プロジェクトセカイ feat 仮面ライダー 作:ミッツー116
それと今回から次回の更新までの間にちょっとしたアンケートを取ろうと思うので答えてもらえると嬉しいです。
人々の憩いの場所、森林公園。木々の擦れ合う音がまるで妖精の囁きの様に聞こえ、何処からか小鳥のさえずる音が風に乗り届く穏やかな場所。
その中心で金属同士を激しく打ちつける音が響く。レイジとラヴァー、2人の戦士がそれぞれの武器をぶつけ合い激しい鍔迫り合いを繰り広げていた。
「ちょっと!話聞いてほしいんですけど!」
「お前の話なんか誰が聞くか!」
必死の抗議もむなしくブレイクアックスの刃がラヴァーの体を捉える。
地面を転がっていくラヴァーに追撃を仕掛けようと走り出すも制止し寝転んだ状態で放たれた矢により阻まれる。
「なんか人違いとかしてない!?襲われる覚えがない!」
「思い出させてやるよ!」
ラヴァーがどれだけ言葉を尽くそうと意味はない。スワンプからレイジに送られた標的は他者に化けられるという情報により見た目だけで判断することは出来なくなっている。
一方でライダーの姿はスフィアに依存することは分かっている。映像で見たライダーと今のラヴァーの体に走る黄色いライン。カイザスフィアの力を引き出した象徴たるそれはレイジに仇だと判断させる材料になってしまっていた。
「オラァ!」
「きゃあっ!!」
レイジの攻撃が再びラヴァーにヒットする。地面を転がっていくラヴァーに対してベルトのスフィアを外すとブレイクアックスに装填する。
「終わりにしてやる…!」
「あったま来た…!覚悟してよね!」
体に走る痛みを感じながらラヴァーもスフィアを武器に装填する。するとベルトからラインに沿ってエネルギーがヒットシューターに伝達していく。
照準を向けられるもレイジは怯むことなく斧を手に持って構える。
『ゴルドショット!!』
「フッ!」
ヒットシューターからΧの形をした矢が放たれる。レイジがそれを弾き落とそうとブレイクアックスを振るうも刃先に当たった途端レイジの全身が格子状のエネルギーで拘束される。
それをみたラヴァーが駆け出すと四角錐型のエネルギーに変わり直進してくる。
「な、める、なぁ〜〜〜!!!」
『バーサークスロー!!』
怒号と共にレイジが拘束を打ち破る。自らに向かって突撃してくるラヴァーに対してブレイクアックスの刃を叩きつける。
エネルギーをまとった刃とエネルギーそのものになったラヴァーがぶつかり合い激しい衝撃が周辺に走っていく。
「「うぉぉぉぉぉ!!!」」
互いに一歩も譲らず押し切ろうと力を込めていった時、拮抗したエネルギーが弾け2人とも正反対の方向に変身が解除されながら転がっていく。
その時、現場に新たなライダーが現れる。
「な、ど、どういう状況!?」
白い体に青色のラインが走ったライダー、ビートは地面に倒れる2人に驚く。
取り逃がしたイーグルを追って戦闘音のする方向に来たが何故満と知らない人が倒れているのか。ベルトをつけていることから仮面ライダーなことは分かるがそれ以外は見当もつかない。
「影!気をつけろ!そいつ前にお前を襲った奴だ!」
「え、いやそんな訳…」
「だーかーらー!違うって言ってんじゃん!」
満の言葉にますます困惑する。今自分は病院でその相手に襲われここに分断されたばかりなのにこの少女がその相手な訳がない。
頭の上にハテナマークを浮かばせていると満がブレイクアックスを呼び出す。
「ここで仕留めてやる…!」
「まだやる気なの!?」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
ひとまず変身を解除すると満を止めるために駆け出す。ここに4人のライダー達の物語が重なろうとしていた。
第六話 「救済者」
私は、いつからこうなったんだろう。普通に笑っていたはずなのにいつの間にか意識して出さなければ笑えなくなった。
何かに怒りを覚えることも無くなった。許してあげる良い子じゃなきゃいけないから。
涙を流すことも無くなった。周りに心配を書けるような悪い子にはなっちゃいけないから。
喜びを身体全体で表現するようなことはしてはいけない。もう高校生だ。大人として振る舞わないと。
将来の事も考えないといけない。何になりたいかをちゃんと考えてプランを考えないと。
「お母さん、私将来看護師になろうと思うの」
中学に上がる前に夕飯の席で両親に話した。将来設計は早いほうがいいから。
看護師は人の為になる仕事だし誰に話したって恥ずかしくない立派な職業だからきっと応援してもらえる。
「とっても素敵ね。でも、どうせならもっと上を目指してみたらどう?」
「え?」
私は勉強ができるから医者になるように勧められた。確かにどうせ医療の道に進むなら看護師よりも素晴らしい仕事なのかもしれない。
お父さんにも意見を聞いてみることにした。もしかしたら別の意見が聞けるかもしれないから。
「そうだな、まふゆならきっと何処でも行けるだろう」
お父さんもお母さんに賛成してくれた。私も2人の期待に応えることにした。
お母さんはいつも私の事を思ってくれている。お父さんも私の事を信じて応援してくれている。
私は医者になるための勉強を始めた。塾の時間を増やして、自習の時間を増やした。
お父さんがケーキを買ってきてくれた。時々お父さんはお土産として買ってきてくれる。フォークを持って、ケーキに刺して、口に入れた。
「……なんか、味しないな」
ーーーーーーーー
「先生、お疲れ様でした」
「お疲れ様、朝比奈さん。気を付けて帰るんだよ」
土曜日の昼、まふゆは塾から帰っていた。休日でも基本的には塾の予定があるし帰ってからも自習の予定だ。
頃合いを見て母親が休憩を促して来るのでオーバーワークの心配も無い。
河川敷を歩いていると人々の声が聞こえる。親子でキャッチボールしている人、設置されたバーベキュー場で遊ぶ同年代、コートでプレイしている草野球チーム。
家に帰るための最短の道なため通っているこの場所で休日はよく見る光景だ。
「おーい!聞こえますかー!」
「?」
喧騒の中に聞こえた叫び声に他とは違った雰囲気を感じ視線を移す。そこには河原に倒れている人に必死に声をかけ続ける男女がいた。
濡れていることから恐らくは川で流されているあの人物を助け出したのだろう。
しかし、まふゆの目が引きつけられたのはそこではなかった。倒れている人物、それはまふゆのよく知る幼なじみである全治郎だったのだ。
「っ!?全治郎…?」
「おわっ!お知り合いですか?」
「あれ…どこかで見たような…?」
思わず駆け寄り名前を読んだまふゆに男女が驚いていると全治郎の瞼がゆっくり開く。
するとそのまま上半身を起こし周囲を確認すると自分の両手を見つめる。
「…とことん死なないな、俺は」
「えっと…大丈夫ですか?」
「……」
心配そうに声をかける青年を無視して全治郎は立ち上がる。そっけない対応に少し戸惑いながらも青年も立ち上がると躊躇いながら口を開く。
「あの…聞きたいことがあるんですけど…」
「…後にしろ」
青年の問いかけを切り捨てる全治郎は鋭い目つきで自分が流れていた川を睨みつける。
戸惑いながら青年もそちらの方に視線を移すと川の中からボコボコと泥の泡が吹き上がり、中から大量のキャントネイムが湧き出てくる。
全治郎がドライバーを取り出し装着しようとしたその時、青年も懐からドライバーを取り出し叫ぶ。
「一歌!下がってろ!」
「わ、分かった!優二も気を付けてね!」
青年、優二は一歌に下がるように促すとスフィアを取り出し起動させドライバーに装填する。
右手を斜め上に突き出し、左腕を右の腰に添える。その後両手を大きく広げながら左腕だけを回転させ顔の右側まで持ってくると手首を返す。
「「変身/変身!!」」
『『CHANGE THE WORLD/BEGINS!!』』
「ん?」
球状のエネルギーに包まれながら突然聞こえた音声と立ち込める霧に違和感を覚える。
音の聞こえた音声に顔を向けると霧がはれ姿を変えたライダーが立っている。
ライダーがジャスティスブレードを構えるとビギンズの頭に唐突に痛みが走る。
「ッ!?あぁっ…!!?」
「…誰だ?」
頭の中に映像が走る。藍色の身体に 緑色のラインで書かれたシックスパックに両手に剣を持った仮面ライダー、見慣れぬはずの姿が頭に浮かんできたことに戸惑うも並んだ未知の戦士の声に我に帰る。
「あなたは…」
「来るぞ」
頭に走った映像のライダーを模したような装甲に以前戦ったスワンプに酷似した素体。
聞きたいことが幾つもでてくるがそんな暇は無くキャントネイム達が襲いかかってくる。
『ライド☓ガンソード!!』
「ハァッ!」
取り出した武器で2人は次々とキャントネイム達を斬り倒していく。
切られた個体が泥に変わり川に混じっていくのが少々汚らしいが我慢するしかない。
次の相手に向かおうとした時、ビギンズの足を何かが引っ張る。
「っ!?これは…!」
自分を引っ張った物の正体に目を見開く。川に混じった泥が腕の形に変わり足をつかんでいる。
ライド☓ガンソードを銃に変えると腕を撃ち抜く。弾丸が当たると再び泥に戻るがすぐにまた腕に戻り足を掴みなおす。
拘束を解こうと足に力を込め引っ張っているとその背中を別のキャントネイムが狙う。
それに気づいたライダーはジャスティスブレードの歯車を回転させる。
『スラッシュ!!』
「ふっ!」
振るった刃からエネルギーの斬撃が飛びキャントネイムを斬り裂く。斬られた傷口が光輝き爆発し消え去るのを見たビギンズはライダースフィアを取り出すとライド☓ガンソードに込める。
「ライダーシューティング!!」
『ライダー撃ち!!』
「あ、違った」
銃口からエネルギー弾が連続で発射され足元を爆発させ腕を地面ごと吹き飛ばす。
「ゲホッ!ゲホッ!やりすぎた…」
「……」
煙に咳き込むビギンズを余所にライダーは周囲を確かめる。今の攻撃で地面に溜まった泥も吹き飛びキャントネイムが出てくる気配は無い。
安全だと判断したのか変身を解くのを見てビギンズも続く。川に使った足に水を染み込ませながら2人とも河原に戻る。
「あの…聞きたいことが…」
「……」
「あ、何でもないです」
スワンプに似た姿に変身する全治郎に問いただしたい気持ちを押さえきれず口を開くも鋭い目つきに黙り込んでしまう。
口を押さえながら一歌のところに戻ると入れ替わるようにまふゆが近づく。
「全治郎、何があったの?川から流れてきたみたいだけど…」
「…お前には関係ない」
まふゆの言葉に冷たく返すと全治郎はそのまま歩き去っていく。その場に取り残されたまふゆの姿に優二が痛々しい物を感じていると一歌が耳打ちする。
「ねぇ、優二。あの女の人なんだけど…」
「…?知り合いか?」
「同じ学校の先輩じゃないかな。雫さんと一緒にいるところ見たことある気がする」
「雫さん…志歩のお姉ちゃんだっけ…って!」
一歌の言葉に視線をまふゆに戻す。しかし、先程まで立っていた場所には誰の姿もない。
急いで歩き去っていた全治郎の方に振り返るもそこにも既に人の気配は無くなっていた。
「いねぇ!」
ーーーーーーー
「ミク、来たよ」
「まふゆ」
2人が目を話している間にまふゆはセカイに来ていた。歌声を辿ってミクを見つけるとすぐに声をかける。
出迎えてくれたミクの隣に座ると少し抱きつくように膝に頭を預ける。
「まふゆ、何か嫌なことでもあった?」
「……よくわからない」
「…そっか」
ミクの問いかけに素っ気なく応える。冷たいようにも聞こえるそれに寂しさを感じる。
対応が冷たいことではなく、まふゆには本当に分からなくなってしまっているのを理解しているからだ。
自分の心のことなのにまふゆ自身にはもう自分が何を感じているのか判断することが出来ない。
「私、ずっとここにいていいかな」
「………」
まふゆの言葉に何も返すことは出来ない。ミクはまふゆの事が大好きだ、一緒にいられることはとても幸せなことだと思う。
だがそれが本当にまふゆにとって良いことなのか分からない。ここはまふゆの想いで出来たセカイ、まふゆの為の居場所ではある。
しかし、外から逃げてここで緩やかに死を待つだけな人生を歩んでほしくない。
(誰か…お願い、まふゆを救ってあげて)
ーーーーーーーー
怪人のセカイ、光に包まれてそこに現れた紫苑は自分以外のメンバーが居ないか探していた。
特に用があるわけでもないがノーネイムの出現の気配もなくやる事がなくて暇なのだ。
いつも同じところにいる怜を発見すると話しかける。
「やぁ、何してるの?」
「作業中だ、話しかけるな」
パソコン上に表情されたデータとにらめっこ状態の怜は画面から目を離すことなく突き返す。
「夜ちゃん以外と全然話さないよね君〜」
「バカとはな」
「ふ~ん、おや?」
その夜も今は居ないらしい。最近は自分以外のメンバーがそれぞれで行動しているためセカイに来ても相手をしてもらえない。
不満に頬を膨らませていると新たに光が現れスワンプが現れる。
「お帰り〜、作戦は上手くいったかな?」
「姿があのままな時点でいっていないだろう」
怜の言葉にスワンプは顔を歪める。彼の言う通り自分の姿が戻らないのは川に突き落とした全治郎がまだ生きている証拠だ。
念を入れて戦闘員に追わせたのに返り討ちにされたのだろう。とことん痛めつけた上で川に落としたのにしぶとい。
「少し休んだらまたすぐに出る。奴のダメージが消えないうちにな…」
「ま、せいぜい成功を祈ってるよ」
「失敗した方が喜びそうな奴もいるがな」
ーーーーーーーーー
「ハァ……ハァ……早く…見つけないと…」
息を切らしながら奏はひたすら道を進む。スワンプに全治郎がやられイーグルに影が連れ去られてしまった。
特に全治郎は早く引き上げなければ命が危ない。スワンプが消えるとともに走り出したがすぐに体力が尽きてしまい今は歩くのすらやっとだ。
まだ頭上に輝く太陽から発される激しい日差しに身体を焼かれながら進むも段々と目の前が点滅し始める。
「だ、駄目…意識が…」
「え…!け、K!?」
奏の身体が傾き地面に倒れようとした時、どこかで聴いたような声の主がその身体を支える。
体重を預けながら顔を上げるとそこには心配そうな表情を浮かべた絵名と瑞希が立っていた。
「だ、大丈夫?すごくしんどそうだけど…」
「ふ、2人とも…ひ、日向さん達が…」
「ちょ、落ち着いて。一旦どっか座ろう?」
道沿いに設置されたベンチに一度奏を座らせると自販機で買った飲み物を飲ませる。
息を整えると何があったかの事情を説明してもらう。
「2人が怪人に…!?」
「は、早く助けに行かないと!全治郎とかヤバそうじゃん!」
「俺がどうかしたか」
「「「うわぁ!!?」」」
奏の話に焦りを露わにした2人が駆け出そうとした時後ろから全治郎が現れ思わず叫ぶ。
身体から水滴をポタポタと落としながら能面のような無表情を浮かべる姿に三人は身体をじっと観察する。
「か、身体ビショビショだね…ホントに川落ちたんだ…」
「ど、何処かで拭かないと…風邪引くかもだし…」
「大丈夫だ、ここ数年病気はしてない」
「頑丈な身体してるわね…じゃないわよ!影の方も助けに行かなきゃ!」
ひとまず全治郎が無事な事を確かめると絵名は影の方を探しに行くことを提案する。
しかし全治郎は服の裾を絞りながらベンチに座る。
「ちょ、ちょっと…」
「恐らく大丈夫だ。ここに来る途中あいつが連れ去られた方向を通ったが…戦闘の後があった。それで近くの奴に話を聞いてみたら…」
公園内に停められていたキッチンカーのスタッフが何があったのか全て見ていた。逃げ遅れて車内に隠れていたらしい。
店主の話では空から落ちてきた怪人を女の子が変身したヒーローが倒した後似たような奴と戦闘になりその後更に現れた別の男と消えていったそうだ。
「それが日向さんとは限らないんじゃ…」
「髪が白と黒で段々になってるって言ってたぞ。そんなやつそうそういないだろ。もう一人の男は髪を後ろに縛ってたらしい」
「Cillだね」
印象的な見た目をしてくれて非常に助かる。奏たちはひとまず無事が確認できた事に安堵して胸を撫で下ろす。
「そういえば…2人は何をしてたの?」
「いや〜、家でじっとしてると雪のこと考えちゃって落ち着かなくてさ〜」
「私は別にどうでもいいけどね」
そう言ってそっぽを向く絵名だがこうして自分も外に出ている時点で瑞希と同じなのだろう。
その様子を見た奏はしばらく何かを考えるように俯くと口を開く。
「私、もう一度雪に会おうと思う」
「え…」
「やっぱり、気になるよね」
「ちょ、ちょっと!」
奏の発言に絵名は思わず呆気に取られ同意する瑞希に更に驚く。
「2人とも本気!?あんな事まで言われて…まだ雪に戻ってきて欲しいの!?」
「絵名だって、本当は思うところあるんでしょ?僕も同じだよ、言いたいことも聞きたいことも沢山ある」
「そりゃ、私だってあるけど…」
瑞希の言葉に絵名は言葉を詰まらせる。胸の中に渦巻く幾つもの複雑な感情を処理することが出来ない。
悩んでいる間に奏が更に口を開く。
「この前、セカイから追い出される前にミクに言われたんだ」
そう言って思い出すのはOWNのことをまふゆに確認しに行った時のこと。まふゆに強引に会話を切り上げられミクが自分達を追い出す為に身体に触れる直前に言われた言葉。
『お願い、まふゆを救って』
「救ってって…どういうこと?」
「分からない。でも、あそこにあるものが全部雪の想いから出来てるんなら…あれもきっと雪の本心なんだと思う」
消えたいという想いから生まれたとまふゆは言っていた。しかしそこにいるミクはそんなまふゆを救ってほしいと願う。
この矛盾が何を意味しているのかは分からない。しかしまふゆは初めて自分の音楽を聞いた時、救われた気がしたと言ってくれた。
もしかしたらずっと誰かに救いを求めているのではないのか、そんな考えが頭から離れない。
「だから、もう一度行きたい。私の曲で雪を救えるか分からないけど…私には音楽しかないから」
「……!!」
奏の言葉に絵名は電流が走ったような感覚を覚える。絵名は迷うような仕草を見せると苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた後にため息を吐く。
「はぁ…分かった!分かったわよ!私も行く!」
「よーし、それじゃあ家に帰って荷物置いたらナイトコード集合ね!あ、全治郎は…」
話がまとまりかけていたところで気づく。奏と同じベンチに座っていたはずの彼の姿がいつの間にかなくなっていることに。
ベンチには水滴だけが残されており何処かに去っていったような後もない。
「いない…何処行っちゃったんだろ」
「別にいいでしょ、それより早く家戻ろ」
「うん、行こう」
ーーーーーーーーーーー
誰もいないセカイ、そこに光と共に全治郎が現れる。彼はまだ滴る水の後を残しながら一人セカイの中を進んでいく。
地面に落ちる水滴の量が減り、髪から垂れ下がる雫が乾いて消え始めたところでミクの膝で休むまふゆを見つける。
まふゆは気配に気づくと目を開き、全治郎の姿を確認すると身体を起こして不愉快そうな視線を向ける。
「何しに来たの」
「…ここ、お前の想いで出来てるんだってな」
口を開くもまふゆの問いには応えない全治郎は周りを見渡す。その後視線を戻すとまふゆの方を見つめながら喋る。
「……何もないんだな」
「…そうだよ、何も必要ないから何もない。ここには私を受け入れてくれるミクが居て、私はここにずっと居て…そのまま消えるの」
「……そうか」
「わかったらさっさと帰って、私達には何の関係もない。全治郎も言ってたでしょ」
まふゆの言葉に反応を示すことなく全治郎は近くの鉄骨に背中を預けると地面に座り込む。
抗議しようとまふゆが立ち上がりるとそれより早く再び口を開き始める。
「夢を見たんだ、川に流されてる間に」
「…夢?」
「小さい頃の夢。まだ父さんも母さんも生きていたころの夢だ。」
ポツポツとこぼすように言葉を発する全治郎の言葉に、まふゆは黙って耳を傾け始める。
「学校の宿題で…名前の意味を親に聞いてくるっていうのがあったんだ。確かに俺の学校にもあった、聞いたんだ俺は」
両親は優しく教えてくれた。電球の明かりに照らされたリビングで母がテーブルに持ってきてくれたジュースを飲んで父の膝に座りながら、テレビの前で語ってくれた。
その光景を夢に見た。
「なのに思い出せない。確かに聞いたはずなのに。父さん達が残してくれた物があったはずなのに、俺は忘れたんだ」
「……」
「何もない…俺には何もない。昔は確かに持ってたはずなのに、いつの間にか全部無くなった」
最初から何も持っていなければ楽だったのかもしれない。しかし確かにあった物が奪い取られ、そこに空いてしまった穴をどうやって埋めればいいのだろうか。
結局代わりは見つからなかった。なら、他のものも全て捨ててしまうしかない。そうすれば穴など気にならない。
すっかり力を失った様子で俯きながら全治郎はまふゆに問いかける。
「まふゆ…俺、ここに居ていいか」
「……!」
「もう疲れた…唐突に死にたくなって行動に移しても上手くいかない。普通に生きていても何時来るか分からない感情に振り回されるだけだ」
今まで何度死のうとしたか分からない。だがことごとく失敗して来た。
この身にナイフを突き立てた事もあった。しかし自分の身体はそれでも死ななかった。
餓死しようと飲食をしばらく断ってみたこともある。しかしその内周りに不審に思われて強引に阻止される。
その点ここはどうだろうか。いるのはまふゆだけ。誰にも邪魔されることなく緩やかに死ねるだろう。
何よりここには不思議な魅力がある。
「ここは落ち着く…穏やかな気持ちで死ねそうだ」
「……全治郎」
話し終えた全治郎に向かってまふゆは近づくと隣に座る。しかし顔を合わせることはなく、そのまま体重を鉄骨に預ける。
「いいよ、ここは…そのための場所だから」
「…ありがとう」
その言葉を最後に全治郎は目を閉じる。流石にまだこれで人生を終えることは出来ないだろう。
しかし、久しぶりに穏やかな気持ちで眠りにつくことが出来そうだ。すぐに寝息を立て始めた全治郎に対して黙って座り続けるまふゆ。
そんな2人の様子を見つめるミクは複雑そうな表情を浮かべるも何かに気づくとまふゆに声をかける。
「まふゆ、あの子達が来てくれたよ」
「え…?」
ーーーーーーーーー
『みんな準備出来た?』
『こっちは大丈夫』
『よし、行こう』
短いやりとりを終わらせ『untitled』を再生させる。パソコンの画面から光が放たれそれぞれを包み込むと三人はセカイに入る。
「っと…そっか、まずは2人を探さないといけないんだ」
それぞれの部屋から入ると出る場所が別々になるのを忘れていた。これなら家に戻らなければ良かったかと後悔するも既に遅い。
ここで文句を言っていても仕方がないのでとりあえず早く見つけようと奏は歩き出す。
「だ・か・ら!言ったよね〜!?私じゃないって〜!」
「いや、本当…すいませんした」
「ん?」
突然聞こえてきた大声に思わず立ち止まり顔を向ける。すると満が見たことがない女の子に怒られながら正座しているのを影が眺めている現場に遭遇する。
理解が追いつかない現場にハテナマークを浮かべていると奏の存在に気づいた影が振り向く。
「宵崎さん!無事だったんですね!」
「は、はい…えっと、これどういう状況ですか?」
「まぁ…色々ありました」
気まずそうに顔を背ける影に首を傾げる。とはいえここで会えたのはラッキーだ。
「ーーという訳で、絵名と瑞希を探してて」
「なるほど、そういうことなら手伝いますよ。よーし…早速」
「その必要はないぞ」
奏から事情を聞いた影は両手を耳にあて周囲の音を聞こうとする。自分の聴力なら2人が歩いている音を探し出すことも可能だ。
しかし、それより早く声をかけられ振り返るとセカイが絵名達を連れて現れる。
「全員集合だな」
「影…向こうに満もいるし、みんな来てたんだ」
「あれ、あの子…確か前にも…」
以前に弓を見たことがある瑞希が反応を示す中、奏はセカイの言葉に首を傾げる。
「全員って…もしかして」
「あぁ、まふゆ達も来てる」
「ベストタイミングだよね!早く向かお…」
「…その必要は無さそうです」
その言葉に瑞希は影の視線が自身の後ろに向いていることに気付き振り返る。
そこにはミクを連れたまふゆが立っておりその表情は不機嫌そうだ。何度も来る自分達にいい加減に飽き飽きとしているのだろう。
「何しに来たの」
「…まふゆ」
冷たい目をしているまふゆの前で奏は思わず息を呑む。不安から心臓の鼓動が速くなるのを感じる。
自分の言葉が果たして届いてくれるのか、しかしどうしても伝えなければいけない。
そんな想いから胸の中でつかえようとする言葉をなんとか絞り出す。
「もう一度、私の歌を聞いてほしいんだ。今度こそ救ってみせるから」
「…なにそれ、そんな事を言うためにわざわざ来たの?」
「っ、あんたねぇ…」
奏の言葉に対するまふゆの態度に絵名が思わず詰めようとするとその肩を影が掴んで止める。
その視線の先にはまふゆの冷たく染まった瞳を真っすぐに見つめている奏の姿。
確かな覚悟を決めたその表情に絵名も沸き上がる怒りを抑える。
「前に言ったよね、私が消えたがってるって。それ、あってるんだ」
「……」
「作曲家だったお父さんを知らない間に私の曲で追い詰めて病気にさせた。私が誰かを救える曲を作り続けるのはその償い。お父さんを傷つけた分だけ他の誰かを救える曲を作らないといけないから」
奏の口から放たれた真実に絵名と瑞希は思わず唖然とする。ここまで蚊帳の外だった満すら口を大きく開けて驚く中まふゆは口の端をわずかに歪める。
「そっか…Kはお父さんに呪われてるんだね」
「……!」
「知らないうちに勝手に傷ついた父親の言葉に縛られて…可哀想」
まふゆは嘲笑うように言葉を吐く。その姿にこれまで静観を貫いていた満は動き出すと口を開こうとする。
「おい…!いくら何でも言い過ぎ…」
「あんた何様のつもりよ!!」
「……!?」
しかしその言葉はより大きな声を張り上げた絵名により阻まれる。突然の叫び声に驚く満を気にもとめずまふゆを鋭くにらみつけるとそのまま続ける。
「ウジウジぐちぐち文句ばっかり言って!消えたいって何よ!あんたは……私が欲しいもの全部持ってるくせに!!」
「…何言ってるの、私は何も持ってなんか」
「持ってるわよ!羨ましいくらいに何もかも!」
言葉を荒げる絵名の瞳は徐々に潤んでいき、涙を貯め始める。嫉妬と悔しさをにじませた姿は痛々しくすらある。
「あんなにすごい曲を作れて…すごい動画に出来て…絵だって…そうやって作るものを誰かが待ってくれて、これ以上ないくらいのもの持ってるじゃない!」
「……そんなもの、私は欲しくなんかない。持ってるとしても何の意味もない」
「分かってるわよそんな事!!」
まふゆは自分とは違う。きっと誰かに認めてもらいたいなど思ったこともないのだろう。
だが自分が言いたいのはそんなことではない。奏のようにまふゆを救いたいのではない。
ただ、この怒りをぶつけながら気が済まない。
「ムカつくのよあんた…!才能あるくせに消えたいとかふざけた事言って…こっちの気持ちとか全部無視して…それに…何より、あんたが消えたらこの曲が聞けなくなるのが嫌な気分になるのが無茶苦茶ムカつくの!」
「…何言ってるの」
「だから!」
言っている意味が分からない様子のまふゆにますます怒りを浮かべながら絵名は叫ぶ。
「あんたの曲が好きだから消えんなって言ってんの!才能あるんだから…才能ない人の分まで苦しんで頑張ってよ!」
「…無茶苦茶」
「俺もそう思う…」
余りの暴論に満の先程までの怒りも思わず引っ込んでしまう。言いたいことを全て言い終えたのか途中からポロポロと零れていた涙を拭う。
その様子を見ていた瑞希は存在をアピールするように軽く咳払いをすると口を開く。
「さて、今度は僕の番でいいかな?」
「…あなたも何か言いたいことあるの」
「……正直、僕にはまふゆの放っといて欲しいって気持ちもわかるよ」
感情をぶつけるようにむき出しにしていた絵名とは対象的に瑞希は穏やかな笑みを浮かべながら喋る。
まふゆを気遣っているのか、それとも内心の不安を押し殺しているのか。実際どうなのかを周りの人間に推し量ることは出来ない。
「絵名が言ったみたいな才能があったとしても、誰かに望まれてたとしても、結局は自分の苦しみは自分にしか分からないから。まふゆが本当に苦しくて消えたいなら僕らに止める資格は無いと思う」
「…だったら放っておいて。私はもうあなた達と話したいことなんてないの」
「うん、分かるよ。僕も何度も同じような事を思ったから」
「瑞希…?」
何処か普段とは違った様子に奏達は違和感を感じる。しかし瑞希はそれを気にすることなく話を続ける。
「自分の事を周りは理解なんかしてくれなくて、勝手に型にはめようとしてきてさ。そんな事するくらいなら放っておいてくれた方が良いって思うこと、あると思うから」
「……それなら」
「でも、だからこそね」
瑞希はまふゆに笑顔を向ける。これから言う自分の本音をまふゆがどう受け止めるかは分からないが、本音で向き合いたいなら本音をぶつけるしかないのだと分かってはいた。
例えそれがどんなに恐ろしいことだとしても。
「似てるって思うから、一緒に入れなくなるのは寂しいんだ。まふゆとも、もちろんニーゴのみんなともさ。あと、今いないけど全治郎とかもね」
「……なんなの一体」
三人それぞれの話を聞いたまふゆの声色に苛立ちが目立ち始める。顔をしかめながらこちらを睨みつけるような表情を浮かべている様子は明らかに不機嫌だ。
「勝手に嫉妬して共感して…救いたい?私は消えたいの」
「…まふゆ」
「結局あなたは自分を救いたいだけ。父親への償いに私を巻き込まないで」
どれだけの言葉も自分には届かないとでも言うようにまふゆはこちらを拒絶する。
冷たい指摘を受けた事を心配する満や絵名の視線に反し奏は優しく微笑む。
「…うん、そうだよ。これは私のエゴ。私がまふゆを…雪を救いたいからっていう勝手な話。だから…なんと言われてもやめる気は無いよ」
「…っ」
決して折れる様子の無い奏の様子にまふゆは一瞬身を震わせると下を向きミクが不安そうな表情で見つめる。
奏はそれ以上何も話さない。伝えるべき事は全て伝えた、後はまふゆがどう答えるかだ。
「もう嫌なの…」
「……!」
まふゆはゆっくりと顔を上げる。その顔に僅かな涙を浮かながらここまでの静かな言葉とは正反対の様子でつんざくように声を張り上げる。
「もう疲れたの!!まだ希望があるかもって…救われるかもしれないって期待するのに!!」
「まふゆ…」
「期待して…裏切られて…また探して…ずっとそれを繰り返して…いつか絶望するのを待つだけ。それなら、もうここで消えて楽になりたいの!!」
隠してきた感情を表に出して叫ぶ。慣れていないのか震える声と喉の痛みに歪んだ顔が痛々しく思わず目を逸らしたくなる。
それでも真っすぐ見つめる奏にまふゆはぶつけるように言葉を放っていく。
「ほっといてよ!!こんなの…どうしようもないんだから…!私には、もう消えるしか方法なんて…」
「私が救う」
「え……?」
遮るように放たれた奏の言葉にまふゆは思わず聞き返す。ここに来た時から一度も変わることのない覚悟の意思を込めた目をしっかりと向けながら言葉を紡いでいく。
「まふゆがちゃんと救われる曲を私が何年、何十年かかったてって作る。だから、ただ待ってくれたらいい。私は絶対諦めないから」
「そんなの…いつまでかかるか分からない。そもそも出来る保証もない」
「絶対に作る。私があなたを救ってみせる。まふゆがまだ救われてないって言うならいつまでだって作り続ける」
何度も繰り返し決意を口にする奏の目は力強い。その目に見つめられたまふゆは弱々しくなった声を震わせる。
「そんなの…もう一つ呪いを増やすようなものじゃない…それなのに…」
「私はどの道音楽をやめるつもりはないから。どんなに消えたくても。だから、まふゆの分が増えても大丈夫だよ」
「はは…なにそれ…必死になって馬鹿みたい…」
力無く笑うまふゆは再び奏に厳しい言葉を吐く。しかし今度は誰もそれに対して怒りを覚えるような事は無かった。
静かに伏せられた顔から僅かにこぼれそうになった物に気づいていたからだ。
両手で顔を覆うとすぐに顔を上げる。無表情に戻ったその姿には微かに先程まで感じられなかった何かを感じられる。
「……それじゃあ、もう少しだけ…待ってみようかな…」
「…!それじゃあ…」
「ふん!調子のいいやつ!」
「も〜嬉しいくせに〜」
まふゆの言葉に奏は安堵したような表情を浮かべ絵名が鼻を鳴らし瑞希が面白がって笑う。
ひとまず解決の兆候を見せる4人の姿に満と影も嬉しそうに顔を見合わせる中、弓は両手を開きながら首を傾げる。
「それで……何の話?」
「…あなた誰?」
「そういえばずっと放置してた…」
「ここまで黙ってて偉い」
一人だけ自己紹介すら済ませていない。それどころでは無かったとはいえここまで誰も突っ込まなかった。
苦笑いを浮かべた影が代わりに紹介しようとした時、セカイが頭を押さえる。
「っ!出てきたか…」
「?どうした、大丈夫か」
「お前のお目当ての奴が出てきたぞ」
そう言うとセカイは空に手を掲げる。すると外の景色が浮かび上がり一行の視線はそこに向けられる。
「これは…!」
ーーーーーーーーー
東京でも特に人が集まる場所、渋谷。そのなかでも特に行き来の激しいスクランブル交差点はいつも以上の騒ぎを見せていた。
しかし、その原因は通勤時の混雑や芸能人のイベントなどではない。突然現れた大量の泥で形づくられた異形、そしてそれを従える一人の謎の戦士による襲撃のためだ。
「うわぁぁ!」
「助けてくれぇぇ!」
「ママーー!!」
逃げ惑う人々の背中を刃物が切り裂き、群がる異形が押しつぶす。阿鼻叫喚の地獄絵図と化した中心で謎の戦士、仮面ライダースワンプは現れないターゲットに苛つく。
「早く来い…!次こそ始末する…!」
ーーーーーーーー
「野郎…!何してやがる!」
「奴も怪人だからな。暴れれば俺や全治郎の探知に引っかかる。俺たちを呼び寄せてるんだろう」
「じゃあ早く行かないと!」
「ふむ…」
影の言葉にセカイは顎に手を当て考えるとその身体に触れる。意図の分からない行動に戸惑っていると舌打ちを吐く。
「やっぱ無理か、あいつしか入れない」
「だったら探して来い。俺らは先に行く」
「朝比奈が知ってるんだったな、案内してくれ」
「……分かった」
セカイを置いて満達は光に包まれ消える。歩き出したまふゆの後に残りのメンバーが着いていくとしばらく行った先に鉄骨に身を預けて寝る全治郎の元に辿り着く。
声をかけようとするもそれよりも早くこちらの気配に気付いたのか目を開くと顔だけを向けてくる。
「……何の用だ」
「お前のそっくりさんがまた出た。お前も気づいてるだろ」
「今みんな…って名前知ってるほどの知り合いはいないか…」
「…日向さんが戦ってる。手伝ってあげて欲しい」
奏の言葉に全治郎は懐からドライバーを取り出す。しかしそれを力無く見つめると地面に向けて放り捨て立てた膝に顔を埋める。
「ちょ、ちょっと!何してんのよ!」
「俺が行ったところで無駄だ。どうせ奴には勝てない」
「……」
戸惑う瑞希と絵名に対して奏は歯痒い感情を抱く。以前のスワンプの言葉が全治郎の心に深く傷をつけてしまったのは間違いない。
いや、元々付いていた傷を自覚してしまったと言うべきか。まふゆの時と違いかける言葉を見つけることも出来ない。
何もできず立ち尽くしているとセカイが光に変わり全治郎の中に入る。
「あ」
「時間がない、こいつが行かないなら俺がこの身体を使うまでだ」
「そんな勝手に…」
流石に止めようかとする絵名を無視して携帯を取り出すと音楽アプリを起動させる。
そのまま消えるかと思われたが一度動きをとめると顔をまふゆに向ける。
「心配なら勝つよう祈ってろ。まぁ…一応負けてもこいつが無事で済むようには努力するつもりだが」
「努力…?」
「一種の賭けだがな…」
ーーーーーーーーーー
逃げ惑う人々をキャントネイム達が追いかける。地面に尻もちを突きながら後ずさるように逃げるサラリーマンは足を怪我しており立ち上がれなくなっていた。
一刻も早くこの場から逃げ出したいのに叶わない、それどころか目の前に現れたキャントネイムがナイフを振りかざす。
「うわぁぁぁぁ!!」
「オラァ!」
今にもその身にナイフが突き立てられようとした時、横から伸びてきた満の足がキャントネイムを蹴り飛ばす。
突然の救いに男が呆気にとられると鋭い目つきで睨みつけ喝を飛ばす。
「いい年しといてそんな怪我で泣いてんじゃねぇ!走れ!!」
「は、はいぃぃぃぃ!!」
満の叫びに再び悲鳴を上げると男は痛む足を無理やり動かし走り去っていく。
そんな満の存在に気づいたスワンプはわざとらしく手を広げると声をかける。
「やぁレイジ〜!あいつをおびき寄せるのを手伝ってくれるかい?」
「ふざけんな!よくも騙しやがったな!!」
既に取り繕う様子もないスワンプに怒りを露わにする。一方あちらも満が既に自分が騙していたことに気づいていることを察した様子で続ける。
「知らない?騙される方が悪いんだよ」
「そんなわけないですけどね。まぁ、貴方くらいクズの方がこっちも気楽ですけど」
悪びれた様子の無いスワンプを非難しながら影が満の隣に並ぶ。その姿を見ると少し驚いた様子を見せる。
「イーグル君は失敗しちゃったみたいだね。それじゃあ敵討ちといこうか?」
「敵討ちはこっちのセリフです。満さんと…常世さんの分もね!」
続々と集まる役者にスワンプは仮面の中で笑みを浮かべる。本命が到着していないとはいえ前哨戦には丁度いい。
ここらで過去の取りこぼしを全て清算してしまおうと思っている中、新たな人影が走ってくる。
「私も混ぜてもらうから!貴方のせいで言いがかりつけられたし!」
「……誰?」
「まただよ!」
現れた弓にスワンプが首を傾げると大きく肩を落とす。自分だけずっと仲間はずれの気分だ。
実際ここまで話に関わっていないから仕方のないことなのだが。
「行くぞ!」
「はい!」「え、あ!うん!」
満の声と共に三人同時にドライバーを装着しスフィアを装填する。周囲から霧が現れ始めるなか前面を引っかき、指を折り曲げ挑発し、狙いを定めると叫ぶ。
「「「変身!!」」」
霧の中に髑髏が現れ、影が広がり、飛び出した矢が身体を貫く。霧が一斉に晴れると現れた三人の戦士は武器をそれぞれのベルトから取り外すと一斉に構える。
『LETS ACTIVE AVENGE!!』『ブレイクアックス!!』
『MY LOCK SICK!!』『ヒットシューター!!』
『START ABILITY SHADOW!!』『ツインエッジ!!』
「覚悟しろよ!」
一番に飛び出すのはレイジ、手から血が噴き出すのではないかと思うほどの力で握りしめたブレイクアックスを振り上げながらスワンプに向かう。
「うおらぁ!」
スワンプの頭を砕かんとブレイクアックスを振り下ろすも少し顔を傾けるだけで回避される。
すぐさま反撃の一閃が振るわれ、さらに返す刃でもう一度きり裂かれる。
たった2度の衝撃で身体に走る強烈な痛みに思わず身体が硬直するレイジを横目にスワンプは剣を持たない左手を素早く顔の横に上げると何かを掴み取る。
援護の為に放たれたラヴァーの矢、レイジとの攻防の途中でありながらそれに気付いていたスワンプの手の中で矢は光となって消えていく。
「うそぉ!?」
「くっ!」
まさかあんな方法で防がれると思わずラヴァーが声を上げるとビートはレイジを助けるためにスワンプとの間に割り込む。
ツインエッジを振るうも受け止められ鍔迫り合いになる。パワー対決は不利と判断すると分割し双剣に切り替え、素早く突きを繰り出す。
一瞬の思考で繰り出された鋭い一撃、しかしスワンプは後ろに大きく跳ぶことで回避する。
「同時に攻めるぞ!」
「はい!」
最低限の言葉を躱すとレイジとビートは並んで走り出す。それに対してスワンプはその場でジャスティスブレードを構え迎え撃つ体勢をとる。
再び一番に切り込むレイジの一撃を回避すると腹を斬りつける。攻撃の合間を縫うようにビートが刃を振るってくるも腕を掴むことで受け止めるとそのまま身体を持ち上げレイジに向かってぶつける。
「ぐおっ!?」
「がっ!」
「2人とも!」
ぶつかりあった2人が地面にめり込む。それ以上の追撃を避けるためにラヴァーがヒットシューターを構えるとスワンプがジャスティスブレードを投げつける。
「っ!?危なっ!」
投げつけられたヒットシューターを転がるように回避するも一瞬スワンプから目を離してしまう。
すぐに起き上がり構えるも倒れた2人のそばに既にその姿は無い。周囲を見回すラヴァーに対し、上空から落ちてきたスワンプの拳がめり込む。
「うっ!?」
重力の後押しを受けて重みを増した拳にラヴァーが吹き飛ぶ地面をゴロゴロと転がっていく中、ビートとレイジが武器にエネルギーをチャージしているのをその目に捉え自らもヒットシューターのツマミを回す。
『スロー!!』
『タクティクス!!』
『ショット!!』
三人の武器から同時に攻撃が放たれる。それに対しスワンプもジャスティスブレードの歯車を回転させるとその場で一回転しながら斬撃を振るう。
軌跡をなぞるように走る光がつながるとスワンプを守るように円形の刃となり三人の攻撃を吹き飛ばし、そのまま広がるとレイジ達の身体を切り裂き爆発する。
『スラッシュ!!』
「「「ぐわぁぁぁあ!!」」」
「っ!思ったより不味い状況だな…!」
悲痛な声を上げながら地面に三人が倒れ込むとセカイが取り憑いた全治郎と奏達が現れる。
懐からセカイドライバーを取り出し装着する彼の存在に気づくとスワンプは顔を向ける。
「お前は…あいつじゃないな」
「御名答、景品に相手してやるよ!」
『セカイ!!』
左手でドライバーをなぞりながら斜め前に突きだした手を横にスライドさせていくと勢い良く手首を返し力の限り叫ぶ。
「変身!!」
『CHANGE THE WORLD!!』
霧に包まれた全治郎の身体がギチギチと音を立てながら変化していく。霧が晴れ仮面ライダーに変身を完了すると両手に武器を構える。
「短期決戦で行かせてもらう!」
『ジャスティスブレード!!』『アルテマウェポン!!』
構えた武器に炎まで纏わせるライダーにスワンプは内心で笑みを浮かべる。
彼からすれば心にある焦りが形になったようにしか見えない。満足に戦えない理由があることが分かっているスワンプはディケイドスフィアを起動させる。
「変身」
『CHANGE THE DECADE!!』
泥から板のような物が飛び出しスワンプの顔に突き刺さるとその姿をディケイドセレクトへと変化させる。
左手にカードケースを模した新たな武器、ライドブッカーをソードモードで呼び出し順手で構える。
「野郎…無視してんじゃねぇ!」
姿を変えたスワンプに対しダメージから地面に倒れていたレイジが起き上がり突撃する。
がら空きの背中に向けてブレイクアックスの一撃を加えようとした瞬間、突然スワンプの中からもう一人のスワンプが現れ斬り裂かれる。
「がぁっ!?」
「な、これは…!」
『ATTACKRIDE ILLUSION』
さらに2人スワンプが増え、合計4人になる。増えたスワンプはそれぞれ別のライダーに向かって走り出し、強制的に一対一の状況を作り出す。
「これで邪魔者はいない。ま、君は邪魔者とも言えるけどね」
「御託はいい、とっとと終わらせる!」
スワンプに向かってライダーは駆け出す。炎を纏った右手のジャスティスブレードを振るうも相手のライドブッカーで受け止められる。
即座に逆の手のアルテマウェポンによる突きを放とうとするが腕を蹴り飛ばされ逆に相手のジャスティスブレードに斬り裂かれる。
怯んだ隙にさらにライドブッカーに斬り裂かれ、2つの武器による突きで大きく吹き飛ぶ。
「ぐぅっ!まだまだ……っ!?」
強烈な痛みを堪えながらなんとか両足で踏みとどまる。再び向かおうと地面を蹴った時、視界が歪み急激な脱力感と共に膝を着く。
「なっ……!?バカな、いくら何でも速すぎる…!」
「ふふ、やっぱりねぇ。相当無茶してるわけだ」
「無茶…?」
スワンプの言葉に奏達が反応する。何とか再び立ち上がろうとするライダーを見つめながら得意気に武器をもて遊びスワンプは語り始める。
「自分のじゃない身体を動かす、それだけで消耗するエネルギーは凄まじいものなんだよ。ましてやライダーに変身し、消耗の大きいセカイスフィアの力を使う。それに加えてあの体は俺との戦いでボロボロだ」
「はぁ…はぁ…くそっ」
上手く動かない体に苛立つ。もっと強く、もっと頼りになったはずの自分の力が今は自らを縛る鎖のように纏わりついてくる。
失った記憶の中にある感覚が取り戻されれば目の前の脅威など容易く倒してみせるのに。
「さて…終わりにしよう」
『FINISH THE DECADE!!』
「!」
ベルトを操作したスワンプからライダーに向かって黄色いカード状のエネルギーが十枚並ぶ。
空中に飛び上がったスワンプを追従するカードに向かいその足を蹴り出す。
『FINALATTACKRIDE DE・DE・DE・DECADE!!』
「ハァァァァァ!!!」
カードを1枚突き抜けるごとにスワンプの体が加速し、足に纏われるエネルギーの量が増していく。
ライダーは両手の武器を重ね合わせ、前面に発生させた炎の盾を発生させ防御の構えをとる。
「う、ぐぅぅぅ……がぁぁぁぁ!!」
十枚目のカードを突き抜け、最高速度、最大限の威力を発揮した必殺の蹴りがぶつかる。
全てのエネルギーを込めて維持しようとする盾は無情にもボロボロと崩れていき、ライダーの体にスワンプの足がめり込む。
大きく吹き飛ぶとライダースーツが粉々に破壊され、生身に戻った全治郎が地面を転がっていく。
「うぐ……ゲホッ!ごほっ…」
「くく…決着だね」
体を襲う強烈な痛み、胸の奥からわき出る吐き気に思わず咳き込むと血が飛び出る。
地面に仰向けになり動けない全治郎にスワンプがゆっくり歩き始めジャスティスブレードを構えてくる。
「させ……るか…!」
『ダイナミック・ファング!!』
「!」
ベルトからスフィアを取り外しスイッチを押す。最期の力を込めて呼び出されたダイナミック・ファングは雄叫びを上げるとスワンプに向け走り出していく。
僅かな時間稼ぎにしかならないであろう選択により力を使い果たし、セカイスフィアが真っ黒に色を失う。
「悪いな…無茶させちまった」
「全治郎!」
機能を停止させていく自らの相棒に謝る。空を見あげているとまふゆ達がこちらに向かって走ってくる。
「お前らか…まだ離れとけ…危ない」
「言ってる場合じゃないでしょ!一旦セカイに…」
「それは…まだだ…」
携帯を取り出した瑞希の腕を掴んで止める。その手にはもはや他者の動きを静止できるような力はこもっていない。
しかし、その目に確かに残る意思に思わず動きを静止させる。
「何する気なの…?」
「言ったろ…賭けだ」
その言葉を最後に目を閉じ、意識を失う。しかし、これまでとは違いセカイが引っ込んでも全治郎の人格がかわりに目覚めることは無かった。
ーーーーーーーーーー
セカイが体に乗り移った後、全治郎は真っ暗な意識の底にいた。見ようと思えば外の様子を見ることは出来る。
しかし、そんな気分にはなれなかった。このままここで眠りにつき、そのまま全てが終わることを願う。
もう何も見たくない。そんな全治郎の願いに反するように閉じた瞳に光が差し込む。
「これは…?」
思わず開いた目に映る景色。机の奥に置かれたテレビ、自分の腹を抱きかかえるようにされた腕、ソファーの上で誰かの膝に座っている。
この光景は見たことがある。思わず振り返るとそこには既に亡くなった父の姿があった。
「お父さん…」
「ん?どうした?」
喉から出てきた自分の声は高い。両手を開いて確かめるとその手は小さく、幼い頃に時間が巻き戻ったようだった。
状況を理解できずに頭が混乱していると、意思に反して口が勝手に動き出す。
「今日学校の宿題でね、僕の名前の意味を調べて来なさいって言われたんだ」
「名前の意味か…ちょっと恥ずかしいな」
全治郎の問いに父は照れくさそうに頬を掻く。すると母が盆にジュースを入れたコップを乗せて歩いてくる。
「貴方の名前はね、私達の先生に相談したのよ。まだお母さん達が学校に行ってた頃のね」
「先生?」
「あぁ、そうだぞ」
父の手が全治郎の頭を撫でる。角ばった大きな手、もう感じることの出来ないはずの温もりに胸から何かが込み上げてくるのを感じる。
「全てが治るって字を書くんだけどな、怪我とか病気とか…生きてて辛いことや悲しい事が沢山あってもそれを乗り越えて進んで欲しいって意味を込めたんだ」
「勉強とか運動も頑張ってほしいけど…やっぱり一番は貴方が生きててくれる事が私達の一番の幸せだから、それを名前にしたの」
「……!」
「思い出したか?」
父と母の口から告げられる自らの名前の意味。思い出せずにいたその言葉を今になって聞けた事に驚いていると後ろから別の声が聞こえ振り返る。
そこには机にもたれかかる成長した自分の姿。全治郎の見た目をしたセカイが居た。
「これはお前の仕業なのか?」
「あぁ、俺が取り憑いてる人間の記憶を覗けるのは知ってるだろ?これはその応用っ…!」
「お、おい!」
会話の途中でセカイがバランスを崩して倒れかける。何とか体勢を維持するその体からはキラキラと光の粒子が浮かび上がり体が薄くなり始めている。
「まぁ…見ての通りエネルギーを消耗する。今の俺じゃピンポイントに分かってないと厳しい」
「どうしてだ…なんでそこまで…」
「……自分には何もない。お前はそう言ったな」
自分の為にその身を犠牲にするセカイに戸惑う。出会ってから彼にはずっと冷たく接してしまっていたはずだ。
疑問を隠せず罪悪感から表情を歪ませる全治郎にセカイは口を開くと笑う。
「俺も同じだ。過去の事を何も覚えていない」
「え…」
「大切な事が沢山あったはずなのに…何一つとして思い出せない。手元に残った四本のドライバーだけが俺の全てだった」
自分の名前すら思い出せず、知らない場所に落ちてきた。ずっと漠然とした焦りに支配される中、全治郎を見つけた。
「お前を見た時、助けないといけないと思った。俺に与えられた使命だってな」
「使命…」
放しながらセカイは目を閉じる。何も思い出せかった記憶の中におぼろげながら浮かんでくる光景。
自分は仲間達と共に自らのセカイで想いの持ち主の為に生きていた。セカイの住人として当たり前の事だ。
しかし、その込められた想いだけが最後の最後で残った大切なものだと信じた。
「俺の使命は怪人を倒すことじゃない。助けを求める子供に手を差し伸べる事だ。そのためならこの命をかけても構わない」
「…誰かに言われた事の為に人生を賭けられるのか」
「お前も試してみるといい、あんまり気張らずな。俺がお前の体を使ってた時を見習え」
閉じた目を開くと全治郎を見つめる。これまでとは違う柔らかな表情を見せたセカイは懐からドライバーを取り出すと差し出す。
「両親に託された想い…しっかり感じ取れたはずだ。もう死にたいなんて言うな」
「……ただ生きる事が、父さんと母さんの願い」
「それと、先生のな」
セカイの言葉に頷くとドライバーを掴む。するとドライバー伝いに光の粒子が全治郎の手に流れていきその姿が成長した現在のものに戻り、セカイも元の見た目になると空間も再び真っ暗になる。
「最初に言った頼み、今なら引き受けてくれるか」
「…あぁ、ヒーローになればいいんだろ?」
「…フッ」
受け取ったドライバーを見せながら答えるとセカイは安心したように笑う。
すると体が薄くなる速度が段々と速くなっていく。
「もう会えないのか?」
「心配するな、ちょっと眠るだけだ…ああそうだ、俺からもお前に名前を送ろう」
全治郎の両親は名前に自らの願いを託した。自らも願いを託すのなら相応しい名前を付けるのが道理だろう。
「そうだな…まずはあの偽者を倒して、本物がどっちか証明してこい。仮面ライダー…オリジン」
その言葉を最後にセカイは完全に消え、変わりに眩い光が差し込むとそちらに向かって全治郎は歩き出す。
先を見つめたその瞳に、もはや何の闇も無かった。
ーーーーーーーーーー
『スラッシュ!!』
「ふん!」
スワンプの放った斬撃に斬り裂かれ、ダイナミック・ファングが光となって消えていく。
思ったよりも足止めされてしまった事に舌打ちすると再び全治郎の方を向くと意識を取り戻し起き上がっているのが目に入る。
「全治郎…大丈夫なの?」
「問題無い。下がっていてくれ」
「ちょ、戦う気なの!?怪我もしてるし…さっき自分でも勝てないって…」
「心配ない」
心配するまふゆと瑞希に短く言葉を返し立ち上がる。その姿にセカイではなく全治郎本人の意識な事を確信すると歪な笑みを浮かべながら口を開く。
「やけになっちゃったかなぁ?死に損ない」
「死に損ない…それは違うな」
手の中に残る黒く染まったセカイスフィアを懐にしまう。そして変わりに白く染まった新たなスフィアを取り出すとスワンプの顔色が変わる。
「俺は生き残ったんだ、父さんと母さんに先生…そして、セカイの想いでな」
『ジャスティス!!』
全治郎の言葉の正しさを肯定するようにスフィアがその名を叫ぶ。そのままベルトに装填すると右手を開き顔の下半分を覆う。
すると足元に霧が出始める。しかし、他のライダーのように体を隠すことはなくただ周囲を漂う。
「変身!!」
右手を大きく振りかざし手首を返すとベルトの弓を操作する。漂う霧が全治郎の体に纏わりつくとそのままスーツを形成し全身を変化させていく。
体を覆っていくスーツの色は霧の時と同じ灰色、手足、胸から腹部にかけて黒い装甲が纏われ、頭部にも同様の装甲がヘルメットの上半分を覆い耳からアンテナが伸びる。
レイジやビートと違い特定の何かをモデルにしたわけではない、特徴のないその姿はまだ何ものでもないことの現れ。
彼自身が今から掴み取っていく為の原点となる姿。ベルトの横にジョイントされたジャスティスブレードを引き抜くとスワンプに切っ先を向けた後構える。
『CHANGE THE JUSTICE!!』
「俺は仮面ライダーオリジン。今からお前を倒す名前だ、覚えておけ」
「ほざくな!!」
強気なセリフに怒るとライドブッカーをガンモードに変化させ弾丸を乱射する。
しかし、オリジンは弾丸をギリギリまで引きつけると一振りで全て叩き落とす。
「っ!?ならば…!」
『ATTACKRIDE BLAST!』
スフィアの力を解放させると銃口が分裂しさらに多くの弾丸をばら撒く。
しかしオリジンはそれらすべてを簡単に弾き落としていく。その光景にムキになったようにスワンプは次々と弾丸を放つも一向に当たることはない。
しばらく弾丸を弾き続けたタイミングで更にオリジンは攻めた行動に出る。振るい続けたジャスティスブレードの刃を返し、側面で弾丸を撃ち返すとスワンプの顔面に直撃させる。
「がっ…!!」
「ビビってんのか?近寄ってこいよ」
「貴様…!」
『ATTACKRIDE SLASH!』
オリジンの挑発に再び二刀流の構えを取ると更にその刀身を分裂させ駆け出す。
距離を詰めるとライドブッカーによる一撃を放つもオリジンは軽く身を捩るだけで躱し、続くジャスティスブレードによる攻撃も軌道に沿って体を回転しながら後退し躱す。
「フラフラふらふらと!鬱陶しい!」
「当ててみろ」
「こいつ!」
煽られたスワンプが大振りな一撃を放とうとした時を見計らい体を下から斬り上げる。
隙をついた一撃は一発で強烈なダメージを与えその動きを硬直させる。
更にオリジンはジャスティスブレードの歯車を回すとエネルギーをチャージした斬撃でスワンプを吹き飛ばす。
「がぁぁぁぁ!!だったらぁ!」
苛立つスワンプの咆哮と共に地面に泥が広がっていく。その中から次々とキャントネイム達が湧き出るとスワンプが手をオリジンに突き出し指示を出す。
「行け!やつを…」
『FINISH THE JUSTICE!!』
スワンプが言い終わるよりも先に縄のように伸びてきた霧がキャントネイム達を縛り上げ空高く持ち上げる。
装甲の一部を霧に変化させたオリジンの手の動きに合わせ縄が動き、そのまま勢い良く地面に叩きつけるとキャントネイム達が砕け散る。
「小細工はまだあるか?どうせなら全部潰してやる」
「こうなったら…分身を戻してでも…」
他の面々ならまず負けていないはずだ。呼び戻してオリジンを倒してから弱った残りのライダーを倒せばいい。
考えをまとめると視線を移す。まずはレイジと戦っている個体を狙う。
「ふん!」
「うぐぅっ!?」
レイジの体をジャスティスブレードが斬り裂く。幾つもの裂傷を刻まれた痛々しい体がガクリと力を失い膝を着く。
それを見たスワンプはライドブッカーの切っ先を胸に当て、勢い良く突き刺す。
「がはっ…!」
「折角協力関係だったのに、こんな終わり方になって残念だよ。じゃあね」
レイジの始末を完了させ、本体の援護に向かおうとするもその動きが止まる。
引き抜こうとしたライドブッカーが何かに引っかかったように止まる。思わず振り返るとレイジが刃をその手で掴み、ゆっくりと顔を上げる。
「俺にはメリットもあったぜ…こいつとかな!」
『バッファ!!』
「!」
スワンプから協力の証しとして渡されたバッファスフィアを起動させるとベルトに装填し起動させる。
霧が立ち込めると牛の頭蓋骨が現れ鳴き声と共に霧が晴れる。現れたのは紫色の装甲に鋭利な鉤爪を左手に装備した姿に変わったレイジ。
左手の強力な腕力で刃をしっかりと掴みながら右手を開くと巨大なチェンソー、ゾンビブレイカーをスワンプの首に向けて振り下ろす。
『LETS ACTIVE BAFFA!!』
『SET ZOMBIE』 『READY FIGHT!』
「うぉらぁぁぁ!!!」
「がぁぁぁぁぁ!!?」
高速回転する刃が首から体を両断しようとめり込み、体がその振動で強制的に震わされ痛みが加速する。
何とか抜け出そうとするもライドブッカーを引き抜くことは叶わない。諦めて手を離すもめり込んだ刃が引っかかっり離れることが出来ない。
更にゾンビブレイカーは傷口から毒素を送り込みスワンプの体をゾンビそのものへと変質させていき、更に動きが阻害される。
「これで…終わりだ!」
『FULL ACTIVE BAFFA!!』
『DUAL ON』
『BOOST ZOMBIE』
レイジの体が前に倒れ込むように一回転し上半身が下半身に、下半身が上半身に変形する。
そのままゾンビブレイカーを振り下ろしたことで火花を散らしながら後退していくスワンプを睨見つけながら上半身にバイクを模した赤い装甲を追加で纏う。
『BOOST TIME!!』
『ZOMBIE BOOST GRAND VICTORY!』
「うおらぁぁ!!」
レイジの腕のマフラーから炎が、足からはオレンジ色の毒が噴き出し高速で突進し拳をスワンプに叩きつける。
ダメージの許容限界を超えた分身はそのまま光となって消え、レイジは地面を削りながら静止する。
『ショット!!』
「ふっ!」
「無駄ぁ!」
ラヴァーが発した矢が空中で分裂し矢の雨を降らす。しかしスワンプはその場で回転するようにジャスティスブレードを振るうと振りかかる矢をすべて吹き飛ばす。
自らの攻撃が無効化された事に思わず舌打ちする。先程から多種多様な矢を放ってはいるがどれも通用しない、もっと常識離れした発想が必要だ。
結論を出すとラヴァーはベルトからスフィアを外しヒットシューターに装填する。
『シンドロームショット!!』
「何度やっても無駄…」
「そ~れっ!」
必殺の矢を弾こうとジャスティスブレードを構えたスワンプに対し、ラヴァーはヒットシューター自体を投げつける。
縦に高速回転するとエネルギーを帯びた矢がまるで丸鋸のようになり一直線に跳んで行く。
予想外の一撃に驚いたスワンプが咄嗟にジャスティスブレードでガードするもそのまま鍔迫り合いの形になる。
『MY LOCK KAIXA!!』
『BurstMode』『SingleMode』
「おりゃぁー!!」
「ぐっ…!?」
動けないスワンプに対してカイザセレクトに変身するとカイザブレイガンとカイザフォンを取り出しエネルギー弾を乱射する。
大量の光弾に防御を崩されヒットシューターの光刃が身を刻み吹き飛ばされる。
地面を転がるもすぐに起き上がり迎撃に備えようとすると、スワンプの視界が突然暗くなる。
何か巨大な物が目の前に現れ、思わず見上げると2本の足で立ち巨大な腕に砲塔を備えたマシンにラヴァーが乗り込んでいる。
『BattleMode』
「一斉射ーー!!」
「ぐわぁぁぁぁ!!?」
仮面ライダーカイザの専用マシン、サイドバッシャーから内蔵されている全ての武装が発射されスワンプの体を吹き飛ばす。
満足気に車体を撫でるラヴァーを余所に、残る最後の分身とビートの戦いも佳境を迎えようとしていた。
「残りは貴方だけみたいですね!焦った方がいいんじゃないですか!」
「ほざくな!お前の能力は割れている!」
「ぐっ!」
スワンプは過剰に反応すると勢い良くジャスティスブレードで切りつける。地面を転がっていくとビートは起き上がりながら体のシャドウラインを弾き、自身とスワンプを影のドームに引きずり込む。
周囲が暗闇に染まるのを眺めながらスワンプは笑う。余りにも予想通りの展開、焦ることなくベルトを操作するとその力を解放する。
『KAMENRIDE FAIZ!』
「学習した方がいいな!俺にこの技は効かない!」
スワンプの体を赤いラインが走っていくとその姿を別のライダー、仮面ライダーファイズそのものへと変化させる。
カイザと同じように体のラインを光らせドーム内を照らし視界を確保したその瞬間、スワンプの体に青い糸が突き刺さる。
「がっ…!?」
「ご心配なく、復習も対策もバッチリです」
『MASTER ABILITY SHADOW!!』
体に突き刺さったのはビートの体から伸びたシャドウライン。刺さった部分からスワンプの体内に伸びていくとその動きを拘束する。
ビートは跳び上がるとスワンプに向かって伸びるラインに両足を乗せる。するとビートの体が急激に加速しラインの上を軽快な音階を鳴らしながら滑っていく。
「ハァァァァァ!!」
ビートの両足がスワンプの体にぶつかると同時にライン伝いにエネルギーが注入され爆発を起こす。
そのまま体を貫くと着地したビートの体に伸びていたラインが戻り指でしっかりと張る。
これで全ての分身が消滅した。本体であるスワンプは動揺を隠せずに周囲を見回す。
「馬鹿な…全滅だと…!?」
「あぁ、お前で最後だ」
「!」
オリジンはベルトからスフィアを外すとジャスティスブレードに装填する。
これで決めると言わんばかりの様子に怒りを露わにするとスワンプはベルトを操作し更に自らもジャスティススフィアをブレードに装填する。
「舐めるなよ…お前は俺が殺す!!」
『FINISH THE DECADE!!』
「…そういえば、やる気がないから俺はお前には勝てない…とか言ってたなお前」
オリジンはエネルギーが溜まっていくジャスティスブレードをベルトにジョイントさせると居合の体勢を取る。
スワンプの前方には再びカードが並び、逆手に持ったジャスティスブレードを振りかぶり、ライドブッカーを前面に構える。
「なら、死ぬのはお前のほうだ。今度の俺はやる気だからな」
「ほざくなぁ!」
スワンプがカードに向かって駆け出す。カードを突き抜けるごとに刀身に光が帯びていき大きく腕を広げ挟み込むように斬り裂こうとする。
「聖生光刀」
「黒悪必刀!!」
『ジャスティススラッシュ!!』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
オリジンとスワンプ、2人のライダーはどちらも剣を振り切った体勢でお互いに背中を向けて静止する。
しばらく周囲を静寂が支配するとオリジンがその場に膝を着く。
「………ふっ」
そしてそのままジャスティスブレードをベルトにジョイントさせて納刀する。
次の瞬間、スワンプの背中から火花が飛び散り空中に文字が浮かび上がる。
俺
様 圧
勝
「ぐぁぁぁぁぁ!!!」
余りにも不遜な文字の出現と共にスワンプが爆発する。爆風を背中に受けながらゆっくりと立ち上がるオリジンの姿を見ながら奏が口を開く。
「あの文字は…?」
「なんか…あいつらが勝つと出るのよ」
「なんだろうね」
何の意味があるのか分からない文字に戸惑う。しかしひとまずこれで安心かと胸を撫で下ろそうとした時、煙から変身が解除されたスワンプが飛び出し膝を着く。
「ゲホッ!ゴホォッ!!がっ……ぐ…!」
「しぶとい奴だな」
「常世……全治郎…!」
地面に両手をつき血反吐を吐く自分を見下ろすオリジンをこれでもかと殺気を込めて睨みつける。
何の意味もないがこうでもしないと屈辱でこちらが死んでしまいそうだ。
すると足元から泥が吹き出し始め、スワンプは意図を察しオリジンを指差す。
「覚えていろ…次こそ必ず…!」
「待て!逃がすか!」
逃げようとしている事に気づいたレイジが走り出しブレイクアックスを振り下ろすもそれより早く泥の中に消えていき斬撃は地面にめり込む。
「くそっ!!あの野郎!出てこい!」
「……」
叫びながらスワンプが消えていった地面を蹴りつけるレイジを見ながら変身を解除すると足元にディケイドスフィアが転がっていることに気付き拾い上げる。
どうしようかと考えているとまふゆ達が近づいてきたため一旦懐に仕舞う。
「怪我はないか」
「私たちは大丈夫」
「とりあえず、一件落着ですかね?…何やってんだあの人」
「イェー、大勝利〜」
同じく変身を解除した影と弓が近づいてくる。地面を掘り始めたレイジを影は止めに向かい弓は疲れた体を伸ばす。
それぞれが勝手に過ごし始めるとまふゆが全治郎に向かって喋りかける。
「全治郎……大丈夫?」
「……」
その言葉に黙る。ただの戦いの心配なのか、それとも別の事を気にしているのか。
まふゆは表情から感情が読み取りにくい。自分も人の事は言えないが。
しばらく返答に悩むとスワンプに蹴られた胸を撫でながら笑みを見せて答える。
「骨折れてそうだから、病院に行く」
設定
仮面ライダーオリジン
全治郎の変身する仮面ライダー。装甲を霧に変化させ様々な形で使える。武器であるジャスティスブレードを使った近接戦闘を得意とする。
仮面ライダーレイジ バッファセレクト
仮面ライダーバッファの力を宿した姿。スワンプの使用時よりパワーの上昇値が大きい。
オリジナルの精神性と満の親和性により高い戦闘能力を発揮する。
次回「たまたま出会った4人組の遭遇編エピローグ&短編集」
お知らせ
次回の後からイベントストーリーに入るのですがその前に一回番外編を挟みます。
内容はプロセカの放送曲とか東映の座談会的な感じでこれまでの振り返り、本編で話すか分からないくらいの設定の話とこれからのあらすじを幾つか公開する予定です。
初めての試みでどのくらいかかるか分かりませんが早めに書けるような頑張りますので待っていて貰えると嬉しいです。
5つの中でお気に入りだった章を教えて欲しいです。どんな要素が良かったかの参考にします!
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RE'BEGINS編
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BEYONDS編
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ストリートライダース編
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ワンダーランズ☓ショウタイム編
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たまたま出会った4人組編