プロジェクトセカイ feat 仮面ライダー 作:ミッツー116
後書き以外かわってません。
「は〜寂しくなっちゃうな〜」
何処からか咲希の声が聞こえる。だがその声は何処か今より幼く舌足らずだ。
「中学生になったら、優二くんと剣くんは別々の学校だもんね」
「う〜二人も同じ学校行こうよ〜」
「いや僕の家無茶苦茶遠いから」
「俺も…」
「その家は結局何処なんだよ」
「お父さんとお母さんが言っちゃダメって言ってるんでしょ?」
「…うん」
ほかのメンバーの声も聞こえる。咲希と同じくまだ幼い声、その中には自分の声も混ざっている。
(これは…昔の…)
「それじゃあさ、みんなで約束しない?」
寂しがる咲希を目にした一歌が口を開く。
「約束?」
「うん、約束。中学生になってもさ…学校が終わったらこの公園に集まろうよ。それでまたみんなで遊んだり…バンドやったり…こんなふうに星を見たりしたいな。」
少し恥ずかしそうにして一歌は約束を口にする。それを聞いた他のメンバーもそれに同調する。
「うん!絶対やろ!」
「そうだね、やろうか」
「ふふ、これなら中学生になってもさみしくないね。」
「2人は大変かもだけどな」
「そうだね。でも…頑張ってくるよ。」
幼なじみ達とした約束、その内容を思い出す。なぜ忘れていたのか、自分はこのとき誓ったはずだ。
「優二は…きてくれる?」
一歌が少し不安そうにしながら尋ねてくる。それに対し優二は笑顔で返す。
「何があっても来るよ。約束する。」
第四話 「バンドを目指せ!」
スターフィッシュノーネイムを倒した後、新一は学校に向かって走っていた。昼休みは既に終わってしまっただろうがサボるつもりはない。今からいけば5限には間に合うはずだ。人生初の命がけの戦闘後とは思えない生真面目さで地面をかける。
「きゃー!!」
「!?」
学校まで駆け抜けようとしている中女性の悲鳴がこだまする。異常を察知した新一は行き先を変更し、声の聞こえたほうにはしる。
「こ、来ないで…」
「ヒィっヒィっヒィっ」
引き笑いのようなものを上げながら女性に近づく異形。全身緑色の体色。体中に毛のように細いトゲがびっしり生えたシンプルな怪人。サボテン男、カクタスノーネイムがそこにはいた。
「サボテン…カクタスノーネイムってところか」
『ハカイドライバー!!』
怪人の特性を判別したところでドライバーを装着し、スフィアを起動させる。
『デュアル!!』
「変身!」
『LETS ACTIVE DUAL!!』
粉砕された球状エネルギーが降り注ぎ新一の姿を戦士に変える。全身が変化したのを確認した後カクタスにむけて走り出し拳を振るおうとする。
「!?」
攻撃が当たる寸前、デュアルは腕を突然引っ込める。その視線の先にはカクタスの全身の小さなトゲが集まり巨大な幾つかのトゲと変化し全身に纏われていた。
「こいつ…面倒な…」
このまま殴ったとしてダメージを食らうのはこちらだろう。集まったことで密度は減ったがそこを突けるほど大きな隙間ではない。攻めあぐねているとカクタスが両手を顔の横に持っていきファイティングポーズをとる。すると両手がボクシンググローブほどの丸に変化し巨大なトゲがいくつも生える。
「こいつまじか…!」
「ヒュッ!ヒュッ!」
独特の発声をしながらボクシングスタイルの攻撃を仕掛けてくる。トゲが刺さらないように側面を叩くようにして捌くがこちらは反撃できない以上一方的に攻められ徐々に壁際に追い詰められる。
「ぐっ!」
ついに壁に背中が着くほど追い詰められる。こちらに逃げ場がないと判断し、大振りなストレートを顔面むけて放ってくるのを地面に座り込むようにして回避すると爆裂音を響かせ壁が大きく凹む。腕を引っ込めるとトゲが刺さった部分の壁には穴が空いていた。
「おれをチーズにでもする気か…!」
軽口を叩きながらベルトのスフィアのスイッチを押す。身体に赤いエネルギーが立ち込めると思いっきりカクタスの腹を殴り飛ばす。
「まあまあだな。」
腕をみるも特に被害はなく痛みもない。エネルギーが防護膜の役割を果たしてくれた。だが吹き飛ばされたカクタスの方もそれほどダメージをうけていない。トゲに阻まれ攻撃が直に身体にクリーンヒットしないのだ。
「じわじわ削って判定勝ち狙いってところだな、お互いに。」
長丁場の戦いを覚悟し構えたところでカクタスが拳を放つ仕草を見せる。吹っ飛んだ影響で到底届く距離ではない。そこで相手の狙いに気づく。
「ヒュヒュヒュ!」
「くそ!」
カクタスが拳を放つと腕のトゲがこちらに向かって跳んでくる。地面に転がりながら回避するも何度もラッシュを放ちトゲをマシンガンのように放ってくる。
(これじゃ埒があかない!)
体力をどんどん消耗するだけだと判断したデュアルは地面を大きく殴りつけ土砂を巻き上げ盾にする。しばらく防いでいると針の勢いがやむ。土砂を飛び越えるとカクタスの姿が消えていた。
「…!?どこに消えた!?」
辺りを警戒しながら見回す。すると先ほどまでカクタスがいたところに穴があいている。どうやら地面に潜って逃げたらしい。
追跡の手段がないと判断し変身を解除すると襲われていた女性を発見する。どうやら足にトゲが刺さって動けないようだ。
「…授業はサボりだなこれは」
ーーーーーーーーー
「ん、うぅん」
朝日が瞼に刺さる。頭全体に痛みが走るのを感じる。過去の夢を見たので脳に負荷がかかったのを感じる。あとシンプルに顎が痛い。そうだ、自分はデュアルに顎を思いっきりアッパーカットされたのだ。重い瞼を開けると視界に一歌の顔が映る。そうだ、自分は大事なことを
「思い出したー!!」
「「きゃあー!?」」
突然大声を出しながら起き上がった優二に驚き一歌と咲希が叫ぶ。周りを見てみると何処かの公園で線記も来ている。
「せっかく役得だったのにすぐ起きたな」
「みんな…なんでここに?」
「お前が昼休み終わっても帰ってこないから心配したに決まってんだろ?午後はサボったぜ」
「そっか…」
「なにがあったんだ?お前川で寝てたぞ」
本当のことを言うか悩む。突然現れた新一がライダーに変身して自分を助けたと思うと殴ってきた。要素の渋滞すぎる。殴られた理由も自分にあるということも理解した。
「いやぁ、激戦でさ。顎いてー」
「そっか…大変だったんだね」
特に疑われることなく信じてくれたことに安堵しつつベンチに座る。一歌たちに大事なことを話さなければならない。
「みんな…聞いてほしいことがあるんだ」
「へ?何?」
「俺…思い出したんだ。」
夢で見たことを話す。かつて幼なじみでした約束、自分は確かにみんなで会う約束をしたと。
「その話ならさっき一歌たちに聞いた。」
「なんで俺こんな大事なこと忘れてたんだろう…」
「…なんでだろうな」
後悔が頭の中を支配するが、そんなことより自分には先にやらなければならないことがある。そう判断すると一歌と咲希に向き直る。
「二人とも…ごめん!」
「え…」
「絶対やっちゃいけないことをした…約束したのに…皆のことさえ忘れて普通に過ごしてたんだ」
「優二…」
「こんなこと言える立場じゃないことは分かってるけど…許して欲しい!俺は…これからもみんなで居たい。俺に出来ることなら何でもする!だから…」
「私はいいよ、優二」
優二が言い切る前に一歌が口を開く。
「ほんとはね…最初に優二の家の前で再会したとき気になってたんだ。約束のこと、なにかあったのかなとか…忘れてたんだとしたら…顔を見ても思い出せないのかなとか…」
「…ごめん」
「ううん、いいんだ。私ね、最初はずっと気になってたんだけど一緒に過ごすうちに、気にしなくていいかもって思っちゃってたんだ。」
一歌の発言に優二は驚きの表情を浮かべる。この約束は一歌にとって…幼なじみみんなに取って大事なもののはずだ。
「約束を忘れちゃってたのは悲しいし、来てくれなかったのはつらかったけど…でもね、一緒にいるためにした約束なんだよ。もし、それが原因で一緒にいられなくなるくらいなら…そのことは忘れちゃってもいいかなって。忘れたくても忘れられない辛いことってあるし…」
「一歌…」
「それに結局ちゃんと思い出して謝ってくれたし、何より再会してから一緒にいるのすっごく楽しかったから。だから私は許すよ。」
一歌の言葉に目から涙がこぼれそうになる。改めて自分のやったことに罪悪感が浮かぶが…許すと言ってくれた一歌の想いに応えるなら引きずるわけにはいかない。
「はいはーい!私も!私も許しちゃう!」
「咲希!い、いいのか…」
入院していた間、きっと寂しい想いをしていたはずだ。もし咲希のことを忘れていなければきっと自分はお見舞いに行っていたはず。そうすれば少しはその寂しさを紛らわせられたはずだ。咲希の心に着けてしまった傷は大きいはずなのに。
「私もとっても悲しいよ…けど…辛くて悲しいことっていっぱいあるのにそのことばっかりずっと考えちゃうのは嫌だから…だから、これからはいっぱい一緒に楽しいことしよーね!ゆーくん!」
「…あぁ、いっぱいやろう!」
そう言いながら差し出された咲希の手のひらをこちらも握り返す。三人の仲直りを眺めながら線記は何かに気づく。
「ん?俺謝られてなくね?」
「あの約束のときいなかったから」
「いや!忘れられてたのは俺も同じだろ!?」
「そっちは謝ったぞ」
「え?あやまっ…謝られたか、謝られたか?」
少なくともこんなちゃんと謝られたか記憶はない。線記が疑問におもっていると咲希が口を開く。
「ねぇねぇ!どのくらい思い出したの?」
「完璧に思い出した。今まで忘れてたの不思議なくらい。やっぱ頭に強い衝撃食らうと記憶って戻るんだよ。トンカチ使えばよかった」
「お前のトンカチへの信頼なんなんだよ」
「どうする?学校戻る?」
「もう早退するって言ったじゃん。体調悪いって言って」
「咲希の信憑性だけすごいな」
4人はしばらく考え込む。すると優二が口を開く。
「なぁ、それなら楽器屋行かないか?」
「楽器屋?」
「バンドやるなら見ときたいし、知識があるわけじゃないからさ。」
「でも私たちは…」
優二の言葉に咲希は再び辛そうな顔をする。それを見た一歌は咲希に提案をする。
「ねぇ咲希、私たちだけでもバンド、やってみない?」
「えっ!いいの!?」
「私だけじゃ…全然人数足りないけど…」
「そんなの全然大丈夫だよ!すっごく嬉しい!よーし!楽器屋さんにレッツゴー!」
「ちょ、急に走るなよ!」
一歌の言葉に表情を明るくした咲希は我先にと楽器屋にむけて走り出す。自分たちが始めれば穂波や志歩も始めてくれるかも知れない。そんな思いも彼女の気持ちを明るくしていた。
「さて、どうする!試しにこの4人でやるか!」
「ギター3キーボード1の編成はエキセントリックすぎる!」
「本当にちゃんと思い出したんだな!」
「言ったろ!完璧に思い出したって!」
走りながらこれからのことを話す。考えるべきは山程あるが、それでも何かが前に進んだ気がした。
ーーーーーーーー
「このショッピングモールも懐かしく感じるなぁ」
「一ヶ月くらいなのにね。」
「初変身もここだったからな…」
「へー!」
過去を懐かしむ一歌たち。このショッピングモールこそ目指す楽器店がある。
「せっかくだから色々見て回ろーよ!」
「楽器屋で何か買ったらかさばるしな。俺ギター買わなきゃだし。」
「え、捨てたの?」
「壊れたんだよ。練習しすぎた。」
バンドに向けた努力で本末転倒の事態に陥っている。ただこれなら結成後の演奏には期待できそうだ。
「それじゃあまずは服屋さんにゴー!」
「かさばりそう」
「まぁまぁ、私もみたいかな。」
「制服でウロウロするのもあれだしな」
そう言うと4人はショッピングモール内を回る。
「じゃじゃ~ん!」
淡い黄色の袖無しカーディガンに茶色のスカートとベレー帽を被った咲希がくるくると試着室で回る。
「かわい〜」
「似合ってるよ咲希」
「えへへ〜」
「割と近くできたな」
優二は腕から袖にかけて徐々にマゼンタカラーになる革ジャンに黒いジーパン。革ジャンの中には黒いシャツに「ONE」と書かれている。
「何に近くできたんだ?」
「わかる人にはわかる。それがファッション」
「意識高〜い」
「な、何かみんなに服見せるのって恥ずかしいな」
一歌は水色の上着に白いサロペット。頭には白いニット帽をかぶっている。言葉通り恥ずかしいのか頬を赤らめている
「いっちゃんかわい〜!」
「何か意外な服装というか」
「咲希がコーディネートしてたよ」
「納得」
「どーよ!いけてね?」
線記は黄色のラガーシャツにゆったりしたスラックス。自身があるのか得意気だ。
「いいんじゃね?特に面白みはないけど」
「面白みってなんだよ」
「もっと腕にシルバー巻くとかさ」
「巻かんわ。なんだお前胸にでっかく1って」
「わかる人にはわかる。」
各々服装を着替えたあと4人は今度はゲームセンターに向かう。
「おりゃー!」
「40キロ、高い?低い?」
「パンチングマシーンの女性平均は60くらいらしい。」
「え!私低いの!手応えあったのにー!」
「あー!いっちゃんいっちゃん!あそこのUFOキャッチャーミクちゃんのぬいぐるみあるよ!」
「え!本当だ!欲しい!」
「ふっ、一歌!俺に任せな!」
意気揚々と線記は百円をゲーム機に入れる。
「しゃあ!行くぜ!」
MISS!
「ま、まぁ1回目じゃな」
MISS!
「次こそ!」
MISS!
「うぉぉぉぉぉ!!!!」
MISS!MISS!MISS!MISS!
「一歌、諦めてくれ」
「だ、大丈夫だよ。そもそもこんな大きいの取れるわけないし。」
ガコーン!
「よし、取れた。一歌、はい。」
「え、あ、ありがと」
「ゆ、優二…お前、一発で取ったのか?」
「うん。俺こういうの得意だし。」
「…お前、俺がずっと苦戦してるの後ろでどう思ってたんだ?」
「下手だなぁって」
「こいつ!」
「落ちついてせんくん!」
一通り楽しんだあと、4人は楽器屋に向かう。
「服とぬいぐるみをもって楽器屋に行くのシュールだな」
「今からここにギターが加わるからな」
「訳わからん集団」
「あ!あったよー!」
咲希のひと言により前方の楽器屋を目にする。そしてたどり着いた店の前で4人は意外な人物達と会う。
「志歩ちゃん!つるくん!」
「みんな…揃ってどうしたの?」
「…もう私服なの帰るの速すぎない?」
そう言われて2人の格好を見比べる。学校帰りなのか制服姿、それを見て4人は顔を見合わせる。
「学校終わったんだ…」
「どんだけ遊んでたんだ俺たち」
「俺の気絶そんな長かった?」
「何の話なわけ?」
思ったより道草を食っていたことに気づき志歩たちを置いてけぼりにして戸惑う。そんな4人の驚愕を余所に志歩が口を開く。
「それで?結局何しに来たの?」
「私たちね!バンドすることにしたの!」
「…え?」
予想外のことに志歩から惚けた声が出てしまう。すると意を決したように咲希は切り出す。
「志歩ちゃん…志歩ちゃんも一緒にやらない?」
「…言ったでしょ。遊びのバンドはやらない。」
「そっか…それじゃ!買い物に付き合ってくれない?」
「買い物?」
思ったよりあっさり引き下がった咲希からの予想外の展開に思わずオウム返しをしてしまう。
「志歩ちゃん詳しいから一緒に選んでくれたら嬉しいんだけど…ダメ?」
「…バイトあるから…ちょっとだけならいいよ。」
「…!えへへ、それじゃ行こー!」
「ちょっ、引っ張らないで…」
咲希の手に引っ張られ志歩がお店の中に引っ張られる。すると線記は剣に声をかける。
「俺もギター買いたいから付き合ってくんね?」
「…僕は別に志歩ちゃんみたいに詳しくないよ。」
「まあまあいいから」
「…」
そう言うと半ば強引に剣を引っ張って店に入っていく。残された2人はお互いに顔を見合わせる。
「私たちも行こっか?」
「だな…弦とか色々試したいと思ってたし…!?」
店に入ろうとしたタイミングで優二の頭が怪人の出現を感じ取る。
「優二、もしかして…!?」
「あぁ、怪人だ。しかも…!」
一歌の発言を肯定しながら下の階層を覗く。
「ヒィッ!ヒィッ!ヒィッ!」
「ここ!?」
「このショッピングモールは警備を見直すべきだな!」
そう言うとベルトを取り出し手すりによじ登る。
「一歌!咲希たちを連れて逃げろ!あいつは俺が倒す!」
「っ!気をつけてね!」
一歌の言葉に頷くと手すりから下の階に飛び降りる。
「変身!」
『CHANGE THE RIDER!!』
ーーーーーーーー
一方店内、剣と線記は2人でギターを見ていた。
「どんなのがいいんだろうな〜」
「…ねぇ、ちょっといい」
「どした〜?」
「こないだの話、結局どうしたの?」
その質問にギターを眺めていた線記が剣の方を見つめる。
「お前らに何かあったって話なら、詳しいことは一歌たちに聞いた。それに、優二のやつも思い出したしな。」
「思い出した…!?それ本当なの…!?」
線記の発言が予想外だったのか剣は珍しく大声を上げる。
「いや…そこは問題じゃない…話を聞いたなら、どうして優二くんとまだ一緒にいるの?」
「どうしてって…」
「話を聞いたなら分かるでしょ!?彼は僕たちを裏切ったんだ!」
剣がまくし立てるように目を剥きながら声を上げる。その様子を見た線記が口を開こうとしたとき。
「いた!二人とも!」
「大変!大変だよー!」
「?どうした、三人とも?」
「…優二くんがいないけど、まさか!」
ーーーーーーーー
「ライダーパンチ!」
地面に着地すると同時にライダーはカクタスに近づきパンチを放っ。現れた直後で避難が完了しきっておらず人が多い。速攻で終わらせたいが…
ぐさっ
「…いった〜!!?」
腕に走った鋭い痛みに思わず後ろに下がっていく。なにが起きたのか分からず腕に息を吹きかけ痛みを和らげようとしながらカクタスを見ると、全身のトゲが集まったことで一つ一つのサイズが上がっていた。
「今日こんなやつばっかかよ!」
『ガヴ!!』
姿をガヴセレクトに変えガヴブレイドを取り出す。見たところスターフィッシュほど防御力が高いわけではない、この刃も通るはずだ。それを見たカクタスも両手を変形させボクシングスタイルをとる。準備を完了した両者はお互いに走り向かっていく。
「ハァっ!」
カクタスに向けて刃を振るうとそれをカクタスは左手のトゲをぶつけ弾くようにさばき鋭い右手のジャブを放つ。武器をつかって間合いを置いた位置取りの余裕からギリギリで躱すが追撃の刃を放とうとした所にさらに懐に入られる。
「ぐっ!?」
武器を振るうスペースのないほどの距離感に追撃ができないところを強烈なボディブローを食らい吹っ飛ぶ。ライダースーツの防御力なら貫通して内部にまでトゲが刺さることはないがそれでもダメージは大きく胸部のグミ装甲がはじけ飛ぶ。
「こんなとこまで再現しなくていいのにな…ふっ!」
スフィアのボタンを押すと胸部の装甲が復活し再びカクタスに向かって進む。その光景を上の階から一歌たちは見ていた。逃げろと言われたがやはり優二が心配でのこっていたのだ。
「ゆーくんピンチじゃない!?」
「奴のトゲが邪魔だ…」
「どうすれば…」
苦戦するライダーを見る一歌たちに緊張が走る。助けられるとしたらライダーに覚醒した新一ぐらいだが、優二が話さなかったことによりそれを知る人物はこの場にいない。カバンの中でセカイやミクたちがスマホ越しに叫ぶが戦いの音で一歌たちに届かない。
絶対絶命の状況で、線記は剣に声をかける。
「剣!さっきの話、まだ途中だったよな!」
「何言ってるの、今それどころじゃ…」
「大事な話だろ!」
気丈に振る舞う線記の声に剣はそちらを向く。
「俺は、その約束の場にいなかった…だから、あいつと居れるのかもしれない…」
「せんくん…」
「でもな!おれにだって約束はある!」
「約束…?」
「お前も忘れてんのか?俺が引っ越した日だよ!」
ーーーーーーーー
「うぅ、うう…」
「咲希ちゃん…そんなふうに泣いたら悲しいお別れになっちゃうよ…うう…」
線記が銀行員の親の仕事の都合で引っ越すその日、見送りに来た皆は悲しみに包まれていた。線記自身、仲のいい皆と離ればなれになることを悲しんでいた。そんなとき、優二が口を開く。
「きっとまた会えるよ!」
「優二…」
「何処に行ったってきっと会える…だからさ、その時はいつもみたいに…またバンドやろう!」
優二はそう言って笑う。ただの口約束、泣いている咲希や穂波を励ます意味もある気休めかもしれない。だがそれは線記の心も救った。わずかな可能性にも満たない願望。それでもまた会おうと言ってくれたことが嬉しかった。
ーーーーーーー
「ただの口約束で、普通なら守らなくてもいいかもだけど…俺にとっては大事なことだ」
「それは分かるけど」
大事な約束。だからこそ守らなかった優二を自分は許せないのだ。そんな剣を見つめながら線記は続ける。
「だから、俺は優二と一緒にいる!一歌とも、咲希とも、お前らともな!」
「線記くん…」
「俺はあの日の約束を果たす!俺は…そのために帰ってきたんだ!」
そう言うと線記は鞄からスマホを取り出す。やっと取り出されたことにセカイから声がする。
『やっと取り出したか…いいか、門寺のやつが向かってる。辛条のやつに何とか誘導させ…』
『そうじゃないだろ。線記の顔見てわかんねーのか?』
『…なるほど』
そう言うとセカイから銃を模したドライバーと灰色と白色のスフィアが飛び出してくる。線記がつかむと灰色のスフィアが黄色に変わる。
『白いのは前のと同じで変身用だ。ベルトの使い方は…』
ハカイから説明を受けたあと手すりに立ち、ドライバーを装着する。
『ネライドライバー!!』
ベルトの銃の一部をスライドさせるとスフィアをはめ込む部分が露出する。それを確認した後黄色のスフィアを起動させる。
『ガン!!』
起動させたスフィアをベルトにはめ、スライドさせたパーツをはめ込むと手すりから飛び降りる。右手を斜めに突き出すと身体の周りを回転させ、頭の上に来たあたりで銃のかたちに変え敵を狙う構えをとる。
「変身!!」
『MY LOCK GUN!!』
掛け声とともにベルトの引き金を引く。銃口から弾丸が発射され前方の黄色の球状エネルギーを貫き、エネルギーの軌跡を描きながら身体の周りを飛び周りスーツを形成し、最後に巨大化した弾丸が後頭部から頭にぶつかりヘルメットになる。
「フンっ!」
轟音を鳴らしながら地面に着地する。肩、膝、肘に軽いサポーターが付いている以外の装甲はなく防御は最小限に留まっている。もとが弾丸のため他のライダーに比べると独特な形状になっており複眼はフルフェイスヘルメットのようなゴーグルの奥に青くかがやいている。全身を鮮やかな黄色に彩られた戦士、仮面ライダーロックが誕生した。
『チューニングマグナム!!』
「うわ、、なんか出てきた。」
無事に着地し援護に向かおうとしたロックの元にリボルバー型の銃、『チューニングマグナム』が出てくる。これなら援護もしやすいと考えるとマスクに敵や周辺の物体の位置や距離などの情報などが現れる。
「おぉ…すごいなこれ」
銃を構えると弾がどう跳んで行くかの予測まで出てくる試しに引き金を引くとまるで吸い込まれるようにカクタスに着弾する。
「ヒィ!」
「おぉ、当たった」
「え、だれ!?」
突然銃撃を放った戦士にライダーが驚いているとカクタスはロックに狙いを定める。しかしロックの目に焦りはない。圧倒的に自分が有利だと感じているからだ。
「やる気か?ボクシングサボテン。こっちは銃だぜ?」
上からみたボクシングスタイルでの戦い方、こっちが銃で撃っていれば一方的に勝利できる。余裕の表情を浮かべているとカクタスがその場でシャドーボクシングのようなラッシュを始める。すると腕のトゲが発射されロックの全身に直撃し吹っ飛ぶ。
「ぐわぁぁぁぁ!?」
「し、知らない人ーー!?」
援護に現れすぐに吹き飛ばされた謎の戦士に駆け寄る。
「お、おい!あんた大丈夫か!」
「あ、あんなのあるのかよ…聞いてねぇ…」
「…もしかして線記か?」
声を近くで聞いたことで変身者に気づく。そうと分かれば協力して戦おうとするとカクタスのトゲがマシンガンのように飛んでくる。
「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」」
飛んできたトゲから逃げるために店の商品棚の後ろに隠れる。トゲがあちこちにぶつかり物が破壊される音を聞きながら作戦を立てる。
「優二!これ!」
「新しいスフィア!?」
「これでどうにかできないか!?」
そう言われ渡されたスフィアをみる。前回のガヴの例からするに何らかのライダーの力が入っていると思い観察する。白いスフィアにオレンジの線でキツネを模した絵が描いている。何のライダーかこれで大体わかった。だが…
「どんなのかは分かったけど…このトゲの雨は厳しいな…」
「まじかよ…せっかく出てきたのに。」
「そっちの銃はどうだ?ちょっと見せてくれ。」
「壊すなよ?」
ロックから銃を受け取り色々弄る。撫でたり変形しないか試したり、シリンダーを回したりもするが何も起こらない。中はどうかとシリンダーを押すとずれて外側に飛び出す。
「あー!壊した!」
「壊してないよ!弾入れるとこだろ!」
「ビームなんだから弾なんか入れないだろ!」
「ちがうよ!ほら!なんか絵描いてるだろ!」
ライダーのいうようにシリンダーの本来弾を込める場所は埋まっておりそれぞれ別々の絵が描いている。それを見たライダーはそのなかの一つの絵が上に来るようにして元に戻す。
『マシンガンモード!!』
「おっ!?」
「よし!これでうて!」
「おっしゃあ!!」
商品棚から飛び出しカクタスに銃口を向け引き金を引く。すると先ほどと違い銃口からは弾が一度に何十発と放たれトゲとぶつかりあう。
「ダダダダダダダダダ!!!」
「よし今のうちに…」
独特な発声で弾を放つロックを尻目に白いスフィアを起動させる。
『ギーツ!!』
指でキツネを作り指を鳴らすとスフィアをベルトに装填し回転させる。
「変身」
『CHANGE THE GEATS!!』
白い球状エネルギーが横に現れなかのアーマーだけがスライドし上半身に装着される。球状エネルギーが収縮しキツネの面のようねヘルメットを作るとそちらもスライドし顔に装着される。
胸に狐火がシリンダー状に並んだ絵が描いているアーマーを装着した姿『ギーツセレクト』に変身する。
『マグナムシューター40X!!』
「さぁ…ここからが、ハイライトだ」
腕に専用武器である銃を召喚しカクタスに向けて発砲する。ロックとの銃撃戦に集中し気づかなかったカクタスは回避出来ず地面を転がる。それを確認した2人は集合する
「優二!使ったんだな!」
「あぁ、思った通りで安心したよ。」
銃撃を受けたカクタスがふらふらと立ち上がりこちらをみてくる。ロックの出現、ギーツセレクトへの変身、流れはこちらに来ている。このまま勝負を決めようとすると、カクタスは両手を地面に突っ込む。
「ヒィィィィィ!!」
奇声を上げたと思うと腕が振動を始めると床にヒビが入りカクタスの身体が高速で地面に潜っていく。
「!まて!」
急いで銃を撃ちながら追跡するがカクタスの身体が完全に地面に埋まる。穴に駆け寄り覗き込むがもう見えなくなっている。形成不利と見て逃げ出したのだろう。
「逃がさねぇ!」
マグナムのシリンダーを回転させ、別のモードに切り替える。
『スナイパーモード!!』
「優二!俺のあとに続いて撃て!」
「了解!」
そう言うとロックのマスクがその機能を発揮し地下に逃げ込んだカクタスを捕捉する。そしてドライバーのパーツをスライドさせスフィアを露出させボタンを押すと再び戻し引き金を引く。それを見たライダーも必殺技を発動させる。
『ENEMY LOCK GUN!!』
『FINISH THE GEATS!!』
2人の銃口にエネルギーが溜まっていく。最大の輝きを放った所にライダーが叫ぶ。
「ライダーシューティング!」
「え?じゃあ…ライダースナイプ!」
ライダーの真似をしてロックも技名を放つと引き金を引き、それに続いてライダーも放つ。黄色と白の閃光が地面を貫く。
「ヒッヒッヒッ」
逃走が上手くいったところに笑っていると何かが地面を掘り進む音が聞こえてくる。やつらが追ってきたのか。だがそれならカウンターでトゲを飛ばせば回避できまい、そう考え待ち構えると音の方角から穴が貫通し2色の閃光に貫かれる。
「ヒィィィィィィィ!?」
カクタスが地下で爆散し、炎が穴を辿り進んでいく。
「うぉ!」
「危なっ」
自分たちがあけた穴から爆炎が飛び出してきて2人揃って尻もちをつく。炎が天井を焼いて焦がすのを眺めながらライダーはロックに話しかける。
「えっと…ありがとう、助けてくれて」
「ん?気にすんなよ別に。助けるだろ普通。」
「いや…戦いのことだけじゃなくて」
高校に入ってから再会して、ずっと明るく接してくれていた。間違いなくその存在は自分を助けてくれていたのだ。
「線記がいなかったらもっと辛かったと思うからさ」
「よくわかんねーけど」
ロックはライダーに向けて握り拳を向ける。
「だったら、これからも一緒にいてくれよ」
「…あぁ!」
お互いの握り拳をぶつけ合う。2人の友情が一つ深まった気がした。その姿を剣が微妙な顔で見つめている。
「剣、大丈夫?」
「…大丈夫だよ志歩ちゃん。終わったみたいだし僕帰るね。」
そう言うと一人離れた出口に向かって歩いていく。その背中を志歩には追いかけることが出来なかった。
「2人ともー!」
「お!咲希と一歌だ!」
「すごかったねー!2人揃ってバーン!って」
「初陣にしちゃ上出来だったろ?それじゃ、ギター買いに行こうぜ!」
そう言うと変身を解除しエスカレーターを上がっていく。自分たちも遅れて上がるが、こちらが着いたころに店から出てくる。
「店の人避難してたわ」
「「「そりゃそっか」」」
ーーーーーーーーーー
「剣!お前ショッピングモールにいたのか!?」
「新一くん?どうしたの?」
一人で帰る中新一に出会う。そう言えばこっちに向かってるとハカイが言っていた気がする。
「中に怪人が出たって聞いたが…優二が倒したのか?」
「…線記くんと一緒にね」
「何?まさか、あいつもライダーになったのか?」
「みたいだね」
そう言うと再び帰ろうとする。今はもう誰ともしゃべりたくなかった。
「剣!」
「…なに」
「お前は…どうするんだ」
新一は剣に問いかける。何となく感じていた、一歌や咲希たちが前に進もうとしていることを。
「…君と一緒だよ。僕は彼を許せない。」
「…俺と同じ…か」
剣の発言に新一はその場で考え込んでしまう。それに何の声もかけることなく剣はその場から歩き去ってしまった。
ーーーーーーーー
「よしっこんなもんかな。」
優二が自室でギターの手入れをしていた。バンドとして動くのが近い気がする。数年放置していたのだからしっかりしておきたかった。
「今日はもう寝るか」
一通り満足しベットに入る。枕の柔らかい感触を感じながら目を閉じていると今日のことが蘇ってくる。こうして寝ているときに記憶が蘇ったのだ。柔らかい感触を頭に感じながら、目覚めると一歌の顔があった。そこまで考えるとあることに気づく。
(俺あのとき一歌に膝枕されてなかった!?)
そういや線記が役得とか言ってた。
設定
仮面ライダーロック
線記の変身するライダー。リボルバー型の武器『チューニングマグナム』を武器にたたかう。周囲の地形をスキャンすることで壁越し、地面越しの銃撃を可能にする。
チューニングマグナム
ロックの専用武器。通常射撃のノーマルモード、連続射撃のマシンガンモード、近距離射撃のバーストモード、遠距離射撃のスナイパーモード、高威力射撃のキャノンモード、跳弾射撃のラビットモードを使い分けられる。
カクタスノーネイム
サボテン型の怪人。全身のトゲを集めた防御力の強化、ボクシングスタイルでの戦闘を得意とする。両手を振動させ穴を掘ることも可能。高い戦闘能力と引き際を見極める知能を持つが、ロックとライダーの長距離射撃の前に敗れた。
次回予告
「私のだす課題曲をクリア出来たらバンドやってあげる」
「そのままでいてくれたら良かったんだ」
「俺と遊ぼうぜ、スナイパーくん♪」
「俺たちの想いの力、見せてやる!」
『第五話 剣と紡ぐ 刃と音波』
「斬られるのと蹴られるの、どっちがいい?」