プロジェクトセカイ feat  仮面ライダー   作:ミッツー116

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 アンケートなのですが、締め切りを来週の日曜日に変更させていただくことにしました。
 やはり今回のエピローグ込みで考えていただくく方が良いということと明確な日付を決めなければズルズルと投稿日を先延ばしにすることでいくらでも票数を稼げてしまう事に気づいてしまいました。
 昨日の今日で申し訳ありませんがご理解ご協力いただけると有難いです。


第七話

 

 

 第七話 「エピローグ」

 

 

 日曜日、高級鰻料理屋

 

 

 「ハァ〜〜〜〜〜!!?幼少期に家焼かれて両親が殺された挙句見た目をパクられてる〜〜〜〜〜!!!??」

 「ちょ、うるさ、うるさいです満さん。お店の中ですよ」

 「あ、あぁ悪い」

 

 

 席を立つほどの驚きと共に店の外まで響き渡るほどの声量で叫ぶ満を隣の椅子に座る影がなだめる。

 謝りながら席に戻る満の前で全治郎は手元の湯飲みに口をつける。

 

 

 「やかましいやつだ。自分も似たような境遇だろうに」

 「しかも相手まで同じだしね〜。……それにしても」

 

 

 当事者にしては冷めた態度の全治郎の隣で瑞希はじっと胸を見つめる。

 

 

 「骨が折れてたって昨日言ってたけど、こんなところに居て大丈夫なの?」

 「ていうか、川に落とされてしばらく流されたりもしてたんでしょ?入院とかしないとダメでしょ」

 「体は丈夫な方だ」

 「限度があると思う」

 

 

 所々包帯や絆創膏などの治療の後が見えるが特に痛みに苦しむような様子もなく平然としている様子にまふゆが呆れる。

 そんな面々を余所に落ち着かない様子でキョロキョロと店内を見回す奏に弓が話しかける。

 

 

 「どしたの?奏ちゃん」

 「いや…こういうお店くるの初めてだから落ち着かなくて…お金足りるかな…」

 「気にするな、こいつの奢りだ」

 「はぁ!?」

 

 

 料金の心配をする奏に満は笑みを浮かべると影の肩に手を置く。まさかの言葉に戸惑い声を上げると抗議を始める。

 

 

 「き、聞いてないですよ満さん!」

 「いいだろ別に。お前が一番金持ってるんだから」

 「いやいやいや!え、全員!?全員分ですか!?」

 「うん。特上を人数分予約した」

 「勝手ーー!!」

 「うるさい。店の中だぞ」

 「……!?はいはい失礼しました…!」

 

 

 あまりにも酷い話に今度は影が席を立ち叫ぶ。先ほどの仕返しとばかりに注意する満に思わず額に青筋を浮かべながら座るとその様子を見ていたまふゆが静かに口を開く。

 

 

 「私の分キャンセルしてもいいよ」

 「え、いやそういう話じゃなくて…」

 「いいよ、私味感じないし」

 「え……」

 

 

 突然明かされた情報に思わず固まる。サラリと言った本人は何も気にせず無表情な瞳で湯飲みから水を飲む。

 どういう反応をすればいいか分からず影が口を閉ざしていると満が口を開く。

 

 

 「8人で来て7人前頼んだらイジメかと思われるわ」

 「私は気にしない」

 「俺らが気にするだろ。それにこのタイミングで味覚戻ってたら大分損だぞ。食っても悪い事ないんだから食っとけよ」

 「……そうですよ、お金の事は気にしないでいいので」

 「しゃっ、言質」

 「一人だけ払わせてやろうか」

 

 

 少し見直したと思ったらこの調子の満に再び怒りが湧いてくる。

 なお、そもそも同じ家に住んで影が稼いだ金から生活費も出ているので実は満だけ普段と変わらない。

 

 

 「最悪1年組の分だけ払ってくれよ」

 「自分含まれてるじゃないですか」

 「俺と、一ノ瀬と、暁山と、後は宵崎だけでいいから」

 「宵崎さん2年ですよ」

 「「え」」

 

 

 影の訂正に満だけでなく弓も驚く。視線を向けた奏は勘違いされることに慣れているのか困ったように笑っている。

 

 

 「えぇっと…まぁ、特に気にしないでいいよ。これまで通り接してくれたら」

 「……でも、よく考えたら満は私達の事も呼び捨てだし関係ないじゃん」

 「言われてみたらそうだわ」

 「私も〜。年上とか気にしないタ〜イプ」

 

 

 会話を楽しんでいると8人の前に定員がうな重を持ってくる。蓋を開くと米が見えないほどに敷き詰められた鰻からタレの香ばしい香りが鼻に上ってくる。

 

 

 「うぉ〜…すっげぇ…」

 「流石に高いだけあるね!」

 「ほんと、すごい…」

 「ね、値段見せてください。足りるか不安になってきました」

 「……」

 

 

 それぞれの反応を示しながら箸を手に取り食事を始める中、自分も食べ始めようとした全治郎の手が止まる。

 その視線は自らの右手のリストバンドに向けられている。

 

 

 「全治郎、食べないの」

 「いや、食べるさ。鰻は精がつくしな」

 

 

 ーーーーーーーーー

 

 

 「ありがとうございました〜」

 

 

 定員は帰る客を見送り、掃除の為に机に向かう。学生だけの客は珍しい。会計を一人でしていたがあとで回収するのだろうか。

 そんな事を考えながら8人の食べた後の重箱を片付けていると机に置かれたものに気付き、急いで追いかける。

 

 

 「お客様!忘れ物!」

 「……あぁ、そりゃそうなるか」

 

 

 最後尾を歩いていた全治郎が振り返ると右手を振りながら答える。

 

 

 「それ、悪いけど要らないから捨てといてくれ」

 「え……?」

 「おい!置いてくぞ!」

 

 

 満の声に全治郎はそのまま後を追ってついていく。取り残された定員は戸惑うもどうすることも出来ず、近くのゴミ箱にリストバンドを捨てた。

 

 

 たまたま出会った4人組編 完

 

 

 たまたま出会った4人組短編①「これからの付き合い方」

 

 

 スワンプとの戦いを制した週明け、神山高校の駐車場に全治郎はバイクで入っていく。

 ヘルメットを取り鍵を閉め校舎に向かおうとすると突然青空と司に出くわす。

 

 

 「あ、おはようございます全くん!」

 「駐車場から来た…とういことは、バイク買いなおしたのか」

 「金は結構あるからな」

 

 

 亡くなった両親の遺産は勿論、先生も財産を自分に引き継げるよう手続きしてくれていた。

 今も自分があの家に住めているのはそのおかげだ。

 

 

 「ん、んんっ…?あぁー!」

 「……?どうした、青空」

 「ちょっ、それ!」

 

 

 歩きながら喋っていた青空は眉をひそめると突然大声を上げる。司達か首を傾げると全治郎の右手を両手で覆うように握りしめる。

 

 

 「リストバンド!忘れてますよリストバンド!腕隠さないと!」

 「何ぃーーーー!!!ま、待て!確か急に怪我をした時用に包帯が俺の鞄に」

 「落ち着いてくれ。意図的に着けてないんだ」

 「「え」」

 

 

 全治郎の言葉に2人はポカンと口を開ける。必死に隠そうとしてくれていたのに申し訳ないと感じながら青空の腕を丁寧にほどく。

 

 

 「意図的にって…どういう意味ですか?」

 「もう自傷はしない。その証しとしてこの腕はもう隠さない、そう決めた」

 「何!?本当か!」

 

 

 全治郎の言葉に驚くも2人は嬉しそうな顔をする。思えば高校で初めて会った時から今までずっと心配してくれていた。

 何か返すことはできないかと考えると、以前にセカイが自分の体を使っていたときに2人を遊びに誘ったら喜ばれていたことを思い出す。

 

 

 「放課後どっか遊びに行くか」

 「え!リベンジですか!」

 「結局全然行けなかったしな…よーし!教室で計画を立てようではないか!」

 「ギターを買ってみたいんだ。音楽でも始めようかと思ってな」

 

 

 友人2人の笑顔に胸の中に温もりを感じる。折角生きていく決心も固まったのだ、これからは三人でもっと一緒にいる時間を増やしてもいいかもしれない。

 そんなふうに考えていると青空が口を開く。

 

 

 「それで、意図的ってどういう意味ですか?」

 「言葉の意味を聞いてたのか」

 

 

 たまたま出会った4人組短編②「弓道部、運動部」

 

 

 「どう、出来てる?」

 「出来てる出来てる」

 「いや〜覚えが早いね〜」

 「………」

 

 

 宮益坂学園の弓道場にてまふゆはじっと1点を見つめていた。その視線の先にいるのは満、先日色々あり弓道部に属することになって早くも馴染んでいた。

 

 

 「あ、朝比奈。来たのか」

 「お疲れ様みんな。練習頑張ってる?」

 「朝比奈先輩!お疲れさまです!」

 

 

 こちらに笑顔を向けてくる後輩と無愛想な表情の満。まふゆにはこの対応に若干思うところがあった。

 別に他の生徒のように自分を敬えと言うつもりはない。そもそもあまりそういった事を気にしていない。

 問題は自分に対してではなく、他のある人物に対しての態度である。

 すると弓道場に雫が入ってくる。その瞬間、満は勢い良く振り返るとピシッと擬音が聞こえそうなほどのお辞儀を見せる。

 

 

 「日野森先輩!!お疲れさまですッッッ!!」

 「このタイプの運動部ではないからね、弓道部って」

 「ふふふ」

 

 

 異常に敬意を向けられるのと明らかに軽く扱われる、どっちが増しなのだろうか。

 生まれて初めての悩みだった。

 

 

 たまたま出会った4人組短編③「知りたくなかった真実」

 

 

 「奏ちゃん、元気〜〜?」

 「う、うん。元気だよ…」

 「そうには見えない」

 「……」

 

 

 まふゆのセカイでニコニコと奏に弓が話しかける。力の無い返答に思わず全治郎がツッコむ中、満は何故かじっとその光景を見つめる。

 

 

 「ん?どうしたの満く〜ん、私に見とれちゃって〜」

 「お前、どっかで会ったこと無いか?」

 「へ?」

 

 

 満の言葉に首を傾げる。覚えのなさそうな様子だが聞いた本人も確信は無いのか腕を組んで頭を悩ませている。

 お互い見つめ合って考え込む2人を見て奏たちも口を開く。

 

 

 「2人は知り合いなの?」

 「え〜覚えてないけどな〜」

 「交流のあるタイプにも見えないな」

 「一ノ瀬……一ノ瀬…う〜ん、苗字が聞き覚えがある」

 「苗字?」

 

 

 満の言葉に首を傾げる。顔つきなどではなく苗字に覚えがあるというのは少々特殊だ。

 すると、弓の頭の中に心当たりが浮かぶ。

 

 

 「ひょっとして兄貴か弟かも。そこそこ知名度あるんだよね」

 「知名度?」

 「兄は人気モデル、弟は中学サッカー3年連続日本一」

 「サッカー…?あ!お前剣の双子の姉ちゃん!」

 「剣?」

 

 

 思い出した様子の満から出た名前に全治郎が聞き返す。

 

 

 「俺、親が死ぬまでサッカー部だったんだよ。そんとき同じチームにいたんだ。まぁ事件のあとの引っ越しで転校したから1年の途中までしか知らねぇけど」

 「そっか。それなら弓の事も見たことあるよね」

 「関わりはなくても同じ学校なら機会はあるだろうしな」

 「う〜ん、なるほど…しかし……」

 

 

 やっと違和感の正体が分かった満は弓を見る。中学の頃、何度か剣と喋っていたのを見た時と印象が違いすぎて気づかなかった。

 家族とそれ以外との違いなのかどうかは分からないが、そうなるとそれも聞きたくなってくる。

 

 

 「お前、中学とキャラちがくないか?」

 「ふっ、私は陽キャになったんだよ」

 「……」

 

 

 不敵な笑みを浮かべる弓に冷たい視線を送る。果たして真剣に言っているのだろうか。

 あまり突っ込まないほうがいいのかもしれないが、とりあえず一つだけ指摘することにする。

 

 

 「本物の陽キャは自分で陽キャって言わんぞ」

 「え……?」

 

 

 たまたま出会った4人組短編④「同居人エピソードトーク」

 

 

 「影と満は一緒に住んでるのよね」

 「はい」

 「ねぇねぇ、Cillって普段どんな風に過ごしてるの?配信外の感じ聞いてみたいな〜!」

 「私も、日向さんの普段の様子聞いてみたいです」

 

 

 瑞希と奏の言葉に2人は顔を見合わせる。別に話をすること自体は構わない。

 しかし、そもそもの問題があった。

 

 

 「普段…話します?」

 「仕事の話くらいだからな…飯の時はテレビつけながらだし」

 「一緒に住んでるのに?」

 「僕がほとんど部屋で作業して出てこないので…」

 「飯以外顔合わせない日とかあるぞ」

 

 

 言われるまでま気にもとめていなかった様子の2人に若干薄情なように感じるも絵名も弟と話さない日があるしそんなものかもしれないと思い直す。

 一方影たちは流石に何も話さないのも悪いと感じたのか頭をひねる。

 

 

 「意外に満さんしっかりしてない話とかします?」

 「は?そんな事ないだろ。家の事とか全部俺がやってんだぞ」

 「人間関係がな…疑うこと知らないんですよこの人」

 「こないだも全治郎の偽者に騙されてたしね」

 「んなっ!」

 

 

 影の口から飛び出した予想外の指摘に思わず驚く。心当たりがあるのか否定できない満を余所に続けていく。

 

 

 「前にもあったんですよ。配信でお世話になった人が後日未成年男子への淫行で捕まったり」

 「言うなっ!俺飯行く約束とかしてたんだぞ!」

 「危なっ!?」

 「マジで気をつけなさいよあんた…」

 

 

 どうやら予想以上に騙されやすいらしい。インターネットで活動している人間としてやっていけるのだろうか。

 

 

 「ていうか!こいつは騙されるされない以前の問題だからな!」

 「なぁ!?何を言い出すんですか!」

 「俺がいないと定員に注文すら出来ないだろ!」

 「さ、最近はモバイルオーダーで注文出来ますよ!」

 「反論になってねーーよ!」

 「なんか、あんまり凄い人じゃないよね2人とも」

 「活動しか知らない時はこんなんだとは思わなかった」

 「ふ、2人とも…」

 

 

 絵名と瑞希の発言に言い過ぎだと思いながらも、自分の抱いていた理想像も若干打ち砕かれたことを奏は感じるのであった。

 

 

 たまたま出会った4人組⑤「喪失者」

 

 

 皆で鰻を食べた日から数日が経ち、奏は母親の墓参りに来ていた。体力の問題と精神的にも辛くあまり高頻度では来られていないが、全治郎の話を聞いて久しぶりに足を運ぶことにした。

 水をかけて軽く掃除をし、線香に火をつけお供え物をすると両手を合わせ話し始める。

 ニーゴの皆と顔を合わせた事やライダーの戦いに巻き込まれたこと、前者はともかく後者は天国で驚かせてしまうかも知れないなとも思う。

 

 

 「それじゃあ…そろそろ帰るね、お母さん」

 「……宵崎…?」

 

 

 話し終えその場を去ろうとすると自分を呼ぶ声が聞こえ顔を向ける。

 するとそこには墓石を掃除するための道具を持った満が立っていた。

 

 

 「満…?そっか、満のお墓もここにあるんだ」

 「え、あ〜…」

 「?どうし……え?」

 

 

 気まずそうに目を泳がせる満に首を傾げる。しかし、その疑問はすぐに別の疑問で塗りつぶされることになる。

 泳いだ満の目をつい追いかけて行った先にある墓石、そこには予想外の名が刻まれていた。

 

  

 『日向家ノ墓』

 「日向……?え、でも…」

 

 

 今でこそ日向満だがそれは影の家に引き取られたからのはずだ。それならば満の両親の墓石には彼の本来の苗字である九重の名が刻まれていなければおかしい。

 奏の考えに気付いたのか満はため息を吐くと荷物を置いて墓石の前に座る。

 

 

 「はぁ……変に嘘ついて齟齬が出るよりマシか…」

 「どういう意味…?これ、誰のお墓なの…?」

 「…影の母親だ」

 「お母さん…?でも前に…」

 

 

 満の言葉に以前影から聞いた話を思い出す。それは今の満の内容とは食い違っていた。

 

 

 『満さんが来るちょっと前くらいから仕事が忙しくなってご飯とか外で食べるようになったんですよね。』

 「日向さんは仕事が忙しくて中々帰ってこないって…」

 「……今から話すこと、誰にも言うなよ」

 「え……?」

 

 

 満は真剣な顔をして釘を刺す。自らの過去を話す時にすら超えていそうなその表情に思わず息を呑む奏を前にしながらそのまま話し始める。

 

 

 「今から話すことは影の…影すら知らない過去だ。そして、俺が引き取られた一番の理由でもある」

 

 

 ーーーーーーーーーーー

 

 

 それは、影がまだ中学生だった頃の話。自分だけでアカウントを管理してもよい年齢になりチャンネルを名前はそのままに新設した。

 それまではバーチャルシンガーを使って曲を投稿していたのを自分で歌ったものを投稿し始め、徐々に認められるようになっていった。

 それから時間はどんどん過ぎ去っていき2年生に上がった時、影のもとに一件のメールが届いた。

 

 

 「お母さん、ちょっといい?」

 「えぇ、いいわよ?どうかしたの?」

 「実は、こんなメールが来て…」

 

 

 影が見せたパソコンに映ったのはとある音楽会社からのスカウトのメールだった。

 企業に属しプロの音楽家として活動しないかという旨のメールを見ると母親は目を輝かせる。

 

 

 「凄いじゃない!頑張ってるのは知ってたけど…まさかこんな誘いが来るなんて!」

 「うん…でも迷ってて。僕人と関わるの苦手だし、会社でやっていける気がしなくて」

 「…大丈夫。しっかりとお話すればきっと影にあったやり方を考えてくれるわ。この人達も、影と一緒にお仕事したいと思ってるんだから」

 

 

 母親が優しく頭を撫でながら影を諭し、それに対してゆっくりと頷く。

 その様子に満足そうに微笑むと椅子から立ち口を開く。

 

 

 「さて、お祝いしなくちゃね!ケーキでも買ってきましょうか!」

 「い、いいよ別に…まだ確定じゃないだろうし。話し合いで無しになるかも」

 「そう?とりあえず、近い内にお父さんにも言わなくちゃね!」

 

 

 子供の夢がもうすぐ叶うことに喜ぶ母親の顔、きっと何処の家庭にでもある幸せな光景だった。

 きっと、これまで苦労をかけた分やっと普通の幸せを掴み取れるはずだった。

 

 

 「即死だったんですって、酷い事故だったらしいわよ」

 「可哀想に…お子さん、まだ中学生でしょ」

 「………」

 

 

 母親の運転していた車が、居眠り運転の大型トラックとの事故を引き起こした。

 本来、会社からの帰り道では通らないはずの道だった。潰れた車体からは、影の名前が書いたチョコプレートの乗ったケーキが発見された。

 

 

 「……影、大丈夫か」

 「………」

 

 

 滅多に顔を合わせない父親も流石に心配したのか、毎日のように部屋に訪れ様子を伺った。

 しかし返事が返ってくることはなく、ただ時間が過ぎていった。一体どうすればいいのか、答えのない問題に頭を悩ませていたある日、異変は起こった。

 

 

 「あ、お父さん。おはよう」

 「影……!?」

 

 

 突然部屋から出てきた影と遭遇した。あまりにも唐突な回復に驚いていると、次に続いた言葉に更に困惑することになる。

 

 

 「ねぇ、お母さんは?今日休みじゃなかったっけ」

 「……は?」

 

 

 理解が及ばずに思わず空いた口が塞がらない。そんな父の様子に首を傾げている影は本当に疑問に感じているようだ。

 

 

 「な、何を言ってるんだ…?」

 「へ?なにが?」

 「母さんは死んだだろう!!あれを見ろ!」

 

 

 父親が必死に叫びながら指した指の先、そこには母親の遺影が飾られた仏壇が立っている。

 母親の死を証明する何よりの物体、その方向を目にしながら影は口を開く。

 

 

 「お父さんこそ何言ってるの?」

 「はぁ……?」

 

 

 父親と同じように指を指す。首を傾げ、すこし父親をバカにしたように口角を上げながら影は言った。

 

 

 「そこには何もないじゃん」

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

 「自分の音楽が原因で母親の命を奪った、その精神的ショックで影はその事を記憶から消し去ってしまった。今もあいつの中では母親は生きてる」

 「う、嘘でしょ…?そんな事って…」

 

 

 満から明かされた話に信じられないと思うが、何処かで理解している自分がいるのを感じる。

 奏自身も父親を自分の音楽が原因で傷つけてしまった。何か違えば自分もそうなっていたかもしれない。

 

 

 「おかしくなった息子を見てるのにあいつの父親が限界を感じた時、俺の家族が死んだ。奴は俺の事を引き取るかわりに影の世話を押し付けたんだ」

 「それが、満が日向さんの家にいる理由…あの、記憶が戻る目処って…」

 「…戻す気はない」

 「え?」

 

 

 予想外の満の言葉に驚く。てっきり何とか影の記憶喪失を回復させることが目的なのだと思っていた。

 

 

 「家族が生きてる。そう信じられるんなら…そっちの方が幸せだろうからな」

 「それは……そうかもしれないけど」

 「さて……っと」

 

 

 迷いを隠せない奏を見て満はわざとらしく声を出しながら立ち上がる。

 

 

 「話聞いてくれてありがとな。ずっと一人で考えてたからちょっと楽になったぜ」

 「……うん」

 「じゃ、帰るわ」

 

 

 その言葉を最後に満は帰っていく。奏にはその背中をただ見つめることしか出来なかった。

 

 




 短編で突然重要な話が発覚されるやつ。次回の更新ですが振り返りの為に一度自分で作品を読み返してみるので遅れると思います。
 最長でも2週間程度になる予定です。
 楽しみにしてくれている方々には申し訳ありませんが少しの間待っていただけると嬉しいです。

5つの中でお気に入りだった章を教えて欲しいです。どんな要素が良かったかの参考にします!

  • RE'BEGINS編
  • BEYONDS編
  • ストリートライダース編
  • ワンダーランズ☓ショウタイム編
  • たまたま出会った4人組編
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