを投げる。

 

 

 「拳治くん!!」

 「そんな…あんた、本当に裏切る気なの!?」

 「君たちの仲間になったつもりはないよ」

 

 倒れる拳治に雫が駆け寄り傷つけたブルに怒りの言葉を愛莉がぶつけるも彼の心には響かない。そんな時みのりが叫んだ。

 

 

 「葵くん!」

 「…何?」

 「私たち、今遥ちゃんに見せるためのライブの練習をしてるの!遥ちゃんに希望を届けられるようなライブを…でも、今日のことがあったから来てもらえる自信がなくて…それで葵くんにアドバイスが欲しくてここに来たの!」

 「…何の話それ?」

 

 

 みのりの話を茶化すようにスニアが呟く。それを聞いているのか聞いていないのかブルは言葉を放つ。

 

 

 「みのりちゃん」

 「!」

 「僕はそれに協力するつもりはない、僕は僕のやり方で遥ちゃんの希望を守る。君たちがやるなら勝手にすればいい」

 「葵くん…?」

 「蒼刀…あんた…!」

 

 

 相変わらずのブルの態度に愛莉が思わず声を上げようとしたとき、その肩に太陽の手が置かれる。

 

 

 「太陽…」

 「拳治を連れてみのりと後ろに下がってくれ」

 『セカイドライバー!!』

 

 

 ベルトを着けた太陽が前に出る。

 

 

 「どうやらやる気になったかな?」

 「…変身!!」

 『CHANGE THE TAIYO!!』

 

 

 変身すると共に両足から一気に炎を噴き出し近づく、2人が迎撃しようとした瞬間に両足を二人にむける。

 

 

 「ちぃ!」

 

 

 泥を全面に出すようにしてガードをする。するといつの間に後ろに回り込んだタイヨウが烈を踏んでいる方の足を思いっきり足払いし烈を奪い取るとみのりたちのほうへ戻る。

 

 

 「あばよ!」

 

 

 次の瞬間スマホを取り出すとタイヨウたちの姿が消える。咄嗟に泥を追撃で放つも間に合わなかった。

 

 

 「セカイに逃げたみたいだね」

 「君は入れるんだろう?追い打ちをかけるべきじゃないかい?」

 「窮鼠猫を噛むだよ。それよりもっと確実な作戦を立てればいい、2つは奪えたんだ」

 

 

 そういうとツカイドライバーをスニアに投げ渡す。

 

 

 「ふふ、やはり君を仲間に引き入れてよかった」

 「それより、約束は?」

 「あぁ、任務一つにつき報酬だったね。これがその報酬だ」

 

 

 そう言ってスフィアを取り出しブルに投げ渡す。受け取ったブルはそのスフィアを見つめる、そのスフィアには流れ星のような絵が描かれていた。

 

 

 




設定
 仮面ライダーブル
  葵が変身するライダー。ボクシングスタイルの他葵の様々な特技を生かした戦闘を行う。光を生み出しエネルギー操作することで戦闘をサポートする武器を生み出すことも可能。

 
 仮面ライダースニア
  紫苑が変身するライダー。怪人を生み出す怪人のセカイのライダーの共通能力をエネルギー操作で攻守に利用することが出来る。


次回予告
 「このステージ、遥ちゃんに捧げます」
 「俺とお前はおんなじだ」
 「遥ちゃんだけのためのものなんだ」
 「最後の1人…きっちり始末させてもらう」

 『第六話  蒼き望み、ロケットで飛べ』
 「宇宙…キター!!」
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