プロジェクトセカイ feat  仮面ライダー   作:ミッツー116

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 結局遅くなってしまう。次回からこそ上手く調整したいです。


第四話

 

 

 「う、うぅん…」

 

 

 全身に走る倦怠感に抗いながら青空は目を覚ますと辺りを見回す。そこは何の光もない黒い空間、しかし暗闇というわけではないのか自分の姿などはハッキリと見える。

 自分の身に何が起こったのか思い出しながら立ち上がる。

 

 

 「そうだ…私、変な黒いのに飲み込まれてっ!?」

 

 

 記憶を遡っていると地面から泥人間達が湧いていくる。まさか住処か何かだったのか、急いでベルトを取り出し変身しようとすると異変に気付く。

 

 

 「あ、あれ…?スフィアが…」

 

 

 変身に使っているレジェンドスフィアがないことに気づき服を漁っていると目の前を右手が横切る。予想外の光景におもわず目で追いかけると空中で静止し何処かを指さす、すると差された方向から左手がスフィアを持った状態で現れ次々と残りの身体が現れピエロノーネイムになる。

 

 

 「キヒヒ、これか?」

 「怪人…!」

 

 

 気絶している間に奪われてしまったのか、自分の失態に歯ぎしりをするとこの状況を打開するため思考を巡らせる。しかし自分の頭ではすぐに浮かばない、時間を稼ごうと口を開く。

 

 

 「この真っ暗な場所もあなたの仕業ですか」

 「いいえ?ここは私の用意した舞台よ」

 「!?」

 

 

 突然聞こえた聞き覚えのない声に振り向く。そこにはトンガリ帽子を模したような金属で出来た被り物を被り、大きな紫色の水晶のような物が先端についた杖を持った謎の戦士がいた。今まで見た怪人とは違うように感じるその姿におもわず口から印象が漏れる。

 

 

 「仮面ライダー…?」

 「正解。もっとも、あなたみたいな正義の味方じゃないけどね」

 

 

 その言葉と共に周りの泥人間達がジリジリと距離を詰めてくる。額から冷や汗を流しながらブランクのスフィアを取り出す。

 

 

 「ふふ、そうそう。それは残してあげたわ、多少抵抗して希望を砕かれる方が好みだもの」

 

 

 こちらを嘲笑う謎のライダーを無視してベルトに装填すると息を整える。ここで死ぬわけにはいかない、自分にはまだやるべきことが…やりたいことがあるのだ。

 

 

 「変身!!」

 

 

 第四話  「いつでも空には星がある」

 

 

 (青空のやつ…今日は休みか…昨日あんな事があったんだ、無理もないな…)

 

 

 その頃、学校では司がクラスにいない青空の事を考えていた。基本病気なども出会ってからしていなかった彼女が居ないのは違和感がある。もっもと、来ていても何時ものようについて来ないかもしれない。

 

 

 (これっきりかもな、あいつとも)

 

 

 散々不甲斐ないところを見せてしまった。もう愛想を尽かされてしまったかもしれない、そんな風に考えているとメッセージアプリに通知が来ていることに気付く。

 

 

 (神楽から…これは、翡翠の奴の入院先か)

 

 

 昨日付き添いに行ったあとちゃんとこちらに送ってくれていたらしい、精神的な疲れから気づけなかった。容体についても触れられており、緊急で手術が行われたようだが無事成功。今日にでも目を覚ますだろうとのことだ。

 

 

 (翡翠の奴への事情の説明はしに行くか…あいつの想いも無駄にしてしまった)

 

 

 何時もの司から考えられないほど暗い事ばかり考えてしまう。ショーでの失敗のせいか、それとも何時もやかましい隣にいる人物がいないからか、はたまた両方かもしれない。

 嫌な考えを振り払うように頭を揺らすとメッセージに目を落とす。そこには予想外の一文が書いてあった。

 

 

 「面会は家族の同伴が必要…?」

 

 

 昨今のセキュリティの厳しさを感じさせるルールに頭を抱える。自分の妹が入院していた病院はそんな事なかったのに、都心の病院は厳しい。

 どうすればいいか悩んでいると、一つの可能性が浮かぶ。

 

 

 「そうだ、冬弥に聞けば…」

 

 

 一年に在籍している自分の古くからの知り合い。確か翡翠の妹も同じ学年の筈だ、聞けば何か分かるかもしれないと教室に向かうと1-Bと書かれたクラスに入る。

 

 

 「ふむ…冬弥はどこの席だ…?」

 

 

 教室の中を見回し目当ての相手を探す。この中に既に翡翠の妹がいるのかも知れないがぱっと見でそれらしき人物もいない、周りの兄弟がいる人物はそこそこ似ているため少し期待していたのだが。

 困っていると予想外の人物から声をかけられる。

 

 

 「つ、司…」

 「むっ、寧々…お前もこのクラスだったのか」

 

 

 おどおどとした様子でこちらを見る寧々を見て気まずさを感じる。経緯がどうあれ昨日あそこまで言った相手に会うのは気まずい。一度出直そうかと思うが、寧々もこのクラスなら妹の事を知っているかも知れない。

 

 

 「あ〜、何だ、お前翡翠の妹が誰か知らないか?面会に家族が付き添わないといけないらしくてな…」

 「うん…私にもメッセージ来た…えっと…多分あの席の子だと思う」

 

 

 寧々が指差す方向を見ると白い長髪の女子生徒がいる。おとなしそうな優等生と言った感じの見た目は翡翠のイメージと結びつかない、これでは知らずに兄妹と見抜くのは無理だ。

 ひとまずこれで第一関門は突破した、司は近づくと声をかける。

 

 

 「すまない、少しいいか」

 「えっ…て、天馬先輩…?」

 「む?おれのことを知っているのか」

 「ま、まぁ…有名ですし」

 

 

 予想外の反応だが司は少々嬉しく思う。先日あんな事があったがやはりスターの夢は諦められない、そんな自分にとって後輩に名が知られているのは嬉しいことだ。

 

 

 (この学校の変人四天王が私に何のようなんだろう…)

 「実は…お前の兄と知り合いでな。面会に行きたいんだが家族の付き添いが必要と聞いて、頼めないだろうか」

 「あ、あぁそういう…別にいいですけど、私と2人で行くんですか?」

 

 

 その言葉に言われた本人ではなく後ろの寧々が少し考える。翡翠のことは気がかりだが司と一緒に行くのはやはり気まずい、申し訳ないが今回は遠慮しようと思った時。

 

 

 (草薙さん…お願いだから来てほしいな…話したことないけどそれは天馬先輩も同じだし…)

 (た、助けを求める顔してる…)

 

 

 変人四天王などと揶揄される人間と2人きりで出掛けるのは確かに嫌だろう。そもそも初対面の異性と行くのすら自分は厳しい、寧々はため息を吐くと司に声をかける。

 

 

 「私も一緒に行っていい?翡翠のこと気になるし」

 「む?あ、あぁ…俺は構わないが…」

 「じゃ、じゃあ3人で行きましょうか。放課後になったら」

 

 

ーーーーーーーー

 

放課後

 

 

 「そう言えば、名前を聞いてなかったな」

 「あ、宝田瑠璃です。よろしくお願いします」

 

 

 『宝田 瑠璃』

 翡翠の妹。仮面ライダーレゾードに変身するがこの章では出ない。先日初変身を果たし敵を倒したと思ったら仲間に攻撃され知り合いがコンビ解消したり散々。

 

 

 「はい、この札首から下げてください」

 「私、お見舞い初めてかも…」

 「俺は慣れてる、残念なことだが…」

 

 

 病院内を歩きながら喋っていると翡翠の病室にたどり着く。4人部屋を示すネームプレートに翡翠の名前が記されていることを確認すると病室に入る。

 奥の唯一カーテンの閉じられたベット、そこに翡翠は眠っているはずだ。3人は近づくとカーテンの前で止まる、この奥には痛々しい翡翠の姿があるかもしれない、意を決したように司はカーテンを掴むと勢いよく開く。

 

 

 「この漫画やっぱ人気なかったんだな…単行本なら加筆があるかもと思ったけど」

 

 

 横の机に置かれた紙パックのいちごミルク、積み上げられた漫画の単行本、偉そうに組まれた足、耳についたイヤホンによりこちらに気づいていないようだ。

 こちらの心配など知らずにふんぞり返ったその姿に額に青筋を浮かべた瑠璃が近づくと鞄から教科書を取り出すと丸めて振りかぶる。

 

 

 「何やっとんじゃぁ!」

 「痛ぁ!?」

 

 

 頭に走った強烈な衝撃に驚きながら翡翠はイヤホンを外す。ようやくこちらの存在に気づいたのか周りを見回すと首を傾げる。

 

 

 「どういう組み合わせだ?」

 「ここの見舞いは家族もいないと来れないんだ」

 「なるほど。怪我人の頭叩くなよお前」

 「いいでしょ、元気そうだし」

 

 

 腹に大穴が空いたにしては元気そうな翡翠の姿にひとまず安堵する。呼んでいた漫画本を置くと身体を伸ばした翡翠は口を開く。

 

 

 「てかお前らだけか?鳳兄妹はともかく青空とジェルは同じ学校だから来れるだろ、薄情だな」

 「あ…」

 「そ、それはだな…」

 

 

 事情を知らなければ当然の発言に司と寧々は言葉を詰まらせる。説明しなければならないのは分かっているが2人の様子にキョトンとしている翡翠を見ていると傷つけてしまうことについ口が固くなってしまう。

 どう伝えるか悩んでいる時、突然病室に声が響く。

 

 

 『ハクシュン!!』

 「なっ!!」

 「「「!?」」」

 

 

 突然のくしゃみに瑠璃は自分の鞄を押さえる。よく分からない行動に3人の視線を感じたのか苦笑いを浮かべながらゆっくり下がる。

 

 

 「も、もう私いなくても大丈夫だと思うんで〜…それじゃっ!」

 「あ、おい!次は土産くらい持ってこいよー!」

 

 

 病室から勢いよく出た瑠璃は鞄から携帯を取り出す。すると携帯の画面から立体映像の赤いパーカーに身を包んだセカイが現れる。

 

 

 「ちょっと!バレたらどうすんの!」

 『いや〜悪い悪い、初変身したあとの様子を見に来たんだけど…何か鼻むずむずして。何かライダーの気配したんだよな』

 「いやここ私以外ライダーいないし…翼は別の病院だもん」

 

 

 セカイの言葉を流しながら病院を後にする。ひとまず兄が元気そうで良かった。怪我の原因について聞きたかったがしょうがない、退院した後にでもゆっくり聞こうと瑠璃が歩き出したタイミングで翡翠たちも会話を始める。

 

 

 「あいつの鞄くしゃみすんのか」

 「いやないでしょ…」

 「着信音とかではないか…?」

 「それはそれで嫌だ」

 

 

 口々に先程のくしゃみの謎を考える3人、しかし答えが出るはずもなく早々に切り上げると翡翠は別の話題を出す。

 

 

 「そう言えば、ショーはどうなった?」

 「……そうだな、その話をしなければいけないな」

 「…大体察しがつく反応だな」

 

 

 司の表情がよほど分かりやすかったのかため息を吐く。翡翠の反応に失敗してしまったと頭を押さえていると彼の方から口を開く。

 

 

 「じゃ、次は成功させないとな。原因は何だったんだ?」

 「それは…」

 「次は無い、劇団は解散だ」

 「何…?」

 

 

 ここに来て初めて翡翠の表情が変わる。予想外の発言に戸惑っているのを置き去りにして司は話を進めていく。

 

 

 「解散って…まさか1回失敗したからって辞めるのか?また次で挽回すればいいだろ」

 「ショーは1回1回が勝負だ。客は毎日変わり一度たりとも同じ状態になることはない、だからこそ俺たちは常に最高のショーをしやければならない」

 「……ちょい来い」

 

 

 真剣な表情の司の話をジッと聞いていた翡翠が指先で司に寄るように促す。意図が分からず眉をしかめるも取り敢えず寄ってきた司の額に指先を合わせると親指で中指を力強く押さえ、勢いよく開放すると司の額とぶつかり凄まじい轟音と衝撃が走る。

 いわゆるデコピンである。

 

 

 「痛ったぁぁぁ!!?何をする!?」

 「いや、何で勝手に決めるかね。そんな大事な事」

 「それは…そうかもしれんが」

 「はぁ…」

 

 

 寝ている間にとんでもないことになっていたことに再びため息を吐く。ここに来てからどうにも司と寧々がぎこちないと思っていたがこんな理由だったとは、予想外の事態に頭痛がし始めるも取り敢えず言いたいことを言わせてもらうことにする。

 

 

 「座長、もしショーが上手くいってたら今みたいに辞めてたか?」

 「そんなわけがないだろう、むしろもっとショーをやろうとしていただろうな」

 「だろ?次の日もそのまた次の日もショーをやり続けていたはずだ」

 「それがどうし…」

 

 

 言葉の意味が分からず問いただそうとした司の口が閉ざされる。閉ざした張本人である翡翠は手を離すとそのまま続ける。

 

 

 「今辞めるってことは、その次の日の客までガッカリさせるってことだ」

 「!!」

 

 

 その言葉を聞いた司の目が大きく開く。その瞳には確かな動揺が見られ、考えもしなかった事を突きつけられた事が伺える。

 

 

 「ショーが1発勝負なのも失敗が許されないのも確かだ、だがそれは今日の失敗で明日のショーをやらない理由にはならない。今日の客を満足させられなかったことは明日の客には関係ないんだからな」

 「それは…」

 

 

 司はおもわず返事に詰まる。翡翠の言うことには一理ある、目の前の客を一番大事にすることと他の観客の事を大事にするのは両立すべきことだ。

 思ったより言葉を重く受け止めている様子に翡翠は少し戸惑いながら口を開く。

 

 

 「…まぁ、そこまで重く受け止められても困る。座長はスターになるのが夢なんだし、私とはショーへの入れ込み方も違うだろう」

 「いやだが…」

 「ねぇ、1つ気になってるんだけど…」

 「ん?どうした寧々」

 

 

 しばらく黙っていた寧々が口を開く。気まずい空気を変えようとしてくれているのかと答えようとするがその質問におもわず黙る。

 

 

 「翡翠って何でショーやってたの?自分でも言ってたけど、理由ないし…」

 「いや、それはな…」

 「…ふむ」

 

 

 翡翠をショーのに誘う場面に居合わせた司も確かに心当たりがない。青空がバイト代の話を出していたがそれが理由にも見えなかった。あの時の様子を思い出すと、一つだけ気になることを見つける。

 

 

 『ショー、つまりは演劇か…』

 「演劇に何か理由があるのか?それに確か…妹を誘っていたな」

 「……察しがいいな座長、探偵にでもなったらどうだ」

 

 

 どうやら正解だったらしく、翡翠は困ったような顔をする。しばらく悩む素振りを見せるも話すことにしたのかゆっくりと口を開く。

 

 

 「俺は物心ついた頃には既に妹がいた、だから今イチ実感はないんだが…随分シスコンだったらしい。常に一緒にいるのが当たり前だったから言われるまで気づかなかった」

 

 

 記憶の中の幼い自分達は常に2人でいた。妹は引っ込み思案な性格だったこともあり常に自分の後ろに着いて来て自分もそんな妹を愛らしく思っていた。

 そんな幼い頃、妹を喜ばせるためにしたことが今回の話につながっている。

 

 

 「よく妹相手に読み聞かせをしたんだ、隣に座りながら本の登場人物になりきって声色を変えてな」

 

 

 妹が外に出ることがあまり好きではなかったこともあり家の中で出来る遊びを沢山考えた。その中で妹が特に好きだったのか絵本の読み聞かせだ、話を聞かせるだけではなく2人でなりきってごっこ遊びなどもよくやった。

 

 

 「それの影響…というと自惚れかも知れないが、妹は中学に入って演劇部に入ったんだ。最初は端役ばっかりだと言いながらも楽しそうで、少しして主役になった時なんて凄い喜んでいてな。だから…気づかなかった」

 

 

 過去を思い出す翡翠の顔が暗くなる。その辛そうな表情に寧々が戸惑い、司も最近出会ったばかりだが抱いていたイメージがどんどん変わるのを感じる。

 

 

 「気づかなかったって…なにに?」

 「妹は人気が出たが勝手なイメージまでついてそれに応えようと無理をしてたんだ、その結果心に傷を負って…もう演劇をやめた」

 「……!!」

 

 

 あの頃、妹は自分にその事を悟らせないようにしていたのかも知れないとは思う。しかしだからといってそれに気付かなくていい理由にはならない、何か一言声をかけていれば変わっていたかもしれないのだ。

 

 

 「私がその事を知ったのは妹が演劇を辞めてしばらくしてから幼なじみに話を聞かされたからだ、妹は最後まで私に話さなかった。私に余計な気を使わせないようにしたんだろう」

 「じゃあ…ショーを手伝うことにした理由って」

 

 

 察しがついた様子の寧々に笑みを浮かべながら翡翠は口を開く。その姿は何処か自分自身を馬鹿にしているかのようだ。

 

 

 「小さい頃2人で楽しくごっこ遊びして、それが演劇をやってた理由なら…私が楽しそうに演劇をしてたら入りたくなるんじゃないか、何て都合のいい想像だ。笑っていいぞ」

 「そんなの…」

 「笑うわけがないだろう!!」

 

 

 自嘲気味な翡翠を寧々が否定しようとした時、司がより早く大きく叫ぶ。その目にはうっすらと涙が浮かんでおり感情が高ぶっているのを感じる。

 

 

 「妹のためを思って行動した兄を笑う理由などない!お前のしようとしたことは胸を張るべきことだ!」

 「…ありがとな座長。だが、やっぱり余計なお世話なんだよ。妹は…瑠璃はとっくに新しい道を進んでるんだ。これは俺が過去の失敗をどうにか取り戻したいだけのエゴなんだよ」

 「だが……!!それでも…だとしてもだな…!」

 

 

 翡翠の発言に言葉を詰まらせる司はそれでも何かを伝えようとする。しかし、途中で顔を俯かせると震えながら口を開く。

 

 

 「すまない…お前の想いを無駄にしてしまった…」

 「…?何がだ」

 「もうあそこでショーをすることは出来ないだろう。一時の感情に任せて皆を傷つけてしまった。類の言う通り、俺にはスターの資格はない」

 「司…」

 

 

 自分の行為を悔いる司に寧々は驚く。ここまで常に自信に満ち前向きで悪く言えば自分勝手だった司からは想像が出来ない姿だ。

 その姿に翡翠は少し考えると漫画本を手に取り弄びながら口を開く。

 

 

 「面白い話だな」

 「……は?」

 「スターに向いてる奴より向いてない奴が頑張ってスターを目指すほうが物語性が強いだろう。そんな主人公の方が読者には好かれるんじゃないか?」

 

 

 手に持った漫画本を司の頭に乗せながら笑う。その様子にキョトンとする司を見ながら翡翠はさらに話を続ける。

 

 

 「私の想いが無駄になったと判断するのはまだ早い。さっき言った通り、私は次成功すればいいと思っているからな」

 「まさか…お前…」

 「あぁ、私はショーを辞めるつもりなんかないぞ」

 

 

 その言葉に司は目を大きく見開く。ショーを守るためにここまでの怪我を負ってそのショー自体も自分の発言でもう出来ない事を説明したうえでこんな答えが返ってくるとは思っていなかった。

 

 

 「今話した通りだ、まだ瑠璃にショーを見せれてないからな。ここまで練習して見せないなんてそれこそ馬鹿みたいだろ」

 「だが…もう他のメンバーは…」

 「やれやれ…」

 

 

 司の頭に乗せた本で軽く叩く。

 

 

 「そこは謝るなり何なりしてくれ。やる前から諦めるなんてらしくないぞ、座長?」

 「それは…」

 「さて…と」

 

 

 言いたいことは言い終ったとばかりに布団を整えると翡翠はベットに寝転がり両手を組みながら目を閉じる。

 

 

 「私は眠くなってきたから寝るぞ。昨日変な時間に寝た…というより気絶したからな」

 「…そうか、分かった。早く良くなれよ」

 「それじゃあ…また」

 

 

 その会話を最後に司と寧々は病室から出ていく。2人並んで無言で歩いていたが何か考え込んでいたような様子の司が立ち止まると口を開く。

 

 

 「寧々、済まないが先に帰っていてくれ。すこし考えたいことがある」

 「……分かった」

 

 

 寧々に別れを告げると携帯を取り出しセカイの中に消えていく。司がいなくなるのを見届けると寧々はしばらくそこに立ち尽くしていたものの、何かを思い出したかのように歩き出す。

 

 

 「ネネロボ、取りに行かないと」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 全てを黒が埋め尽くした空間。何の彩りも感じられないその空間に見合った灰色の戦士が地面に倒れ伏す。最初にここに来てからどれだけの時間が経ったのかも分からない、そんなことに思考を割く余裕を責めるかのように迫りくる刃を転がりながら躱すと手に持った剣にエネルギーを込める。

 

 

 「おりゃあ!」

 

 

 今までなら必要なかったエネルギーを込めての斬撃、当然消耗も大きいが今の姿ではこうしないと泥人間相手でもダメージが通らない。

 辛いのはこれでもただの一体仕留めることも出来ない事。今斬り裂いた相手も胸に傷がつくだけで致命傷には程遠い。

 

 

 「はぁっ…はぁ…」

 「ふふ、つらそうね」

 

 

 肩で大きく息をする戦士、青空の姿を謎のライダーは嘲笑う。本来なら相手にもならないであろう相手と満足に戦えず疲労とダメージが蓄積していく姿はとても彼女好みだ。

 近づいてくる相手を斬り裂こうと大きく剣を振り被るもそれより早く相手のナイフが突き立てられ、勢いよく吹き飛ぶと変身が解除される。

 

 

 「うぁっ!うぅ…」

 

 

 地面に仰向けに倒れ込み、苦痛に呻く青空。再び立ち上がろうにも身体に走る痛みがそれを許さない。

 出来るだけ長く苦しめることを命じられた泥人間は青空が抵抗の意思を見せる限りとどめを刺すことはないため猶予はあるが、そんなことを知らない本人の中には焦りが募っていく。

 

 

 「苦しい?もう楽になる?」

 「はぁっ…誰っ……がぁ…!」

 

 

 こちらを煽るように笑うライダーに対して青空は再びスフィアを起動させるとベルトに装填させ変身する。

 剣を取り出し再び振るうも泥人間のナイフに弾かれ反撃の刃に斬り裂かれると吹き飛び変身が解除される。

 

 

 「うぐあぁぁ!!」

 「あらあら?一発で解除?もう弱りきってるじゃな〜い!」

 

 

 吹き飛んで地面を転がっていきそのまま仰向けに倒れる。全身に走る痛みとグラグラと揺れる視界、再び変身しようと腕を動かすも感覚が狂っているのか上手くベルトを操作できない。

 思考も纏まらず意識が失われそうになる中、脳裏に走馬灯のように過去の記憶が蘇ってくる。

 

 

 『青空ちゃーん!遊びにいこー!』

 『うん!すぐ行くー!』

 

 

 幼い頃、友人たちに連れられよく遊びに出かけた。おままごとやかけっこ、かくれんぼなど外に出てする遊びが好きだった。

 男女混じって遊んでいた頃は何も気にせず本当に楽しい時間を過ごせたが、そう長くは続かなかった。

 

 

 『いや、俺等男子だけでサッカーやりに行くから』

 『今日は教室でシール交換しよー!』

 

 

 小学校に上がって少しした頃、男女でコミュニティが分かれ男子は遊んでくれなくなり、女子の方は外で元気に遊ぶ男子を少し馬鹿にしたかのように部屋の中で出来る遊びをするようになった。

 お絵かきやシール交換も嫌いではなかったが、少しずつ自分と周りのズレを感じるようになっていた。

 

 

 『でさ〜最近マジで部活の先輩がウザくて〜。青空、聞いてる?』

 『う、うん。聞いてるよ』

 

 『あの子さ〜マジ最近調子乗ってるよね〜、青空もそう思うでしょ?』

 『いや…私は別に…』

 

 『戴天のやつって胸デカいよな』

 『あいつ馬鹿だし頼めば触らせてくれんじゃね?』

 

 

 中学に上がると話す話題もそれ相応に変わる。部活やクラスメイトの愚直、その場にいない人間の陰口や下卑た視線を向けてくる事も増えた。

 しかしそれでも何とか適応しようと努力していたつもりだった、何より一人になるのが嫌だったから。

 

 

 『青空って私達のこと馬鹿にしてるでしょ』

 『え』

 『いっつも適当に笑ってるだけで、話ちゃんと聞いてないよね』

 

 

 そんなこと言われたって本当は楽しくない話を無理に聞いているだけ、なんてことを素直に言ったほうが怒るくせに。

 

 

 『男に媚び売ってるよね、女出しまくりって感じ』

 『恥ずかしくないのかなあれ』

 

 

 女子に馴染めなくて男子と話してみたらより悪化してしまった。それに、男子の中にも以前感じた視線を隠しているだけの人物がいるのかも知れないと思うと心から信用することは出来なかった。

 

 

 『何で急に敬語で話すようになったの?』

 『そういうのでちょっと変わった感じ出して人気取ろうとしてるわけ?』

 

 

 前のコミュニティから弾かれ、新しい友達を作りたかった。何度か試して上手くいかず、丁寧に下からいけば仲良くなれることが多かったので自然と敬語で喋るようになった。今ではタメ口で喋れるのは親くらいだ。

 

 

 「………」

 「あら?死んだ?」

 

 

 嫌なことを思い出してしまった、死ぬ寸前にこんな事を考えるなんて最悪だ。顔をしかめる青空の姿をライダーは嬉しそうに見つめる、本当に性格が悪いらしい。

 頭の中を巡る悪い思い出。しかし、それにより胸の中の想いが強くなっていくのを感じる。

 

 

 「嫌だ…」

 「あら?命乞い?残念、あなたは絶望の中で死んでいくの」

 

 

 身体をゆっくり動かし立ち上がろうとする。身体はもうこのまま眠ってしまえと言わんばかりに重いが関係ない、未だ続く走馬灯が新しい光景を思い浮かべる。

 

 

 『劇団!ペガサス☆インザスカイ!!』

 「嫌だ…まだ…」

 

 

 膝をつき力を込める。硬い地面で痛む足を何とか動かそうとする中ワンダーステージでの日々が蘇る。

 

 

 『アニキ〜!見て〜!飛んでる〜!』

 『ふふ、ドローンの調子は万全だね』

 『おい類、次私乗せてくれ』

 

 

 まだまだ短い期間なのかもしれない。まだそれぞれの好きな物や嫌いな物、どんな事を楽しいと思うかなどを把握しているわけではない。それでも。

 

 

 『〜〜♪どうかな司くん!寧々ちゃんに教えてもらったんだ〜』

 『ふーむ、ここまで上達するとは…やるではないか!』

 『…別に、普通だし』 

 『おやおや、照れてるね寧々ちゃん』

 

 

 あの毎日を皆が楽しんでいたのは間違いないはずだ。どうすれば良いショーになるか考えて、色々な事を試して失敗したり成功したりして。

 

 

 「全部…嘘だったなんて…間違いだったなんて…!」

 

 

 そんなこと絶対にない、誰にも言わせない。たった一度の失敗で何もかも諦めてしまうなんて認められない。

 

 

 「練習で…あれだけ楽しかったんだから…本番は…成功したらもっと楽しい…そうでしょ…」

 『ふ、そうだな!』

 

 

 青空がついに完全に立ち上がる。俯いている顔はベルトをしっかり両目で捉え今度こそしっかり操作する。

 再び変身する構え、ライダーが泥人間達に指示を出そうとした時、青空が前を向く。その目には確かな想いが宿っている。

 

 

 「私は…もう一度!」

 

 

 次の瞬間、青い光が空間を飲み込んだ。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 「まさか、自分の意思でここに来るとはな…」

 

 

 セカイに入った司は自分自身の行動に驚く。ここにあまり良いイメージはないが、自分の想いから出来ているというのなら何か悩みを解消する手掛かりがあるかもしれない。

 取り敢えず歩いて何か探そうと思った時、顔面に何かが張り付く。

 

 

 「むぐぅぅ!?」

 「司く〜ん、また来てくれた〜♪」

 「お、お前は…あの時のぬいぐるみ」

 

 

 顔に張り付いた物体を引き剥がすとボロボロのウサギのぬいぐるみが話しかけてくる。以前ここに来たときにも同じことをしてきたウサギだ、前にも感じたがやはりどこかで見た覚えがある。

 

 

 「ねぇねぇ〜、司くん、今日は何する〜?」

 「何をするって…すまないが今日は遊びに来たわけでは…」

 「え〜、ショーしないの〜?」

 「ショー?お前、ショーをしたいのか?」

 

 

 ウサギの言葉に思わず司は聞き返す。ここのぬいぐるみ達はよく集まって遊んでいるのでてっきり自分をそれに誘っているのだと思っていた。

 自分のショーへの想いから出来たセカイなのだから当然なのかも知れないが少々意外に感じている時ウサギが口を開く。

 

 

 「司くん…忘れちゃったの?昔一緒にたくさんショーしたのに…」

 「一緒に……?あっ!!」

 

 

 ウサギの言葉に記憶を辿る。ひょっとして何か自分に関係しているものがセカイに実体化しているのか、思い起こそうとしている内に頭の中に1つの光景が浮び上がる。

 あれは確か幼い頃、外に遊びに行けない咲希のためにショーをした時だ。自分と咲希以外のキャストを用意できないためぬいぐるみで代用していた、確かその中には。

 

 

 『よ〜し、伝説の宝はこの先だ!準備は良いな、咲希隊員!ウサギ隊員!』

 『おー!』

 「お前…咲希のぬいぐるみか!」

 「やっと思い出してくれた〜」

 「いや…お前だけじゃない…他のぬいぐるみも!」

 

 

 ここに来てから見たぬいぐるみ達を思い出す、どれもこれも咲希の持っていたぬいぐるみばかりだ。このぬいぐるみが特にクタクタなのは幼い頃から咲希が持っており、ショーに使う機会も多かったから。

 記憶が蘇ってくると共に自分の中でさまざまなピースがハマっていくのを感じる。

 

 

 「そうだ…幼い頃、病気で辛い想いをしていた咲希のために昔観たショーの真似事をしたんだったな…そしたら笑ってくれて…どうして忘れていたんだ…」

 「楽しかったよね〜、皆でやるショ〜」

 「…あぁ、そうだな」

 

 

 ずっとベットの上で悲しそうにしていた咲希があのショーを見に行ったときに見せてくれた笑顔、それをまた見たくて真似を始めた。それが自分があのスターのようになりたいと思ったのが原点だった。

 

 

 「お前は…ずっと思い出させようとしてくれていたんだな。俺にあの時の事を」

 「だって〜、一緒にショーしたかったから〜」

 「…そうだな、よしやるか!」

 

 

 そう言うと司はウサギの手を取るとその場を駆け出す。

 

 

 「見ろ!ウサギ隊員!この空の向こうに伝説の財宝が眠っている!あの空飛ぶ汽車に乗って向かうぞー!」

 「了解です!ペガサス隊長〜!」

 

 

 「この暴れ馬を乗りこなさなければ閉ざされた扉は開かない!覚悟はいいな!」

 「わわわ〜!落ちる〜!」

 

 

 「まずい!宝を取り返そうと番人が追ってくるぞ!このトロッコで逃げるんだ!」

 「いっそげ〜!」

 

 

 次々と遊園地内のアトラクションを物語に見立てながら巡る。その中で沈んでいた気分も高揚していき、思わず笑顔が溢れていくのを感じる。

 

 

 (あぁ、そうだ…誰かと一緒にするショーはこんなにも楽しい。なのに俺は…)

 

 

 忘れていた感情が蘇っていくのを感じる。自分のショーで誰かを笑顔にし、それを仲間と共有出来ることの喜びこそスターとして尊ぶべきものだった。

 園内を進んだ先にある機械から出てきたポップコーンを財宝としてウサギに渡すと司は口を開く。

 

 

 「ありがとう、お前のおかげで大切な事を思い出せた」

 「ん〜〜?どういうこと〜?」

 「ふっ、気にするな。こっちの話だ」

 「やったね司くーん!!」

 「イェーイ!!ベリーおめでたいデース!!」

 「のわぁ!?何だいつからいた!?」

 

 

 ウサギに礼を言っていると突然背後の茂みからミクとセカイが飛び出す。驚いていると同じ茂みから次々とカイトや他の住人達を出てくる、まさかずっと見ていたのだろうか。

 

 

 「ごめんよ司くん、セカイに誰か入ってきたのを感じて見に来たら楽しそうにショーをしていたから」

 「まぁ結果オーライだろう、本当の想いも思い出したようだし」

 「いや、まだだ」

 「なに?」

 

 

 ハカイの言葉を司は否定する。確かに自分は本当の想いを思い出せたのかもしれない、しかし思い出すだけでは駄目だ。

 やるべきことを見つけたのなら全力で進む、それこそスターのあるべき姿。

 

 

 「俺にはやらなければならない事がある…それを成し遂げだときこそが!スターダムの真の始まりだ!!」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 同日、ワンダーステージの観客席にたった一人で神楽は立っていた。ショーを行っていないため当たり前に誰もいない。いや、元々ここに来る人間などいる方がおかしいのだ。ここは既に死んだステージなのだから。

 

 

 『CALLING!!CALLING!!』

 「…そろそろ来るころだと思ってたよ」

 『そりゃ結構だ、お前らのお遊びもそろそろ終わらせないとな』

 

 

 着信先を確認すると間を置いて出る。電話からは神楽よりも一回りは大きそうな男の声が聞こえ、それに対してうんざりしたような態度で神楽は対応する。

 

 

 『ショー、失敗したんだって?ガキが現実も見ずに思いつきで行動するとどうなるか分かったか?』

 「……大人は随分暇なんだね?本題に入れば?」

 『生意気言いやがって…まぁいい、これを聞けばそんな態度も取れないだろう』

 

 

 男は神楽の態度が気に入らないようだったが平静を取り戻すと本題を告げる。その内容はやはり予想通りのものだった。

 

 

 『ワンダーステージの取り壊しが決まった』

 「……だろうね」

 『ま、何の利益も出せてない物を残していられるほどうちも余裕はないってことだ。残念ながらな』

 「そのうち潰れるかもね、ここ自体が」

 『……』

 

 

 神楽のその言葉は流石に看過出来ないのか男が黙る。その反応に少し胸の中のモヤモヤが少なくなるような気分を覚えることにまた暗いものを感じていると男が口を開く。

 

 

 『分かっているな、お前のやるべきことは…』

 「はいはいわかりましたよ、ご主人様のおっしゃるとおりに」

 『おまe』

 『End…』

 

 

 男の言葉を遮るように電話を切る。相変わらずつまらない話ばかりな男には飽き飽きする。もっとも、自分は世の中に嫌いなものばかりだが。

 

 

 「取り壊し、か…さようなら、俺の逃げ場所」

 

 

 予想していたことだがいざ言われるとショックを感じないことはない。ここには自分にとって数少ない良い思い出が沢山詰まっているのだ。

 過去に浸っていると後ろから声をかけられる。

 

 

 「取り壊し…って…?」

 「…!寧々ちゃん…何でここに…」

 

 

 今の話を聞かれてしまっていた失態を悔いると共に何故ここにいるのかと驚く。神楽が動揺を隠せずにいると寧々はさらに問い詰める。

 

 

 「どういうこと…?取り壊しって…!」

 「…そのままの意味だよ、ここはもう無くなる」

 「そんな…」

 

 

 自分の言葉にショックを受けた様子の寧々を見る。ステージでの失敗という苦い思い出があるはずなのに、あるいはだからこそ払拭する前に潰れる事が嫌なのかもしれない。

 しかしすでに決まってしまったことだ、神楽は何か話題をそらそうとする。

 

 

 「それで、何か用があったんじゃないの?」

 「ネネロボを取りに…っていうか、それどころじゃないでしょ…!ここ無くなっちゃうって…えむは知ってるの…!?」

 「…いや」

 

 

 寧々の追及に男からの命令を思い出しおもわず表情が暗くなる。それを見た寧々は言い過ぎてしまったと思ったのか口を閉じる。

 

 

 「…聞いてくれるかな、寧々ちゃん」

 「え…?」

 「ここはね、僕にとって…」

 

 

 何時もとは違った何処か悲しそうな様子で話しながら神楽はステージに向かって振り返る。誰にも話すことのなかった胸の内。

 もう会うこともないであろう寧々ならいいかと打ち明けようとしたその時、ステージに1枚のトランプが舞い落ちる。

 

 

 「!?」

 『アルテマウェポン!!ガンモード!!』

 

 

 嫌な予感を感じトランプに向けて弾丸を連射する。当たった箇所から削るように小さくなっていたトランプだが全て削り切ることは出来ずに小規模の爆発が巻き起こる。

 

 

 「ステージが!」

 「大丈夫だ!あのくらいならまだ…それよりも!」

 

 

 爆煙に包まれたステージを見つめる。あんなトランプが爆発するなど普通のことではない、ならばこの後の展開など予想が着く。

 その想定通り爆煙の中から大きな鎌を持ったピエロが飛び出すとこちらに向けて両手を振るう。

 

 

 「変身!」

 『LETS ACTIVE PASSION!!』

 

 

 イグニスに代わると刃を受け止める。飛び出してきた怪人、ピエロノーネイムがモチーフに反した怪力で刃を押し込もうとしてくるのを何とかこらえていると目の前の悪趣味な笑顔がさらに歪む。

 

 

 「オマエ、やるのはサイゴって言わレタ…でも知らない、人間の命令は聞カナイ。アノ二人と同じニスル」

 「二人…!?」

 

 

 ピエロの言葉におもわず耳を疑う。片方は翡翠としてもう一人はどういうことか。

 その様子にピエロは満足そうな顔を浮かべると動揺を隠せずにいるイグニスの身体に爆弾トランプを貼り付け、指を鳴らすと起爆する。

 

 

 「ぐあぁぁぁ!!」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 時間は少し戻り神楽が電話を始めたころ、司はフェニックスワンダーランドにやってきていた。ワンダーステージにいる可能性の高い神楽やえむにまずは謝ろうと思って向かっていると途中の観覧車の前にえむを見つける。

 

 

 「えむ!」

 「へ…!?司くん…?何でここに…」

 

 

 驚いた様子のえむを前に司は息を整える。神楽は一緒にいないようだが善は急げだ、まずはえむに謝ろうとすると先に口を開かれる。

 

 

 「司くん、一緒に観覧車のらない?」

 「へ?」

 「ほら、いこ!」

 

 

 予想外の誘いに呆気にとられると促されるままに観覧車に乗ってしまう。動き出すとゆっくりと地面を離れ遊園地の景色がどんどん小さくなるのを眺めながら司は混乱する。

 

 

 (何故俺は観覧車に乗っているんだ…)

 

 

 えむに謝り、再び皆でショーやるために来たのにどうしてこんな事をしているのかと思うが気を取り直す事にする。

 観覧車の中だろうと関係ない、この場で謝ってしまおうと口を開こうとするとまたも先を越される。

 

 

 「あ!見えたよ!」

 「む…?あれは…ワンダーステージか。誰かいるように見えるが…」

 

 

 遠目でよく分からないが神楽だろうか。2人いるように見えるがもう片方は小柄でよく見えない。

 

 

 「あそこね、自然がいっぱいでおじいちゃんが好きだったんだ。ワンダーステージをあそこに作ったのもそれが理由なんだって」

 「作った…?」

 

 

 えむの言葉に頭の中にある疑問が蘇る。初めて会った時の自己紹介の時に引っ掛かっていたが放置していた。鳳という名字、高校生でステージの管理を任されるほどの地位、点と点が繋がり1つの答えにたどり着く。

 

 

 「鳳って…まさか、オマエ!フェニックスグループの一族か!?」

 「へ?そうだよ?」

 「ど、どうしてそんな奴があんな寂れたステージに…」

 

 

 ショーがやりたいだけならもっと大きいステージもパーク内にはある。褒められたやり方ではないが経営陣の家系ならどうとでもなりそうなものだ。

 

 

 「…実はね、あそこなくなっちゃうかもなんだ」

 「何…?」

 「去年、おじいちゃんとお別れしてね?それからお客さんも怖くなっちゃって…壊して新しいものを作るってなったの」

 

 

 ステージが無くなる話をするえむは今まで見せたことのない悲しげな表情を浮かべる。

 

 

 「でも、残してほしいって私お願いしたの。そしたら…今度の連休までに売り上げが戻ったら残してくれることになって…」

 「それでメンバーを集めてたのか…」

 

 

 えむの真意を知った司は自分の中の無力感が強くなるのと同時に1つの怒りが湧いてくると思わず口から言葉を吐く。

 

 

 「どうして…どうしてそんな大事な事を最初に言わなかったんだよ!言ってくれれば俺も…」

 「…ショーはね、皆が笑顔で楽しくやるものだから。こんな話したら皆気にしちゃうでしょ?」

 「だがな…!」

 

 

 力なく笑う姿に思わず司は食い下がろうとするもそれよりも早くえむが予想外の一言を放つ。

 

 

 「でも、もうやめにする!ショーはおしまい!」

 「なに…?」

 「私がショーやりたいって言って…皆笑顔じゃなくなっちゃったから…ショーはおしまいにするんだ!」

 「……!」

 

 

 えむの言葉を受けた司は俯いた体勢でプルプルと身体を震わせ始める。しばらくそうしていると目尻に涙を浮かべながら叫ぶ。

 

 

 「この…バカえむ!」

 「ば、バカえむ!?」

 「あぁお前はバカえむだ!!いいか、よく聞けよ!」

 

 

 司は強い言葉でえむを叱責する。えむの祖父が残した言葉、えむは大事にしているつもりだろうが致命的な部分が抜けてしまっている。そこを伝えければ気が済まなかった。

 

 

 「皆をショーで笑顔にする…そこにはオマエもいないと駄目だろ!!えむだって…お前のじいさんが言ってた皆だろ!」

 「司くん…」

 

 

 目にたまった涙を拭うと司は強い意志を宿したその瞳でえむをまっすぐ見つめる。ここに来た目的を今こそ果たすときだ。

 

 

 「えむ…もう一度ショーをやるぞ」

 「え…」

 「済まなかった…俺のせいでせっかくの劇団を駄目にしてしまった。だがもう一度チャンスをくれ!今度こそ、皆を笑顔にしてみせる!」

 

 

 一人ではショーは出来ない。だからこそ真摯に向き合いもう一度自分に貸してもらえるよう頭を下げる。

 真っ直ぐな言葉をぶつけた司にえむは思わず涙を浮かべながらもそれでも眩しいくらいの笑みを見せ返事をしようとしたとき、爆発音と共に観覧車が揺れる。

 

 

 「きゃあ!?」

 「何だっ!」

 

 

 バランスを崩しかけたえむを支えながら司は爆発音のした園内に視線を落とす。

 

 

 「ぐぁぁぁぁ!!」

 「神楽!」

 「お兄ちゃん!」

 

 

 ピエロが放ったトランプが強烈な爆発を引き起こしイグニスが吹き飛ぶ。地面を転がっていくと変身が解除され寧々が駆け寄る。

 

 

 「神楽…!」

 「こいつ強い…いや、それとも…」

 

 

 もともとノーネイム相手にさほど有効に戦えてる気はしなかったが今日は何時にも増して力が出ない。不調の原因を探ろうにも目の前のピエロがそれを許すはずもない。

 そう考えてるとピエロが観覧車を見上げ、神楽もそこで司達の存在に気付く。

 

 

 「キヒヒ…」

 「…っ!やめろ!」

 

 

 ピエロはトランプを数枚取り出すと観覧車めがけて投げつける。張り付いたトランプが順番に爆発すると観客の悲鳴と共に観覧車が停止する。

 

 

 「ぬおぉぉぉ!!?」

 「キヒャヒャ!!」

 「こいつ…!?」

 

 

 司達の悲鳴を楽しむピエロに怒りながら神楽はスフィアを取り出すとスイッチを押す。しかし普段とは違いスフィアからは光も音も流れない。

 

 

 「何で…?動かない!」

 「ヒャヒャ!壊れたカァ?貸してやろウカ、コレ?」

 

 

 戸惑う神楽を嘲笑うとピエロは自分の帽子を脱ぎ、中に手を突っ込むとその中から金色に輝くスフィアーーレジェンドスフィアを取り出す。

 

 

 「え…?」

 「どうした?イラナいのか?」

 「あれは…青空の使っていたスフィアか!?どうしてオマエが持っている!!」

 

 

 持ち前の声量で観覧車からピエロに向かって叫ぶ。その声が届いたのかピエロは司の方を向くと頭だけを飛ばして答える。

 

 

 「キヒヒ、簡単な話だヨ〜。分かってるダロ?」

 「…どういうことだ、ハッキリ言え!!」

 

 

 背中に嫌な物が走るのを否定するように声を張って叫ぶ。頭の中の想像が当たらないことを祈る司の内心を見透かしているようにピエロは口を吊り上げる。

 

 

 「死んだよ、アイツは」

 「……は?」

 

 

 言葉の意味が理解出来ない。口を閉じることすら忘れた司の前にスフィアを持ったピエロの手が横切るとケタケタと笑い出す。

 

 

 「傑作だったゼ〜?このスフィアを奪われて、満足に戦えナイまま死んだあいつの姿は〜?ヒャハハハ!!」

 「そんな…」

 

 

 地上で聞いていた神楽たちも思わず声を漏らす。流石の司も俯いたまま動かない中ピエロは甲高い笑い声を上げながら他の身体のパーツも浮かび上がらせる。

 

 

 「そして今度はオマエ達の番!ショーも失敗したまま夢も希望もウシナッて絶望しながら死んでいくのさ!」

 「…っ神楽」

 「………」

 

 

 寧々が焦りを浮かべた表情で神楽の方を向く。しかし神楽は手のなかのスフィアを再び起動出来るか試そうともせず力なく両手を垂らしている。

 動く気配の無い神楽に寧々が戸惑っている中ピエロは上機嫌なまま続ける。

 

 

 「せいぜい苦しんでクレヨ?俺を楽しませるタメにな」

 「……笑うな」

 「ア?」

 

 

 上機嫌だった気分に水を差されたピエロは司に殺気を向ける。異形の存在にそんなことをされれば常人なら恐怖に支配されてしまってもおかしくないが司は真っ直ぐとピエロに敵意を向ける。

 

 

 「何ダ?自分がオモチャにさレルのがそんなに嫌か?」

 「俺じゃない!俺の仲間のことだ!!」

 「司くん…?」

 

 

 怯むことなく言い放つ司にピエロは不機嫌そうに顔を歪める。自分よりも下の存在として見ている人間に言い返されるのは神経をひどく逆撫でされる。

 

 

 「青空も翡翠も、えむも神楽も寧々も類もジェルも!皆の笑顔のために真剣だった!!たとえ失敗したとしても貴様に笑われる謂れはない!!」

 「ハァ〜…その結果仲違いシテバラバラになったんだロ?バカ丸出しじゃナイカ」

 「…それは俺のせぃだ。俺の無神経さが招いた失態、他の奴等に責任はない!!」

 

 

 司は仲間たちの誇りを守ろうと必死に叫ぶ。その姿にピエロはつまらなそうに手に持ったスフィアを握ると次の瞬間スフィアがトランプに変わる。

 

 

 「なら、オマエから死ネ」

 「ッ!えむ!!」

 

 

 ピエロは冷たく言い放つとトランプを司達のゴンドラに向けて放つ。爆発と共に観覧車からゴンドラが吹き飛び地面に向かって落下する中司はえむを庇うように抱きしめる。

 

 

 「司くん!!」

 「えむ!しっかり俺に捕まっていろ!!何が何でもお前だけは守ってみせる!!」

 

 

 急降下するゴンドラの中でえむを安心させようと司は叫ぶ。神楽が助けに向かおうと走り出すとその手のスフィアに光が灯る。

 使えるようになった事を感じベルトに装填し変身しようとした瞬間、目の前にトランプが突き刺さり爆発で吹き飛ぶ。

 

 

 「ぐぁ!?」

 「邪魔はサセないよ?妹が死ぬノヲ眺めテナ」

 「えむ!司!」

 

 

 全身に襲う浮遊感を感じながらどんどんと地面が近づいてくる。このスピードで地面に叩きつけられればただでは済まないだろう、しかし自分が抱えた状態なら当たりどころによってはえむは助かるかもしれない。

 司は地面が間近に迫ると両目を深く閉じながらより強くえむを抱きしめ衝撃に備える。

 

 

 「くっ……!」

 「うぅぅ〜〜!!」

 

 

 まだ衝撃は走らない。思ったより距離があったらしい。それでもすぐに来るであろう衝撃に2人は怯える。

 抱きしめ合う力が強くなるのを感じているといつの間にか先程までの浮遊感がなくなっていることに気付く。

 

 

 「あ、あれ…?」

 「地面に着いてる…だと?」

 

 

 目を開けるとすでにゴンドラは地面に落ちている。しかし自分達は何の衝撃も感じなかった、地面にも傷一つない。

 理解が及ばずに2人が目を白黒とさせているとピエロのパーツが地面に落ちてくる。

 

 

 「グェッ!」

 「な、何だ!?」

 「どうなってるの!?」

 

 

 2人は驚きながら神楽の方を見る。現状この場で怪人に対して有効打を与えられるのは1人だけだ。

 しかし、当の本人は口をポカンと開けたまま空を見上げている。理由が分からず司達も同じように上を見上げると自分達のゴンドラが着いていた場所に誰かが立っている。

 腕に持った剣のような物を掲げていることから恐らくはあれでピエロを斬り裂いたのだろう。

 

 

 「司くん…あれって…!」

 「あぁ、あれは…」

 「バカなっ!どうして!」

 

 

 えむ達はその人物に見覚えがある。町中ではまず見ない中世の騎士のような格好をしている姿、だが自分達はそれを何度も見た。

 空色とブロンドの入り混じった美しい長髪をなびかせると下の全員に届くほどの声量で叫ぶ。

 

 

 「人々の悲鳴と、悪の笑いが響くとき!!」

 

 

 それは、遥か遠くの国の騎士団を纏める長の正装。この世に悪意が蔓延るとき、己の正義に従いたった一人で旅に出た勇気あるもの。

 

 

 「何処からともなくやってくる!救いを求めるあなたの元に!」

 

 

 傷だらけの顔、しかし痛みも弱気も感じさせない笑顔を浮かべながら叫ぶ。いつも元気な騎士団長、ワンダーステージのニューキャスト。

 

 

 「天を戴き、青空を舞う!戴天青空!!ここに参上!!」

 「「「青空/青空ちゃん!!」」」

 「はい!お待たせです!」

 

 

 呼びかけの声に敬礼をしながら応える。すでにここにはいないはずの人物がここにいることに動揺していたピエロは怒りを露わにしながら立ち上がる。

 

 

 「なぜキサマがここに!!あの空間でシンダはずだ!!」

 「失礼な、この通り足もありますよ!」

 

 

 自分の上げた片足を勢いよく叩きながら不敵な笑みを浮かべる。青空はそのままドライバーを装着すると懐から新たなスフィアを取り出す。

 

 

 「それは…?」

 「ふっふっふ、お見せしましょう。私の変身!トゥッ!!」

 「あっ、バカ!!」

 

 

 笑顔と共に青空は観覧車から飛び降りる。重力に従い落下していく青空におもわず司が叫ぶ中取り出した空色のスフィアのスイッチを押す。

 

 

 『フリーダム!!』

 

 

 自身を象徴するような単語が飛び出す。ベルトに装填させると仲間たちと同じように腕を十字に交差させ、一度大きく左右に広げると右手を握り胸に、左手を背中に回すショーでも披露した敬礼のポーズをする。

 最後に右手を横に大きく振りながら左手を前に突き出すとピースを作り満開の笑顔を見せながら叫ぶ。

 

 

 「変身!!」

 『CHANGE THE FREEDOM!!』

 

 

 夕焼け空の遥か彼方が輝くとカーテンが舞い降り青空を包む。その中は上下左右に至るまで満開の星空、その中で一等輝く星を掴み両手を合わせながら回ると輝きが広がりオーロラのような美しい布になる。

 その布に両手を突っ込むと袖のように広がり上着になると光が包み込み、カーテンが弾け中から飛び出す。

 地面に激突するかと思われたその時、すれすれを滑るように光が動きピエロを吹き飛ばしながら着地する。

 

 

 「ぐぅ!何だ!」

 「私が何者か?気になるなら答えましょう!」

 

 

 全身空色に包まれたその姿は仮面ライダーとしても少し異質だ。パーカーやズボンを模した布を纏い、開いたパーカーの中に装甲が隠れている。

 頭部は三角形が折り重なり少年の髪型のような特徴的な形状になっており、何より両目が虫の複眼のような他のライダーとは違い黒目と白目が存在するより人間らしい物になっている。

 少年漫画の主人公のようなヒーロー然とした姿の戦士は大袈裟にポーズを決めると叫ぶ。

 

 

 「星の輝きを宿した、青空の戦士!仮面ライダースカイ!覚えて帰ってください」

 『アルテマウェポン!!ブレードモード!!』

 

 

 専用の武器も取り出し決めポーズを取る。その意気揚々とした姿にピエロは額に青筋を浮かべながら怒りをぶちまける。

 

 

 「絶対絶命カラ新しいチカラにメザめて仲間をスクウ?そんなご都合展開、ツマラナイんだよォー!!」

 

 

 両手にトランプとナイフを取り出すと手当たり次第にスカイに投げつける。たとえ神楽や翡翠が万全でも撃ち落とすのは不可能な数、近接主体なスカイでは対処は出来ない量だ。

 

 

 「ハッ!!」

 

 

 だがその情報はもう古い。スカイが剣を勢いよく振るうとその刃から青いエネルギー刃が放たれ迫りくる脅威を全て砕いた上でその先のピエロも吹き飛ばす。

 

 

 「どうやらお話づくりというものが分かっていないご様子。では私が物語に置いて大事な事!教えてあげましょう!」

 

 

 そう言い放つとスカイは勢いよく地面を蹴る。それだけでピエロとの開いていた距離は一瞬にして消滅し振り上げた剣が大きく身体を斬り裂く。

 

 

 「それは見てて楽しいかと!」

 

 

 怯んだピエロに対して続けざまに横斬りを放ち瞬時に斬り返す。そこから飛び上がるようにピエロにムーンサルトを放つと背中側に回る。

 

 

 「キャラクターと!愛と!」

 

 

 後ろから首を絞め上げる。怪人と言えど呼吸は必要なのか、あるいは単に苦痛からなのか激しくタップするピエロをグルグルと振り回すと投げ飛ばす。

 

 

 「ギュギュ〜ってなるかと!」

 

 

 スカイの身体がフワリと浮かび上がると高速で飛行し吹き飛ぶピエロを追い越すとその先に着地し剣を構える。

 

 

 「整合性と演出とスカッとするか!そして!」

 

 

 飛んで行った先で思いっ切り斬り裂かれ地面に転がるピエロ。この短時間で圧倒的な実力差を見せつけられた形だ。

 このまま好きなようにされるのは我慢ならないとばかりに身体をバラバラに分解して襲いかかるとスカイがその場で回転し始める。

 突然の奇行に理解が及ばずにいるとどんどん速度が上がり周りの空気を巻き込み始め、青色の竜巻のようになると凄まじい吸引力でピエロを飲み込む。

 

 

 「主!人!公!だぁーー!!!」

 『アルテマチャージ!!』

 

 

 竜巻の内部で吹き荒れる風の中心に流されてきたピエロのパーツに向かってエネルギーを溜めた斬撃を連続で繰り出す。

 不可避の連撃に切り裂かれたピエロは分離が解除され竜巻から投げ出されるとフラフラと立ち上がる。

 

 

 「生意気な…自分が主人公とでも言うノカ…」

 「そうですけど」

 「エ」

 

 

 ボロボロになりながら何とか口だけでも攻撃しようとしたピエロの嫌味をあっさり肯定する。

 思わずピエロが呆気に取られるとスカイは剣を向けながら自慢気に言い放つ。

 

 

 「我等ワンダーステージのキャストは1人1人が個性豊かでそれぞれの強い想いを持った主人公!そんな皆が集まった最強のステージこそ我等ワンダーステージなのです!」

 「……チッ!!ツマンナイだよ!!」

 

 

 何処までも自分の思い通りにならないスカイに苛立ちながらピエロは帽子を外すとその穴をスカイに向ける。するとそこにエネルギーが溜まり始めたのに気づいたスカイもまた必殺の構えを取る。

 

 

 『アルテマチャージ!!フル!!バースト!!』

 「こいつでオマエを消シ飛ばシテ、バットエンドにしてやるよ!」

 「やっぱり分かってませんね」

 

 

 お互いにエネルギーを溜め込んでいき、その量が臨界点に達しようとした瞬間にスカイはドライバーも操作する。

 

 

 『FINISH THE FREEDOM!!』

 「主人公が失敗したり負けたりするのは、次で大成功するからなんですよ!!」

 

 

 ベルトからエネルギーが開放されると辺り一面を光が包む。余りの閃光に思わずその場にいた人間が目を閉じてしまい、何とか開くとそこは一面の青空に変わっている。

 

 

 「わ〜!私達飛んでるよ司く〜ん!」

 「これは…どうなってるんだ!?」

 

 

 空中の浮遊感を感じながらも落下していた時のような勢いは無い不思議な空間に司達が戸惑う中ピエロの帽子のエネルギーがついに満タンになる。

 

 

 「これで…消エロォォォ!!!」

 

 

 莫大なエネルギーが帽子から放たれる。スカイも必殺技の用意をしているのは分かっているが自分が劣っているとは思わない、それに仮に押し負けても帽子を構えている以上カラットの時のように跳ね返してしまえばいい。

 二重の策を用意したピエロの一撃を前にしたスカイの回答はたった1つ。

 

 

 「かっこよく…決めさせて頂きます!」

 

 

 エネルギーの溜まった剣を逆手に持ち替えると大きく振り被る。すると溜まったエネルギーが刃になり剣のサイズが身の丈を超える。

 

 

 「蒼穹に輝く光の刃が、悪意を斬り裂く必殺の一撃となる!」

 

 

 口上を上げると刃の輝きがさらに増す。目の前に近づくエネルギーを捉えるとスカイは力の限り剣を振り抜き必殺の名を叫ぶ。

 

 

 「スカイ!スラァーーーッシュ!!」

 

 

 叫びと共に振り抜かれた斬撃にピエロはビームを真っ二つに斬り裂かれる。跳ね返そうと構えたままのハットに何の感触も得られない事を考えると何かを飛ばしたわけでもないのか、思考を巡らしていると視界がずれる。

 

 

 「ギ?」

 

 

 世界が縦にズレていくとともに頭が地面に近づいていく感触を感じながらあることに気付く、手に持っていたはずのハットが真っ二つになっていることに。

 

 

 「俺斬られ」

 

 

 言い切る前に爆発が巻き起こると世界が元の遊園地に戻る。目にも止まらぬ速度で飛ぶ斬撃によりピエロを真っ二つに斬り裂いたスカイは司達に大きくピースサインを向けると勝利の決め台詞を叫ぶ。

 

 

 「これにて!めでたしめでたし!!」

 

 

 満足気に変身を解除する青空に向かって司達や寧々は走っていくが、そんな中神楽だけはレジェンドスフィアを拾い上げるとワンダーテレフォンを取り出す。

 

 

 『スライダーモード!!』

 「あっ!ちょ、神楽くん!?」

 

 

 気付いた青空が引き留めようとするも神楽は振り返ることもなくスライダーに乗り何処かに飛んでいく。取り付く島もない対応に何かを察した青空は振り返る。

 

 

 「もしかして、仲直りはまだな感じです?」

 「…まぁな」

 「そ、そんなことより!無事で良かった〜。さっきのピエロさんの言ってたことは嘘だったんだね!」

 「ん?何がですか?」

 

 

 青空はピエロが自分が死んだと言っていた話を聞き始めた頃、物陰に夜が現れる。その顔には幾つか傷が出来ており腰にはネライドライバーが巻かれている。

 何を隠そう、セカイで青空を追い詰めた謎のライダーの正体は彼女だ。青空が皆に状況を説明し始めると、夜もその時のことを思い出す。

 

 

 『CHANGE THE FREEDOM!!』

 『な、何!?』

 『うぉぉぉぉ!!!』

 

 

 突然新しい姿に覚醒したスカイがその力を剣に込めて振るうと作り出した空間ごと切り裂かれた。壊れた結果出たのは元いた場所、時間もたまたま攫われる前と同じ夕暮れ時だったため青空は外の時間は止まっていたと感じえむの元に戻ろうと遊園地に向かった結果たまたま司達が襲われている現場に居合わせたのだ。

 本来ならあそこで青空を始末したあとジェルを消し、それを明かした事による神楽たちの絶望を楽しむつもりだったのに台無しだ。

 原因である青空を夜は恨みの籠もった目で見つめる。

 

 

 「覚えてなさい…そんなに私と遊びたいなら標的はあなたにしてあげるわ」

 

 

 泥に包まれると夜はセカイに消えていく。その頃青空から何があったかの説明を聞いた司はもう一つの疑問を問いただす。

 

 

 「ところでそのスフィアは…」

 「あ、気づいちゃいました!?そうです!私の想いが籠もったスフィアです!」

 

 

 空色に彩られたスフィアを得意気に見せびらかす青空。聞きたい事を言う前にはしゃぎ始めるのを何とか抑えながら本題に入る。

 

 

 「落ち着け…!想いって!何を込めたんだ」

 「ふっふ〜、決まってるじゃないですか!」

 

 

 司の疑問に豊満な胸を張りながら青空は宣言する。

 

 

 「もう一度皆でショーをする、です!」

 「…え」

 

 

 思わぬ返答に思わず気の抜けた声が出た司に対し期待した反応が貰えなかった青空が頬を膨らませながら文句を言う。

 

 

 「むー、何ですかその反応。せっかく高らかに宣言したのに」

 「え、いや…もちろん嬉しいが…」

 

 

 青空の言葉に戸惑いながら司は何処か自信なさげに口を開く。

 

 

 「やって…くれるのか?俺はお前に…」

 「…ふっふ〜ん、何を言っているのやら」

 

 

 何時もとは違い不安そうな表情を浮かべる様子に青空は普段と変わらない笑みを浮かべると司と肩を組む。

 

 

 「忘れちゃったんですか?私は司くんに付き纏う事に決めてるんですよ。だから、司くんが何と言おうと一緒にショーをしてもらいます」

 「青空…」

 

 

 青空の言葉におもわず目尻が熱くなるのを感じるが堪える。今この場に必要なのは涙ではない、むしろその逆。

 再び共に歩んでくれると仲間が言ってくれるのなら未来のスターとして出すべき言葉は1つだけだ。

 

 

 「よし!!そうと決まればやる事は1つだ!!他のメンバーにも謝って、もう一度ワンダーステージでショーをやるぞーー!!」

 「おー!!!」

 「……」

 

 

 盛り上がる司達の姿に寧々は一瞬何かを喋ろうとするが思いとどまりその場を去っていく。

 それに気づいた青空が追いかけようとするも、突然糸が切れたかのように倒れ込んだのを慌てて司が支える。

 

 

 「青空!?大丈夫…か」

 「zzz…」

 「ね、寝てる…?」

 

 

 思えば昨日ショーが終わってから間を置かず攫われ目覚めてからはずっと戦っていたのだから身体に疲労が溜まっていて当然だ。

 気持ちよさそうに眠る青空を支えながら司は起こさないように細心の注意をはらいながら口を開く。

 

 

 「ありがとうな、青空」

 

 

 心からのお礼を伝えると司は青空をおぶりながら帰路に着く。ひとまず彼女を家に送り届けなければいけない、他のメンバーへの謝罪は明日以降にまた一緒に行くとしよう。

 そう誓う司の目にはすでに一片の曇りもなく、だんだん日が暮れてきて見えてきた星空と同じような輝きが宿っていた。

 

 

 




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 仮面ライダースカイ
 青空の変身する仮面ライダー。空を自由自在に飛行する能力を持つ。必殺技で展開される空間は飛行能力が無いと身動きが取れないため回避不能な一撃を繰り出すことが出来る。
 なおピエロは飛べる。


次回予告
 「どうしてここにいるんだ!?」
 「私にはステージに立つ資格はないから…」
 「シャアオラァ!」
 「貴方には私の物になってもらうわ」

 第5話 『魅惑の眼』
 「私の新しい力、お見せしましょう!」
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