プロジェクトセカイ feat  仮面ライダー   作:ミッツー116

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 また話が長くなってしまいました。この章が今までで一番ライダーっぽいキャラクターかもしれません。


第二話

 

 

 夏が明けたばかりの時期だった。まだまだ残った暑さを感じながら家に帰った夕暮れ時。

 家に帰った俺の前に広がっていた惨状。

 

 

 「父さん!母さん!美樹!」

 

 

 血に染まった部屋の中で必死に家族の名を叫んだ。まだ息をしていた妹を抱き寄せると力無く言葉を発する。

 

 

 「仮面…ライ…ダー…」

 「おい…?美樹…?美樹!」

 

 

 その言葉を最後に目を開いたままガックリと力を失う妹。必死に名前を呼びながら身体を揺さぶる。

 手の中の消えていく温度に家族の命がなくなった事を悟ると喉が張り叫ぶくらいに叫ぶ。

 

 ーーーーーーーー

 

 

 「美樹っ!!」

 

 

 自室のベットから勢いよく飛び起きる。回らない頭で周囲を見回すと今のが昔の夢だったことに気づく。部屋にある小さな冷蔵庫から水を取り出すとベットに向かおうとして立ち止まる。

 

 

 「いや…もう朝まで起きとくか…なら」

 

 

 ベットに向かっていた足を机に向ける。そこには幾つかのモニターにマイク、身体を映すカメラとキーボードが置いてある。

 慣れた様子で操作すると動画サイトが起動し、配信が始まる。告知もしていないゲリラ配信だがすぐに人が集まるとコメントが流れ始める。

 

 

 『来た』『ちょうど寝れなかった』『夜勤頑張ります』

 「よぉ夜眠れない同士の諸君。今日の『Cill,TIME』の時間だ。今日は視聴者からの便りに答えていくぜ」

 

 

 そう言うと髪を束ねながら画面を操作しメッセージを表示する。

 

 

 「え〜なになに、『いつも配信楽しみにしてます、週末の配信者カスタム頑張ってください』。応援ありがとう!こっちもいつも皆に元気もらってるぜ。『肝心のお悩みなのですが彼女が出来ません。この苦しみはどうすれば消えますか?』なるほど、俺と同じ悩みだな」

 

 

 応援メッセージの添えられた相談を読み終えるとペットボトルの蓋を開け水を飲む。

 喉を潤すと少し身を乗り出し質問に答える。

 

 

 「こういうのは逆転の発想だ。俺に彼女がいないんじゃない、世の女に俺がいないんだと。むしろ同情してやれ」

 『無茶苦茶で草』『俺がいないなんて可哀想だな皆』『逆転しすぎて頭ぶつけてそう』

 

 

 勢いを増して流れるコメントを見ながら次のメッセージを開く。その内容を見ると一瞬固まるも平静を装いながら読み上げる。

 

 

 「…次のお便りだ。『どうしても許せない相手がいて手が出てしまいそうです、どうすればいいでしょうか』。気の合わない相手っていうのはいるもんだよな」

 『分かる』『殴れ』『血の気多い奴いて草』

 「さて、そんなリスナーへの返答だが…」

 

 

 目を閉じて静止する。静寂がしばらく続く中、瞼を開けると優しい笑みを浮かべながら答える。

 

 

 「手が出そうになるレベルで人を怒らせるような奴は大抵しょうもない奴だ。相手にするなんて人生の浪費だぜ。そんな事してる暇があるなら楽しいことしな」

 『同感』『暴力反対』『←コイツさっきの殴れの奴だから皆騙されるなよ』『殴るぞ』『ヒェッ』

 

 

 質問に答えると水を飲み息を整える。

 

 

 「ちょうど今は夕方からチームでカスタムの練習中だ。それを見て気分を上げていこうぜ。さて、それじゃあ次に行こうか」

 

 

 再びメッセージを開くと質問コーナーを続けていく。夜が更けそして明けていく中片手を机の下に隠す。握りしめた爪が食い込み血を滴らせながら。

 

 

 第二話 「復讐者」

 

 

 トントントン

 「んん…」

 

 

 包丁の音が聞こえCage、もとい日向影は目を覚ました。寝ぼけた頭で陽光が刺し込む窓を見て今が朝なことに気づく。

 身体を伸ばしながら部屋を出ると階段を降り、料理をしている満の後ろ姿に声をかける。

 

 

 「新妻みたいな起こし方された…」

 「2階まで聞こえるような音出してないわ化け物め」

 

 

 寝起きの目をこすりながら椅子に座ると机に焼き魚や味噌汁などのバランスの考えられた朝食が置かれる。

 向かい合わせになるように座った満と共に箸を手に取ると両手を合わせる。

 

 

 「「いただきます」」

 

 

 それぞれ料理を口に運びながら昨日の事を思い出す。それぞれが別の場所で仮面ライダーに遭遇した。それは満にとって大きな意味を持つ。

 

 

 「しかし話からすると俺たちが見たのは別のライダーみたいだな」

 「でも、だとすると満さんの探してた相手とも限らないよね」

 「いや…」

 

 

 影の言葉に昨日見たライダーを思い出す。その姿は忘れもしない、なぜなら自分はあれと同じ姿のライダーを過去に見たことがあるのだ。

 

 

 「あいつは間違いなく親父たちの仇だ。必ずまた見つけ出す」

 「…そう」

 

 

 食べ終わった食器を片付けながら満は決意を新たにする。その姿に影は複雑そうにしながら何かに気づく。

 

 

 「満さん時間!」

 「え?なぁぁっ!遅刻する!」

 

 

 時計の指す時間に気づくと急いで鞄を取り家を出ていく。その姿を見送りながら影は自分の皿を片付けると呟く。

 

 

 「ずっとあんな感じで暮らしてほしいなぁ」

 

 

 ーーーーーーー

 

 

 ピピピ ピピピピ

 「う〜ん、朝か」

 

 

 目覚ましの音で目覚めた全治郎は昨日修理した照明の電気をつける。新しくなったばかりだからまぶしく感じるそれに目を細めながらゆったりと制服を手に取る。

 

 

 「朝飯は…パンでも食うか〜」

 

 

 リビングにつくと食パンを取り出し、冷蔵庫の中を物色する。中には昨日も使ったバター、他にもイチゴジャムやチョコクリーム、ピーナッツバターなども入っている。

 それらを牛乳と一緒に取り出すとパンをトースターに入れる。

 

 

 「どれか選ぶ…なんてケチくさいよな」

 

 

 そう言うと焼き上がったパンに一塗りずつ全て使い虹のようにする。そのパンを口に頬張りながらテレビをつけると幼児向けのアニメが流れる。

 

 

 「パン食ってる時にパンのヒーローが流れている。複雑な気分だ」

 

 

 食べ終わると口の周りについたカスを下で舐め取りながら制服に着替え寝間着を椅子に放置する。鞄を手に取ると玄関から外に出てこめかみに指を当てながら門に向かう。

 

 

 「昨日バイクが壊れたから歩きか…まぁまぁ遠いな。バス使うか」

 

 

 門を出てバス停に向かうと時刻表を確認する。しかし次に来るのは数十分後、事前に調べておくべきだったと後悔する。

 

 

 「いいさ、歩きで行こうじゃないか」

 

 

 数十分もただじっと待っているなどごめんだ、それに待つ時間込みなら歩きで行っても変わらないだろう。

 結論を出すと学校に向けて歩き出す。その途中、足に石が当たり蹴り飛ばしてしまう。

 

 

 「ん」

 

 

 蹴り飛ばした石がコロコロと地面を転がり止まる。全治郎はその石に近づくともう一度蹴り飛ばし、また近づき蹴り飛ばすのを繰り返す。

 

 

 「…学校まで蹴れるか〜?」

 

 

 面白そうに笑うと石を蹴り飛ばしながら学校まで向かう。しばらくそうしていると猫が隣を横切っていく。

 

 

 「猫!触ってみるか」

 「フニャッ!?」

 

 

 石への興味を一瞬で無くすと猫を追いかけていく。長身の男が突然自分に向けて走ってきたことに猫は驚くと一目散に逃げていく。

 全治郎も逃がすまいと追いかけると猫が少女の前を横ぎる。

 

 

 「あ、猫ちゃん!」

 

 

 目の前を横切った猫を追いかけて道に飛び出していく。曲がり角のある横断歩道に飛び出した時、乗用車が飛び出す。

 

 

 「え」

 

 

 気づいた少女は驚きでその場で停止してしまう。運転手の押したクラクションの音が響く中、次に来る惨状に他の通行人が目を塞いだ時、高速で動く何かに少女が連れ去られ横断歩道を渡り切る。

 

 

 『セカイ!!』

 「たくっ、道路は飛び出しちゃ駄目だぞ。…あっ、そうだ」

 

 

 助け出した少女は状況を理解できていないのかポカンとしている。それを見た全治郎は何かを思い出したのかポケットに手を突っ込むと飴を取り出し少女に手渡す。

 

 

 「これやるよ。今度から気をつけろよ」

 「ありがとうお兄ちゃん!」

 

 

 笑顔を浮かべる少女の頭を撫でると辺りを見回す。いつの間にか猫も石もどこかに行ってしまった。

 仕方がないと頭を掻くと気を取り直して歩を進める。

 

 

 「さて、学校行くか」

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

 「ングッ…ンンッ…」

 

 

 宮益坂学園1-B、そこで満は机に突っ伏して苦しんでいた。しばらく唸っていたが身体をビクリと震わせると勢いよく立ち上がる。

 

 

 「うわぁっ!」

 「…それは先生のセリフなんだが」

 「あ、サーセン…ハハ」

 

 

 教師の不満気な顔に苦笑いを返しながら椅子に座り直す。垂れていたヨダレを拭きながら机を見ると水たまりが出来てしまっている。悪夢にうなされていたのに割に合っていない状況に不満を感じながらも拭き取る。

 

 

 キーンコーンカーンコーン

 「む、今日の授業はここまで。しっかり復習してこいよ、特に日向!」

 「…ふくしゅうね」

 

 

 教師の言葉に複雑な表情を浮かべながら時間割を見る。今ので午前の授業は終わりだ。

 弁当を取り出そうと鞄を漁っていると机の前にピンク色の髪の少女、鳳えむが顔を出す。

 

 

 「満くん、また怖い夢?」

 「えむか…まぁそんなところだ」

 

 

 えむの言葉に答えていると弁当を見つけ取り出す。すると周りの視線を感じ見回すとクラスの何人かがヒソヒソと話している。

 

 

 「また一緒にいるよあの二人…」

 「鳳さんもよく平気だよね。噂知らないのかな」

 「まぁあの子はあの子で変なところあるし…」

 「チッ…!あいつら…!」

 

 

 周りの話の内容に満は立ち上がりクラスメイト達に詰め寄ろうとすると、廊下を通る人物に視線が映る。

 紫色の髪をポニーテールにまとめた穏やかそうな少女。

 

 

 「あいつ…前に海に落ちた俺を放置したやつ!」

 「ふぇ?」

 「悪いなえむ!他の奴と飯食っててくれ!あいつに聞きたいことがある!」

 「え、ちょっと!」

 

 

 えむの静止は耳に入らず弁当片手に満は飛び出していく。前方に見えるクラスメイトと話す少女に向かって満は声をかける。

 

 

 「おいあんた!」

 「へ?あなたは…」

 「まふゆ、知り合い?」

 「え〜っと…」

 「あんたに聞きたいことがあるんだ」

 「ごめんね、この子達と先約があるから…」

 

 

 まふゆは困ったような表情をしながらクラスメイトとの約束を口にする。しかし満は呆れたような顔をしながら言いすがる。

 

 

 「いやこっち優先してくれよ…お前もわかってるだろうけど昨日のことだよ」

 「…ごめん、ちょっとこの子と話してくるから先に戻ってて?」

 「わかった、気をつけてね」

 「何をだよ」

 「…それじゃ、こっち来て」

 

 

 まふゆの案内に従い廊下を進んでいき、連絡通路に着くとまふゆは振り返る。

 

 

 「それで、聞きたいことって何なの?」

 「昨日の仮面ライダー、お前何で一緒にいたんだ?あいつと知り合いなのか」

 「仮面ライダーかどうかは知らないけど、昨日のことは私もよく分からないんだ。突然巻き込まれただけだから」

 

 

 スワンプとの戦いを見ていない満にはあの場で全治郎が何をしていたのか分かるわけもない。しかしだからといってまふゆも説明出来るような立場ではなかった。

 詳細を知らない現状なにが全治郎の不利益になるか分からないのだ。しかし困ったように眉を潜めるまふゆの肩を掴んだ満は必死に問いただす。

 

 

 「どんなことでもいいんだ!気付いたこととか…あいつの変身する前とか見てないか!?」

 「ちょっと…痛い!」

 「あ、悪い…」

 

 

 強く握りしめすぎたのか悲鳴を上げさせてしまい慌てて手を離す。少し距離を開けると満は悔しそうに歯噛みする。

 

 

 「…事情があるんだ。どうしてもやつの事を知りたい…」

 「………」

 

 

 単純な興味本位ではなさそうな様子を満は見せる。それを見たまふゆは携帯を取り出すと何かを見つめる。

 

 

 「昨日のことなら、私も気になることはあるけど…まだ確かめてないんだ」

 「気になること?何だ!?教えてくれ!」

 「少し待ってもらえる?ちょっと確かめて…え?」

 

 

 食いつく満をなだめているとまふゆの携帯が光を放ち、2人を飲み込む。激しい閃光が廊下を包み、消えていったそこにはすでに2人はいなかった。

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 「あ」

 

 

 日向家、そこにある完全防音の部屋の中で影は何かを思い出したように声を出す。

 

 

 「そうだ…Kさんに連絡しないと…」

 

 

 思い出したのは昨日のKとの約束。本来なら帰ってすぐにでも送るべきだったのだが長時間の聴取と満に起きた出来事のせいで忘れていた。

 SNSを開くとニーゴのアカウントを探しメッセージを送ろうとする。しかし。

 

 

 (……なんて送ればいいんだ?)

 

 

 あの時は深く考えずに言ってしまったが普段メッセージでのやり取りなどしない。仕事上のやり取りも満に任せているし知り合いもほぼいない。

 日常での会話すら満のみ、なんなら店員などとの会話すら任せているのだ。

 

 

 (え〜例えば…)

 『Kさん、先日はありがとうございました。ぜひ2人でお話したいので、今度お食事でもどうですか?』

 「ナンパか!!」

 

 

 打ち込んでみた文章を勢いよくキーボードを連打し消す。

 

 

 (こうじゃない…こんな軽薄な感じじゃなく…あくまで事務的な感じで…)

 『拝啓、先日お話くださった件につきまして。詳細を伺いたくご連絡させていただきました。つきましてはお時間のよろしい時にご返信していただけると幸いです』

 「取引先か!!」

 

 

 再びキーボードを連打すると一度コップに水を注ぎ飲み干す。もう一度冷静になって考えてみよう。

 

 

 (あっちに主導権を握らせるほうがいいかな。そう例えば…)

 『どうもKさん、そちらさえよろしければ再度お話したいと思っています。どうするかはご自由にお選びください』

 「なんか怖いわ!!」

 

 

 両手で頭を抱えながら勢いよく机にたたきつける。駄目だ、自分には致命的にコミュニケーションの才能が無い。

 SNSを閉じると先程までの作業データを開こうとアプリを探す。

 

 

 「一旦落ち着こう…曲作りしながら思いつくかもだし。ん?」

 

 

 開いたアプリ内に見覚えの無い音声データを発見する。作っていないはずの曲に首をかしげながらタイトルを確認する。

 

 

 「『untitled』…なんか適当にタイトル付けちゃったりしたかな。再生して確かめるか」

 

 

 マウスカーソルを合わせて曲の再生ボタンを押す。次の瞬間モニターから光が溢れ、影は真っ白い空が広がる謎の空間に転送される。

 

 

 「はぇ?」

 

 

 身体一つで転送され空気椅子のような体勢になりながら間抜けな表情をしてしまう。

 運動不足のためか体勢を維持することが出来ず後ろ向きに倒れるとそのまま空を見上げる。

 

 

 「なんだここ…」

 

 

 自分の理解を遥かに超えた事態に固まる。試しに頬を強く引っ張ると走る痛みがこれが夢ではないことを確定させてしまう。

 しばらくそうしていると影は突然立ち上がる。

 

 

 「足音!」

 

 

 立ち上がった影はそのまま歩いていく。ここが何処か分からない以上人を頼るしかない。

 しかし、ひたすら歩いていくと見えてきた人影に向けてスピードを速めていった先にいたのは予想外の人物だった。

 

 

 「Kさん…?」

 「Cageさん…?」

 

 

 ジャージに短パン姿の白い長髪の女性、Kがそこには立っていた。困惑している様子のその姿に影は知り合いがいたことの安心感と事態の異常性を感じ始める。

 

 

 「一応聞くんですけど…ここどこです…?」

 「それが私も分からなくて…『untitled』って曲を再生したらここに…」

 「うわ同じだ…」

 

 

 当たってほしくなかった予想の的中に思わず顔を押さえる。これは一体何なのだろうか、昨日の怪人といい訳の分からない事態の連続に頭がおかしくなりそうになる。

 そんな中、押さえた手の指の間からKの顔が見える。

 

 

 「これ…なにがどうなってるんだろう…帰れるのかな…」

 「……」

 

 

 自分と同じように帰れるか不安に駆られているKの顔を見ると押さえていた両手で自身の顔を拭うように何度も擦る。

 息を整えるとKの腕を掴み自身の背中に当てる。

 

 

 「…掴んどいてください」

 「え…?」

 「よし…やるぞ…!」

 

 

 影は両手を耳に添えると静かに耳を閉じる。風も無い無音の空間、そこに一定のリズムで聞こえる音を捉えるもそれは無視し他の音を探す。

 

 

 (これは近すぎる…Kさんの心音だ…相当不安がってるな…他の音は…)

 カツ カツ カツ

 「っ!Kさんこっちです!足音がします!」

 「え、え?」

 

 

 Kに声をかけると音の聞こえた方向に向けて歩いていく。背中を掴んだKも引っ張られるようになると足早に追いかけ後ろに張り付くように進んでいく。

 

 

 「足音って…誰もいないですけど…」

 「結構先です。でも間違いなく足音でした、ただ…」

 「ただ?」

 「あ!人だ!おーい!」

 

 

 少しだけ不安感を感じている様子の影にKも表情を曇らせていると元気にこちらを呼ぶ声が聞こえる。

 進行方向から聞こえたその声に向けて目を凝らすと2つの人影がこちらに向けて走ってくる。

 

 

 「良かった〜、人がいて〜」

 「助かった…」

 「やっぱりか…足音が急いでたからもしかしてと思ったけど…」

 「この人たちも迷い込んだんだ…」

 

 

 自分達を見て安心している様子に影とKは肩を落とす。それにより目の前の2人も迷っていることを察したのかあちらも気まずい笑みを浮かべる。

 

 

 「え、え〜っと…それじゃあそっちも…」

 「はい…迷ってます…」

 「嘘でしょ!?助かったと思ったのに!」

 「…ん?」

 

 

 がっかりとした様子の2人に影は何かに気づく。しばらく三人の会話に耳をすませると確信を得たように口を開く。

 

 

 「あの…Kさん、ニーゴってメンバー同士はリアルの知り合いなんですっけ」

 「え、いや…会ったことないけど…」

 「もしかして…K…?聞き覚えのある声だとは思ったけど…もしかして!」

 「僕とえななんと一緒で巻き込まれたの!?」

 「え…もしかして…Amiaとえななん?」

 

 

 声を聞いてまさかと思ったがやはりニーゴのメンバーらしい。聞いている限りピンクのポニーテールの方がAmia、ショートカットの気の強そうな方がえななんだろう。

 三人が会話を始めたのを待つあいだに再び周りに耳をすまして手がかりを探す。

 

 

 「それじゃあKもあの曲を再生したらここに飛ばされたんだ」

 「一緒にいる人は誰なの?まさか…彼氏がいたとか」

 「そ、そんなんじゃないよ…ほら、前に話したCageさん。私たちと同じように迷い込んだみたいなんだ」

 「じゃあニーゴのメンバーだけがさらわれたとかじゃないんだ。本当なんなんだろうこ」

 「うるさっ!」

 

 

 K達が事態を把握しようと話し合う中突然影が叫ぶ。耳を押さえて苦しそうにしている様子にKが駆け寄る。

 

 

 「ど、どうしましたか?」

 「いや向こうから大声が聞こえてきて…でも今の声は…」

 「何も聞こえなかったけど…」

 「でも、さっきもCageさんのおかげで2人に会えたから…行ってみる価値はあると思う」

 「よ〜し、それではゴ〜!」

 

 

 Amiaの号令と共に4人は歩いていく。何もない道を進んでいくと今度は全員の耳にと届く音で歌が聞こえてくる。

 

 

 『〜〜♪』

 「え……歌…?」

 「なになに!怖いんだけど!?」

 「この声…初音ミク?」

 「にしては声が生っぽい気が…」

 

 

 声の正体に気がついた4人はその場で立ち止まる。影の聞いた大声とは別のようだが誰かが曲を流しているのだろうか。

 どちらに向かうか悩んでいると今度は男の声が聞こえる。

 

 

 「おーい!!そこのやつらーー!!」

 「あ!やっぱり!」

 「え、ちょっと…!」

 

 

 声の方向にいる大きく手を振る男を見つけると影が突然走り出す。急いでK達が追いかけると合流した影と男、満が話している。

 

 

 「聞き覚えのある声だと思ったらやっぱり満さんだ!」

 「お前なんでこんなところいるんだよ…てかここどこだ!っていうかなに!?」

 「だから説明しようとしてるのに…パニックになって聞いてないのはそっちでしょ…」

 「け、Cageさん…その人は…」

 「あー!」

 

 

 自分のときとは違い親しい様子で話す影にKが首を傾げていると突然Amiaが叫ぶ。

 

 

 「『Cill(チル)』だ!」

 「チル…?」

 「ほら!前に話したCageとユニット組んでる人だよ!配信で顔も見てるし間違いない!」

 「…コイツら誰だ?」

 「あ、紹介しますね。ニーゴのメンバーで…この人がKさんで、この人がイラスト担当のえななんさん、この人がMV担当のAmiaさんです」

 「…ふん!」

 

 

 ニーゴのメンバーを一人ずつ紹介する。すると満は影の頭に手を伸ばすと強烈なデコピンを食らわせる。

 

 

 「いったぁぁぁ!!?急になにすんの!?」

 「お前なぁ…顔出ししてないやつが外でアカウント名で呼び合うなよ。本名使え本名」

 「顔出ししてる人にリテラシー注意されてる…」

 「俺は仕事で人に会う時に顔が一致してるほうがいいから出してんだよ。取り敢えず全員名前教えろ」

 「その前に…そっちの人は?」

 

 

 影を注意しながら自分達に自己紹介を求めてくる満にAmiaはまふゆの方を指さす。

 それに対して満も眉をひそめるとあることに気づく。

 

 

 「…そういや俺もあんたの名前きいてないな」

 「私も君の名前聞いてないよ。まぁ、今の会話でだいたい分かったけど」

 「…この声、それにえななんとAmiaがいるってことは」

 「もしかしてニーゴの雪さん?」

 

 

 今の状況のパターンからの予想を口にするとまふゆは一瞬、表情を変えるもすぐに笑顔に戻る。

 

 

 「うん、そうだよ。ちなみに本名は朝比奈まふゆ。よく気づいたね、さすがはK」

 「あ、私は…宵崎奏。いつもチャットで聞いてるから…」

 「はいは〜い!僕は暁山瑞希!よろしくね皆!」

 「…東雲絵名」

 「え〜っと…日向影です」

 「日向満。コイツとは従兄弟だ、ややこしいから名前で呼べ」

 

 

 それぞれの自己紹介を終えると瑞希は何かに気づいたようにニヤニヤと笑みを浮かべる。

 

 

 「ひょっとして〜CageにCillって名前をもじっただけ〜?」

 「えななんよりましだろ」

 「良いでしょ別に」

 「…誰か歩いてきてますね、歌も止まったし」

 

 

 そう言って影が視線を向けた先を他の面々も見る。するとその先から白いツインテールを携えた少女が無表情で歩いてくる。

 その少女に気付くとまふゆは一番に声をかける。

 

 

 「ミク」

 「ミク…もしかして、初音ミク!?」

 「いやそれ…あれだろ?バーチャルシンガーってやつだろ。どう見ても生身の人間じゃねぇか」

 

 

 まふゆが呼んだ名前に疑問を浮かべる一行を無視して2人はそのまま話を続ける。

 

 

 「…セカイは?」

 「昨日から居なくなった。これも1個減ってた」

 「それは…!」

 

 

 ミクは懐から2本のドライバーを取り出す。腕を模した装飾が付いたものと刀のような形をしたそれを見ると満は飛び出し奪い取る。

 

 

 「あっ!ちょっ、その子のでしょ!」

 「似ている…!あいつが付けてたのと…!」

 「あっ…」

 

 

 注意するように声を荒げる絵名を無視して放たれた満の言葉に奏も思い出す。昨日現れた怪人と戦っていた弓矢を持っていた戦士、その腰にも同じような物が巻かれていた。

 

 

 「Cageさん…確か、昨日見た変な格好の人のこと…心当たりがあったんですよね…仮面ライダーとか言ってたし…」

 「仮面ライダー?あのテレビ番組の?」

 「それは…」

 「どうしてこんな物がある!お前…あいつと関係があるのか!」

 「ちょ…やめなさいって!!」

 

 

 ミクに詰め寄る満を絵名が背中から羽交い締めにして止めるとまふゆはミクを庇うように前に立つ。

 

 

 「それはここのものじゃない」

 「なに…?」

 「あれ」

 

 

 まふゆの背中越しにミクが空を指さす。指を追いかけて空を見上げると真っ白な色が広がるだけの空間にヒビのような物が走っている。

 

 

 「なんだあれ…」

 「ある日、突然空が割れて男の人が一人。それとこの…ドライバー…?が四本落ちてきた」

 「その男は記憶がないって言ってた。それといつかドライバーを使える人間が来るからこれを渡さないといけないって。実際、前に一人来て持っていったらしい」

 「そっか…2本しかないもんね」

 

 

 その話を聞くと満は絵名を振り払い腕を組んでその場で制止する。

 

 

 「…どのくらいの話だ」

 「今年に入ってから。最初のドライバーを渡したのは今月」

 「ってことは…」

 「…あぁ、違う」

 「違う…?」

 

 

 2人の会話に奏が首を傾げていると満は刀を模したドライバーを影に投げ渡す。

 その後携帯を取り出し何かを探し出すのを見ながら絵名は重要な事実を確認しようとする。

 

 

 「ねぇ、なんの話なの?ちゃんと説明してよ」

 「もしかして…最近噂になってるやつ?」

 「噂?」

 

 

 瑞希は自身の言葉に奏が首を傾げると頷きそのまま続ける。

 

 

 「たしか…一ヶ月前ぐらいだったかな。ショッピングモールで蜘蛛みたいな怪物が出て、仮面ライダーが倒したみたいな話があったんだ。それから同じような話が何件も出てるんだって」

 「…一ヶ月前じゃない」

 「え?」

 

 

 瑞希の言葉を満は静かに否定する。今までの激情に駆られた姿とは打って変わった様子を見せると満は語り出す。

 

 

 「あいつが現れたのは3年前、俺の妹の誕生日だった」

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 当時の俺は中学1年、名字も九重(くのう)だった。その日は誕生日を祝うために家族で外食に行く予定で、気分もよく帰っていた。あの場面に出くわすまでは。

 

 

 「…なんだあいつ」

 

 

 視線の先にいるのは全身を真っ黒な鎧に包んだ謎の人物。逆手に持った剣から何かを滴らせながらT字路を横切っていく。

 見えなくなった鎧男を不審に思いながらもT字路の角に着いた、その時だった。

 

 

 「…!?どうなってんだ…!」

 

 

 曲がり角を曲がった先の自分が慣れ親しんだ住宅街。その並んだ一軒家の入り口から赤い染みのようなものが点々と続いていた。

 その全てが先ほどの鎧男の進路に続いていることに気付くと目に入った、自分の家からもその染みが伸びていることに。

 

 

 「っ!!」

 

 

 俺は急いで家に向かった。開かれたままになっているドアから中に入って、靴を脱ぐのも忘れてリビングに向かった。

 

 

 「父さん!母さん!美樹!」

 

 

 リビングに入った途端、身体が固まった。目の前に広がる光景が理解できずに回らない頭に、部屋全体に広がる生臭いような、カビ臭いような匂いが伝わって走る吐き気が気絶することすら許してくれなかった。

 

 

 「ハァッ、ハァッ、ハァッ」

 

 

 壁に大きく着いたヒビの下で頭が潰れて倒れる父さん、首が大きく斬り裂かれ血溜まりを作っている母さん、仰向けに倒れ込み口から血を流している妹。

 身体の温度が指先から抜けていくような感覚を感じているとき、妹の口からか細く呼吸が聞こえた。

 

 

 「美樹!大丈夫か!おい!」

 「お兄…ちゃん…」

 「待ってろ!すぐに救急車呼ぶからな!」

 

 

 美樹を抱き寄せて携帯で救急車を呼ぼうとした。でも美樹は俺の手を掴むと風にも負けるような声で言ったんだ。

 

 

 「仮面…ライダー…」

 「美樹?おい…美樹!しっかりしろ!」

 

 

 その言葉を最後に妹は動かなくなった。俺はその場で叫んだ。声が枯れて、喉から血が飛び出るくらいに。そんな時、妹の最後の言葉を思い出した。

 

 

 「何なんだよ仮面ライダーって!まさか…!」

 

 

 言葉の意味に気付くとキッチンの包丁を手に取って家を飛び出した。道の血痕を辿って仮面ライダーを追いかける。

 全力で追いかけていった先に悠長に歩いている仮面ライダーを見つけて俺は叫んだ。

 

 

 「待ちやがれクソ野郎!」

 「ん?」

 

 

 振り返った相手に向かって包丁を突き立てようと振り被った。だが俺の腕は簡単に止められ、軽く振るわれた腕に何メートルも吹き飛ばされた。

 

 

 「もしかして…今殺した人たちの家族かな?まだ帰ってない人もいるよねそりゃ」

 「ふざけんなぁ!」

 

 

 俺は仮面ライダーに殴りかかりたかったが、たった一発殴られただけで俺はもう動けなくなっていた。

 そんな俺を見下ろしながら仮面ライダーは逆手に持った剣を手でいじっていた。

 

 

 「ひとりぼっちは寂しいだろうし…ここでちゃんと殺し…!?」

 

 

 俺のことも殺そうとした仮面ライダーが突然膝を着いた。荒く息をするその姿は何処から見ても満身創痍。

 苦しむその姿に俺が戸惑っていると突然奴の足元から泥が噴き出した。

 

 

 「なにがなんだが分からないけど…ま、生きてりゃ幸せな事もあるよ。ラッキーだったね少年」

 「待ちやがれ…」

 

 

 噴き出した泥が奴の姿を飲み込んで何処かに消えていった。これが俺が初めて奴と出会い、家族を失ったときの話だ。

 

 

 ーーーーーーー

 

 

 「そこから影の父親に引き取られて、今は日向満だ」

 「僕のお母さんが満さんのお父さんの妹で、その縁で今一緒に住んでます。会ったことはなかったんですけどね」

 「そんな事が…」

 「…まぁこれで話は終わりだ。俺はさっさと帰らせてもらう」

 「帰るって…」

 

 

 話を終えると携帯を再びいじり始める。その姿に絵名は再び疑問を口に出す。

 

 

 「ねぇ、そもそもなんだけどここどこ?どうやって帰れるの?」

 「それは多分…あった、これだ」

 

 

 満は捜査していた画面を絵名達に見せる。そこに表示される音楽アプリには『untitled』と書かれた楽曲を見せる。

 

 

 「それ!僕のパソコンにも入ってたやつ!」

 「え、Cage…影さんも?」

 「私達も入ってて…覚えのない音声データだから再生してみたらこんなとこに」

 「朝比奈のやつが携帯イジってたからな。最近起動されたアプリ順に確認したら案の定だ、入った奴全員こうなってるんじゃないか?」

 

 

 意外な頭の回転の速さを見せると満は再生されている『untitled』を止める。次の瞬間、光に包まれて満が消える。

 

 

 「行っちゃった…」

 「じゃあ私達も…!」

 「待って!まだここがどういう場所なのか聞いてないよ!」

 

 

 瑞希の言葉に影たちは一旦立ち止まる。同じく瑞希の言葉を聞いたミクはまふゆの背中から前に出ると口を開く。

 

 

 「ここはまふゆの想いで出来たセカイ。ニーゴの皆はまふゆの想いに共鳴してここに来た。多分影と満もドライバーに適合してるとは別にここに共鳴してもいると思う」

 「その想いって?」

 「それは…」

 

 

 説明に対して発された質問にミクの口が止まる。言いづらそうにしている姿に奏達が首を傾げているとまふゆが口を開く。

 

 

 「…単純だよ」

 「え…」

 「ていうか…さっきからなんか雰囲気がちがくない?」

 

 

 合流した時はいつも通りだったが段々とおかしくなり始めた気がする。問いかける絵名の言葉を無視しまふゆは言葉を続けていく。

 

 

 「ここは私の消えたいって想いで出来たセカイ」

 「……え?」

 

 

 まふゆから発された言葉に思わず奏は呆けた声を出してしまう。それに対して何処かバカにしたような笑みをまふゆは浮かべる。

 

 

 「分からない?そんなことないよね、だって…」

 

 

 何時もの通話越しに聞こえてくる雪としての穏やかで暖かさを感じる声とは違う。何もかも諦めてしまったかのような表情のまふゆ。彼女の今の言葉はいやに耳に残る。

 よって、次に口から出た言葉も脳裏にこびりついた。

 

 

 「本当は皆も、消えたいって思ってるくせに」

 「……!!」

 

 

 思わず動揺するニーゴの3人に対してまふゆは無表情になる。発言の真意を確かめようと影が口を開こうとするもまふゆはその前にミクに声をかける。

 

 

 「これで話は終わり。ミク」

 「…うん」

 「ちょ、何を…」

 

 

 まふゆに促されたミクが影に近づく。思わず後ずさった影の身体にその手が触れると視界を光が包み込み、気づけば部屋の中に戻っていた。

 

 

 「どうなってんの…」

 

 

 昨日から立て続けに起こる異常事態に頭を抱えながらも手にのこった感触に目をやる。その手に握られたままのドライバーは今の出来事が夢ではないことを示していた。

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 神山高校2-A、その教室の中で司と青空は渋い表情を浮かべながら話し合っていた。その理由は朝から様子のおかしい全治郎のことだ。

 

 

 「あいつ一体どうしたんだ…」

 「いつも変と言えば変ですけどね」

 「あんな感じではないだろう!今日一日…」

 

 

 三時間目ー

 

 『おはようございまーす!』

 『おい常世!大遅刻だぞ!』

 『いやはや、つい目移りしてしまってな。初登校だから許してくれ』

 『何を言ってる!お前これ解いてみろ!』

 

 

 午前の最後の授業でようやく登校した全治郎に教師は怒り心頭といった様子だった。

 黒板に書かれた計算式を刺しながら叫ぶ様子に全治郎はチョークを持って従う。

 

 

 『うわ〜意地悪〜。あれ今から説明するって言ってたとこだぜ、分かるわけねぇじゃん』

 『まぁ常世のやつ頭いいからな、案外とけんじゃね』

 『余計キレそう〜』

 

 

 クラスメイト達がヒソヒソと話す中全治郎はチョークを持った手を動かし始める。数式のイコールの横に大きく丸を描き、その横に斜め向きの線を左右にそれぞれ描く。

 そこでチョークを置き教師を見つめると両手を上げる。

 

 

 『何の…つもりだ?』

 『お手上げ〜』

 

 ビキッ

 『廊下に立っとれー!!』

 『うぉっ、マジであるんだそれ。あ、鞄だけ置かせて。俺の席は…あそこだ、シュッ!』

 

 

 激怒する教師を流しながらこめかみに指を当てると自らの席に鞄を投げ廊下に出ていった。登場からこの調子だったがこれだけでは終わらない。

 

 

 昼休みー

 

 

 『購買ってのに行くぜ!』

 『あっ、待て!』

 

 

 昼休みのチャイムがなるや否やそのまま立っていた廊下を駆けていく全治郎。その後を司が追いかけていくとすでに購買は人で溢れており立ち尽くしていた。

 

 

 『おぉ~、すっげぇな』

 『この分じゃ買うのは難しそうだな』

 『いーや、まだだね』

 

 

 そう言うと全治郎は逆向きに歩き距離をとる。何をする気なのかと思った途端走り出すと、人混みを飛び越え購買部の窓口の縁を掴んでぶら下がる。

 

 

 『お、コロッケパンなんてのがある。これくれ』

 『は、はい…』

 

 

 体育ー

 

 

 午後の授業になり体育館でバスケの試合が始まる。体操服姿の生徒たちがしのぎを削る中その一員となった全治郎も気合を込めて試合に参加する。

 

 

 『へい!パス!俺フリー!ちょい!俺!フリーフリー!空いてるよー!おーい!……なんで誰もパスくれないんだ?』

 『…さぁな』

 

 

 必死のアピールもむなしくチームのメンバーは全治郎にボールを回してくれない。次の試合を待機する司に振り向くも微妙な表情を浮かべるのみだ。

 

 

 『ま、それならそれでだよ…な!』

 『!?』

 

 

 全治郎は身体を何度か弾ませると目にも止まらぬ速さで駆け出し、味方からボールを奪いドリブルしていく。

 戸惑う味方も敵も全て躱しフリーになると空高くジャンプしダンクを決めた、次の瞬間だった。盛大にゴールのネットごと壊してしまったのは。

 

 

 ガシャーーン!!

 『やりすぎた』

 

 

 「今日のあいつはやる事なす事ぶっ飛びすぎているぞ」

 「でも、何時もの無気力な全治郎くんよりはアグレッシブでいいんじょないですか?」

 「いやしかしな…」

 

 

 自分とは違い肯定的な様子を見せる青空に対し司は視線を全治郎に移す。

 

 

 「放課後遊びに行く人ーー!!」

 「行くわけねぇだろ」

 「誰がお前なんかと遊ぶか」

 「何時もキモいけど今日はもっとキモい」

 

 

 指を掲げながら叫ぶ全治郎に対し冷ややかな視線を浮かべるクラスメイト達は帰っていく。その反応に肩を落としながら司達に近づくと顔を上げる。

 

 

 「3人で行くか、せっかくなら楽しまないとな」

 「構わないが…」

 「昨日いけませんでしたしね!」

 「よし、じゃあ行き先は…」

 

 

 こめかみに手を当てながら行き先を思案する。そんな中ふと窓の外に目をやると校門に人影を発見する。

 それを見た全治郎は表情を変えると好戦的に笑う。

 

 

 「なるほど?誘ってんな」

 「どうしました全くん?」

 「悪いな、遊びに行くのはまた今度だ!」

 「あ、おい!」

 

 

 2人を置いて全治郎は教室を飛び出すとそのまま学校の外に向かう。人影は校門から飛び出した全治郎を確認すると背中を向けて走り出しそれを追いかける。

 長時間の追いかけっこの末スクランブル交差点の中心で人影、スワンプに変身する男は立ち止まり振り返る。

 

 

 「さて、ここらでいいかな」

 「随分迷惑な位置で止まりやがる」

 「いや〜、少し試したい事があってね」

 

 

 そう言うと男の足元から泥が広がり、その中から何かが出てくる。一つは馬を模した怪人、ホースノーネイム。もう一つは新たな敵だ。

 西洋風の甲冑を来た左手に盾を持った男、その鎧は直に着込んでいるのか皮膚にめり込んでおり露出した口は苦痛に耐えるように食いしばっている。

 ナイトノーネイムが帯剣した長剣を引き抜き構えたのを見て全治郎もベルトを取り出し装着する。

 

 

 「怪人に戦わせようってか、なめてるな!」

 『セカイ!!』

 「2対1だ、頑張りなよ」

 

 

 泥から化け物が現れたことでパニックが起き、周りの人々が叫びながら逃げ出す中ポーズを取る。

 

 

 「変身!」

 『CHANGE THE WORLD!!』

 

 

 霧が全治郎の身体を包み込み、そのシルエットが戦士に変わる。ナイトがその影に向かい長剣を振るうと中から飛び出した剣が受け止め霧が晴れる。

 

 

 『ジャスティスブレード!!』

 「ふっ!」

 

 

 受け止めた剣を振り祓いナイトの身体を斬りつける。鎧から激しい火花が散る中次に飛び込んできたホースの拳を弾き炎を纏った蹴りを食らわせるとスフィアのスイッチを押し全身にエネルギーを纏う。

 

 

 「ハァァ!!」

 

 

 回転しながら繰り出した斬撃で2体を同時に吹き飛ばす。さらにそれまで見物を決め込んでいる男に斬りかかるが男は人間離れした力で跳び上がると近くの屋上に着地する。

 

 

 「ダメダメ、君の相手は俺じゃあない」

 「チッ!」

 『ガンモード!!』

 

 

 アルテマウェポンを変形させ狙い撃とうとするとナイトが斬り掛かってくる。それを躱して蹴りを放つも盾で防がれ、銃撃で牽制しながら距離を取る。

 

 

 『ブルル!』

 「鬱陶しい!」

 

 

 突撃してきたホースの頭に炎の回し蹴りを食らわせ吹き飛ばす。少し戦って分かったがどうもコイツの方が弱そうだ。

 先に一体倒してしまおうとアルテマウェポンのスイッチを押す。

 

 

 『アルテマチャージ!!フル!!』

 「ライダーシューティング!」

 

 

 大量のエネルギーが込められた弾丸を放つ。頭に強烈な蹴りを食らった影響かすぐには動けないホースに向かって真っすぐ向かっていくも横から投げ込まれた盾が間に挟まり代わりに爆散する。

 投げ込んだ本人であるナイトはホースの前に立つと剣を構える。

 

 

 「盾を失ってまで庇うとはな…お前の愛馬か?」

 

 

 怪人とは思えない人間臭さを感じさせる行動に思わず感想が口から漏れる。

 するとホースが腕を地面につけるとメキメキと言う音を立てながら肥大化していく。

 

 

 「は?」

 

 

 前に伸びている頭が上向きになっていき二足歩行が四足歩行に、さらにその背中にナイトが乗ると彼もまた大きくなっていき。

 身体にめり込む鎧も大きくなるが肩の装甲は牛の角のように角ばり頭からは馬の尻尾のような装飾が生え、剣は根本が広がり持ち手が伸びていった事で突撃槍のようになる。

 最終的に4、5メートルの騎馬兵になった2体に仮面の下で口をポカンとさせながら見上げる。

 

 

 「…さっきの言葉は大正解ってことか?」

 『ブルルルルル!!!』

 

 

 返事をするかのようにホースが雄叫びを上げるとこちらに向かって走ってくる。巨体に似合わぬスピードで大地を揺らすと一瞬で距離を詰め突き出された槍を何とか躱す。

 しかし地面に突き刺さると大きな衝撃を発生させライダー空中に打ち上げられる。

 

 

 「うぐぅっ…!?」

 

 

 苦痛の声を上げながら身動きの取れないライダーに向けて槍が再び迫る。それに対してライダーがスフィアを押すと大地が割れ巨大な機械の恐竜が飛び出し槍を弾くとその頭にライダーが着地する。

 

 

 『ダイナミックファング!!』

 「俺の愛竜も見せてやるよ!」

 

 

 雄叫びを上げるとダイナミックファングは鋼鉄の頭突きをホースに向かって放つ。勢いよく頭と頭がぶつかるも生身のホースだけが一方的に痛みに悶える。

 暴れ馬の上で何とかバランスをナイトが保とうとするとライダーが跳び上がる。

 

 

 『アンカーモード!!』

 「食らえ!」

 

 

 変形させたアルテマウェポンを両手で振り下ろす。しかし頭を砕いてしまう勢いで繰り出した攻撃はナイトの甲冑に阻まれ内部までダメージが通らない。

 攻撃が受け止められ思わず固まった次の瞬間、横から殴りつけられるように槍が振るわれ地面を転がる。

 

 

 「ぐっ、が!くそっ…」

 

 

 何度か地面をバウンドしながらガードレールにぶつかり制止する。ガンガンと痛みが響く頭を押さえながら視界を上げるとダイナミックファングがホースの蹴りによって吹き飛ばされる。

 自分が近くにいないとどうしても出力が下がってしまうのだ。何とか立ち上がろうと身体に力を込めた時、大きな泣き声が響く。

 

 

 「うわぁぁぁぁん!!お母さぁぁぁん!!」

 「あいつは…朝の!」

 

 

 交差点に一人残され泣き叫ぶ少女、母親とはぐれたであろうその子は朝轢かれそうになっているところを助けた相手だった。

 予想外の登場人物にライダーが驚いているとナイトが指示を出しホースを少女目掛けて走らせる。

 

 

 「っ!ファング!」

 『ギャオォォ!!』

 

 

 ライダーの声に応えたファングが少女を救うために走り出す。しかし後から走り出しそもそもスピードに秀でているわけではないファングでは追いつけない。

 2体の距離が広がり逆に少女と怪人の距離がどんどん縮まっていく。まもなく射程と捉えたナイトが突撃槍を構え、振るおうとした時少女が横から誰かに抱き上げられ拐われる。

 

 

 「あっぶねぇ!」

 

 

 学ランに身を包み髪を結んだ青年、満は少女を抱き上げるとバランスを崩してしまい庇うようにしながら地面を転がる。

 それを追いかけ方向転換しようとスピードを落とした時、ナイトの頭の装飾にファングが噛み付く。

 

 

 『ギャーオッ!』

 

 

 ナイトをホースの背中から引っ張り上げると力の限り投げ飛ばす。ビルの外壁に追突し地面に落下するとその身体はみるみる縮んでいく、どうやら乗ってる間しか巨大化出来ないらしい。

 ファングは続いてホースを相手にしようとするも当の本人は背中を向けて走り出す。

 

 

 「こっち来やがった!……くそっ!」

 

 

 向かっていった先の相手、満はライダーの方を見る。自らの復讐の相手が眼前にいることに一瞬躊躇うも少女を抱え走り出す。

 助けるためにライダーも走り出そうとするも体勢を立て直したナイトが剣を振るい襲ってくる。それを受け止めるとファングに指示を出そうとする。

 

 

 「ファング!あの馬止め…っ!」

 『ギャ…』

 

 

 視界を向けるとファングが力無くうなだれながら光になって消えていく。その瞬間ライダーの体が糸が切れた人形のように膝を着く。

 

 

 「やべぇ…!こんな時に…」

 

 

 剣を握る手にも力が入らなくなる。ナイトは自らの剣でライダーのガードを弾くと強烈な斬り上げを食らわせる。

 

 

 「ぐあぁぁぁ!!」

 

 

 激しい痛みと共に地面を転がっていく。膝をつきながら何とか立ち上がろうとするも頭を押さえるとフラフラと仰向けに倒れる。

 

 

 「駄目だ…意識が…」

 

 

 その言葉を最後に完全に動かなくなるライダー。とどめを刺そうとナイトが近づく中、少女を抱えた満も危機が迫っていた。

 そもそも人間の脚力で怪人から逃げ切るだけでも厳しいのに加えスピードに優れたホースが相手だ。

 みるみる距離を詰められていく事態に焦りを浮かべると前方に活路を見いだす。

 

 

 「あそこだ!」

 

 

 地下鉄の乗り場につながる階段、そこに向かって走り出す。背中から聞こえてくる足音は巨大で恐怖を煽るだけではなく地響きを引き起こしこちらの動きを妨害してくる。

 このままでは逃げ切ることは出来ない。そう判断した満は入り口間近で賭けに出る。

 

 

 「うぉぉぉぁらぁぁぁ!!」

 

 

 地下通路につながる階段を降りるのではなく飛び降りる。階段を全て飛び越し地面に着地するも静止できず壁にぶち当たることになり鈍い音が身体の中から聞こえる。

 痛みに思わず動きが止まってしまう。しかし、そんな暇はなかった。

 

 

 『ブモォォォォ!!』

 「うおぉぉぉぉ!?」

 

 

 ホースが後を追いかけ入り口に飛び込む。狭い階段を巨体がめり込み壁や床が崩壊していく光景に思わず叫びながら飛び出そうとする。

 するとドライバーの力が無意識的に引き出され地面にめり込むレベルの踏み込みを発揮すると数メートル単位で横に跳ぶ。

 

 

 「うぉぉぉぉ!!?」

 

 

 予想外の脚力に驚きながら足でブレーキをかけると地面にヒビが入っていく。何とか静止すると振り返りホースを確認する。

 その視線の先では狭い通路に巨体が挟まり身動きが取れなくなっている姿が見える。

 狙い通りだ、仮に何とか体が抜けてもこの狭い通路では立ち上がることすら出来ないだろう。

 胸を撫で下ろすと膝を曲げてしゃがみ込み、少女に話しかける。

 

 

 「よし、大丈夫か?怪我してないか?」

 「うん…平気…お兄ちゃん前!」

 「え…んなっ!?」

 

 

 少女の言葉に視線を戻す。すると人型に戻ったホースが振り被った拳が迫っており咄嗟に両手でガードするも吹き飛ばされ地面を滑って行く満に少女が駆け寄る。

 

 

 「大丈夫!?」

 「まじかよあいつ…お前、名前は?」

 「え、みゆ…」

 「みゆか、よし!よく聞け…」

 

 

 少女の名前を確認すると通路の先を指さしながら話し出す。

 

 

 「ここの先に行けば電車の乗り場がある。きっと俺らと同じように逃げてきた人がたくさんいるはずだ。もしかしたらお母さんもいるかもしれない」

 「でも、お兄ちゃんは…」

 「ふ、やさしいな」

 

 

 心配そうな表情を浮かべる少女に微笑むと頭を撫でる。

 

 

 「大丈夫だ、俺は強い。だから先に逃げてな」 

 「…っ!」

 

 

 満がニカッという擬音が聞こえてきそうな笑みを見せると少女は全速力で走り出す。ホースは少女を追いかけようとするが道を遮るように満が立ちはだかる。

 

 

 「俺を無視すんなよ、幼女趣味か?馬面野郎」

 『ブルルッ!』

 

 

 挑発に怒ったのか、それとも邪魔されたのが気に食わないのかホースは荒く息を吐く。

 それに対して満は動じることなく腕を模した装飾のバックル、ハカイドライバーを取り出すと腹部に当てる。

 自動で帯が出現し腰に巻き付く感触を感じながら、その頭の中に記憶が巡る。

 

 

 『お兄ちゃん!こっちこっちー!』

 『待てよ美樹!』

 『あらあら、2人ともはしゃいじゃって』

 『ケガするなよー』

 

 

 楽しかった家族の思い出、もう戻ってくることのないもの。だが、今から行おうとしていることこそが本当の後戻りのできない選択だ。

 仮に今からでもやめれば普通の人生を送れるかもしれない。家族の死をいつかは乗り越え、笑って過ごせる日々に。

 

 

 「『ふざけんな』」

 

 

 手に持ったスフィアにはすでに選択を示すかのように色が付き紫に発行している。あの頃の自分の声が重なって聞こえてくるような錯覚を覚えながらスイッチを押す。

 

 

 『アヴェンジ!!』

 「『お前は俺が殺してやる!』」

 

 

 ホースを通してあの日見たスワンプの姿が重なる。ベルトにスフィアを装填すると左手の親指で首を掻っ切るジェスチャーをし顔の前に突きだしたての爪を突き立てると引っ掻くようにしながら顔の横に構える。

 

 

 「変身!!」

 

 

 叫ぶと共にベルトの腕を殴りつけるように押す。何処からともなく霧が立ち込め満の全身を包み込むと巨大な髑髏の影が写し出される。

 

 

 『!?』

 『ケタケタケタ』

 

 

 あまりに不気味な光景に思わず後ずさるホースを嘲笑うかのように髑髏から骨を打ち鳴らすような音がするとさらに巨大な腕が髑髏を掴む。

 それに引っ張られるように後ろに下がるとサイズが縮み通常の大きさになると掴んだ腕がシルエットから満の腕であったことが分かる。

 満のシルエットが髑髏を頭に被る。すると全身を震わせながら苦しむように頭を押さえる。髑髏の目が輝き、体に光で何かの模様のような物が浮かび上がると満が叫ぶ。

 

 

 「うぅぅあぁぁぁぁ!!!」

 『LETS ACTIVE AVENGE!!』

 

 

 光が全体に広がると共に霧が晴れる。そこに立っているのはすでに日向満でも九重満でもない。

 全身を包む紫の装甲には人体の骨格にそって白いラインが入った腐敗した死体のようなカラーリング、頭に被った白い頭蓋骨は所々ひび割れており目の上に斜めに入った亀裂が複眼の赤い光で強調され食いしばったような口元の形も合わさり彼の怒りが現れたようだ。

 ベルトの背面につけられた斧を乱暴に取り外すと折り畳まれた状態から展開する。復讐の開始を告げるベルトと共に、怒りの戦士仮面ライダーレイジが誕生した。

 

 

 「さぁ、やり返させて貰うぞ」

 

 

 ホースとレイジの戦闘が始まろうとしていた頃、とどめを刺そうとしていたナイトの目の前でライダーがゆっくりと起き上がる。

 回らない頭を押さえながら軽く振ると感情を読み取れない声で喋り出す。

 

 

 「…戻った」

 

 

 自らの手を握っては開き何かを確かめるように見つめる。隙だらけなその姿にナイトは走り出すと剣を振るう。

 

 

 『!?』

 

 

 振るった剣がライダーの剣で受け止められる。剣を手に取る瞬間も振るう場面も捉えられなかったナイトが驚いた次の瞬間、火花と共に鎧の横腹が斬り裂かれライダーが後ろに立っている。

 

 

 『…!?』

 

 

 走る痛みに驚きながら反撃しようと振り返るとその身体に斬撃が幾つも浴びせられる。ライダーの体勢はいつの間にか両手でジャスティスブレードを振り下ろしたものになっており彼が斬撃を繰り出した事が分かる。

 何とか対抗するために剣を振ろうとするもそれより早く繰り出された突きでナイトの体は面白いくらいに吹き飛ぶ。

 

 

 「オラァ!!」

 『ブレイクアックス!!』

 

 

 地下通路にレイジの叫び声が響く。手に持った専用武器、破壊戦斧ブレイクアックスを振るう度にホースの体から火花が散る。

 ガードのために構えた筋肉隆々な腕もレイジのパワーが上回り防御した腕ごと切り裂かれる。

 斧を防ぐ事は不可能と判断すると振り下ろされた腕自体を今度は掴む。それだけで肩が取れてしまいそうな衝撃が走るも何とか受け止め反撃のための拳を握った時、腹部に強烈な前蹴りを放たれ地面を転がっていく。

 

 

 「さっさと終わらせてもらう」

 「終わりにしてやるよ」

 

 

 2人のライダーは別々の場所で同じようにベルトのスフィアを取り外し武器に嵌め込む。剣の歯車を回転させ、斧を一度折り畳んでまた開くとエネルギーが刀身に宿り輝き出す。

 

 

 『!!』

 『ブル、ブルル!』

 

 

 ナイトはライダーの構えに対し自らも剣を構える。お互いに間合いを取り合い緊張感が流れ出す。

 ホースはレイジの武器に流れるエネルギーに恐怖を覚えたのか背中を向けて出口に向かい走り出す。それを追いかけるのではなくその場で斧を振り被ると叫ぶ。

 

 

 「報復暴投……!」

 『バーサークスロー!!』

 

 

 力の限り斧を振り下ろすと共に手を離す。エネルギーを纏ったそれは高速で回転していくと光の輪となり空中を自在に動き回るとホースを何度も切り裂き、最終的にレイジの手元に戻ってくる。

 ホースが盛大に爆発し、その姿を見つめるとポツリと呟く。

 

 

 「報復完了…」

 

 

             報

 

 

        復         完

      

 

             了

 

 

 

 「世界両断」

 『ワールドスラッシュ!!』

 

 

 ライダーの剣から音声が流れるとナイトは駆け出す。それに対してジャスティスブレードをベルトの左側にジョイントさせると持ち手を握りしめながら目を閉じる。

 

 

 キンッ

 

 

 金属音と共に決着が着く。その場に立つのはライダーのみ。地面に振り下ろされた剣の下ではナイトが地面にめり込んでおり体から火花を散らす。

 次の瞬間爆発が起きると穴が起き、地下鉄の通路のレイジの姿が見える。

 

 

 「っ!お前は…」

 

 

 レイジは突然空いた大穴に驚いた様子を見せるもライダーの姿に武器を構える。しかし何か思い直したような表情を見せると通路を走り去っていく。

 

 

 「…やつは」

 

 

 屋上から見ていたはずの男に視線を移すもすでに居なくなっている。不審に思いながらも変身を解除すると全治郎は家に向かって歩き去っていった

 

 

 

 ーーーーーーー

 

 

 「お母さん!」

 「美樹!良かった…良かった…!」

 (正直逃がすためのでまかせだったが…結果オーライだな)

 

 

 地下鉄の改札前、そこに集まった多数の避難民の中に先ほどの少女が母親と再会していた。

 無事を見届けられた満は満足気に笑みを浮かべながらそれを見つめる。目的を達成したので帰ろうかと考えていると後ろから声をかけられる。

 

 

 「九重満…いや、日向満くんだね?」

 「…誰だ?」

 

 

 声の人物に振り返ると怪訝な顔を向ける。見覚えの無い男だ、しかしその男は不気味な笑みを浮かべるとセカイドライバーを取り出す。

 

 

 「それは…!」

 「始めまして、俺は君と同じように仮面ライダーとして戦っているんだ」

 

 

 自らを仮面ライダーと名乗る男に警戒しながら満はドライバーに手を伸ばすと話を続ける。

 

 

 「そんな奴が何のようだ」

 「どうしても倒したい奴がいてね。君の力を借りたい」

 

 

 馴れ馴れしく近づいてくると満の背中に周り両肩に手を置く。鬱陶しそうにされるが気にした様子も無く続ける。

 

 

 「さっき君が見たライダー…奴は人間じゃない」

 「なに?」

 

 

 自身の言葉に食いついてきたことにニヤリと笑みを浮かべると耳元に口を近づけ囁く。

 

 

 「奴はドッペルノーネイム、人に化ける怪人さ」

 

 




設定
 仮面ライダーレイジ
 満が変身する仮面ライダー。満の復讐心を原動力に無尽蔵に力が引き出される。専用武器『破壊戦斧ブレイクアックス』は強く握るほどパワーが上がる。

 ホースノーネイム
 前回に引き続き登場。巨大な馬の姿に変身することができ、その状態ではあらゆる能力が強化される。


 ナイトノーネイム
 騎士を模した怪人。乗り物に乗ることでそれに適した能力を得ることができる。


 次回予告
 「お前を信用したわけじゃない」
 「あなたは何者なの?」
 「また…救えなかった」
 「もう私たちは必要ないってこと?」

 第三話 『求道者』
 「これくらいしか取り柄がないので」
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