プロジェクトセカイ feat  仮面ライダー   作:ミッツー116

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 筆と話が中々進まず更新がだいぶ遅れてしまいました。過去話とやりたいことを詰め込んだ結果過去最長の長さになってます。
 それと設定を確認するためにRE'BEGINS編を読み直してたら初期はあとがきの設定怪人やライダー以外にも書いてたことを思い出したので次章からまた書いていこうと思います。


第六話

 

 

 『ねぇ、それ何してるの?』

 

 

 ホコリを被った薄暗い部屋、クモの巣なども見られる薄気味悪い部屋で少年に話しかける。

 その手のなかには犬を模したペットロボットが分解されておりパーツが散乱している。

 

 

 『説明した所で分からない』

 『だから、説明してほしいんだけど』

 

 

 そっけない態度の男の子に構わず話しかける。意識が段々鮮明になっていく、これは昔の記憶だ。

 この少年は自分にとって初めてのーーー

 

 

 「ん……うぐっ…」

 

 

 夢の景色が遠のき、意識が覚醒する。目を覚ますと知らない天井に腕に繋がれた点滴、何があったか思い出す。

 そう、自分は敵のロボットに敗れそのまま意識を失っていたのだ。状況を飲み込むと夢の事を思い出す。

 夢のなかで見たロボット、あれが戦っていたときに感じた既視感の正体だ。

 

 

 「怜くん…君なの?」

 

 

 

 第六話  「生きてる意味って、なに?」

 

 

 真っ暗な空間、音も光もない空間が広がっているそこに突然文字が浮かび上がる。

 

 

 『白魔財閥』

 

 

 文字が浮かび上がると同時に何処からか革靴で地面を小気味良く鳴らしながらスーツ姿の青年が歩いてくる。青年は文字の方に向かいながらこちらに向けて顔を向けて喋りだす。

 

 

 「白魔財閥は江戸末期から日本を支え続けた由緒正しき家系、様々な分野への出資により日本の発展に大きく貢献してきた」

 

 

 文字の前までやってくると手を出す。すると文字が少しずつ小さくなりながら手の上に近づき、その手のひらに収まる。

 

 

 「しかし、その実態は非合法な金利で金を貸しいくつもの会社や人間を食い潰したあと資源として消費し生き残った企業からも過去の弱みから法外な見返りを要求していた」

 

 

 手のひらの文字を握りつぶす。そのまま手を開くと粉々になった文字の破片が浮かび上がり今度は逆に大きくなった。

 

 

 「こんなやり方に未来はない、非合法な手段はそれ自体が弱みとなり必ず会社を疎ましく思う人物に突かれる弱点になる。そこで俺はこれまでの不正を全て公表し、前責任者と重鎮達を失脚させ中学生で会社を継いだ」

 

 

 真っ暗だった空間が徐々に明るくなり、今度は逆に真っ白な空間になっていく。眩しさすら感じる空間の中心で巨大化した破片が新たな文字列を生み出す。

 

 

 「『HACK SYSTEM CORPORATION』、生まれ変わったこの会社が行うのは金銭的なサポートではない。会社自身に利益を生み出す力を与える」

 

 

 空中に病院や空港、何かの工場や教育現場といった様々な光景が浮かび上がる。統一性のないように見える映像にはただ一つの共通点としてタブレットが映っている。

 

 

 「完璧なシステム、画期的な技術、それらすべてを支えるのが俺が開発したAI。これまでの人類の歴史の到達点となる意味を込められている」

 

 

 大きな脳味噌のホログラムが出現し、それに重なるように『ピリオドシリーズ』の文字が描かれる。

 

 

 「ハックシステムコーポレーションが世界を完成させ、全ての人々を見たことのない世界にご招待しよう」

 

 

 両手を広げて宣言する。真っ白な空間が消えると何処かのスタジオのような場所に変わり、球状のプロジェクターから光が消える。

 プロジェクターやカメラの横に立ち並んでいた大勢の人々は大きな拍手を上げながら男、怜に近づいていく。

 

 

 「ブラボー、ブラボー!」

 「流石は社長!一発撮りとは思えない完璧なプロモーションでした!」

 「今のがリアルタイムで投射された映像なんて信じられません!これを自らお作りになられるとは!」 

 「……そうか」

 

 

 自らを褒め称える声を受けながら人型ロボットの持ってきた水を受け取る。賛辞の言葉に返答しながら腕につけた時計型の機械をいじる姿を離れた位置で別の社員達が見つめる。

 

 

 「あれで高校生ってマジかよ…やっぱ支配者の血ってやつなのかな」 

 「お前それ本人に言ったらクビだぞマジで」

 「でも、実際前の上層部をクビに追い込んで自分がトップなんだぜ?」

 

 

 ヒソヒソと陰口を叩く男性社員に別の女性社員が近づく。

 

 

 「その結果平社員だった私らが繰り上がりで管理職になれたんだし、別に良いじゃない」

 「いや管理職って言っても…実際はこいつだろ?」

 

 

 そういうと社員は懐から携帯端末を取り出す。画面には人の顔を象ったキャラクターが映っておりニコニコと笑っている。

 

 

 「当たり前じゃない、むしろ入って数年の私たちを完璧な管理職に仕立て上げるピリオドシリーズのサポート力を評価すべきよ」

 「それって結局社長が全部管理してるってことだろ。知ってるか?こいつ社長の腕の機械のボタン一つで機能停止するんだと、他の会社に提供してる分もな」

 「マジかよ!?社長の気分でいつでも他の会社潰せるじゃん!」

 「あんたら聞こえるわよ、嫌なら会社辞めれば良いじゃない」

 

 

 男性社員の話に驚いた様子を見せる同期に冷めた目線を送る。ピリオドシリーズのシステムは繋がっているため何らかのトラブルの際他の機体に影響が出ないようにするためのものだと説明されているからだ。

 

 

 

 「それは…ここ給料いいし」

 「福利厚生も厚いしな」

 「じゃあガタガタ言わない」

 (耳が良くなるのも考えものだな)

 

 

 懐から刀を模したバックルを取り出しながら怜は思う。ある日与えられたこのツカイドライバー、使用者に異常な聴力を与えると使ってから知った。

 特に気にしていなかったがふとした時に余計な情報が耳に入る。自分の意思でオフに出来るが意識していないと常時オンなのだ。

 いっそ耳が悪くなるイヤホンでも作ってみようかと考えながら社長室に向かうがその道中でもまだスタジオの音が聞こえる。

 

 

 「さっき取り出してたの何だ?おもちゃ?」

 「社長のことだし何かの機材なんじゃないのか」

 「おもちゃ産業に手を伸ばそうとしているとか…」

 「隠し子へのおもちゃ」

 「は!?まだ学生だろ!?」

 「でも最近女の影を感じるのは確かね…」

 「言われてみればさっきの演説とかも社長らしくなかったというか…」

 (こいつら全然仕事もどんねぇな)

 

 

 社長室の前まで来ると左手につけた時計型の機械をかざしロックを解除する。中に入ると直後に内側から再びかざすと社長室の窓にスモークがかかり外から見えなくなる。

 こうしている間は立ち入り禁止の合図だ、スモークが全体に生き渡るのを確認すると携帯を取り出しUntitledを再生させる。

 

 

 「あら、お帰り」

 「いつから家になった」

 

 

 セカイの中の自分のイスに勝手に座る女に不満に思いながらも指でデスクをなぞる。するとデスクにパソコンの画面が表示され操作を始める。

 

 

 「ハイテクね、意味があるのかは分からないけど」

 「俺の指紋でしか反応しないからセキュリティになる。最近デスク周りをうろつく不審者がいてな」

 「大変ね、見張っといてあげるわよ」

 

 

 言葉の意味が分かっているのかいないのか読めない女を無視して操作を続ける。そろそろ翼が目覚める、ついにロードピリオドを起動させる時が来たのだ。

 起動画面を立ち上げあとはキーを押すだけのところだ思い出したかのように振り向く。

 

 

 「お前が考えた演説のせいで隠し子疑惑が出てるんだが」

 「は?」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 「お前…何考えてるんだ!」

 

 

 ストリートのセカイ、そこで龍我に対してセカイが叫ぶ。普段の気の良い青年の彼が頭に血管を浮かばせながら声を荒げるその姿はどれだけの怒りかよく伝わってくる。

 

 

 「ルミも瑠璃も仲間だろ!何で傷つけるようなこと…」

 「俺に仲間は要らない」

 「何だと…!?」

 

 

 キッパリと言い切る龍我に戸惑う。ここまで協力してきた翼達を切り捨てるような発言に耳を疑っているとそのまま言葉を続けてくる。

 

 

 「お前だって見ただろ、翼が傷つけられるのを。戦えばあんな目に遭うのは避けられないんだ」

 「それはお前だってそうだろ!だからそうならないように協力して」

 「俺はいいんだよ」

 

 

 セカイの言葉を遮るように口を開く、その目は俯き気味で強い言葉とは対照的だ。

 

 

 「俺には…どうせ何もない」

 「え…」

 

 

 その言葉を最後にセカイから出ていく。一ヶ月ほど共に戦ってきた龍我の見たことのない一面に戸惑うことしかできず、そこで立ち尽くすだけだった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 「「ハァ〜…」」

 

 

 それから日が明け、WEEKEND GARAGEでルミと瑠璃が深いため息を吐いていた。理由は当然冬弥と龍我のことだ、突然の奇行に戸惑いしかない。

 

 

 「どうしちゃったんだろ二人とも…」

 「訳わからん…何で急に音楽やめたり攻撃してきたりするんや?」

 「こはねも気にしてるみたいだし…やっぱ何とかしたほうがいいよね…」

 

 

 2人が頭を悩ませている所に注文を届けに杏が現れる。彼女の言う通り解決の為に動くべきなのだろうが、何をすれば良いのかがそもそも分からない。

 三人が思考を巡らせているとドアが開く。

 

 

 「祝!退院!」

 「つ、翼!?もう大丈夫なの!?」

 「完全復活!」

 「っ!〜〜〜〜!!」

 

 返事をする翼におもわず瑠璃が飛びつく、勢いの強いそれを受け止め反動でクルクルと回りながらカウンター席に座るとメニューを取る。

 

 

 「取り敢えずミートスパゲティと…カツサンドと…自家製プリンちょうだい」 

 「め、めちゃくちゃ食べるね…」

 「大丈夫なのか?病み上がりでそんなに食って?」

 「連日点滴だけで過ごしてたからお腹空っぽ何ですよね、今なら余裕で入る」

 

 

 退院直後とは思えない注文に謙が心配するなか翼は気にせずメニューを眺める。場合によっては何か追加で注文するつもりなのだろうか。

 とんでもない食欲に驚きながらも話を続ける。

 

 

 「どうする、冬弥君たちのこと」

 「う〜ん、何からするべきかな〜」

 「これ今何の話?」

 「説明が難しいな…」

 

 

 入院している間にあったことを何とか説明する。聞き終わった翼は両手で頭を抱えながら呟く。

 

 

 「知らない間に凄いことになってる…」

 「本当にだよね」

 「でも、やっぱり気のせいじゃなかった」

 「何が」

 「兜くんの様子が一時期からおかしかったんだよ」

 

 

 何やらボーッとすることが増えたり暗い表情を見せていたりしていた。自分の気のせいかとも思っていたがやはり何か理由があったのだ、こんなことになる前にキチンと話すべきだったと後悔する。

 

 

 「…そう言えばこはっちは?」

 「あぁ、今日はお昼から来るって言ってたけど…」

 「まだちょっと時間あるね、何か用事?」

 「さぁ?」

 

 

 話を聞くに朝一番に来ていてもおかしくないと思ったがどうしたのだろうか。

 疑問に首を傾げている内に料理が運ばれてくる。

 

 

 「お、来たよ」

 「……何か話してる内に全然そんな気分じゃなくなったな」

 「嘘でしょ!?」

 

 

 このあとちゃんと食べた。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 「……誰だ?」

 「わ、私だよ兜くん」

 

 

 扉を開いた状態固まった龍我が口を開く。休日で何もする気が起きず家にいたところ呼び鈴がなり出てみると見知らぬ少女が立っていた。

 一瞬戸惑ったが声でこはねであることに気づく。

 

 

 「そういや家知ってたな…」

 「中学のときに遊びに来たことあったから…ごめんね急に」

 

 

 少し考えればあり得た可能性だが頭から抜けてしまっていた。そこまで来たことが多かったわけではないこともあるが自分の余裕がないせいだろう。

 ひとまずここは話を聞くことにする、出なければ帰るつもりもないだろう。

 

 

 「まぁ入れよ、何もないけどな」

 「…うん、お邪魔します」

 

 

 促されるままに中に入るとそのまま龍我の自室にまで案内される。部屋の中は中学の頃に来た頃から少し変わったように思えるが何故か懐かしい気持ちになる。

 何人かの友人で集まって遊んだ思い出が蘇るが今日は浸りに来たわけではない、飲み物を取りにいった龍我が戻ってくると向かい合う。

 

 

 「あの…宝田さん達と喧嘩したって…」

 「…あいつらあれを喧嘩って説明してんのか」

 

 

 自分がしたことと説明とのギャップに呆れる。こはねたちを心配させないためなのかもしれないがもう少し言い方はなかったのだろうか。

 

 

 「どうしてそんな事をしたの?」

 「……仮面ライダーは俺1人でいい」

 「?」

 

 

 今イチピンと来ない様子のこはねに龍我は少し悩む様子を見せると口を開く。

 

 

 「戦うのはどうしたって危険だ、もしかしたら死ぬかもしれない。そんなことにあいつらが首を突っ込む必要なんかないんだ」

 「だったら…どうして兜くんは戦ってるの?死んじゃうかもしれないのは兜くんだって同じでしょ?」

 「……同じじゃないさ」

 

 

 龍我の視線が下に落ち表情も暗くなる。最近になって時々見せる表情、翼が心配していたのはこのことだったのだとこはねは気づく。

 

 

 「あいつらには…お前にも、生きてやりたいことがあるだろ。俺にはそんなものない」

 「え…」

 

 

 呆気に取られた表情をしているこはねに何処まで話すか悩む。仮面ライダーとして戦い続ける理由、実はこはねは一部知っているはずだ。もっとも本人はそれが関係していることに気づいてはいないだろうが。

 何より、話せば彼女は自分をどうにか助けようとするだろう。そうしている内に戦いに巻き込まれてしまうこともあり得ることを考えるとやはり話せない。

 

 

 「本当に死ぬかもしれない危険なことなんだ、死んでもいいと思ってる奴がやったほうがいいだろ」

 「……」

 

 

 その言葉にこはねは悲しくなってしまう。死んでもいいなんて言わないで欲しい、龍我は自分にとって大切な友人で一緒にいたいと思える相手だ。

 しかし彼の考え方を変えるような言葉を自分は持ち合わせていない、何か他に出来ることはないか悩んだ末に一つの答えを出す。

 

 

 「…私ね、音楽続けることにしたんだ」

 「え?」

 

 

 突然の話題転換に龍我がおもわず声を上げるもこはねはそのまま続ける。

 

 

 「これからも杏ちゃんと一緒にあそこで歌ってるから…また見に来てほしいな。楽しんでもらえるように頑張るから」

 「小豆沢…」

 

 

 龍我の考え方を変えることは自分には出来ない、だったらせめて生きたいと思える何かを用意しよう。

 こはねの意図を理解したのか龍我は驚いたような様子を見せると柔らかく笑う。

 

 

 「お前やっぱすごいやつだよ、仮面ライダーやるよりずっとな」

 「…そんなことないよ、臆病だしなんにも自信無いし…でも、やっと頑張りたいって思えたから…兜くんにも応援してほしいんだ」

 

 

 言葉をはっきりと紡ぐこはねの芯の強さを感じる。やはり彼女には根本的にとても強い信念があるのを実感するとカンドロイドが飛び出してくる。

 

 

 「へっ……!?これってもしかして…」

 「またロボか…!場所はストリート…まずい、あいつらの方が近い!」

 

 

 このままではまた戦わせることになってしまう。すぐに向かおうとしたとき映像の敵についてあることに気づく。

 

 

 「何だ……こいつ…!」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 「「「「…………!?」」」」

 

 

 一方そのころ、ストリートに突然現れたロボットの話を聞き翼達4人も駆けつけていた。しかし全員揃ってポカンと口を開けたまま上を見上げて動けない。

 その理由はそのロボットの姿にあった。

 

 

 「「「「デッッカァ……」」」」

 

 

 全身を黒く染めた姿、今までと違い紫色のツインアイでこちらを見つめている。右腕には折りたたみ式のブレード、左腕にはグルグルとガトリング砲が巻き付けられており背中からマントを垂らしている。

 そして何よりデカい。ダイナミック・ジンくらいはあるだろうか。これと戦うなら流石にこちらも合体したいところだ。

 そんな事を考えているとロボットーーーロードピリオドが右腕の大剣を展開させるとこちらに向け突き出す。臨戦体勢に入ったその動きに瑠璃たちがベルトを取り出す中翼は違和感を感じる。

 

 

 「……?」

 「やる気だよ!どっちで行く!?」

 「こないだのこと考えるとパワーで負けてるならライダーで行くべきやな!」

 「経験が生きるね!」

 『ハカイドライバー!!』『ウィング!!』

 『ネライドライバー!!』『アーム!!』

 『ツカイドライバー!!』『レギンス!!』

 

 

 全員がドライバーを装着しスフィアを装填させるとポーズを取る。

 翼は足で軽く地面を叩き靴を整えるような動作をすると手を上に掲げ指を鳴らす。

 

 

 「「「変身!!」」」

 『LETS ACTIVE WING!!』

 『MY LOCK ARM!!』

 『START ABILITY LEGGINGS!!』

 

 

 パーツが周囲に舞うのを確認すると翼はバック転しながら飛び上がり自ら迎えに行く。それぞれの身体にパーツが装着され仮面ライダーへの変身を完了すると各々構えをとりロードと向かい合う。

 

 

 「とは言ったものの…」

 「サイズ感違いすぎるやろ!」

 「僕が撹乱する!2人はその隙に倒す方法を探って!」

 

 

 インパルスがロードの回りを纏わりつくように飛ぶ。ロードはそれを目で追うとガトリングを向けて連射し始める。

 それに対し弾丸の間を縫うように交わしながら距離を取る、なるべく被害が拡散しないように銃口が空を向くようにしながら広がらないように一方向に向かう。

 それを見ながら2人はどう攻撃するか考える、あまりにも巨大な相手に通常の攻撃では効き目が薄いだろう。そこまで考えるとカノンがベルトを操作する。

 

 

 『ENEMY LOCK ARM!!』

 「いき・なり・必・殺!」

 

 

 肩に担いだ砲塔に銃をねじ込みロードを狙う。自らを狙うエネルギーに気づいていないのか変わらずインパルスを狙い続けるその姿に一泡吹かせてやろうと引き金を持つ手に力がこもる。

 

 

 「くらえーー!!」

 

 

 溜まったエネルギーがガラ空きの背中に向けて放出される。弾丸が一直線の軌道を描きながら向かったその時、ロードのマントに電流が流れる。

 電流をまとったマントが弾丸を受け止めるとしばらく拮抗を続けたあと、勢いよく弾丸が粒子となって弾け飛んでしまう。

 

 

 「嘘ぉん」

 「弾いた……!?」

 

 

 必殺の一撃を一歩も動くことなく対処されカノンが力の抜けた声を上げる。ここまで能力の差があるのかと驚いているとさらに想定外の事態が起こる。

 自分たちをはるかに超える体躯をもつロード、その姿が突然浮かび上がると空を飛ぶインパルスを追いかけ始めたからだ。

 

 

 「何!?」

 

 

 予想外の事態に驚きながらも離れるために全速力で飛び始める。ガトリングが当たらないので飛んだというのであれば間違いなくあの大剣で攻撃してくるつもりなのだ。あんなのに攻撃されれば真っ二つ、いやそれよりもサイズ差で叩き潰されてしまうだろう。

 突然浮かび上がったロードを下から眺めるしか出来ないでいるとマントの下にジェットが付いてるのを発見する。あれで飛行していたのだ、何とか壊したいが先程の防御能力をみるにマントを攻略しなければ出来そうもない。

 そのためのマントなのだと理解すると同時に事態は悪化していく、その巨体に見合わずインパルス以上のスピードで飛行するロードがどんどん距離を詰めていくのだ。

 

 

 「積んでるエンジンが違いすぎる!」

 「翼、こっち!」

 『MASTER ABILITY LEGGINGS!!』

 

 

 声の方を向くとレゾードが腕の刃で剣を研いで構えている。意図を理解するとインパルスは猛スピードでそちらに向かって飛ぶ。

 後ろを迫るロードから少しでも距離を維持するために全力でジェットを噴射させる。噴射口が軋む音が聞こえる中レゾードのもとに近づき、そのまま通りすぎる。

 インパルスが過ぎ去るのを確認するとレゾードがロードに向かって走り出す。近づいてくるその姿にそのまま体当たりを喰らわせようと突進してくるロードに対し、その下をくぐり抜けるように滑る。

 

 

 「ハァァァァァ!!」

 

 

 地面を滑りながら光の刃を叩きつける。凄まじい反発に剣を手放してしまいそうになるのを何とかこらえながら振り抜く。

 相手が地面に降り立つ音が聞こえすぐさまそちらを振り向くと斬りつけた部分からは煙が上るだけで傷一つ付いていない。

 

 

 「化け物じゃん…」

 「瑠璃!」

 

 

 ガトリング砲から弾丸がレゾード向けて放たれたと同時に横からインパルスが現れその手を掴み射線から連れ去る。途中でレゾードの手を離すと二手に分かれながら作戦をそれぞれ考える。

 必殺技が防がれたレゾードやカノンが息詰まるなかインパルスは一つだけ手段を思いついたのが懐からスフィアを取り出す。

 

 

 「試すか…」

 

 

 病院で目覚めたあと孤児院の院長から渡されたスフィア、渡してきた自分の友人を名乗る人物にも心当たりはある。

 だが同時に湧き上がってくる一つの疑惑が胸の中にもやもやとした感覚を生む。現状これしか手段が見当たらないにも関わらず悩んでしまう状況に歯噛みしていると気づく、ロードの攻撃が止んだ。まるで自分がこのスフィアを使うのを待っているかのように。

 胸の疑惑が強まるのを感じながらいっそ開き直りのようにスフィアを起動させる。

 

 

 「もう隠す気もないってことか…!」

 『ダブル!!』

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 「気づいたな翼」

 

 

 怪人のセカイでコックピットのようなものに乗った怜が笑う。今回のロードの最も特異な点、それはこの怜自らが操縦していることだ。

 最高傑作を自ら動かすのには訳がある。剣を向けるポーズなどでわざわざ人間が動かしているアピール、ここまでのお膳立てで自分の存在にも気づいただろう。

 あとは力を見せつけるだけ、ダイナミック・ジンを打ち倒し自らの価値を証明する。

 

 

 「お前に見せてやるよ、俺たちの約束を叶える力を」

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 『LETS ACTIVE W!!』

 『サイクロン!ジョーカー!』

 

 

 インパルスを中心に風が吹き荒れ、その身を緑と紫の2色の球状エネルギーが包み込む。姿が左右対称の2色のカラー、ダブルセレクトに変化するとロードに向かって突っ込む。

 それに対して右腕の大剣を振るうと、振り抜いたときには既に過ぎ去っておりロードの胸から火花が散る。

 

 

 「なるほど…これは相性がいい」

 

 

 身体の右半身の緑色に染まった部分から何かを吸収しているのを感じる。サイクロンメモリの風を操る能力により飛行時に発生する風を効率的にエネルギーに変換しスピードや威力を増強出来る。

 自らの能力と相性のいい装備に意図を感じながらも今の状況ならありがたい。このまま一気に決めるためにベルトを操作する。

 

 

 『FULL ACTIVE W!!』

 「ふっ!」

 

 

 緑と紫のエネルギーに包まれながらロードに突っ込む。先ほどよりもスピードの上がったそれに対しロードのツインアイが先程のデータと比較した上での予測を立て、その指示のままに怜が剣を振るう。

 振るわれた剣は見事にインパルスを捉え、その身体を真っ二つにした。

 

 

 「翼!?」

 

 

 真っ二つにされたインパルス、その身体が地面に落ちる…ことなくそのまま飛び立つ。別れた身体がグルグルとロードの回りを回転し、竜巻を発生させ閉じ込める。

 ロードが竜巻に向かって刃を振るうも弾かれる。ただの風ではなくガイアメモリのエネルギー、さらに高速で飛び回るインパルスの鋼鉄の翼の威力で牢獄と化していた。

 ロードが脱出の手段に悩むが、そもそもそんな時間を与えるつもりもない。竜巻からインパルスの身体が飛び出しその羽でロードを切り裂き再び竜巻に戻る。

 出てきては切り裂くヒット&アウェイを繰り返しながら攻撃を繰り返すもダメージは少ない、それにそろそろ対応してくるはずだ。ここらで勝負を決めたい。

 

 

 『マキシマムドライブ!!』

 

 

 勢いよく竜巻から飛び出したインパルスに向かって大剣が振るわれる。ドンピシャのタイミング、やはりここに来て修正してきた。しかし別れたもう片方も飛び出してくると大剣を弾き飛ばし一つに戻る。

 身体を翻し両足を突き出すと緑と紫のエネルギーが灯る。それに対しロードは自身のマントを掴む、電流を纏ったそれをしっかり身体を覆うように引っ張るとその場で高速回転を始める。

 

 

 「!!」

 

 

 インパルスのキックがドリルのように回転するロードにぶつかる。吹き飛びそうになるほどの衝撃を感じながらも何とか防御を突破しようと背中のジェットも前回にし対抗するもあちらの回転の勢いもどんどん上昇していく。

 その勢いは次第に突風を発生させる自らを囲む竜巻にぶつかりその大きさを縮小させていく。次第にロード自身が新たな竜巻となりインパルスを竜巻ごと吹き飛ばす。

 

 

 「ぐあぁぁぁぁ!!!」

 「翼!」

 

 

 地面に落ちてきたインパルスをレゾードが受け止める。幸い大きなケガなどは無さそうだ、最近まで入院していたこともあり過剰に心配してしまうがひとまず安心する。

 しかし、起死回生の一撃を弾かれたことによるこちらの精神的なダメージは大きい。いよいよ打つ手がなくなり固まるこちらをロードはただ見つめてくる、まるで何かを待っているようだ。

 すると突然大きな足音が響き始めロードがそちらに振り向く。大きな顎の噛みつきを右腕の大剣で受け止める。

 

 

 『ダイナミック・ファング!!』

 「うおぉぉぉ!」

 「兜くん!」

 

 

 ダイナミック・ファングの牙が大剣に突き立てられ周囲に金属音が響く。耳障りな音に両手で覆いたくなるのを堪えているとロードがファングを蹴り飛ばす。

 地面を転がるも立ち上がる姿を見ながらインパルス達も動き出す。

 

 

 「瑠璃!ルミ!」『ファスト・ウィング!!』

 「オッケー!」『レギンス・ブレード!!』

 「反撃!」『アーム・タンク!!』

 

 

 それぞれ変形するとダイナミック・ファングの横に並ぶ。準備が完了したとばかりにインパルスが叫ぶ。

 

 

 「兜くん!合体だ!」

 「………」

 「兜くん?」

 

 

 呼びかけへの返事がないことにコックピットで首を傾げているとファングが突然走り出しロードに突っ込む。

 

 

 「ちょちょちょ!?」

 「何で!?」

 「俺1人で十分だ!」

 

 

 飛び上がったファングが組み付き噛みつこうとするが投げ飛ばされる。受け身を取りすぐまた組み付こうとするもガトリングが乱射され全身から火花を散らす。

 

 

 「ぐぅぅぅ!!」

 「クソっ!何だってんだ!」

 

 

 合体する気がないのを察した翼がファスト・ウィングでの援護に入る。ガトリングを乱射する背中にミサイルをぶつけると周りを旋回し注意を引こうとするもその機体をロードに掴まれる。

 抜け出すためにジェットの勢いを強めるも硬く閉ざされた手が開くことはない。助け出そうとファングが走り出すもその首を掴まれお互いを思いっ切りぶつけ合われ何度も火花を散らすと揃って投げ捨てられる。

 ひとかたまりに地面に叩きつけられた2体に再びガトリングを向けると下からブレードに弾かれる。

 

 

 「ハァァァァァ!」

 

 

 ロードの大剣とブレードがぶつかり合う。攻撃と防御の為のそれぞれの刃が大きな火花を散らしながら鍔迫り合いに発展するもロードがより力を込めて振り抜くとそれだけでブレードもファング達のもとに吹き飛ばされる。

 残されたタンクが砲撃を放つもマントで弾かれながら急接近され砲身を掴まれると同じように投げ飛ばされる。

 

 

 「や、やっぱり単体じゃパワー負けだよ…兜くん、何考えてるか知らないけど一旦置いといて…」

 「待って、あれまずくない?」

 「え?」

 

 

 説得を試みていた翼が顔をあげてコックピットカメラに移るロードに視線を移す。

 胸部が開くと紫に輝く宝石のようなものが現れみるみる眩しくなっていく。何をやる気か察し脱出しようとするが機体同士が絡まってうまく動けない。

 紫の輝きが最高潮になったとき宝石から絶大な破壊力の光線が放たれる。辺りの地面を抉りながら近づいてくるそれに対しファングはレックスに変形することで脱出すると右腕からバリアを展開し受け止める。

 

 

 「う、ぐぅぅぅぅ!!」

 

 

 光線の大きさに飲み込まれながらもバリアで威力を減衰させようと挑む。全身を焼く熱と右腕にのしかかる衝撃に膝が折れそうになるのを何とかこらえていると背中に感触を感じる。

 

 

 「!」

 「手伝う!」

 

 

 同じように変形した三人が背中を押さえ共に防御に徹する。直撃を食らえば間違いなく致命傷の一撃に対するこのバリアは生命線だ。

 腕やベルトが激しくスパークし明滅する、マスクが限界を示すようにアラートを表示し始めバリアが薄くなっていく。

 

 

 「くっそおぉぉ!!」

 

 

 叫びと共にレックス達が飲み込まれ大きな爆発が起こる。煙に4人が包まれたのをロードは見つめると何かに気づく。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 「逃がしたな」

 

 

 カメラの反応を見て判断する。その言葉通りに煙が晴れたそこには誰もいない。

 レーダーが捉えた独特な反応から察するにセカイに逃げ込んだらしい。ロードを戻らせるとコックピットから降りそのままデスクに座る。

 

 

 「概ね成功していたように見えるけど、不機嫌そうね」

 

 

 横からニヤニヤと笑いながら話しかける。怜の不機嫌の理由が分かっているようで面白い物が見れたと満足そうだ。

 その真意を察しているのかイライラとした様子でパソコンを操作し先程のデータをまとめている様子を見ながらそのまま話続ける。

 

 

 「もうダイナミック・ジンにはなってくれないかもね〜、あれを倒したかったのに残念ね〜」

 「…それならそれでいい、最大の障害が消えたなら計画もやりやすくなる」

 

 

 そう言葉を返す怜は眉間にしわをよせており本意ではないのは明らかだ。しかし実際にメリットになるのは確かであるし自分でわざわざ敵を合体できるように手伝うつもりは流石にない。

 ムスッとした表情で作業を続ける姿を女はニヤニヤと見つめ続けた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 「ガァッ、く…!」

 

 

 ストリートのセカイの壁に龍我がその身体を叩きつけるようにもたれる。身体に走る痛みにうまく立つことが出来ず苦しむ彼の右手からは血が滴っており深い傷を負っていることは間違いない。

 近くで他の三人も地面に座り込みそれぞれ傷を押さえている。無事な左手で懐のドライバーを取り出すと火花が散ったあと光が灯り、限界を迎えたように消える。

 

 

 「…!」

 「みんな!大丈夫!?」

 「お〜こはっちにアンアン、大丈夫じゃないよ」

 

 

 声の方に振り向くとこはね達がミクとセカイと共に走ってきておりその手には救急箱が握られている。

 

 

 「よかった…爆発に巻き込まれたら皆いなくて…」

 「ほんっとに焦ったんだから!まぁセカイがみんなこっちに来てるって教えてくれたけど」

 「僕らも死ぬかと思ったよ。そこに関しては…兜くんの機転のおかげかな」

 

 

 あの時、バリアが薄くなってきたのに気づいた直後にUntitledを起動させたのは龍我だ。その判断がなければ全員やられていただろう。

 

 

 「密着した状態だったからな…あれなら全員セカイに逃げ込める」

 「とにかく手当するぜ!さ、座れ座れ」

 「……」

 「え、おい!」

 

 

 セカイの申し出を無視し歩き去っていく龍我。怪訝な顔をしてその背中を見つめていた翼が声をかける。

 

 

 「また戦いに行く気なの?ベルト、普通じゃなさそうだったけど」

 「…別になんでもない」

 「嘘だね」

 

 

 鋭い目つきで睨みつける翼の様子を気にもとめずそのまま歩き去っていく。呆気に取られた様子のセカイが包帯を持ったまま立ち尽くしていると横から包帯を取られる。

 

 

 「あ、瑠璃悪い。包帯巻くならやるから座ってていいぞ」

 「それじゃもう1つもらえる?兜くん追いかけるから」

 「え?」

 

 

 気の抜けた返事をセカイがすると包帯や消毒などを持ったこはねが近づいてくる。

 

 

 「瑠璃ちゃん、私も一緒に行くね。さっき話の途中だったから」

 「オッケー、ちょっと走るよ」

 「あ、俺も行く!」

 「ちょっと!みんな!」

 

 

 走っていくこはね達を杏が呼び止めようとするがそのまま走り去ってしまう。追いかけたいが地面に横たわりながら過ごしている翼達を置いていくことも流石に出来ない。

 

 

 「さて、僕らも行こうか」

 「っ!追いかけるの?」

 「解決しないといけない問題は他にもあるよ。あっちは瑠璃達に任せよう」

 「え、ちょ…」

 

 

 そう言うと別方向に歩いていく翼の背中とこはね達の向かった方向を交互に見る。しばらく悩んだ内にいざというときこはねの連絡先が分かるのが自分だけなことに気づき翼の方へと走った。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 「あ~クソッ、イライラするぜ…」

 

 

 その頃、とあるイベント会場で彰人は苛立ちを隠せないでいた。冬弥との1件以降調子が出ない、あんな奴の事など忘れてやろうと思っているのにどうしても考えてしまう。

 

 

 (やっぱりもう一回冬弥と話を…いや、あんな奴と何を話すってんだ)

 

 

 自分の夢を否定してくるような人間と話すようなことなどない、あんな人間と相棒だったという事実だけでもはらわたが煮えくり返る。

 そう結論付けると喫茶店の中を進む。

 

 

 「は?」

 

 

 突然のことに思わず足が止まる。イベント会場にいたはずが何故か喫茶店に変わっている。常軌を射した事態に戸惑っているとカウンターの人影に気づく。

 

 

 「いらっしゃい、ご注文は」

 「え、いや…今それどころじゃないんで」

 「はぁ…どいつもこいつも…店に来たなら注文しろ」

 「ビックリね…ピンポイントにこのお店に出るなんて」

 

 

 並ぶ男女の顔をみてある事に気づく。茶髪の女性の方、その姿には見覚えがある。

 

 

 「MEIKO!?」

 「えぇ、よろしくね彰人くん」

 「な、なんで俺の名前を…」

 

 

 何故か自分の名前を空想上の存在であるバーチャルシンガーに知られている状況、もしや自分は夢でも見ているのだろうかと疑い始める。

 

 

 「いい加減説明にも飽きてきた頃だ、手短に行くぞ」

 「いや、しっかり…」

 「ここ、セカイ、お前含めた4人組の想いで出来てる。こはね、杏、彰人、冬弥が本当の想いを見つけたらスマホのUntitledが歌になって俺らが嬉しい」

 「…は?」

 

 

 あまりにも駆け足気味な説明に文句を言いたいところだがそれよりも気になる事がある。自分を含めた想いで出来た場所、そこに何故冬弥も入ってるのか。

 

 

 「俺たちの想いってなんだ!なんで冬弥の奴まで入ってんだ!」

 「…おかしな事を言う奴だな」

 「何…?何がおかしいんだよ」

 

 

 怒りを露わにし始めた彰人に対しツカイはおちょくるような笑みを浮べている。普段初対面の相手には取り繕っているがその余裕もこちらにはないというのにふざけた態度だ。

 

 

 「お前は自分が何を考えているのか人に聞くのか?分かるわけないだろう、お前のことなんてお前以外に」

 「それは…」

 「青柳冬弥についても同じだ、俺が知るわけない。知りたいならそいつに聞けばいい、相棒なんだろ?まぁ元がつくか」

 

 

 ツカイの言葉に彰人は言い返せないと共にますます不審がっていく。こちらの情報に詳しすぎる、まさかずっと監視しているのか。

 

 

 「あなた、聞き耳立てる癖やめた方がいいわよ」

 「あいにく耳が良くてね、勝手に聞こえてくるんだ」

 

 

 男の言い分をあきれながらもMEIKOがコーヒーを出してくる。鼻に入ってくるブラックコーヒーの香りにこのままでは飲めないと判断し砂糖とミルクを入れる。

 冬弥はブラックでも飲めていたことがよぎり、頭を振って忘れる。ふとした時にどうしても思い出してしまう自分に嫌気が差しながらコーヒーを口に運ぶ。

 

 

 「ッ!、苦ぇ…」

 「あら、苦手だったかしら」

 「だから注文しろと…ココアでも入れてやろうか」

 「…大丈夫だ」

 

 

 気遣いのつもりで言ったが子供扱いされているように感じられたのか突っぱねられる。横に立つMEIKOに視線を送るも自業自得とでも言いたげな表情を向けられ肩をすくめると皿洗いを続ける。

 彰人としてはさっさと帰りたいが出されたコーヒーを飲まないのも気が引ける。話を聞くにUntitledとかいうのを止めればいつでも帰れるらしいので焦ることもないとおもっていると店に新たな客が入ってくる。

 

 

 「MEIKO〜!ツカイ〜!聞いてくれよ〜!」

 「注文をか」

 「オレンジジュース!じゃなくってさ〜」 

 

 

 入ってきた人物の姿を彰人は観察する。袖のない上着を来たまだ幼さの残る少年。

 その耳につけたヘッドホンと特徴的な前後に逆立った髪を見れば何者かは一目瞭然だ。

 

 

 「鏡音レンまでいるのか…」

 「リンもいるぞ、最もこの様子だと今日は見れなそうだがな。そうだろレン?」

 「知らないよ!あんな奴!」

 

 

 怒り心頭といった様子でカウンターに座るレン。足が短いためプラプラと揺れているのが怒った様子とミスマッチだなと失礼な事を考えながら冷蔵庫からオレンジジュースを取り出すと氷と共にコップに注ぎ出す。

 

 

 「またリンと喧嘩したのか?今日はそんなヤツばかり来るな」

 「そんなヤツばかりって…うわぁ!?何で彰人がいるの!?」

 「こいつも俺のこと知ってんのかよ…」

 「当たり前だよ!このセカイの想いの持ち主だもん!」

 

 

 生みの親とも言える存在の自分達はどうやら有名人のようだ。いまいち飲み込めていない話だがこうして現実に起こっている以上受け入れるしかないのだろう。

 そんな彰人の考えている事など知るはずもなくレンは首を傾げながら質問を投げかけてくる。

 

 

 「ていうかもしかして…喧嘩してるのって彰人?冬弥と何かあったの?」

 「…俺のことはどうでもいいだろ、お前こそ相談しに来たんじゃないのか」

 「いやどっちもどうでもいいぞ」

 

 

 あんまりな物言いに思わず彰人とレンは同時にツカイの方に振り向く。言い放った本人は磨いたコップに汚れがのこっていないかを証明に透かして確認する興味のなさだ。

 

 

 「ちょっと!俺達の悩み事コップ以下!?」

 「喧嘩の理由が何であれこっちの言うことは1つだからな、時間の無駄だ」

 「1つ?1つって何だ、言ってみろよ」

 「さっさと謝って仲直りしろ」

 

 

 ズバリ言い放つ姿に額から青筋が浮かぶ。先程の会話から彰人の事情は把握しているのだろうがあまりに勝手な言い草だ。

 

 

 「何で俺があいつに謝んなきゃなんないんだよ、俺は謝るようなことはしてねぇぞ」

 「俺もだよ!悪いのはリンだもん!」

 「じゃあ頑張って相手を謝らせるんだな、いつまでかかるが知らんが」

 

 

 こちらの言葉を流しながら皿の汚れも水で流していく。乾かす為の棚に並べていくと全ての皿を洗い終えたのかタオルで手を拭く。

 冷たい態度で言い放つ言葉にイライラが募っていくのを感じる、こちらの感情を正論で無視してくる大人特有の話し方だ。

 

 

 「俺は別に仲直りしてぇなんて思ってねぇ!」

 「俺も!」

 「お前ら仲いいなぁ、だったら多分中身も似たようなもんだろ」

 「「は?」」

 

 

 ツカイの発言に揃って首を傾げる。思った通り似た者同士だと感じながら言葉を続ける。

 

 

 「俺が来てからそう時間が経ったわけでもないが…こうやって店に来るのは何度目だ?レン」

 「んぐっ!」

 「毎度毎度同じようなことで喧嘩して飛び込んできたかと思えば長々理屈をこね、MEIKOに諭されて謝りにいく。運が悪いとお前とリンが入れ違いできて二回同じ話をするんだぞ」

 「それは…悪いと思ってるけどさぁ…」

 

 

 バツが悪そうな顔で肩を落とすレン、心当たりがあるのだろう。しかし彰人にとって重要なのはそこではない。

 自分も同じようにどうせ仲直りするのだろうと高をくくられていることだ。

 

 

 「俺とこいつを一緒にすんな。俺はあんな奴と二度と関わるつもりはねぇ」

 「そうか、なら別にそれはそれで構わないぞ。最高のステージとやらもその程度の考えってことだろうからな」

 「何だと!!」

 

 

 相棒との決別だけではなく夢まで否定するような言葉に彰人がこれまでで一番の大声を上げる。熱のこもった態度に対して何処まで一定の熱量を保ったツカイの対照的な二人の会話は続く。

 

 

 「最高のステージをするのに冬弥の力が必要だと思ったから誘った、俺がお前なら何が何でも引き留めるね。それをしないってことはどうでもいい夢ってことだろう」

 「あんな中途半端なやつと組んだって無駄だって判断しただけだ!」

 「本気で狙えると思ったやつがその程度なら見る目がない、どっちにしろ見込みがないな」

 「テメェ!」

 

 

 激昂した彰人がツカイの首を掴み上げる。勢いのまま拳を振り上げたその時、店に翼達が入ってくる。杏やミク達に肩を借りながら歩くその姿にMEIKOはタオルを濡らして持って行く。

 

 

 「MEIKOさん!椅子空いてる!?翼たち怪我してて!」

 「ツカイから聞いてるわ、こっちのソファに寝かせてあげて」

 「ありがとうございます。…あれ」

 

 

 ソファに寝転びひと息ついたところで翼が彰人に気づく。

 

 

 「何か東雲くんいるけど」

 「え、本当だ!何で!?」

 「お前ら…そういうことか」

 

 

 杏が自分と同じ言葉は聞いていたが翼とルミの姿まである事に気づく。そう言えば以前聞いた龍我がライダーの力を得た経緯にセカイが出てきた、誰のセカイかは伏せられていたがここのことだったのだろう。

 

 

 「おい、離せ」

 「…チッ」

 「何、喧嘩してたの?」

 

 

 首を掴んだままだったのを離すと彰人は携帯を取り出す。そこにUntitledがあるのを確認するとさっさと帰ろうとするがその前に翼が声をかける。

 

 

 「とーやんと喧嘩したって聞いたけど、それはどうなったの?」

 「人の相棒を妙なあだ名で呼ぶなっつってんだろ」 

 「結局どっちなんだ」

 

 

 つい癖で冬弥のことを相棒と呼んでしまう。身体に染み付いた感覚がなかなか消えてくれないことに歯噛みする様子を見て察したのか翼が口を開く。

 

 

 「余計なお世話かもだけど、ちゃんと話したほうがいいと思うよ」

 「何でお前にそんな事言われなきゃいけねぇんだよ」

 「君のことは嫌いだけどとーやんは気に入ってるから。それに…」

 

 

 頭の中に思い浮かぶのはステージに立つBAD DOGSの姿。人によって態度を変える彰人の姿は気に入らなかったがその歌には彼の正直な気持ちが乗っていると感じていた、そしてそれに冬弥も全力で応えていると。

 

 

 「嘘だらけの君だけど冬弥くんとの関係にだけは何の嘘も無かったはずだ。それは手放しちゃいけない」

 「………」

 「まぁ、気になるのはむしろとーやんのほうかな」

 「青柳くんが?」

 

 

 首を傾げるルミに対して翼は寝転んでいたソファーから起き上がると目に乗せていたタオルを机に置きながら言葉を続ける。

 

 

 「さっきも言った通り、BAD DOGSの本気は嘘じゃなかった。つまり今回の言動の方が嘘だってことでしょ、とーやんがそんな事言う理由を気にしたほうがいいと思うけど」

 「……」

 

 

 冷静さを取り戻してきた彰人が考え込む。やはり内心では冬弥の事を信じたい気持ちもあるのだろう。答えが出るまで放置する事にしよう、ここに来た目的は別にあるのだ。

 

 

 「さて、僕もツカイ君に話があるんだけどいいかな?」

 「何だ、言ってみろ」

 「兜くんのベルトが壊れたみたいなんだよね、どうにかならない?」

 

 

 それぞれの注文の品を準備しながら話を聞いていたツカイは翼の言葉に動揺することなく手を動かしながら返事をする。

 

 

 「別にどうする必要もない」

 「え?」

 「ブレンドお待ち」

 

 

 気の抜けた音が口から出る翼の前に注文したコーヒーが置かれる。次はグラスに紅茶を注いで行くツカイに思わずルミが声を上げる。

 

 

 「イヤイヤ!良くないでしょ!またロボットに襲われたらどうすんの!?」

 「お前ら、何を勘違いしてるのか知らんが…」

 

 

 入れ終わった紅茶をルミの前に運ぶとそこで立ち止まり話を続ける。

 

 

 「ベルトも俺達と同じ想いから生まれた超常存在だ、あんな見た目でも機械じゃない」

 「…どういうこと?」

 「………ふぅ」

 

 

 理解が及ばず首を傾げるルミにため息を吐きながら続ける、世話が焼けるといった表情に不満を覚えるがこちらは黙って聞くしかない。

 

 

 「ダメージで一時的に機能停止することはあるだろうが自動で修復される。大事なのはお前らの気の持ちようだ、想いが原動力だからな」

 「僕らが壊れてないって思わなければいいってこと?」

 「大雑把に言うとな。龍我もこのことは知ってるからそっちは大丈夫だろう、別の心配はあるが」

 「……別?」

 

 

 ベルトの破損が問題ないのなら何が問題と言うのだろうか。個人的には精神状態は気になるが、ツカイの気にしていることはまた別のようだ。

 翼達が首を傾げている間に杏は彰人に話しかける。

 

 

 「ねぇ、結局どうするの?冬弥のこと…」

 「……それが分かりゃ苦労しねぇよ」

 

 

 いっそのこと完全に無かった事にでも出来れば楽なのだろうか、そんな事を考えていても何も解決しないと分かっているが答えを出すこともできない。

 悩んでいるとツカイの話が終わったルミが会話に参加してくる。

 

 

 「言葉で説明出来ないなら言葉以外の方法で吐き出してみたらいいんじゃないかな」

 「言葉以外?」

 「ふっふ〜ん。同じことの繰り返しになるけど、やっぱストリート流ならこれでしょ!」

 

 

 マイクを取り出しながらニヒルな笑みを浮かべる。何を考えているのか察しながら顔を見合わせる二人は不安そうだった。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 「ここは……?俺は街で歩いていたはず…」

 

 

 同じくストリートのセカイ、そこでは冬弥が彰人と同じように迷い込んでいた。行く当てもなく街を彷徨っていたところ突然知らない路地裏のような場所に出て困惑している。

 ボーッと歩いていたせいで何処か知らない街まで来てしまったのだろうかと少しズレた勘違いをしていると角から龍我が出てくる。

 

 

 「は?」

 「兜か、丁度よかった。恥ずかしいんだが道に迷ってしまったんだ、すまないがあんないしてくれないだろうか」

 「いやお前…え?」

 

 

 自分がセカイに入ったことに気づいていない様子に戸惑っていると冬弥の様子がおかしくなる。龍我の姿を上から下まで確認するように視線を動かすと驚いたような表情を浮かべる。

 

 

 「その怪我…ひょっとしてまた戦っていたのか?待っていろ、今救急車を…」

 「いやいや!大丈夫だ!そもそもここにそんなもん来ねぇよ…」

 「何?」

 「おーい!」

 

 

 携帯を取り出した冬弥を必死に止めようとしていると後ろからセカイの叫び声が聞こえる。振り返るとこはねと瑠璃を連れて三人で走ってきている姿が見えた。

 

 

 「あれ!?何か1人増えてる!」

 「青柳くん!?何でセカイに…」

 「宝田も怪我をしているな…やはり救急車を」

 「だからやめろお前、ッ!!」

 

 

 再び携帯を操作しようとする冬弥からいっそ取り上げてしまおうとするとキズが痛みうずくまる。その様子を見たこはね達が一度建物の陰に座らせると包帯を取り出し処置を始める。

 抵抗しようにもよほど傷が痛むのか特に何もせず黙って治療を受ける。その間に冬弥にセカイはここの説明をし始める。

 

 

 「つまり、ここはお前の想いで出来たセカイなんだよ。あ、このセカイってのは俺じゃなくて…いや俺もセカイではあるんだけどそれとは別のセカイで。俺がこのセカイの具現化とかではない、いやまぁ確かにこのセカイの影響は受けてるんだけどそれはこのセカイの成り立ちとは関係なくて」

 「下手くそか」

 「つまり、人の強い想いから出来る空間が存在していてここの場合は俺や彰人達の想いで出来ていると」

 「よく分かったね今ので」

 

 

 適応力が高いのか、それとも天然なのか分からないがこの状況をすんなりと受け入れる冬弥に若干引く。戻り方も確認しいつでも帰れる状態になると龍我が口を開く。

 

 

 「俺の携帯が壊れて戻れないんだ、帰るときは言ってくれ。ついていくから」

 「ふむ、分かった。俺としても特に用はないから今からでも…」

 「……ちょっと待ってほしいかな」

 

 

 携帯を取り出そうとした冬弥を引き留める。もともと龍我と話をしようと思っていたが冬弥もいるなら都合がいい。

 どちらにも聞いておきたいことがあるのだ。

 

 

 「青柳くん達がBAD DOGS解散したって聞いて…何でそうなったのか本人から聞きたくて」

 「解散した!?こいつらが!?」

 「……あぁ、俺と彰人はコンビを解消した」

 

 

 予想外の展開に龍我が驚く。以前イベントを見に行った時にはそんな様子は一切無かった、2人でRAD WEEKENDを超えると意気込んでいたのに何があったというのか。

 

 

 「お前ら…あんなにやる気だったのに何で急にそんなことに…」

 「…そうだな、小豆沢に頼みたいこともある。お前たちには本当の事を話そう」

 「頼みたいこと?」

 

 

 こはねの疑問に頷きながら冬弥は話を続ける。

 

 

 「俺の父さんは著名なクラシックの音楽家だ。年の離れた兄と一緒に俺も幼い頃からクラシックを叩き込まれた」

 「……」

 「クラシックかぁ~ここらへんじゃ聴かないジャンルだなぁ」

 「でも、小さい頃から音楽に触れてたってのは納得かも。青柳くんの歌ってすごい正確だったから」

 

 

 褒められているはずだが冬弥の表情は暗い。その顔をみて2人はハッとする、どうにもあまりポジティブな話題ではなかったようだ。

 

 

 「確かに、俺の音楽の原点は父さんなのかもしれない。だが…少なくともあの時間は俺にとって地獄だった」

 「……クラシックが好きじゃないのか?」

 「最初は好きだったのかもしれない、だが…」

 

 

 今でも鮮明に思い出せるあの日々、他の同年代の子供達が遊んでいる時間にもピアノを引き続けた。時には食事や睡眠の時間も削ったほどの徹底的な指導を受けさせられていた。

 

 

 「執拗な練習に嫌気がさして母さんに相談したりもしてみたが、母さんは父さんの事を尊敬しているからな。『名誉な事』だと言われて取りつく島もなかった」

 「…それがどうしてストリートに、音楽自体やめそうなもんだが」

 「単純に俺がやって父さんが一番嫌がりそうだと思ったんだ。つまらない反抗だ」

 「…いや、そうでもない」

 

 

 正直そういった反抗期のようなものとは無縁な人物だと思っていた。親が音楽経験者という共通点まで出てきて自分の考えているより遠い存在ではないのでかもしれないとも龍我は感じた、最も自分の親は特に結果は残していないらしいが。

 

 

 「そんなときに彰人に誘われてBAD DOGSとしてコンビを組んだ。短い間だったが、歌っているときは素の自分で居られた気がする」

 「そこまで言うのに解散すんなよ、RAD WEEKEND超えるとか言ってたじゃねぇか」

 「……俺には、そんな資格はないんだ」

 「資格?」

 

 

 一瞬俯くも顔を上げると暗い表情で言葉を発する冬弥に首を傾げる。

 

 

 「俺は…父さんが嫌がるなら何でもよかったんだ、当てつけの為だけにストリートに来た。そんな人間が本気で夢を追う彰人の横にいたって足を引っ張るだけだろう」

 「…それが理由で東雲くんから離れるの?もしかしてこはねちゃんに頼みたいことって…」

 

 

 冬弥は頷くとこはねの方に顔を向ける。申し訳なさや寂しさが入り混じった瞳に向けられてるこはねまで少し悲しそうな顔をしている。

 

 

 「小豆沢や白石…ViVidsの2人は本気でRAD WEEKENDを超えようとしている。それは以前の対決で分かった、彰人が組むべきなのはそういう人間だ」

 「東雲くんと一緒に歌ってあげてほしいってこと…?でも…」

 「勝手な話だとは分かっている。だがきっと彰人なら2人の力にもなれるはずだ、どうか一緒に歌ってやってほしい」

 「青柳くん…」

 

 

 頭を下げる冬弥にこはねは悩む。彼の本気は伝わってくるが自分だけで決められることではない、何より2人がこのまま別れていいとも思えない。

 どう返事をするか悩んでいると龍我が口を開く。

 

 

 「お前はそれでいいのかよ」

 「…彰人の為にはこれが一番なんだ、俺は彰人に夢を叶えて欲しい。元相棒としてな」

 「青柳…」

 「あのさ、青柳くん…」

 

 

 龍我に続いて瑠璃が口を開こうとするも止まる。どうしたのかと他の4人が顔を向けると少し考えたような表情をしたあと龍我の方を向く。

 

 

 「あの…流れで兜くんの話聞いていい?」

 「何も話すことなんかないぞ」

 「私を鉤爪で引き裂いたことに対して説明がいると思うんだけど」

 「それはそうだわ、俺もまだ納得いってないぞ」

 「私との話もまだ途中だったよね?」

 「なんだ、何の話だ?」

 「四面楚歌かよ」

 

 

 質問の矛先が自分に向いてしまったことに頭を抱える。そもそもこはねとの話も大体言いたいことは言ったつもりだったのだが。

 

 

 「…青柳の話を一方的に聞くのも悪いし、話してやる」

 「やった」

 「ナイスだ冬弥」

 「…?、そうか」

 

 

 今まで中々口を開かなかった龍我がようやく話すつもりになった、本人としても話した方が早いと判断したようだ。

 

 

 「…宝田にはこないだ話したし、中学の頃だから小豆沢は知ってると思うが三年前に親父が死んだんだ。居眠り運転のトラックに轢かれて即死だった」

 「突然だったよね…学校に着いて雑談し始めたらすごい勢いで先生が来て…通勤中のお父さんが轢かれたって」

 

 

 その時の龍我の信じられないような顔を思い出す。会ったことは無かったが友人の親族が亡くなる経験など無かったこはねも驚いたものだ。

 

 

 「すまない、辛いことを聞いてしまったな」

 「……辛いこと、か」

 「………?、あ」

 

 

 申し訳なさそうな顔をした冬弥の発言に龍我は思うところがあるようだ。その表情をみて瑠璃は以前謙に父親の事を話していた時の事を思い出す。

 確かもう気にしていないと言っていた時もこんな顔だった。

 

 

 「……そこなんだ、問題は」

 「問題…?」

 「悲しくなんかないんだよ、もう」

 「え?」

 

 

 龍我の発言にこはねは呆気に取られてしまう。その様子に自嘲気味な笑みを浮かべると話を続ける。

 

 

 「死んだときは、もうこれ以上ないってくらい悲しかったさ。特別他の家族と比べて仲がめちゃくちゃいい一家ってわけでもなかったけど、それでも親父の事は好きだった。何の取り柄も特徴もなくてもな」

 

 

 それこそ、食事も喉を通らずただただベットの上で無気力に寝転び続けていた。

 葬儀も理解が及ばず訳がわからないまま終わり、骨になった父親をみて始めて泣いた。

 

 

 「それだけ悲しかったんだ、でも…最初に身体が限界を伝えてくるんだよ。そろそろ飯食えってな、それに俺も抗うような事は出来なかった」

 

 

 3日ぶりにとった食事はろくに味もしなかった。食欲も無かったので1日1食だけ食べて部屋に戻る生活を続けた。

 自分達を養うためにバイトを1週間足らずで見つけた母親の姿を見て部屋から出て家事を始めたら食欲が戻り始め、通常通りの生活に戻っていった。

 

 

 「1週間と少しくらいで…学校にも行き始めた。クラスの奴らが気を使って励ましてきたり、触れないようにしたり…腫れ物みたいな顔をされたりもした」

 

 

 それも長くは続かなかった、一ヶ月もすれば気遣いも厄介者のような扱いもなりをひそめ、仲の良かった友人は以前のように笑いかけそうでないものは自分への関心を無くしていった。

 そして、自分もそれに続いた。

 

 

 「3カ月もすれば俺も普通に過ごせた、ふとしたイベントの時に今年からは親父が居ないんだって思い出して…今じゃそれももうない。それで、気づいちまったんだよ」

 「気づいたって…何に?」

 

 

 龍我の目からは光が失われている、これから話される事に彼の内面の確信が含まれていることを感じながら耳をすます。

 

 

 「親父は…まだ死んでないって」

 「え……それ、どういう意味?」

 

 

 予想外の発言に理解が及ばず聞き返す、それに対し龍我も補足を話し始める。

 

 

 「こうやって思い出す限りは親父の存在は世界に残り続ける、逆に言えば誰も親父の事を思い出さなくなったら、その時に本当に親父は死ぬんだ。そして…それは多分自分も同じだって」

 

 

 建物の壁に背中を預けるように寄りかかると空を見上げると自分の弱さを誤魔化すようにわざとらしく明る気な声で話す。

 

 

 「そう思うと急に怖くなっちまってな!あと百年もしたら俺は世界から居なくなる…いや、最初から居なかった事になるんだ。それって…何か凄い怖くないか」

 

 

 それまで普通に生きてきた人生が突然怖くなってしまった。自分が歩んできた人生が無かったことになる、どうしようもない虚無感に襲われるようになった。

 

 

 「時々そんな事を考えるようになって…でも何か変えられるような事も思いつかなくて…ただ目をそらすことしか出来ない時に、ライダーの力を手に入れた。何も考えずに戦い始めたけど…ここまで戦い続ける理由は出来たんだ」

 「……理由って?」

 

 

 始めての戦い、全身に疲労感を感じながら変身を解いてもしばらくその場にいた。そんなとき、助けた親子が話しかけてきたのだ。

 

 

 「この恩は一生忘れないってさ、助けた子供の親に言われたんだ。それで…その言葉は嘘じゃないって感じたんだ。それで、これなら俺は世界に存在を残せるんじゃないかって思った」

 

 

 誰かを怪人から助けることでその人物が一生自分の事を忘れないのなら、もし怪人達から世界を救ったら?そんな子供のような考えが頭に浮かんだ。

 そして、それに縋ることでしか人生に意味を見出せなかった。

 

 

 「俺は、世界が滅びようとどうだっていいんだ…すべての人間が消えるなら俺だけが忘れられるわけじゃない。ずっと自分の為に戦ってるんだよ、自分の中の恐怖心を誤魔化したくて…」

 

 

 しかしもう自分の戦いも終わりかもしれないと感じる。もたれかかっていた背中を曲げると前傾姿勢になりベルトとスフィアを取り出し眺める。

 ベルトは相変わらず時折光るとまた消えるのを繰り返し、スフィアはパーツのいくつかがポロポロと落ちるので拾い上げる。

 

 

 「俺が戦ってたのは死んでもいいと思ってたからだ。世界を救うことでしか望みが果たせないなら…戦うのをやめた時点で死んだのと同じ、でもお前らは違うだろ」

 

 

 夢を追いかけるViVidsやBAD DOGS、ストリートで楽しそうにステージに立つカナリアやルミたちを戦いに巻き込んではいけないと感じた。

 多少強引にでも嫌われようとしたが失敗してしまいとことん自分には何も出来ないなと痛感する。

 

 

 「龍我…」

 

 

 暗い表情の龍我を見ると罪の意識が浮かんでくる。あの日自分がベルトを渡さなければこんな顔はさせなかったと思うと胸が締め付けられるようだ。

 いつも一緒にいたはずなのにどうして自分は気づけなかったのだろうかと歯を噛みしめる。セカイが自らを責める中瑠璃が口を開く。

 

 

 「ねぇ、二人に言いたいんだけど」

 「…なんだ?」

 

 

 真剣な表情の瑠璃を見つめる、大体予想はついていたがどんな事を言われても考えを変えるつもりもない。これ以上瑠璃達を巻き込めば次こそ命はないかもしれないのだ。

 次に来る言葉への反論を考えていると予想外の発言が飛んでくる。

 

 

 「理由に他人を使うのやめた方がいいよ」

 「……え?」

 

 

 思っていたのとは別方向の説教に思わず気の抜けた返事をしてしまう。すると瑠璃はハッと表情をすると柔らかく訂正をする。

 

 

 「勘違いしないでね?これはお説教じゃなくて、体験談からくる忠告…かな」

 「忠告…?」

 

 

 困ったような表情で笑うと瑠璃は頷く。今イチ意味を理解できずにいるとため息を吐き何かを決心したように口を開く。

 

 

 「…これを言うなら私も話さなきゃなんだよね、自分の昔のこと。聞いてくれる?」

 「……分かった」

 

 

 龍我は返事をすると冬弥の方を確認する、冬弥も話を聞くつもりなのか黙って頷くと2人で瑠璃の方を向く。

 瑠璃はこれから話すことを思い起こしているのか少し暗い表情をするも首を振ると毅然とした態度で喋り出す。

 

 

 「私の家って4人家族でね?お父さんとお母さんの他に1つ上のお兄ちゃんがいるんだ、翡翠って言うんだけど」

 「…なんかどっかで聞いた気がするな」

 「あれだな…確か前に小豆沢をダイナミック・ジンで家まで送った帰り道に翼の運転が荒すぎて…」

 『お母さーん!お父さーん!翡翠ー!』

 「あぁ、助け求めてたな」

 「思い出さなくていいから…」

 

 

 予想外に自分の痴態を掘り起こしてしまったことに顔を赤らめながら息を整える。話が脱線してしまった、今は真面目な話なのだ。

 

 

 「翡翠は昔からすごく面倒を見てくれて、特に読み聞かせとかをよくしてくれてたんだ。絵本とか漫画とか…」

 「漫画読み聞かせはあんま聞かなくないか」

 「HUNTER×HUNTERとか読み聞かせてくれたよ」

 「女児に?」

 

 

 中々特徴的な兄のもと育っているようだ。それとも兄とはこんな感じなのだろうか、姉しかいない龍我や一人っ子のこはねには分からない。

 

 

 「それがきっかけで物語の世界に惹かれて…ごっこ遊びとかよくしたんだよね、登場人物になりきっておもちゃの剣振り回してた」

 「…意外におてんばだな」

 

 

 今の彼女からはあまり結びつかない姿だ。時折暴走するようなところはあるものの基本的には落ち着いているし、学校では文武両道才色兼備の優等生で通っている。

 

 

 「それがきっかけで…中学の頃に演劇部に入ったんだ。人付き合いは得意じゃなかったけど、役に入れば関係ないかなって」

 

 

 幼少の思い出を語っていた時の柔らかい表情がだんだんと暗くなっていく。

 

 

 「一年生の時は端役で楽しく過ごしてたんだ。でも、3年生が最後の演劇をして2年生以下のメンバーだけで演劇をするってなった時に…私主役になったんだ」

 

 

 引き継ぎのタイミングで突然の抜擢だった。嬉しさももちろんあったがそれ以上に自分より演技の上手い部員もいる中の指名。そこには彼女の容姿に理由があった。

 

 

 「話の内容が男装の麗人が主役の中世の騎士団の話だったんだけど…当時私は髪が短くて役のイメージとピッタリだって推薦されて、正直興味もあったから断り切れなくて」

 「はぁ〜、まぁ確かにそんなふうに見えなくもない…か?」

 

 

 セカイは両手で瑠璃の長い髪を隠しショートの姿を想像する。確かに言われてみれば表情次第で中性的な印象も受けそうだ。

 

 

 「それで…うまくいかなかったのか?」

 「むしろ、逆かな。上手くいったよ…いきすぎたのかも」

 

 

 自信が無かったこともあり練習にもそれまで以上に力が入った。台本を読み込んで役を作り、原作をモデルにした舞台や映画などにも目を通した。

 その甲斐もあり舞台は大成功を収められた。しかし、それは彼女の生活を変えてしまった。

 

 

 「その…役のイメージがついちゃって、私と役を混合する人が出てきちゃったんだよね」

 

 

 舞台の大成功もあり同じような役を演じることも増えたこと、本人があまり主張のつよい人物ではなく元の性格が知られていなかったことも一因だったのかもしれない。しかし、根本的な問題は別にあった。

 

 

 「それでも最初は期待に応えようと思って、皆が想像するかっこいい王子様みたいな感じを演じることにしたんだ。本当の自分に自信なんか無かったし、それなら皆の望む姿で居たほうがきっと皆喜ぶと思って」

 

 

 元々短かったため髪をより男性的な髪型にアレンジし、立ち振舞なども気をつけた。一人称を僕にしてみたり女性的な趣味趣向は出さないように徹底して望まれるかっこいい自分を演じた。

 

 

 「実際喜ばれたし、舞台も主役級ばっかりになったんだけど…いつの間にか同じような事ばかりするようになっちゃって。それに、演劇部の人以外は周りに人も寄り付かなくなっていったんだ」

 

 

 学校の人気者といえば聞こえはいいかもしれないが実際のところは別世界の人間扱いだった。望まれる姿を演じた結果、前よりも近寄りがたい存在になり数少ない友人も離れた。

 かつては楽しかった演劇もセリフだけを変えた同じような人物を繰り返すだけ。物語の数だけ別の人生を歩めた過去の楽しさはなくなっていた。

 

 

 「いつの間にか好きでやってた演劇は皆の望む姿を演じる為の義務に変わってて…いつの間にか嫌いになってた。だから3年生になった夏休み明けの世代交代の時に退部して、髪も伸ばし直したんだ」

 

 

 そしたら呆気ないくらいすぐに話題に上がらなくなった。自分を犠牲にして演じたところで何も残らず自分の生きがいを失うだけの結果になってしまい虚無感に襲われていたころにルミに誘われストリートに来た。

 

 

 「この後翼を誘ったりするんだけど…今は関係ないか」

 「気になるけどな」

 

 

 先程の話の余韻でぎこちない笑顔を浮かべながら返事をするセカイを流しながら瑠璃は龍我達の方を見る。

 

 

 「他人を気にして自分の気持ちを無視して生きて…私はずっと後悔してる。あの時自分に素直に生きて、他人の望みなんか気にせずやりたい役を演じれば…今も演劇を好きでいられたのかもしれないって」

 

 

 自分の決断で失敗したのであれば何処かで納得も出来たのかも知れない。だが自分のやりたい事も、やれたはずの事もやらなかったまま失った物をどうして飲み込めるだろうか。

 

 

 「一人で戦うのもコンビを解散するのも好きにすればいいと思うよ、それが自分のやりたい事なら。でももし東雲君や私達を理由にするなら…きっと後悔をずっと残して生きることになると思う。そんなの…やめた方がいいよ」

 

 

 俯きながら瑠璃は言葉を紡ぐ。正直もう話を終えてしまいたい、自分としても思い返したくない苦い過去なのだ。

 だが、最後にこれだけは言っておく。

 

 

 「二人は…本当は何がしたいの?」

 「……」

 

 

 その言葉を受けて龍我と冬弥も下を向く。すると龍我が立ち上がりセカイの前に立つとベルトとスフィアを渡す。

 

 

 「え」

 「返すよ、壊れちゃったけど…僕には荷が重かった」

 

 

 呆気に取られるセカイをほって自分の両目に手を伸ばすとカラコンを外す、懐から取り出したメガネをかけると手を広げる。

 

 

 「それじゃ、帰るから触ってもらえるかな。確か外に出せたよね」

 「……どうする気だ?」

 

 

 セカイの問いかけに対して龍我は少し困ったような顔をする。

 

 

 「…さぁ、思いつかないな」

 

 

ーーーーーーー

 

 

 休みが明け、多くの生徒が憂鬱さを感じながら登校する月曜日。部活の朝練を終えた剣が教室のドアを開ける。

 

 

 「………?」

 

 

 何時もなら入った瞬間に大きな声で太陽やみのりからおはようが飛んでくるのに何も聞こえない、みのりはともかく太陽が病欠とは考えづらく辺りを見回すと誰かと話しているのを見つける。

 とはいえ、話していると言うのは語弊があるかもしれない。大きく口を開けたまま固まっている姿に首を傾げながら声をかける。

 

 

 「凄い顔してるけど、どうしたの?」

 「お、おぉ……これ見ろよ」

 「おはよう、剣くん」

 「……誰?」

 

 

 メガネをかけた黒目の男子生徒、物腰の柔らかそうな見覚えのない青年に名前で呼ばれ首を傾げるもよく観察する。

 自分より少し高めの身長、セットされては居ないが見覚えのある赤いメッシュに正体に気づく。

 

 

 「え、龍我くん?」

 「ちょっとこっち!」

 

 

 呆気に取られた声を上げると太陽に両肩を掴まれ教室の隅に連行され、その後をみのりと志歩がついてくる。

 移動すると本人に聞こえないよう小声で話し始める。

 

 

 「どうしちゃったのあれ…!」

 「分かんねぇ…!朝来たらあぁなってた」

 「ね、寝坊しちゃってセットする時間も無かったとか…?」

 「口調まで変わってるのはおかしくない?」

 

 

 それぞれ思い思いの言葉を吐いていく。突然の変貌に頭を悩ませながら太陽と剣は答えをだす。

 髪型を変え、口調…いや人格まで別人のようだ。このことから考えられる結論は1つ。

 

 

 「「後頭部への強い衝撃/失恋……!!」」

 「頭打っちゃったの!?」

 「2人が?」

 

 

 バカげた結論に至る太陽達に志歩が呆れる中二人は解決策を模索し始める。

 

 

 「俺のアームハンマーを後頭部に食らわせれば戻るかな」

 「きっとこはねちゃんに振られたんだ、海に連れて行こう海に」

 「わ、私慰めてくる!」

 「3人とも落ち着いて」

 

 

 このままでは勝手な憶測で話が進んでしまう。おかしなことになる前に事情を確認しようとした時、いつの間にか登校していたこはねが龍我と話している。

 

 

 「兜くん、今日放課後時間あるかな?一緒に来て欲しいところがあるんだ」

 「…何で?」

 「今日またイベントやるんだ、前にまた見に来てってお願いしたよね?」

 

 

 確かにそんな話をした、了承した覚えはないが。しかしこはねの気遣いな事も分かっているので断るのも忍びない。

 あんな事があった後にストリートに行くのは気が引けるが仕方ないだろう。

 

 

 「行ってもいいけど、翼君たちには会わないよ」

 「…うん、分かった。時間は後で連絡するね」

 

 

 そう言うと自分の席に戻り携帯で誰かに連絡を取り始める。その姿を横目に見ながら机に突っ伏して龍我は寝始める。

 

 

 「やっぱ振られたんだ」

 「後頭部が隙だらけだ」

 「りゅ、龍我く〜ん!落ち込まないで〜!」

 「取り敢えず早く説明しないとめんどくさいよ」

 

 

 こっちも優しさなのかもしれないが、勘弁してもらいたい。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 「こはねちゃーん!良かった〜、連れてこれたんだね!」

 

 

 イベント会場に向かう途中、大きな声に呼びかけられそちらを向くと大きく手を振りながら瑠璃が走ってくる。

 その後ろには冬弥も着いてきている、おそらく自分と同じようにイベントに呼ばれたのだろう。あちらも龍我の存在に気づいたのか話しかけてくる。

 

 

 「お前も呼ばれたのか?」

 「まぁ…断りづらかったし」

 「俺もだ、何だかんだで彰人が気になってしまっているんだろう」

 

 

 二人とも自分の意思の弱さに呆れてしまう、先日の瑠璃の話も聞いているのかもしれない。頭を抱えながら進んでいくと会場に着く。

 

 

 「それじゃあ私達準備があるから!二人とも楽しみにしといてね!」

 「…そうは言われてもな」

 

 

 正直今イベントを楽しめる気がしない。龍我の頭の中は霧がかかったように言葉に出来ない不快感がついて回り冬弥も彰人の件が気になって仕方ない。

 いっそこのイベントで新しいコンビでも発表してくれないだろうか。そんな事を考えているとステージにルミが出てくる。

 

 

 「どうもお客様達、本日のイベントの主催のルミです。今日は皆に楽しんでもらえるように精一杯歌うから、ぜひ最後まで楽しんでいってね。それでは最強のイベント、スタァートッ!」

 

 

 挨拶の締めにウィンクをすると客席から黄色い声が上がる。その声を一身に浴びながらマイクを取り出すと照明が暗くなりルミが歌い出す。

 その姿を見ながら龍我は唐突に首を傾げる。

 

 

 「主催?」

 「ルミさんはストリートに来て長いからな。知り合いも多いしファンも多いからイベントを自ら開催しても採算が取れる」

 「凄いんだなぁ」

 

 

 ルミのステージが終わると入れ替わるようにカナリアの2人が出てくる。入院やこないだの戦闘によるダメージを感じさせない踊りを披露する翼の姿に隠れるように冬弥の背中に回る。

 

 

 「……?どうした」

 「いや見つかると気まずいから…」

 

 

 もしかしたら翼は今の姿ならバレないかもだが瑠璃にはバレる。出番が終わるまで冬弥の背中に隠れさせてもらいやり過ごすとその後様々な人間が代わる代わるステージにてパフォーマンスを披露していく。

 冬弥は知り合いもいるらしく説明を受けながらステージを鑑賞していると龍我が口を開く。

 

 

 「青柳くん、音楽自体やめるの?」

 「……どうだろうな、クラシックに戻ることはないと思うが。ストリートを続けたい気持ちはある、だが…」

 「まぁ、どうしても東雲くんに会うよね」

 

 

 コンビを解消した未練の残る相手のいる場所で歌うのはキツイだろう。ビビットストリートを出て歌う道もあるがそれでもストリートミュージックを続ける限り彰人の影はつきまとうはずだ。

 それでも捨て去ることが出来ないのだから冬弥が心からストリートが好きだったことが分かる、それと同じ位彰人を大切に思っていることも。

 何とかして二人を仲直りできないか悩んでいると、司会が次の出演者を呼ぶ。

 

 

 『それでは続いては話題の男子コンビ!BAD DOGSだ!』

 「…は?」

 

 

 冬弥は理解が及ばず間抜けな声を上げてしまう。まさか彰人なのだろうか、新しいコンビを組んだが名前は変えなかった?それとも名前を騙った偽物?様々な憶測が頭を巡る中、彰人がただ一人だけステージに現れる。

 

 

 「一人…?」

 「コンビって言ってなかったか?」

 「冬弥はどうしたんだ…」

 「え、客席にいない?」

 

 

 当然だが客席から戸惑いの声が上がる。しかし冬弥にとってはもっとだ、一体彰人は何を考えているのか。

 何も分からずにいると彰人が冬弥に指を差しながら叫ぶ。

 

 

 「上がってこい冬弥!」

 「何…?」

 

 

 予想外の言葉に戸惑う。周りの人間が冬弥の存在に気づきざわざわとし始めるのを気にもとめず彰人は叫び続ける。

 

 

 「俺にはお前が何考えてんのかも、自分がどうしたいかも分かんねぇ!だから…歌う!俺たちはいつだって歌で自分の想いを、熱を伝えてきた!お前も言いたい事があるなら歌で伝えてこい!」

 「ッ、彰人…」

 

 

 その言葉に迷うような表情を浮かべる。自分が何をしたいか分からなくなっているのは冬弥も同じだ、しかしただでさえ我慢しているのに彰人の隣で歌ってしまえばさらに決意が揺らいでしまいそうだ。

 そんなふうに考えていると背中を叩かれる。

 

 

 「言った方がいいよ、青柳くッ!?」

 「兜…?まさかっ!」

 

 

 声をかけた龍我が突然頭を押さえる。理由を察した冬弥が焦るのを手で制すると言うつもりだった言葉を告げる。

 

 

 「青柳くんはそうは思ってないみたいだけど…きっと君だって本気だったよ…1回しか聞いてないのに偉そうかもだけどね…」

 「それは…」

 「やめるにしても最後に歌っておきなよ、ファンもいるみたいだしね。あと携帯貸してもらえる?」

 「あぁ、それは別に構わないが…」

 

 

 手渡された携帯を確認すると中にはUntitledが入っている。これなら思った通りセカイから物を取り出せそうだ。

 今感じた頭痛、あれは怪人が出たことを知らせるものだ。ベルトが壊れたのにこの能力が自分から消えていないことに驚きながらも決意を固める。

 

 

 「どんな結論になるのか分からないけど…お互い、何がやりたいのかきちんと考えてみよう。怒られたことだしね」

 「……」

 「それじゃ、僕も行ってくるから」

 

 

 駆け足で会場から出ていく龍我を見送るとステージの方に向き直る。どうなるか分からない、しかし向き合わなければ答えが出るはずもない。

 これで自分の気持ちがはっきりすると言うなら乗ってやろうとステージに上がると彰人と向かい合いマイクを受け取る。

 

 

 「言っておくが、歌うだけだ。余計な事を話すつもりはない」

 「ハッ!俺だって言ったろうが!言葉は要らねえってな!」

 

 

 あくまで平静を装う冬弥に対して彰人は好戦的な、しかし何処か嬉しそうな笑みを浮かべる。それに向き合う冬弥も自分の胸が高鳴るのを感じる。

 これが最後なら悔いは残さない、自分のすべてをぶつける。音楽がなると、示し合わせたわけでもないのに二人は同時に歌い出す。

 

 

 「「〜〜〜〜!!!!」」

 

 

 客席の事は今日だけは考えない。今は目の前の男に自分の怒りを、想いをぶつけるだけだ。BAD DOGSとして出演したイベントではやったことのない、お互いの実力を引き出すのではなく相手を食ってやろうというある種の敵対心のようなものをむき出しにした歌。

 

 

 (何て熱量の歌だ…彰人の本気が伝わってくる…!!)

 (やっぱとんでもなくウメェ…!だが、俺だってまだまだこんなもんじゃねえぞ冬弥!)

 

 

 2人のボルテージはどんどん上がっていく。今までとは対照的な歌い方、にも関わらず今までと同じように互いが互いの歌声を引き立たせる。

 染み付いてしまった歌い方の癖なのかもしれない、だが何よりも強いのは相手の歌への信頼。中途半端な歌では食われるの自分の方、絶対に負けられないという想いが2人のパフォーマンスのレベルを高める。

 

 

 「ーーーーー!!!!」

 「〜〜〜〜!!!」

 

 

 胸の中の空気を使い切るような感覚、辛く苦しい感覚が心地良い。2人の歌に熱狂する人々の歓声の中心で彰人と冬弥は声を出し尽くす。

 音楽が止まり、二人は荒く息を吐く。結局、何も答えはでなかった、というよりそんな事を考える暇が無かった。頭に浮かぶ事は1つだけ、しかしそれが答えだと信じて彰人はその言葉を冬弥に伝える。

 

 

 「冬弥…やっぱり、お前は最高の相棒だ!」

 「……!!あぁ、俺もだ彰人」

 

 

 結局全て無駄だった、自分はどうしょうもなく彰人と歌うのが好きなんだと痛感する。歓声を受けながら2人で一緒に舞台裏に戻ると彰人に向き直る。

 

 

 「すまなかった、彰人。俺は…」

 「言うな」

 

 

 謝罪しようとした冬弥の言葉を遮る。真面目な彼らしい行動だが不要だ、何を考えていたかは分からないしもはや興味もない。

 一番確かめたかったことはもう確認できた。

 

 

 「お前が俺の夢に本気で付き合ってくれてたのは分かった。いや、本当はとっくに分かってたんだ…だから、今回の事は忘れる。そのかわり…」

 

 

 口にしようとしている言葉に胸が締め付けられている、だが仮に断られても何度でも頼み込む決意だと声をだす。

 

 

 「俺と…もう一度相棒になってくれ!」

 「……!、もちろんだ、彰人!」

 

 

 少し目尻に涙を浮かべながらも笑顔で返事をする。その姿に彰人も思わず感極まりそうになるが何とか押さえる。

 すぐ横で杏たちが見守っているのだ、泣いたりしたらしばらくいじられるだろう。そんな事を考えている事など知らずに杏たちもその場で会話をする

 

 

 「彰人泣いてる?」

 「泣いてはない、泣きそうだけど」

 「そこ気になる?」

 「うぅ…感動的や…」

 「君が泣くの?」

 

 

 横でコソコソ騒いでいると冬弥がそちらに気づき小走りで近づいてくる。一体どうしたのかと首をかしげていると焦った様子で口を開く。

 

 

 「3人とも!兜が外に向かった!おそらくまた敵だ!」

 「えぇ!?」

 「ベルト壊れてるんでしょ!?」

 「いや、それ以前にセカイに返してたよ!」

 「俺の携帯を持っていったからおそらく受け取るつもりなんだと思うが…」

 「追ったほうがいいだろうね!」

 

 

 翼達が外に向かって走っていくと冬弥は彰人の方に振り返りながら後を追う。

 

 

 「すまない彰人!俺も向かう!」

 「冬弥!?行ってどうすんだよ!」

 「どうしても伝えたいことがあるんだ!」

 「私も!」

 「こはね!?」

 

 

 二人して会場から走り去っていく姿に彰人と杏はしばらく唖然とする。少ししてお互いを見つめ合うと自分たちも後を追うことにし走り出す。

 翼達を追う中こはねは胸の中の不安を拭うように祈る。

 

 

 (兜くん…無事でいて…)

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 「ハッ、ハッ、何だ…どうなってる…?」

 

 

 気配を感じた方に来た龍我は違和感を感じていた。どれだけ近づいても悲鳴のようなものが聞こえてこない、普段なら近づくにつれて人々の騒ぐ声などが聞こえてくるのに。

 いいようのない不安感に襲われながら現場にたどり着くもやはり何も居ない。訳が分からずより正確に位置を掴もうと意識を集中させる、すると予想外の方向に気配を感じる。

 

 

 「上……?」

 

 

 空を見上げても夕日に染まったオレンジ色の空が広がるだけ、同じ色の雲に黒い粒のような点が1つだけある。

 

 

 「いや、何だあれ…!」

 

 

 飛行機や鳥の類ではないことに気づくと段々影が大きくなってくる。咄嗟に横に飛ぶとそこに影が激突し大きな粉塵を巻き上げる。

 砂がメガネ越しに顔に張り付くのを堪えながら収まると同時に拭き取り落下地点を見つめる。

 巨大な身体にツインアイ、大剣とガトリングを装備したロボット。ロードピリオドがそこにはいた。

 怪人ではない目の前の相手が探知に引っかかったことに違和感を覚えながら携帯を取り出す。

 

 

 「セカイ君!いる!?」

 『うわ!?どうした!!』

 「ベルト出して!」

 『え!?わ、分かった!』

 

 

 戸惑いながらもセカイはベルトを取り出すと携帯からスフィアと共にベルトが飛びしてくる。

 両手で掴み取った2つを確認すると以前受けた傷が修復されている。

 

 

 『ベルトの自己修復は完了してる!いつでも使えるぜ!』

 「そんな機能聞いてないんどけど」

 『あれぇ?』

 

 

 言っていたつもりだったのか首を傾げるセカイに呆れながらもドライバーを装着する。ひとまずこの場では助かる、スフィアを起動させると…そこで止まる。

 頭の中に傷ついた翼の姿や瑠璃の言葉が蘇る。自分が何をしたいのか、そもそも戦ったところで目の前の敵を倒せるのか、様々な事が頭の中を巡り動きを阻害する。

 

 

 『龍我!しっかりしろ!敵が目の前なんだぞ!』

 「ッ!変身!」

 『ファング!!』

 

 

 セカイの叫びにスフィアをベルトに装填する、何時も通りパーツが外れ身体に装着される…はずだった。

 スフィアは何の変化も生じさせず、無機質な音声を鳴らすだけ。

 

 

 『ERROR』

 「なっ……!?」

 

 

 始めて変身した時と同じ音声がなったことに龍我が戸惑う。なぜ今更この音がなるのか分からない、ファングスフィアは自分の想いにより変質し変身用のスフィアに変わったはずなのに。

 理解できずにいると携帯からツカイが出てくる。

 

 

 『やはりな、お前の想いは消えかかっている。スフィアの原動力になる想いが必要な量に達しなければ変身は出来ない』

 「そんな事言ってる場合じゃないのに…!動けよ…」

 

 

 ベルトを何度も腕で叩くも帰ってくるのは同じ音声、焦りが頭を埋め尽くした結果周りの事が目にはいらなくなる。

 

 

 『龍我、上!!』

 「えっーーー」

 

 

 見上げた視線の先でロードが大剣を振り上げている、世界がスローモーションになるような感覚に襲われながら咄嗟に横に飛び回避するも地面に巨大な大剣が叩きつけられた衝撃で吹き飛ばされる。

 吹き飛ばされた先でコンクリートの壁に全身がめり込み、骨が軋むような音が聞こえながら地面に落ちる。

 

 

 「あぁっ……!?うっ………!?」

 

 

 大きな悲鳴を上げる余裕もない激痛が全身に走る。大きくひび割れたメガネのレンズ越しに見える地面に自分の頭から滴る血が落ち血溜まりが出来る。

 熱いのか寒いのか分からないような感覚が身体を巡る中、力が抜け血溜まりに突っ込む。

 

 

 (死ぬのか…俺。まぁ…別にいいか…)

 

 

 母や姉は悲しませることになるだろう。太陽達にも最後に礼くらい言っておくべきだった。こはね達に後悔を残してしまうかもしれない。

 だがそれらすべてどうせ忘れるのだ、自分が父親の死を忘れていくように。結局何も残せなかったと思いながら脱力感に身を任せて瞳を閉じていくと頭の中にこれまでの走馬灯が巡る。

 幼い頃父親に叱られたとき、穏やかな父が拳骨をしてきたこと。家族で初めてカラオケに行ったとき、父親に歌い方を教えてもらったこと。壊れたテレビを叩けば直ると豪語する父親を母が必死に止めたこと。

 中学の時、クラスでグループを作る時何時も余った。こはねと会ったのはその時だったな。高校でまで交流が続くと思わなかった。

 そして何より、仮面ライダーになったのは驚きだ。平凡な人生だったが、最後に1つ普通とは違う体験が出来たと思う。意識を手放そうとした時、同時に叫ぶ声が聞こえる。

 

 

 

 「「「変身!!!」」」

 『LETS ACTIVE WING!!』

 『MY LOCK ARM!!』

 『START ABILITY LEGGINGS!!』

 「っ!」

 

 

 駆けつけた翼達がその身を仮面ライダーへと変化させるとロードに向かって走っていく。手放そうとしていた意識がハッキリとし、地面に手をついて立ち上がろうとする。

 鋭い痛みが走り、上手く力が入らずガクガクと腕を震わせながら何とか起き上がろうとしているとこはねと冬弥が駆け寄ってくる。

 

 

 「「兜くん/兜!!」」

 「二人とも…!」

 「酷い怪我だ…!ここは危ない、一度離れよう」

 「それじゃセカイに…」

 

 

 携帯を取り出したこはねの腕をまだ血のあまりついていない右手でつかむ。というより左半身はあまり感覚がないのだ、一応動くことを確認しながら口を開く。

 

 

 「皆を置いて逃げられない…前に4人でも勝てなかったんだ、3人で勝てるわけない…」

 「兜くん…」

 「おーい!みんなー!!」

 

 

 何とか戦おうとオーズスフィアなども取り出すがこちらは音すらならない。他に手段がないが思考を巡らせようとするが血が足りないのか上手く頭が回らないでいると杏と彰人が走ってくる。

 その手には救急箱が握られておりここで誰かが怪我をしていても大丈夫なように備えてきてくれたようだ。

 

 

 「うわ、酷い怪我!持ってきて正解だった!」

 「頭割れてんのか…?取り敢えず包帯巻くぞ、こっち来い」

 

 

 合流するや否やすぐに治療を始めようとする二人に龍我は俯く。

 

 

 「おい、何やってんだ。早く…」

 「どうしてそこまでしてくれるんだ…首突っ込むことなんかないのに」

 「あぁ?」

 

 

 予想外の反応に彰人は戸惑う。以前喫茶店で自分に対して啖呵を切っていた彼は何処に行ったのか、喝でも入れてやろうかと思うと先にこはねが口を開く。

 

 

 「そんなに難しい理由なんかないよ、きっと兜くんもそうだと思う」

 「僕と…?」

 

 

 こはねの言葉がよくわからない。これまで戦ってきた事の理由なんだろうが、そんなのは自分の為だ。以前こはねにも話したはずの内容だが忘れてしまったのだろうか。

 そんな事を考えているとさらに予想外の言葉が返ってくる。

 

 

 「私達が兜くんがやめてって言っても一緒に居るのは自分のためだよ、自分がしたいからしてるだけなの」

 「自分がしたいから…」

 

 

 オウム返しをする龍我に対しこはねは優しく笑いながら話し続ける。かつて自分もやりたい事が見つからずに悩んだ、やっと見つけたと思った時に自分にその資格があるかも分からなくなった。

 だがその中で教えてもらった、何が一番大事なのかを。

 

 

 「自分がやりたいって思ったその気持ちが一番大事なんだと思う。自分なんかが出来るのかとかやっていいのかって思っちゃっても…やりたいって思ったならやっていいんだよ。だから私は兜くんを助ける、そうしたいから」

 「………」

 

 

 こはねの言葉に初めて変身した時の事を思い出す。スフィアが反応せず怪人の攻撃に顔を切り裂かれ激痛に悶えながらもう逃げようかとも思った。しかしそれでも戦ったのはあの親子を守りたかったからだ、単純すぎて気づきもしなかった。

 

 

 「兜、今じゃないかも知れないが礼を言わせてくれ。そうしたいからな」

 「青柳くん…」

 「お前が背中を押してくれたおかげで彰人と相棒に戻れた、だから今度は俺がお前の背中を押そう」

 

 

 冬弥はそう言うと龍我の背中を手で支え語りかける。

 

 

 「今回の事で気付けた、こちらの言い分なんか気にせず振り回してでも手を掴み続けようとしてくれる仲間の大切さを。お前にとって、それは翼たちだと思う」

 「でも…」

 「お前の気持ちは分かる、自分の都合で大切な人を巻き込みたくないのを。だが小豆沢や宝田が言っていた通りだ、大事なのは自分の気持ちなんだ。だから…思いっ切りぶつかってみるといい」

 

 

 冬弥の言葉に戦う3人の方を見る。やはりロードの相手は厳しく苦戦している。彼らを助けたいなら自分もライダーになるしかない、しかしそのためには自分の想いに向き合うことが必要だ。

 踏ん切りがつかずにいると背中を勢いよく叩かれる。

 

 

 「ったく!しょうがねぇな!俺からも1つ言ってやる!」

 「東雲くん…」

 「お前、前に俺に言ったこと覚えてるか?」

 

 

 彰人とそれほど喋ったこともないがピンと来ない。このタイミングで思い出すことなどあっただろうか。

 

 

 「小豆沢のやつは俺がおもってるほど馬鹿でも鈍感でもない、覚悟を持って音楽をやってるはずだって言ったよな」

 「そんな事言ってくれてたんだ…」

 「…まぁ」

 

 

 本人の目の前で言われると少し恥ずかしい。そんな龍我の態度に気付かず彰人は笑みを浮かべながら続ける。

 

 

 「お前の言ってることは正しかった、こいつは半端な気持ちでやってるわけじゃねぇ。だから俺からもお前にあいつらの事を教えてやる」

 「みんなの…?」

 「疾風のやつはムカつくが自分に嘘だけはつかねぇ、あいつがやるつってんならあいつが心から望むことで誰に何言われても譲らねぇ。ルミのやつも変なやつだが一人で抱え込んでるやつをほっとかねぇし宝田もお人好しだ」

 

 

 口から次々とまくし立てるように言葉を吐いていく、粗方言い尽くすと指を龍我に差しながら告げる。

 

 

 「そんでもって3人ともこのストリートで認められるレベルにまで登りつめたタフな奴らだ!お前に心配されるほどやわじゃねぇ!」

 「!!」

 

 

 彰人は強い意志を感じさせる口調で言い切る。それを受けた龍我は段々と身体に熱がこもっていくのを感じる。

 胸の中に秘めようとしていた考えが肯定されてしまい飛び出そうとしてきている。それを止める理由が思いついても先程のこはねと冬弥の言葉が蘇る、今自分はそうしたいと思ってしまっているのだ。

 

 

 「ねぇそろそろまずそうだよ!一旦全員でセカイに引っ込む!?」

 「いや、その必要はねぇ」

 「っ!兜くん!」

 

 

 ひび割れたメガネを外すと踏みつけて潰す、こんなの着けてられない。血に染まり感覚のない左手を動かすと顔の左側から拭うように髪をかき上げる。

 片目が血で真っ赤に染まるのを感じながらその手を握りしめる。

 

 

 「ドライバーは動くのか…?」

 「ドライバーが動くか?そんなのはなぁ…」

 

 

 握った腕を大きく振り上げる、走馬灯でみた父親が教えてくれた方法。それを今この場で実践してみせよう。

 

 

 「叩けば直るんだよ!!」

 

 

 バキッ!!!

 

 

 思いっ切り殴りつけるとスフィアのパーツが外れ地面に落ちて散らばる。叩かれたショックからか機能していなかったドライバーが音声を鳴らし始める。

 

 

 『ERROR ERROR! ERROR?』

 「おい、完全に壊れてねぇか!?」

 「ッ、危ない!」 

 

 

 不安になってしまう音声をドライバーが鳴らす中、杏が戦況の変化に気づく。

 戦いの中でカノンが放った必殺の一撃をロードがそのマントで弾き飛ばし、それがこちらに向かって飛んでくる。インパルスが気づいて跳んできているが到底間に合わない。

 杏がこはねを庇うように抱きつき彰人が携帯でセカイに逃げ込もうとした時、光弾に向かって龍我が手を突き出す。   

 

 

 「うぉぉぉぉお!!!」

 

 

 光弾が腕に当たる直前、地面に落ちたパーツが腕に装着され光弾を受け止める。他の部位にも次々とパーツが装着される中構わず鳴り続けるERROR音に自分の意志を示すように叫ぶ。

 

 

 「変……身!!!」

 

 

 叫ぶと同時に光弾が爆発し、龍我が煙に包まれる。次の瞬間緑色の目が光ったと思うと煙が吹き飛ばされ中から腕を振るった状態のレックスが現れる。

 

 

 『CHANGE THE FANG!!』

 

 

 完全に変身が終わってからベルトがなる。少し不安が残るようなベルトの状態にこはね達が背中に汗をかいているとレックスの目の光が消える。

 何事かと怪しんでいると左目が赤く、右目が金に輝く。

 

 

 「やっぱりこいつを着てると頭がスッキリするぜ…身体も随分楽になった」

 

 

 全身に力がみなぎっていくのを感じる。胸の鼓動が速くなる、気分が高揚しているのか、死への恐怖か、単純に怪我の影響なのかもしれないがそれら全てが心地良い。

 後ろを振り向くとこはね達に声をかける。

 

 

 「セカイに戻って見物してろ、ここから大反撃だ」

 「…うん、わかった。あ、それとまだ言えてなかったんだけど」

 「?」

 

 

 まだなにかあるのかと首をかしげるとこはねは笑顔を見せる。

 

 

 「イメチェン、似合ってると思うよ!」

 「…そっちもな」

 

 

 その言葉を最後にこはね達はセカイに消える。光が収まるのを見届けるとロードの方を向き、ローラーを展開する。

 ロードもこちらに気づいており左手のガトリングを乱射してくる。迫りくる弾丸を眺めながら口角をニッと上げると腰を落として戦闘体勢をとる。

 

 

 「さぁ、行くぜぇっ!!」

 

 

 蛇行しながら弾丸を避ける、このまま距離を詰めることも出来るがそれじゃつまらない。スピードが乗ってきたところで弾丸の雨の中に突っ込む、しゃがむ、弾く、回るといった軽快な動きで弾丸をさけると身体を上下反転させ左手で地面を押し出すように跳ぶ。

 

 

 『FINISH THE FANG!!』

 

 

 エネルギーが何時ものように右手に充填されていく、だがこれではロードの守りを突破することなど出来ない。手を開いた状態から貫手に変化させると右手が高速で回転し始める。

 迎撃の為に振るわれた大剣に向かって足のローラーを向ける、接触した瞬間高速で回りだし大剣を添いながら腕を駆け上がりロードの頭部にたどり着く。

 

 

 「レックスビット…ドリルフィンガァー!!!」

 

 

 顔面に向けて貫手を突き出す。高速回転するエネルギーが火花を散らしながらロードを貫こうとする。摩擦により装甲が赤熱化していくと限界を迎え爆発を起こす。

 反動を利用しながら回転し着地する。

 

 

 「っと!手応えあったぜ」

 

 

 爆発の煙が晴れるとロードの顔は片目が吹き飛び内部が露出している。まともなダメージが入ったことに流れが向いてきたのを感じていると頭だけが外れ空に飛んでいき泥に包まれ消える。

 首無しになったロードの頭があった位置からも泥が吹き出し収まると新しい頭が装着されている。

 

 

 「無かったわ」

 「でも調子は戻ってきたんじゃない?」

 

 

 空からインパルスが降りてくる。確かにダメージこそなかったことにされたが攻勢に出ているのはコチラだ、このまま攻め切ろうと考えていたところで力が抜け地面に膝を着く。

 

 

 「ッ大丈夫!?」

 「あんまり長くは持たないかもな…」

 

 

 ライダーシステムが痛みを抑え動きも補助してくれていたが傷が治ったわけでも流れた血が戻ったわけでもない。

 むしろ今もスーツの下では血が流れ続けておりその内動けなくなるだろう。勝負を急ぐ必要がある、そして最善の策は1つだ。

 

 

 「…翼、ルミ、宝田。虫のいい話何だが…1つ頼み事をしていいか」

 「何?」

 

 

 インパルスと同じようにカノンとレゾードも集まってくる、正直隙だらけのはずだがロードの追撃はない。あれを操縦している何者かのやる気がないのか何らかの目的があるのか分からないが今は好都合だ。

 緊張をほぐすように深呼吸すると口を開く。

 

 

 「俺1人じゃあいつを倒せない、一緒に戦って欲しい」

 「…確かに虫のいい話だね」

 

 

 その言葉にレックスは黙る。戦いに巻き込んだ上で散々好き勝手に振り回して来たのだからしょうがない。何も言えないでいるとデコに強烈な衝撃が走る。

 前を見るとインパルスの手がこちらに向けて開いている、どうもデコピンをされたらしい。ライダーの力でやられただけあり中々の激痛だ。

 

 

 「でもいいよ、正直は美徳ってね」

 「ふっふ〜ん、水に流してあげましょう。器の拾いお姉さんだからね」

 「私も許すよ、許してあげたいから」

 

 

 3人の言葉を受け止めるとロードの方に向き直る。礼を言うのも謝罪もあとに回そう、あまりに伝えたいことが多すぎる。

 示し合わせたわけでもないのに同じタイミングでベルトを外すと空に投げ叫ぶ。

 

 

 「「「「ライドイン!!」」」」

 

 

 それぞれのドライバーに光となって4人が吸い込まれる。光に包まれ服装が変わり、龍我は手袋をはめ、翼はゴーグルを頭に付け直し、ルミはウィンクと共にバイザーをはめ、瑠璃は長い髪を束ねる。

 何時もならこれで終わりだが龍我の前に何かのケースが現れ、中身を確認しようと手に取り開く。

 

 

 「気が利くじゃねぇか!」

 

 

 中に入っていたもの、金と赤のカラーコンタクトを目につける。すると身体の血が剥がれていきスカーフへと変わると首に巻きつけられる。

 今度こそ着替えが完了し、コックピットへと転送される。

 

 

 『ダイナミック・ファング!!』

 『ファスト・ウィング!!』

 『アーム・タンク!!』

 『レギンス・ブレード!!』

 

 

 大地に恐竜と戦車が降り立ち、その周りを戦闘機と大剣が飛ぶ。それぞれの変形を確認すると龍我はレバーを操作し叫ぶ。

 

 

 「ダイナミックフォーメーション!」

 

 

 モニターの画面に『DYNAMIC FORMATION』の文字が表示されると外側で変化が起きる。

 恐竜の尻尾が外れ足が折りたたまれるとコネクタが露出する。恐竜の頭が胴体にくっつくように首が収納されると胴体から上に向かって人間の頭が飛び出す。

 戦車の砲身が分離し車体が半分に割れると恐竜の腕が左右に伸ばされそこにキャタピラがかぶさると先端から巨大な手が生えてくる。

 大剣は刃部分が外れると2つに別れ足のコネクタに接続されると先が折れて足になる。

 戦闘機は尻尾があった位置にそのままくっつき尻尾は大剣の持ち手とくっつき新たな刃となる。

 砲身が折り曲がり持ち手となるとそこを掴み銃にする。

 久々の合体に高揚しながらその名を叫ぶ。

 

 

 「「「「完全合体機人!!ダイナミック・ジン!!」」」」

 

 

 その巨体を翻しながらポーズを決めるダイナミック・ジンの姿をロードのカメラがとらえる。

 怪人のセカイでモニター越しにそれを見ている怜は口元に大きな笑みを浮かべる。

 

 

 「そうだ…その力だ!そいつを倒さないと意味がない!!」

 

 

 望みが果たされた事に歓喜の声を上げる。待ちに待った瞬間に怜が打ち震える中、ダイナミック・ジンのコックピットでは龍我が首を傾げている。

 

 

 「……何でお前らも叫んでんだ?」

 「次は僕も叫ぼうと思ってたんだよね」

 「考えることはみんな同じやな〜」

 「やっぱ巨大ロボならカッコよく名乗らないとね!」

 「なら、次も合わせろよ!」

 

 

 好戦的な笑みを浮かべながらハンドルを操作するとジンが大剣をふりあげながらロードに向かって突き進む。

 戦いの再開を告げるように4人は同時に叫ぶ。

 

 

 「「「「ダイナミック・ジン!レディーーゴーーー!!!」」」」

 

 

 勢いよく振るわれた両者の大剣同士がぶつかり、ロードの剣だけが弾かれる。体勢を崩したロードを思いっ切り蹴り飛ばすと銃口を向けビームを撃ち出す。

 それに対して電流を帯びたマントを防御の為に纏うも一撃で消し飛ばされる。マントがなくなり剥き出しになったジェットから炎を噴き出し空に上がりガトリングを向ける、しかし既にそこにジンはいない。

 次の瞬間には背中に強烈な衝撃が走り地面に叩きつけられる。すぐに顔を向けると同じ様に空に飛び上がっていたジンが足を突きだしていた。

 

 

 「バカな…奴らのデータは完璧に収集しているのに!」

 『ダイナミック・ジンの出力は単純に4人乗っているから4倍というわけじゃない!!』

 

 

 通信が繋がっているわけでもないのに怜とセカイの会話が奇跡的に成立する。MEIKOの店に映像を表示させてこはね達と共に応援しながら何時も通りジンのコックピットにも声を飛ばして解説する。

 

 

 『大事なのは中に乗っている4人の心がどれだけシンクロしているか!今、完全に4人の心は1つになっている!』

 「これなら5倍、10倍、いやもうめんどくさい!超最強だ!」

 

 

 上昇した出力をフルに発揮し、光の軌跡を描きながらロードに対して突っ込む。スピードを乗せた大剣による斬撃でその身を切り裂こうとした時、ロードの身体を紫のオーラが包み込み自身の剣でジンの剣を受け止めると今度は逆に吹き飛ばす。

 

 

 「ッ!?」

 「弾かれた!?」

 「急に相手の出力が上がった!」

 

 

 吹き飛ばされ体勢を崩した所に先程の意趣返しとばかりに蹴りが飛んできたのを回避するため空に逃げる。それに対しあちらも飛び上がり戦いは空中へとその場を移す。

 2色の軌跡が何度も交差しあいながら火花を散らす中怪人のセカイでは巨大な丸い炉のようなものが妖しく輝いている。

 

 

 「ダイナミック・ジンは一人乗りから4人乗りに変わった際に出力が向上した…だがだからといってそれらに因果関係があるとは限らない」

 「仮に他に原因があってまた出力が上がった時の為の備えがこの外付けのエネルギー炉なのね」

 「遠隔でロードにエネルギーを供給して出力を向上させられる。本来はセカイの泥を加工してピリオドシリーズの素材に加工するためのものだが…燃料としても一級品だ」

 

 

 空中で勢いよく2体がお互いの剣を押し付け合う。一瞬の拮抗のあとジンが弾き飛ばされ地面に着地する、まだ大きなダメージは負ってないがこのままではジリ貧だ。

 なんとか攻勢に出ようとした時龍我が口から血を吐く。

 

 

 「ぐっ……!?」

 「兜くん!」

 「機体の出力が上がった分かかる負担も大きくなってる!このままじゃ身体の方が持たない!」

 「じゃあどうするの!?」

 

 

 焦りながら翼は頭を回す。勝負を一気に決めるなら必殺技を撃つことだろう、相手はおそらくこちらを正面から倒すことに執着していることから互いの最大出力のぶつけ合いをしてくるはず。

 問題はその打ち合いに勝てるかどうかだ。

 

 

 「弱気な事考えるなよ…出力が落ちる…!」

 「兜くん…」

 

 

 翼の考えている事を察したのか龍我が口を開く。身体の限界とは裏腹に奥底から熱が湧き上がってくるのを感じる。頭の傷から出血しポタポタとハンドルを汚すとその部分が赤く輝き始めモニターに新たな文字が浮かび上がる。

 

 

 「相手がどれだけ強くてこっちがボロボロだろうがこの胸の感情に従って戦う!それがこいつの力を引き出す方法だ!!」

 

 

 叫びながらもう一度合体の為のレバーを押し込む。コックピットから光が溢れるとダイナミック・ジンがバラバラになり再び変形し始める。

 

 

 「ファング・フォーメーション!!」

 

 

 腰が百八十度回転すると足が通常とは逆向きに曲がる。腕から両手が外れ巨大化したレックスの右手と外装パーツから構成された左手がかわりに装着され一対の爪となる。

 外れた腕は足の先に装着されしっかりと地面をグリップし大剣に変形していた尻尾が銃の砲身に持ち手を突っ込み1つとなってから元々の位置に戻る。

 羽は分割されるとパーツごとを光の膜が繋げ竜の羽根のようになる。

 胸に飾られていた恐竜の頭が首に移動すると咆哮を上げそれに続いて龍我も叫ぶ。

 

 

 「灼熱合体機龍!!バーニング・ドレイク!!!」

 

 

 大空を見上げながら咆哮を上げる機械の龍をロードは見つめる。ここに来て完全に予想外の展開だ、何かのスフィアをつかった様子もない。

 様子を伺い攻めずにいるが実はバーニング・ドレイク側もあまりいい状況ではなかった。変形した新たな形態だがパワーもスピードもダイナミック・ジンに劣っている。

 この形態の特色は1つだけ、それを全力でぶつけるしかない。息を整えると気合を込めて叫ぶ。

 

 

 「行くぞ!!」

 「「「了解!!」」」

 

 

 4人の意思に呼応するかの様にドレイクが叫ぶとその口にエネルギーがチャージされていく、それに対してロードは胸部を展開し内部の宝玉に光が灯る。

 予想通り正面からの打ち合いをしてくれるらしい、お互いエネルギーが溜まりきったと同時に4人は叫ぶ。

 

 

 「「「「テラクロス…フレアァァァ!!!」」」」

 

 

 ドレイクの口から放たれた火炎とロードの光線がぶつかり合う。エネルギーの余波が周囲を破壊し、ドレイクが立っている地面がどんどん凹んでいく。

 互いの攻撃は今は互角、しかし実際は無尽蔵に外部からエネルギーを供給されているロードがこのままなら有利だ。

 しかし、バーニング・ドレイクにはダイナミック・ジンには無かった唯一の能力がある。4人の想いがその能力を引き出す。

 

 

 「「「「うおぉぉぉ!!!」」」」

 

 

 火炎の勢いが強まり、光線を押し返していく。それに対抗するようにロードも出力を上げ再び拮抗させるも段々とまた押し返されていく。

 段々その場にとどまることが出来ず後ろに下がっていき負荷のかかった身体から火花が散り始める。

 

 

「「「「いっけぇぇぇぇ!!!!」」」」

 

 

 完全に火炎が光線を押し切り、ロードを飲み込むと大規模な爆発を起こしチリ1つ残さず消し飛ばす。

 これこそがこの形態の特性、搭乗者の想いに呼応しその出力を何倍にも引き上げる一撃必殺形態ーーバーニング・ドレイクが勝利の咆哮を上げると中の龍我も叫ぶ。

 

 

 「俺の!いや……」

 

 

 腕を掲げた龍我は一瞬考えると周りを見回したあと立ち上がって叫ぶ。

 

 

 「俺たちの勝ちだ!!」

 

 

 高らかに宣言する龍我に翼達も笑みを浮かべる。ひとまずは一件落着、そう思っった時龍我が大きな音を出しながら倒れる。

 

 

 「きゅう……」

 「わぁーー!!限界だぁ!」

 「ちょ、病院向かおう病院!」

 「待って!一旦座らせないとえらいことになるって!」

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 「あんな奥の手があった…いや、覚醒か?計算をやり直さないとな」

 

 

 ロードを動かしていたハンドルから手を話しながらブツブツと喋る。負けた直後にしては冷静なように見える怜に対してニヤニヤとしながら女が話しかける。

 

 

 「随分…私好みの顔ね」

 「!!」

 

 

 その言葉の意味することを知っている怜は鋭い目で睨みつける。一触即発の空気が流れるも突然湯気が噴き出すような音がする。

 

 

 「……完成したか」

 

 

 男は煙の出ている方に向かうとそこには何かの装置がある。その扉を開けると中から瑠璃と同じツカイドライバーが現れる。

 しかしその姿は至る所に改造が施されております彼が手を加えたことが分かる。本来なら使うつもりはなかった、一から自分で作った技術で目的を達成するつもりだったが予定変更だ。

 

 

 「もう少し実験を楽しもうじゃないか、翼」

 

 

 




設定
 灼熱合体機龍バーニング・ドレイク
 龍我の決意が強まった結果生まれた新たな合体形態。本来はセカイドライバーで変身する戦士に各種ロボが合体する真紅の竜になるが仕様変更の結果色は据え置きでカラフル。
 ステータスはダイナミック・ジンに劣るものの搭乗者の想いによる出力の上昇の幅が非常に広い。


 仮面ライダーインパルス ダブルセレクト
 仮面ライダーダブルの力を宿した形態。六本のメモリの力を自在に使えるが特にサイクロンメモリとの相性がいい。


 ロードピリオド
 対機人用機械王。怜の作った最強のピリオドシリーズ、レックス達をイメージした4体のピリオドシリーズが合体した特大のロボ。
 他のピリオドシリーズとは違い今回限りではなく今後繰り返しアップデートしていくのが想定されている。


次回予告
 『合体!ストリートライダース編エピローグ&おまけ短編集』
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