プロジェクトセカイ feat  仮面ライダー   作:ミッツー116

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 書く前→弓だけ重めの過去用意しなかったからどんな風に書くか悩むなぁ
 書いた後→一番好き勝手してるなコイツ

 今章唯一のコメディ担当といっても差し支えないので書いてて楽しいですね。


第五話

 

 

 25時、ナイトコードに雪以外の3人が集まっていた。何時もより少し静かな作業風景の中、Amiaが口を開く。

 

 

 『ねぇ、雪のことどうする?連れ戻すのか、代わりを見つけるのかとか…』

 『連れ戻すのは無いでしょ、あんなやつ』

 『とは言ってもさ、まふゆがやってた作詞と編曲を今すぐ探すなんて…』

 『私がやる』

 

 

 半ば会話を強引に切り上げるようにKが立候補する。気が立っている様子に2人は戸惑いながら心配そうに声をかける。

 

 

 『いやでも…今だってずっと作曲してるのに作業増やすのはKが持たないでしょ…』

 『そうだよ。最近いつ来てもナイトコードにいるし…ちょっと根詰め過ぎじゃない。私達心配なんだけど…』

 『大丈夫、このくらいで音を上げてられないから』

 

 

 話しながらもカタカタとキーボードを弾く音がしている。今この通話中も作業をし続けているようだ。

 それ自体はいつも通りかもしれないがどこか様子がおかしく感じる。

 えななんが胸の中にモヤモヤとした物を感じているとAmiaからメッセージが届く。

 何やらK抜きのナイトコードのアドレスであり、少し迷うが入ることにする。

 

 

 『えっと…K、私落ちるね』

 『………』

 (聞こえてない…か…)

 

 

 帰ってこない返事にモヤモヤが深まるのを感じながらAmiaの用意したコードに入る。

 

 

 『Amia、入ったよ』

 『ありがとえななん、ちょっと待ってね』

 『すいません、これなんですか?』

 『Cage?』

 

 

 Amiaの言葉に疑問を感じているとCageもコードに入ってくる。疑問が深まる中Amiaが口を開く。

 

 

 『Cillは?』

 『Cillさん明日用事があって…もう寝ました。僕も明日は用事なんですけど…』

 『そっか…しょうがない、ここにいるメンバーだけで話そうか』

 

 

 本来であればCillの得ている情報も聞いておきたかったが仕方ない。あまり時間をかけていると本当にKが体を壊してしまいかねない。

 

 

 『えななんは反対みたいだけど、やっぱりまふゆを説得したほうが早いと思うんだよね』

 『でも、結局何で消えたいなんて言っているのか分からないですよね。本人も解決する気自体はありそうなのに話してくれないし』

 『私達のこと信用してないんでしょ。ほんっと気分悪い!』

 

 

 怒りが収まらないえななんはさておき実際自分達を頼れる相手ではないと判断されているのは確かだろう。  

 どうしたものかとAmiaが頭を悩ませているとえななんが口を開く。

 

 

 『ねぇ、Cageじゃ駄目なの?作詞も作曲も編曲も出来るんでしょ?』

 『え、僕がニーゴにってことですか?さすがにそれは…』

 『なんでよ、これが一番でしょ。雪のやつの望み通りでKの負担も減るし』

 『うぅん…』

 

 

 理屈は通っているのかも知れないがイマイチ乗り気になれない。今までやってきた雪に対しての申し訳なさもあるが、それ以上に気になることもある。

 

 

 『僕じゃ雪さんの代わりにはなれないと思うんですよね…』

 『何?自信ないわけ?』

 『自信というかなんと言うか…』

 

 

 えななんの言葉に対するCageの歯切れは悪い。このままでは話は何も進みそうにない。

 

 

 『Kも今日はもう話できそうに無かったし、また今度考えよっか。Cageも明日予定あるんでしょ?』

 『そうですね…Cillさんが何かいい情報持ってきてくれるかもですし』

 『しょうがないか…じゃ、これで』

 

 

 ナイトコードから出ると影はパソコンの電源を切る。いつもなら作業をしている時間だが明日の予定に遅れるわけにもいかない。

 カレンダーに書かれた予定、そこには病院の受診日と書いてあった。

 

 

 第五話 「偽者」

 

 

 週末の土曜日、人によって休みや仕事が分かれている中眼鏡をかけたスーツ姿の男が足早に歩いている。

 固い表情で向かった先は中華料理店。店に入ると店主が入ってきた男を客として迎え入れる。

 

 

 「いらっしゃい!何名様!」

 「先に入ってます。…そこです」

 

 

 男はカウンター席にすでに座っている一人の青年を指差す。ラーメンを啜っている青年の隣に店主が水を置くと男はその席に座る。

 

 

 「…それでどうだ、影の様子は」

 「問題無し。あんたが心配してるようなことにはなってねぇよ」

 

 

 ラーメンを食べていた青年、満は簡潔に男に答えると再び麺を啜る。その様子に男は眼鏡の位置を整えながら店主に注文をする。

 

 

 「すいません、チャーシュー麺を。…満、なにか追加で欲しいものは」

 「いらねぇ。もう食い終わるから出るし」

 

 

 そういうと満はスープを飲み干して席を立つ。伝票を持ってレジに向かう背中を男は呼びとめる。

 

 

 「影のやつから君は鰻が好物だと聞いた。次の待ち合わせは鰻屋にするか」

 「…勘違いしてるみたいだが」

 

 

 呼び止めた男の言葉に満は振り返る。その目は影や他の面々に向ける者とは比べものにもならないほど冷たく男に対してどんな印象を抱いてるかすぐにわかる。

 

 

 「俺はお前には雇われてるだけだ、家族でも何でもない。そもそも、実の息子とも向き合えないやつが他の人間と家族になれると思うか?」

 「……」

 

 

 言葉を返すことが出来ない男に対して軽く鼻を鳴らすとそのまま会計を済ませ店を出る。

 さっさと晩御飯の買い物でも済ませて帰ってしまおうと考えていると、突然悲鳴が響く。

 

 

 「きゃぁぁぁ!!」

 「っ!」

 

 

 悲鳴の聞こえてきた方向にすぐに向かう。角を抜けた先の路地裏に着くと悲鳴の主を探す。

 その時頭に衝撃が走り何かが地面に落ちる。拾い上げるとそれは女性物の鞄、咄嗟に上を見上げると事態を把握する。

 

 

 『キィィィ!』

 「助けてぇぇぇ!!」

 「鳥の怪人…面倒くさそうな…!」

 

 

 大きく広げられた翼に両足から伸びる鋭利な鉤爪、鋭く伸びたクチバシを携えた怪人、イーグルノーネイムが女性を掴んで飛び上がっている。

 女性は必死の抵抗を見せているがガッシリと掴まれた鉤爪は女性の皮膚に食い込み離さない。

 満はドライバーを取り出すとスフィアを起動させポーズを決める。

 

 

 「変身!」

 『LETS ACTIVE AVENGE!!』

 『キッ!』

 

 

 霧に包まれ変身を遂げたレイジの姿をイーグルは捉えると叫びながら空に舞い上がる。

 高度が急激に上がったことで小さくなっていく景色に女性が意識を失う。

 

 

 「ヒッ!!………」

 『キキッ!』

 「…まさか!」

 

 

 面白そうに笑うイーグルにレイジが考えを察すると同時に女性を離す。

 当然重力に従い落下する女性に向かってレイジは勢いよく跳び上がると受け止め着地する。

 

 

 「ふざけんなよてめ…」

 『キィィィ!!』

 「ぐっ!?」

 

 

 女性をゆっくりと地面に寝転ばせながら怒りを口にしようとすると急スピードで降りてきたイーグルの突進がレイジの装甲に直撃し火花を散らす。

 そのまま再び空に舞い上がるイーグルに対してブレイクアックスを取り出すと一度折り畳みすぐに開くとエネルギーがチャージされる。

 

 

 『スロー!!』

 「オォラッ!」

 

 

 勢いをつけて空中のイーグルに向けて投擲する。しかし簡単に躱されるとお返しとばかりに再び突撃してくる。

 回避の暇なくレイジの体にイーグルのクチバシが突き刺さる。その瞬間、レイジは両手を広げるとイーグルの体を掴む。

 

 

 「うぉぉぉぉ!!!」

 

 

 地面をえぐりながらイーグルを捉えようと力を込める。その視線の先にはさっき投げた斧がブーメランのように戻ってきている。

 元々返ってきた斧による一撃を油断したイーグルに当てる算段だったのだ。

 みるみる内に距離が縮まり今にも当たろうという瞬間、イーグルがレイジを掴んだまま空に舞い上がる。

 

 

 「なにィっ!?」

 『キィィィ!』

 

 

 斧を躱したイーグルは空高く舞い上がると再び方向転換し地面に向かって急降下する。

 狙いを察すると何とか離れようとするも深く突き刺さったクチバシが抜けず逃げ出すことが出来ない。

 

 

 「うぉぉぉぉ!?」

 

 

 地面に激突し粉塵が巻き起こりレイジの体を完全に隠す。煙が晴れるとそこには上半身が完全に地面に埋まったレイジの姿。

 まるで映画の犬神家のようになってしまったが死んだわけではなく抜け出そうともがき始める。

 

 

 「ふん!ぐっ…ぬはっ!抜けた!」

 

 

 何とか上半身を地面から抜く。レイジは当たりを見回しブレイクアックスを回収すると構える。

 

 

 「このやろ!」

 

 

 見上げた空にはすでにイーグルの姿はない。どこに行ったのかと当たりを見回す。

 

 

 「ふっ!ふっ!」

 

 

 右、左と体勢を変えながらイーグルを探す。しばらくそのまま固まっていたが、起こった事実にうっすらと気付き力の限り叫ぶ。

 

 

 「逃げやがったぁぁぁぁ!!」

 

 

 ーーーーーーーーー

 

 

 ずっと…赤くぶよぶよとした物に包まれていた。その中で微睡むような感覚の中、永遠に眠り続けられそうな感覚。

 しかし、自分の求めるものは此処にはないと感じた。この自らを包む肉、それは自分を守るものではなく捕らえるものだ。

 腕を伸ばす。ここから出せ、自分は外に出たい、外に出てなにかをなさなければならない。

 そして突然、その日は訪れた。

 

 

 『生まれろ…最初の怪人、原初のノーネイムよ』

 

 

 その声と共に、自分の手が肉の膜を突き破る。広がった穴から中の粘液が流れ出すと共に自分も外に押し出されていく。

 フラフラと立ち上がると何処からともなく声が聞こえる。

 

 

 『いいぞ、今セカイと外の境界線が弱くなっている。今ならば外に出ることが出来るはずだ』

 

 

 その言葉に従い歩いていく。しばらく歩いていくと空間に裂け目のような物が出来ている。

 そこに手を伸ばすと空間が歪み体が引っ張られる。抗うことなくその力に身を任せ裂け目に吸い込まれていくと別の空間に出る。

 見渡す限り白が広がる空間、カラフルな三角形のピースが所々に浮かぶそこにもまた大きな亀裂が走っており、その中に飛び込む。

 光に視界が包まれ、新たな景色が広がる。

 

 

 「さて、お買い物も済んだしあとはお父さんが帰ってくるのを待つだけね」

 「うん!早く帰ってこないかな〜」

 

 

 どこにでもありそうな住宅街に出た時、母親と歩いている子供を見つけた。

 そこで初めて自分の能力を理解し使った。子供の記憶が流れ込み姿が変わる。

 子供と全く同じ容姿に変わると変化を確かめるために口を開いた。

 

 

 「僕はドッペルノーネイム、人の姿を借りて人の生活を壊す。」

 

 

 姿をコピーすると胸の中に1つの衝動が湧き上がってくる。オリジナルを殺す、ドッペルゲンガーの特性が自分の中に殺意を芽生えさせた。

 その日の内にコピーした子供の家に侵入した。まずは両親の寝ている部屋に行きガソリンをばら撒いて火をつける。これでオリジナルを助けに来ることはできない。

 

 

 「ん…なに…?」

 

 

 オリジナルの部屋に入った時に気づかれてしまうも構わず火を放った。しかし、突然の爆発でオリジナルだけが家から外に吹き飛ばされ取り逃してしまった。

 外に追いかけて始末しようとも考えたが、それより早くあの声が響いた。

 

 

 『境界線が戻りかけている。帰れなくなる前に戻れ』

 「…了解」

 

 

 指示に従い、セカイに戻った。だが、この判断は間違いだった。セカイに戻った後、この体には異常が発生してしまっていた。

 

 

 「……!?戻れない…!なんでっ…」

 

 

 本来の自分の姿に変わることが出来ない。力を込めると体が赤黒い泥に変わるもすぐにまた子供に戻ってしまう。

 自分の体の異常に戸惑っていると声が響く。

 

 

 『あの子供…どうやら我々の力とは相容れないようだな』

 「なに…?」

 

 

 声は言った。細かい事情は分からないがあの子供には我々に対抗出来る素質がある。まだ生まれたばかりの自分がその子供をコピーした結果能力に障害が起きてしまったのだと。

 この事態を解決するにはあの子供の命を奪うしかなかった。自分の能力は死人をコピーすることは出来ないからだ。

 しかしセカイの境界線が再び揺らぐことは無く、自分はただ待つことしか出来ずにいた。

 そして、ある大きな戦いが起こった。

 

 

 「いい加減諦めたらどうだ?勝ち目がないことなんかはとうに分かりそうなもんだが」

 

 

 声の主が宿敵として生み出された存在達、彼らと主はある存在を巡って戦った。

 その戦いの果てに彼らの存在と力は散らばり、主も深い傷を負った。そしてそれは、自分に思いもよらない力を授けた。

 

 

 『ドッペル、これを』

 「これって…」

 

 

 主が自分に渡した物、それはかつて主が打ち倒した存在が使っていたドライバーだった。

 そのうちの1つ、セカイドライバーが一人でに浮き上がりドッペルの腰に巻き付く。

 

 

 「何故俺に…」

 『以前言った我らと相容れない力の正体…どうやらお前がコピーした人間はドライバーを使えるようだ』

 

 

 コピー元の身体能力も記憶も全て自分の物に出来るドッペルノーネイムの能力。

 それによりドライバーを使用する力を手にした。そして何より、セカイドライバーを使えば自分はセカイの外に出ることが出来た。

 新しく得た力を試すために早速変身し、住宅街の人間を大量に虐殺した。その中でまた取り逃がしを出してしまったのは予想外だった。

 

 

 「待ちやがれクソ野郎!」

 

 

 この時、新たに得たライダーの力により怪人である自分の肉体にもダメージが入ってしまったことを察した主によりセカイに戻されてしまいライダーにも最近になるまで変身出来なくなってしまった。

 

 

 「ようやくだ…ようやく俺は俺を取り戻す」

 

 

 またライダーに変身出来るようになったのに加え、怪人のセカイの活発化により自分の力も上昇した。

 もうどれだけ仮面ライダーの力を使おうが自分がダメージを負うことはない、満への嘘の刷り込みも完璧だ。

 いよいよ本格的に作戦を開始させる。

 

 

 「サブプランもあるしね…」

 

 

 手の中に握ったピンク色のスフィアを見つめながらスワンプは歪に笑った。

 

 

 ーーーーーーーーー

 

 

 都内某病院、そこには珍しく外出用の服を着た奏の姿があった。その足はどの診察室でも無く病棟に向かっていく。

 手に持った荷物が運動不足の彼女には重すぎるのか汗を掻きながらも病室の前に辿り着く。

 

 

 「……よし」

 

 

 病室の前で少し止まり覚悟を決めたように声を出す。病室に入ると中には幾つかのベッド。

 そのうちの1つに目を移すと一人の男性が看護師に体を拭かれている。看護師は奏に気付くと拭き終えた体に服を着せ直し振り返る。

 

 

 「いらっしゃい、奏ちゃん」

 「お疲れ様です。あの、父の様子は…」

 「…今日はあまりよくないわね。見ての通り、起きているけど意思疎通が難しい状態」

 「…そうですか。これ、替えの服です」

 

 

 受け取ると看護師はそのまま部屋を後にする。奏はそれを見送るとベッドの上の男性、父に向き直る。

 すっかり痩せこけ、肌も青白い。かつて自分に笑いかけてくれていた父の姿からはほど遠い。

 

 

 「…来たよ、お父さん」

 

 

 声に対する返事はない。自分の方を向くことも、それどころかその目はどこも向いていない。何も映していないし感じていないだろう。

 奏は思い出す、かつて家族で過ごした幸せな日々。そしてそれが崩れていった時のことを。

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 私のお父さんは作曲家だった。とても優しい音楽を作る人で、私も、小さい頃に死んだお母さんもお父さんの作る曲が大好きだった。

 私もそんなお父さんみたいになりたくて小学生の頃に曲を作ってお父さんにプレゼントした。

 

 

 「奏が一人で作ったのかい?とてもいい曲だね」

 

 

 優しく笑いかけ頭を撫でてくれたお父さんを見て曲を作ってよかったと思った。

 大人になったらお父さんみたいな作曲家になるって言ったらとても喜んでくれた。

 でもお父さんと2人暮らしで家事をしながら作曲をするのは難しくて、それ以来曲は作ってなかった。

 

 

 「お父さん、ご飯できたよ。といってもレトルトとお惣菜だけど…料理って難しくて…」

 「大丈夫だよ奏。お父さんだけじゃカップ麺ばかり食べてしまうからね、いつもありがとう」

 

 

 中学に上がってからお父さんは部屋に籠り始めた。私の学費も小学生の頃より上がったし、今後のことを心配していたんだと思う。

 でも、お父さんの焦っていた理由はそれだけじゃなかった。作った曲があまり認めてもらえず、仕事がうまくいかなくなり始めていたみたいだった。

 

 

 「こんなアレンジじゃ駄目だ…また古臭いと突っぱねられるだけ…もっと今の時代にあったアレンジを…」

 (お父さん、ずっと根詰めてるな…)

 「ん?」

 

 

 心配で部屋を覗いている私に気付くとお父さんは笑顔を見せてくれた。

 私のために無理して作られたそれに胸が痛くなるのを感じながら頑張って笑顔を返した。

 

 

 「お父さん…最近ずっと悩んでるね」

 「あぁ…曲のアレンジを考えていてね…なかなか難航してしまっているんだ」

 「これ…?ちょっと触ってみてもいい?」

 

 

 パソコンの中に表示された画面を見たときに頭の中にアイデアが浮かんだ。

 何か糸口になってくれたらと思ってお父さんに許可を貰って試しにコードを打ち込んでみた。

 

 

 「こんな感じはどうかな…?思いつきだけど…」

 「……!いや、すごくいいよ…奏は凄いな。あちらも満足してくれるかもしれない」

 「え、これで出すの…?嬉しいけど…ちょっと恥ずかしいな」

 

 

 お父さんは私の出したアレンジを採用してくれた。お父さんが悩んでいたのを助けられた気がして嬉しかった。

 でも、これが原因でお父さんを余計に苦しめることになるなんて、この頃の私は考えてもいなかった。

 

 

 「だから出来ないと言っているだろう!」

 

 

 私がアレンジした曲はCMのコンペに出すためだったらしく、テレビなどで流れるようになった。

 その影響でお父さんには仕事が沢山来るようになったけど、求められるのはCMに採用されるきっかけ、私のアレンジした部分のような音楽だった。

 お父さんは前にもまして部屋に籠もりはじめて、ご飯も一緒に食べることが減ってしまった。

 

 

 (お父さん、ずっと悩んでる…どうにか出来ないのかな…そうだ)

 

 

 何とか元気づけられないかと思って、小さい頃に曲を作ってプレゼントしたことを思い出した。

 また作れば喜んで貰えるんじゃないかと思って私は曲を作り始めた。

 テスト勉強の合間に作り進めて、お父さんに見せることにした。

 

 

 「よし、これなら…!今度こそあの曲を…!」

 「お父さん、今大丈夫?」

 「奏?もちろんだよ。どうしたんだい?」

 

 

 お父さんはその時新しい曲が完成した直後で久しぶりに笑顔だった。

 私は作った曲を聞いてもらう絶好の機会だと思ってワクワクしながらパソコンを見せた。

 でも、それが間違いだった。お父さんに、私の曲を聞かせるべきじゃなかった。

 

 

 「これは…奏が作ったのかい?一人で…」

 「うん。テストの合間を見てコツコツ作ったんだ。昔お父さんが喜んでくれたから…久しぶりでちゃんと作れてるか不安だけど…」

 「テストの合間に、これを…」

 「お父さん?」

 

 

 私の曲を聞いたお父さんはしばらく驚いたような表情で固まっていたが穏やかな顔を浮かべると私の頭をなでた。

 その後のお父さんの言葉は今もずっと頭の中に残っている。

 

 

 「奏は、音楽の神様に愛されているんだろうね」

 「へ?」

 

 

 私を褒めているような、羨んでいるような言葉。普段のお父さんとは違った様子に戸惑った時に目に入ったお父さんの顔はいつもの暖かさも、何の感情も感じられなかった。

 

 

 「奏は、奏の音楽を作り続けるんだよ」

 

 

 このすぐ後に、お父さんは倒れた。強いストレスにより記憶障害になり、私のことも分からなくなった。

 私は突然一人になってどうすればいいか分からなくなってしまった時、お父さんの日記を見つけた。

 

 

 『今日は奏が僕の為に曲を作ってくれた。とても優しい、奏の人柄がよく出た曲だった。将来は僕のような作曲家になりたいと言ってくれて、とても嬉しかった』

  

 『今日、クライアントにまた僕の曲は古臭いと言われた。最近の流行に乗れていないと。悔しいが、何の対策も取らないわけにはいかない。奏の為にもいい曲を作らなければ』

 

 『新しくパソコンで曲を作り始めた。まだ慣れないが便利な機能も中々多いようだ。最近の主流でもあるし、打開策になるかもしれない』

 

 『仕事を幾つか貰えている。新しい事に挑戦してみて良かった。』

 

 『もっと斬新な曲を作れないかと言われた。聞いている人の耳に少しでも残るようにしなければ使う意味がないと。僕の曲はそんなに印象に残らないだろうか』

 

 『今日、CMのコンペ用の曲のアレンジを奏がしてくれた。正直、とても驚いた。クライアントの言っていた事が分かったような気がする。あれが求められているものなんだ』

 

 『コンペに奏のアレンジが評価されて通った。奏は凄い、あんな独創的な音楽は僕には作れない。僕のは誰かの真似でしかない』

 

 『CMを観た人達から依頼が来る。奏のアレンジが求められている。僕にあんな物は作れないのに』

 

 『弱音を吐いている場合ではない、あと数年で奏も高校生になる。お金がもっと必要になる。真似事なら得意なはずだ、奏の曲を、流行りの曲を模倣してやろう』

 

 『仕事が通る事もある、通らないこともある。うまく作れたのか、相手が音楽にさほど興味がないのか。どちらでもいい、金になれば』

 

 『最近、奏と顔を合わせていない。奏の目を見れる気がしない。奏が好きだと言ってくれた優しい音楽などもう作っていない、奏の作った曲をひたすら真似る僕が何故奏の前に出れるだろうか』

 

 

 日記はそこからなかった。そもそも、初めは毎日のように付けられていた物が段々と飛び飛びになっていた。

 お父さんが書いていた悩み、それは私の曲を聞いたことにより自分の曲を見失ってしまい心を壊してしまった何よりの証拠だった。

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 「お父さん…私、頑張って誰かを救おうとしたんだ…でも駄目だったよ」

 

 

 父の心を壊してしまった償いとしてKとしての活動を始めた。少しずつ聞いてもらえるようになり、ニーゴを結成してからは特に救われたという声も聞こえてくるようになり達成感を感じていた。

 しかし、それは全て気の所為だったのだ。

 

 

 「雪の心を救えなかった…お父さんの事も壊しちゃった…こんな私に…出来ることなんかないよね…」

 

 

 力無く言葉を紡ぐ奏に父は何も言ってくれない。本来なら撫でてくれるはずの腕も、励ましてくれるはずの口もピクリとも動かない。

 

 

 「雪の言うとおり…もう、消えちゃいたいな…」

 

 

 もう何をする気力も起きない。しかし、だからといってここに居続けても何の意味もない。

 病室を後にすると奏は病棟を後にし歩いていく。受付に面会の札を返し帰ろうとした時、別の窓口から声が聞こえる。

 

 

 「日向様〜お会計の準備が出来ております〜」

 「あ、すいません!お手洗い行ってました!」

 

 

 本来番号で呼ばれるはずが名前で呼ばれた人物、影が駆け足気味で窓口に現れる。

 その姿に驚いていると、さらなる人物が現れる。

 

 

 「お前は…」

 「え…あ…!?貴方はこないだ雪のセカイであった…」

 

 

 後ろから声をかけられ振り向いた先には全治郎が立っている。あちらも奏の存在に驚いているのかじっと見つめてきている。

 2人の声が耳に届いたのか影もまた近寄ってくる。

 

 

 「宵崎さん…?それにあなたも…」

 「まふゆのセカイとか言うところで会った奴らだな。確か、瑞希の友達か」

 「そ、そうですけど…何でここに?」

 「病院に診察以外で来る訳がない」

 

 

 奏の疑問に無表情で言い放つ。しかし全治郎の体はどこか悪い人間には見えない。

 そう思いながら体を眺めていると腕のリストバンドを見て1つの可能性に辿り着く。

 

 

 (もしかして、精神的なことで来てるのかな…だとしたら、あんまり聞かないほうが…)

 「お前らの方こそどうしたんだ、どこも悪いようには見えないが」

 

 

 気を遣おうとした奏に対し全治郎は無遠慮に聞いてくる。それに対して苦笑いを浮かべると影が口を開く。

 

 

 「僕はただの定期健診です。頭と精神科」

 「俺も精神科だが見なかったぞ」

 「精神科から先に行ったんで入れ違いじゃないですか?」

 

 

 軽い調子で話すにはあまりにも重い会話に奏は思わず表情に困る。一方影はひっそりと耳を研ぎ澄ませ全治郎の鼓動に集中する。

 

 

 (やっぱりこないだの奴とは全然音が違う…何でこんなに見た目が似てるんだ?)

 「それで、お前の方は」

 「あ、私はお父さんのお見舞いに…」

 「…どこか悪いのか」

 「まぁ…」

 

 

 奏は会話しながら何かを少し考える。しばらくして答えを出すと影に向かっ声をかける。

 

 

 「あの…今からって時間大丈夫ですか?」

 「今から…?大丈夫ですけど…」

 「この間の話の続きがしたくて…ほら、パーティの」

 「あぁ、すっかり忘れてましたね…それじゃあ」

 

 

 会話の途中で全治郎に視線を移した影が止まる。どうしたのかと2人が首を傾げると影が切り出す。

 

 

 「あの、三人でもいいですか?ついでに聞きたいことがあって」

 「私は大丈夫ですけど…」

 「俺もだ」

 「よかった!それじゃ、場所移しましょうか」

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 病院内の中庭のベンチに移った三人。軽く全治郎の自己紹介をすませると影が口を開く。

 

 

 「それで、宵崎さんの聞きたいことって何ですか?」

 「あ…ちょっと長くなりそうなんで…先に日向さんのからどうぞ」

 「あ、それじゃあ…」

 

 

 奏の言葉に影は全治郎の方を向く。視線を向けられた全治郎は心当たりがないのか首を傾げている。

 

 

 「あの、変なこと聞くんですけど…双子だったりしませんよね?」

 「…奴に会ったか」

 「奴…?」

 

 

 何の話か分からない奏を置いて2人は話を進める。幼少期に自分によく似た謎の人物に家に火を放たれた事、その人物が今になって目の前に現れた事、それ以来仮面ライダーとして戦っていることを。

 

 

 「奴が何者かまでは分からない。だが、俺の命を狙ってるんだろう」

 「そうですか…」

 

 

 全治郎の話に影は少し危うい物を覚える。この情報は一刻も早く満に共有しなければならない。

 面識のない満が何らかの拍子に変身した全治郎と会えば無意味な争いに発展しかねない。

 

 

 「俺から話せることは終わりだ。待たせたな奏」

 「あ、はい…」

 

 

 影が考え込んでいる間に全治郎は奏に話を促す。奏は少し考えるも息を整えると口を開く。

 

 

 「その…曲を作る時って、どんな風に作ってますか?」

 「どんな風に…?えっと…」

 

 

 奏の言葉が予想外だったのか少し驚くも腕を動かすとギターを持つようなジェスチャーをする。

 

 

 「こう…パソコンの前でギター弾きながら…頭の中で詞とか考えて…コードとかも思いついたそばからパソコンに打ち込んでいく感じです」

 「そ、そういう意味じゃなくて…あの…誰かを救う音楽ってどうしたら作れるのかなって」

 

 

 うまく話が伝わらなかったことに困り眉を浮かべる奏。しかし勘違いしてしまったことに影も恥ずかしそうにしている。

 どうすれば伝えられるかを考えながら奏は話を続ける。

 

 

 「その…私、一人でも多くの人を音楽で救いたいんです。だから…もっといい曲を作りたくて。Cageの音楽は聴いてて救われたって人も多いし、ニーゴとファン層も近いから何か参考に出来るんじゃないかと思って」

 「それは…」

 

 

 奏の言葉に影は少し目線を外して考える。しばらくの沈黙の後、影は申し訳なさそうに口を開く。

 

 

 「そういうことなら、多分僕じゃ力になれないと思います」

 「え…」

 「僕は誰かを救おうと思って曲を作ったことはないので…仮にそう感じた人がいたとしても、それは聴いた人が…言い方は悪いですけど勝手に救われただけです」

 

 

 音楽に限らず、芸術というものはそういうものだと影は考えている。もちろん自分の曲で前を向いていけるようになったという声などは嬉しいがそれを目的にしようとは思わない。

 

 

 「みんな…Cageの音楽は歌詞は暗いけど何処か前向きに聞こえるって言ってました。そんな音楽ならもっと皆を救えると思うんです」

 「…僕の音楽が前を向いてるように聞こえるのはきっと、音楽以外が後ろ向きだからですよ」

 

 

 影もまた自分の過去について語り始める。異常に発達した聴覚が原因で周りに馴染めずずっと一人だったこと、母親からヘッドホンを貰ったことをきっかけに音楽に目覚めた事。

 

 

 「音楽と向き合ってる時だけ、生きてて良かったと思えるんです。音楽が明るいというより、音楽以外が暗いんです」

 「…素敵ですね、お母さんからのプレゼントがきっかけなんて」

 「そうでもないですよ。もう数年顔合わせてませんから」

 「え?」

 

 

 影の言葉に思わず驚く。話を聞いている限り唯一の味方と言っていいほどの人物な気がした。

 その様子を見て何を考えているのか察したのか苦笑いを浮かべると影は口を開く。

 

 

 「満さんが来るちょっと前くらいから仕事が忙しくなってご飯とか外で食べるようになったんですよね。お父さんもほとんど家に居ないし。というか、両親からしたらやっぱり迷惑なんだと思います、学校にも行かずに家でずっと音楽してるのって」

 「…それでも、音楽をやるんですか」

 

 

 予想外の言葉に影は奏の方を見る。その表情を暗く染めた奏は俯きながら口を開く。

 

 

 「私は…曲を作ったことを後悔しました。私の音楽でお父さんを傷つけちゃったから」

 「お父さんを…?」

 

 

 奏はそのまま自分の過去について話し出す。それを聞いた影は奏の質問に答える。

 

 

 「多分、他人を傷つけても音楽をやめられないと思います。音楽がないと、僕は生きていけないから」

 「音楽がないと生きていけない…」

 「僕は自分の為に音楽をやってます。だから、宵崎さんの力にはなれないと思います」

 

 

 影は自身の考えを隠すことなく伝える。非情なことでもあると理解しているが自身の過去を話してくれた奏の覚悟に報いるためにはこれしかないと感じた。

 影の言葉を受けた奏は力無く笑うと口を開く。

 

 

 「好きなんですね、音楽」

 「…奏は好きじゃないのか」

 「……嫌いだったら、こんなことにはならなかったかもしれない。お父さんも傷つけずに済んで、雪にも失望させるようなことも無かった」

 

 

 全治郎の言葉に奏は涙を浮かべながら答える。自分に才能があったことを、音楽をしてきたこと事態を後悔しているような奏に影は何も言えない。

 2人が口をつぐんでしまい空間を沈黙が支配すると、全治郎が口を開く。

 

 

 「…俺はお前らが羨ましいよ」

 「え?」

 「羨ましいって…何がですか?」

 

 

 聞き返す奏に全治郎はリストバンドが巻かれた自分の腕を見つめる。少し黙り込むも軽く息を吐くと語り始める。

 

 

 「2人とも親から大切な物を貰っている。俺には何もない、そういうのを遺す前にいなくなってしまった」

 「常世さん…」

 

 

 影のヘッドホンは親からの愛情そのものだろう。奏が今音楽を作れる能力があるのは父親の影響に他ならない。

 全治郎からすれば2人とも親の遺してくれた物が今の彼らを作っている。それは自分にはないものだ。

 暗い表情を浮かべる全治郎の表情を見た影は悩みながら口を開く。。

 

 

 「探せば何かあるんじゃないですか?例えば…名前とか」

 「名前?」

 「ちゃんと意味考えて付けることも多いじゃないですか。奏さんの名前もお父さんが音楽にちなんでつけてくれたんだろうし」

 「…確かにそうかも」

 

 

 全治郎を励まそうとしているであろう影の意図を察して奏も話に乗る。

 

 

 「日向さんの名前はどういう意味なんですか?」

 「昔学校の宿題か何かで聞いたな…確か、影は日が出ているところに必ずあるから日の当たる場所で生きてほしい見たいな意味だった気が…」

 「名前の意味か…」

 

 

 全治郎も自分の記憶を辿ってみる。もし両親が自分の為に考えて遺してくれた物なのだとしたらしっかりしっておきたい。

 両手を組んで考え始めた全治郎に2人が黙って待っていると影の耳が異変を捉える。

 

 

 バサッ バサバサッ

 「っ!何か来る!」

 「なに?」

 

 

 突然立ち上がり空を見上げた影に全治郎も動く。2人が見上げた先には高速で飛来する謎の物体。

 影が奏を抱きかかえると三人は左右に分かれるように転がり、先程まで座っていたベンチが砕かれる。

 

 

 「と、鳥…?」

 「怪人か!」

 

 

 そのまま空に飛び上がりこちらを見下ろす怪人、イーグルノーネイムに対し影と全治郎はドライバーを取り出し変身しようとする。

 その時、病院の屋上から何かが飛び降りてくる。その人物、スワンプは薄ら笑いを浮かべるとドライバーを装着しながら喋りかけてくる

 

 

 「怪人呼びは酷いな〜。彼にはちゃんとイーグルノーネイムって名前があるんだから」『ジャスティス!!』

 「お前は…!」『セカイ!!』

 「宵崎さん、病院の中に!」『シャドウ!!』

 「わ、分かりました…!」

 

 

 スワンプがスフィアを取り出し起動させたのを見た2人もスフィアをベルトに装填させ3人は同時に叫ぶ。

 奏が病院内に戻り扉から様子を伺おうとするも何処からか現れた霧により視界が阻まれる。

 

 

 「「「変身!!」」」

 『CHANGE THE WORLD!!』

 『START ABILITY SHADOW!!』

 『CHANGE THE JUSTICE!!』

 

 

 霧から音が鳴り響くと同時に、強烈な衝撃が走り霧が吹き飛ぶ。扉から顔を出していた奏にまで届く衝撃に吹き飛びそうになりながらも必死に視線を向けるとライダーとスワンプが剣と剣をぶつけ合っている。

 

 

 『『ジャスティスブレード!!』』

 「ぐっ…!」

 「どうした?調子が悪そうだ!」

 

 

 力を込めた一撃にライダーはスワンプの言葉通りに吹き飛ばされる。そのまま追撃に出ようとするのをビートが止めようと駆け出した瞬間、イーグルがビートを掴んで飛び上がる。

 

 

 「うぉぉぉ!?」

 「影!?」

 

 

 どんどん遠ざかっていく病院の景色、上がっていく高度の浮遊感に寒気を覚える。

 反撃しようと武器を振るおうにもツインエッジは長すぎてこのGの中背後の敵を狙えず分割してはそもそも届かないだろう。

 イーグルのスピードはとてつもなくこのままでは合流するのがどんどん厳しくなる。

 

 

 「舐めるなよ!」

 

 

 覚悟を決めるとシャドウラインを弾く。影のドームが2人を包み込み、突然視界が黒1色に染まったイーグルは静止できず頭を勢いよくぶつける。

 そのままバランスを崩すとビートを離し2人は離れた位置に落ちていく。

 

 

 「はい、チョコとクリームとイチゴね」

 「わ〜い!ありがとうございます!」

 

 

 弓は森林公園に停められたキッチンカーからドーナツが入った袋を受け取る。

 腕にはその他にもアニメグッズの入ったトートバッグを持っており今日の外出目的が何だったか一目瞭然だ。

 

 

 「美味しそ〜!あ〜ん」

 

 

 大きく口を開けて手に持ったイチゴのドーナツを頬張ろうとした時、森林公園の池に何かが落ち大きな水飛沫を上げる。

 驚きながら振り返るとイーグルノーネイムが池から上がり羽をバサバサと振り水滴を落とす。

 

 

 『キキィっ!』

 「怪人…!?」『ネライドライバー!!』

 

 

 素早くドライバーを装着するとスフィアを取り出し、その腕に引っ掛けた袋を見つめる。

 ドーナツを一口だけ齧ると袋に仕舞い地面に置くとポーズを決め叫ぶ。

 

 

 「ふぇんひん!」

 『MY LOCK SICK!!』

 

 

 霧に包まれ矢に貫かれ変身を遂げる。ヒットシューターを構え即座に矢を放つもイーグルは空に飛び上がることで回避する。

 その後も矢を連続で放ちイーグルを狙うも回避され続けるがその動きにラヴァーは違和感を持つ。

 

 

 (攻めてこない…?)

 

 

 空に飛び上がったイーグルは矢を躱しながら距離を開けていく。イーグルからすればラヴァーの相手をする必要はない、むしろ途中で取り逃がしたビートを早く見つけなければならないのだ。

 背中を向けてその場を後にしようとするイーグルに対しラヴァーは弓の持ち手をつまみながら捻り矢を放つ。

 

 

 『ショット!!』

 「えいや!」

 

 

 先程よりも速度をました矢がイーグルに迫る。しかしイーグルはまるで背中に目でもついているかのようにヒラリと躱す。

 しかし、躱された矢がそのままイーグルの眼前を過ぎ去ろうとした時突然弾け無数の小さな矢になりその身体に直撃する。

 

 

 『キィィィ!?』

 

 

 予想外の一撃に再び地面に真っ逆さまに墜落する。大きな土煙が上がるも翼で吹き飛ばしながら立ち上がり再度空に飛び上がろうとするも、その翼に矢が突き刺さり爆発が起こる。

 派手に燃え上がった翼の火を消そうと池に飛び込むイーグルを横目にラヴァーはカイザスフィアを取り出す。

 

 

 「これでもう飛べなそうだよね!」

 『MY LOCK KAIXA!!』

 

 

 霧に包まれるとシルエットに黄色いラインが走り光と共にラヴァーの姿が変わる。

 ピンク色の装甲は黄色いラインで区切られ黒が入り混じるようになり、胸の心臓のマークは黒い円にΧの形に黄色いラインが走り左右は紫に染まっている。

 口の黒いマスクを仮面ライダーカイザの口元のデザインに変えたラヴァーが変身を完了させるとその手に持つヒットシューターに黄色い光が灯る。

 

 

 「行くよぉ!」

 

 

 火を鎮火させ池から這い上がってきたイーグル目掛けて駆け出す。いくら焦げても怪人である以上常識で推し量るべきではない。

 再び飛び上がられないよう接近戦を挑む。そんなラヴァーの考えを読んだのかそれとも飛べないのかイーグルはその翼を振るいラヴァーに攻撃する。

 

 

 「おっと!」

 

 

 立ち止まって躱すもイーグルはその後も連続で攻撃を放つ。体の半分以上を占めるその翼のリーチは圧倒的でラヴァーの間合いを詰めさせない。

 しかし、どれだけ大きな武器だろうとラヴァーがリーチで負けることはない。翼による一撃を躱すとヒットシューターから矢を放つ。

 至近距離の射撃をイーグルが身をよじって躱した隙に距離を詰めるとヒットシューターをその体に斜め掛けに振るう。

 黄色く光る弓がその体をなぞると火花が散りイーグルは苦悶の声を上げる。

 

 

 「でいやぁ!」

 

 

 怯むイーグルに遠慮なく連続で弓を振るう。黄色の輝きは高熱を帯び当たった部位をレーザーのように焼き切っていく。

 フラフラとよろめきながら体の裂傷から煙を上げるイーグルに対しラヴァーは必殺の準備に入る。

 

 

 『ENEMY LOCK KAIXA!!』

 「ふっ!」

 

 

 ベルトから音声がなると同時に地面にピンク色の弓が描かれ、ラヴァーが踵を叩きつけながら後ろに引くと黄色の矢が現れる。

 足を放つと勢い良く弦が弾かれラヴァーの足を掬い上げると流れに逆らわずに一回転しながら着地する。

 同時に放たれた矢が一直線にイーグルに突き刺さると四角錐型のエネルギーに変形し、ラヴァーはそれに向かって駆け出すと跳びながら両足を突き出す。

 

 

 「でぇぇぇぇやぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 ラヴァーがエネルギーに吸い込まれるとそのままイーグルの体に突き刺さって消えていく。

 イーグルの体に大きくΧの字が浮かび上がると後ろにラヴァーが現れ、イーグルは青い炎を上げながら灰になってしまう。

 無事に敵を倒すことに成功したラヴァーはベルトに手をかけると変身を解除しようとする。

 

 

 「見つけたぞ」

 「ん?」

 

 

 後ろから聞こえた声に振り返る。するとそこには髪を束ねた見慣れない青年。

 もしやファンでも出来てしまったのかなどと場違いな事を考えていると青年は腕を模したドライバーを取り出し装着する。

 

 

 『ハカイドライバー!!』

 「黄色いラインのライダー…お前が影をやった奴だな!」

 「え、ちょ、ま」

 「変身!!」

 『LETS ACTIVE AVENGE!!』

 

 

 スワンプから与えられた情報に従い、ここに黄色いラインのライダーに向かって襲いかかるレイジという状況が生まれる。

 何処かが狂ってしまった作戦の中、不毛な争いが起きようとしていた。

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

 「ぐっ!!」

 「常世さん!」

 

 

 一方その頃、ライダーとスワンプの戦いは激しさを増しながらその場所を移していた。

 病院近くの川にかかった橋の上で地面を転がるライダーに着いてきた奏が心配の声を上げる中スワンプは苛立ちを覚える。

 

 

 (遅いぞ…何やってる…)

 

 

 戦いを始める前に連絡したにもかかわらず満が現れない。この橋は森林公園を抜けたすぐそばにあり満のいた場所からなら間違いなく通るはずだ。

 計画通りに事が運ばれていない事に怒りを覚えているとライダーがジャスティスブレードの歯車を回す。

 

 

 『スラッシュ!!』

 「はぁっ!」

 「ふん!」

 

 

 自分に向け放たれた斬撃波を逆手に持ったジャスティスブレードで叩き落とす。

 戦いながら感じていた違和感が確信に変わっていくのを感じるとライダーに向けて馬鹿にするように口を開く。

 

 

 「やっぱりなぁ。君、やる気ないだろ」

 「何だと…!?」

 

 

 スワンプの言葉に心外と言わんばかりに語気を強める。両親の仇である相手と戦うのにやる気がない訳がない。何としてもここで仕留める覚悟で臨んでいるはずだ。

 しかし、そんな想いとは裏腹に胸に言葉が突き刺さる。まるで見ないふりをしていた物を見透かされたような気分だ。

 

 

 「この戦いの勝敗に興味がない。いや、自分の生死自体に興味がないと言うべきかな。俺はどうやら相当深い傷をお前に残したらしい」

 「……!!」

 

 

 その言葉に何も返すことが出来ない。当然だ、自分は何度も死のうとしていた。

 いや、きっとこれからも何度も同じ気持ちに陥るだろう。そんな気持ちを抱いたまま生きていく意味があるのかと言う考えもまた自身の生への執着を奪っていく。

 仮面ライダーの力は想いの力、失意のどん底で迷い続ける全治郎が強い力を発揮できるわけがないのだ。

 

 

 「コイツは必要無かったかもね…でもまぁ折角だ、使っておこうか」

 

 

 そういうとスワンプは新たなスフィアを取り出す。スイッチを押すと宿した力の名を叫びながらその体をピンク色ーーー否、マゼンタに輝かせる。

 

 

 『ディケイド!!』

 

 

 ベルトにスフィアを装填し力を解放させる。地面から噴き出した泥が新たな姿を形作っていく。

 体に縦と横に伸びたラインが心臓の辺りで交差し、顔からはプレートのような物が何本も伸びていく。

 世界をも破壊する力を宿した仮面ライダースワンプ、ディケイドセレクトは逆手に剣を持ちながらさらにスフィアのスイッチを押す。

 

 

 『CHANGE THE DECADE!!』

 『KAMENRIDE DECADE!』

 『ATTACKRIDE SLASH!』

 「ハァッ!」

 

 

 姿を変えたスワンプがジャスティスブレードを振るう。ライダーも迎え撃とうと反撃するもスワンプの刀身は分身しその威力を増してライダーの剣を弾く。

 

 

 「ぐっ!」

 『アルテマウェポン!!』

 

 

 飛ばされたジャスティスブレードの代わりにアルテマウェポンを取り出すもスワンプのパワーに太刀打ち出来ずガードを打ち上げられる。

 次の瞬間スワンプが剣を突き出すも直前で止め、またもスイッチを押す。

 

 

 『ATTACKRIDE BLAST!』

 「ぐあぁ!?」

 

 

 突き出された刀身の周りに光で出来た銃口が幾つも現れライダーにエネルギー弾を放ち吹き飛ばす。

 地面を転がっていき橋の柵にぶつかり止まると立ち上がるより先にその首元に切っ先が突き立てられる。

 

 

 「最期に言い残すことはあるか?」

 「……」

 

 

 少し動かせば自分の命を刈り取られる位置に刃が近づいた状態になり改めて気づく。

 この状況になっても自分の中には焦りも人生への後悔も浮かばない。目の前の相手の言う通り、自分には生きようという想いがないのだ。

 自分を産み育ててくれた両親も、身寄りのない自分を引き取ってくれた先生も居なくなってしまった。

 幼い頃に出会った友人がこの世界から消えたいなんて悩みを抱えた事にも気付けず、何より打ち明けてもくれなかった。

 

 

 (誰にも恩も返せず、絆を育む事も出来なかった。こんな俺に生きている意味なんか…)

 

 

 次の瞬間、スワンプの刃が振るわれ橋を粉砕しながらライダーが体から火花を散らしながら落ちていく。

 悲鳴を上げることもなく静かに変身が解除され水面に落ちていき消える。

 全治郎が消えた川にスワンプは指先から泥を垂らすと自らも変身を解除し笑みを浮かべる。

 

 

 「サヨナラ、常世全治郎」




 設定
 仮面ライダーラヴァーカイザセレクト
 仮面ライダーカイザの力を宿した姿。ヒットシューターにフォトンブラッドの刃が現れ弱点の近接戦をカバーできる。

 仮面ライダースワンプディケイドセレクト
 仮面ライダーディケイドの力を宿した姿。クウガからキバまでのライダーへのカメンライドや多種多様なアタックライド、他のライダーがいればファイナルフォームライドまで使える。
 

 イーグルノーネイム
 鷲型のノーネイム。強靭な羽と高速の飛行能力が武器。今後ホークノーネイムとかも出すだろうから鷹と鷲の違いを調べたらサイズだけで同じ生き物と出た。
 今後ホークを出すことはない。


 次回予告
 「私、ずっとここにいていいかな」
 「おねがい、まふゆを救ってあげて」
 「私が救う」
 「ここでぶっ殺してやる!」

 第六話 『救済者』
 「死ぬのはお前の方だ」
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