プロジェクトセカイ feat  仮面ライダー   作:ミッツー116

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第二話、ようやく人物紹介のキャラが全員出てきます


第二話

 

 

 舞い落ちる桜の花びらを浴びながら学ランの男子生徒とセーラー服の女子生徒、そしてその家族たちが歩いている。

 人々の向かうところは同じ。『宮益坂学園』2年前に共学化された学校だ。中高一貫制でもともと中学は共学だったが昨今の少子化の影響か高校も共学になった。そんな高校の学ランを着ながら優二もまたその校門をくぐった。

 周りの家族と一緒の生徒たちと違い一人きりなのに居心地の悪さを感じるが気にしないようにしながら中庭に張り出されたクラス表を見に人混みに混じる。

 

 

 「えーと、し、し、A組にはない。B 組には…?おっあった。一歌はC組か」

 

 

 自分の名前をみつけつつげて一歌を探してクラス表を眺める残念ながらAにもBにもないので最後にのこったCなのだろうと目をスライドさせようとすると、一歌の名前を見つける。

 

 

 (うーん、一歌とクラス別かぁ…)

 

 

 スパイダーノーネイムの騒動の日、2人は連絡先を交換しメッセージでやりとりをしていたがそこまで多くは語らなかった。最初の方で高校が同じなことが分かったからだ。同じ高校なら話す機会も増えるだろうとメッセージではそこまで話さなかったのだが…出鼻を挫かれてしまった。

 

 

 (まあ休み時間にでも話にいけばいいか)

 

 

 そう結論付けると式の行われる体育館に向かう。そんな優二の横を銀髪の少女と白髪の青年が通りすぎると、白髪の青年が振り返る。

 

 

 「今の…」

 「?剣、どうしたの?」

 「いや…何でもない。気の所為だと思う。」

 「?そう。じゃあ早くクラス表みよ」

 「志歩ちゃんと同じクラスになれますよーに!」

 「祈り強すぎでしょ笑」

 

 

 そんな2人の向かうクラス表では金髪の男子がクラス表とにらめっこをしていた。しばらく見ていると突然叫ぶ。

 

 

 「あった!三風 線記!『み』だから割と粘らないとイケないのが毎回キツイぜ…さてほかのみんなは…」

 

 

 そう呟くと手に持ったメモ帳に自分のクラスを記入する。そこには優二の名前もあった。

 

 

 「さて、つぎは穂波だな…『も』だから俺と近いはず!も、も、も」

 

 

 そう言ってクラス表と再びにらめっこを始める。幼なじみとの再会の算段を立てながら。

 

 

    第二話  「駆け抜けろライダー」

 

 

 「それでは明日から本格的に授業だ。ちゃんと時間割見て来いよー」

 (なんか恐ろしく早く終わった気がする)

 

 

 今日は入学式と新入生に向けた部活紹介くらいしかなかったから当然かもしれないがそれでも一瞬に感じる。まぁ学校が早く終わるぶんには嬉しいことだ。一歌でも誘って一緒に帰ろうと考えていたところ…

 

 

 「ふっふっふっ」

 (なんだこいつ)

 

 

 机の前に突然金髪の男が腕を組みながら現れた。怖い。クラスメイトであることは分かるがこのコンタクトの仕方はなんなんだ。第一友人に選ばれたのか?だとしたらやり方を間違えてることを教えることから友情を始めることになる。

 

 

 「久しぶりだなぁ優二ぃ!」

 (最悪だ全然覚えてない知り合いっぽい)

 

 

 ここまでの奇人であるにも関わらず一切記憶に残らないとは。もはやトラウマとして記憶が自己防衛で消しているのではないのか。

 そのレベルの奇人に忘れたと言う事実がバレたらどうなるのかも恐ろしい。解決策を考えなくては。

 

 

 「?どうしたんだよ?」

 「いや…その…」

 「まさか…俺のこと忘れたのか?」

 (まずい消される)

 

 余りにも早い人生の終わりに辞世の句を詠む暇もないが予想に反して大きなリアクションで騒ぎ始める。

 

 

 「嘘だろー!!ひどいって!!そりゃ小学生ぶりだけどさー!!」

 「一歌は会ったら思い出したんだけどなぁ」

 「一歌!そう一歌だよ!一歌覚えてるなら覚えてんだろ!?一緒に皆で遊んだじゃん!」

 「みんな…?」

 「お前まじか!ちょ…穂波ーーー!!!」

 

 

 信じられないと言った表情でクラスメイトの女子を呼ぶ。穂波と呼ばれた少女は大きな声に驚きながらうろたえる。

 

 

 「穂波?呼ばれてるよ?」

 「知り合い?」

 「う、うん。ごめんね。ちょっと行ってくるね。」

 「穂波ーー!!早くーー!!」

 「うるさいなぁお前」

 「お前のせいだろ!」

 

 

 友達に謝罪をしたあとそのポニーテールの少女…穂波が小走りで合流し、会話に参加する。

 

 

 「え、えーとひ、久しぶり二人とも。」

 「え、えー…」

 「!?お前穂波のことも忘れてんの!?何で!?俺と違って引っ越してないよ!?」

 「え?引っ越し?」

 

 

 男の口から新しい情報が出てくる。

 

 

 「そう、引っ越し。俺小4の頃に引っ越したじゃん。だから大分会ってないよ。」

 「引っ越し…?」

 

 

 小4で分かれている。大体6年ほど会ってないことになる。それなら忘れてもおかしくはないのかもしれないが…顔や名前はともかく友人が引っ越したという記憶すらない。いやそもそも、小学生の頃の一歌以外の友人なんて…

 優二が疑問におもっていると男自らの疑問を口にだす。

 

 

 「で俺はともかく何で穂波のことも覚えてないんだよ」

 「あ、あのね線記くん。その…優二くんは私たちと中学が別々だったの。」

 「あ、そうなの?」

 「うん、だから会うのは三年ぶり…くらいだよね?」

 「3年かー、じゃあ忘れてもおかしくないか。それなら俺とかなおさら覚えてないよな」

 

 

 優二が考え込んでいる間に男は疑問を自己解決させる。すると突然「よし!」と叫ぶ。

 

 

 「それじゃ!改めて自己紹介と行くか!」

 「え」

 「覚えてないんだししょうがないだろ?」

 「ま、まぁ俺は助かるけど…」

 「しゃ!じゃあ行くぜ?俺の名前は『三風 線記』!!お前とは小学生の頃に穂波たちと一緒に知り合った幼なじみだ!!小4で引っ越したけど約束のために帰ってきたぜ!!」

 「…約束?」

 

 

 男の自己紹介を聞き届け、気になった単語を聞き返す。約束とは何のことか?

 

 

 「バンドだよバンド。俺たち昔組んでたんだぜ?」

 「!?」

 

 

 線記の発言に穂波がビクリと反応するが2人は見逃す。優二にはこの発言で長年の疑問が解消されたからだ。

 

 

 「…そういや俺の部屋ギターあるんだよな。買った覚えないな~って思ってたんだよ」

 「…よく放置できたなその疑問」

 「捨てるに捨てれなかったんだよなんか。」

 

 

 疑問が解消されたところで優二は穂波に向き直る。次はこちらの自己紹介のはずだ。

 

 

 「…」

 「…えっと…」

 「穂波、待たれてる」

 「へっ!?あ、ごめんね。えっと」

 

 

 心ここにあらずと言った様子だったが線記に言われ戻ってくる。少し息を整えると自己紹介を始める。

 

 

 「えっと…私は『望月 穂波』。線記くんと同じで小学生のころに知り合って…卒業するまではよく遊んでたよ。」

 

 

 そう言ってすこしぎこちない笑顔を浮かべる。取り敢えず聞いたが…一切記憶にない。一歌に聞けば分かるだろうか

 

 

 「えっと…じゃあ次おれ?」

 「いや俺らは覚えてるから。大丈夫かお前。まぁいいや、それじゃ行くか」

 

 

 そう言うと線記は教室を出ようとする。

 

 

 「へ!?行くって何処に!?」

 「何処って一歌たちのところだよ。皆で話そうぜ。」

 「!!」

 

 

 その発言を聞くと穂波はまたバツの悪そうな顔をして口を開く。

 

 

 「えっと…ごめんね…?私…今日は別の子と予定があって…」

 「えー!久々に会った俺より優先!?」

 「ほんとにごめんね?また予定空いてるときにお話しよ」

 「ちぇ、分かったよ。行こうぜ優二」

 「え、あ、うん。」

 

 

 線記に促されるままにあとをついていく。だが教室を出る前にふと後ろを振り返る。

 

 

 「ご、ごめんお待たせ…」

 「遅いよ穂波〜」

 「ほ、ほんとにごめんね?お店おごるから…」

 「い、いやそこまでしなくてもいいよ。はやくいこー」

 

 

 友達と話す穂波の姿は、自分と再会した時の一歌とはまた別の違和感があった。

 

 

ーーーーーー

 

 

 宮益坂学園 1-C

 

 「ふっふっふっ、驚いたみたいだねみんな。」

 

 

 隣のクラスで優二が幼なじみと再会している頃、一歌は驚きの表情を浮かべていた。目の間で両手を腰に当て可愛らしく胸を張り笑っている金髪のツインテールの先をピンク色に少女と予想外の再会を果たしたからだ。

 

 

 「い、いやいやいや!そりゃ驚くでしょ!復学するとか聞いてないし!」

 「全くだ、教えてくれてもいいだろう。」

 

 

 隣りにいる幼なじみ2人が驚愕と抗議の声を上げる。正直自分も同じ気持ちだ。それほどまでに目の前の少女が学校に来れるようになったというのは衝撃的なことなのだ。

 

 

 「ふっふ〜ん、サプラ〜イズ」

 「もう、咲希ったら」

 

 

 いたずらっぽく笑う目の前の少女、『天馬 咲希』に対して思わず笑みがこぼれる。驚きでそれどころではなかったがそれでも嬉しい。彼女とこうやって共に学園生活をおくる、それは自分もずっと望んでいたことだ。

 

 

 「えへへっ、でも嬉しいな〜。みんなとまた一緒にいられて!ねぇねぇ!私ほかの皆のクラスも確認したから皆で「おーい!咲希ー!一歌ー!新一ー!弓ー!」!!」

 

 

 咲希の声を遮るように教室のドアから大きな声が聞こえる。声の方に目を向けるとそこには金髪の男子生徒、そして最近衝撃の再会を果たした幼なじみの優二がいた。

 

 

 「皆の今の姿が分かんねーからどれが咲希たちか分かんねーな。お前も三年ぶりなんだろ?」

 「いや、一歌とこないだ会ったから一歌の顔はわか…いた!」

 「まじか!どれ!」

 「ほらあの黒髪の…」

 

 

 ドア前でこちらを探す2人。それを見て咲希が大きな声を上げる。

 

 

 「え!?もしかして…ゆーくんとせんくん!?」

 「あ!気づいた!咲希だ多分あれ!テンション感がそう!」

 「やっぱ覚えてないな…」

 

 

 テンションの上がる2人に反して優二だけ首をかしげながら男子2人がこちらに近づいてくる。

 

 

 「お前…まさか線記か?」

 「おー!さすが新一!覚えてくれた!いや普通は覚えてるよな」

 「悪かったって…」

 「うわー!線記!?髪めちゃくちゃ金髪になってんじゃーん!なになに?高校デビュー?」

 「…弓だよな?お前テンションどうした?」

 「中学くらいからこんな感じだ」

 「弓は明るく生まれ変わりました♪」

 「せんくん引っ越したのにいつ帰って来てたの!?私びっくりしちゃった!」

 「先月くらいだよ。高校入学を機に帰ってきた。髪も染めてな!」

 

 

 久しぶりに会った幼なじみに皆テンションが上がるが…やはり優二だけがおかしい。明らかに雰囲気に乗り切れていない。気になり一歌は声をかける。

 

 

 「優二…どうかしたの?」

 「あ…いやぁ…その…」

 「お前まさか…一人も覚えてないのか?」

 

 

 線記が向けた優二への疑いに一歌は困惑の声を上げる。だが以前再会した時も違和感を覚えたことを思い出す。

 

 

 『新一…?さっき一緒にいたやつか』

 

 

 あの時の優二の発言はまるで新一のことを知らないかのようだった。自分と同じく幼少期を共に過ごし幼なじみなのだから当然覚えていると思ったが…話についていけなかった藍色の髪の女子生徒、弓と呼ばれた少女が声を上げる。

 

 

 「どゆこと?」

 「聞いて驚くなよ弓。こいつ、俺等のこと覚えてない。」

 「は?」

 

 

 線記の発言に一歌と同じクラスだった新一の方が声を上げる。そのまま鋭い目つきを優二のほうに向ける。

 

 

 「どういうことだ」

 「え…いや…その…」

 「お前ら中学別だったんだろ?三年会わなかったらなぁ」

 「…こっちは覚えてるんだからこいつの問題だろ。」

 

 

 線記の話を聞いても納得いかない様子の新一。本当に自分が一方的に忘れてるだけなことに気づき始めた優二が冷や汗を描き始める。

 

 

「い、一応私のことは覚えてたよ。」

 「しとけば?自己紹介。俺と穂波さっきやったぜ。」

 「ほなちゃん!あれ?なんで一緒にいないの?」

 「別の友達と約束あるんだってよ。冷てーよな。」

 「そっか…それじゃ私からいくね!」

 

 

 穂波の話を聞いて微妙な表情をする一歌と新一を余所に咲希が優二のほうに向き直る。それを受けた優二も身体をそちらに向け話を聞く体勢になる。

 

 

 「私、天馬 咲希!ずっと入院してたんだけど…やっと退院できて高校から来れるようになったんだ!改めてよろしくねゆーくん!」

 「弓は一之瀬 弓!しょーじき咲希たちほど一緒にいたわけじゃないけど、まーよろしく!」

 「…」

 

 

 女子2人の自己紹介を聞き届け新一のほうを向くが…横を向いたまま口を開こうとしない。

 

 

 「ほら、新一。お前の番。」

 「…」

 「はぁ…こいつ門寺 新一。見ての通り器が小さい」

 「い、いやまぁ…こっちが悪そうだし。」

 「悪『そう』?」

 「な?ちっちゃいだろ?」

 

 

 どうも彼が一番怒っているらしい。こちらが勝手に忘れてしまっているのだからしょうがないが…正直怖い。

 

 

 「んじゃ次はA組だ!」

 「志歩ちゃんとつるくんだね!」

 「げ、私いいわ…」

 

 

 線記と咲希が意気揚々と最後のクラスに向かおうとするも弓が突然拒否反応を示す。優二が疑問に思いたずねる。

 

 

 「なんで行きたくないんだ?」

 「剣と弓は双子の姉弟なんだよ。あ、つるくんが剣な。」

 「仲良くないのか」

 「高校生の姉弟なんてそんなもんでしょ…」

 「うーん…私とお兄ちゃんは仲良しだけどなぁ」

 「そりゃアンタはね…」

 (これが本来のテンションなのかな)

 

 

 なかなか癖の強い人物と自分が知り合いだったことに驚きつつ尚更なぜこんなメンバーを忘れていたのか疑問におもう。

 

 

 「俺も残る。気乗りしないんでな。」

 「えー、拗ねんなよー」

 「…お前はなにがあったか知らないんだ。」

 「?何がだよ?」

 

 

 線記の問いに答えることはなく自分の席に戻っていく新一。それに後ろ髪を引かれる想いを感じながらもあとにすることにする。

 

 

 「それじゃA組にいくか!」

 「おー!!」

 

 

ーーーーーー

 

 

 「おーい志歩ー!剣ー!」

 「志歩ちゃーん!つるくーん!」

 「一歌たちが顔わかるんだから大声で探す必要もうないんじゃないか」

 

 

 クラスを移動し2倍になった声量で探す2人。なお別に効率に変化はないが、驚いた表情で2人の男女が駆けてくる。

 

 

 「咲希!?いつ退院したの!?」

 「一緒にいるの…まさか線記くん!?それに優二くんまで…」

 「まじで忘れてんの優二だけだな」

 「ごめんて」

 「え?」

 

 

 口々に疑問を口にしている2人を余所に線記たちは話を進める。

 

 

 「…それじゃ、優二は私たちのこと忘れたってこと?ふざけてんの?」

 「な。というわけで自己紹介頼むわ。3回目だからちゃっちゃっと頼む。」

 「勝手だなぁ」

 「はぁ…じゃあ適当に終わらすよ。私は日野森 志歩。こっちは一之瀬 剣。」

 「じゃあさっき言ってた弓の弟か。」

 「もう弓に会ったんだね。」

 「先にC組行ったからな。」

 

 

 銀髪のショートカットに緑の目をしたクールな女子高生『日野森 志歩』が自分と隣りにいる白髪をワックスで固めた水色の目をした美形の男子高生『一之瀬 剣』の自己紹介を手早く終わらせるとお互い話し始める。すると咲希が突然きり出す。

 

 

 「ねぇねぇ!放課後皆で一緒に遊びに行かない!?久々に会ったんだし!」

 「お!いいね!俺も誘おうと思ってたんだよ〜」

 「えっ、私はうれしいけど…」

 

 

 咲希の提案に一歌は戸惑うような表情を見せながら剣たちの方をみる。剣は優二の方をチラリと伺ったあと口を開く。

 

 

 「誘ってくれたところ申し訳ないけど僕、これから部活見学に行くんだよね。志歩ちゃんも…たしかバイトでしょ?」

 「…うん、そういうことだから行けない。」

 「…何でどいつもこいつも断ってくるんだ。俺等嫌われてんのか?」

 「うぅ…そんなことないと思いたいよ…」

 

 

 その言葉を最後に志歩と剣は教室から出ていってしまう。

 

 

 「剣、優二のことだけど…」

 「…まさか、忘れてたなんてね。そりゃ、それが一番可能性高いのかもだけど…信じられないよ。」

 「…どうするの?」

 「どうもこうもないよ」

 

 

 志歩の言葉に剣はかつての幼なじみ仲良く遊んでいた頃を思い出す。何も疑わず、ずっと一緒だと思っていたあの頃。もう戻れないのだとあきらめたもの。その残骸が今目の前に落ちてきた。だが自分の気持ちにウソはつけない。

 

 

 「僕は…彼を許せない」

 

 

 別の場所、一歌たちと別れた新一と弓が歩いている。

 

 

 「てかさー、本当によかったん?一緒に行かなくて。」

 「言ったろ。気分が乗らない。」

 「…まぁそりゃ、聞いた話だと優二が悪いと思うけどさぁ。2人が一番仲良かったじゃん?」

 

 

 弓の発言に思わず立ち止まる。たしかに、あとから知り合ったにしては優二とは最も親しかったといっても過言ではない。それは恐らく、お互いの好きなもののおかげだ。だがそれでも許せないことがあった。

 

 

 「お前が今言った通り、『仲良かった』。もう過去形なんだよ。」

 「…過去形ってどういう意味?」

 「…お前の場合、がちで意味を知らないんだろうな。」

 

ーーーーーーー

 

 

 町中で幼女が母親と手をつなぎながら歩いている。隣ではこれから向かうスーパーで買う献立、そして間違いなくねだられるお菓子を回避する方法に母が頭をひねっていた。

 だが、幼女の興味は視線の先にある空高くに飛行している物体に釘付けだった。

 

 

 「ままー、あれなにー?」

 「ん?どぉれ?」

 

 

 優しい声色を上げながら幼女の指さす方向を眺める。見ると何かの生物が空を羽ばたいてる。娘の無垢な疑問に答えたいが距離があって何か分からない。鳥か何かと答えようと思うと影が電線に止まる。その止まり方で母は答えを見つける。

 

 

 「逆さまに止まってるし、蝙蝠さんかな。」

 「わー!私蝙蝠さん初めてみた!」

 「ふふ、良かったね。」

 

 

 

 娘のカルチャーショックを微笑ましく思いながら先に進もうとすると、蝙蝠が地上におりる。…結果的に言うと親子はスーパーには向かわず、全速力で来た方向を戻ることになる。地上の人々に降り立った蝙蝠が2本足で立ち上がった瞬間、その大きさは人間ほどあったのだから。

 

 

ーーーーーーー

 

 

 「ふ〜♪もちもち〜。これがタピオカか〜♪やっぱり女子高生と言ったらタピオカだよね〜」

 「古くね?」

 「まぁ入院生活長かったらしいし。何気に俺も初めて飲む。」

 

 

 学校をあとにした優二、一歌、線記は咲希のつよい要望で4人でタピっていた。

 

 

 「はぁ…にしても…」

 「どうしたの?線記」

 「いやぁ〜やっぱ冷たくねみんな?6年ぶりだぜ俺」

 「まだ言ってる」

 「言うだろそりゃ。俺はこの日を待ち望んでいたのに。」

 

 

 うなだれながら愚痴を言う線記に優二は教室で彼が言っていたことを思い出す。

 

 

 「そういやバンドがどうのとか…」

 「そう!バンドだよ!その話してなかった!」

 「懐かしい〜!また皆でやりたいな〜!」

 「やるだろ!その約束のために帰ってきたんだぜ俺」

 (バンド…)

 

 

 盛り上がる線記と咲希を横目に自分の部屋のギターのことを思い出す。いつの間にか部屋にあったギター。何故か捨てる気にもなれなかったが自分は何処かで約束を覚えていたのだろうか。そんなことを考えてると一歌が声をかけてくる。

 

 

 「ねぇ、優二。みんなのこと覚えてないって言ってたけど…約束のことも覚えてないの?」

 「約束って…バンドのことか?」

 「…」

 

 

 それを聞いた一歌は見るからに落ち込む。奥の咲希も複雑そうだ。何とか思い出そうとすると声が聞こえてくる。

 

 

 『み……。……来…』

 「?誰かしゃべったか?」

 「ううん。喋ってないよ?」

 「でも、確かに私にも何か聞こえたような。」

 「スマホじゃね?みんな鞄から出してみろよ。」

 

 

 線記の言葉に促されるままにスマホを取り出すと、一歌のスマホから制服姿のミクが飛び出している。

 

 

 「なーんだ一歌か。相変わらずミク好きだな。」

 「え…い、いやこんなアプリ知らないけど…」

 「なんかの広告とかかな?飛び出してるのすごーい!」

 「…この制服なんか見たことあるな。」

 

 

 それぞれの反応を示していると画面のミクが口を開く。

 

 

 『やっとみんな気づいてくれたね。』

 「おぉ、しゃべった」

 「かわいー!」

 『///んん!それじゃみんな、セカイに紹介するね』

 「手の込んだ広告だな」

 「セカイってなn」

 

 

 優二が喋ろうとしたときスマホからでた光が4人を飲み込んだ。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 「に…ってなんじゃこりゃあ!」

 

 

 光に包まれたたと思ったら4人ともいつの間にか見知らぬ学校の廊下に立っていた。

 

 

 「な、なに…!?どうなってるの」

 「わ、私たち…いったいどうなっちゃ…いたたたたたた!!」

 

 

 戸惑う咲希のほっぺたを突然線記が思いっきり引っ張る。

 

 

 「にゃに!?にゃにひゅるの〜!!」

 「ゆ、夢かなって」

 「自分のだろ相場は」

 「い、今の声…咲希ちゃん?」

 

 

 4人が戸惑っていると後ろから聞き覚えのある声が聞こえ振り返るとそこには新一、穂波、剣、志歩の4人が立っていた。

 

 

 「みんな!みんなも来てたの!?」

 「こっちのセリフだよ…咲希ちゃんたちも突然スマホが光ったの?」

 「どうなってんだここは…」

 

 

 ほかの4人もミクは見ていないが同じような状況らしい。そんな中優二が口を開く。

 

 

 「俺ここ来たことあるかも…」

 「まじか!」

 「それで何処なのここ」

 「いや…そこまでは…でもここ人いたぞ前。そいつに聞けば…」

 

 

 そこまで喋るとどこからともなくギターの音が聞こえてくる。

 

 

 「え?何この音?」

 「突然来た異世界…謎の音楽…きさらぎ駅のたぐいかな」

 「き、気味の悪いことをいうな…!」

 

 

 どこからともなく聞こえる音楽に困惑するなか剣が突然わくわくした表情をし始める。それに新一がおびえ始めると志歩が出どころを探り始める

 

 

 「…こっちから聞こえてくるね」

 「志歩ちゃん!?行くの」

 「冷静になりなよ…さっき優二が言ってた人が演奏してるんでしょ。」

 「よーし!行こう!すぐ行こ!」

 「こ、このオカルトマニアが…」

 「し、しんくん!服つかませて!」

 「新一もビビってるのに」

 

 

 出どころを突き止め各々の反応を示しながら向かおうとし始める。そして一つの教室に着き恐る恐るドアを開ける。

 

 

 「〜♪」

 

 

 そこにはギターを弾く一人の少女がいた。後ろ姿だが制服姿の緑色のツインテール。そしてその姿は先ほど見た。

 

 

 「…さっきのミクじゃね?」

 「だよな」

 「え?ミク?」

 

 

 線記と優二が確かめ合う中ミクが演奏を止めギターを置き、こちらに振り向く。

 

 

 「やっと会えたね。セカイにようこそ、一歌。みんな。」

 「は、初音ミク!?」

 「や、やっぱり異世界なんだ!」

 「い、いやドッキリという可能性も…!」

 「カメラでも探すか」

 「ふふ、驚いてるね。無理もないけど。」

 

 

 それぞれの反応を見ながら満足そうな表情をするミク。そんなミクに一歌は疑問をぶつける。

 

 

 「な、なんでミクがここに?」

 「ふふ、それはね。ここが一歌たちの想いで出来たセカイだからだよ。」 

 

 

 一歌の質問にミクは嬉しそうな…満足そうな顔をしながら話し始める。

 

 

 「セカイはね…誰かの強い想いでできる場所。その想いによって色んな姿形があるの…ここはそんなセカイの一つ。一歌、穂波、咲希、志歩の4人の想いで出来たセカイなんだ。」

 「私たちの想いで出来たセカイ?」

 

 

 余りにも非現実的な話に理解が及ばない。だがそんななかでも今の話には大きな疑問が残る。それを聞くために剣が手を上げる。

 

 

 「一個聞いて良い?」

 「ふふ、なんでも聞いていいよ。」

 「志歩ちゃんたちの想いで出来たセカイ?になんで僕らも入ってるの?」

 「近くにいたから巻き込まれたとかじゃないのか?」

 「線記くんたちは知らないけど、さっき言った通り用事あるから別れてたんだよ。」

 「そこら辺どうなんだ」

 

 

 剣たちが疑問をミクに問い詰める。するとミクは…

 

 

 「………」

 「…あのー、答えてもらって…」

 「え、えーとね」

 

 

 そう言うとミクの目が分かりやすく横を向く。

 

 

 「?そっちに何が…」

 「あ!ちょ…見ちゃ駄目!」

 

 

 ミクの目線を追って全員が横を向くするとそこには…

 

 

 『ベルトに適合したから』

 「なんだあのスケッチブック」

 「カンペ?」

 「だ、誰か隠れてるのかな。」

 

 

 楽器を置くスペースを置くために端に寄せたと思われた机のすき間からスケッチブックが伸びている。

 明らかに不自然な光景に緊迫感がどんどん薄れていき気まずくなったのかゆっくりスケッチブックが下がっていく。

 

 

 「いや、今さら無理でしょ」

 「何の足掻きだ。」

 「上がれ!というか出てこい!」

 「…だから言ったんだよ。」

 

 

 そう言うと机の裏から制服を第一ボタンまで閉めた青年が現れそれを見た優二は声を上げる。 

 

 

 「あ!俺にベルトくれた人!」

 「よう、しばらくぶりだな。」

 「もう~!なんで出てきちゃうの〜!」

 「嘘だろお前、あの空気で続行しろってのか。」

 

 

 ミクの発言に衝撃を受けていると教室のドアから声が聞こえてくる。

 

 

 「そもそも、わざわざ星乃たちに顔を見せて中に呼び込んでから急いで教室に戻ってギター弾いてる演出は無理があると思うがな。」

 「意地悪いわないの。ミクったら、先輩としてかっこいいところ見せるって張り切ってたんだから。」

 「な、なに!?」

 

 

 突然聞こえた声に振り向くと一組の男女がいる。男の方はスケッチブックの男とは違いブレザーではなく学ラン。ジャケットのなかも普通の色付きシャツを来ている。だが、それよりも問題なのは女の方だ。桃色の髪を長く伸ばしているオトナっぽい女性。それはミクと同じ…

 

 

 「こ、こんどは『巡音ルカ』!?」

 「ここ一歌の想いが強すぎないか?」

 「な、なんか恥ずかしくなってきた…」

 

 

 驚く一歌たちを置いて剣は疑問の再会を解消するためにスケッチブックの男の方を向き直す。

 

 

 「だからさーちゃんと覚えろって言ったろ?絶対聞かれるんだから」

 「だって〜状況が特殊すぎるんだもん!ほかのセカイは絶対こんなことないよ」

 「ほかのセカイのなんか分かんないだろ〜」

 「絶対こんなことはない!絶対!」

 「さっきの続き聞かせてもらっていい?」

 「あぁ、悪い悪い。」

 

 

 そう言うと男はスケッチブックを置き話し始める。

 

 

 「お前らがここに入れるのはドライバーに適合したからだ。」

 「ドライバー?」

 「俺がもらったこれだよな。」

 

 

 そう言うと優二はセカイドライバーを懐から取り出す。

 

 

 「それ…この間使ってたやつ?まだ持ってたんだ。」

 「そりゃ持ってるよ。ガチで変身出来るんだぜこれ?」

 「それはあくまでドライバーの一種でしかない。」

 

 

 そう言うと学ランの男は懐から優二の持っているドライバーとは別のドライバーを取り出す。その数は残りの男子の数と同じ3つだった。

 

 

 「うぉー!別のベルトだ!」

 「あれに適合したから入れるの?なんで?」

 「それには俺たちの説明からしないといけない。」

 

 

 そう言うと学ランの男はスケッチブックの横に移動し再び話し始める。

 

 

 「まずこいつはセカイ、俺はハカイ。どっちもここのセカイの住人じゃない」

 「それ、どういうこと?」

 「2人はある日突然ここに流れ着いたのよ。」

 

 

 そう言うとミクとルカは過去を懐かしむように思い出す。

 

 

 「びっくりしたな〜ギターを弾いてたら突然セカイが部屋に落ちてきたんだもん。」

 「それもセカイは自分の名前も覚えてないような状態だったもんね。あとから来たハカイがセカイの事知ってたからようやく分かったもの。」

 「でもハカイも記憶喪失だぜ?自分のことは覚えてないし…持ってきたのにベルトのことは覚えてなかったじゃん。俺が覚えてたから良かったけど。」

 

 

 過去を懐かしむミクたちにいつの間にか椅子を持ってきて座っている線記は疑問をぶつける。

 

 

 「ん?自分のこと覚えてないのになんで名前分かんの?」

 「仲間のことは覚えてたからな。仲間が自分をこう呼んでた記憶があるんだよ。」

 「ワンチャンあだ名なんだ。」

 

 

 線記の疑問に答えたあとハカイは話を戻す。

 

 

 「でまずセカイに入れる条件だが…大きく分けて2つだ。」

 「2つ」

 「一つはセカイの想いの持ち主だ」

 「一歌たちのことか」

 「もう一つはセカイの想いに強く共鳴することだ。」

 「共鳴?」

 「似たような想いを持っていれば入れる…最もセカイを認識するには相当想いが強くないといけないし、それだけ強いと自分のセカイを作っちまうことも多いからそんなに無いけどな。」

 

 

 そこまで喋るとハカイは一度しまっていたドライバーを再び取り出す。

 

 

 「で、お前らのパターンだ。お前らはまずこのドライバーに適合した。だが当たり前だがそれだけじゃ入れない。お前らが入れてるのは俺たちの状態が関係してくる。」

 「ヒント、俺たちの格好」

 「格好?」

 

 

 そう言われて2人の格好をもう一度よく見るが、とくに特筆することはない二人とも制服なことくらいだ。

 

 

 「駄目だ、分かんね。」

 「そのままだ。俺たちは制服になっている。」

 「え?」

 

 

 そんなことがこの話に何の関係があるのか。一同が首をかしげているもそのまま話をつづける。

 

 

 「俺には仲間の記憶がある。そこでは仲間たちは別の格好をしていた。だが恐らく失ってしまった記憶や存在を補完するために流れ着いたこのセカイの要素を取り込んだんだ。」

 「だから格好もセカイの影響受けて制服になったし、ドライバーもセカイの一部だから適合するとセカイに適合したことになって中に入れるんだ。」

 

 

 セカイたちの話を聞いて取り敢えず納得していると今度は志歩が話を切り出す。

 

 

 「それで、どうやったら帰れるの?」

 「スマホに入ってる『Untitled』って曲を止めたら出れるよ。でもその前に、私の話を聞いてほしいな。」

 「話?」

 「クールさを取り戻したか。」

 「黙ってて」

 

 

 茶化すセカイに釘を刺しながらミクは話を続ける。

 

 

 「一歌たちには本当の想いを見つけてほしいんだ。」

 「本当の想い?」

 「本当の想いをみんなが見つけたとき『Untitled』はみんなの音楽に変わるの。それが私たちの望み。」

 「何で私たちがそんなことを…」

 「もちろん強制じゃないけど…セカイを作るくらい強い想いを大事にしてほしいから…かな。」

 

 

 ミクの話に一歌たちはそれぞれの反応を示す。本当の想いを見つける、余りに概念的な話な気がするが心当たりがあるのか少し考え込んだり結局訳の分からない話にうんざりした表情を浮かべたりしている。それを眺めていたとき、優二の頭にとんでもない痛みが走る。

 

 

 「んっ…!?んぐあ…!?がぁぁ!!」

 「!?なんだ!どうした優二!!」

 「セカイ」

 「あぁ、どうやら出たらしい。」

 

 

 突然頭を押さえてうずくまった優二に対して新一が駆け寄る。激しい頭痛に耐えていると頭の中にイメージが浮かんでくる。

 

 

 『うぇーん!!ままー!!』

 

 

 町中で泣き叫ぶ幼い女の子、それに構う余裕もなく逃げ惑う人々。その騒ぎの中心には異形がいた。

 逆三角に顔に張り付いた大きな耳。口から飛び出してくるほどの犬歯。大きく広げた両手と体の間には膜のようなものが繋がっている。前のが蜘蛛男だとするなら蝙蝠男と呼ぶのがふさわしい怪物だった。

 

 

 「これ…は、」

 「セカイドライバーの副作用だ。怪人の出現を察知できるようになる。ある程度暴れてからにはなるがな…」

 「いか…ないと!」

 

 

 イメージが止まり痛みも治まってきた優二は立ち上がる。それに対しセカイは2つのスフィアを投げ渡す。片方は紫の色のみが違うが、もう一つはスフィアを中心にゴテゴテとしたパーツが付いていた。

 

 

 「これは…」

 「最近流れ着いた。紫のは変身に使え、もう一つは…わからん」

 「何で」

 「記憶喪失だから」

 

 

 無責任な発言に呆れながらゴテゴテスフィアをいじる。パーツは特定の方向に動き、輪っか状のパーツが2つ付いている。その輪っかを回転させると優二は一つの結論に行き着く。

 

 

 「なるほど、大体わかった」

 「え!?本当!?」

 

 

 後ろで疑問符を浮かべていた新一以外の面々が驚きの表情を浮かべる。そしてすぐに優二は現場に向かおうとするも…

 

 

 「って…どうやって出るんだっけ」

 「ハァ…」

 

 

 ため息を吐いたセカイが優二に触れる。すると優二が光に包まれその場から消える。

 

 

 「優二が…」

 「消えちゃった…」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 「ままー!どこー!」

 

 

 逃げる人並みにさらわれ親とはぐれた少女が泣いている。そのとき空を飛ぶ蝙蝠男、バットノーネイムが少女に目をつける。

 

 

 「ひっ!」

 

 

 赤く輝く両目に睨まれ少女が小さな悲鳴を上げる。泣き声が気に食わなかったのか、小さな少女を餌にしようというのが分からないが少女に良くない展開なのは確かだ。

 蝙蝠が少女に向かって急速に飛び込んだその時だった。

 

 

 「やめろ!」

 

 

 駆けつけた優二がゴテゴテスフィアのスイッチを押しバットに投げつける。スフィアは空中でそのサイズを大きくしながら飛んで行く。それをみた蝙蝠は身体をずらし避けようとするが、突き出すように出てきた輪っかに顎を打ち上げられ吹っ飛ぶ。

 

 

 「大丈夫!?あっちに逃げて!」

 

 

 少女に逃げる方向を促すと少女は一目散に逃げる。逃げた先に運よく母親がいたのか抱きしめ合うのを見ると優二は投げつけたスフィアを確認する。

 巨大化したスフィアは輪っか上の2つを地面に着け止まっていた。その姿をみた優二は自らの考えが正しかったことを確信し声を上げる。

 

 

 『オモイマッシグラー!』

 「やっぱりバイクだ〜!ライダーと言えばこれだよなぁ!」

 

 

 オートバイ型に変形したスフィアにまたがるとふっとばされた勢いのまま飛行に切り替え逃げ出したバットを見つける。

 

 

 「っと、俺無免許だし…バレないように変身しとくか」

 『セカイドライバー!』

 

 

 ベルトを取り付けるとスフィアを取り出し起動させるとベルトに取り付け変身ポーズをとる。

 

 

 『ライダー!』

 「変身!」

 『CHANGE THE RIDER!!』

 

 

 緑色の球状のエネルギーに包まれ体が強化スーツに包まれエネルギーが収縮しマスクが装着される。

 

 

 「よし!行くぜ!」

 

 

 バイクのアクセルを吹かせマシンが疾走する。

 

 

 「う、おぉぉぉぉぉ!」

 

 

 全身に超スピードを感じながら進んでいく。マスクをしていなかったら風圧でとんでもない顔になっているだろうなと考えながらバットとの距離を確認する。取り敢えずこちらの方が速度が上だが別の問題に気づく。

 

 

 「これ追いついたところで攻撃届かないぞ!」

 

 

 空中にいるバットを攻撃する手段がない。いくら追いついても下をうろちょろするだけでは何の意味もないことに焦るも息つく間もなく次の問題が現れる。

 バットが建物の上を飛び越えようししていた。このままいけば自分は建物に直撃するが迂回していれば最高速度で追いかけることが出来ずバットを見逃す可能性が高い。

 

 

 「舐めるな!」

 

 

 灰色の何も入っていないスフィア、ブランクスフィアを起動させ左腕の腕輪、ライドコンバーターに装填し回転させると全身に灰色のエネルギーが立ち込める。

 

 

 「うおりゃ!」

 

 

 強化された身体能力で地面を思いっきり蹴り車体ごとジャンプし建物の壁に着地し全力でアクセルを吹かす。

 

 

 「うぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 ライダーマシンの超馬力により壁を垂直に駆け上がっていき屋上に着地する。ひとまず危機を脱したことに安堵しながらそのまま建物の屋上を飛び越えつつ追いかけるも今のでまた一つの問題点が浮かぶ。空を飛ぶバットに追いつくために強化された身体能力でのジャンプを考えていたが恐らく足りない。バイクを捨てて自分だけ跳んでも届かないだろう。

 

 

 「他に何か方法は…まずいな」

 

 

 打開策を考えるとまたもや問題が増える。前方に見える建物があと数軒で途切れる。そうなればただでさえ手を焼くバットの高度に追いつくのは至難の技だ。何か方法はないかと思考を巡らせて思い出す。セカイにもらったものはもう一つ、紫のスフィアもあった。変身用とのことだが使えば能力も変わるはず。前回と同じく賭けになることに辟易としながらもスフィアを起動させると予想外の展開になる。

 

 

 『ガヴ!』

 「えっ、もしかして俺ってそのタイプのライダー!?」

 

 

 突然聞き覚えのある名前に驚くライダー。だがもしこのスフィアが思った通りの力を持つならこれは賭けではなくなる。なぜならその力のことを自分はよくしっているのだから。もう建物が途切れるのを確認しながらベルトのスフィアを素早く付け替える。そしてバイクをジャンプさせ建物から急降下を始める。

 

 

 『EAT グミ!EAT グミ!』

 

 

 グミを食えという傍から聞けば意味不明の音声を響かせながら右手を回転させ顔をひっかく動作をとる。

 

 

 「変身!」

 『CHANGE THE GAVV!!』

 『ポッピングミ!ジューシー!』

 

 

 軽快な音声とともに紫色の球状エネルギーに包まれる。内部ではグミを模したエネルギーが渦巻き身体にくっついていき、スーツが完全に変わったあと球状エネルギーがいつも通り収縮していき、頭頂部にU時の凹凸を描いたマスクになる。

 胸部のシックスパックが紫と黄色のポップなグミ型装甲に変わり全身の緑色のスーツが紫に変化した令和ライダー6人目の力を宿した姿、『ガヴセレクト』にフォームチェンジする。

 

 

 「行くぜ!」

 『パンチングミ!』

 

 右腕を大きく掲げると水色のグミが集まり、強大なグーを作り出す。それを思いっきり地面にたたきつける。

 

 

むにゅ〜

 

 

 気の抜けるような音声とともにグミが歪み、それがものすごい勢いで戻ると反動で空に大きくライダーとマシンが跳ね上がる。勢いのままバットと同じ高度まで来ると前方の目標に向かってマシンを足場にジャンプする。

 

 

 「落ちろぉ!!!」

 「ぐぎゃ!」

 

 こちらに気づいていないバットの後頭部を思いっきり殴りつけるとそのままバットは真っ逆さまに落ちていく。そしてライダー自身もその後を追うように落下し着地する。

 

 

 「んぐっ!」

 

 

 高所からの落下で地面にヒビが入り自分の足に相応の衝撃が走る。足が痺れる感覚を感じているとバットがよろよろと立ち上がる。それをみたライダーは姿勢を低くし左足を右足の後ろに伸ばすような独特の体勢になる。

 

 

 「せっかくだから聞いていてやる。どうする?二度と人を襲わないか…今ここで、俺に倒されるか!!」

 「舐めるな!貴様が仮面ライダーとか言うやつだな!ここで始末してやる!」

 「そっか、わかった!」

 

 

 お互いに啖呵を切るとバットが空を飛び超スピードで突っ込んで来るのを地面を転がりながらかわし、邪魔になったグーを解除する。

 

 

 「そらそら!捉えられるか!」

 「ちっ!調子に乗るなよ!ふっ!」

 

 

 高速で何度も往復し突進を繰り返してくるバットの攻撃をひたすらにかわす。何度か繰り返しながらスピードを見極め地面に寝転がるように回避すると同時にベルトから赤い光が飛び出しバットの羽根を貫く。

 

 

 「ガァァァァァ!!!」

 「よし!出せた!」

 

 

 羽根に穴を空けられ悶えるバットを余所にライダーはベルトから飛び出した物体、『ガヴブレイド』を取り出し構える。それをみたバットも穴のあいた羽根を広げながら突進してくる。

 

 

 「せいやっ!」

 「グギャア!」

 

 

 バットの振るった腕とガヴブレイドの刃がぶつかる。肉体の一部とは思えない強度の腕と刃のぶつかり合いで激しく火花が舞う。お互いの武器の強度は互角。だが、問題なのは振るっている人物だった。

 

 

 「グギャギャ!」

 「むぐぐっ」

 

 

 ライダーの刃が徐々に押し込まれる。意気揚々とフォームチェンジし、武器まで出したがそれほどスペックの向上が見込めない。むしろ、大剣を取り出してしまったことによる取り回しの悪さは大きなネックだ。 

 

 

 (正面からぶつかり合うのは不利だ!)

 

 

 そう判断したライダーは鍔迫り合いをしている刃を起点にバットの身体を飛び越えるよに一回転し背後に回る。曲芸のような動きに相手の反撃が遅れている隙を突き背中を切りつける。このまま一気呵成に攻めようとするが振り向いたバットが口を開くとそこから高周波の音波が発される。

 

 

 『〜〜〜〜〜!!!!』

 「がぁ!なんだコレ!」

 

 

 頭の中を不協和音が響き渡り割れてしまうのではないかと錯覚してしまう。ライダーが苦しみ動けない姿を見ながら徐々にバットが近づいてくる。その口は犬歯が徐々に伸びておりライダーに向かって突き立てるつもりなのが見て取れる。間違いなくピンチ。だがはっきりとした打開策がライダーにはあった。先ほどの攻防でわかったこと、予想外の一撃なら相手の反撃も遅れる。そのためにベルトのガヴスフィアのスイッチを押す。

 

 

 「グギャア!」

 

 

 ライダーの方にバットの牙が突き刺さり、鋭い痛みが走る。バットはこのまま自身の牙に秘められた特殊な毒を注入してやろうと思うが…毒が出ない。不審に思いさらに毒の勢いを強めようとするが変わらない…そこまで試して気づく、毒が出ないのではなく何かにせき止められている。

 

 

 「グギッ!?」

 

 

 その瞬間バットの鼻に今まで感じたことのない香りが広がる。今まで口にしたことのない味。少し粘り気がある余ったるい風味、その名は

 

 

 『キャラメルメル!』

 「甘いのは嫌いみたいだな。美味しいのに。」

 

 

 グニグニとしたキャラメルが装甲から滲み出しているのに阻まれ毒が出ない。さらに固まり始め牙を抜くこともできずこの体勢では超音波も相手の脳に当てることが出来ない。完全に詰んでいた。

 

 

 「それじゃあ終わりにするぜ!」

 『FINISH THE GAVV!!』

 『ポッピングミ フィニッシュ!』

 

 ベルトを操作し、必殺技を起動させる。エネルギーが刃に充填され切れ味が輝きとともに増していく。

 

 

 「ライダースラッシュ!」

 「グギャァァァァ!!」

 

 掛け声とともに刃を振り抜くとバットノーネイムの身体をたやすく両断する。大きな断末魔を上げながら爆散する炎にライダーが飲み込まれるも、煙が晴れるとライダーが咳き込みながら出てくる。

 

 

 「ごっほごほ!近すぎた…」

 

 

 今度から攻撃のときは距離にも気をつけよう。そう誓うと遠くからサイレンが聞こえてくる。

 

 

 「あとは警察の仕事…ってバイクどこやった!?」

 

 

ーーーーーーー

 

 

 「うぉ、本当に入れた。」

 

 

 しばらく探し回りようやくバイクを見つけ帰ってくる。まさか放置してるとスフィアに戻ると思わなかった。廊下を歩き教室に戻るも、中にはセカイの住人を除けば一歌、咲希、線記しかいなかった。

 

 

 「あ、お帰りゆーくん…怪我してない?」

 「おう大丈夫。ほかのみんなは?」

 

 

 優二が皆の居場所を聞くと口を重く閉ざす。優二が首をかしげていると線記が重々し口を開く。

 

 

 「なんか…みんな帰っちゃった」

 「…え?」




設定

 セカイドライバー
  優二が使うドライバー。地球儀を模している。使用者に怪人の感知能力を与える。使用者が本当の想いを見つけたとき、新たな武器を作り出す能力がある。


 仮面ライダービギンズ ガヴセレクト ポッピングミ
  優二がガヴスフィアを使用して変身した姿。仮面ライダーガヴポッピングミの姿を模しており、その能力も使える。ガヴブレイドやゴチゾウの力も引き出すことができる多様性に富んだフォームだがスペックは低い。

 
 バットノーネイム
  蝙蝠のような怪人。高速飛行や強靭な両腕が武器。牙には注入したものを操る毒がある。だが自身が空中で高速移動をする都合上団体行動に向かずライダーとの戦闘時点で配下がいなかった。ライダーの高い戦闘能力に目をつけ使おうとするもライダーの防御策により意図せず毒まで封じられ敗北してしまった。

 宮益坂学園の制服
  近所の別の高校がブレザータイプのためか学ランタイプ。色は女子と同じで学生帽も存在するが強制ではない。

 教室のセカイ
  一歌達の想いから生まれたセカイ。通常の学校を模しているが常に夜空。さらに一歌達にまつわるものが置いてある。

 セカイ(教室のセカイ)
  どこからか迷い込んだブレザー姿の男子生徒。ドライバーの機能に付いて詳しく優二に接触しライダーの力を与えた。自身に関する記憶はなく最初にあったミクが先輩として面倒を見ると意気込んでいるがこちらの方がしっかりしている。

 ハカイ(教室のセカイ)
  セカイと同じく迷い込んだ学ランを着崩した不良風の男子生徒。元いたセカイのほかの人物に関する記憶を持っており、セカイに名前を教えた。自分に関する情報は持ってないためほかの人物との関わった記憶での、推測である。
  他人をバカにした言動を取りがちでよくミクを煽るためそのたびにルカに怒られている。
次回予告

 「何があったんだ?」
 「私は、遊びのバンドならやるつもりないから」
 「ほんとにごめんね…」
 「俺とあいつはもう友達でも何でもない。」
 「かって〜…」
 「ば、バカな!仮面ライダーだと!?」

 『第三話 ハカイの鉄拳』

 「俺はお前たちの敵…仮面ライダーデュアル」
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