プロジェクトセカイ feat 仮面ライダー 作:ミッツー116
スマホから飛び出してくるのがいいのかもしれない、だが全員やるのも違う気がするのが悩みどころ。
セカイ(ステージ)が今のところ一番困ってます。
とあるライブハウス、そこでは昼間からイベントが行われていた。ステージでは2人の男が歌を歌っている。
「〜〜〜!!〜〜!!!」
まだ若い2人からは想像できないほどの完成度のステージにフロアが熱狂する。結局この日のステージは2人の独壇場のような形だ。
「お疲れ二人とも!BAD DOGSの人気は相変わらずだな!」
「まだまだだ、こんなんじゃあのステージの足元にも及ばねぇ」
気心の知れた仲間が声をかけてくるがオレンジ髪の男は不満そうだ。
「RAD WEEKENDを超える…だっけか?お前らの実力は知ってるけど流石に厳しいと思うぜ?」
「だからこうやって腕磨いてんだろうが」
伝説と呼ばれたあのステージ、その現場には自分もいたのだ。凄さもよく身に染みている。
だがそれで諦める理由にはならない。そのために日々研鑽を重ねている。
「本当物好きな奴らだよ。お前ら以外にそんなやつ…いや、あいつがいるか」
「あいつ?」
「ほら、謙さんの娘だよ名前はたしか…」
「白石杏か…」
その存在は自分も知っている。尊敬するRAD WEEKENDのメンバーの一人の娘、店に行ったときに会ったしイベントで一緒に歌ったこともある。
「なんなら組んでみたらどうだ?面白そうだし」
「どう思う、冬弥?」
「俺は悪くない考えだと思う。実力も確かだし、志が同じ仲間が増えるのは心強い」
2色に別れた特徴的な髪をした相棒の意見に頷く。自分としても実力としては申し分ないと思う、あと重要なことは一つだ。
「そいつに確かな覚悟があればいいがな…」
その言葉を最後にライブハウスを出る。暗い部屋から出た直後の太陽光は酷く目に刺さった。
第三話 「ViVidsとBAD 出会うとアウト?」
宮益坂高校、1-A 昼休みーー
「しゃあ!今日は屋上で昼食べてそのまま練習だぜみのり!」
「うん!頑張ろうね太陽くん!」
「それじゃ中庭行こうか志歩ちゃん」
「そうだね、一歌たち待たせたら悪いし」
仲の良い人間が軒並み教室から出ていくのを龍我とこはねは見つめる。最近みんな忙しそうだ。
「志歩と剣がバンド組むとか…みのりがアイドルグループ作ったとかはわかるが…なんで太陽までアイドルになってんだあいつ」
「何があったんだろう…」
入学直後から色々あったのが落ち着いた結果らしいが正直よくわからない。
「それじょあ…今日は二人で食べる?」
「え…あ、そうなるのか」
そこまで考えていなかったのか龍我は戸惑う。正直2人きりで食べるのは気恥ずかしさがある、男子高校生は思春期真っ盛りだ。
「あ、そうだ」
「どうしたの?」
「セカイで食うのはどうだ?」
龍我の提案にこはねは首を傾げるが気にせず続ける。
「セカイに行けば他に誰かしらいるだろうし…流石に店で食うのは不味いだろうけど」
「別にいいけど…」
「よし、じゃあ行くぞ」
龍我はそう言うとさっさとUntitledを起動させる。セカイに入るとどこからか歌が聞こえてきた。
「なんだこの音?」
「男の人の声だよね?」
声を辿って歩いていく。すると街の一角でセカイが歌っていた。
マイクも持っていないところを見るに誰かに向けたパフォーマンスではなさそうだ、こちらに気づくと手を振って駆け寄ってくる。
「龍我!こはね!遊びに来たのか!?」
「は、はい…!ところで…ここで何を?」
「歌の練習だよ」
「あ、ミク」
こはねの質問に対して別方向から返答が返ってきたので振り向く。そこには手に飲み物を2つ持ったミクがいた。
「ミク〜!自主練すんだぜ〜」
「うん、聞こえてたよ。前よりよく声が出てたね」
「へっへ〜日々成長中だぜ」
「歌…あっ」
ミクの言葉に思い出す、確か自分達の想いで曲を作って欲しいと言っていた。もしかしてミクが歌うためのものなんだろうか。
「ミクちゃんも…歌うの?」
「うん、このあたりでストリートミュージックをしてるよ」
「俺もここに来てからミクに習ってるぜ!」
ストリートミュージック、杏の歌を聴いたあと調べたら出てきたジャンルだ。ここは杏の想いから出来ていると言っていたしその影響なのだろうか。
「何時もよりオーディエンスも多いことだし、一曲歌おうかな」
「え!まじ!?」
「セカイ、ちゃんと聞いて参考にしなきゃだめだよ?」
「はい!先生!」
「それじゃ…〜♪」
軽く息を整えるとミクが歌い始める。透き通りながらもストリートミュージック特有の勢いを感じる歌声だ。
その歌を聞きながらこはねは考える。確かに上手い、しかしあの時のような胸の高鳴りを感じない。ミクの歌声は杏にも劣らない、いやもしかしたらそれ以上なのかもしれないがあのドキドキを感じられないのだ。
曲が終わる頃にこはねは何かを決心したように龍我に声をかける。
「兜くん、今日って時間ある?」
「ん?特に用事はないが…どうかしたか?」
龍我が首を傾げるなかこはねは続ける。
「あのね、またあのお店に行こうと思うんだけど…一人で行くのは怖くて…」
「あぁ、そういう。別にいいけど何しに行くんだ?」
「ちょっと確かめたいことがあって」
相変わらず首の角度は変わらないが了承するとセカイの方に視線を戻す。ミクの歌が終わり練習に入っていると思ったが感想会が長引いていた。
「いや本当よかった!なんか胸にしみるというか!疲れた体に温泉というか!」
「うん、ありがと。そろそろ練習しよっか」
「あ、はい」
「あいつ何時も説教されてんな」
ーーーーーーーーー
放課後になり、龍我とこはねは神山通りに向かっていた。
「本当は私服で行きたいけど…家に一回帰ると遅くなりすぎるんだよな」
「ルミさんも同じ学校なのにどうしてるのかな?」
制服でボヤきながら進んでいると足元にサッカーボールが転がってくる。
「ん?」
「公園から転がってきたのかな?」
「すいませ〜ん、あ!」
ボールを追いかけてきたであろう人影が立ち止まる。そこにはストリートで会った翼がいた。
「おぉ…奇遇だね二人とも。」
「お前…こんなところで何やってんだ?」
「それは…「おーい!翼兄ちゃん!ボールあったー!?」あ、あったよー!」
子どもの声に呼ばれ公園に戻った翼をおいかける。するとそこには何人も子どもや翼と同年代の男女が一緒に遊んでいる様子だった。
「これ…どういう状況だ?」
「兄弟…は流石に多いよね」
翼は子供にサッカーボールを投げ渡すとこちらに戻ってくるが子供は一緒に遊びたいのか不満そうだ。
「いや〜ごめんごめん、孤児院の子たちと遊びに来てて」
「孤児院?ボランティアか何かか?」
「いや、僕孤児院暮らしだから」
「え?」
予想外の発言に目を丸くする。どうやら相当センシティブな話題に触れてしまった。
「まぁ人生色々あるよね、二人は何してたの?」
「いやもう流すのかよ…まぁいいか」
「私たち、またあのお店に行くつもりだったんだ」
深堀りするのも失礼そうなので話を進めたが翼は嫌そうな顔をする。
「二人とも…随分WEEKEND GARAGEが気に入ったんだね」
「え…?そうだけど…」
「お前はそんなに好きなわけじゃないのか?」
「こないだはたまたま居ただけで僕のホームはもっと都心の方だよ」
翼は頭を掻きながら応える。質問には答えられてないが態度が答えだろう。
「あの店がどうというよりあの辺り全体がな…好きじゃないんだよね…」
「どこらへんが?」
「それは…」
質問に答えようとして、すぐに口を閉ざす。
「やめとこう、今から行く人の前でネガティブ発言するのも野暮だしね」
「手遅れだと思うが」
「そう言えばまだちゃんと自己紹介してなかったよね?」
露骨に話をそらしながら胸に手を置き自己紹介を始める。
「僕は疾風翼、呼ぶときは名前かあだ名で呼んでね。じゃなきゃ返事しないから」
「変な要求だな…」
「仲良くなりたい証拠だよ」
そう言うと翼は公園の外に向かって歩き出す。
「え?おいどこ行くんだよ!」
「WEEKEND GARAGE行くんでしょ?ついてってあげるよ、あそこいい人ばかりじゃないし」
振り返る事なく進んでいく翼を追いかける。とことん読めない男だ。
「お前自由すぎないか?」
「僕嘘って嫌いなんだよね。だから自分にも正直に生きてるの」
「そうかよ」
翼の話を聞いているとふと思い出す、そう言えばやり残した事があった。
「えっと…こないだはありがとな」
「…?何の話?」
「いやほら」
先日の戦いのことを思い出す。
『これがないと困るんでしょ?持ってきてあげたよ』
「助けに来てくれたのにちゃんと礼を言えてなかったから…」
「…君、意外と素直だよね」
翼が笑みを浮かべるのを見ると龍我は不満そうな顔をする。何だか面白がられている気分だ。
「そんな顔しないの、正直は美徳だよ」
「多少取り繕ってもらった方が気分がいい時もあるぞ」
「嘘はダメだよ」
突然真顔になりピシャリと言い放つ翼に少し恐怖を覚える。今日だけで彼に対して触れてはならない話題がどんどん増えていくのを感じる、別の話をしたほうがよさそうだと思っているとこはねが口を開く。
「今日はあの女の子は一緒じゃないんですか?」
「瑠璃のこと?今日は孤児院の子と遊ぶ約束だったからね…今ごろ何してるんだろ」
「二人はどのくらい一緒にいるんですか?」
「そんな長くないよ。中3の後半くらいだから…半年かな」
確かに思ったより短い、2人のステージの完成度からずっと活動しているのかと思っていた。
その時、一つの疑問がこはねに浮かぶ。
「中学3年生から今で半年…?翼さんって高校一年生なんですか?」
「え?そうだよ?」
「もっと上かと思ってました…ストリートの人ってみんな大人っぽいですね」
「そんなことないよ~敬語じゃなくていいし」
確かに高1なら同い年だ。しかし異性相手にはどうしても緊張してしまう。
「確かカナリアだっけか?どういう経緯で組んだんだ?」
「気になる?あれはね…」
翼は顎に手を当てながら空を見上げる、さて何処から話そうか。
悩んでいると視界の端に何かを捉える。
「…何だあれ」
「ん?何がだ?」
遅れて龍我達も空を見上げる。その視線の先の青い空に何かの影が映り、段々と大きくなってくる。
「何か飛んでくる?」
「っ!避けろ!」
「きゃあっ!?」
こはねを抱き抱え横に飛んだ龍我の叫びに翼も地面を転がると先ほどまでいた場所を高速で影が通りすぎる。
あのまま立っていたら体が吹っ飛んでいただろう。
「このボクの美しい抱擁を拒むとは、無粋な奴らめ!」
空中で停止したそれが何処か鼻につく声で怒る。純白の翼を携えた怪人、よく見ると翼の先から手が生えており頭部も上を向いた白鳥の首から怪人の顔が生えている。
白鳥の怪人というより白鳥に扮した怪人という印象だ。
『アヒルノーネイムか!』
「白鳥だろ、キグナスだ」
『セカイドライバー!!』
見当違いの発言をするセカイにツッコミながらベルトを装着するとスフィアを装填し叫ぶ。
「変身!」
『CHANGE THE FANG!!』
「全身真っ赤…品のない姿だね」
「言ってな!今からてめぇのほうがみっともなくなるんだからよ!」
レックスは右腕を伸ばし天空のキグナスノーネイムを狙うが軽く高度を上げて躱される。
「フフ」
「この!」
めげずに何度も挑戦するが一向に当たる気配がない。レックスに焦りが見え始めるとキグナスが羽ばたきその羽根が急スピードで飛んでくる。
「危ねっ!」
レックスもローラーを使い急スピードで走り始める。外れた羽根が地面に次々突き刺さる、当たれば自分がどうなるかなど考えたくもない。
「面倒なやつだ!」
『オーズ!!』
『CHANGE THE OOO!!』
オーズセレクトに変身するとバッタの脚力でキグナスに向かって思いっきり跳ぶ。十分届く勢いだったがキグナスはさらに高度を上げ避けられる。
「無様なやつ!このボクと同じステージに立てると思ったか!」
地面に向かって落下するレックスを嘲笑いながらキグナスは再び羽根を飛ばす。右手に装着されたトラクローで弾きながらレックスは着地すると物陰に隠れる。
「兜くん!手伝おうか!?」
「問題ない!このくらいなら一人で倒せるぜ!」
助力を申し出る翼を律しながら次の手を考える。ジャンプ力を求めてオーズセレクトにしたがこの姿では腕が伸びなくなる。両方あれば奴を捕らえることも出来そうなのだが。
『レックス!腕をウナギに変えろ!』
「ウナギ…?よし!」
『タカ!ウナギ!バッタ!』
セカイの言葉を受けてベルトを操作する。前面に赤、青、緑の3つの球体エネルギーが現れ身体を包むと上半身の装甲が黄色から青に変化し、トラを模して3本に変わっていた爪が5本に戻る。
「何かあんまりウナギ感はないな…」
とにかくこれで何とかなるのだろうと信じ物陰から飛び出すと再びキグナスに向かってジャンプする。
「何度やろうと同じだよ!」
再びキグナスが高度を上げることで避けられ、レックスが空中で静止する。このままではまた地面に落ちていくだけだ。
『今だ!手を伸ばせ!』
「よっしゃあ!」
指示通りに青く染まった右手を突き出す。次の瞬間手の平から白い鞭が射出されキグナスに巻き付く。
「何!?」
「そ〜らよっ!」
捕まえたキグナスを思いっきり地面に向かって振り下ろす。縛られ羽ばたく事が出来ないキグナスは抵抗出来ず硬いコンクリートに叩きつけられ土煙を巻き上げる。
「ご自慢の羽根が汚れちまったな」
「貴様ぁ…!!このボクになんてことを!」
着地したレックスがキグナスを煽る。それに激昂したキグナスは自らの羽根を掴み下に引っ張る。ブチブチと音を立てながら中から腕が現れるとダランと垂れ下がった羽根がロインクロスのようになる。
羽根をちぎる際に落ちた羽根が集まると剣になりそれを構える。どうやら地上で戦うつもりになったらしい。望む所だとこちらも構えた時、背中に衝撃が走り吹き飛ばされる。
「ガァッ!?なんだ!」
ふっとばされた体勢を整えながら振り返る。そこには自分が戦わなければならないもう1人の敵がいた。
三つ目の赤いカメラアイを輝かせたロボット、両腕が蛇腹剣になっており鞭のようにたわんでいる。
ピリオドシリーズ第3弾、人型戦闘用機械兵士第二種サンクションピリオドだ。
「2対1か…」
サンクションが蛇腹剣を振るう。こちらもウナギの鞭で対抗し、お互いの武器が何度もぶつかり合うことで火花が散る。互角、それはつまりレックスの不利を意味していた。
「舞え!美しき刃よ!」
キグナスが剣を振るうと光の羽根が嵐となってレックスを後ろから襲う。
前方の攻撃に対抗してる状態では反撃出来ずもろに食らう。
「ぐあぁぁぁぁぁ!!」
背後からの攻撃に怯んだ結果サンクションとの拮抗も崩れ蛇腹剣による攻撃を食らう。
前と後ろ、2方向からの攻撃に苦しんでいるレックスを見て物陰に隠れていた翼が出てくる。
「翼さん…?何を…」
「小豆沢さん、ちゃんと隠れてなよ」
『ハカイドライバー!!』
こはねに釘を指しながらスフィアを取り出す、変身するか悩むが…取り敢えず何度か使ったほうを選ぶことにする。
『ウィング!!』
「ライドイン!」
ベルトの中に翼が吸い込まれ光の通り道を抜けていく。体が光に包まれたと思うと上は紺色のフライングジャケット、下は龍我の着ていたズボンの色を反転させた物に変わり指なしグローブの変わりに瞳にゴーグルが着けられる。
「邪魔!」
ゴーグルを思いっきり引っ張り放すとゴムで戻って頭の上に位置が変わる。同時に1人用のコックピットに座ると発進させる。
『ファストウィング!』
「さて、行こうか!」
未だ攻撃を続ける2体の間に割り込みレックスを連れ去る。
「助かった!」
「話はあとにしよう!」
ファストウィングの上に乗りながら地上の2体を見下ろす、形勢は立て直せた。ここから反撃に移ろうとした時異変が起こる。
「!?何をするんだ!」
サンクションが突然蛇腹剣を振るいキグナスを拘束する。まさか仲間割れでもする気なのかと思ったその時、2体が泥に包まれて消える。
「何…?」
突然消えた2体に困惑しながら地上に降りる。辺りを見回し何処からかまた現れるかと警戒を続けるが一向にその様子はない。
「逃げた…?」
「でもどうして?」
困惑しながら二人は変身を解除する。その場には疑問だけが残されてしまった。
ーーーーーーーーー
「くそ!何でボクを戻した!早くまた出せ!」
怪人のセカイでキグナスが叫ぶ。意図せぬ形で連れ戻され、半ば敵前逃亡のような形になったのはひどい屈辱だ。
それをロボに命令させた男が冷めた目で遠くから見つめていると後ろからゴスロリの女に話しかけられる。
「どうしてこんなことしたの?諦めるのはまだ早かったと思うけれど」
質問に対し男は先ほどまでの映像を見つめると返事もしようとしない。
「返事しないならあの子、また外に出しちゃおうかしら」
「…やめろ、問題が発生した。調査に入る」
そう言うと外のドローンに指示を出す。正直つまらない展開だ。自分としては彼にはどんどん新しい計画を進めていってもらいたい。
不満そうな自分に気づいたのか男は懐から何らかのスイッチを取り出すと女に渡す。
「そいつを使えばロボに過去出した命令を再現出来る」
「つまり、サンクションにキグナスをまた守らせれるってことね」
「好きに使え、うまくいかないだろうがな。あのロボで勝てないことは十分分かった」
どうやら先ほどの戦闘で既にサンクションに見切りを着けたらしい。だが女は楽しそうだ。
「目に見えた失敗を知らずに戦う怪人…いい絶望が見れそうね」
ーーーーーーーー
「アンアン〜、お客さん連れてきたよ〜」
「へ?あー!また来てくれたんだ!」
WEEKEND GARAGEの扉を開けると杏が明るく出迎えてくれる。ようやくたどり着いた。随分時間がかかってしまった。
「あ、あの…こんにちは」
「こんにちは、嬉しいな〜。同じくらいの女の子って本当少ないんだよね〜!」
こはねと杏が話始める。確かめたいことというのは杏のことなのだろうか。ひとまず好きにさせることにし、席でメニューを見始める。
「えっと…オレンジジュースください」
「僕はブレンドで。ココアなくて残念だったね」
「別にココアしか飲まないわけじゃない」
一度しか見てないのに決めつけないでほしい。確かに自分は甘党だがココアばかり飲んでいるわけではない、こういう喫茶店のような店だとつい探してしまうだけだ。
「しかし…あいつら何で逃げたんだろ」
「俺達が合体するのを警戒したとか?前は俺1人で合体してたから2人でも出来ると踏んだのかもしれない」
先ほどの不可解な敵の行動を思い返すがどうにもしっくりこない。何か別の要因があるような気がする。
「今まではこんなことなかったんだよね?」
「怪人と出て来たことといい今回は異常だ」
「だったら今回が例外なのかもしれないし、無視でいいかもね。外れ値を計算に入れるべきじゃないし」
確かにこれ以上考えても答えも出そうにない。今後何度も起こるようなら考えていくことにしよう。そんなことをしているうちにこはねの方も話が進んでいるらしい。
「それじゃあ、私の歌が聴きたくて来てくれたんだ!」
「うん…あの時、すっごいドキドキして…!あの感覚が何か確かめたくて来たんだ」
「よ〜し、それじゃあ!小豆沢さんの為に歌っちゃおうかな!」
「え!?」
そう言うと奥のステージに行きマイクを手に取る。予想外の展開に戸惑いながらもこはねは何処かうれしそうだ。
実際に音楽が鳴り始め、龍我達も聴き入る。
「…やっぱり、全然違うもんだな。人によって歌い方って」
「当然だよ。得意不得意、何を伝えたいか、何を思っているかが歌には顕著に出るからね。すごい人は歌を聴くだけでその人のことだいたいわかったりするらしいし」
確かに、この歌を聴いているだけで杏のエネルギッシュな性格が伝わってくるようだ。そのステージの前でこはねがキラキラとした目を向けるなか杏は歌い終える。
「ふ〜、気持ちよかった〜。どうだった?私の歌」
「やっぱり…すっごいドキドキしました!」
興奮が冷めない様子でこはねは杏に詰め寄る。その様子に杏も満足そうだ。
「あれから色々曲も聴いてみて…今歌ってくれたのもあったんですけど…アレンジとかも入ってるのかな、〜〜♪のところとかサビ前の〜♪ってところもすごく良くて…!」
「!!小豆沢さん…もしかして歌えるの?」
「へ?」
突然の質問にこはねは首を傾げる。
「いっぱい聴いたから耳に残ってるだけで…歌なんてそんな…」
「そっか…」
こはねの返答に杏は少し考えるしぐさを見せると口を開く。
「ねぇ…ちょっと一緒に歌ってみない?」
「えぇ!?そんなの無理です!」
「いいからいいから!」
そう言うと杏はこはねを連れて再びステージに上がるとマイクをこはねにも持たせる。
「わ、私…音楽の授業くらいしか歌ったことないし…曲とかにも詳しくないです…」
「今の曲で行くし、私もフォローしてあげるから!それじょあ、ミュージックスタート!」
半ば強引に音楽を流すと先行して歌い出す。最初は戸惑っていたこはねも観念したのかパートの変わるタイミングで歌い出す。
「!へぇ…」
「あいつ歌上手いな」
当人は謙遜していたが見事なものだ。これで初めてというのだから恐ろしい。
龍我はイマイチ分かっていなさそうだが抑揚の付け方やどのタイミングでアレンジを入れるかなどに天性のセンスを感じる。
「〜〜!!凄いよ小豆沢さん!!私すっごいドキドキしちゃった!」
「え、えへへ…そんな…//」
興奮する杏に対しこはねは照れくさそうだ。しかし実際素晴らしい歌だった。翼から見ても磨けば自分などすぐに超えるように感じる。
「…う〜ん、決めた!」
「へ?」
「小豆沢さん!私の相棒になって!」
「へ?」
杏が突然唸るとこはねに向かって勧誘の言葉を告げる。しばらくなんの話か分かっていない様子だったが間を置いて理解する。
「へぇぇぇぇぇ!?!?む、無理ですそんなの!」
「出来る出来る!隣で聞いてて確信したもん!」
「で、でも私なんか…」
自信がないのかこはねは不安げな表情をする。すると先ほどまでの興奮した表情から一転して杏は真剣な顔つきになる。
「私なんかなんて言わないでよ、小豆沢さんの歌すっごくドキドキしたんだから」
「白石さん…」
「私ね、前にも言ったけど夢があるんだ。お父さん達の残した伝説を超える。そのための相棒をずっと探して…色んな人の歌を聴いたよ、でも小豆沢さんの歌が一番ドキドキした!だから一緒にやりたい!」
杏はまっすぐな言葉で想いを伝える。それを聞いているこはねは自分の中で胸の鼓動が大きくなっていくのを感じる。
(私…人前に出ると緊張しちゃうし、そんなに自分が凄いなんて思わないけど)
恐怖もある、ためらいもある。しかし、それ以上に今踏み出さなければ自分は一生このままだという確信とそれだけは嫌だという気持ちがあった。
そしてそれ以上に。
「私も…一緒に歌いたいです!!」
自分の想いをはっきり口にだす。人生で一番の勇気をここで使う。すると杏が突然こはねに抱きつく。
「きゃっ!?」
「やった〜!ほんっとうに嬉しい!これからよろしくねこはね!私も杏でいいから!」
「え…!それじゃあ…」
杏の言葉にこはねはモジモジとし始め頬を染めながら口にする。
「あ、杏ちゃん…」
「か、可愛い…!」
「ふぇ?」
「可愛すぎるよこはね〜!!」
抱きつく力がさらに強まる。息が圧迫され今度は顔が青く鳴り始めたこはねを眺めながら翼が口を開く。
「注目コンビの誕生だね」
「…」
「ん?兜くん聞いてる?」
「…え?」
何やらボーッとした様子の龍我に首を傾げていると扉が開き2人の男子が入ってくる。それを見ると翼が露骨に嫌そうな顔をする。
「ゲェッ、出たよ…」
「あ、彰人!冬弥!いらっしゃ~い」
「こんにちは白石さん、今日もお邪魔するね」
オレンジ髪の人当たりの良さそうな青年が杏に挨拶をする。どうやら常連のようだが翼はどうしたのだろうか。
「あ~ヤダヤダヤダ、だから来たくなかったんだよな」
「急にどうしたお前」
「今日はどうしたの?二人とも」
「白石さんに話があって来たんだ」
突然愚図りだした翼に龍我が戸惑うのを余所に杏たちが話を進める。
「彰人、白石はこちらの人と話してるところだったんじゃないのか」
「ん、あぁごめんね。お邪魔しちゃったかな」
「あ、いえ!私の話は終わったところだったので!」
左右で別れた独特な髪色の青年の言葉にオレンジ髪の青年が謝る、会話からしてこちらが彰人だろう。つまりもう一人が冬弥か。
「染めてる俺より派手な髪してやがる」
「あ、染めてるんだそれ。カラコンだろうとは思ってたけど」
地毛であれなんだろうか、世の中には色んな人がいるものだ。
「自己紹介が遅れたな、俺は青柳冬弥。二人でBAD DOGSというユニットで活動している」
「始めまして、俺は東雲彰人。見たところ宮益坂の子かな?」
「は、はい!小豆沢こはねって言います!」
軽く自己紹介を済ませる。予想していたがやはり音楽活動をしている人物たちのようだ。
「それで?話って何だったの?」
「あぁ、その前に一つ確認したいんだけど…白石さんがRAD WEEKENDを超えたいっていう噂は本当なのかな?」
「もちろん!絶対超えてみせるって決めてるから!」
質問にまっすぐと応える杏。それを聞いた彰人は満足そうな顔を浮かべる。
「それじゃあ、一人でやるのも大変じゃない?志が同じ仲間がいたら心強いと思うんだけど」
「ふっふ〜ん、そのことなら心配いらないんだよね〜。たった今!心強い相棒ができました!」
「きゃっ!」
杏がこはねを抱き寄せながら宣言する。その発言に一瞬彰人は目を丸くするもすぐに立て直す。
「へぇ…白石さんがそう言うってことは相当できるんだね。今まで何処で歌ってたの?どんなイベントに出た?」
「え、えっと…イベントとかは出たことなくて…歌も…音楽の授業くらいしか…」
「へぇ…」
彰人の目が細くなる。しかし杏はそれに気付くことなくこはねと話始める。
「大丈夫だよ!出てるうちに緊張とかも無くなるし、そうすれば彰人たちにも負けないくらいにこはねならなれる!」
「…!へぇ」
彰人の纏う空気が変わる。薄い笑みを浮かべると一つの提案を口に出す。
「それじゃあ、実際にイベントに出てみるのはどうかな」
「へ?」
「今度やるイベントに空きが出て困ってる店があるんだ。俺から話は通しておくよ」
「いいじゃん!出ようよこはね!」
彰人の提案に杏も賛同する。先ほどの会話の流れからしても取り敢えずイベントの数をこなして場数を踏むのは間違っていないだろう。しかし、予想外のところから反論が飛ぶ。
「僕は反対だけどね」
「え?」
翼が口を開くと席を立ちこちらに近づいてくる。突然の乱入者にこはねは戸惑っていると翼がそちらを向いて喋りだす。
「誤解しないでね小豆沢さん。別に小豆沢さんが実力不足だからとかの理由じゃない。歌のレベルからしても取り敢えずイベントに出るのは悪い選択じゃない」
「じゃあ何で反対なわけ?」
「簡単な理由さ」
杏の質問に応える翼は彰人の方に顔を向ける。
「彼と同じイベントに出るのが反対ってこと」
「はぁ…相変わらず俺を目の敵にしてるよね君は…」
「心当たりはあるでしょ?」
翼と彰人の間に険悪な空気が流れる。すると冬弥が頭を抱えながら説明を始める。
「…済まない皆、二人は仲が悪いんだ」
「だろうな」
「でも、どうして?」
こはねからすればどちらも物腰柔らかで誰かと揉め事を起こしたいタイプとは思えない。そんな2人がなぜここまで険悪なのか。
「僕が嫌うタイプは一つだけだよ、覚えておいてね小豆沢さん」
「俺が嫌いなタイプも教えてあげるよ小豆沢さん」
「へ?」
こはねが戸惑うのを無視しながら二人は睨み合う。
「嘘つきは嫌いなタイプだね…!」
「俺もこっちの気遣いに逆ギレしてくるやつは大嫌いだ…!」
もはや殴り合いでも始まりかねない雰囲気だ。どうにか2人をなだめられる方法を皆が考えていると龍我の携帯からセカイが出てくる。
『カンドロイドがあのアヒル見つけたぞ!』
「ナイスタイミング!行くぞ翼!」
「えっ、ちょ!」
翼の手を掴んで外に走り出す龍我。すると厨房から2人が頼んだ飲み物をもって店主が出てくる。
「ん、あの二人帰ったのか?てかお代は…」
「あー…」
ーーーーーーーー
「まだ話の途中だったのに!」『ウィング!!』
「だったらさっさと倒すぞ!」『ファング!!』
文句を言う翼に対し龍我は強めの口調で返す。しかし実際には内心弱気なことを考えていた。
(頼む…帰るまでに話終わっててくれ…)
「「ライドイン!」」
同時に叫んだ2人がベルトに吸い込まれ光の道を落ちていく。それぞれの衣装を身に着けグローブとゴーグルを着けるとコックピットに出る。
『ダイナミックファング!』
『ファストウィング!』
変形が完了するとウィングの背中にファングが飛び乗りそのまま飛び立つ。進んでいくと視界にカンドロイドと戦うキグナスを見つける。
「この!醜い玩具が!」
空を飛ぶキグナスがタカカンドロイドを叩き落とす。どうやら一度敗れた羽根も直せるようだ。
このまま戦闘に移ろうとしたとき、ファングの尻尾が何かに引っ張られ落ちる。
「うぉぉぉ!?」
「兜くん!」
地面に激突し粉塵を巻き上げるファング。中の龍我が衝撃に眩む頭を振りながら機体を起こすと前方にサンクションピリオドを見つける。
「あいつの仕業か…翼!そっちは任せる!」
『CHANGE THE FANG!!』
仮面ライダーレックスに変形するとそのままサンクションとの戦闘を始める。翼もそれを見るとウィングのターゲットカメラをキグナスに合わせる。
「取り敢えず適当に撃ってみるか…ふん!」
コックピットのスイッチの一つを押すと大量のミサイルが飛んでいく、それに対しキグナスが羽根の嵐で対抗し激突すると大きな爆発を起こす。
煙がお互いの姿を隠す中その爆煙を突っ切って突進を放つも上昇され躱される。
「厄介だな…」
恐らくはスピードはこちらが上だが直線的な動きしかできないこちらに対しあちらは自由自在に空中を飛べる。
搭載されている武装も遠距離武器のみで近接手段は体当たりしかないがあちらはどんな動きにも対応出来る距離を保っているようだ。
膠着した状態になろうとした時、翼がキグナスに語りかける。
「…一つ聞きたいんだけど」
「何だ?」
「君ってなんの怪人なの?」
「はぁ?」
突然の疑問にキグナスの方が首を傾げる。自分が何者かなど今は関係ない、というより1度目の戦いの時に答えは出ていたはずだ。
「白鳥って言ってたけど僕にはそうは思えないんだよね、でもセカイ君が言ってたアヒルも違う気がするし…」
「一体何を…」
「あぁ、分かった」
話が見えてこず困惑するキグナスを置いてけぼりにしながら翼は嘲るように口を開く。
「チキンだ」
「……は?」
「チキンの怪人でしょ?君」
キグナスの纏う雰囲気が変わる、どう考えても悪い方向に。しかし翼は気にせず続ける。
「負けそうになったら逃げて、今も僕に怯えて必死に距離を取ることしかできないビビリのニワトリ怪人。それが君、チキンノーネイムってわけだ。いや〜スッキリした!」
「……殺す!」
キグナスがこちらに向かって急速接近してくるのを見てこちらも全速力でぶつかりに行く。しかし激突の瞬間、キグナスがギリギリで上にずれてすれ違うような形になる。
「バカが!挑発が見え見えなんだよぉ!」
すれ違う瞬間に羽根を振り上げ、強烈な一撃を繰り出す。勝負を決める一撃にキグナスが勝利の笑みを浮かべ、ウィングがバラバラになる。攻撃が当たる前に。
「ライドオフ!」
機体が分割され中から翼が飛び出すとキグナスの背中に飛び乗る。予想外の展開に戸惑っていると翼が腕を掲げる。
「本当はこのタイミングで言うんじゃないみたいだけど、せっかくだから言わせてもらうね?」
掲げた腕の指を鳴らし得意気に叫ぶ。
「変身!!」
『LETS ACTIVE WING!!』
分割された機体のエンジンが背中にバックパックとして装着され、羽根は腕に装着され先端部がヘルメットのように頭にかぶさると残りの体に強化スーツが展開される。
そのままキグナスを羽交い締めにするとエンジンを吹かせ地面に向かって真っ逆さまに落ちていく。
「ぬおぉぉぉぉぉ!!?」
「名乗んないとだよね、そうだな名前は…」
地面に当たる直前で手を離し自分だけ脱出し、キグナスの悲鳴を背にしながら着地する。
「仮面ライダーインパルス…なんてのはどう?」
「貴様ぁぁぁぁぁあ!!!」
激昂したキグナスが羽根を引き裂き腕を出すと剣を取り出し距離を詰めてくる。それを見ながらインパルスは足でリズムを取り始める。
「それじゃあ…シャル・ウィ・ダンス?」
「ふざけるなぁ!!」
完全に冷静さを失ったキグナスの剣撃を右、左とかわしていく。
苛立ちのままに突きを繰り出されると足をクロスさせながら体をそらし、足を戻す勢いを乗せた裏拳で逆に殴り飛ばす。
「なっちゃないね、ステップから勉強してくれば?」
「舐めるなぁ!」
キグナスが剣から大量の羽根を飛ばす。それに対しインパルスは身体を上下反転させると勢いよくブレイクダンスを披露する。
あまりの勢いに周囲の空気を巻き上げ始めたそれは飛んできた羽根も巻き込んで段々宙に浮き始める。
「ハァッ!」
風の勢いが高まりきったタイミングで蹴りを放つと巻き上げた羽根がキグナスに向かって飛んでいきそのままその身体を引き裂く。
「ぐあぁぁぁぁぁ!!」
「そろそろ決めようか、あっちも終わりそうだしね」
その言葉通り、レックスとサンクションピリオドの戦闘も佳境に迫っていた。サンクションが蛇腹剣を伸ばしながら振るうもそれに対し大きく円を描くように右手を振るい剣を巻き取る。
『FINISH THE FANG!!』
「ふん!」
巻き取った剣を掴むとエネルギーを流し込む。大量のエネルギーを流し込まれ赤熱化していった蛇腹剣は限界を迎えると爆発し、その衝撃でサンクションの身体が火花を散らしながら動きを止める。
『FINISH THE FANG!!』
「もう一発だ、前みたいに変わりのパーツが来ないとも限らないからな」
そう言うとレックスは飛び上がる。右腕の強化アームにエネルギーが溜め込まれるとパーツが外れ、今度は右足に取り付けられる。
「レックスビットキーック!!」
巨大な鉤爪状の足を突きだしサンクションの身体を貫く。身体に大穴を空けながら爆発する姿を見届けながらインパルスもベルトを操作する。
『FULL ACTIVE WING!!』
「ウィングビットステップ!」
両足にエネルギーを充填するとキグナスに近づく、一発、二発、三発と顔面を蹴り上げ怯ませると両手を地面に着きバネのように跳びながら空中にキグナスごと跳ぶ。
途中で地面に向かって突き落とすと右足を突きだしながら突撃しキグナスの腹を貫く。
「あり得ない…!この、ボクがぁぁあ!!」
ーーーーーーーー
「概ね予想通りだな」
怪人のセカイでゴスロリの女が戦いを眺めていると後ろから男が話しかけてくる。
「それ、どういう根拠で言ってたわけ?」
「サンクションの攻撃は何らかの隙をついたもの以外すべて見切られていた。2人目のライダーが確認出来た以上勝ち目はなかった」
自身の発明に対して冷めた分析をする男に女はつまらなそうだ。キグナスも思ったよりつまらない断末魔だった。期待外れの展開にため息を放つと男の手の中の端末に目を向ける。
「それは?」
「ライダーに変身するやつの情報だ、これから分析に入る」
「へぇ…」
再び女は笑みを浮かべる。これで少しは面白い展開が期待できるかもしれない、自分好みの絶望が見れることを祈る瞳は黒く輝いていた。
ーーーーーーーー
「じゃあ、結局出ることにしたんだ」
店に戻った翼と龍我はこはね達に話を聞く。どうやら自分の警告は聞き入れられなかったらしい。
「やっぱりこはねに早く慣れて欲しいしね」
「別に他のイベントでもいいだろうに」
「う〜ん、でも…」
翼の言葉に杏は困ったような顔をする。彼女なりに考えはあるのだろうが納得してもらえるか悩んでいるようだ。それを見たこはねが口を開く。
「あのね、私も出たいって言ったんだ」
「…小豆沢が?」
ここに来てからまた表情がすぐれなかった龍我が首を傾げる。
「東雲さんたちが何を考えているのかは分からないけど…変わるためには必要なことだと思うから」
「…そうか」
こはねが弱気ながらも決心を込めた目をすると龍我はそこから口を開かなくなる。
「…ハァ、しょうがない。僕も力を貸そうかな」
「へ?」
「東雲くんにイジメられちゃ可哀想だからね。それじゃまずは…」
指でフレームを作りそこにこはねを収めると翼は何かを考え始める。
「こはねだから…こはっちかな」
「へ?」
「お!あだ名がついたねこはね!翼が仲間と認めた証しだよ!」
「仲良くなりたいしね、好きなタイプの子だし」
「え、えっと…//」
あまり慣れない対応なのかこはねが顔を赤らめると杏が口を開く。
「そうと決まればユニット名も決めちゃおう!私1個あるんだけど聞いてくれる?」
「うん、いいよ」
こはねが返事をすると杏は笑顔を浮かべながら宣言する。
「私たちは『ViVids』!!これこら2人で頑張ろうね!相棒!」
杏の言葉に強く頷く。自分の中の鼓動が一層強くなる、これからの未来への期待が胸を支配していくのを感じた。
設定
仮面ライダーインパルス
翼の変身する仮面ライダー。ダンスのステップを応用した戦闘が得意。単独での空中飛行が可能であり、高い機動力を誇る半面単純な戦闘力は低い。
キグナスノーネイム
白鳥型の怪人。空中用の形態と地上用の形態を使い分ける珍しいタイプの怪人だが激昂しやすい性格が弱点。
サンクションピリオド
人型戦闘用機械兵士シリーズ第二号。両手が蛇腹剣になっておりレックスの機動力を封じる効果が期待されていた。
次回予告
「歌を教えてほしい?」
「知らない間に凄いことになってる…」
「俺達の歌で叩き潰すぞ」
「あの七光りに目にもの見せてやろうぜ」
『第四話 引き金は誰だ』
「いつか見つかるよ、自分だけの歌が」