プロジェクトセカイ feat  仮面ライダー   作:ミッツー116

33 / 34
 エピローグ史上もっとも長くなりました。1回書いたところはちょっと変えてダイジェスト気味。


第七話

 

 

 フェニックスワンダーランド、沢山の人々がアトラクションやショーを楽しみひと時の思い出を作る憩いの場所。

 その片隅にあるワンダーステージに少ないが観客が集まっていた。その内の一角に座ったラフな格好の青年、疾風翼は配られていたチラシを眺めながら共に来た友人達に話しかける。

 

 

 「無料のステージの割には人が少ないような…」

 「まぁ大きい遊園地だし…ここに来る時点でそんなケチらないんじゃないかな」

 「お兄さんのバイト場なんだよね…?」

 「あ、始まるんじゃない!?」

 

 

 あんまりな言い方をする瑠璃に共に来ていたクリーム色のツインテールの少女、小豆沢こはねが戸惑う中ステージのブザーがなる。

 黒いロングヘアーをなびかせた白石杏の言葉に視線を移すと幕が開き衣装を来た翡翠が現れる。

 

 

 「皆さん、今宵はワンダーステージに来てくださり誠にありがとうございます。私今回のお話の語り部を務めさせていただく…っとお話には特に関係ないので自己紹介は省かせて頂きます」

 

 

 お辞儀をしながら軽い挨拶を済ませると手の中の本を開くと物語のあらすじを語り始める。

 

 

 「本日のお話は『ツカサリオン』。むかしむかし、それはそれは栄えた大きな王国がありました」

 

 

 背部の壁に洋風な国の映像が浮かび上がると紫色の雲が蔓延り始め不穏な空気が流れる。

 

 

 「しかしそんな王国にも、いえ、世界の全てに危機が迫っていました。邪悪な魔王がその力で世界征服を企んでいたのです。そんな中、魔王を討ち滅ぼすため王国から王子は旅に出ることにしました」

 

 

 その言葉を最後にステージの袖に消えていくと反対側から司が出てくると剣を抜きながら歌を歌う。

 

 

 「俺の〜♪名前は〜♪ワンダー王国のペガサス王子〜♪あっしき魔王を倒すため〜♪たった一人で旅に出た〜♪」

 

 

 ステージを右に左に移動しながら歌うと最後に中心で大きく剣を掲げる。

 

 

 「待っている魔王!貴様を打ち倒し、俺は英雄になるのだ!」

 

 

 高らかに宣言すると剣を鞘に戻し再び王子は歩き出そうとする。しかしその行き先に突然青空が割って入る。

 

 

 「おっと!待ってもらいましょうか!」

 「む?何だ貴様は!」

 「人に名乗る時はまず自分からでしょうが!」

 「俺は今やった!」

 

 

 突然現れた謎の女に戸惑う王子に対し仕方なさそうに剣をしまうと敬礼をする。

 

 

 「私はここより遠く離れた国の騎士団長を務める者、名はスカイ!極悪非道の魔王の邪智暴虐を許せず孤軍奮闘するもの!」

 「難しい言葉がいっぱい使えて偉いな」

 「エッヘン!」

 「では先を急ぐので」

 「あ、こら!」

 

 

 褒められて気分を良くした騎士団長は胸を張って誇らしげにする。王子は今のうちにその横を通り抜けようとするとと慌てて戻される。

 

 

 「何だ!俺に何か用でもあるのか!」

 「すっとぼけても無駄です。最近ここらに出るという不審者…貴方ですね?」

 「ハァ!?」

 

 

 突然かけられた身に覚えのない言いがかりに王子が声を上げると騎士団長は剣を抜く。

 

 

 「人々に迷惑をかけた輩には少し痛い目に遭ってもらいます!」

 「くっ!待たんかバカモノ!」

 

 

 斬り掛かってきた騎士団長の剣を王子も自らの剣で受け止める。鍔迫り合いに発展する中王子は抗議の声を上げる。

 

 

 「俺はさっきここに来たばかりだ!噂になどなるはずがない!」

 「言い訳無用!あんな誰も居ないところで一人歌う不審者信用なりません!」

 「ミュージカルだぞこれ!」

 「ハッ!」

 

 

 王子のツッコミも届かず剣を押し出され距離が開く。すると騎士団長を地面を這うように斬撃を繰り出しそれに沿って火花が王子に向かって走り慌てて回避する。

 

 

 「ぬぉっ!?どうなってるんだ!」

 「鍛えればこれくらい出来る!」

 「無理だわ!」

 

 

 武器を剣しか持っていないのは同じだが騎士団長は遠距離の攻撃手段も持ち合わせているらしい。両者に緊張が走る中、間に入り込むように大荷物のジェルが走ってくる。

 

 

 「助けてー!!」

 「!?」

 「ど、どうした!?」

 

 

 助けを求める声に両者は揃って戦闘体勢を解く。次の瞬間、ドローンの大群が現れジェルを庇うように背中合わせになる。

 

 

 「こいつらは!?」

 「魔王の手下だ!しかし…こんな数に追われるとは…」

 「角を取ろうとしたら怒らせちゃって…」

 「…こいつが悪いな」

 

 

 そういいながらも魔物に襲われるジェルを守るために剣をふるう。浮遊するドローンが剣の動きに合わせてバランスを崩すと地面に落下していく。

 ドローンの数が減っていく中、息を潜めていた一機が騎士団長を襲おうとしたところを王子が斬る。

 

 

 「!」

 「次で最後だ!決めるぞ!」

 

 

 王子の言葉に騎士団長は同時に剣を振るう。全ての魔物を倒した事を確認すると騎士団長は剣を収め王子に向き直ると頭を下げる。

 

 

 「すいませんでした!」

 「む?」

 「不審者扱いは間違いでした…とんでもなく失礼な真似を…」

 「まぁ間違いに気づいてくれたならそれでいい」

 「いやいや!それではこちらの気がすみません!何かお詫びをさせてください!」

 

 

 その後騎士団長は王子が魔王退治の旅に出ていることを知るとついていくことを決める。その後襲われていた少女、商人のジェルを仲間に加えることになる。

 

 

 「私も〜旅についていきましょう〜♪」

 「未知の体験がしたいならこのジェルにお・ま・か・せ〜♪」

 「いや一人でいいんだが…」

 

 

 正確には無理についてきているだけである。王子の抗議を無視した旅を3人が続けていると3人は狩人に出会う。

 故郷の村がドラゴンのせいで食料難に苦しんでいる話を聞いた3人は解決のために動き出すことにする。

 美しい歌声で眠りにつくドラゴンの弱点を突くために歌の得意なロビット族の村にやってくるとそこで出会ったネネに救いを求める。しかし価値観の違いから説得が難航するなか魔王の手下、エムムが自らの育てたドラゴンと共にやってくる。

 

 

 「チッ!まさか向こうから来るとはな!」

 「しょうがない!戦うしかありませんよ!」

 「あぁ、やるぞ!!」

 

 

 王子たちは武器を取り出すと果敢にドラゴンに向かっていく。しかし圧倒的な実力差の前に地面を転がりながら倒れる。

 勝機が無いと判断した狩人が撤退を口に出すも王子はロビット族の故郷を守るためにその場を動かない。その姿を見たネネが前に出るとその口から美しい音色を響かせる。

 

 

 『〜〜♪』

 「これは…ネネ!」

 「手伝ってくれるんですね!」

 『ぐ、ぐぉぉぉ!!』

 「わわわ!ドラゴンちゃんが眠たくなってきちゃってる!?」

 「よし!完全に寝たら決めるぞ!」

 

 

 ネネの歌声により訪れた強烈な眠気に抗おうとドラゴンが吠える、しかしそれも長く持たないだろう。

 剣を握り完全に眠るのを今か今かと待ち構えたその時、ネネの歌声が止まる。

 

 

 「……どうした、ネネ!」

 『電池が切れそうです』

 「えぇぇ!?こんな時に!?」

 『充電を忘れていました』

 「笑えないジョークだ…」

 「ふっふっふ〜!何か知らないが好都合!ドラゴンちゃん!今のうちにやっちゃえ〜!」

 「ぐっ!」

 

 

 エネルギー切れにより歌えなくてなってしまった隙にドラゴンが動き出そうとする。絶対絶命のピンチの中、商人が何かを取り出す。

 

 

 「こんな時は…これで!」

 「何かあるのか!?」

 「この絶好調になる薬をかければきっと力も戻るはず!さぁ、ネネちゃん飲んで!」

 

 

 商人は取り出した薬を飲ませようとネネに近づくも、そこであることに気付く。ネネの口はオイルを入れるためのわずかな穴があるだけでこの薬を飲むことが出来ないのだ。

 無理にこの穴から入れようとしても全てきちんと使わなければ効果がない。少し考えるとネネの頭に薬瓶を持ち上げる。

 

 

 「かけちゃえ」

 『ガガガガビビビ』

 「おいぃぃぃ!!大丈夫なのかそれで!?変な音がなっているぞ!!」

 「いや、きっとおいしくてオーバーリアクションしてるだけだよ!」

 「確かにオーバーリアクションだな、煙が出てきたぞ」

 「ネネちゃぁぁぁん!」

 

 

 全身から噴き出した煙によりネネの全身が隠れていく。思わず一同は煙から逃れるためにステージ端に移動しエムムと並び立つことになる。

 もはやこれまでなのだろうか、そんな不安が王子達の胸を支配すると煙からネネの歌声が聞こえてくる。

 

 

 「〜〜♪」

 「これは…ネネの歌!」

 「わわ!まずいよー!」

 『zzz』

 

 

 再び聞こえてきた歌声は先ほどよりもクリアに耳に届き、抵抗する間もなくドラゴンを眠りにつかせる。

 

 

 「チャンスだ!」

 「村の皆のため、ここで仕留める!」

 

 

 狩人が弓が眉間を貫くのと同時に王子の剣がドラゴンの首を斬り裂く。ドラゴンは大きく叫びながら倒れるとエムムはその頭を何とか持ち上げながら走り去っていく。

 

 

 

 「く〜!今日のところはこのくらいにしてあげるから~!」

 「お達者で〜!」

 「今回の代金は王子にでいいのかな?それともネネちゃん?」

 「また請求するのか…」

 

 

 捨て台詞を吐いていくエムムを横目にそれぞれが口々に喋り出す。そんな中王子はネネを称えようと煙の方に振り返る。

 

 

 「ネネ!よくやってくれた!お前の歌のおかげで作戦は大成功だ!」

 「…本当、感謝してよね。私がいないとやられちゃうところだったんだから」

 「む?」

 

 

 煙から聞こえてくる声に違和感を感じる。先ほどの歌声と同じくやけに鮮明に聞こえることもだが何より口調があまりにも違う。

 首を傾げている内に煙が晴れていき、その姿が露わになる。サラサラとなびく長髪、パチパチと瞬きをする瞳、柔らかな皮膚。そこにいたのはロビット族特有の機械の身体ではない生身の人間だった。

 

 

 「「「「えぇぇぇ!?」」」」

 「おい!なんかとんでもないことになってんぞ!」

 「さ、流石は絶好調になる薬…ここまで絶好調になるとは…」

 「絶好調とかそういう問題ではないだろう!!」

 「な、なに?どうしたわけ?」

 「これどうぞ」

 

 

 予想外の自体に戸惑う王子達に一人状況が理解できていないネネに騎士団長は手鏡を取り出し手渡す。

 ネネは受け取った手鏡で自らの姿を確認するとワナワナと震え出す。

 

 

 「何これーーー!!?」

 「おい!もどんのかあれ!」

 「く、薬の効果が切れれば恐らく…」

 「どれくらいなんです?」

 「個人差」

 「ふざけるなよぉぉぉ!!」

 

 

 ドラゴンを倒したのにも関わらずパニックに支配されてしまう王子達。収拾がつかない状況の中語り部が出てくると、その手に何か看板のようなものを持ちながらも気にせず話し出す。

 

 

 「結局、王子達は一晩村で様子をみてみるもネネは元に戻らず。何があるかも分からないためネネも旅に連れて行くことになりました」

 「……お兄さん、なに一人で喋ってるんですか?」

 

 

 これまで通りの語り部のナレーションかと思いきや突然騎士団長が話しかける。声をかけられた語り部は看板をひっくり返すと地面に固定する。

 看板の文字を観客が目を凝らして読もうとすると背部の液晶に同じ文字が浮かび上がる。

 

 

 『勇者の剣、ここに眠る』

 「はいはい、いらっしゃい!ここはかつて先代の魔王を倒した勇者の聖剣が飾られた人気の観光スポットだよ!」

 「いや質問に答えてくださいよ…」

 「僕はここでだいだい勇者伝説を語り継ぐ一族の末裔…練習していただけさ」

 

 

 物語に参加し始めた語り部に客席が戸惑う中ステージの中心に岩山が現れその中心に聖剣が突き刺さっている。

 

 

 「あれが伝説の勇者の剣か…」

 「うむ!手下のドラゴンを倒したことで魔王も我々を放っておかないだろう!しかし!この剣があれば恐れるに足らずだ!」

 「でも、勝手に持っていってもいいのかな?」

 「いいんじゃない?ほらあれ」

 

 

 聖剣をもらおうとする王子に商人が不安を感じているとネネが指を指す。その先の液晶に今度はポスターが浮かび上がる。

 

 

 『勇者の聖剣チャレンジ!抜けたら持って帰ってよし!※素手でお願いします』

 「伝説の聖剣は勇者にしか使えないというからな。持てた時点で渡すべき人間ということだろう」

 「えぇそのとおりです、決してお金目的ではありません」

 「お金かかるんですか!?」

 「まぁ観光地だしね…」

 「よ、よし…まずは準備運動だ…」

 

 

 王子は少し緊張しながらも入念に身体をほぐしていく。その間の時間を潰すように騎士団長は狩人に話しかける。

 

 

 「そう言えば、もうドラゴン倒したのについてきてくれるんですね」

 「ネネの奴が薬の効果切れたあと一人で帰れないから来てくれって雇われたんだ。こいつの薬の支払いもあるから金はいるしな」

 「律儀ですね〜。しかし暇だ」

 

 

 王子のストレッチは相当入念に行われている。じっと待っているのが退屈なのか騎士団長は歩き出すと聖剣の方に向かう。

 それを見た王子はストレッチを止めると視線をそちらに移す。

 

 

 「お、おい…何する気だ?」

 「物は試し、1回挑戦してみようと思って」

 「どうぞ〜、1回3千円です」

 「たっけぇな」

 「よ〜し、では!」

 

 

 客席に身体が向くように立つと騎士団長は聖剣の持ち手を両手で掴む。

 すると騎士団長越しの液晶に輪郭をなぞるように空色のオーラが映し出されそれがしぼむと聖剣の刃が同じ色に輝く。

 

 

 「お、おぉぉお?お……」

 「スカイ!」

 

 

 オーラが完全に消えると騎士団長は岩山を転がりながら落ちていく。すぐに狩人が駆けつけるも目をグルグルと回しながら起き上がらない。

 

 

 「な、何が起こったんだ…」

 「勇者の聖剣は持ち主の生命力を力に変換するのです。そのため生半可な力では持とうとするだけで力の大半を消費し一振りすればもう使えない」

 「かつての勇者はそれを使いこなしたというのか…」

 

 

 語り部の話に王子は戦慄する。自分が挑戦したところで同じようになるだけではないかと動けずにいる中狩人の耳と尻尾が逆立つ。

 

 

 「!?」

 「あれ…?なんか天気が…」

 「これは…」

 

 

 ステージが暗くなり始め、天井に紫色の煙が立ちこめる。すると鋭い閃光が放たれ、液晶が割れるとそこから人影が出てくる。

 狩人は弓を構えると立ち上がり警戒を露わにしながら叫ぶ。

 

 

 「お前ら構えろ!とんでもないのが来るぞ!」

 「な、何だ!?」

 「うぐ…力が入らない…」

 

 

 狩人の言葉に王子も遅れながら剣を抜く。騎士団長は聖剣に力を吸われた結果立ち上がることすらできないのか地面を舐めるようにしながら人影を見つめる。

 人影は聖剣を掴むと力を吸われたのか身体を一瞬震わせるもそのまま引き抜く。

 

 

 「なっ!?」

 「聖剣を抜いた!まさか…本物の勇者!?」

 「いや違う!この匂い…魔物だ!」

 「それは違う、我こそは!」

 

 

 閃光が止むとその人影の姿をハッキリと唱えられる。荘厳な衣装に身を包み、鋭利な2本の角を携えた長身の男。

 この世界を支配しようと企み、たった今世界最強の武器を手に入れた悪魔。

 

 

 「魔王、ルーイである!!」

 

 

 その叫びと共にステージから観客席にまで届く突風が吹く。それだけで商人やネネは吹き飛びステージ上を転がる。

 何とかその場で耐えた狩人は体勢を整え再び弓を構えようとするがそれよりも早く魔王が動く。

 

 

 「さて…早速これを試すとするか」

 「カグラ!避けろ!」

 「!」

 

 

 王子は叫びと同時にその場から跳びその瞬間魔王が剣を振るう。

 すると轟音が鳴り響くと同時に狩人の周りにステージの天井から雷が囲むように落ちる。

 

 

 「ぐぁぁぁ!!」

 「カグラ!」

 

 

 落雷を受けた狩人が叫びと共に地面に倒れ込む。魔王はその結果に満足気に剣を眺めるとその切っ先を今度は王子に向ける。

 

 

 「お、王子様!何とかして!」

 「……ッ!」

 「ちょ、ちょっと…見てるだけじゃどうしようも…」

 

 

 商人とネネがまだ戦える王子に駆け寄るも王子は剣を構えたまま動かない。焦りが募っていくなか、突然飛び出してきた足に王子が蹴り飛ばされる。

 

 

 「うわっ!?」

 「王子…きゃっ!」

 「へっへ〜!捕まえたよ〜!」

 「2人とも!」

 

 

 飛び出してきた足の正体、エムムがネネと商人を捉える。2人を引っ張るとエムムは魔王の隣に立つ。

 

 

 「魔王様〜!この2人持って帰っていいですか!」

 「構わないが…どうする気だ?」

 「ふっふ〜、私の可愛いドラゴンちゃんを傷つけた報いを受けてもらうのだ〜!」

 「ふむ、では目当ての聖剣も手に入れたことだ。帰るとしよう」

 「ま、待て!」

 

 

 咄嗟に走り出そうとした王子だが再び閃光が魔王達を包み思わず立ち止まる。閃光が収まるとその場にはすでに魔王達の姿は消えていた。

 

 

 「そ、そんな…」

 

 

 2人を無残にもさらわれてしまったことで王子は膝から崩れ落ちる。ステージが暗転していくと語り部が観客に向かって語り出す。

 

 

 「圧倒的な魔王の力の前に何も出来なかった王子、大切な仲間もさらわれ絶望の淵に立ってしまいました。しかし、ここで諦めるわけにはいきません。仲間達は何とか王子を立ち上がらせようとします」

 「王子!早く皆を助けに行きましょう!」

 「ろくな事を考えてなさそうだからな、急いだ方がいい」

 

 

 2人の呼びかけに応えず王子は下を向いてうなだれたまま動かない。騎士団長が痺れを切らし手を引っ張って無理やり連れて行こうとすると振り払われる。

 

 

 「無理だ!俺にはどうすることも出来ない!」

 「っ!ちょっ…らしくないじゃないですか王子!」

 「何時もの自信家っぷりはどうした」

 

 

 弱気な台詞を吐く王子に2人は思わず戸惑う。狩人が普段を引き合いに出すと王子は背を向けながら口を開く。

 

 

 「…王子って言うのがどういう意味か知ってるか」

 「え、え〜…なんかこう…半円型に開いて仰いだりする」

 「扇ですね」

 「ボケてる場合か」

 

 

 神妙な面持ちで放す王子に少し顔を引きつらせると騎士団長が試しに冗談を言うもツッコんでくれない。代わりに語り部達がツッコむ中王子は話し続ける。

 

 

 「王の子供ということだ。俺自身が何かなし得た訳じゃない、なのに俺はずっとそう呼ばれてきた」

 「それは…仕方ないのでは。事実王子な訳ですし」

 「だが俺は嫌だった、父さんありきのこの呼び方が。だから英雄になりたかったんだ、俺自身をみてもらえるように」

 

 

 今までとは違った静かな声で語りながら王子は地面に座り込む。立てた片膝に腕を預けながら俯くと力なく続ける。

 

 

 「だが駄目だった。俺には勇者の剣を抜くことも、魔王に立ち向かうこともできない。所詮何かになれるような器じゃなかったんだ」

 

 

 王子の言葉に狩人は頭を掻きながら困る。そんな2人を交互に見た騎士団長は何かを決心したかのように息を整える。

 

 

 「王子…♪あぁ〜王子〜♪」

 「は?」

 「お前…何やってんだ?」

 

 

 突然歌い出した騎士団長に戸惑い出す王子達を余所に岩山を駆け上がると頂上で両手を大きく使いながら歌い続ける。

 

 

 「心が折れて…自身を失ってしまい深い闇に落ちた貴方…♪思い出して〜♪あの日の事を〜♪」

 「あの日?」

 「私達が出会ったあの日ですよ王子!」

 

 

 思わず聞き返す王子に騎士団長は岩山を飛び降りると剣を取り出し王子に向ける。

 

 

 「そこのもの!とまってもらいましょうか!」

 「っ!それは…」

 「近頃この辺りで不審者が出るという情報がありましてね!貴方のことでしょう!」

 

 

 出会った頃と同じ台詞に王子が反応を示すと騎士団長は剣をしまい再び歌い出す。

 

 

 「2人の出会いは最悪!でもすぐに私は知りました!貴方の気高い心を!」

 「スカイ…」

 「背中を合わせたあの日から〜♪私は貴方に着いてきた〜♪」

 

 

 騎士団長の歌は盛り上がりを増していく。少しずつ興味を示していく王子を狩人が見つめていると突然騎士団長が手を差し出してくる。

 

 

 「え」

 「はい、2番」

 「えぇ!?」

 

 

 予想外の発言に狩人は戸惑う。そもそも歌の概念が人間とは違うのに無茶だと思っているとスポットライトが狩人を照らす。

 

 

 「や、やるしかないのか…うっぅうん!」

 「がんば〜♪」

 

 

 軽い応援をしてくる騎士団長を若干睨みながらも息を整えると歌い出す。

 

 

 「俺は、狩人!獣人族のカグラ〜!村が危機に陥った時、オマエと出会った〜♪」

 

 

 そう言うと狩人は弓を取り出すも初めて会ったときは特に使わなかった事を思い出ししまう。

 

 

 「捕らえた獲物をどうしようと俺の自由だ。そう言った俺とおまえたちは牙をぶつけあった!なのにお前たちはドラゴン退治を買って出てくれた〜♪」

 

 

 歌の途中で狩人は少し悩むも何かを決めたかのように王子の方を向くと口を開く。

 

 

 「一度しか言わないぞ、感謝してる」

 「!」

 「私達が貴方についてきたのは貴方の心に惹かれたからです!生まれやお父さんの事は関係ありませんよ王子!いや、ペガサスくん!」

 

 

 2人の言葉を受けた王子にスポットライトが当たる。光に照らされながら王子はゆっくり立ち上がると顔を上げる。

 

 

 「俺は…オマエ達の期待には応えられないかもしれない」

 「大丈夫です!ペガサスくんの失敗なら我々が挽回します!」

 「ドラゴンの時も協力して何とかやったんだ、魔王も同じだろ」

 「……!」

 

 

 2人の言葉に徐々に目に意思を取り戻していくもあと一歩覚悟が決めきれずにいる王子。そんな時、語り部が伝承の描かれた本を取り出す。

 

 

 「勇者の剣、それは勇者だけが使える剣…ではない」

 「え…」

 「勇者の使った剣、ただそれだけの剣なのです。そして勇者とは勇気ある者のこと」

 「勇気ある者…」

 

 

 語り部はゆっくり前に出ながら王子を見るとそのまま続けていく。

 

 

 「かつて勇者の村を魔王の手下が襲った時、勇者は聖剣を見つけた。それが持ち手の生命力を奪い死に至らしめる事もあるということを知りながらも勇者は村のために振るった。その後、自分の命が無事だったことからたまたま勇者は自分の力を知ったのです。つまり、大切なのは力ではなく一歩踏み出すこと。そうでなければそもそも力に気づけることもない」

 「一歩踏み出す…」

 

 

 王子が自分の剣を抜くと見つめる。その隣に騎士団長と狩人が並ぶと王子に声をかける。

 

 

 「一緒に踏み出してみましょうペガサスくん!」

 「案外前の勇者なんかより凄い力が眠ってるかもしれないぞ」

 「2人とも…!」

 

 

 その言葉に王子、ペガサスは目を閉じると息を整える。そしてすぐに開くと音楽に合わせて歌う。

 

 

 「俺は…弱い…しかし!立ち上が〜る!」

 「おぉ!」

 「なぜなら〜♪俺は〜♪気高く!仲間と一歩踏み出すもの!」

 

 

 掲げた剣を収めると拳を握ると突き上げ叫ぶ。

 

 

 「未来の英雄!ペガサスだ〜♪」

 「よっ!英雄候補!」

 「ふっ、調子が戻ったな」

 「あぁ!心配をかけたな2人とも!急いで2人を助けに行くぞ!」

 「であれば僕にお任せを。近道を知っていますので」

 「おお!助かる!では行くぞ!」

 

 

 そう言うと4人は魔王城に向かい動き出す。

 

 

 「でも危ないですよ?どうしてきてくれるんですか?」

 「勇者の聖剣が無いと商売にならないので」

 「どうして魔王城の近道なんか知ってるんだ?」

 「今の魔王が現れる前は先代魔王の住処として観光ツアーしてたので」

 「伝承を金儲けに使いすぎだろう!」

 

 

 4人がステージの端に消えていくと幕が閉じる。少しして再び幕が開くと赤色の明かりに照らされた空間で檻にジェルとネネが囚われている。

 

 

 「どうしよう〜、みんな助けに来てくれるかな〜…」

 「でも…きっとこれ罠だよ…助けに来たら王子達の方が危ないかも」

 「でも来てくれなかったら私達が危ないじゃん!」

 

 

 自らの命の危機に取り乱すジェルに逆に自分は冷静になっているのかネネは脱出の術を考える。

 幸い荷物などは没収されなかった、ジェルのカバンに何か使えるものはないだろうか。

 

 

 「そのカバン、檻を切れるようなものないの?」

 「うーん、ノコギリはあるけど…これ生き物の角とか切るようだからな〜。あとは…身体が小さくなる薬はあるけど」

 「それ!飲めば出れるんじゃないの!?」

 

 

 ネネはジェルの取り出した薬瓶を取り出すと飲もうとし、止まると自分の手を見る。

 この身体になったのもジェルの薬のせいである。嫌な予感がし飲む前に一応話しかける。

 

 

 「これ、副作用は」

 「身体が溶けて液体になる」

 「劇薬!!」

 「それ〜、檻にかけたら出れちゃいそう〜!」

 「確かに…え?」

 「ふふふ」

 

 

 聞こえてきた声に振り向くといつの間にかステージに上がっていたエムムがニコニコと立っている。

 脱出を企んでいた2人からすればその笑顔は恐怖でしかない。エムムは薬瓶を奪い取るとボウリングのように地面を転がしていく。

 

 

 「あぁ!」

 「もう〜油断も隙もないな〜!」

 「わ、私達をどうする気なの…!」

 「ふっふ〜!聞きたい?それじゃあ聞かせて上げる!」

 

 

 妖しい光がステージを照らし幾つものスポットライトがあちこちを無茶苦茶に照らし始めては消える。

 同時に流れたポップな音楽の中心でエムムが踊ると魔物ドローンが周囲から現れる。

 

 

 「私はこわ〜い魔物、お世話担当エムム!今から趣味をご紹介〜♪」

 「「趣味?」」

 「趣味!人間達を捕まえて〜♪おもちゃにしちゃって遊ぶのだ〜♪」

 

 

 ステージの壁に立てかけられたさまざまな武器を指で順番に揺らしながらスキップをしてこれからの事を楽しそうにかたる。

 

 

 「ハンマーで叩いたり〜♪身体をギコギコしちゃったり〜♪色々あるけど君等にはやっぱり〜♪」

 

 

 曲の終わりが近づくとエムムはステージの端に移動し腕をツッコむ。するとステージの照明が激しく明滅しドラゴンの叫び声が聞こえる。

 

 

 「こ・れ・か・な〜」

 「な、なに…!?」

 

 

 突っ込んだ腕をゆっくりと引き抜く。その腕にはかつてペガサス達が協力して打ち倒したドラゴンの頭が生えており巨大な顎をネネ達に向ける。

 

 

 「別に驚かなくても。育てた生き物を食べたりお洋服にしたり人間だってするでしょ?」

 「あのドラゴンを…武器にしたってこと!?」

 「プロのお世話係としては本当はもうちょっとおっきくしたかったんだけど…まぁここでお仕置きに使うくらいなら問題ないよね!」

 

 

 ドラゴンのガチガチと音を鳴らして遊びながらエムムは笑う。口が開く度に少し火を噴くことからドラゴンの能力も健在だ。

 檻のなかで身を寄せ合う2人にエムムはドラゴンの首を構えながらゆっくり近づく。

 

 

 「この牙で噛みつこうかな〜?それとも炎で丸焼きにしちゃおうかな〜?悩むな〜」

 「こ、こないで…」

 「決めた!」

 

 

 恐怖で顔を引きつらせるネネ達に対してエムムは笑顔を深めると大きく腕を振り被る。

 

 

 「ガブガブしたあとに焼いて食べちゃおう!!」

 「いやぁぁぁ!!!」

 

 

 檻ごと噛み砕く勢いで迫るドラゴンの頭に思わずジェルが叫ぶ。

その身体に牙が突き立てられようとしたその時、地面を走る火花がエムムを吹き飛ばす。

 

 

 「うわわっ!?」

 「え…?」

 「もしかして!」

 「お待たせしました!まだ無事ですね2人とも!」

 

 

 火花が飛んできた方向からスカイが姿を表しネネ達が喜びの声を上げる。

 2人が無傷なことを確認すると剣を構えながらエムムと対峙する。

 

 

 「ぐぬぬ、どうやってここが〜」

 「観光案内です!」

 「え?」

 「ていうか一人!?王子たちは!?」

 「ペガサスくんたちは魔王の方に一直線です!私は2人を探すために城の中を駆け回る役!」

 

 

 役割分担をして一人ここまで来たことを告げるスカイ。それを聞いたエムムは笑みを浮かべると勝ち誇ったように叫び出す。

 

 

 「ハッハーー!一人でこのエムムを相手に戦おうなんて甘々のキャンディ!舐めすぎだよ!」

 「舐めているのはどっちか…教えてあげますよ!」

 

 

 舌戦を繰り広げた直後ドラゴンの口から炎が吐かれる。それに対しスカイが剣を振るうと炎が2つに割られる。

 

 

 「そんなバカな!?」

 「鍛えればこれくらい出来る!」

 

 

 出来てたまるかと言わんばかりの表情を浮かべながらエムムは空いた手を再びステージ端に突っ込むと今度はドラゴンの尻尾が装着される。

 右手から左手にかけてドラゴンの身体を貫通しているような状態になりながら尻尾をムチのようにしならせるとスカイを狙う。

 

 

 「ふんっ!」

 「なぁっ!?」

 

 

 腹部を狙って放たれた尻尾を両手でしっかりと受け止める。そのまま回転するとエムムを砲丸投げのように振り回す。

 遠心力により徐々に足元がおぼつかなくなりあわや飛び上がるのではというところでエムムの腕から尻尾が抜ける。

 

 

 「あわわ!この〜!」

 「ハァッ!」

 

 

 武器を片方失ったエムムが慌てて牙で襲いかかるもスカイに蹴り上げられ頭も手から外れてしまう。そのまま落ちて来た頭をスカイが蹴り飛ばしてぶつけると勢いよく地面を転がっていく。

 

 

 「さて、決めさせていただきます!」

 

 

 剣を上に投げると返す手で逆手に持ち替える。そのままエムムに向かって走るとすれ違いざまに剣を振るいながら地面を滑る。

 液晶に光の軌跡が描かれエムムの身体を二分すると最期の力エムムが喋る。

 

 

 「そんな…私が人間に負けるなんて…」

 「王子は王の子供、勇者は勇気ある者、それなら騎士団長は何なのか」

 

 

 スカイは振り返ると剣でエムムを刺しながら得意気に叫ぶ。

 

 

 「国で一番強いということです!」

 「う、うゎぁぁぁあ!!」

 

 

 地面が開くと断末魔と共にエムムが落ちていく。それを見届けるとスカイは剣で檻を切り裂き2人を救出する。

 

 

 「よし、先を急ぎましょう!魔王を倒すには全員の力が必要です!」

 「わ、私達の…?」

 「何が何だか分からないけど…取り敢えず行こう!」

 

 

 2人の手を引くとステージから去っていく騎士団長。再び幕が閉じると禍々しい音楽が鳴り始め、巨大な玉座に腰掛けたルーイのいる部屋へと場面が移り変わる。

 

 

 「エムムがやられるとはな…お前らの仲間は存外やるらしい」

 「…気づいていたか」

 

 

 ルーイの言葉にステージの両端からペガサスとカグラが現れる。少し遅れてペガサスの後ろから語り部が現れるとその背中に隠れながら叫ぶ。

 

 

 「僕は戦いませんよ!」

 「ここまでの協力で十分だ!」

 「あぁ、やるぞペガサス!」

 

 

 何時もの弓ではなくナイフを取り出すとペガサスと共にルーイに向かっていく。迫りくる2人に対し勇者の剣を掴むと雷鳴と共に斬り払いを放ち2人はそれぞれ逆方向に回避する。

 

 

 「まずは…貴様からだ!」

 「ぐっ!」

 

 

 ルーイはカグラの方に近づくと聖剣を振るう。間一髪で避けナイフを突き立てようとするも腕を捕まれ防御され前蹴りで距離を開かれると聖剣の雷を浴びせられ壁に叩きつけられる。

 

 

 「ぐぁぁぁ!!」

 「カグラ!このっ!」

 

 

 苦痛に声を上げるカグラを救おうと走り出すとルーイがペガサスに向けて再び剣を振るったのを何とか回避する。

 攻撃の度に雷撃が振り注ぎ近づくことすら難しい。語り部に関してはとうの昔に当たり倒れたまま動かない。

 

 

 「くっそぉぉぉ!!」

 

 

 何とか近づき突きを放つもルーイに刀身を捕まれる。抜こうとしても魔族の腕力に敵わず聖剣が振り下ろされようとした時、ルーイの顔に何かの薬瓶がかかると突然顔を押さえながら苦しむ。

 

 

 「ぐぉぉぁ!?」

 「みんな!大丈夫!?」

 「あの薬瓶お前のか!?」

 「身体が小さくなる薬!副作用で身体が溶ける!」

 「魔王に効くの劇薬すぎるだろう!」

 「こんな物が効くかぁ!」

 

 

 カグラの言葉を否定するように顔をあげたルーイは薬で焼けた結果顔半分が赤く変色している。

 それでもまだ動けるであろうルーイを前にスカイも剣を抜くと前に出る。

 

 

 「2人とも、まだいけますか!」

 「あぁ!攻めまくるぞ!」

 「舐めるなぁ!」

 

 

 ルーイが激昂と共に振るった聖剣からの雷撃を転がるように回避すると3人同時に刃をルーイに振る。それを受け止めるとルーイは横向きに剣を振るいペガサスとカグラが下がることで回避する中スカイはその場でしゃがみ込むことで回避し雷撃が降り注ぐ中斬り上げを放つもルーイは間一髪で躱す。

 

 

 「惜しい!」

 「ふざけるな!」

 

 

 ルーイは掌底を放ちスカイを吹き飛ばす。観客席すれすれまで地面を滑っていくスカイを受け止めるとペガサス達は再びルーイに向かっていく。

 何度も立ち向かって行くペガサス達をみて自分たちも何かしようとジェルのカバンをネネや語り部達も漁っていく。

 

 

 「さっきの薬はあれしかないんですか!?」

 「私の薬はどれも一点ものなの!ていうかあとはどれも調子が悪くなるような薬ばっかりで…」

 「どんな薬なのそれ…」

 「えっと…お腹が痛くなる薬…偏頭痛がひどくなる薬…鼻が詰まる薬…」

 「嫌なのばっかりだ…」

 「あ、これが一番最悪。絶不調になる薬」

 「それ!」

 「え?」

 

 

 ジェルが最後に出した薬をネネは勢いよく引ったくる。一瞬の躊躇うような素振りのあとに蓋を開けると勢いよく飲み干す。

 

 

 「あぁーー!!何やってんの!?」

 「う、うぐぅっ…う…」

 

 

 ネネが薬を飲み干すと同時に煙が漂い始めその身体を包み込む。不安そうな顔でジェル達が見つめる中ペガサス達が地面に倒されルーイがとどめの一撃を放とうとした、その時。

 

 

 『とーう!!』

 「な、ぐぁっ!?」

 

 

 煙を勢いよく吹き飛ばし、機械の身体に戻ったネネが足のジェットエンジンで飛び上がるとルーイを吹き飛ばす。

 地面に着陸するとファイティングポーズを取り格闘ゲームのキャラクターのように身体を上下させる。

 

 

 「戻った!?」

 「そうか!絶好調になる薬が絶不調になる薬で打ち消されたんだ!」

 『この身体なら戦えます』

 「態度も戻った!」

 

 

 臨戦態勢を取るネネの姿に士気が高まるペガサス達。再度攻撃を仕掛けようとした時、ルーイが剣を突き上げそこに向かって天井から雷が落ちる。

 

 

 「調子に、のるなぁああ!!」

 

 

 叫びと共に剣を横薙ぎに振るうと今までで一番の轟音と共にステージ中に雷が落ちる。それと共に照明が落ちるとステージが暗闇に包まれ何も見えなくなる。

 

 

 「ハァッ、ハァッ、ハハッ、ハーーハッハッハ!!見たか!これが我が力だ!」

 

 

 暗闇の中、わずかな明かりに照らされたルーイの笑い声が響く。自らに歯向かうものを消し去った喜びを噛みしめるように笑うと剣を眺める。

 

 

 「ははは…素晴らしい剣だ!これさえあれば世界は我が物…」

 「いや、そうはならない…」

 「あ…?」

 

 

 暗闇にうっすらともう一つの明かりが灯る。それに照らされながらゆっくりと立ち上がるペガサス。

 2人だけがステージに存在しているかのような光景だ。

 

 

 「まだ立つのか…諦めの悪いやつだ」

 「当たり…前だ…!」

 

 

 手に持った剣をルーイに向けて構える。その姿にルーイは見下したような目を向けながら笑う。

 

 

 「哀れだな、ワンダー王国の王子よ」

 「…!?俺を知っているのか…?」

 「あぁ、生み出した魔物が見たものは全て我にも伝わる。お前が初めて魔物を倒したときからずっと一匹つけさせていたんだよ」

 

 

 ここに来るまでのペガサスをずっと見ていたというルーイ。彼の出自などもここに来るまでの会話を盗み聞いていたのだろう。

 

 

 「俺の何が哀れだ!」

 「偉大な王への嫉妬から旅に出たがお前が何をなした?ドラゴンを倒せたのも仲間のおかげ!聖剣は抜けず魔王に立ち向かうこともできなかった弱虫だ!」

 

 

 王子を嘲笑い馬鹿にするルーイ。それに対し、ペガサスは視線を一瞬落とすもすぐに前を向く。

 

 

 「確かに、お前の言う通りかもしれない」

 「なに?」

 

 

 予想外のペガサスの反応にルーイは思わず聞き返す。それに対し真っすぐと見つめながらペガサスは続ける。

 

 

 「俺は他人に認められたくて旅にでた。王子ではなく俺自身が何者かになりたくて…だが、それはもう気にしない!」

 「ハッ!諦めたか…!ますます滑稽だな!」

 「そうではない!」

 

 

 ペガサスを照らす明かりがどんどん強くなっていく。範囲を広げるそれはステージを徐々に照らしていき、倒れ込む仲間達の姿をうっすらと照らす。

 

 

 「俺の望み、それはすでに叶った!」

 「何だと…」

 「ここにいる仲間!こんな俺自身を信じ着いてきてくれた者たち!それこそが俺の求めていたもの!だから俺の望みはもうない!」

 「ならばなぜここに来た…!英雄になることも欲さず、富が欲しいわけでもない…!どうしてここに…」

 「決まっている!」

 

 

 魔王の問いにペガサスは笑みを深める。照明が次々と復活していき、照らされた仲間達も立ち上がっていくとペガサスは大きな声で叫ぶ。

 

 

 「皆を笑顔にするためだ!」

 「笑顔、だとぉぉぉ!!」

 

 

 ペガサスの言葉を理解できない魔王は聖剣を振り上げる。魔王の周りをオーラが漂い、聖剣に吸収されていく。

 攻撃に備えようとスカイは剣を構える。しかし、次の一撃が放たれるとこはない。

 

 

 「あ、あぁ…?ハァッハァッ、ハァ…何だこれは…」

 「来た!今だカグラ!」

 「まかせろ!」

 

 

 掲げた剣を振り下ろすことも出来ず魔王の動きが止まる。その瞬間を待っていたペガサスの合図と共にカグラは弓を射ると聖剣をはじき飛ばす。

 

 

 「やった!」

 「何だ……!どうなっている…!」

 「出番だぞ語り部!」

 「説明しましょう!」

 

 

 誰が見ても弱っている魔王に対し先ほどまでと打って変わって元気に語り部が前に出ると伝承の描かれた本を取り出し読む。

 

 

 「勇者の聖剣!その正式名称は『生命力を吸う剣』!略して生剣!担い手の生命力を糧に強力な雷撃を発生させる力を持つ剣!」

 「調子に乗って剣を使いすぎたな!お前の生命力は枯れ果てたんだ!」

 「いや〜お察しします、キツイですよねそれ」

 「舐、め、る、な〜!!」

 「っ!ペガサス!」

 

 

 魔王がその手にオーラを溜める。それを見たカグラは弾いた剣を拾い上げるとペガサスに向けて投げ渡す。

 ペガサスの腕から黄金のオーラが剣に向かって吸い取られていくとそのまま膝をつく。

 

 

 「人間ごときが使えるか!これで終わりだぁ!」

 「させません!」

 「同感だな!」

 

 

 魔王がオーラを解き放とうとしたのをスカイとカグラが掴みかかる。本来なら簡単にはじき飛ばせるはずの2人を力を吸い取られた今の状態では全力でも振りほどけない。

 2人が時間を稼ぐ中膝をつくペガサスをネネとジェルが支えながら立たせる。

 

 

 「ペガサスくん!」

 『我々が支えます。存分に剣をお使いください』

 「助かる…!行くぞ!魔王ルーイ!」

 「!」

 

 

 2人に支えられながら両手で勇者の剣を天に掲げる。天井から雷が落ち剣が眩く輝きを放つとそのまま一気に振り下ろす。

 

 

 「これで…おわりだぁぁぁ!!!」

 「ぐ、ぐぉぉぉぁぁぁ!!」

 

 

 ペガサスと魔王のあいだを落雷が走っていきそのまま魔王の身体を貫く。大きく断末魔を上げながら閃光が走るとそのまま消え去る。

 

 

 「やった…のか?」

 「やりましたよペガサスくん!我々の勝利です!」

 「は、ハーハッハ…これぞ…俺たちの底力…だ」

 「満身創痍だ…」

 

 

 手に持った勇者の剣を落としながら勝利の喜びを分かち合う。地面に座り込むとペガサス達はこれからの事を話し合う。

 

 

 「ふー、さて…国に帰る準備しないと…騎士団の皆も待ってるだろうし」

 「そう言えば騎士団長だったな…すっかり忘れていたぞ」

 「俺は村に帰るか。ネネのやつも送らないとだしな」

 『無事元の身体にも戻れました。お願いします』

 「剣はどうします?持つだけで生命力を吸われるんじゃ運ぶのも一苦労です」

 「あ、それはご心配なく」

 「?」

 

 

 語り部は懐をガサゴソと漁ると手袋を取り出しはめる。そのまま生剣を持つと紐を巻き付け背中に背負う。

 

 

 「これ直に手で持たなければ生命力吸われないので。普通に帰れます」

 「…そう言えば、チャレンジの看板にも」

 「素手でやるよう書いてたな」

 「伝承の剣はただの使いにくい武器、勇者は元気なだけの男だったわけか…」

 「がっかりしましたか?」

 「いや、いい!」

 

 

 ペガサスはスカイの言葉を否定すると立ち上がり、仲間達の方に振り返る。

 

 

 「お前たち、共にワンダー王国に来てくれ!国民に紹介したい!魔王を倒した最高の仲間たちをな!」

 「ふっ、いいのか?名声を独り占め出来ないぞ」

 「もちろんだ!この勝利、全員で掴んだものとして発表する!」

 

 

 自らの剣を引き抜くと客席側に振り返り天に掲げる。

 

 

 「俺は英雄ではない!だが、俺たちは英雄だ!」

 

 

 ペガサス、英雄は剣を掲げながら叫ぶ。自らの誇りたる仲間たちの名声を天に知らしめるように。

 しかし、そんな彼の仲間の英雄たちはというと。

 

 

 「この剣、量産すればものすごいお金に〜…」

 「あ!こら!泥棒!」

 「バレた!カグラくん手伝って!持って帰ったら薬代チャラ!」

 「マジか!任せとけ!」

 「いやー!一族の家業が〜!僕の悠々自適な暮らしが〜!」

 「駄目ですよ2人とも!泥棒は犯罪です!」

 「全然聞いてないなこいつら…」

 「どうするの、ペガサス?」

 「う~む…ってまた人間になってる!!」

 

 

 自由奔放にステージ上で騒ぎ始めた仲間達にペガサスは頭を悩ませる。一体どうするべきか、悩んだ果てに1つの結論を出す。

 

 

 「よし、歌うぞ!」

 「なんで?」

 「決まっている!ミュージカルだからだ!」

 「また言ってるんですかそれ」

 「歌に始まり歌に終わるのだ!行くぞお前たち!曲名は…」

 

 

 ペガサスが鳴り始めた音楽に乗せて言葉を発しようとした時、語り部が指を鳴らすと全員の動きが止まり世界が暗転する。

 スポットライトが翡翠だけを照らすと手に持った本を開いて語り出す。

 

 

 「さて、我々ワンダーランズ☓ショウタイムの物語は楽しんでいただけたでしょうか。これからも我々の物語は続いていきますが、ここで取り敢えず一区切り。皆さんには別の物語が待っています」

 

 

 ステージに設置された液晶に何処かの部屋の様子が映し出される。そこでは白い長髪の少女が電気もつけずにパソコンの前で何かを必死に打ち込んでいる。

 

 

 「今度の物語は人々が寝静まる頃に集まる少女達の物語、それは生きることへの深い絶望とどう向き合うかのお話。そして…」

 

 

 ステージの上にスポットライトが2つ増えそこには仮面ライダーが立っている。そこにいるのはかつて約束を果たすために奔走した少年少女達を襲った仮面ライダースワンプ、そしてそれに酷似したくすんだ色のライダー。

 それぞれ同じ武器を逆手と順手で持つとステージの中心でぶつかり合う。

 

 

 「少女達と仮面ライダーが出会う時、新たな物語が始まります。彼らがどう生きるのか、その鍵となるのは果たして…」

 

 

 そこまで言うと本を閉じ、立てた指で口を押さえながら呟く。

 

 

 「あまり喋りすぎてもつまらない。それでは皆さん、また会う日まで」

 

 

 そう言うと再び指を鳴らし世界が元に戻る。ペガサスは音楽が鳴り始めると曲名を宣言する、自らの想いから生まれた曲の名を。

 

 

 「セカイはまだ始まってすらいない!」

 

 

 ワンダーランズ☓ショウタイム編 完

 

 

 ワンダーランズ☓ショウタイム短編①「耐えろ、ワンダーステージ」

 

 

 数々の苦難を乗り越え、再びワンダーステージに戻ってきた一同は『ツカサリオン』のリベンジを考えていた。

 

 

 「どうせなら演出をパワーアップさせるぞ!各自アイデアを!」

 「はい!斬撃を飛ばしたいです!」

 「ふむ。剣を使った遠距離攻撃なら火花を使った仕掛けで何とかなりそうだね、意外性もあるしいい案だ」

 「はいは〜い!私、翡翠くんがやってたやつみたいなのやりたいな!あの、ガチャガチャキーン!ってやつ」

 「カスタムアップのことか?ドラゴンを装備に変えるってことなら頭とか腕に付けれるようにするか」

 「ドラゴンのお世話係だしそっちのがぽいよね!」

 「うむうむ、いい感じだな!」

 「…どうかな」

 

 

 話し合いが盛り上がりを見せる光景に満足気に頷く司に対し寧々は少し不安そうな顔をする。

 確かに様々なアイデアが出るのはいいことだがこのまま行くと恐らく。

 

 

 「魔王との戦闘ももっと派手にすべきです!」

 「この間実験したステージ上に雷を発生させる装置が使えそうだねぇ!幾つも設置して雷を落としまくろうじゃないか!」

 「あの床のどんでん返しも使おう。負けたやつが落ちるとか」

 「これ、ステージ持たないんじゃない?」

 「結局自分の手で壊すことにならないのを祈るよ」

 

 

 ワンダーランズ☓ショウタイム短編②「ショーの弊害」

 

 

 「お兄ちゃん、あの人の言っていたことって…」

 「……」

 

 

 ヒュプノが言っていたステージを壊すことが神楽自身の望みであるという話、その真相を聞こうと意を決して話を聞こうとするえむ。

 

 

 「分かった、皆にも話そう」

 「神楽くん…」

 「別に無理に話さなくてもいいんだぞ。あいつは小さな感情でも増幅させると言うし…」

 「あれは一ヶ月前、中等部の可愛い子と付き合っていた時のこと…」

 「思ってた話とは違うかもしれん」

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 「先輩、私達別れましょう」

 「……」

 

 

 当時の彼女から放たれた言葉を神楽は頭を掻きながら受け止める。正直今更動じる内容ではない、理由だけ聞いてさっさと別れることにする。

 

 

 「私、見ちゃったんです」

 (そのパターンか)

 「こないだフェニックスワンダーランドの小さいステージで…」

 (ん?)

 

 

 てっきり妹か他の女の子といるところを見られてしまったものだと思ったがどうやら違うらしい。

 

 

 「先輩が昆布の格好してゆらゆらしているところを!」

 「予想外のパターン」

 「休日に海藻になる人とか無理!蛙化です蛙化!!」

 「なってたのは昆布なのに」

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 「あの時に脳裏によぎったショーをやめようかという気持ちを増幅されたに違いない」

 「だとしたら恐ろしい能力だな」

 

 

 ワンダーランズ☓ショウタイム短編③「定着のわけ」

 

 

 これは新学年が始まったばかりの頃、新しいクラスでの教師の話も終わり翡翠は家に帰ろうとしていた。

 

 

 「部活何にする?」

 「演劇部とかあるらしいよ〜。チャレンジしてみようかな!」

 (新入生か。すぐ友達が作れるのは若い証拠だな)

 

 

 1つしか違わないのに老人臭い事を考えながら廊下を歩く。そんな時、教室から出てきた1人の少女と目が合う。

 

 

 「ん」

 「あ」

 

 

 銀髪のボブカットを来た女子生徒、外国の血を感じさせるその少女は翡翠の顔を見ると叫ぶ。

 

 

 「あー!!こないだの人!」

 「お前は…前に変な泥人間にあった時の」

 

 

 先日の戦いからも何度か同じような事で呼び出されあってはいたが関わらないようにしていた、まさか同じ学校に入学してくるとは。

 少女は嬉しそうな顔をしながら口を開く。

 

 

 「ラッキー!話したかったのにいつもすぐ帰っちゃうから!神楽くんと毎回残念がってたんだよ!」

 「神楽…?あいつの名前か…」

 「ねぇ〜、仲良くしようよアニキ〜。同じ仮面…むぐっ!」

 「言うなバカ。こういうのは正体を隠しておくもんだ。それと…アニキってのは何だ」

 「プハっ!」

 

 

 正体をバラしかけた少女の口から手を離す。何だか危なっかしくて見ていられない。

 

 

 「日本では尊厳する異性をアニキって呼ぶんでしょ!前に私を助けてくれたからアニキ!」

 「誰に日本語教わったんだお前…」

 

 

 少女の言葉に呆れながらも考える。流石に同じ学校になった以上今までのように関わらないのも無理がある。呼び方に関しても幼なじみからはあだ名で呼ばれているし気にすることもないだろう。

 

 

 「今日この後の予定あるか?3人で話そう」

 「本当!?やったー!」

 

 

 両手を上げて喜ぶ少女の姿に少し頬が緩む。素直な人物なんだなと思っていると少女は振り向きながら笑う。

 

 

 「私聖ジェル!よろしくねアニキ!」

 「あぁ、よろしく」

 

 

 ーーーーーーー

 

 

 「この時きちんと呼び名を訂正させておけば学校で『年下の可愛い子に変な呼び方させてる変態』と呼ばれることもなかった」

 「前に言ってた後悔ってそれじゃないよねアニキ」

 

 

 ワンダーランズ☓ショウタイム短編④「今はセカイに」

 

 

 「どうしましょうかこれ」

 「うーん」

 

 

 活動を始めたばかりの頃、草刈りを命じられた青空とジェルは頭を悩ませていた。指示通り全ての枝を狩り終えたのだがとんでもない量だ。

 

 

 「神楽くんは焼却炉に持っていけばいいって言ってたけど…」

 「これだけあるなら何かしたいですよね」

 「「う~む…」」

 

 

 ーーーーーーー

 

 

 「それじゃあドラゴンのサイズはこれくらいで…」

 「アニキー!これ見てー!」

 「ん?」

 

 

 ステージで司達と打ち合わせをしていた翡翠の元に自分を呼ぶ声が聞こえ振り返る。そこには全長5メートルはある枝や葉っぱで出来たロボットを錬金術で生成したジェルと青空が嬉しそうに走ってくる。

 

 

 「これ入り口に飾りましょうよ!お客さん絶対増えますって!」

 「許可する」

 「せんわ!」

 「「「そんな!こんなにかっこいいのに!」」」

 『ロボは私だけで十分だから』

 「自認もロボなんだね」

 

 

 ワンダーランズ☓ショウタイム短編⑤「これが僕らのCHEMY×STORY」

 

 

 ケミーだらけになってしまったワンダーランドのセカイ

 

 

 「キャッチュラーくんはインセクトじゃなくてアニマルなんだ」

 「節足動物の扱いを虫とは別にしているようだね。ブッサソーリくんもアニマルだし」

 「大真面目に類がブッサソーリとか言ってるのおもろいな」

 「どうでもいいが俺には近づけるなよ」

 

 

 分類がどうあれ司にとっては虫らしい。皆でワイワイとケミー達と触れ合う中、青空は頭を悩ませていた。

 

 

 「むむむ…」

 「どうしたの〜青空ちゃん。おでこにおばあちゃんになっちゃってるよ?」

 「うーん、この子なんですけど」

 

 

 青空は手に持った携帯電話を模したアーティファクトケミー、スマホーンを見せる。

 

 

 「その子がどうしたの?」

 「ワンダーテレフォンもあるのにどっちを使えばいいのか分からなくて…」

 「ケミーを普段使いしようとするな」

 「でもケミーの皆と出来るだけ一緒にいて仲良くなりたいじゃないですか!かといってせっかく作ってくれた物を使わないのも申し訳ないですし…」

 

 

 頭を抱える青空に司は放っておこうとすると翡翠が歩いてくる。代わりに止めてくれるかと期待して動きを見つめる。

 

 

 「単純に機能で便利な方を選べばいいだろ」

 「そういうことではない」

 「それぞれの長所と言えばワンダーテレフォンはスライダーモードへの変形やセカイとの通信、スマホーン君は自立して動いてくれるところだろうね」

 「うーん、可愛いのはスマホーンちゃんです」

 

 

 類まで参戦し利便性を追求し始める。メンバーの倫理観が危ういのかもしれない。

 

 

 「普段から登校にビークルケミーを使うわたしとしてはだな」

 「聞き捨てならない情報出てきたぞ!」

 「一番オススメはスパイクルだ。はたから見ても何の異常性もないし漕ぐのを補助もしてくれる。たまにチャリに乗る時にペダルに足叩きつけて激痛に悶えるということも勝手に避けてくれるケミーならまず起こらない」

 「確かにちょっと便利そうだが…」

 「なるほどそう考えると…一番は目覚まし機能をしてもらうことですかね」

 「青空君の眠りの深さに応じて対応を変えてくれるというわけだね、いいんじゃないかな」

 

 

 青空は頭の中でスマホーンに朝起こしてもらう場面を想像する。深い眠りについた自分を健気に起こそうとしてくれる可愛らしい姿、そんな相手に対し自分がやるであろう行動。

 

 

 「私寝起き悪すぎて目覚ましぶん投げて壊す時あるんですよね」

 『スマッ!?』

 「ちなみに一番オススメしないのエクシードファイターだ。Gで死ぬかと思うぞ」

 「何度でも言うぞ、ケミーを普段使いするな」

 

 

 

 




 ワンダーランズ☓ショウタイム編終了です。次回はRE'BEGINS編で顔見せしたスワンプの本格的な出番にもなります。
 正直一番書くのムズそうで今から怖い。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。