プロジェクトセカイ feat  仮面ライダー   作:ミッツー116

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新章開幕、話を短くして更新頻度を上げれないか試してみようと思います。取り敢えず今回は無理でした


第一話

 

 

 何処かの遊園地、親子やカップル、友達同士の団体などが笑顔を浮かべながら楽しく過ごしている。その中を一人背の高い端正な顔出ちをした青年が本を手に歩いている。

 青年が立ち止まり手に持っている本を開くと突然辺りが暗くなり青年を中心にした部分だけが真上から照らされる。まるで舞台の上の演出のような光景が広がる中青年は何処かに向けて喋り出す。

 

 

 「ボーイミーツガール、という言葉をご存じでしょうか。いわゆる物語の始まり方の形式の一つであり、男女の出会いがきっかけで動き出す物を指します」

 

 

 青年が開いた本は中世ファンタジーの冒険譚のようだ、英雄に憧れる自信家の青年が一人の女性と出会うところから始まり2人で夢を追う旅を始める。

 

 

 「その形式から恋愛を主題にした者に多く見られる手法であり、実際にそれら全般を指す言葉として使われてもいました」

 

 

 2人は旅の中でどんどん仲間を増やしていく。故郷の復興を目指す兄妹、他者へ期待することをやめた魔術師、歌を歌えない歌手、人々に馴染めない異形、無気力な噺家。出会いの度に困難があり、それらを乗り越えることで青年は強くなっていく。

 

 

 「ですが時が進むに連れて男女の出会いから始まる物語全般を指す物になりました。戦いに巻き込まれたり、妙な頼み事をされ事件が起こったり、女の正体がお化けだったり」

 

 

 成長した青年はいよいよ最大の壁に直面する。仲間たちと共に立ち向かおうとした時、突然大きな声が聞こえる。

 

 

 「あのすみません!第2会議室ってどこですか!?」

 

 

 同時に世界が元通りの明るさになり振り向くとブロンドと空色の入り混じった独特な髪色の少女が焦った様子で道を尋ねてくる。

 先程までと違い年相応の表情を見せながら青年は答える。

 

 

 「えっと…あっち」

 「あっち!司くん!あっちですってー!!」

 

 

 そういうと女は一気に走り去っていく。その後を司と呼ばれた青年がついて行くがと突然振り返りこちらに戻ってくる。

 

 

 「突然失礼した!親切に教えてくれてどうもありがとう!それでは!」

 「ありがとうございましたー!!」

 

 

 遠方から自身お礼を叫ぶ少女と後を追う青年の姿を見送ると再び世界が暗くなる。

 手に持った本を再び広げようとし…何故か閉じると口を開く。

 

 

 「この物語もいわゆるボーイミーツガール、彼が一人の女性と出会うことから始まります。そこから…」

 

 

 そこから先の言葉を紡ぐ前にスポットライトが消え再び世界が元に戻る。青年は芝居がかった態度をやめると頭をかきながら出口に向かい歩き出す。

 

 

 「妙な奴らだったな…」

 

 

 第一話  「序章 ステージの出会い」

 

 

 春の穏やかな陽気が立ち込めるある日の朝。民家の上に止まった鳥たちが日光を満喫している平和そのものの空間、そんなときに家が揺れるほどの大声が響く。

 

 

 「寝坊したーーー!!!!」

 

 

 ドタドタと言う音が外にまで響き、家が右に左に揺れる。収まったと思うと勢いよくドアが開き食パンを口に加えた少女が勢いよく飛び出す。

 

 

 「お父さんたちも起こしてくれればいいのに〜!!」

 

 『戴天 青空』

 神山高校に通う高校2年生、今日はテーマパーク『フェニックスワンダーランド』のバイト初日。遅刻は当然まずい。

 

 

 「こっちだー!!!急げー!!!」

 

 

 走り込む先にとても大きな声で叫ぶ金髪の青年がいる。その姿を目視すると青空も声を張りながら返事をする。

 

 

 「司くーーん!!遅れてすいませーん!!」

 「話は後だー!!!急げー!!!」

 

 

 『天馬 司』

 同じく神山高校2年生でバイト初日。待ち合わせを律義に待ち続けていた。

 

 

 「「うぉぉぉぉぉ!!!!」」

 

 

 叫びながら走り続けると目的地のテーマパークが見えてくる。受付で今日からバイトなことを告げると関係者用の入り口を通され中に入る。チケットを買わずに遊園地に入るのは何だか変な感じだ。

 

 

 「ハァッ…!ハァッ…!案外早くついたな…」

 「遅刻に焦って走ったら逆に余裕で着くやつですね……!」

 「ふぅっ!よしっ、挨拶の前に息を整えるぞ!」

 「はいっ!」

 「「スゥ~…ハァ〜…スゥ~…ハァ〜…」」

 

 

 2人揃って大きく手を広げながら深呼吸をする。酸素を取り込み、身体の疲労感がリセットされている感覚に身を委ねていると犬の着ぐるみに肩を掴まれる。

 

 

 「……幻覚?」

 「現実です。天馬司様と戴天青空様ですね、案内役を仰せつかっております。こちらへ」

 「何故犬が…」

 「やっぱ夢と希望のフェニックスワンダーランドともなるとこんな感じなんですかね」

 

 

 予想外の案内人、いや案内犬の先導に従いパーク内を歩く。休日なこともあり中々の人々がパークを満喫している。たくさんの笑顔に溢れた光景に司は自分もこの光景を作り出す一助になってみせると決意を新たにしていると草が生い茂ったエリアにたどり着く。

 

 

 「こちらへ」

 「な、こんなところにあるのか!?」

 「秘密基地みたいですね、楽しそう〜」

 「む、虫とかいないだろうな…」

 

 

 先に入っていた青空を追いかけ司も草のなかに入る。枝や葉が目や鼻をくすぐる感覚に苦しみながら抜けると小さなステージに出る。

 

 

 「わ〜、ファンタジー映画みた〜い!」

 「さ、錆びれたステージだな…」

 

 

 その言葉通りところどころ錆びていたり塗装が剥げてしまっている。なぜこんなところが待ち合わせ場所に指定されているのか分からず疑問に思っていると元気な声が響く。

 

 

 「とーーーう!!」

 

 

 上空から聞こえた声に2人は顔を上げる。そこにはピンク色の高速回転する謎の物体が落下してきており2人はおもわず叫び声を上げながら後退する。

 

 

 「のわーー!!!」

 「な、何!?何ですか!!」

 

 

 大きな音を上げながらピンク色の物体Xは地面に激突し土煙を上げる。突然の展開に2人が戸惑っていると煙の中から女の子が飛び出てくる。

 

 

 「はじめまして!やっと会えたね!司くん!青空ちゃん!」

 「はじめまして!」

 「な、なんだお前は…なぜ俺たちの名前を…」

 

 

 こちらの名前を呼びながら挨拶をしてくる少女に戸惑う司を余所に青空は挨拶を返す。着ているピンク色の衣装からして先程の回転していた物体はこの子なのだろう、運動神経が凄いなと関心していると少女が口を開く。

 

 『鳳 えむ』

 フェニックスワンダーランドを経営する鳳一族の末っ子。

 

 

 「今日から一緒にこのステージで頑張ろーね!二人とも!」

 「はい!」

 「今日から?このステージで?……」

 

 

 少女の言葉を反復しながら思考を巡らせる。今日からこのステージでとはどういう意味だろう、自分はフェニックスワンダーランドのショーキャストのバイト面接を受けた、ここも恐らくパーク内のショーステージだろう、以上のことから考えられるのは自分が働くのはこのボロステージということだろうか。

 

 

 「なにーーーー!!!!」

 「わー!!おっきい声〜!!」

 「気合十分ですね司くん!!」

 「違うわ!!」

 

 

 ズレた認識をする青空に対してツッコミながら少女に目を向ける。どういうことなのか詳しい説明を求めなければいけない、自分には大きな目標があり今回のバイトはそのための一歩なのだ。余計な寄り道をするつもりはない。

 

 

 「ここで頑張るとはどういう意味だ!!」

 「私、鳳えむ!このワンダーステージでとっても楽しいわんだほいなショーをやってるんだ!」

 「これはご丁寧に…私は戴天青空!面白そうだから司くんにくっついて行動しています!」

 「自己紹介してる場合か!!なぜこの俺がこんなところに呼ばれたのか説明しろと言っているんだ!!」

 「えっとね〜、この間の面接の時に〜…」

 

 

 そういうとえむは回想に入る。頭から雲のようなマークが浮かび上がるとそのなかに情景が浮かび上がり2人は覗き込む。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 (ふっふっふ!ついに来たぞこの日が!俺がフェニックスワンダーランドのショーキャストの面接に合格し、未来のスターへの一歩を踏み出すときが!!)

 「次のグループの方々〜、お入りくださ〜い」

 「あ、呼ばれましたよ司くん」

 「うむ!!!」

 

 

 4月の頭、2人はフェニックスワンダーランドのショーキャスト面接に来ていた。病弱な妹の面会などの時間を確保するためにこういった場に応募してこなかったが病状が改善されこの春からの高校にも通えることになった、それを機に自分も夢へとついに踏み出したのだ。

 青空は面白そうだからとついてきた、多分落ちるだろうと放置したが同じグループになるとは。

 

 

 「それでは、自己紹介と簡単なアピールをよろしくお願いします」

 (肝心なのは第一印象だ…ここで俺という存在をアピールし、面接官のハートを掴む!!)

 

 

 頭の中で戦略を組み立てると勢いよく立ち上がり、ポーズを取る。

 

 

 「天駆けるペガサスとかき天馬!!世界を司るとかき司!!世界のスターとなる男!!天馬司!!!」

 「…は?」

 

 

 高らかな宣言に口をポカンと開けた面接官の反応を見て司は好印象と感じだのかそのまま続ける。

 

 

 「輝きすぎる男天馬司!!このフェニックスワンダーランドの一員になった暁には!!素晴らしいショーを行い今よりもさらに華々しい輝きを放つことをお約束します!!天馬司!!天馬司をよろしくお願いします!!!」

 「おー」

 「あ、ありがとうございます。席にどうぞ…」

 「はい!!!(決まった…)」

 

 

 ほかの部屋にまで響くのではないかというレベルの大声で叫び声続ける司に1人青空だけが拍手を送る。面接官は対象的に静かに椅子に座るように促す。

 

 

 「えーそれでは次の方どうぞ」

 「天を戴き青空を舞う!エントリーナンバー2番!!戴天青空です!受かったらこの遊園地に来る人全員、いや世界中を笑顔にするショーをすることをお約束します!!」

 「席にどうぞ」

 「はい!(決まった…)」

 

 先人に習った自己紹介に手応えを感じながら席に座る。そんな光景をドアの陰から見ている人物が1人。

 

 

 「わぁ〜…キラキラピカピカって感じ…!」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 「それでお兄ちゃんに聞いたら2人は不合格だったらしいからワンダーステージに呼んでいいか聞いたら良いって言ってくれたんだー!!」

 「さらっと落ちてること知らされた!」

 「バカな…この俺が落ちただと…」

 

 

 抜群の手応えを感じていた面接が失敗に終わっていたことに膝から崩れ落ちる司。一方あまり気にしていないのかあちゃーと頭を押さえるのみの青空、その時何かに気づいたのか口を開こうとする。

 

 

 「ん?お兄ちゃんに聞いたってどういう…」

 「いや!それどころではない!!俺には輝かしい目標があるのだ!!」

 

 

 言葉を遮りながら立ち上がった司が手を掲げながら空を指さす。

 

 

 「どこ指してるんですか?なんかあります?」

 「未来だ!!幼い頃見に行ったショーステージ…そこで見た素晴らしい役者!!あのような舞台の上で輝く大スターになる!!それがこの俺の未来なのだー!!」

 「「おー」」

 「ということでこんなところにいる時間はない、失礼する」

 

 再び高らかに宣言する司に2人はおもわず拍手をする。普段ならこの拍手をしばらく浴びるところだが今はそれどころではないと言わんばかりに司はその場を去ろうとする。

 後ろを向きガラ空きになった背中、そこにえむが飛びつく。

 

 

 「ダメー!!」

 「のわーー!!離せーー!!」

 「一緒にショーやろーよー!!」

 「やらん!!青空!こいつを離すのを手伝え!!」

 「よーし、では一旦離れて向かい合ってください。それで腰を落として…いきますよ」

 

 

 向かい合った2人の間に手を差し込むと振り下ろして叫ぶ。

 

 

 「はっけよいのこった!!」

 「とりゃー!!」

 「何でだー!!のわー!!」

 

 

 何故か体勢を相撲に誘導され一戦させられる。流石に女子相手に力を発揮できず手加減するとえむの高い身体能力で吹き飛ばされる。

 

 

 「勝者〜えむの〜富士〜」

 「ごっちゃんです!」

 「ふざけるなー!!ていうか何でお前も一緒になってるんだ!!」

 

 

 行司ごっこをする青空に怒りの咆哮をあげる。先程の自分の真面目な話がまるで響いてないことに憤慨するが謎の舞に夢中な青空は気づかない。

 一言文句を言ってやろうと近づくと青空が何かを見つける。

 

 

 「あれ?何でしょうあそこの」

 「何!?何がだ!」

 「ほらあそこの」

 

 

 指差す方向にあるのはマンホールだ。そこからポコポコと黒い泡のようなものが浮かんでは弾ける。

 

 

 「経年劣化だろう、本当にボロいステージだな」

 「あんなのでたことないよ〜!も〜!」

 

 

 えむは困った様子でマンホールに向かって走っていく。その間にも泡の出る頻度は増え、泥のようなものが噴き出し始める。

 司が顔をしかめていたその時、青空の頭に頭痛が走る。

 

 

 「っ!?えむちゃん危ない!!」

 「ふぇ?」

 

 

 突然の叫び声にえむが振り向く。その瞬間泥が人のかたちを成すと短剣を手にえむの背中に襲いかかろうとする。こちらを向いたえむは気づいておらず、司と青空が助けに行こうとするが間に合わない。

 刃が突き立てられようとした時、新たな人影が間に割り込み泥人間を蹴り飛ばす。異常に気づいたえむは振り向くと割り込んだ人影に笑みを浮かべる。

 

 

 「お兄ちゃん!!」

 「やぁ、マイシスター。ごめんね、デートで遅刻しちゃった」

 

 『鳳神楽』

 えむの兄。今日は最近出来た新しい彼女とデートだったが顔合わせのためキャンセルになった。

 

 

 優しい笑顔をえむに向けながら神楽は手に持った銃を片手間に乱射する。放たれた弾丸は次々と生まれる泥人間を撃ち崩していくがそのなかの1体が大きく迂回するように走り出し射線を外れながら襲いかかるも神楽はえむの方を向いて気づかない。

 

 

 「おい!危ないぞ!」

 「え?」

 

 

 司の叫びに首を傾げるも敵の方を確認しようとしない。泥人間が飛び上がり刃を振りかざすとその頭を光の矢が撃ち抜く。

 

 

 「余所見で死にそうになるな馬鹿」

 「おやおや、来てたの?」

 「私もいるよー!」

 

 

 矢の飛んできた方向からボウガンのようなものを両手で持った青年が歩いてくる。その後ろから巨大な武器を持った少女が飛び出すと噴き出す泥を上から叩き潰し辺りに泥が飛び散る。

 泥がとび散り汚れてしまったTシャツにはナマケモノの絵と「ぐ~たら日和」という文字が描かれている。

 

 

 「これこそ文字通り湧きつぶし」

 「…潰せてないみたいだぞ」

 「ふぇ?」

 

 

 『宝田 翡翠』

 神山高校に通う2年生。

 『聖 ジェル』

 同じく神山高校の生徒。1年生。

 

 

 翡翠の言葉にジェルが辺りを見回すと飛びちった泥がひとりでに動き出すと集まり泥溜まりを作り出す。そこから再び泥人間が生み出されるのを眺めながらそれぞれ武器を再び構えると中から突然大きな声が響く。

 

 

 『フハハハ!!貴様らだな!最近我々を邪魔している奴らというのは!』

 「なに?」

 「この声…もしかして!」

 

 

 泥の中から鋭利な爪の生えた腕が現れ地面を掴む、中から這い出るように現れた影は爪に負けず鋭利な牙と前に長い顔。すこし曲がった腰からフワフワとした尻尾が生えた猟犬のような怪人、ハウンドノーネイムが現れる。

 

 

 「な、何なのだあれは…」

 「初めてのタイプだな」

 「泥人間より触っても汚れなそうで助かるね」

 「わ〜…!」

 

 

 謎の異形に司が慄き、翡翠と神楽が新たな敵に警戒を露わにするなかジェルだけは目をキラキラと輝かせる。

 

 

 「ついに!雑魚戦闘員じゃなくて怪人が出てきたよ2人とも!やっぱり仮面ライダーなら怪人と戦わないとだよね!」

 「喜ぶとこか?」

 「まぁ手応えはなかったしね」

 「か、仮面ライダー?」

 

 

 敵を前にして呑気な会話を続ける三人に戸惑いながらも聞き覚えのある単語におもわず反応してしまう。その言葉の意味を証明するようにそれぞれ懐から腕、銃、刀を模したバックルを取り出す。

 

 

 「さぁ、自分のかっこいいところを見せるとしようか」

 『ハカイドライバー!!』『パッション!!』

 「なるほど、フリだな」

 『ネライドライバー!!』『ジュエル!!』

 「さぁ行こうか!華麗に!激しく!」

 『ツカイドライバー!!』『クリア!!』

 

 

 ドライバーにスフィアを装填されると神楽はコンパクトに、翡翠は足を大きく開きながら大袈裟に、ジェルは両足を揃えキレのある動きでそれぞれ腕を十字に交差させ叫ぶ。

 

 

 「「「変身!!」」」

 『LETS ACTIVE PASSION!!』 

 『MY LOCK JEWEL!!』

 『START ABILITY CLEAR!!』

 

 

 叫んだ三人の元に何処からか飛んできた布が姿を隠すように回りを囲うカーテンになる。

 神楽にはその中で巨大な腕が、翡翠はバリスタの矢にくくりつけられ、ジェルには剣に掛けられた状態で光の布が現れ身体に巻き付く。

 するとそれがライダーのスーツになり装着されたあと頭上に現れたヘルメットを掴み被る。

 変身が完了すると共にカーテンが飛び去り三人はそれぞれベルトから武器を呼び出しなおす。

 

 

 『アルテマウェポン!!』

 『ガンモード!!』『ボウガンモード!!』『アンカーモード!!』

 

 

 「じゃあ行こうか!」

 

 

 袖のない上着に頭部がハット状に折れ曲がったオレンジ色の戦士、仮面ライダーイグニスが手に持った銃を連射しながら駆ける。

 銃撃に怯んで倒れる泥人間達に対して勢いよく飛び上がりながら先頭を回し蹴りで吹き飛ばし軍団の中心に入り込むと一回転しながら銃撃を放ちそこから肉弾戦と銃撃を織り交ぜた攻撃で数を減らしていく。

 

 

 「何で銃持ちで突っ込んでいくんだあいつは」

 

 

 首元にファーのついた動物の毛皮で出来たタンクトップのような物を宝石のように輝くエメラルドグリーンの身体に来たアンバランスな戦士、仮面ライダーカラットがイグニスの戦い方に呆れる。

 そもそも後ろに一般人がいるのに庇おうという考えが感じられない、自分がその役目を補うしかないと判断するとボウガンモードで2人の撃ち漏らした敵を狙撃していく。

 

 

 「ヒィィィヤッホォォォ!!」

 

 

 中世の貴族のような上着に腰からペナント状の布を2枚ほど垂らした高潔さを感じさせる純白の戦士、仮面ライダーセイレンがその見た目と名前に反した叫び声を上げながら走る。

 まだ距離があるなか勢いよく錨が先端についた巨大な武器を振るうと先端の錨部分が外れ鎖を伸ばしながら泥人間を大量に吹き飛ばす。距離を詰め自動で鎖が巻き取られ元に戻ると残りを一気に切り裂く。

 

 

 「ええい、どいつもこいつも情けない!この俺直々に相手をしてやる!」

 「いいねぇそうじゃないとぉ!」

 

 

 部下の醜態に苛立ちが限界を迎えたハウンドが大地を駆ける。それに対してセイレンが大振りに武器を振るうも飛び上がって避けられると背後にまわられる。

 

 

 「とったぁ!」

 

 

 ハウンドが鋭利な爪を構えるもセイレンは回避に移ろうとしない。むしろ避けられた武器の勢いを弱めることをせずに1回転すると今度こそハウンドを切り裂く。

 

 

 「どこがぁ!?」

 「ぐはぁ!こいつ…」

 

 

 予想外の方法で一撃を食らったことにハウンドは怒りを覚える。しかしそれは気が早い、セイレンはこんな一発で攻撃をやめるつもりはないのだ。

 振り回す為に下の方を掴んでいた手を短く持ち直すと突き上げる。

 

 

 「オラオラオラオラオラ!!」

 

 

 息もつかせぬ連続ラッシュがハウンドの顔を捉える。高速で放たれたそれは徐々にその身体を浮かび上がらせていき自由を奪い取る。

 

 

 「オォォラァァア!!」

 

 

 ある程度の高さまで上がったタイミングで再び持ち手を長く握り直し野球のバッティングのように吹き飛ばす。強烈な金属音を響かせながら地面をスライドしていくとしばらくして止まり勢いよく立ち上がるハウンドに向けてセイレンは指をさす。

 

 

 「はい、雑魚乙〜」

 「貴様ぁぁぁ!!!」

 

 

 激昂の叫びと共にセイレンに襲いかかろうとするも、ハウンドの動きが止まる。背中に当たる金属の感触、雑魚を全滅させたイグニスが銃口を押し当てていた。

 だがすぐに撃つような真似はしない、やるべきことをやってからだ。

 

 

 「それで?君は何者?」

 「情報を抜き取ろうと言うわけか…」 

 「そ、おとなしく話してくれればあそこの怖いお兄さんが君を撃つことはないよ」

 

 

 視線の先ではカラットがベルトに手を添えながら銃口をこちらに向けている、確かにこの状態で下手に反撃しようとしてもろくな結果にはならないだろう。

 だがイグニス達の甘さに内心ほくそ笑んでしまう、自分に奥の手があるのを知らないからこんな事が出来る。ハウンドは観念したような態度を見せながら話す。

 

 

 「よかろう!教えてやる!我らノーネイムの目的、それは人類の絶滅!そしてそのための最重要要素であるあのお方の降臨の為に人々を恐怖のどん底に陥れること!」

 「あのお方?変にぼかさないでほしいな、まず名前を教えてもらえる?」

 

 

 銃口をさらに強く押し当てるイグニスに対しハウンドは嘲笑するように鼻を鳴らす。何も分かっていないとでも言いたげな態度だ。

 

 

 「あのお方に名前など必要ない。全てが滅んだ世界で残るのはあのお方のみなのだからな」

 「…なるほど、ノーネイムなんて奴らのボスだけあって名無しってわけだ」

 

 

 ハウンドの言葉に納得したようにカラットが頷く、その様子を見たイグニスは頭の中で他に確認するべき事がないか思考を巡らせていく。

 

 

 「……まぁこんなもんかな、他に聞きたいことも思い付かない」

 「ならばさっさとそいつの銃を下ろしてもらおう、約束は果たしてもらうぞ」

 「あぁ、もちろんもちろん」

 

 

 ハウンドの言葉にカラットの武器を下ろすようにジェスチャーをする。どうやら本当に甘い連中らしい、まずは生意気な口を聞いてきたイグニスから潰そうと爪に力を込めた時背後から首を掴まれ上に放り投げられる。

 

 

 「なっーーー」

 『FULL ACTIVE PASSION!!』

 「さて、じゃあ行くよ」

 

 

 空高く投げられたハウンドに対しベルトを操作したイグニスは銃口を向ける。必殺の体勢に入りエネルギーがたまっていく光景におもわず叫ぶ。

 

 

 「ま、まて!約束が違うぞ!!」

 「…?だから自分が撃つ」

 

 

 抗議も虚しく引き金が引かれ、オレンジ色の弾丸が連射されハウンドにいくつも穴をあける。身体から火花を上げながら最後に何かを叫ぶ。

 

 

 「後は頼むぞ…弟よー!!」

 「…なに?」

 

 

 断末魔を聞き取ったカラットが思わず聞き返すも上空に残るのは爆煙だけだ。聞き逃したであろうイグニスは変身を解除するとえむ達のもとに戻る。

 

 

 「怪我はないかな?みんな」

 「うん!大丈夫だよー!!」

 「ありがとうございました!」

 「うん、元気で一安心だね」

 

 

 無事を確認したことで神楽は笑みを浮かべる。さて、少々予定が狂ったが顔合わせを再開しなくてはならない。神楽が口を開こうとした時に叫び声が響く。

 

 

 「いやちょっと待てーー!!!」

 「うわぁ!ビックリしたぁ!どうしました司くん!」

 「説明がいるだろうがぁ!!何だったんだ今のはぁ!!」

 「ふんふん、確かに。私も聞きたい!!」

 「お前は実の兄があんな事なってるのスルーするつもりだったのか!?」

 

 

 えむが同意してきたことに司が驚いているなか何処から説明したものか考える。一人で考えるより同じ境遇の仲間の意見を聞こうと2人で何かを話していた様子の翡翠達の方を向く。

 

 

 「2人とも、皆が説明して欲しがってるからちょっと手伝って…」

 「悪いが席を外させてもらう」

 「私も!」

 

 

 神楽の言葉を食い気味に拒否した2人は変身に使ったのとは違うスフィアを懐から取り出し起動させる。

 

 

 『ウォズ!!』

 「よっ」

 『マジェード!!』

 『ケミーライズ!!ワープテラ!!』

 

 

 翡翠は首元から突然黒い布を伸ばし包まれるとその場から消え、ジェルは前方に謎の穴を出現させ通り抜ける。その場から居なくなってしまった2人に肩を竦めると向き直る。

 

 

 「自分的には仲良しだと思うんだけどどうかな?」

 「何処がだ…」

 「さて、どうしたものか…」

 『CALL!!CALL!!』

 

 

 頭を悩ませる神楽を見ていると何処からか電子音が鳴り響く。すると懐からすこし子供のおもちゃの様な携帯を取り出すと電話に出る。

 

 

 「もしもし、皆の人気者だよ」

 『天才だ、事情は把握した。そいつらへの説明ならこっちでやればいい』

 「そっちって…皆は入れないでしょ」

 『試してみろ』

 

 

 そう言うと一方的に電話を切られてしまう。周りに勝手な人間ばかり集まっているのかもしれないことを感じながらも言われたとおりにすることにする。

 

 

 「それじゃ、行こうか」

 「行くって…何処にだ」

 「不思議の国にご招待、ってね」

 

 

 神楽が手の中の携帯を操作すると4人は光に包まれる。光が収まるとそこには誰もいなくなっている、犬の着ぐるみ以外は。

 1人取り残され戸惑う着ぐるみの姿を遠目に眺める人物が1人、近くの劇場の屋根に立っているがまさかそんなところに人がいるとは思われず誰にもバレる様子はない。

 

 

 「あれが噂の三人組ね、さて楽しめるかしら」

 

 

 『間杖 夜』

 怪人の味方をする謎の集団に属する女。人が絶望する様を見るのが最高の喜び。

 

 

 夜は先程戦っていたライダー達の事を思い出す、話題に上がったのはとある日の怪人のセカイでのことだ。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 「おや、いらっしゃい」

 「…珍しい光景ね」

 

 

 基本的にはこのセカイにいる夜だが学生である。平日は放課後から来て怜の机で見物するのがお決まりなのだが、今日は自分だけではなかった。

 デスクの周りに椅子が置かれそこに紫苑、そして以前優二達を襲った軽薄そうな男が怜の机に写真を並べている。こんな事を許しているあたり何らかの目的で集まっていそうだ。

 

 

 「いや〜実は本格的に協力したらどうかと思ってね、まずは情報交換といこうと」

 「よく言う、自分が負けた仕返しのためだろう」

 「落ち込んでるのね紫苑くん!慰めて上げようか!?」

 「…4人いるとやかましいわね」

 

 

 正直騒がしいのは嫌いだ、そもそも他人と関わりたくない。怜とよくいるのもあくまで彼の発明は利用できそうなのと彼の性格面が面白いからである。

 残りの2人はどちらかと言うと面白がってくる側、自分がやるのは良いがやられるのは嫌いだ。

 

 

 「これ…ライダーの写真?」

 「そ、俺たちが把握してるライダーの変身後と変身前を調べたんだよね。それじゃ怜くん?情報の整理よろしく」

 「肝心なところは人任せか…ったく」

 

 

 机を指でなぞると空中にディスプレイが表示される。写真の意味がないことに呆れながらも自分も椅子に座りここに置いてあるポットからお湯を取り出し紅茶の準備をする。

 

 

 「まず、最初に仮面ライダーになったのは辛条優ニ。一ヶ月ほど前、つまりは3月の中旬にライダーになった」

 「蜘蛛くんがやられちゃった日だね!数年ぶりに怪人が外に出た日とライダーの覚醒が被るなんて!オ〜マイガ〜」

 

 

 わざとらしい態度で泣き真似をする男をほって怜は言葉を続ける。

 

 

 「怪人とライダーの力にはある程度の相互関係がある。ノーネイムが外に出れるようになったのもこの男が覚醒手前だったからだろうな」

 「それで次が…君がお熱のこの子だね」

 

 

 紫苑は机の上に置いてある2枚の写真を手に取り怜に向ける。そこには左右非対称の赤色のライダーとメッシュとオッドアイが特徴的な青年、兜龍我ー仮面ライダーレックスが写っていた。

 

 

 「あぁ、およそ数日後にその男が覚醒した」

 「ハイペースだねぇ、何か原因でも?」

 「ろうそくは着く瞬間がより強く燃焼する、それだけだ」

 「この子たちも同じ?」

 

 

 そう言うと次は3枚の変身前の写真を持つ。そこには神楽達三人が写っていた。

 

 

 「こいつらあんまり知らないわね」

 「特に動きがない、というより怪人を探知出来るメンバーがいないからな」

 

 

 怪人を探知出来る能力を得られるのはセカイドライバーを持つ人間だけだ。しかし三人の中に該当する人物はいない、これでは怪人と遭遇する確率は激減する。

 

 

 「……んで、次はこれ」

 「日比谷太陽、お前が負けたやつだな」

 「別に、ちょっと油断しただけさ」

 「ここから連続してどんどんライダーが生まれ、今はこんな感じだな」

 

 

 現在のライダーの一覧が表示されるとそこから先に移動しいくつかのグループに分けられる。分け方はRE'BEGINS、BEYONDS、ダイナミック・ジンにのるメンバー、残りの三人だ。

 

 

 「ライダー君達も派閥が分かれたね〜、仲悪いのかな?」

 「これは想定にしか過ぎないが、恐らくドライバーの入手経路に違いがある。ライダーになった時期と出会った時期が近いもの、元々交流があった人間が行動を共にしていることから可能性はかなり高い」

 「ドライバーの種類も僕らと同じ…ということはここにあと一人増えるかな」

 「おそらくな」

 

 

 紫苑が三人しかいないグループを差しながら行った発言を怜は肯定する。すると夜は机をなぞり三人組の変身前の情報を引き出す。

 

 

 「えっ、この机って僕らも使えるの」

 「こいつがうるさいから重要度の低い機能は解放した」

 「後で色々試しちゃうか〜、ところで何でそれとったの?」

 「面白そうじゃない、他のはあんたらが唾つけてるもの。私だっておもちゃが欲しいわ」

 

 

 そう言うと夜は何処かに去っていく。その姿を見ながら怜は自分のまとめているデータに目を移す、最近になってレックスに仲間ができ脅威度が跳ね上がったため再計算が必要なのだ。

 

 

 「あれ、紅茶作ってるのに置いてってるじゃん」

 「そこそこいい銘柄と見た、飲んじゃおう」

 「ティータイムなら余所でやれ」

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 「さぁて、まずは導入…溜めを作らなきゃね」

 

 

 夜は笑みを浮かべながらこれからの構成を練り始める。頭の中に様々なルートを描きながら振り返ると巨大な泣き声が響く。

 

 

 「うおぉぉぉ!!!兄者ぁぁぁぁ!!」

 

 

 先程倒されたハウンドと同じ見た目、しかし赤を基調としていた兄と違いこちらは青を基調としている。

 

 

 「仇は、仇はこの弟が討つぞ兄者ぁぁぁ!!!」

 「あ~ちょっと待ちなさい」

 

 

 建物から飛び降りようとするハウンドを止める。今行った所で兄と同じように倒されるだけだろう。怪人も無限ではない、貴重な機会を生かさなくては。

 

 

 「私があなたを彩ってあげるわ、素敵な色にね」

 

 

ーーーーーーー

 

 

 突然目を刺した光に司は苦痛を覚える。小さくない痛みに悶えながらもゆっくりと目を開ける。

 ホワイトアウトしていた景色が段々その色を取り戻す、カラフルな色が段々見えてくると大きく叫び声を上げる。

 

 

 「何ーー!!!?」

 

 

 何処までも広がる空、空の線路を走る機関車、宙に浮かぶメリーゴーランド、ホログラムで出来た地球といった現実離れしたファンタジーな光景。

 子供の描く夢の様な景色に突然飛ばされたことに空いた口が塞がらない。

 

 

 「「うわぁーー!!何これーー!!」」

 「う〜ん、良い反応」

 

 

 同じように叫ぶも目をキラキラと輝かせている青空とえむ、込められた感情は違うだろうが良い反応をする三人に神楽は気持ちよさそうにする。

 

 

 「おい!これは何だ!!説明しろ!!」

 「はいはい、さてどっから…ん?」

 

 

 説明を要求する司に答えようと頭をひねると後方に何かをみつける。何か板の様な物に乗った人影、しかしその板は地面からすこし浮いている。

 その人物はスピードを上げると司達を飛び越える。

 

 

 「ヒャッホォォォ!!!」

 「のわぁーー!!?何だーー!!」

 「そろそろ喉痛めるよ?」

 「フハハハハハ!!見たか我が発明を!!」

 「別のうるさいのも来た」

 

 

 ここまで叫び続けている司の喉が心配になってきた頃、別方向からも叫びながら誰かが歩いてくる。

 メガネに白衣といったいかにも科学者といった風貌の男は高笑いしながらこちらに近づいてくる。

 

 

 「セカイを越えて通信を可能とするワンダーテレフォン!それに巨大化し高速での移動手段のスライダーモードへの変形を可能にした!その速度およそ時速200キロ!どんな敵にも追いつけ」

 「危なすぎるわぁ!!」

 

 

 得意気に語っていた男の頭がハリセンで思いっ切り叩かれるとプラプラと仰向けに倒れる。倒れた男が目をぐるぐると回しているなかハリセンをもった少女が大きな声で叱りつける。

 

 

 「人に当たったらどうする気だこのバカサイエンティスト!!あんたも早く止まれーー!!」

 「な、何だこいつらは…」

 「叩かれた方はハカイ君、叩いたのはネライちゃん、あれに乗ってるのは…セカイ君かな?」

 「早く止まれー!!」

 

 

 セカイと呼ばれた青年が再びこちらに向かってくる。高速飛行するスライダー…ワンダーテレフォンに乗った彼はキラキラと目を輝かせている、比喩ではなく本当に何か光っている。それに気づくと一同はよく目を凝らす。瞳の端からキラキラと零れ落ちていくなにか、それは涙だ。

 

 

 「ストッププリィィーーーズ!!」

 「ま、まさか…とめられねぇのか!?」

 「…そういやブレーキを設定してないな」

 「このバカ野郎!!」

 「おい、せめてサイエンティストをつけろ」

 「ぶつかるぅぅぅ!?」

 

 

 勢いのままセカイが一同にぶつかる瞬間、間に飛び込んだ男がスライダーを受け止める。上に乗っていたセカイは慣性で吹っ飛んだが。

 そのまま花壇に頭から突き刺さった姿を眺めながら男はスライダーを置き寝転んでいたハカイも立ち上がる。

 

 

 「花壇に彩りが増えたな」

 「何言ってんだ!抜くの手伝いやがれ!」

 「た、助かった…」

 

 

 脅威が去ったことに司は胸を撫で下ろす。なぜ一日に2度も命の危機に瀕しているのか納得がいかないがひとまずあの男に礼を言わなくては、息を整えると男のほうに近づく。

 

 

 「助けてくれて礼を言う、俺は天馬司だ」

 「……」

 「えっと…そちらの名前も聞きたいんだが」

 

 

 自己紹介を含めた礼を言うも男はこちらを見るだけで返事がない、司が困っていると男は懐に手を突っ込む。何をする気か警戒すると手がヒーローをもしたパペットをつけた状態で出てくる。

 

 

 「…は?」

 『お礼なんて大丈夫だよ〜!当然の事をしたまでだから、ね!』

 「ツカイ君はパペット越しに喋るんだ」

 『違うよ〜!これはツカイじゃなくてその親友、ヒイロ君が喋っているのさ〜!』

 「なぜ変な奴しかいないんだ…」

 「お〜い!みんな〜!」

 

 

 遠方から聞こえた声に辟易とした様子で司は振り向く。こちらに向かって走ってくる2人の影、水色のツインテールを振りながら天真爛漫な笑顔を見せる少女、青い髪の落ち着いた雰囲気の男性。

 幼少から知る少女が好きだったことで多少知識がある、あの2人は…

 

 

 「初音ミクにKAITOだと〜!!?」

 「司く〜ん!やっと会えたーー!!」

 「ぐほぉっ!?」

 「司君司君司く〜ん!!」

 

 

 突っ込んできたミクの頭がみぞおちにめり込む感覚に肺の空気を吐き出す。嬉しそうに自分の連呼するのに困惑しながら何とか引き離す。

 

 

 「ちょっと待てい!!何で俺の名前を知っている!?」

 「それはここが司君の想いで出来たセカイだからだよ〜!!」

 「意味がわからん!ちゃんと説明しろぉ!!」

 「えっとね〜」

 「ミク、すこし待て」

 

 

 司の言葉を受け説明を始めようとしたミクをハカイが制止する。花壇に突き刺さっていたセカイを引っこ抜き役目を終えたとばかりにその場を離れこちらに近づいてくる。

 

 

 「いちいち言葉で説明するのも面倒だ、映像を用意してるからそれを見せよう」

 「た、確かに言葉だけよりありがたいが…随分準備がいいな」

 「何回やるんだって話だからな、セカイの説明」

 

 

 新しい人間が来るたびにセカイの説明をいちいち口頭でするのは面倒だ、飽き飽きしてくる。

 ハカイはプロジェクターを持ってくるとホワイトボードに投影し指を鳴らすと辺りが暗くなる。映像が流れ出すとそこにミクが映る。

 

 

 『良い子のみんな〜!!楽しい楽しいセカイ講座のじっかんだよ〜!!』

 「…何だこれ」

 「教育番組風だ、親しみやすいだろう」

 「思ってたのと違うなぁ…」

 

 

 画面ではミクが楽しそうにセカイの説明をしている。どうやら誰かの想いで出来ているらしい、一体誰なのかと思っていると画面に司の写真が写る。

 

 

 「え」

 『そしてそして!このセカイを生んだ想いの持ち主こそ!天馬司君なんだよ〜!!』

 「何〜〜!?」 

 「まじか、初耳なんだけど」

 『このセカイは司くんの想いからできてて今入ってる君はその想いに近い想いを持ってるから入れるんだよー!』

 「へ〜!じゃあやっぱり司くんも楽しいショーがしたいって思ってくれてるんだ!」

 「いや、確かに素晴らしいショーはしたいが…」

 

 

 その想いがえむに近いものかと言われると否定したい、自分のショーへの想いはもっと高尚なものだ。そう言おうとしてつい黙る。自分がショーに込めた想い、それについて何か忘れているような気がする。

 司が違和感を感じている時、青空もまた首を捻る。

 

 

 「ん?私は何で入れてるんですか?面白そうだから着いてきただけで特にショーに思い入れはないんですけど」

 「お答えしまショウ!それはこのドライバーの適合者だからデース!!」

 

 

 青空の疑問にセカイが答えると懐から地球儀を模したドライバー、セカイドライバーを取り出す。

 

 

 「もしかして…私もさっきのヒーローに!?本当ですか!?やったー!」

 「う、嬉しいのか…?」

 「だってかっこいいじゃないですか!ヒーローですよヒーロー!」

 『CALL!!CALL!!』

 

 

 青空が喜びの声を上げているとセカイが乗っていたスライダーが携帯に戻り着信音を鳴らす。スピーカーにして出るとそこから翡翠の声が聞こえてくる。

 

 

 『こちら翡翠、怪人が出たぞ』

 「一日に2度も!?オーマイガ!」

 『さっきの奴のセリフが気になってな、ジェルと街を探してみたら案の定もう一体同じのがいやがった。神楽の奴をこっちに寄越してくれ』

 「オーケー!」

 

 

 そういうと電話が切れる。セカイは神楽を呼びながらワンダーテレフォンを青空に渡す。

 

 

 「これを使えば外にでられマース!すぐに2人で向かってくだサーイ!」

 「了解です!それじゃいきましょうか!!え〜と…」

 「あぁ、そう言えばまだちゃんと自己紹介してなかったたね。自分は…」

 「あぁもうあとあと!現場に向かいながら話しましょう!!」

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 「電話終わった?」

 「あぁ、こっちは始めとくぞ」

 

 

 ワンダーテレフォンを懐にしまいながら前方を見つめる。町中を逃げ惑う人々を追いかける泥人間たち、それをビルの上から見つめるハウンドノーネイム。同時に対処するには手分けをする必要がある。

 

 

 「あの躾のなっていない犬は私がやろう、ジェルは泥掃除を頼む」『ウォズ!!』

 「りょ!」『マジェード』

 

 

 お互いの役割を確認するとドライバーにスフィアを装填しポーズをとる。腕を交差させた後、翡翠は指を鳴らし、ジェルは優雅にターンをすると胸に両手を添える。

 

 

 「「変身!」」

 『MY LOCK WOZ!!』『投影!フューチャータイム!』

 『START ABILITY MAJADE!!』『アルケミスリンク!ザ・サン!ユニコン!』

 

 

 2人の姿をカーテンが隠し中で変身が始まる。

 翡翠に矢が3本とんでくると胸と肩に着弾しスーツを形成、毛皮のコートは消え近未来的なアーマー、胸に『未来』肩にそれぞれ『凄』『時』と書かれており複眼には『ウォズ』の文字を刻んだ仮面ライダーカラットウォズセレクトに姿が変わる。

 ジェルは飛んで来る剣が2本に増えそれぞれ太陽とユニコーンを模した衣装がぶつかり合い融合する。それが身体に重なると角の生えたヘルメットに胸や肩などの装甲にオレンジ色の宝石が埋め込まれた仮面ライダーセイレンマジェードセレクトに変身する。

 

 

 『スゴイ!ジダイ!ミライ!仮面ライダー…ウォズ!ウォズ!!』

 『ガガガガッチャーンコ!!プロミネンスホーン!サンユニコーン!』

 「いざ、出陣!」

 

 

 変身を完了すると同時に黒い布に巻かれてカラットが消える。それを横目にセイレンは泥人間の群れに向かって駆けていく。逃げ惑う人々の背中に突きつけられようとした刃を手で弾き間に割り込むとその身を蹴り飛ばす。

 

 

 「今のうちに!」

 「あ、ありがとうございます!」

 

 

 1人救うとまた次へ、人々に襲いかかる泥人間達を打ち倒す。振られた刃を受け流しカウンター、これの繰り返しを続ければノーダメージで勝てるだろう。

 しかしそれでは時間がかかり犠牲者が出る、目指すは犠牲ゼロ。そのためなら無茶でも何でもやるつもりだ。セイレンは手を掲げるとその指に光が灯る。

 

 

 「万物はこれなる一者の改造として生まれうく!」

 

 

   万 これなる と

   物 一者の  し

   は 改造   て

    生まれうく

 

 

 「はっ!」

 

 

 詠唱を済ませると手で地面を叩く。すると周囲のマンホールやポスト、不法投棄の自転車などが宙に浮きグネグネとその姿を変えると泥人間達を高速する。

 

 

 『アルテマウェポン!!』

 「オリャァァァ!!」

 

 

 アンカーモードの錨を思いっ切り伸ばしながら振るう、激突した泥人間達がその身に白い閃光を刻むと同じタイミングで爆発する。

 マジェードセレクトの能力である錬金術を使えば大量の敵を一度に止められる、消耗は激しいがこれで一気に全滅を狙うしかない。後はカラットが一刻も早くハウンドを倒してくれるのを祈るだけだ。

 

 

 「現れたなライダー!しかしもう1人は何処へ…」

 「ここだ」

 

 

 ビルの屋上でハウンドは笑みを浮かべながらライダーの登場に喜ぶ。あとはこのまま作戦通り泥人間達で消耗させ弱ったところを仕留めるのみ、そんな風に考えていたら後ろにカラットがテレポートしてくる。

 

 

 「!?」

 『ジカンデスピア!ヤリスギ!!』

 「ふん!」

 

 

 仮面ライダーウォズの専用武器であるジカンデスピアを取り出すと突然の事態に驚くハウンドを切り裂く。先程戦った兄の事を考えれば爪を使った近距離型のはず、ある程度距離を取れるこの武器なら有利だ。

 その判断は正しくこちらに向かって振るおうとした爪を先んじてはらいのけると腹部に強烈な突きを放つ。

 

 

 「ぐほぉ!こ、こいつ…っ!」

 

 

 不利を察したのかハウンドは文字通り尻尾を巻いて逃げようとする、前傾姿勢で手を振りながら走る姿に哀愁を感じながらカラットは黒い布を伸ばし足を拘束する。

 

 

 「んなっ!くそ!取れん!」

 「悪いな、逃がすつもりはない」

 『フィニッシュタイム!爆裂DEランス!!』

 

 

 ジカンデスピアのタッチパネルを操作するとハイテンションな音声がなりエネルギーが充填される。その刃先を思いっ切り突き出すと緑色の光刃が発射されハウンドを貫き爆発を起こす。

 振り返り爆炎を背中に向けながらカラットは右手を広げると叫ぶ。

 

 

 「祝え!仮面ライダーカラット、怪人を始めて打ち倒した瞬間を!」

 

 

 何処に向けたわけでもない祝福の言葉、このスフィアを使うと自然に漏れ出てくる。拾ったときにセカイで試した時にもやってしまいジェル以外には白い目で見られた。

 今回は周りに誰もいないタイミングまで耐えられた、言わないのが一番だが。ハウンドを倒しても泥人間が消えるわけではないようなので降りて加勢しようすると背後に気配を感じる。

 

 

 「!?な、なんだあれは…」

 

 

 煙の中から青いオーラのような物が漂い始める。空中でまとまりはじめると半透明のハウンドの顔になる。

 

 

 「兄者〜すまねぇ〜、仇をうてなかった〜」

 「泣くな弟よ!お前の気持ちこの兄の胸に響いたぞ!」

 「もう胸ないだろ…!」

 

 

 何処からか飛んできた同じように半透明になった兄ハウンドの言葉に思わず突っ込む。倒したらこんな事になるのか、このまま成仏してくれるのならほっとくがそう都合の良い展開ではないだろう。

 

 

 「今こそ我らの奥の手を使うときぞ!」

 「お〜う!俺と兄貴が1つになれば無敵だ〜!」

 「1つに…だと!?」

 

 

 兄弟がふよふよと浮いた状態から円を描くように高速で飛行し始める。赤と青の竜巻が発生し突風を受け止めながら耐えていると突然竜巻が吹き飛び、中から新たな怪人が現れる。

 赤と青が入り混じり、所々紫に染まった皮膚。より鋭くなった爪、そして何より首が別れて2つの頭が生えている。

 

 

 「兄の怨念と!」

 「弟の無念が合わさった!」

 「「我らがオルトロスノーネイム!!」」

 「随分イカしたことするじゃないか…!」

 

 

 軽口を叩くも冷や汗を浮かべる、ここまでやって戦闘力が変わらないことなどありえない。単純に2倍なのかそれとも。

 そこまで考えているとオルトロスの2つの口が勢いよく空気を吸い込み始める、嫌な予感がしボウガンを取り出すと発射するがそれより早くオルトロスが動く。

 

 

 「「ワォォォォオン!!!!」」

 「う、ぐぁぁぁぁー!!」

 

 

 双頭から繰り出された咆哮の凄まじい音圧により光矢がかき消され、全身でそれを浴びたカラットも火花を上げながら吹き飛ばされビルから落ちる。

 何とか受け身を取ろうにも全身に走る痛みから上手く動けず、逃げ出した人が放置したであろう車に激突し防犯アラームの音が木霊する。

 痛みに呻いているとビルからオルトロスがこちらに爪をたてて落下してくる、回避に動くこともできずにいると身体に錨が巻き付き引き寄せられオルトロスの爪が車のみを切り裂く。

 

 

 「大丈夫!?」

 「助かったぜジェル…」

 

 

 セイレンに礼を言いながら何とか立ち上がるも状況は良くない、周りにはまだ大量にいる泥人間達とオルトロスノーネイムが二人を狙っている。

 武器を握る手に力を込めながら構え立つ二人の姿にオルトロスは大きな笑い声を上げる。

 

 

 「「フハハハハハ!!」」

 「バカなやつらめ!まだ勝てるつもりなのか!」

 「脳味噌が1個しかない奴らは考えが足りないな兄貴!」

 「何あれ!キモっ!」

 「もっと言ってやれ」

 

 

 2つの頭で交互に喋りながら器用に笑い声だけ同時に上げる姿に嫌悪感と苛立ちを覚える。それを負け惜しみとしか捉えないオルトロスは爪を立てながら叫ぶ。

 

 

 「「貴様らはここで終わり!命が尽きる感触を楽sグホぉっ!?」」

 「え」

 「あ」

 

 

 高らかに笑っていたオルトロスが何人かの泥人間と共に高速で飛行してきた物体に吹き飛ばされる。その物体、ワンダーテレフォンのスライダーモードに乗っていた青空が脂汗をダラダラと流していると後ろから神楽が顔を出す。

 

 

 「今なんかぶつからなかった?」

 「やっちゃいました…あのー!すいませーん!轢くつもりはなかったんですー!あの…なんか、すいませーん!」

 「ふ、ふざけおってこいつら…」

 

 

 泥人間と支え合いながらふらふらと立ち上がるオルトロスに申し訳なさそうにしながらスライダーを降りる。変形を解除させ懐に直すとカラットとセイレンが駆け寄ってくる。

 

 

 「神楽!どうしてこいつも一緒に…」

 「へへっ…ジャジャ〜ん!」

 「ドライバーだ!てことはもしかして!」

 「そ、ついに4人目が見つかったね」

 「ということで早速!」

 『セカイドライバー!!』

 

 

 勢いよくドライバーを巻き付けるとブランクのスフィアを取り出し起動させベルトに装填する。

 

 

 「あっ」

 「お前それ」

 「え〜っと、確かこんな感じでしたよね」

 

 

 静止の声に気付かずうろ覚えで手を交差させるとファイティングポーズをとり叫ぶ。

 

 

 「変身!」

 

 

 ベルトを操作すると光に包まれ、青空の身体を灰色のスーツが包み込む。変身が完了するとベルトから剣が飛び出し手に収まる。

 

 

 『アルテマウェポン!!』『ブレードモード!!』

 「あれ、なんか皆と変身の感じ違ったような…まぁいいか!」

 「ちょ、ちょっとまって!」

 

 

 変身による高揚感から細かいことは気にせず走り出す。手に持った剣を強く握りしめ渾身の力でオルトロスの頭部に向けて振るう。

 新たなライダーの登場に戸惑っていたのか防御も間に合わず、直撃した剣が持ち手と刃に別れ何処かに飛んでいく。

 

 

 「………え」

 「………?」

 

 

 手の中にのこった持ち手だけを見つめた後オルトロスと目が合う。2つの頭に交互に会釈するとヘラヘラと笑い出す。

 

 

 「へっへっへ、い、イカした格好してますよね〜」

 「…ふん!」

 「ゲボラッ!!」

 

 

 勢いよく殴り倒され地面をスライドしながら仲間たちのもとに戻る。わざわざ爪を直して殴ってきやがった。

 

 

 「剣が折れちゃいました…」

 「変形用に取れる部位だ、拾ってこい」

 「ブランクで挑むから…」

 「うぇ~ん」

 

 

 泣きながら跳んで行った青空を眺めながら三人はオルトロスに向き直る。

 

 

 「自分は青空ちゃんが戻ってくるまで待ってるよ、渡したいものもあるし」

 「了解だ、いけるなジェル?」

 「ガッテン!」

 「いい返事だ!」

 『カマシスギ!!』

 

 

 ジカンデスピアを鎌モードに変形させながらカラットとセイレンは走っていく。大振りな一撃を連発するが雑魚では防御も回避も出来ない、大群をなぎ倒しながらオルトロスにたどり着くと同時に突きを放ち腹部に直撃させる。

 

 

 「なに!?」

 「うぇ!」

 

 

 確かな手応えのもと放たれた一撃だったがオルトロスから息を吐かせることする出来ない。驚きを隠せない二人の首をオルトロスの両腕が掴む。

 

 

 「ぐっ!?」

 「こ、このっ…!」

 

 

 拘束から逃れようとボウガンの射撃やアンカーなどで攻撃を加えるが怯みもしない、意識が遠のいていく感覚に焦りを覚えるが事態はもっと悪い。オルトロスが再び息を大きく吸い込む、再び咆哮を放つ気配を察知したカラットは黒い布で自分達を包み離れた位置にテレポートする。

 

 

 「面倒だな…どうする」

 「二人じゃきつい…神楽君たちは?」

 

 

 オルトロスの戦闘力の上昇具合にカラットが焦りを覚える中セイレンは青空達の様子を伺う、飛んでいった刃を見つけたが付け方が分からず困っていた。

 

 

 「え、これ…え〜」

 「ここ、ここ押すの」

 「あ、ついたー!!ありがとうございます!よーし、いっくぞ〜!」

 「ちょちょちょ!待って待って」

 

 

 剣に戻せたと見ると再び突撃しようとする青空を止める。今の状態で行っても同じことの繰り返しだ、神楽は金色に輝くスフィアを取り出すと手渡す。

 

 

 「これ、上げるから使ってみて」

 「使うって…どう使うんです?」

 「自分の想いで出来たスフィア以外も使えるのさ、こんなふうにね」

 『マッハ!!』

 

 

 自身も白色のスフィアを取り出すと起動させベルトに装填させると腕を交差させ、その後再び円を描くように腕を回すと胸に手をやりお辞儀をするように手と頭をさげながら叫ぶ。

 

 

 「変身!」

 『LETS ACTIVE MACH!!』『シグナルバイク!ライダー!マッハ!』

 

 

 身体をカーテンが隠すと巨大な腕が衣装を持ってき神楽に被せ変身させる。

 オレンジ色の身体の上から純白に赤い線が入ったレーサーのジャケットのような物を羽織り、ハット型の頭はフルフェイスのバイクのヘルメットになり首から派手な七色のマフラーが生える。

 仮面ライダーマッハの力を宿した姿に姿を変えると武器を召喚し超スピードで駆け出す。

 

 

 『アルテマウェポン!!』

 「追跡!」

 

 

 こちらに気づいていないオルトロスをすれ違いざまに切り裂く、アルテマウェポンはどの形態でも近接戦に使える刃が出しっぱなしになっているためこういう芸当も可能だ。しかしここまでの戦いから2回目は通用しないだろう、銃口を向けると引き金を引く。

 

 

 「撲滅!」

 

 

 放たれた弾丸をオルトロスはその爪で弾く、予想通りこちらに気づくと簡単に攻撃は当たらない。それなら予想外の一撃を放ちなければいけないが、サプライズなら得意分野だ。弾丸が地面に当たる寸前、ベルトのスフィアのスイッチを押す。

 

 

 「いずれも〜?」

 『マガール!』

 

 

 地面に当たろとしていた弾丸が急旋回しハウンドに再び飛んでいく。常軌を逸した起動に対応できず吹き飛ばされるとイグニスがスイッチを連打し、白い閃光となり駆ける。

 

 

 『ズーッと!マッハ!!』

 「マッ、ハ〜!!」

 

 

 吹っ飛ぶハウンドに急速で近づき、通り過ぎるとそこで止まる。一見何の意味もなくすれ違っただけかと思われた瞬間、ハウンドの身体を連続の打撃が襲う。

 

 

 「がっ…!!」 

 「仮面ライダーイグニス、マッハセレクト!ってね」

 

 

 ポーズを決めるとハウンドが地面に落ちる。目にも止まらぬ連続ラッシュによる攻撃は中々の手応えだった、しかしどうにもまだ余裕がありそうだ。だがここから先は出番を譲るとしよう。

 

 

 「お〜、あんな派手なことできるんですね〜。よ〜し、それじゃあ私も!」

 

 

 イグニスの戦いを見て青空も手に持ったスフィアを見つめる。これを使えば自分もあんな戦い方が出来るのだろうか、先程の醜態を挽回するためにもここは一つ良いところを見せようじゃないか。

 決心と共にスフィアのスイッチを押す。

 

 

 『レジェンド!!』

 

 

 ベルトにスフィアを装填させるとその力を解放する。今度は3人と同じようにカーテンが青空の身体を包み込む、中の空間で銀色のオーロラが現れそこに手を突っ込むと宝石で彩られた布を取り出し身に纏うと姿が変わる。

 黄金に輝く装甲にカラフルな宝石が散りばめられ、腰から質の良さそうな布が垂れておりゴージャスな印象が全面に押し出されている。レジェンドセレクトへの変身を遂げると自分の姿を近くのガラスで確認しながら仲間に話しかける。

 

 

 『CHANGE THE LEGEND!!』『CHEMYRIDE LE・LE・LEGEND!!』

 「お〜、ゴージャス〜。で、何ができるんですこの姿?」

 「えっとね、別のスフィアからライダーを出せたり、少し派手にアレンジして使えるよ」

 「なるほどなるほど」

 

 

 元の持ち主のイグニスから説明を受けると青空はしばらく考える。

 

 

 「私これ以外のスフィアとかありませんけど」

 「……まぁスペックは上がってるよ」

 「えぇ…」

 

 

 まさか大して何の能力も使えないスフィアを渡されたと思っていなかった、イグニスの高速戦闘のような派手な事が出来ると期待していたので肩を落とすとオルトロスの咆哮が飛んできたのでジャンプで躱し近くのビルの入り口の屋根に着地する。

 

 

 「んなっ…!」

 「俺たちの攻撃を躱しただと!」

 「おお〜、本当に身体が軽い!うっうぅん!」

 

 

 身体能力の向上を実感すると咳払いをして息を整える。

 

 

 「それじゃあ…いきますよ!トゥッ!」

 

 

 両手を掲げ空中で1回転しながらジャンプをすると光がベルトから飛び出し、着地と共に左手に収まり銃に変わる。

 

 

 『レジェンドライドマグナム』

 「ふっ!」

 

 

 銃口を向けオルトロスに向かい弾丸を放つも、単調な一撃は簡単に弾かれてしまう。それを理解しているのかいないのか、弾丸を連射しながらオルトロスに向かって走っていく。

 オルトロス側も弾丸を弾きながら距離を詰め、近づくと爪を振るう。それに対し青空は爪と爪の間に刃を挟み込むように剣をぶつけ押しとめる。力では互角、しかしこの状況なら有利なのはオルトロスだ。剣を爪で挟み込むように握ると下に引っ張り、片手を拘束しもう片方の爪を振るう。多少弾丸を食らおうがこのまま切り裂けるという判断だ。

 

 

 「よっ」

 「なっ…!?」

 

 

 爪を振りかぶったその時、挟んでいた剣と持ち手を青空が分離させる。呆気に取られた一瞬で自由になった腕で思いっ切り顔面を殴りつけ、さらに怯ませた好きに爪に挟まれた刃を蹴り飛ばしオルトロスの首元に突き刺す。そこから再び持ち手と剣をつけ直すと勢いよく振り下ろす。

 

 

 「おりゃあ!!」

 「「ぐぁぁぁぁあ!!」」

 

 

 さらに大きく火花を散らしながらオルトロスは大きく後退する、流れがライダー側に傾いてきた事に焦りを覚え泥人間たちに援護をさせるために命令を出そうとするもそちらはそちらで大変だ。

 

 

 「そろそろお開きだよ」

 『タクサン!カクサーン!』

 

 

 空に向かって銃を撃つとスフィアのスイッチを押す。するとたった一つの弾丸が無数に分裂、再び押すと弾丸全てが同じようにまた分裂。それを何度か繰り返し雨のようになった弾丸が泥人間たちを貫く。

 

 

 「フゥン!」 

 『忍法!時間縛りの術!』

 

 

 集団でいる泥人間たちが突然紫色の電流で痺れ動けなくなる。すると集団の影からカラットが飛び出すと空中から地上の泥人間達に向けボウガンを連射しす全て消し飛ばす。地上に降りたその姿は先程と変わっており紫色の装甲に『誰』『俺』『忍者』と書かれている。

 

 

 「ん〜ガッチャ!」

 『アルケミスリンク!ムーンケルベロス!ノヴァ!』

 

 

 頭を一本角からケルベロスの頭を模したお団子頭、身体の宝石の色を水色に変化させたセイレンが地面を殴る。

 すると次の絵が浮かび上がりその上の泥人間達を宙に浮かび上がらせると錬金術で操作した周囲の物体をぶつけ爆殺させる。

 瞬く間にすべての泥人間が処理されてしまいオルトロスは立ち尽くす、援軍の2人が来てから全てが狂ってしまった。怒りをぶつけるように原因の一人である青空に叫ぶ。

 

 

 「「何なんだ貴様はぁぁぁぁ!!」」

 「え?え〜と、そうですね…本名が青空だから…えっと…」

 

 

 怒りの言葉を名前を聞かれていると判断したのか頭を悩ませる、ここはカッコいい仮面ライダーとしての名前を名乗りたい。

 凝ったものにしようか悩むがここはシンプルイズベスト、名乗りの口上で魅せることにする。

 

 

 「我が名は仮面ライダースカイ!!世界を闇から救う戦士!今日が初めましてです!よろしく!!」

 

 

 ふざけた名乗りにオルトロスの2つの頭に同時に青筋が浮かぶ。一方手応えを感じている青空、もといスカイはベルトを操作すると必殺技の準備に入る。

 

 

 『FINISH THE LEGEND!!』

 「さぁ、快進撃のフィナーレを飾りましょう!!」

 「舐めるな!」

 「我ら兄弟の力、思い知るがいい!」

 

 

 スカイの刀身に黄金のエネルギーが溜まりオルトロスの2つの口に空気が吸い込まれていく、互いに最大限に威力を高めると同時に攻撃を放つ。

 

 

 「うおりゃああ!!」

 「「ワォォォォオン!!」」

 

 

 金色の斬撃波と咆哮がぶつかり合う。互いの攻撃が拮抗し、中心で大きな衝撃を発生させ周囲を破壊する光景にスカイは左手のレジェンドライドマグナムを向ける。

 

 

 『LEGEND ATTACK RIDE FI・FI・FINISH!!』

 「もういっぱ〜つ!!」

 

 

 黄金の極太のビームが放たれ、斬撃を押し込んでいき咆哮を消し飛ばす。阻むものがなくなったスカイの必殺技に飲み込まれ、オルトロスは空中に打ち上げられ爆散する。

 

 

 「「ば、バカなァァァ!!」」

 

 

 断末魔を上げ消えていくオルトロスを見届けるとスカイは両手を合わせ音を鳴らす。

 

 

 「めでたしめでたし!!ですね!」

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 「みんな〜!おかえり〜!」

 

 

 セカイに戻るとミクがブンブンと勢いよく両手を振りながら迎えてくる、それを発見すると青空も振り返しながら駆け寄る。

 

 

 「ミクちゃ〜ん、勝ちましたよ〜!」

 「イェ〜イ、青空ちゃんすご〜い!」

 「馴染み過ぎだろう…」

 「馴染まないよりいいんじゃない?」

 

 

 手をつなぎながら円を描くように回る二人に司は戸惑ってしまう。自分が相当大変な事態に巻き込まれてしまったことに気づいてなそうな姿に呆れていると後ろから肩を叩かれ振り返ると神楽がいる。

 

 

 「さて…本日の目的に戻ろうか」

 「目的?」

 「ショーの顔合わせだよ〜!」

 

 

 えむの言葉にすっかり忘れていた本題を思い出す、正直それどころではなくなってしまっていた。

 

 

 「ねぇねぇ!お願いだから一緒にショーやって〜!」

 「えぇい!何度も言わせるな!俺はスターとなるべく無駄にしていい時間などないのだ!」

 「…ふぅん?」

 

 

 縋り付くえむを何とか突き放そうとする司の態度に神楽は少し考えると口を開く。

 

 

 「えむちゃん、無理強いはいけないよ。天馬さんが困ってるじゃないか」

 「え〜!でも〜!」

 「そうだ!よく言った!さすがは兄!」

 

 

 えむを優しく司から離しながら諫めると神楽は意地の悪い笑みを浮かべる。

 

 

 「それに出来るわけないしね、あんな寂れたステージを再興させるなんて。怖気づいてもしょうがないよ」

 「……なに?」

 「いやいいのいいの、未来のスター様と言えどできないことはあるよね。それでは、お帰りはあちらから」

 

 

 お辞儀をしながら通路の先へ両手で促す、その態度に司は身体をプルプルと震わせると叫ぶ。

 

 

 「舐めるな!!この天馬司にかかれば!!ショーステージの1つや2つの再興など容易い!!」

 「え〜本当かな〜?口では何度でも言えるしな〜」

 「ならば!証明してやろう!!」

 

 

 司は近くの手すりの上に登るとフラフラとしながら何とかポーズをとる。

 

 

 「この俺がワンダーステージをフェニックスワンダーランド1の人気スポットにしてやる!!」

 「よし、言質」

 「わ〜!司くん、やってくれるの!?」

 「お、何ですか?なんか楽しい話ですか?」

 

 

 高らかに宣言した司のもとにえむのほかに青空やミクたちも集まってくる。人が集まると気分が良くなってきたのかさらに大きな声を上げる。

 

 

 「お前たち!!この俺についてこ〜い!!!」

 「「「お〜!!」」」

 「チョロい、あまりにも」

 「おまえ、悪いやつだな」

 「悪よのう〜」

 

 

 非難の声を上げる二人を無視して神楽は爪をいじる。ひとまずえむの要望を通す事が出来た、あとは野となれ山となれだ。

 

 

 「わ〜っはっはっはっ!!!」

 「しかしうっさいな…」

 

 




設定
 仮面ライダースカイ ブランクセレクト
 ブランクスフィアで青空が変身した姿。きちんとスフィアの仕様の説明も受けたがあまり理解していなかった結果生まれた。弱い。

 仮面ライダースカイ レジェンドセレクト
 仮面ライダーレジェンドの力を宿した姿。他のスフィアを併用することで強化や人海戦術など様々な戦い方が出来るが青空はこれしか持っていなかった。


 仮面ライダーイグニス
 神楽が変身する仮面ライダー。高い身体能力を生かすために銃主体だが近距離戦を好む。剣を使えばいいという指摘に対する彼の答えはカッコいいからとのこと。


 仮面ライダーイグニス マッハセレクト
 仮面ライダーマッハの力を宿した姿。高速移動やシグナルバイクの力による特殊な弾丸などによる戦闘を得意とする。決め台詞はジェル仕込み。


 仮面ライダーカラット
 翡翠が変身する仮面ライダー。高い防御力と正確な射撃が持ち味。実は翡翠の身体能力はえむや神楽に劣らず高いが変身後のスペックが機動力に振られておらず活かせない。


 仮面ライダーカラット ウォズセレクト
 仮面ライダーウォズの力を宿した姿。素の形態より機動力も口上し様々な特殊能力も有する。祝辞だけどうにかしたい。


 仮面ライダーセイレン
 ジェルの変身する仮面ライダー。好戦的な戦闘スタイルにパワーの高い武器を活かした派手な戦法を好む。油断することもしばしば。

 仮面ライダーセイレン マジェードセレクト
 仮面ライダーマジェードの力を宿した姿。錬金術やケミーの力を活かした戦いを得意とする。ジェルがライダーの知識も豊富なためライダーの中でも高い戦闘能力をもつ。


 ハウンドノーネイム
 猟犬を模した怪人。兄と弟の2体が現れライダーを苦しめた。本人達が兄弟というので夜たちも特に否定はしなかったが内心ノーネイムは全員兄弟なのではないかと思われている。

 オルトロスノーネイム
 2対のハウンドノーネイムが融合した姿。爪や咆哮といった戦闘を得意とする。実はこの姿になることが前提とされており合体してようやく通常の怪人レベルである。

 フェニックスワンダーランド
 えむや神楽の祖父、鳳楽之介が作ったテーマパーク。最近は売り上げが落ちてきているようで対策が日々議論されている。

 ワンダーステージ
 かつて鳳楽之介がショーを使っていたステージ。現在管理は神楽に引き継がれているが実際にショーを考え行っているのはえむ。神楽は設備の管理や機材の仕入れなどを行っている。


次回予告
 「メンバーを集めるぞ!」
 「春って変な奴増えるな…」
 「さぁて、どんなショーをしようかな」
 「昔みたいな皆が笑顔になってくれるステージになるよね!」

 『第二話  結成!劇団 ペガサス☆インザスカイ!!』
 「ダサッ」
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