プロジェクトセカイ feat  仮面ライダー   作:ミッツー116

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 難産の上に詰め込みすぎて長いです。話の構成をキチンと考えないといけないことを痛感。


第五話

 

 

 「やめろーー!!」

 

 

 ビーストピリオドに噛み砕かれようとしている翼に向かって手を伸ばしながら叫ぶ龍我。しかしその手が届くことはない。

 無情にもその牙が突き立てられようとしたその時、何処からともなく飛んできた砲弾がビーストに着弾し吹き飛ばす。

 

 

 「!?」

 「大丈夫二人とも!」

 

 

 声に振り向くと紅色の砲身から煙を出しながら巨大な戦車、アームタンクが近づいてくる。

 タンクはそのまま砲身をカラテピリオドのほうにも向けると砲弾を発射する。それに対し弾こうと両手で受け止めるも流石に無理があったのか地面に叩きつけるとそのまま爆発で吹き飛ぶ。

 

 

 「翼!」

 

 

 ルミが二体を相手している間に気を失ったままの翼に駆け寄る。頭から血を流した状態から反応は無くこのまま放置するのは危険だろう。

 この場から早く連れ出し病院に連れて行くのが最善だろうがルミを置いていけない。ビーストとカラテ二体を相手に何とかしようとしているが防御ではなく回避をして攻め始めた二体を前に苦戦し始めている。

 何とか状況を打開しようとした時、地面から噴き出した泥がビーストたちを飲み込む。

 

 

 「えっ!?」

 

 

 ルミが驚きの声を上げるも構わず泥は吹き出しつづけ高さがある程度までいくと今度は逆にしぼんでいく。泥が巻き戻るかのように地面に吸われていった後にはビーストたちの姿はなかった。

 

 

 

 第五話  「誰ガ為の剣」

 

 

 「ハァッ、ハァッ、ハァッ」

 

 

 瑠璃がただひたすらに病院の廊下を走り続ける。危険だとか周りの迷惑などの発想はすべて頭から抜け落ちていた。

 息を切らしながら病室のドアを開ける。そこにはベッドの横側で龍我とルミが佇んでいた。

 

 

 「翼!」

 

 

 二人の間を抜けベッドに駆け寄る。横たわる翼は包帯や絆創膏で処置された姿で意識無く眠り続けていた。

 感じていた嫌な予感が的中したことを感じ、呼吸が荒くなっていく。視界が狭まり意識が遠のく中その肩にルミが優しく手を置く。

 

 

 「取り敢えず、命に別条はないって。ショックで寝込んでるけど意識もそのうち戻る見たい」

 「そうなんだ…よかった…」

 

 

 報告を聞いた瑠璃はヘナヘナと力なく座り込む。ここまで走ってきた疲労も重なりもう動く気力もない。息を整えていると力なく椅子に座っていた龍我が口を開く。

 

 

 「ごめん…俺のせいだ」

 「え?」

 

 

 何時になく無気力な様子の龍我の言葉に瑠璃が驚く。強気な彼らしくない発言だ、一体なにがあったのか。

 

 

 「別に兜くんのせいじゃないって!悪いのはあのロボットで…」

 「いや、そうじゃないんだ」

 

 

 ルミの言葉を遮ると椅子から立ち上がる。その横顔から覗く目からは上手く感情を読み取ることが出来ない、彼が何を考えているのか二人には分からなかった。

 

 

 「俺が、君たちを巻き込んだんだ…」

 

 

 その言葉を最後に龍我は病室を去っていく。その背中が、ルミにはひどく辛そうに見えた。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 「どうしてビーストとカラテを下がらせたの?」

 

 

 怪人のセカイでパソコンを操作する男に不機嫌そうな女が問いかける。もう少しで仲間を噛み砕かれた絶望の表情が見れそうだったのをスカされ消化不良だ。

 不満気な女を横目に見ながらパソコンのデータに目を通す。

 

 

 「思ったより有用なデータが取れた、やはりシミュレーションだけでは分からないことがある」

 「有用なデータぁ?」

 

 

 男の言葉にパソコンを覗き込む。自分の楽しみをお預けされてまで優先されたのだ、よほど面白いものでなければ納得出来ない。しかし、内容を理解することが出来ず眉をしかめるだけで終わる。

 

 

 「それ、どうなるか簡単に説明してもらえる?」

 「そうだな…」

 

 

 何時もなら一蹴してもいいのだが機嫌がいい、分かりやすく説明してやろう。

 

 

 「あいつらの専売特許を奪うってとこだ」

 

 

ーーーーーー

 

 

 「なぁ…あれ…」

 「うん、おかしいよね…」

 

 

 宮益坂高校1-A、何時も通りの昼休みを過ごすクラスメイトに対し太陽達の心は穏やかではなかった。

 理由は朝から様子のおかしいこはねだ。ずっと落ち込んだ様子で俯き、昼食に誘っても断られた。先日言っていたイベントが関係しているのだろうが事情を知っていそうな龍我も学校を休んでいる。

 何が起きたか分からなくては満足に励ますこともできない。頭を悩ましていると教室の扉が開く。

 

 

 「ん?あの人…」

 「確か…紅先輩だね、ストリートで歌ってるっていう2年の先輩」

 「…紅?」

 

 

 覚えのある苗字に太陽がおもわず聞き直すも誰も気づかない。扉から顔を覗かせたルミは何かを探すように教室を見回し始める。

 

 

 「え〜と、こはねちゃん、こはねちゃん…」

 「ふぇ?」

 「うわぁ!めちゃくちゃ近い席!灯台下暗しだ…」

 

 

 思わぬ近距離からの返事に驚くも咳払いをして気を取り直す。改めてこはねの方に向き直ると落ち込んでいる様子なことに気づく。

 やはり先日のイベントでの出来事がショックだったらしい。

 

 

 「こはねちゃん、ちょっといい?いつもの所で話したいんだけど」

 「えっと…その、今は…」

 

 

 歯切れの悪い返事に頭を掻く。断るのも申し訳ないがそれ以上に一人になりたいのだろう。

 気持ちはわかる、しかし今こはねに必要なのはここで俯くことではない。

 

 

 「あーもう!ちょっとごめんね!」

 「へ!?」

 「よっ!1-Aの皆さん、こはねちゃん借りるね!」

 

 

 突然机を押しのけるとこはねの背に手を回し足を掬い上げるように抱き寄せ、いわゆるお姫様抱っこの体勢になる。突然このような体勢にされたこはねが顔を赤らめるが構わず教室を飛び出す。

 

 

 「やだ、イケメン…ありゃ烈とは関係ないな」

 「さっきから何の話してんの?」

 「ちゃんと聞こえてんじゃねぇか」

 

 

 一人だけ気づかないのではなく無視で傷ついた。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 「ふぅ…結構疲れた」

 「び、ビックリした…」

 

 

 校舎裏にたどり着きこはねを下ろす。重くは無かったが中々全力疾走には無理のある姿勢だった。身体を伸ばし違和感を拭うとこはねの方に向き直る。

 

 

 「ごめんね、無理に連れ出しちゃって。どうしても確かめたいことがあってさ」

 「それって…この間のイベントのことですよね…」

 「…うん、今日練習誘いに来なかったからもう来ないのかなって。余計なお世話ならいいんだけど…」

 「…」

 

 

 ルミの問いにこはねの表情が暗くなる。薄々感づいていたがやはり心が折れかけているようだ。

 あんなことがあったのだから無理もないが、まだ完全に心を決めたわけではないらしい。もし辞めることを決心していたらさっさと言ってくるだろう。

 

 

 「私…曲が止まったのあの時何もできなくて俯いてるだけで…杏ちゃんはきちんと歌ってたのに…」

 「それはしょうがないよ、杏ちゃんはイベント始めてじゃないし。ああいうトラブルは見慣れてるだろうしね」

 「でもやっぱり、覚悟が足りなかったんだと思います。東雲くん達の言う通り、中途半端な気持ちだったから杏ちゃんに迷惑かけて…」

 

 

 とことん自分を卑下するこはねに胸が痛む。あの時何も出来なかったことは相当深い傷を生んでしまっていた。

 あの時、自分ではなくルミや翼なら共に歌っていただろう。一人きりだったとしてもステージをやりきっただろうしそもそも自分がいなければ嫌がらせも無かった。

 自分は杏に取ってお荷物でしかないと感じてしまっているのだ。

 

 

 「…ねぇこはねちゃん」

 「…?」

 「この間の話、しよっか。私がどうやって緊張しないでステージに立つか」

 「今…ですか?」

 

 

 このタイミングで掘り返す話題なのかとこはねが首を傾げる。その様子にルミは優しく微笑むと話始める。

 

 

 「じゃあまず、私がストリートに行くきっかけから話そっかな」

 「そんなところから…?」

 「そ、何で私がこはねちゃんに優しいかも教えて上げる」

 

 

 ルミの言葉の意味が分からない。確かに優しくしてもらっているが何か特別な理由があったということか。全く思い当たる節がない。

 

 

 「私ね、昔は…っていうかほんとは今もだけど、自分に自信が持てなかったんだ」

 「へ…?そうなんですか?」

 

 

 正直想像がつかない。始めてストリートで声をかけてくれたときから、ステージの上での姿、今こうして相談を聞いてくれる姿も頼りになるお姉さんそのものだ。そんな彼女が自分に自信がないというのか。

 

 

 「特に得意なことも、やりたい事も無くってさ…周りの皆が夢の話してたり、何ができるようになったとか何が得意とか聞くたびに凄い惨めな気持ちになっちゃって。一人でよく沈んでた」

 「それ…」

 

 

 ルミの話に胸が締め付けられる。自分がずっと苦しんできた悩みと同じ物を抱えていた事がルミにもあったとは。

 

 

 「そんな時にお父さんが元気づけようとしてストリートのイベントに連れて行ってくれたんだ。付き合わされた弟は子供こんなところに連れてくるなって愚痴ってたけど」

 

 

 昔を懐かしむルミの表情は優しい。彼女にとって大事な思い出なのだろう。

 

 

 「ステージの上の人たちは皆堂々としてて自信に溢れてて…あんなふうになりたいって思った。胸を張って生きられる自分に」

 「…分かります、その気持ち」

 

 

 杏の歌を初めて聴いたときを思い出す。ステージの上で歌う姿に胸の中がドキドキして憧れた、自分がここまで積極的に動けたのもその強い気持ちがあったからだ。

 

 

 「そこからお父さんに頼んで何度もストリートに通って家でも一人で練習したりし始めたんだ、その時に杏ちゃん達とも知り合って一緒に歌ったりして…中学の時、休日の昼間にやるイベントに初めて出た」

 

 

 こはねは表情を引き締める。話の流れからしてここからが重要な所だと感じ取ったからだ。

 しかし、気を張るこはねに反してルミは何かがおかしいのか笑みを浮かべる。

 

 

 「ふふ、ビックリすること言っていい?」

 「な、何ですか?」

 「ここまでの話、全部関係ないかも」

 「へぇ!?」

 

 

 突然のカミングアウトに驚く。そこそこ長い話だったのだが無関係な内容だったのか、その表情がまたおかしいのかクスクスと笑うとルミは口を開く。

 

 

 「本当、ここまで考えてたこと全部どっか行っちゃったんだよね。ステージの上ではさ」

 「あ…」

 

 

 初めてステージに立った時の景色、それは客席から見た憧れとは全く別のものだった。大勢の人間から向けられる注目、自分を包み込む爆音、襲いかかるプレッシャーに押しつぶされそうになった。

 だが、それよりも一番に感じたものは別だ。

 

 

 「胸がドキドキしたんだ、凄く。不安とかプレッシャーとか…そんなのだったかもしれないけど、私は違うと思う」

 「ドキドキ…」

 

 

 本能的にルミのこれからの言葉を聞き逃さないようにしなければならないと感じる。自分が見えていないもの、それが見えるような気がする。

 

 

 「楽しかったんだよ、歌うのが。それが今も歌う理由で…緊張が気にならなくなる理由」

 「歌うのが楽しい…」

 「こはねちゃんも一緒でしょ?」

 

 

 その言葉にステージの事を思い出す。すぐにトラブルが起きてそれどころではなくなったが杏と2人で歌ったとき、確かに自分の胸をドキドキが支配していた。

 

 

 「前に私のステージを見せたのはそれが理由なんだ。どんなに緊張しててもステージに立つと楽しくて忘れちゃう、こはねちゃんも同じタイプだと思ったから」

 「私が…」

 

 

 ルミの言葉に考え込むこはね。その様子を見て質問をする、最も大事でシンプルな質問を。

 

 

 「歌うの、嫌いになった?」

 「それは…」

 「それなら止められない、一番大事な物を無くしちゃってるから。でももし違うなら」

 

 

 ルミは立ち上がるとこはねの前に立つ。

 

 

 「他のどんな感情だって無視できるはずだよ、きっとね」

 

 

 その言葉を最後にルミは立ち去っていく。居ても立っても居られない居られずこはねは立ち上がると叫ぶ。

 

 

 「あ、あの!私!」

 「その先は杏ちゃんに言ってあげなよ、きっと待ってるからさ」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 神山高校体育館、その中でバスケットボールを弾ませながら走る。目の前にいる一人を強引に抜き去るも他のメンバーに進路を塞がれる。

 間を縫うように強引にシュートするもリングに阻まれ体操服姿の少女ーー瑠璃は悔しそうに歯噛みする。

 

 

 「あ~惜しい〜!!」

 「横の味方にパスだよあそこは〜」

 「いや何時もの宝田さんなら決めてたでしょ!調子悪いのかな?」

 

 

 周りの人間の声が頭に響く、こういうのは嫌いだ。自分の事をよく知りもしない人間が憶測で頭の中に自分の知らない宝田瑠璃を想像する。

 暗い気持ちが脳内を支配し頭痛が響き始める、その瞬間肩に衝撃を感じ勢いよく振り払う。

 

 

 「あ、ごめん…励まそうと思って…」

 「…大丈夫」

 

 

 会話をするつもりも起きず早々にその場を去る。その姿を見た周りのクラスメイトがまたヒソヒソと話始める。

 

 

 「何か荒れてるな宝田さん」

 「あいつだよ、隣のクラスの疾風」

 「何か入院してるんだろ?喧嘩とかかな」

 「そりゃそうだろ、だってあいつ中学のとき…」

 「え、何それ」

 「……………………」

 

 

 周りの言葉が耳に入る、聞きたくもない話だ。ありもしない憶測と、掘り返されたくない過去が交差する。

 

 

 「怪我ってひどいの?」

 「意識不明らしいよ、植物状態って感じらしい」

 「何で宝田さんと仲いいんだっけ?」

 「付き合ってるんでしょ」

 

 

 そんなんじゃない、自分達は相棒だ。勝手な話をするな。

 

 

 「疾風の奴がいない内にお近づきになりたいな」

 「いつも一緒にいて声かけられないからな」

 「いなくてもかけないだろw」

 「いーやいけるね」

 

 

 頭痛がする。視界が回る。息が荒くなり全身の力が抜けていくのを感じる。胸の中から込み上げてくる吐き気に身を委ねてしまえば楽だろうか。

 

 

 「……だ、……ら…」

 「ハァッ…ハァッ…、うっ…」

 「宝田!」

 「!」

 

 

 限界を迎えようとした時、すぐそばで自分を呼ぶ声に意識が戻る。声の方に振り返ると冬弥が心配そうな顔で見つめている。

 

 

 「大丈夫か?体調が悪そうだが」

 「……平気」

 「保健室に行ったほうがいいんじゃないか?俺から先生に…」

 「自分で行くから大丈夫…ありがと」

 

 

 心配そうな冬弥を置いて教師に許可を貰うと体育館を去る。そのまま保健室に向かおうとするもやはり気分がすぐれない。

 

 

 (もう帰ろうかな…)

 

 

 それならまた別の許可が必要だろうが戻るのも面倒になってしまい教室で着替えると学校を後にする。

 勝手に早退するのに罪悪感もあるがそれ以上に一刻も早くここから去りたかった。

 

 

 (何か…昔に戻っちゃったみたいだな)

 

 

 思い出したくもない過去の記憶が蘇る。翼とコンビを組んでストリートで歌うようになって捨て去ったつもりだった。

 いつまでも自分はいつまでも弱いままな事に飽き飽きする。俯きながら歩いていると何かにぶつかる。

 

 

 「あ、すいません」

 「いやこっちこそ…って、お前は確か…宝田…さん」

 「へ…あ、兜くん…?」

 

 

 ぶつかった予想外の相手に驚く。人のことは言えないがこんな時間に何をしているのだろうか、私服姿なところから学校もサボってそうだ。

 

 

 「えっと…それじゃ」

 「え、ちょ、ちょっと待って!」

 

 

 会釈してその場を去ろうとする龍我を追いかける。こちらを避けているのかひたすら歩き続けるのをしばらくついていくと観念したのか口を開く。

 

 

 「何のようだ」

 「えっと…そ、その、何してたの?」

 「そっちこそ何してるんだ、こんな時間にストリートまで来て」

 「え……?あ」

 

 

 龍我の言葉に周りを見て気づく、何時もの癖かストリートに来てしまっていた。呆気に取られていると龍我との距離が開いてしまっているのを駆け足で追いかける。

 

 

 「そ、それで兜くんは何してたの?」

 「昨日のロボットを探してる。またここに出るのが一番可能性が高いからな」

 「う〜ん…」

 

 

 龍我の言葉に少し納得がいかない、確かにこのストリートにロボットが出るのは事実だ。それも完全に龍我を意識しているように感じる、しかしだからこそ本来学校に行っている時間に現れるとは思えない。

 翼も気にしていたが最近の龍我は何処かおかしい。今も何かを誤魔化すように行動しているように感じる。ここで確かめようとした、その時。

 

 

 ぐぅ〜〜〜

 「え?」

 「あ…//」

 

 

 喋りかけようとした瑠璃のお腹から空腹を告げる音がなる。予想外の腹の音に思わず龍我が振り返ると瑠璃の顔が耳まで真っ赤に染まっている。

 時計を確認するともう昼だ。時間的に瑠璃も昼休み前に帰ってきて何も食べていないのだろう。

 

 

 「…どっか食いに行くか」

 「うん…//あ、それならWEEKEND GARAGE行こうよ!」

 「……まぁいいが、大丈夫か?」

 「?」

 

 

 龍我の言葉に首を傾げながら歩を進める。そう時間もかからないうちにたどり着きドアを開けると、その意味に気づくことになる。

 

 

 「謙さ〜ん、お邪魔しま~す」

 「お前ら…学校はどうしたんだ?」

 「あ」

 「そりゃそうだろ」

 

 

 知り合いの店にこんな時間に行けば突っ込まれるに決まっている。少し考えれば分かることだったと後悔しながらもカウンターに座る。

 

 

 「なんだ、テーブルじゃなくていいのか?」

 「え、え〜と…」

 「何あるんだこの店」

 

 

 向かい合うのが気恥ずかしくカウンターに座ると謙に突っ込まれる。ごまかしながらメニューを眺めると注文を決め届くのを待つ。

 

 

 「………」

 「………」

 

 

 並びながら座る2人だが会話はない。時々相手の方をチラチラ見るもすぐに目をそらし店内のインテリアなどを見つめるフリをする。

 

 

 ((気まずい…))

 

 

 そもそも人と喋るのが得意ではない。聞かなければならない事があるのにどう切り出せばいいのか分からない。

 龍我も沈黙を終わらせる話題が浮かばず視線がインテリアからステージの配線などに移る。自分でもなぜこんなのを見ているのか分からない。

 沈黙に耐えかねたのか瑠璃が切り出す。

 

 

 「え、えーっと…前から聞いてみたいことがあったんだけど、いい?」

 「…まぁ」

 「そ、それじゃあ…」

 

 

 許可がもらえたので遠慮無く聞くことにする。とはいえ少々パーソナルな部分に触れてしまう可能性もある、表情を整えると言葉を放つ。

 

 

 「兜くんって、どうして仮面ライダーやってるの?」

 「またそれか…好きだなお前ら」

 

 

 どうにもストリートの人間は思考回路が似通っているのか質問が被りがちだ、ならばこちらの返答も同じものを返すのみだ。

 

 

 「自分のためだよ、俺がやりたいからやってるんだ」

 「……そっか」

 

 

 返答を聞いた瑠璃の表情が優れない、どう言葉を返すか考えているようだ。あまり楽しい話題でもないのでこちらから変えてしまうことにする。

 

 

 「お前は?何で音楽やってんだ?」

 「私?それは…」

 

 

 少し上を向いて考える様子を見せる、もしやこちらもパーソナルな部分に触れてしまったか。

 話題を間違えた可能性に龍我が汗を書き始めると瑠璃が口を開く。

 

 

 「自分のため…かな」

 「…何だよそれ、真似してんのか?」

 「アハハ…でも本当にそうなんだ、誰かに夢を届けたいとか…最高のステージをしたいとかそんなんじゃないの」

 

 

 話をする瑠璃の表情は寂しいような悲しいような複雑な顔だ。話しづらい話ならとめようかと思うがその暇もなく言葉が続く。

 

 

 「ちょっと昔思い詰めてたことがあってさ…自分って何なんだろうって悩んでたんだよね。何が自分の意思で何が違うのかが分かんなくなっちゃって…結構辛かったんだ」

 「……」

 

 

 なんでもない様子を振る舞いながら笑みを浮かべるがその目は暗い。こんな表情をさせてしまっている事を申し訳なく感じる、それに気づいているのかいないのか分からないがこちらを見つめると笑いながら続ける。

 

 

 「そんな時にルミにストリートで歌ってみたらどうかって言われてね、自分を知ってる人のいない所で思うがままに過ごしてみたらいいんじゃないかって」

 「……じゃあ、自分探しの為に歌い始めたのか」

 「まぁそんな感じ」

 

 

 柔らかく笑いかける瑠璃を見つめる。何があったかまでは分からないがこの柔和な少女が何故ストリートに来たのかの疑問は解消されたような気がする。

 今も探してるのかどうかなども気になるが詮索はしない、今彼女が話してくれているのは別の理由だろう。

 

 

 「兜くんは自分のためって言ってたけど、一応言っておくね」

 「…?何をだ」

 「…人の為に生きるのには限界が来るよ」

 

 

 瑠璃の発言に空気が変わる。どこかこちらを見透かしたような瞳におもわず目を背けてしまうもそのまま声をかけられ続ける。

 

 

 「本当に自分の為に戦うならそれでいいと思う、そのほうがきっと後悔しないから」

 「お前は…後悔してるのか?」

 「……うん、してる」

 

 

 龍我の言葉に瑠璃は遠くを見つめる、過去にあったであろうことを思い出している表情は悲しげだ。そのまま少し声を震わせながら口を開く。

 

 

 「大好きだったことが、嫌いになっちゃった」

 

 

 その言葉に返す言葉が無く黙り込んでしまう。事情を聞いておけば慰めることも出来たのだろうか、踏み込むべきなのか離れるべきなのかを悩んでばかりな自分に嫌気がさすと厨房から謙が戻ってくる。

 

 

 

 「ほい、オムライス2つ」

 「あ、ありがとうございます」

 「頂きます」

 

 

 そんな事やっている内に料理が来てしまう。ひとまず食事を始めるが味がしない、瑠璃をどうにかして励ましたいが食べ終わればその場で解散だろう。

 どうにかしなければと悩んでいると謙が助け舟を出す。

 

 

 「そう言えば…まだお前の名前を聞いてなかったな」

 「…聞いても意味ないですよ、ここに来ることはもうないと思うので」

 「なら、尚更最後に聞いておかなきゃな。せっかく会えたんだ」

 「…ハァ」

 

 

 謙の言葉に観念した様子でため息を吐く。こんなことで言い合っても仕方ないと思ったのだろう。

 

 

 「兜龍我です」

 「……兜?」

 

 

 龍我の名前を聞いた謙一瞬呆けた表情をすると龍我に顔を近づけ眉を潜めながら凝視する。龍我の困った顔を無視ししばらく続けると口を開く。

 

 

 「お前もしかして…鉄矢の子供か?」

 「え?」

 

 

 予想外の質問に気の抜けた声が出る。隣にいた瑠璃は話が見えず首を傾げる。

 

 

 「鉄矢って誰です?」

 「俺が学生の頃ここらへんでバンドやってた奴だ。俺もよく一緒にイベントに出た。」

 「へ〜そうなの?」

 「いや…確かに親父の名前は鉄矢だけど、音楽やってたなんて聞いたことない」

 「よし、ちょっと待ってろ」

 

 

 そう言うと謙は店の奥に入っていく。しばらく待っていると手に一冊のアルバムを持って戻ってくる。

 

 

 「それは?」

 「店には昔の俺の知り合いも来るからな、たまにこういうの引っ張り出して昔話をするんだよ。確か…ほら、こいつだ」

 

 

 謙が1枚の写真を指差す。そこにはギターを持った金髪の男が写っている。

 

 

 「どう?兜くん」

 「いや…若すぎて分かんねぇ…俺が見たことあるの黒髪だけだし」

 「ははっ!いや間違いねぇよ、今の困った顔がそっくりだ」

 

 

 困り眉を浮かべる龍我の姿に旧友を思い出した謙が笑う。いまいち良い気分ではないが写真を見つめ続ける。

 父のような気もしなくもないが確信には至れない、そう思いながら周りの人物に目を移した時だった。

 

 

 「あ!母さんいる!」

 「そっちは分かるの!?」

 「母さんアンチエイジング頑張ってるんだなぁ…まだ分かるわ」

 「本人に言っちゃダメだよそれ」

 

 

 暗くなっていた雰囲気がすこし盛り上がり始めた2人に謙も笑みを見せる。

 

 

 「二人とも元気か?今度店に来るよう伝えてくれ、音楽をやめて以来すっかり会ってない」

 「……」

 「どうしたの?」

 

 

 謙の言葉に龍我は黙る。もう会うことがないかもしれないことを考えると今この場で本当の事を伝えるべきだろう。

 

 

 「親父は死んだ…三年前に交通事故で」

 「え…」

 「…悪い、嫌なこと思い出させたな」

 

 

 唐突に告げられた事実に今度は謙と瑠璃2人の表情が曇る、知らなかったとはいえ無神経な質問だった。どう言葉を選べばいいか悩んでいると龍我自身が口を開く。

 

 

 「別にいい。意外と…時間が経てば気にならなくなる」

 「……そうか」

 

 

 彼なりに乗り越えているのだろうと深く追及する真似はやめておく。それを見ていた瑠璃が少し悩むと口を開く。

 

 

 「あの…お父さんってどんな人だったの?」

 「…別に、何処にでもいる普通の父親って感じだぞ。それこそ、普段は柔らかい感じでバンドやってたなんて想像も出来ない感じだ」

 「あいつは昔から形から入って無理にキメてたからな。素はそんな感じだ」

 (…俺遺伝してんのかな)

 

 

 自分もライダーになったのを機にイメチェンしたのを思い出す。気づきたくもない共通点に気づいてしまった、他の人にはバレないようにしなければいけない。

 

 

 「…怒る時だけ口調めちゃくちゃ荒かったんだよな親父、バンドの時の癖だったんだろうか」

 「ここじゃ揉め事もそれなりにあるからな。舐められないように悪ぶる奴も多いぞ」

 「だから一人で来るの怖いんだよね…」

 

 

 段々会話も自然にこなせるようになってきたところで皿が空く。これでいつでも帰れるが、いざ帰るとなるとタイミングを気にしてしまう性格だ。

 

 

 「お父さんとはどんな風に過ごしてたの?」

 「いや別に特別なことは…あぁでも、小さい頃はカラオケに何回か一緒に行って歌教えてもらったな。上手かったんだよ親父、バンドしてたからだったんだな」

 「あいつは確かに歌上手かったんだが…よし、ちょっと待ってろ」

 

 

 謙が再び店の奥に向かうと今度はCDを持ってくる。何が出てくるか薄々察して龍我の背中に嫌な寒気が走り始める。

 

 

 「あ、これってもしかして!」

 「そう、鉄矢の出したCDの中でも特に俺達が気に入ってた歌だ」

 

 

 そう言うとCDを早速再生し始める。当時お金がない頃に自分で録音したもののためそれほど音質は悪くないが二人の話通り中々の美声だ。

 しかし、そんなことより気になる事が龍我と瑠璃にはあった。

 

 

 「「ダッセェ曲…」」

 「おいおい、あいつが沙也加を落とすために作った『刹那の永遠〜ETERNALSECONDS〜』の何処がダサいんだ」

 「全部だわ!」

 「刹那をSECONDSって訳すな!」

 

 

 これで自分の母が落とされた事など信じたくない。何が響いた結果結ばれる事になったのだろう。

 

 

 「歌は上手いが曲作りのセンスが無くてな…結局泣かず飛ばずで大学卒業を機にやめてここには来なくなった」

 「本当に一回もこの話聞いてないの?」

 「変なところで意地になるタイプだったからな親父…自分の挫折話とかしないかもしれん」

 

 

 父親の過去を意外な形で知って少し考える。父は優しくいつも他人のことばかり考え、物欲なども感じられない男だった。そんな父が夢をもちバンドを組んでいた事実に驚くと同時に少し自分が惨めになる。同じ血を引き思考も似通っているのに夢など持ったことがない。

 龍我が少し悩み思考の中に入り込んでいると突然目の前にマイクが置かれる。

 

 

 「どうだ、一曲歌ってみるか」

 「え?」

 「お前がどのくらい歌えるのか興味あるしな。それに…悩んでいるときは歌うとスッキリするぞ」

 

 

 どうやら見透かされていたらしい、確かにライダーになってから趣味だったカラオケにも行っていない。久々に歌ってみるかと思いマイクを手にとる。

 

 

 「それじゃあ刹那の永遠を…」

 「誰が歌うか。こないだ白石達が歌ってたやつあるだろ、それ流せよ」

 「んじゃ、はい」

 

 

 イベントスタッフの経験もあるのか瑠璃はテキパキと機械を操作し音楽が流れ始める。その場でマイクを持っていると謙に促されステージの上に立たされる。

 

 

 「こ、ここまでしなくても…」

 「せっかくだ、楽しめよ」

 

 

 口では乗り気じゃないが正直少しドキドキする。こんなステージの上で歌うなんて学校行事くらいしか経験がない。

 胸の中をフワフワとした何かが巡り始めるなか歌い始める。

 

 

 「〜〜♪!」

 「えっ」

 「ほう…」

 

 

 音楽に合わせて声を出す、久々の感覚だ。一ヶ月程だが随分歌ってなかったんだと実感する。このステージもいい、観客も何もいないがどこか特別感がある。きっとイベントならもっと気持ちいいんだろう。

 翼達がのめり込む理由が少し分かったように感じていると曲が終わる。確かに少しは気が紛れた、満足した様子で謙にマイクを渡す。

 

 

 「お前、本当に鉄矢に似てるな。昔を思い出したよ」

 「…そうですか」

 「あの歌い方…それに歌ってる時にマイクと逆の手が変にクネクネする癖、あれでリズム取ってんだろ?」

 「バカにしてます?」

 

 

 一瞬センチメンタルになりかけたのに損をした気分である。別に落ち込みたいわけではないが。

 ふと瑠璃の方を見ると椅子からいなくなっている。何処に行ったのか周りを見回すと地面に四つん這いになり項垂れている。

 

 

 「ど、どうした?」

 「…私より上手い」

 「え?」

 「歌が!私より上手いよ〜!!」

 「えぇ…」

 

 

 突然叫んだと思ったら号泣し始めた瑠璃に困惑する。感情がジェットコースターすぎではないだろうか。助けを求めるように謙を見るが肩をすくめるだけだ。

 

 

 「はっ!もしこの歌声を翼が聞いたら…」

 『やば〜超上手〜い。瑠璃より兜くんと相棒にな〜ろっと』

 「兜くん!絶対に翼の前で歌わないでね!」

 「いつもこんな感じなのか?」

 「たまに変になるんだ」

 

 

 ジェットコースターの勢いが止まらない瑠璃に呆れながら謙と話す。こんなのと相棒をやれているのだから翼の懐は相当深いのかもしれない。

 そんな事を考えていると扉が開き杏が入ってくる。

 

 

 「ただいま〜、ってあれ?瑠璃、早退したって聞いたのにこんなところで何してるの?龍我までいるし」

 「ちょうどいい、こいつの事任せた」

 「杏ちゃ〜ん!翼に捨てられるよ〜!!」

 「は!?どういう意味、ちょっ、帰んないでよ!」

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 「彰人、今日の予定の事で相談があるんたが」

 「相談?」

 

 

 場所は移り変わり、学校から帰り私服に着替え合流した彰人と冬弥は2人でストリートに向かいながら話す。

 冬弥の方からこんな風に話題を切り出すのは珍しい。

 

 

 「今日の練習で気になる事でもあんのか?」

 「いや練習自体はいいんだが…その前に、翼のお見舞いと謙さんの店に行かないか?」

 

 

 冬弥の言葉に彰人は露骨に顔をしかめる。冬弥が翼と仲がいいことは知っているし、流石に今回の件は自分も少し気になるのでいい。

 問題はWEEKEND GARAGEに行く方だ、最もその理由も大体察しはつくが。

 

 

 「…疾風の見舞いはともかく、何で白石の店に行くんだよ」

 「この間のイベントの件だ。俺はやっぱりちゃんと説明したほうがいいと思う」

 「はぁ…やっぱりそれかよ」

 

 

 冬弥が自分の事を心配して言ってくれているのは分かる。しかし何を言ったとしてもそれは言い訳にしかならないのだ。

 何度か説明したが折れない冬弥にどう納得されるかに頭を悩ませていると2人を呼ぶ声が聞こえる。

 

 

 「お〜い、そこのイケメン2人〜!」

 「ん?」

 「ルミさん、どうされました?」

 

 

 こちらに手を振りながらルミが走ってくる。2人が気づいたのが分かると嬉しそうに手の勢いを強める。

 

 

 「ハァ〜…、疲れたぁ〜。案外見つからないね、ストリートだけでも」

 「なんの用だ、今さら俺たちと話すことなんかないだろ」

 「彰人、失礼だぞ」

 「むしろ〜話すことしかないねんな〜」

 

 

 不機嫌な様子の彰人を気にも留めないと言った様子のルミにより不快そうな表情が強まる。余裕そうに笑みを浮かべたままのルミは口を開く。

 

 

 「この間のこと、キチンと説明してほしいなって」

 「話すことはねぇ、あれは俺の指示だ。それが全部だ」

 「ん〜〜〜」

 

 

 彰人の態度に困った様子で唸る。どうしても本当の事を話す気はなさそうだ。

 それなら仕方ない、もうひとつの目的の方を果たす事にする。

 

 

 「よし、それじゃあ杏ちゃんの店に行こうか」

 「はぁ?お前まで何言い出してんだ」

 「やらなきゃいけないことがあるよね?」

 「だからそれは…」

 

 

 彰人の言葉を遮るように手を前に出す。

 

 

 「さ、ついてきて。着くころにはあっちも終わってると思うからさ」

 「終わる?」

 「ゴー!」

 

 

 話は後と言わんばかりに先へと進むルミ、その後を冬弥がついて行ってしまう。こうなると自分もついていくしかない、観念した様子で彰人も続いた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 とある病院、そこにはビーストに敗れた翼が意識を失った状態で入院していた。

 病室で年老いた女性が目覚めた時のための着替えを机に置く。すると後ろの扉が開き龍我が入ってくる。

 

 

 「あ、すいません…出直します」

 「いいのよ、入って」

 「……じゃあ」

 

 

 一度出ていこうとしたのをやめると病室に入りベッドの横の机に手紙を置くとそのまま今度こそ出ていこうとする。

 

 

 「あなた…翼くんのお友達?」

 「……いえ、ただお世話になったのでそのお礼に」

 「そう、今他のお友達も来ているのよ。よかったら話していかない?」

 「…急いでいるので」

 

 

 龍我が誘いを断ると女性は悲しそうな表情をする。その表情に少し戸惑うと女性が口を開く。

 

 

 「自己紹介がまだだったわね、私は翼くんの孤児院の院長をしているの。だからね…あなたが思い悩んでいるのが気になって…」

 「……そう見えますか?」

 「えぇ、職業柄子どもたちの表情には敏感なの。よかったら話してくれない?」

 

 

 龍我はその言葉に悩む。正直誰にも話すつもりは無い、だが誰かに話してしまいたい気持ちもある。

 少し考えた結果、この人なら今後会うことも誰かに漏らすこともないと判断し口を開く。

 

 

 「ずっと決断できずにいたんです、やるべきことは分かってたのに」

 「やるべきこと?」

 「どう考えてもそうすべきでした、でも出来なかった。自分が甘えてたんだと思います、彼…皆にも。そのせいでこうなってしまった、だからやっと決めたんです」

 

 

 俯きながら話していた龍我は顔を一度上げると女性に頭を下げる。

 

 

 「すみません、彼がこうなってしまったのは俺が原因です。今後はもう彼に近づくことはないので…起きたら彼にも伝えていてください、手紙にも書いたんですけど…本当に申し訳ないと」

 「あなたは…それでいいの?」

 

 

 女性の言葉に龍我は詰まる。本音を言うなら当然良くはない、だがこうするべきだと確信している。

 彼らの命を危険に晒してはいけないのだ。そんな思いを見透かしているのか女性は優しく微笑みながら口を開く。

 

 

 「あなたのやるべき事が何なのかは私には分からないわ。でもね、この世界に一人でやらないといけないことなんてないと思うの」

 「……そうでしょうか、彼には俺の為に危険な真似をする必要はないと思います」

 

 

 この戦いを自分がやり続ける理由、それはひどく利己的なものなのだ。それを知らない彼らの善意を利用するような真似は出来ない。

 

 

 「そうね、もしかしたらやる責任があるのはあなただけなのかもしれない。でもね、責任を一人で負うのか、皆に一緒に背負ってもらうのか、それを決めるのは自分でいいのよ。きっと…そのために私たちは同じ世界に生きているんだから」

 「同じ世界…」

 

 

 その言葉に思わず暗い顔になる。同じ世界、励ましの言葉はむしろ自分を苦しめる。

 本当に彼らと自分は同じように生きていると言えるだろうか、そんな事を考えていると扉が開き一人の青年が入ってくる。

 

 

 「すいません、仕事の電話が長引いてしまって」

 「最近の若い子は忙しくて大変ね、まだ翼くんと同い年なのに」

 

 

 女性と会話しながらベッドのところに歩いてきた青年は龍我の方を見ると驚いたような顔をする。

 

 

 「お前は…」

 「?」

 「紹介するわね、彼は翼くんのお友達で…そう言えばまだお名前を聞いてなかったわね」

 「あー…」

 

 

 正直そろそろ出ていこうと思っていたので名乗るか迷う。何度も言うがもう彼に会いに来ることはないのだ。

 すると青年の方から手を差し出してくる。

 

 

 「はじめまして、俺は白魔怜。翼とは小さい頃の友達なんだ、よろしく兜くん」

 「あぁ、どうも…。えっと、それじゃ俺はこれで」

 

 

 挨拶を終えると足早に病室を出る。相変わらずの人見知りだが青年ーー怜は握手した手を見つめると軽く振りながら呟く。

 

 

 「まだ自分が名乗ってないことに気付かないとは、鈍いやつだ」

 「あら?今何か言ったかしら」

 「お気になさらず、それよりも今は翼を」

 

 

 そう言うと怜はベッドの横に歩いていき懐から球状の物体、スフィアを取り出す。

 

 

 「本当に彼を目覚めさせられるの?」

 「ええ、肉体的には健康で眠っているだけですから。夢から目覚めさせればいいんです」

 

 

 怜はスフィアを翼の身体に押し当てるとそのまま起動させる。

 

 

 『ノクス!!』

 

 

 スフィアが宿した力の名を叫ぶと紫色のオーラが翼を包み染み込んでいく。目の前に広がる異様な光景に女性は不安そうな表情を浮かべると怜に問いかける。

 

 

 「あ、あの、それは何をして」

 「これで目が覚めます。もっともすぐ起きられると私が困るので明日か明後日になるよう調整しましたが」

 

 

 スフィアを懐に戻しながら告げると机の上の手紙に気づく。それを手に取ると勝手に中身を開け内容を確認する。

 

 

 「あのそれは…」

 「あぁそれと、これを彼が起きたら渡しておいて貰えますか。近い内に約束を果たしに来ると伝えていてください」

 「は、はぁ…」

 

 

 先程とは別のスフィアを渡すと男は病室から出ていく。

 

 

 「『もう戦わなくていい』ねぇ…こんなの渡されたら困るんだよ」

 

 

 女性が渡されたスフィアに気を取られている内に持ち出した手紙をゴミ箱に捨てる。既に興味を失ったとばかりに携帯を取り出すとUntitledを起動させ怪人のセカイに入る。

 

 

 「あら、戻ってきたわね。ピリオドシリーズの改修終わったみたいよ」

 「計算通りのタイミングだ」

 

 

 怜は椅子に座ると自らが生み出した発明品、ピリオドシリーズへ視線を移す。段々完成形が見えてきた、この2体の仕上がり次第では次で本腰を入れることになる。

 

 

 「さぁ、実験を始めようじゃないか」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 場所は戻りWEEKEND GARAGE、泣き喚いていた瑠璃を落ち着かせる事に成功した杏はエプロンを身に着け接客を開始していた。

 

 

 「はい、注文のコーヒー!ゆっくりしていってね!」

 「ありがとう杏ちゃん!今日も頑張ってるね!」

 「でしょでしょ〜?でも今日は、もう一人も見てあげてほしいかな!」

 

 

 そう言うと後ろを振り向く。視線の先にはなぜかエプロンをつけた瑠璃が接客をしていた。

 散々杏を振り回した結果お詫びとして店の手伝いをさせられていた。

 

 

 「お待たせしました、レモンティーです」

 「あら〜!見たことない子!新しいバイトさん?」

 「可愛らしい〜!ねぇねぇ、いくつ?高校生?」

 「え、えっと…」

 

 

 特に接客面に問題はないが些か押しの強いストリートの夫人達に押されている。相手の仕方にコツがあるのだが教えてやらない、先程まで自分を振り回していた罰だ。

 そんなことを思いながら眺めていると扉が開き新たに誰か入ってくる。

 

 

 「はー、い……?」

 

 

 振り向いた先には一人の少女がいる。髪をフワフワとした形で短く2つ結びにした小動物のような印象、何より杏の目を引くのはその服装だ。

 ピンクロの上着にデニムのスカート、その服装には覚えがある。

 

 

 「もしかして…こはね?どうしたのその格好!?」

 「へ、変かな…」

 「い、いやそんな事ないけど…」

 

 

 イベントの後から連絡が取れずに心配していた相棒の突然の大変身に戸惑う。まさかずっと美容院にいた訳ではあるまい。

 こはねの変身に気づいた瑠璃も驚いた様子で近づいてくる。

 

 

 「ま、まさか!!落ち込んでいたところを変な男に誑かされて…」

 「そんな訳無いでしょ!ちょっと落ち着いてよ!」

 「ご、ごめん…」

 「驚かせちゃったかな…杏ちゃん、あのね」

 

 

 怒られて凹む瑠璃を置いてこはねは口を開く。杏の方はこれから伝えられる事を想像して少し胸が締め付けられるのを感じる。

 イベントでの出来事を思えば最悪のケースも考えられるからだ。

 

 

 「私…やっぱり杏ちゃんの隣で歌いたいんだ。これからも…一緒に歌ってもいいかな?」

 「へ?」

 

 

 予想外の発言に気の抜けた声を杏が上げるもこはねはそのまま続ける。

 

 

 「私ね、きっとすぐには杏ちゃんみたいに堂々と歌えないし、こないだみたいなことがあったら迷惑かけちゃうかもしれないんだけど…」

 

 

 不安そうな表情をしながら言葉を紡ぐ。自分で言いながら不安感が募っていってしまう内容だ。しかしルミの言葉に従うなら重要なのはこの先なのだ、それを伝えたい。

 

 

 「杏ちゃんの隣でステージに立って歌うのが…ドキドキして大好きなの!だから…これからも杏ちゃんの隣で歌わせてほしいの、練習も頑張るし、絶対にいつか最高のステージをしてみせるから!」

 「……っ!こはね〜〜!!」

 

 

 たまらず杏がこはねに抱きつく。抱きつかれたこはねが少し苦しそうにするも感極まった杏はそのまま続ける。

 

 

 「もちろんいいよ!っていうか最初からそのつもりだから!こはねが嫌って言ってももう離してあげない!」

 「杏ちゃん……えへへ、分かった。ずっと一緒に歌おうね」

 

 

 杏の言葉にこはねも嬉しくなったのか少しだらしない笑みを浮かべる。その様子を隣で瑠璃が尊みを感じながらみていると再び扉が開く。

 するとルミを先頭にBAD DOGSの2人が入ってき、杏は警戒の顔をする。

 

 

 「BAD DOGS!何しに来たの!?」

 「あ、こはねちゃん!ちゃんと伝えられた?」

 「は、はい!ありがとうございました!」

 

 

 怒りの言葉を口にする杏の隣でルミがこはねに話しかける。無事に2人が和解できた事を確認し安堵する。

 すると冬弥が杏に向かって話しかけようとする。

 

 

 「白石、聞いてくれ。この間の件だが…」

 「おい、だから…」

 「スト〜〜〜〜ップ!!」

 

 

 話しかけた冬弥を止めようとした彰人より先にルミが間に入る。

 

 

 「ちょ、ちょっと!何!?」

 「ルミさん、一体何を…」

 「口喧嘩も弁明も必要なし!ここにはもっといいものがあるんだから!」

 「「いいもの?」」

 「謙さん!奥のステージ借りるね〜」

 

 

 首を傾げる2人を置いてルミはステージに向かう。コードを機械に繋げスイッチを操作するとマイクを手に取りテストをする。

 満足気な様子を浮かべるとマイクをViVidsとBAD DOGSにそれぞれ配っていく。

 

 

 「さぁ!準備完了!」

 「準備って…何言ってるの?」

 「決まってるじゃん!」

 

 

 自身もマイクを持つとステージに立ち、そのまま大きな声で宣言する。

 

 

 「ここは音楽を愛した物が集い、音楽に愛された場所、ビビットストリート!争いごとなら歌で決めようよ!」

 「歌でって…こんな奴らと勝負なんてしないし!」

 「俺もだ、こないだの件なら決着がついてる」

 「ふ〜ん、二人とも逃げるんだ」

 「「は?」」

 

 

 抗議に対しガッカリした様子で冷めた目をするルミに2人は思わず揃って苛立つ。

 

 

 「逃げる!?私がこんな卑怯者から!?」

 「そりゃこっちのセリフだ、俺たちがこんな素人と組んだチームから逃げるだと?」

 「イヤイヤ、それならそれでいいんだよ?まぁ〜しょうがないよね、彰人くんも素人に負けるかもなんて恥ずかしくてあんな真似しちゃうくらいだし、杏ちゃんも内心凄腕イケメン2人に負けて無様な所晒さなくて済んで安心してたんだろうし、それならしょうがないよ〜」

 

 

 二人の額に青筋が浮かぶ、正直安い挑発であろうことは分かっている。しかしそれでもこんな相手にビビっているなど感化出来ない。

 

 

 「こはね!やるよ!この挑発にのってあげる!」

 「あ、杏ちゃん!?」

 「冬弥!行くぞ!目にもの見せてやる…!」

 「あ、彰人…」

 

 

 相棒2人が戸惑う中ステージに立つと向かい合う。視線で火花を飛ばしながら周囲に緊張感を漂わせる。

 

 

 「曲は?」 

 「テメェらがこないだ歌ってた曲だ、同時に歌ってより高いパフォーマンスをしたほうが勝ちだ」

 「いいよ、一瞬で終わらせてあげる」

 

 

 そう言うと4人は並んでステージに立つ。店の営業中にとんでもない事になっているが止める様子のない謙とは対照的にに瑠璃は焦った様子でルミに近づく。

 

 

 「ちょっと!大丈夫なのこれ!?」

 「大丈夫大丈夫、まぁ見てなって」

 

 

 焦る必要もないと言わんばかりの態度でルミは飄々と言い放つ。しかし不安な様子が消える様子のない瑠璃を見かねたのか追加で口を開く。

 

 

 「大丈夫だよ、4人が本気なら…きっと音楽がそれを伝えてくれる。あの時、RAD WEEKENDがその熱を皆に届けてくれたみたいに」

 「ルミ…」

 

 

 そんなことを言っているうちに音楽が鳴り始める。怒りに支配されていた様子だった彰人に杏、戸惑いを隠せなかった冬弥とこはねも気づけば集中した表情に変わっている。

 この切り替えだけで4人の実力の高さが感じられる。

 

 

 「〜〜〜!」

 

 

 まず歌い始めたの杏だ、エネルギッシュな中に確かなテクニックを感じる。出だしから自分の実力を見せつけてきた。

 

 

 「〜〜!!」 

 

 

 それに対抗するように彰人も歌う。豪快で熱を感じる歌声、自分の方が上だと杏に歌で言い放つ。

 

 

 「〜〜〜♪!」

 

 

 それに続くのは冬弥だ。彰人の歌声を熟知し、それをより引き上げるように歌い上げる。二人のコンビとしての信頼と実力を感じさせるものだが、瑠璃は首を傾げる。

 

 

 (あれ、何か変…?)

 

 

 冬弥の歌っているパートが終わりに近づき、こはねに緊張が走る。勝負と言うからにはここで自分だけ入らない訳にはいかない、以前の歌えなくなった時を思い出し足が震える。

 

 

 (こわい…でも、それよりもっと…)

 

 

 足の先から力が抜ける。恐怖からではない、これは、今自分は浮き足立っている。

 胸の鼓動が高鳴る、隣に杏の期待にドキドキする、これこそ自分が求めてやまなかったもの、それを口から出すだけ。

 

 

 「ーーーー!!!!」

 

 

 店内を衝撃が支配する。高校一年生の小柄な少女から発されたとは思えない力のこもった歌声、身体を芯から震わせるような感覚がビリビリと伝わってくる。

 

 

 (こいつ…まじか!?)

 (最っ高!!流石私の相棒!!)

 (イベントで聞いた時よりさらに激しい。いや、それよりも何て…)

 

 

 こはねの歌声にそれぞれの反応を示す。驚愕や歓喜、それ以外にも様々な感想が浮かぶが何よりも目に留まるのはこはねの様子だ。

 口を大きくあけ、叫ぶように歌う姿。精一杯といった表現がピッタリなはずだがそれよりも何より大きく感じるのは。

 

 

 (楽しい…!!今、すっごくドキドキしてる!)

 

 

 この勝負、何よりステージを誰よりも楽しんでいる。あの内気な少女と同一人物とは思えないその様子に思わず3人の歌にも熱が入る。

 

 

 「〜〜!!!」

 「〜〜〜ー!!」

 「ーー〜〜!」

 

 

 たった一曲、それだけなのに信じられないほど身体が熱くなるのを感じる。いつの間にか曲が終わり、大きく肩で息をする。

 身体を空調が冷やし熱が身体から引いていくのを感じながら杏と彰人が同時に喋る。

 

 

 「「俺/私達の負けだ/だね…」」

 

 

 同着の敗北宣言に思わず顔を見合わす。ぎょっとした相手の顔を少し見つめたあと勢いよく口火を切る。

 

 

 「いやいや、絶対そっちのが完成度高かったでしょ!こはねの歌が最高すぎて私気持ちよさ優先しちゃってたもん!」

 「俺と冬弥がどんだけイベントこなしてると思ってんだ、完成度の差があって当然なんだよ。たった二回しか歌ってないチームにここまで追い詰められる時点で負けなんだよ」

 「ハァ〜!!?大事なのはイベント時点での歌の実力でしょ!?歴の短さで勝たせてもらってもしょうがないんですけど!」

 「こっちだってこんなんで勝った扱いされても困るんだよ!圧勝しなきゃいけねぇくらいの経験の差だ!」

 「また経験って言った!」

 「1回しか言ってねぇ!」

 

 

 一切譲り合うことなく言い争いが発展していく、認め合ったようだが何故かこんなことになる二人を客席の瑠璃とルミはポカンとしながら見つめる。

 

 

 「…今、相手を勝たせるために喧嘩してる?」

 「前代未聞やな…」

 『いいんじゃないか、喧嘩出来るのは子供の特権だ』

 「うわぁ!?」

 

 

 2人が呆れていると携帯からツカイが出てくる。突然の事に驚くも首を傾げる、セカイならともかくツカイが出てくるのは珍しい。

 

 

 「な、何しに来たの?」

 『この間のロボット2体が現れた。龍我のやつはセカイが呼んでるが、位置的にお前らの方が近い』

 「!」

 

 

 2人は顔を見合わせる。翼が目覚めない今自分たちが行かなければ龍我が一人で戦うことになる、二人で勝てなかった相手に一人で勝てるはずがない。

 一瞬躊躇うも二人は外に向かう。

 

 

 「あれ、ルミ達は?」

 「どっか走っていったぞ」

 

 

 口論がひとまず決着した4人が戻ってくる。いつの間にかいないルミ達に首をかしげるも謙からドリンクを受け取り火照った身体を冷やす。

 一息つくと彰人がこはねに話しかける。

 

 

 「…こないだは悪かったな」

 「え?」

 「俺等のせいで三田の奴が妙なことを…」

 「あれは彰人のせいじゃない、あいつが勝手にやったことだ」

 「いや原因は俺だ。お前らを勝負に誘わなけりゃあんな風にイベントが台無しになることも無かった」

 

 

 彰人の顔色が深い後悔に染まる。冬弥が複雑そうにそれを見つめるとこはねが口を開く。

 

 

 「大丈夫、私気にしてないよ」

 「はぁ?なんでだよ」

 

 

 予想外のこはねの発言に彰人が顔をしかめる。

 

 

 「確かにすっごく落ち込んじゃったけど…そのおかげで大事な事もしれたし、覚悟も決まったから。だからむしろ…ありがとう東雲くん」

 「言っとくけど私は許さないから!」

 「……やっぱ俺の負けだな」

 

 

 こはねの様子に敵わないといった様子で彰人が笑う。少しして表情を戻して振り向くと冬弥に話しかける。

 

 

 「冬弥、こいつらに負けっぱなしじゃ終われねぇ。練習行くぞ」

 「……」

 「あ?おい、聞いてんのか?」

 

 

 返事のない冬弥に彰人が声をかける。かけられた冬弥の方は何時にもまして無表情だ。

 

 

 「彰人、もう終わりにしよう」

 「はぁ?何をだよ」

 

 

 冬弥の発言の意味が分からない。自身の言葉に対する返事にもなっておらず話を聞いていなかったのかと疑っているとその耳に新たな言葉が飛んでくる。

 

 

 「ーーーー」

 「……は?」

 

 

 冬弥の発言の意味が分からない。今度は会話が成立していたような気がするのに、脳が理解を拒んだような気がする。

 固まった彰人の様子に何の反応も返さず、再び同じ言葉を告げる。

 

 

 「俺は、BAD DOGSをやめる」

 

 

ーーーーーーー

 

 

 店を出たルミと瑠璃は現場に到着すると人々に襲いかかるカラテピリオドとビーストピリオドを発見する。

 翼を傷つけたビーストを観た瑠璃が思わずその姿を睨みつけていると携帯からツカイが出てくる。

 

 

 『龍我の奴が来れるまで時間がかかりそうだ、ライドインならお前らが傷つけられることもない。それで時間を稼いでくれ』

 「分かった!」

 

 

 そう言うとルミと瑠璃はドライバーを取り出す。そこでルミは瑠璃が戦うのが初めてな事に気づく。ここまで着いてきてはくれたが大丈夫なのだろうか。

 

 

 「瑠璃、行ける?」

 「むしろ、行く!翼の借りは私が返す!」

 「……よし、分かった!」

 

 

 気合十分な様子の瑠璃にこちらも勢いよく返す。些かエンジンがかかりすぎている気もするがこちらでフォローしようと決めるとスフィアを起動させる。

 

 

 『アーム!!』

 『レギンス!!』

 「「ライドイン!」」

 

 

 ドライバーにスフィアを取り付け上に放り投げる。光の粒子となってドライバーに吸い込まれると通り道を落下していく。

 

 

 「おわわわわ〜〜!!これ慣れない〜!」

 

 

 落下の浮遊感に戸惑いながら何とかバランスを取り続けるルミ、その身体が光に包まれる。

 衣服だけが光に包まれた男性陣とは違い首から下全体が光に包まれスレンダーなボディラインが強調される。

 光が弾けると肩から肩章を垂らした軍服にホットパンツ、そして頭に軍帽が被さる。

 何処に向けたわけでもないウインクをするとその目にバイザーが装着され気合を込めながらコックピットに着地する。

 

 

 『アームタンク!!』

 「おっしゃ!行くでぇ!」

 

 

 一方、瑠璃の方も青い光の通り道を落ちていく。しかしその頬は少し赤くなっている、過去2回ほどの経験からこのあと起こることがわかっているからだ。

 

 

 「恥ずかしいんだよねこれ…」

 

 

 瑠璃の身体も同じように光に包まれる、ルミよりも女性的なラインが強調される形になり顔が熱くなるもブンブンと頭を振り熱を払う。

 光が弾けるとノースリーブのジャケットが装着され、中指の付け根から肩にかけて黒いアームカバーが着けられる。

 下半身にはミニスカート、落下の勢いで捲れそうになるそれを両手で押さえるとスパッツが履かされる。

 長い髪がポニーテールに結われるとコックピットに座る。そして自分の格好を改めて見る。

 

 

 『レギンスブレード!!』

 「な、何か私のだけエッチじゃない…?」

 

 

 ダイナミック・ジンに乗った時に観た他の三人はこんな感じではなかった気がする。

 内部の二人の服装が変わったのと同時に外部の変形も終わる。

 紅色の戦車、アームタンク。藍色の大剣、レギンスブレード。キャタピラで前に進みながら狙いを定めるタンクの横を炎を上げながらブレードが飛行する。

 

 

 「くらえ!」

 

 

 2体のピリオドに向かい砲弾が発射される。相手が分断するように位置を調整された一撃によりカラテとビーストが逆方向に吹っ飛ぶ。

 着地したビーストが体勢を整えるとブレードが飛んでくる。

 

 

 「翼の恨みぃーー!!」

 

 

 ブレードの突撃をビーストは転がるように回避する。すると一度かわしたブレードがUターンをして再び突撃してきたのを同じように回避する。

 一度でも当たれば勝負を決することが出来る一撃、しかし俊敏なビーストに当てるにはあまりにも大雑把だ。同じ光景が何度も繰り返され、再びブレードとビーストが交差したその時、ブレードがその場で思いっ切り回転する。

 

 

 「ウオォリャァァ!!」

 

 

 高速回転したブレードの刃がビーストに直撃し大きく吹き飛ばす。地面をバウンドするビーストの体には大きな裂傷がつけられ火花が噴き出している。

 その様子に思わずコックピットでガッツポーズをする。このまま一気にいきたい。

 

 

 「ハッハー!!一方的よー!」

 

 

 カラテに向かって砲撃を繰り返すタンク、近接攻撃しか出来ないようで反撃の様子すらない。このままいけば龍我の来るまでの時間稼ぎなど容易いだろう。

 未だダメージなどは与えられていないが負けるビジョンの見えない展開に高笑いする、その様子を見られているとも知らずに。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 「押されてるわね」

 「しょうがない、レックスの奴が来てからのつもりだったが…もう使うとしよう」

 

 

 タンクから高笑いが響いてくる映像を眺めながらパソコンを操作する。別々の画面上に表示されたビーストとカラテのデータが分解されると一つの画面に集まっていく。

 

 

 「何か言った方がそれっぽいわよ」

 「また次回だ」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 「発射!」

 

 

 タンクが再び砲撃を放つ。当たるのを期待していないが楽しくなって来た、一方的な勝負は楽しい。危険な思想が芽生え始めて来たその時、カラテに砲撃が直撃し爆炎に包まれる。

 

 

 「へ!?」

 

 

 着弾による爆煙を見つめると間抜けな声がでる。撃っておいて当たると驚くのは無責任かもしれないが出たものはしょうがない。

 

 

 「え!?嘘!勝った!?え、勝ったーー!!」

 

 

 理解が及ばなかったがようやく状況が飲み込めたのか叫ぶ。予想外の大勝利、龍我が着いたら自慢してやろう。そう思っていた、その時。

 

 

 「な、何!?何が起こってるの!?」

 「!?」

 

 

 突然瑠璃が叫び始めたのでその方向に振り向く。見てみると裂傷をつけたビーストがバラバラになったと思うとパーツが上空に向かって飛ぶ。

 突然の展開に呆気に取られていると爆煙からカラテが飛び出しビーストのパーツの中心に向かってジャンプする。

 

 

 「な、何なの!?」

 「い、嫌な予感…」

 

 

 ビーストの頭部がヘルメットになりカラテに装着される。手足に爪が重なり関節部に残りのパーツが取り付けられ、最後に胸が開くとビーストの動力源と思われる機械がカラテの動力源の隣に並べられる。

 ビーストとカラテが合体した結果創作物の獣人のような形になった、ワーウルフピリオドが大地に降り立つ。

 

 

 「合体しちゃったよ…」

 「と、取り敢えず発射ー!」

 

 

 タンクの銃身から砲撃が放たれる。その攻撃に対しワーウルフは地面に両手足を着けると関節が本来とは逆方向に曲がる。

 獣のような体勢になると今まで以上のスピードで走り始め砲撃を回避する。

 そのまま高速で近づいてくるワーウルフにブレードは突進攻撃を繰り出すも追突の瞬間、真上に飛び上がられる事で回避される。

 

 

 「!!」

 

 

 回避したワーウルフがその場で再び関節を変形する。人型に戻ると片手を振り上げ瓦割りのような勢いで手刀を繰り出し、ブレードが地面に叩きつけられ。

 

 

 「うわぁぁぁぁ!!」

 「瑠璃!この!」

 

 

 コックピットを襲う衝撃に悲鳴を上げる瑠璃を救うため再び砲撃を放つ。それに対してワーウルフは両手を突きだして受け止めるとその場で横に一回転して投げ返す。2体分のパワーにより可能となった荒技に回避をする暇もなくタンクに砲弾が直撃する。

 

 

 「ぐぁぁぁぁ!!」

 

 

 砲弾により吹き飛ばされ機体が大きく回転する。全身をグルグル振り回され悲鳴を上げるルミ、大きな衝撃と共に地面に激突するとツカイが現れる。

 

 

 『二人とも!大丈夫か!?』

 「何とか…」

 「でもこのままじゃまずい…」

 

 

 地面に叩きつけられたブレードは今ワーウルフに足で踏みつけられている状態だ。合体した結果パワーで上回られているらしく抜け出すことも出来ない。

 こちらの強みを上回られている以上この形態で戦うのも厳しい、何かを決心するとコックピットからベルトを取り外す。

 

 

 「ライドオフ!」

 

 

 ブレードから瑠璃が排出されると機体が分解されパーツがスフィアに戻る。足をかけていた物がなくなったワーウルフがバランスを崩すのを横目にルミ達と合流する。

 

 

 「瑠璃!大丈夫なの!?」

 「大丈夫、それよりあいつをどうにかしないと」

 『ツカイドライバー!!』

 「!?」

 

 

 ドライバーを腰につけた瑠璃に驚く、これが意味することなど一つだからだ。

 

 

 「る、瑠璃!?変身するつもりなの!?」

 「パワーで負けちゃってるし小回りの利かない姿じゃ不利だよ、ここはこれで行ったほうが良いよ」

 「でも、それだと…」

 

 

 ルミの危惧は分かる。機体ではなく身体に直にスーツを纏って戦う以上危険度は段違いだ、それでも瑠璃にはやる理由があった。

 

 

 「私は…」

 

 

 スフィアを手の中に握る手に力がこもる。思い出されるのはベットの上の翼の姿、大事な相棒を傷つけられた事を思い出し怒りが込み上げてくる。

 

 

 「もう…!」

 

 

 WEEKEND GARAGEの中で話した龍我の横顔を思い出す。何かを悩んでいた表情、かつての自分にも似た迷いの中にいる人間の顔。

 

 

 『レギンス!!』

 「後悔する生き方はしない!」

 

 

 決意と共にスフィアを起動させる瑠璃、するとルミが機体から飛び出し隣に立つ。

 

 

 『ネライドライバー!!』

 「もう…しょうがないなぁ…」

 「ルミ…一緒に戦ってくれるの?」

 「ま、幼なじみだし。運命共同体でしょ」

 『アーム!!』

 

 

 その言葉におもわず目に熱いものが込み上げてくる。ほんとは自分もルミも臆病だ。にも関わらず共に並んでくれる友人に感謝しながら前方のワーウルフを見据える。

 

 

 「行くよ、ルミ!」

 「おけい!」

 

 

 ベルトにスフィアを装填させるとそれぞれポーズをとる。

 ルミは手の平を上にしながら相手を指さした後それを銃の形に変えると引き金を引いたようなジェスチャーをし、指に口づけをする。

 瑠璃はつま先で軽くリズムを取るとターンし手を前に出しながら指を鳴らす。

 

 

 「「変身!」」

 『MY LOCK ARM!!』

 『START ABILITY LEGGINGS!!』

 

 

 スフィアから外れたパーツが二人の身体に装着されていく。

 まずは分解された戦車の装甲が胸部に装着されプロテクターとなり、キャタピラが足に着く。大砲の砲身は背中に背負われすべてのパーツが装着されると両手に銃が現れる。

 次に分解された大剣が持ち手と刀身に分かれる、刃は四分割され両手足に装着されると騎士の仮面のようなヘルメットが装着されその後頭部から白い馬の尾のような毛が伸びる。すべての変身が完了すると持ち手から新たな刀としての細身の刀身が現れる。

 それぞれ手持ちの武器を確認しながらお互いの姿を確認する。

 

 

 「名前はつける?」

 「かっこいいのつけたいから後で!こういうのはこだわらないと!」

 

 

 後にそれぞれカノン、レゾードという名前がつくことになるが今は置いておく。こちらの変身が完了するのを待っていたのかワーウルフは獣の姿に変形して走ってくる。

 それに対して銃を構えて発砲すると弾丸と逆方向にカノンが吹っ飛ぶ。

 

 

 「うわぁ!?」

 「ルミ!?」

 

 

 予想以上に威力の強い弾丸だったことに戸惑う、ワーウルフの方は人型になり弾丸をはじき返そうとしている。

 

 

 「やらせない!」

 

 

 レゾードが弾丸の後を追いかけるように走る、それを見たワーウルフも弾丸を避け向かってくる。

 弾丸を弾こうとしている間に追撃されるのを察知したようだ。ワーウルフに向かって剣を振るうも掌打で弾かれ追撃の拳が迫る。それを後ろに下がりながら回し蹴りで弾くとそのまま回転の勢いを利用して横薙ぎに切り裂く。

 

 

 「ハァッ!」

 

 

 追撃の突きを放つも両手で掴み取られる、攻撃で怯んでいるうちを狙ったつもりだったが機械のワーウルフには痛みで怯むということはないらしい。

 唯一の武器を封じられたように見えるレゾードだが焦りはない、足に取り付けられた刃に光が灯るとサマーソルトの要領で切り裂きながら蹴り飛ばす。

 まだデータのないレゾードの戦いに苦戦を強いられているワーウルフ、しかしその電子頭脳は着実に戦闘の中で解析を続けている。このままいけば形勢もいずれ逆転出来るだろう、敵が一人でなければだが。

 ワーウルフの身体が突然爆発しながら吹っ飛ぶ。

 

 

 「よしっ!当たったぁ!」

 

 

 吹っ飛んでから動きが無かったカノンが叫ぶ。撃つだけで吹っ飛ぶ銃をどうすれば良いのか考えていたがいい解決策を見つけた。

 地面に刻まれたブレーキ痕、両足のキャタピラを逆回転させることで踏み込みを強化して発射の衝撃に耐えた。

 

 

 「オラオラァ!」

 

 

 上手いやり方を見つけた事で勢いづいたのか銃を連射する。当たらないようにレゾードがその場を離れるとワーウルフが拳を振るう。

 勢いよく放たれたそれは弾丸を地面に叩きつけると大きな爆発を起こし、その勢いで後ろに飛ぶ。吹き飛ばされながら獣形態に変形すると残りの弾丸を回避していく。

 しかし、その足の間に投擲された剣が突き刺さり動きを止める。

 

 

 「今だよ!」

 「瑠璃、ナイス!」

 

 

 カノンの背中に背負われた砲身が移動し、肩に担がれるとその砲塔にエネルギーが溜まっていく。最大限まで輝きが増したとき、轟音と共にバスケットボール程のサイズの光弾が発射される。

 それをワーウルフは両手で受け止める。腰を落とし、足の爪を地面に食い込ませながら後ろにジリジリと下がっていくがその勢いは段々落ちていく。

 このままならこちらに向けていずれは弾き返してくるだろう。

 

 

 「そうは、行くかぁ!」

 

 

 走り込んできたレゾードが地面を滑るように移動し剣を掴むと突き出された両手の下を通り抜け、その手を斬り落とす。

 支えがなくなった両手を飲み込みながら光弾がワーウルフに激突し爆発する。煙に包まれながら出てきた姿は装甲が幾つも剥がれ落ちており、その胸に裂傷が見える。

 

 

 「あれは…さっき合体する前につけた傷!」

 「狙い所や!しっかり決めるで瑠璃!」

 「分かった!」

 『ENEMY LOCK ARM!!』

 『MASTER ABILITY LEGGINGS!!』

 

 

 カノンが肩に移動した砲身の横に銃を差し込む。差し込んだうちの右手側をスライドさせ砲身の下側に移動させながら引っ張るとエネルギーが充填されマスクにターゲットカメラが展開される。

 レゾードの足の刃が輝くと片足を上げ、その刃に剣を沿わせて研いでいく。触れ合った箇所から剣に光がともされ剣先まで完全に研ぎ切るとさらに一層強く輝く。

 

 

 「アームビットトライビーム!!」

 「レギンスビットパニッシュ!」 

 

 

 同時に放たれた斬撃と銃撃がワーウルフに向かっていく。それに対しワーウルフはーーー何もしない、反撃も回避もせず攻撃を食らって爆散する。

 

 

 「やった!イェーイ!」

 「イェーイ!」

 

 

 勝利に喜び二人はハイタッチをする。初めての戦闘にして大金星だ、龍我や翼にあったら自慢しなければならない。

 そんなことを考えていると丁度龍我が到着する。

 

 

 「お〜遅かったね〜兜くん!」

 「へっへ〜、勝っちゃった!ブイ!」

 

 

 龍我に向けて可愛らしくピースサインを向けるレゾード。しかし龍我は信じられないものを観たような顔をしたまま固まっている。

 少しして目を閉じると決心したように口を開く。

 

 

 「そうか…お前らも変身したのか…」

 「へ?」

 

 

 俯きながら喋る龍我の様子に呆けた声が出る。何故か後ろ向きな感情を感じさせる様子に戸惑っていると龍我がドライバーを装着してスフィアを装填する。

 

 

 『CHANGE THE FANG!!』

 「……?」

 「話があるんだ、ちょっと来いよ」

 「いいけど…」

 

 

 何故か突然変身したレックスに戸惑いながらも近づく。三人の距離が縮まっていった次の瞬間、レックスの右腕が二人を切り裂く。

 

 

 「うあっ!?」

 「な、何を……?」

 

 

 地面を転がって這いつくばる2人が疑問の声をあげる。レックスはそれに応えることなく足のローラーを回転させると右腕を掲げながら向かってくる。

 

 

 「うおぉぉぉ!!」

 「ちょ、待っ!」

 

 

 2人に再びその爪が振るわれようとした時、レックスが光に包まれて消える。

 

 

 「へ?」

 「な、何がどうなってるの…」

 

 

 突然の展開に困惑する2人、初めての戦闘の勝利のあとに残されたのは後味の悪い疑問だけだった。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 「ただいま〜、いやぁ酷い目あっ…」

 「お前、ふざけたこと言ってんじゃねえぞ!」

 

 

 痛む身体を引きずりながらWEEKEND GARAGEに戻ってくる。勝利の報告と皆がキチンと仲直りしたか確認したかったからだ。

 にも関わらず、入っていきなり彰人が冬弥を殴り飛ばしていた。

 

 

 「ええぇぇぇ!?」

 「ちょ、ちょっと何してるの!?大丈夫青柳くん!?」

 

 

 地面に尻もちを着く冬弥に瑠璃が駆け寄るもそれに触れることもなく頬を押さえながら立ち上がると口を開く。

 

 

 「ふざけてなんかいない、お前こそいい加減現実を見たらどうだ?」

 「何だと…!?」

 「な、何の話してるの?」

 「え、えっと…実は…」

 

 

 事情が分からず確かめようとするもそんな暇もなく冬弥の口から真相が話される。

 

 

 「俺はもう音楽はやらない、お前と歌うことももうない。何の意味もないからな」

 「ど、どういう意味…?」

 

 

 話が見えてこず疑問を浮かべる2人にため息を吐くと言葉を続ける。

 

 

 「こんな小さい町でだけ有名なステージを超えて何になる?時間の無駄だ」

 「そ、そんな事…本気で言ってるの?」

 

 

 彰人の夢を否定するような言葉に戸惑う。どう考えてもおかしい、冬弥がこんな事を言うはずがないと詳しく問い詰めようとする前に叫び声が響く。

 

 

 「……!!勝手にしろ!テメェ何か相棒でもなんでもねぇ!」

 「…………元からそのつもりだ」

 

 

 その言葉を最後に冬弥が店から出ていく、血が出るのではないかという勢いで手の平を握る彰人の姿を眺める4人は何も言うことが出来なかった。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 「随分あっさり諦めたじゃない、あんなタイミングで機能停止なんて」

 「求めていた結果は出たからな、あそこで下手に抵抗してあいつらに怪我をされるより万全な奴らを倒したい」

 

 

 怪人のセカイで怜は何かを見あげながら喋る。それを見つめる彼は少年のような笑みを浮かべながら目を輝かせている。

 子どものような一面を見せる彼に呆れながら女は口を開く。

 

 

 「随分嬉しそうね、あんたらしくもない」

 「当然だ…こいつは素晴らしい物が出来た…今までの集大成、こいつで俺の目的が果たされるかもと思うだけで胸が高鳴る…あぁ、そうだ、名前をつけないとだろう。前に言ってた相応しい名前をつけるならこいつにだ、頼むぞ」

 「……乗り気だと気持ち悪いわね」

 

 

 嫌がっているこいつを見ながら名前をつけるのが面白かった自分としては不服だ。しかしダサい名前をつけてセンスが疑われるのも御免だ。

 今までの積み上げてきた道の終着点、それに相応しいピリオドシリーズの王としての名前をつけるとしよう。

 

 

 「ロードピリオド…なんてのはどう?」

 「ロード…支配者か、良いじゃないか…こいつがあれば…」

 

 

 光悦とした表情で上を見上げる。その視線の先にはダイナミック・ジンと同等のサイズの巨大なロボットが立っていた。

 

 




設定
 仮面ライダーカノン
  ルミの変身するライダー。戦車の装甲を生かした防御力と搭載された重火器による砲撃戦を得意とする。

 仮面ライダーレゾード
  瑠璃の変身するライダー。手足のブレードと長剣が武器。名前の由来はレギンスとソード。


 ワーウルフピリオド
  合体型戦闘用機械兵士試作機。緻密な計算により2体合体であらゆるスペックが2倍になるように調整されている。今までのなかでも特殊な機体のため、名前が少し凝られている。


次回予告
 「俺は、世界が滅びようがどうだっていいんだ…」
 「本当は何がしたいの?」
 「これ今何の話?」
 「最強のイベント、スタァートッ!」
 
 第六話  『生きてる意味って、何?』
 「死ぬのか…俺」
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